説明

鋼管の継手と鋼管の接合構造

【課題】鋼管杭等の鋼管の継手に関し、上下の鋼管杭等を接合するとき、施工現場で溶接することなく、簡単な作業で接合が可能な継手を提供すること。
【解決手段】継手3は、外側継手31と内側継手32からなり、外側継手31の盆状結合部311の盆状凹部314の立上面3142には、複数の正5角形の結合突起315を配置し、内側継手32の筒状結合部321の周面には、結合突起315と同数の結合突起325を配置してある。筒状結合部321を盆状凹部314に挿入して内側継手32を回転すると、結合突起325は、結合突起315と底面3141の間に圧入され、両結合突起の傾斜面が接触した状態で外側継手31と内側継手32は結合する。外側継手31と内側継手32には、下鋼管杭11と上鋼管杭12を取付けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鋼管杭、鋼管柱、液体や気体の輸送用鋼管等の鋼管の継手とその鋼管の継手を用いた鋼管の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来鋼管杭等の鋼管の接合には、継手を用いている。図8により、従来の鋼管杭の継手とその継手を用いた鋼管杭の接合構造について説明する。
図8(a)は、当金23を用いて上下の鋼管杭11,12を接合する例で、当金23は、外径が両鋼管杭の内径よりもやや小さい円筒状の鋼管からなり、金属線24を軸方向と直交する方向に貫通させてある。当金23は、鋼管杭11,12双方に挿入し、金属線24により両鋼管杭の間に保持する。その状態で、鋼管杭11,12の間隙10を溶接して両鋼管杭を接合する(特許文献1参照)。
図8(b)は、ネジ型の継手を用いて上下の鋼管杭11,12を接合する例で、下鋼管杭11に雄ネジ継手21を取付け、上鋼管12に雌ネジ継手22を取付け、雄ネジ継手21に雌ネジ継手22を螺合して両鋼管杭を接合する(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2005−282015号公報
【特許文献2】特開平2001−64959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8(a)の継手を用いる場合、鋼管杭の施工現場において上下の鋼管杭を溶接しなければならないが、施工現場の溶接は、溶接材等を施工現場に持ち込まなければならないし、雨等の天候の影響を受け易く、かつ上下の杭を溶接している間杭の打込み作業を中止しなければならないから、作業効率が悪く、また溶接の品質が充分でない場合がある。
一方図8(b)の継手を用いる場合、雄ネジ継手と雌ネジ継手を螺合するには、雄ネジと雌ネジの位置を正確に一致させなければならないが、その位置合わせは容易でなく、特に足場の悪い施工現場では大変な作業になる。また雄ネジ継手と雌ネジ継手を螺合する場合、上鋼管杭を何回も回転して雄ネジに雌ネジをねじ込まなければならなし、ネジに泥等が詰まらないように注意しなければならない。
本願発明は、従来の継手の前記問題点に鑑み、鋼管杭等の施工現場で溶接することなく、簡単に鋼管杭等の鋼管を接合できる鋼管の継手と鋼管の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の鋼管の継手は、外側継手と内側継手からなり、外側継手は、内側継手と結合する盆状結合部と鋼管取付部を備え、盆状結合部は、円形の底面と周辺の立上面からなる盆状凹部を備え、盆状凹部の立上面に複数の結合突起を設けてあり、内側継手は、外側継手と結合する筒状結合部と鋼管取付部を備え、筒状結合部の周面に外側継手の結合突起と同じ個数の結合突起を設けてあり、内側継手の結合突起は、内側継手を回転したとき外側継手の結合突起と盆状凹部の底面の間に圧入する位置に設けてあることを特徴とする。
請求項2に記載の鋼管の継手は、外側継手と内側継手からなり、外側継手は、内側継手と結合する盆状結合部と鋼管取付部を備え、盆状結合部は、円形の底面と周辺の立上面からなる盆状凹部を備え、盆状凹部の立上面に複数の結合突起を設けてあり、内側継手は、外側継手と結合する筒状結合部と鋼管取付部備え、筒状結合部の周面に外側継手の結合突起と同じ個数の結合突起を設けてあり、内側継手の結合突起は、外側継手の結合突起に係合する楔であることを特徴とする。
請求項3に記載の鋼管の継手は、請求項1に記載の鋼管の継手において、前記立上面の結合突起及び筒状結合部の周面の結合突起は、夫々上下に複数列設けてあり、筒状結合部の周面の結合突起の2列以上の結合突起は、立上面の結合突起の間に圧入することを特徴とする。
