鋼管矢板の継手構造及び鋼管矢板の施工方法
【課題】 鋼管矢板の施工現場において、鋼管継手部材に容易かつ短時間にディスタントピースを接合することのできる鋼管矢板の継手構造及び鋼管矢板の施工方法を提供する。
【解決手段】 外周に横連結継手50が設けられた鋼管矢板30,40と、高張力鋼材からなり鋼管矢板30,40を接合する鋼管継手部材Jと、鋼管鋼管矢板30,40の横連結継手50と同一線上において鋼管継手部材Jに接合されるディスタントピース52とを有し、鋼管継手部材Jに普通鋼材からなる取付部材15を接合し、この取付部材15にディスタントピース52を溶接により接合するようにした。
【解決手段】 外周に横連結継手50が設けられた鋼管矢板30,40と、高張力鋼材からなり鋼管矢板30,40を接合する鋼管継手部材Jと、鋼管鋼管矢板30,40の横連結継手50と同一線上において鋼管継手部材Jに接合されるディスタントピース52とを有し、鋼管継手部材Jに普通鋼材からなる取付部材15を接合し、この取付部材15にディスタントピース52を溶接により接合するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、護岸工事あるいは河口や湾岸線等の大水深、軟弱地盤上に計画される橋梁基礎等の基礎構造物に適用される鋼管矢板の継手構造及び鋼管矢板の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼管矢板の施工においては、打設を要する深度に到達するまでに複数本の鋼管矢板を接続して施工される。従来、このような鋼管矢板の継ぎ作業は、施工現場において溶接によって行われていたが、品質が安定しないことや特殊技術が必要とされること、作業時間が長くまた天候に左右されるために工程に問題が生じ易いなどの問題があった。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために、溶接に代わる鋼管矢板の継手手段として、鋼管杭の継手として提案され一部で実施されている差込み式やねじ込み式などの機械式継手を採用することが考えられている。
【0004】
溶接によらない鋼管杭の継手構造として、第1杭の端部に延設される係合部材と、第2杭の端部に延設される被係合部材とを備え、係合部材及び被係合部材の少なくとも一方は弾性を有しており、係合部材と被係合部材が当接して相対的に変形し、第1杭と第2杭が接合されるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、嵌合雌部の内周にその端面から軸方向に形成された軸方向溝部分とその下部に連なって周方向に形成された周方向溝部分とからなる複数の係合溝が周方向に間隔を置いて設けられ、嵌合雄部の外周には嵌合雌部との嵌合に伴って係合溝の軸方向溝部分に嵌入する複数の係合突起が周方向に間隔を置いて設けられるとともに、各係合突起の上方にあってかつ該突起と軸方向に整列するように回転阻止部材が仮止めされ、嵌合雌部に嵌合された嵌合雄部を回転させると、係合突起が係合溝の周方向溝部分に嵌入するとともに、回転阻止部材の仮止めが解除されて該回転阻止部材が軸方向溝部分内を落下して、周方向溝部分の入口部を閉鎖するようにした鋼管杭の継手構造がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−3463号公報
【特許文献2】特開2003−90034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋼管矢板は、隣接する鋼管矢板と連結するために、通常、鋼管本体の外壁面の軸方向に対向して、ほぼ全長にわたって例えば断面C字状の横連結継手(図4参照)が設けられており、上記のような機械式の鋼管継手部材により上下の鋼管矢板を接合した場合は、この鋼管継手部材の外壁面に鋼管本体に設けた横連結継手に対応してディスタントピースを設ける必要がある。
【0008】
ところで、特許文献1、2のような差込み式あるいはねじ込み式継手部材は、鋼管本体以上の強度を確保するために、一般に高張力鋼材(強度600N/mm2以上)が用いられているため、鋼管継手部材の外壁面に溶接によりディスタントピースを接合するにあたっては、予熱、後熱などの特別の配慮をしなければならない。
しかしながら、施工現場では、予熱、後熱などの処理はその手間が繁雑であり、ディスタントピースの鋼管継手部材への溶接に時間がかかるばかりでなく、温度管理も難かしいため、きわめて困難であった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、鋼管矢板の施工現場において、鋼管継手部材に容易かつ短時間にディスタントピースを接