請求項4に記載の鋼管の継手は、請求項2に記載の鋼管の継手において、前記立上面の結合突起及び筒状結合部の周面の結合突起は、夫々上下に複数列設けてあることを特徴とする。
請求項5に記載の鋼管の継手は、請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の鋼管の継手において、外側継手の結合突起と内側継手の結合突起は、正5角形で双方の頂点が向き合うように設けてあることを特徴とする。
請求項6に記載の鋼管の継手は、請求項1から請求項5のいずれかの請求項に記載の鋼管の継手において、外側継手と内側継手の結合の緩み防止部材を備えていることを特徴とする。
請求項7に記載の鋼管の継手は、請求項1から請求項6のいずれかの請求項に記載の鋼管の継手において、鋼管取付部に取付ける鋼管は鋼管杭であることを特徴とする。
請求項8に記載の鋼管の接合構造は、内側継手と結合する盆状結合部と鋼管取付部を備え、盆状結合部は、円形の底面と周辺の立上面からなる盆状凹部を備え、盆状凹部の立上面に複数の結合突起を設けてある外側継手の鋼管取付部に一方の鋼管を取付け、外側継手と結合する筒状結合部と鋼管取付部を備え、筒状結合部の周面に外側継手の結合突起と同じ個数の結合突起を設けてある内側継手の鋼管取付部に他方の鋼管を取付け、内側継手の結合突起を外側継手の結合突起と盆状凹部の底面の間に圧入してあることを特徴とする。
請求項9に記載の鋼管の接合構造は、請求項8に記載の鋼管の接合構造において、外側継手の鋼管取付部に取付ける鋼管及び内側継手の鋼管取付部に取付ける鋼管は、鋼管杭であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の鋼管の継手は、外側継手と内側継手に結合突起を設けるだけであるから、構造が簡単で、作製も容易になる。また外側継手と内側継手の結合突起は、継手の軸方向の上下に重なるから、継手の外径は、結合突起を設けてもそれほど大きくならない。そして本願発明の鋼管の継手は、外側継手の結合突起の間に内側継手の結合突起を挿入して、内側継手をわずかに回転するのみで外側継手と内側継手を結合できるから、簡単な操作で両継手を結合でき、鋼管の接合現場において、例えば従来のネジ式継手のような高精度の位置合わせを要せずに鋼管を接合することができる。
本願発明の鋼管の継手は、内側継手の結合突起を、外側継手の結合突起と盆状凹部の底面の間に圧入するだけで、外側継手と内側継手を結合できるから、鋼管を接合するとき、施工現場で溶接する必要がない。したがって鋼管の接合作業は、簡単になり、接合時間を短縮できる。
【0007】
本願発明の内側継手の結合突起は、外側継手の結合突起に係合する楔としての機能を有するから、外側継手の結合突起の間に内側継手の結合突起を挿入し、内側継手の結合突起が外側継手の結合突起と盆状凹部の底面の間に圧入するまで、わずかに、内側継手を回転するのみで外側継手と内側継手を結合できる。即ち従来のネジ式継手のように内側継手を何回も回転してねじ込む必要がない。したがって鋼管の接合作業は、簡単になり、短時間で接合できる。
【0008】
本願発明の鋼管の継手は、外側継手と内側継手の結合突起に正5角形のものを用いているから、両継手を結合するとき、内側継手を左右いずれの方向に回転しても結合できる。即ち内側継手の結合突起は、左右両方向の楔として機能する。したがって鋼管の接合作業は、簡単になる。
本願発明の鋼管の継手は、緩み防止部材を備えているから、鋼管を接合した後外側継手と内側継手の結合の緩みを防止できる。
本願発明の鋼管の接合構造は、本願発明の鋼管の継手を用いて上下の鋼管を接合するから、接合作業が簡単になり、接合時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図7により本願発明の実施例を説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例】
【0010】
図1は、鋼管杭の継手によって上下の鋼管杭を接合した鋼管杭の接合構造を示す図で、図1(a)は、側面図、図1(b)は、図1(a)のX11部分の矢印方向の断面図、図1(c)は、図1(b)のX13部分の矢印X12方向の断面図である。
上鋼管杭11と下鋼管杭12は、継手3によって接合してある。継手3は、外側継手31と内側継手32からなる(両継手の構造は図2、図3でさらに説明する)。
外側継手31は、内側継手32と結合する盆状結合部311と下鋼管杭12に挿入する鋼管杭取付部313を備えている。盆状結合部311は、内側継手32の筒状結合部321を受け入れる円形の盆状凹部314を備え、盆状凹部314は、円形の底面3141とその周辺の立上面3142からなる。内側継手32は、盆状凹部314に挿入する円形の筒状結合部321と上鋼管杭11に挿入する鋼管杭取付部323を備えている。
【0011】
盆状凹部314の立上面3142には、複数個の結合突起315を所定の間隔で設け、筒状結合部321の周面には、結合突起315と同じ個数の結合突起325を結合突起315と同じ間隔で設けてある。結合突起315と結合突起325は、上下の略同じ円周に沿って配置してある。即ち結合突起315と結合突起325は、継手3の軸方向の上下に重なるように、上下の2つの円周に沿って配置してある。結合突起315と結合突起325は、正5角形で、夫々の頂点が向き合い、傾斜面が向き合うように配置してある。そして外側継手31と内側継手32は、双方の結合突起の傾斜面が接触した状態で結合している。
継手3によって下鋼管杭11と上鋼管杭12を接合したとき、結合突起325は、図1(c)のように、結合突起315と盆状凹部314の底面3141の間に圧入され、結合突起315と結合している。即ち結合突起325は、結合突起315に係合する楔としての機能を有している。
【0012】
盆状凹部314の立上面3142と筒状結合部321との距離(間隔)は、結合突起315,325の厚みよりも大きくし、結合突起315と筒状結合部321、及び結合突起325と立上面3142が接触しない程度に設定してある。盆状凹部314の立上面3142と筒状結合部321との距離(間隔)は、結合突起315又は結合突起325の厚みよりもやや大きい程度でよいから、それらの結合突起を設けても、継手3の外径は、それほど大きくならない。
図1(b)の結合突起315と結合突起325は、夫々筒状結合部321の周面と立上面3142に1列配置してあるが、図1(d)のように2列配置することもできる。即ち筒状結合部321の周面の上下に、結合突起3151,3152を配置し、立上面3142の上下に結合突起3251,3522を配置してある。結合突起3151は、結合突起3251と盆状凹部314の底面3141の間に圧入し、結合突起3152は、結合突起3251と結合突起3252の間に圧入して外側継手31と内側継手32を結合する。この場合、結合突起3151,3152と結合突起3251,3252の厚さは、図1(b)の結合突起315と結合突起325の半分にしても、図1(b)の場合と同程度の結合強度を得ることができる。結合突起3151,3152と結合突起3251,3252の厚さを薄くすると、継手3の外径は、図1(b)の場合よりも小さくできる。結合突起3151,3152と結合突起3251,3252は、2列以上設けてもよい。
上鋼管杭11の端部は、筒状結合部321の肩部322に接触しており、その接触部分を溶接してある。下鋼管杭12の端部は、盆状結合部311の肩部312に接触しており、その接触部分を溶接してある。それらの溶接は、鋼管杭11,12を施工現場に持ち込む前に工場等で事前に行なうことができる。したがって溶接作業は、効率的になり、高品質の溶接が可能になる。
【0013】
図2は、外側継手の構造を示す。
図2(a)は、平面図、図2(b)は、図2(a)のX2部分の矢印方向の断面図、図2(c)は、結合突起の拡大斜視図である。
盆状凹部314の立上面3142には、複数個(図では8個)の結合突起315を同じ間隔で設けてある。結合突起315と盆状凹部314の底面3141との距離(間隔)は、内側継手32の結合突起325を、結合突起315と底面3141の間に圧入したとき、双方の結合突起に締付け力が加わる大きさに設定してある。結合突起315は、厚み(盆状凹部314の直径方向のサイズ)のある正5角形(将棋の駒状)で、頂点が底面3141側になるように設けてある。結合突起315は、独立したものを作製して立上面3142に溶接等によって取付けてもよいし、鋳造等によって外側継手31と一体に作製してもよい。
内側継手31の鋼管杭取付部313の断面は、円形であるが、四角形にすることもできる。その場合には、鋼管杭12は、四角形のものを用いることができる。
【0014】
図3は、内側継手の構造を示す。
図3(a)は、平面図、図3(b)は、図3(a)の矢印X3方向の側面図、図3(c)は、図3(a)のX4部分の矢印方向の断面図、図3(d)は、結合突起の拡大斜視図である。
筒状結合部321の周面には、複数個数(8個)の結合突起325を設けてある。結合突起325の個数と間隔は、結合突起315と同じである。結合突起325の上部(5角形の頂点)と筒状結合部321の底面324の距離は、外側継手31の結合突起315と盆状凹部314の底面3141の距離よりも大きくして、内側継手31と外側継手31を結合したとき(上下の鋼管杭を接合したとき)、結合突起325が外側継手31の結合突起315と底面3141の間に圧入して、双方の結合突起に締付け力が加わる大きさに設定してある。即ち結合突起325が結合突起315に係合して楔の機能を奏する大きさに設定してある。
【0015】
結合突起325は、厚み(筒状結合部321の直径方向のサイズ)のある正5角形(将棋の駒状)で、頂点が外側継手31の結合突起315側を向くように配置してある。結合突起325は、独立したものを作製して筒状結合部321の周面に溶接等によって取付けてもよいし、鋳造等によって内側継手32と一体に作製してもよい。なお図3の結合突起325の底面は、筒状結合部321の底面324よりも高い位置にあるが、両底面の高さは同じでもよい。
内側継手32の鋼管杭取付部323の断面は、円形であるが、四角形にすることもできる。その場合には、鋼管杭11は、四角形のものを用いることができる。
【0016】
図4は、外側継手と内側継手の結合の仕方を説明する図である。
図4(a)の継手は、図2(a)の外側継手31及び図3(a)の内側継手32と同じである。なお図4は、外側継手31と内側継手32の結合突起の位置関係を分かり易くするため、便宜的に塗り分けてある。
外側継手31と内側継手32を結合するときは、まず図4(b1)のように、外側継手31の結合突起3151,3152,3153の間に、内側継手32の結合突起3251,3252,3253が位置するように、盆状凹部314に筒状結合部321を挿入する。そのときの突起3151,3152,3153と結合突起3251,3252,3253の位置関係は、図4(b2)のようになる。なお符号を付してない他の結合突起についても同様である。結合突起3151,3152,3153と結合突起3251,3252,3253は、図4(b1)のように略同じ円周で、上下の円周に沿って図4(b2)のように並ぶ。
【0017】
図4(b1)の状態において、内側継手32を矢印5方向へ回転すると、図4(c1)のように、結合突起3251,3252,3253は、結合突起3151,3152,3153と盆状凹部314の底面3141の間に圧入され、外側継手31と内側継手32は結合する。そのときの結合突起3151,3152,3153と結合突起3251,3252,3253の位置関係は、図4(c2)のようになり、双方の結合突起は、傾斜面が接触した状態で結合する。即ち結合突起3251,3252,3253は、結合突起3151,3152,3153に係合する楔としての機能を有している。
外側継手31と内側継手32の結合は、結合突起3151,3152,3153の間に結合突起3251,3252,3253を挿入して、内側継手32をわずかに回転するのみでよい。したがって鋼管杭の接合作業は、施工現場で高精度の位置合わせを要せずに簡単に行なうことができる。
【0018】
図5は、外側継手と内側継手の緩み防止手段を示す。
図5(a)は、図4(c1)の状態において緩み防止部材を挿入した状態を示し、図5(b)は、図5(a)の結合突起と緩み防止部材の位置関係を示し、図5(c)は、緩み防止部材の拡大斜視図を示す。
【0019】
図5(a)(図4(c1)に相当)の状態において、外側継手31の結合突起3150と3151の間に緩み防止部材(楔状部材)33を挿入して、内側継手32の結合突起3251が、図5(b)において左側へ戻るのを、即ち内側継手32が左側へ戻るのを防止する。緩み防止部材33を挿入する場所は、1箇所でもよいが、2箇所以上にすれば緩みを確実に防止することができる。緩み防止部材33は、結合突起3150と3151の間に単に挿入するのみでよいから、その取付作業は簡単である。
緩み防止部材33は、図5(c)のように、外側継手31の結合突起3150や内側継手32の結合突起3251と略同じ厚みで、結合突起3150と3151の間に挿入したとき、その先端部が結合突起3251と接触するように形成してある。
【0020】
緩み防止部材33の形状は、図5(c)の形状に限らず、外側継手31の隣接する結合突起の間に挿入したとき、その先端部が内側継手32の結合突起と接触する形状であればよい。また緩み防止部材33は、図5のように外側継手31の盆状凹部の底面3141に向かって挿入する代わりに、外側継手31の盆状結合部311の側面に、盆状凹部の底面3141と平行に孔を形成して、その孔に緩み防止部材33を挿入し、緩み防止部材33が内側継手32の結合突起3251と接触するようにしてもよい。
【0021】
図6は、外側継手と内側継手の結合突起の傾斜角と両継手の結合の緩みの関係について説明する図である。
内側継手の結合突起325と外側継手の結合突起315が、傾斜角θで接触している状態において、鉛直方向の引張力(荷重)Tが加わったとき、引張力Tの反力成分をN1、滑り成分をN2、結合突起の摩擦係数をμとすると、結合突起315が傾斜面を滑らない条件は、
N2≦μN1・・・・(1)
となる。この条件を満足するとき、結合突起325,315の結合は緩まない。
【0022】
図6において、N1=Tcosθ,N2=Tsinθとなり、結合突起の材料が鉄の場合の摩擦係数μは0.45(μ=0.45)であるから、これらを式(1)に導入して、傾斜角θを求めると、θ≦24.22度となる。
【0023】
したがって傾斜角θが24.22度より小さいとき、結合突起325,315の結合は緩まない。結合突起325,315の結合は、傾斜角θが小さくなる程緩み難くなるが、傾斜角θが小さくなると、結合突起315,325の幅(円周方向のサイズ)が広くなるから、傾斜角θは15度以上が望ましい。
なお傾斜角θが24.22度より小さい場合にも、図5の緩み防止部材を使用すれば、結合突起325,315の結合の緩みをより確実に防止することができる。
【0024】
図7により、外側継手と内側継手の結合突起の形状、両継手の外形について説明する。
外側継手の結合突起315と内側継手の結合突起325が正5角形の場合、結合突起325は、図7(a1)のようにX5方向へ移動(回転)しても、また図7(a2)のようにX6方向へ移動(回転)しても、結合突起315の傾斜面と接触する。即ち内側継手の結合突起325は、両方向楔の機能を有するから、鋼管杭の接合作業が簡単になる。
【0025】
外側継手と内側継手の結合突起は、正5角形に限らず、図7(b1)の結合突起315a,325aのように台形のもの、図7(b2)の結合突起315b,325bのように長方形を傾斜させたものを用い、双方の結合突起の傾斜面が向き合うように配置してもよい。内側継手の結合突起325a,325bは、楔として使用するから、傾斜面を備えていればよく、形状は前記以外であってもよい。図7(b1),(b2)の結合突起は、正5角形の場合よりも傾斜面が長くなるから結合突起の強度や結合強度が大きくなる。
【0026】
外側継手と内側継手の結合突起は、双方の傾斜面が向き合うように配置するのが望ましいが、傾斜面は、いずれか一方の結合突起にのみ形成するだけでもよい。例えば図7(b1),(b2)において、傾斜面は、結合突起325a,325bにのみ形成し、結合突起315a,315bは傾斜面を形成せずに盆状凹部の底面3141と平行な面のみでもよい。いずれの場合にも、内側継手の結合突起325a,325bは、楔の機能を有している。ただし一方の結合突起にのみ傾斜面を形成した場合には、外側継手と内側継手の結合突起は、線接触になるから、接触面積が小さくなり結合突起の強度や結合強度が小さくなる。
外側継手の結合突起と内側継手の結合突起は、傾斜面を利用して結合するから、鋼管杭の接合作業中に逆回転して両継手の結合を解くことができるし、また解体作業において両継手の結合を解くこともできる。
【0027】
図7(c)の継手3は、外側継手31の盆状結合部311の肩部312と内側継手32の筒状結合部321の肩部322にテーパを設けてある。外側継手31の盆状結合部311は、そのテーパにより厚くなるから強度が増し、かつそのテーパにより鋼管杭を下方に打込むとき抵抗が小さくなる。
【0028】
前記実施例は、鋼管杭について説明したが、鋼管杭の他、鋼管柱、鋼管梁、液体、気体の輸送用鋼管等の鋼管であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手によって上下の鋼管杭を接合した状態を示す図である。
【図2】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手の外側継手の構造を示す図である。
【図3】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手の内側継手の構造を示す図である。
【図4】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手の結合の仕方を説明する図である。
【図5】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手の緩み防止手段を示す図である。
【図6】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手の結合突起の傾斜角と継手の結合の緩みの関係を説明する図である。
【図7】本願発明の実施例に係る鋼管杭の継手の結合突起の形状、継手の外形について説明する図である。
【図8】従来の鋼管杭の継手の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
11 上鋼管杭
12 下鋼管杭
3 継手
31 外側継手
311 盆状結合部
312 盆状結合部311の肩部
313 鋼管杭取付部
314 盆状凹部
3141 底面
3142 立上面
315 結合突起
32 内側継手
321 筒状結合部
322 筒状結合部321の肩部
323 鋼管杭取付部
324 底面
325 結合突起
33 緩み防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側継手と内側継手からなり、外側継手は、内側継手と結合する盆状結合部と鋼管取付部を備え、盆状結合部は、円形の底面と周辺の立上面からなる盆状凹部を備え、盆状凹部の立上面に複数の結合突起を設けてあり、内側継手は、外側継手と結合する筒状結合部と鋼管取付部を備え、筒状結合部の周面に外側継手の結合突起と同じ個数の結合突起を設けてあり、内側継手の結合突起は、内側継手を回転したとき外側継手の結合突起と盆状凹部の底面の間に圧入する位置に設けてあることを特徴とする鋼管の継手。
【請求項2】
外側継手と内側継手からなり、外側継手は、内側継手と結合する盆状結合部と鋼管取付部を備え、盆状結合部は、円形の底面と周辺の立上面からなる盆状凹部を備え、盆状凹部の立上面に複数の結合突起を設けてあり、内側継手は、外側継手と結合する筒状結合部と鋼管取付部備え、筒状結合部の周面に外側継手の結合突起と同じ個数の結合突起を設けてあり、内側継手の結合突起は、外側継手の結合突起に係合する楔であることを特徴とする鋼管の継手。
【請求項3】
請求項1に記載の鋼管の継手において、前記立上面の結合突起及び筒状結合部の周面の結合突起は、夫々上下に複数列設けてあり、筒状結合部の周面の結合突起の2列以上の結合突起は、立上面の結合突起の間に圧入することを特徴とする鋼管の継手。
【請求項4】
請求項2に記載の鋼管の継手において、前記立上面の結合突起及び筒状結合部の周面の結合突起は、夫々上下に複数列設けてあることを特徴とする鋼管の継手。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の鋼管の継手において、外側継手の結合突起と内側継手の結合突起は、正5角形で双方の頂点が向き合うように設けてあることを特徴とする鋼管の継手。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかの請求項に記載の鋼管の継手において、外側継手と内側継手の結合の緩み防止部材を備えていることを特徴とする鋼管の継手。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかの請求項に記載の鋼管の継手において、鋼管取付部に取付ける鋼管は鋼管杭であることを特徴とする鋼管の継手。
【請求項8】
内側継手と結合する盆状結合部と鋼管取付部を備え、盆状結合部は、円形の底面と周辺の立上面からなる盆状凹部を備え、盆状凹部の立上面に複数の結合突起を設けてある外側継手の鋼管取付部に一方の鋼管を取付け、外側継手と結合する筒状結合部と鋼管取付部を備え、筒状結合部の周面に外側継手の結合突起と同じ個数の結合突起を設けてある内側継手の鋼管取付部に他方の鋼管を取付け、内側継手の結合突起を外側継手の結合突起と盆状凹部の底面の間に圧入してあることを特徴とする鋼管の接合構造。
【請求項9】
請求項8に記載の鋼管の接合構造において、外側継手の鋼管取付部に取付ける鋼管及び内側継手の鋼管取付部に取付ける鋼管は、鋼管杭であることを特徴とする鋼管の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−69611(P2008−69611A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251951(P2006−251951)
【出願日】平成18年9月16日(2006.9.16)
【出願人】(595071036)株式会社三誠 (11)
【Fターム(参考)】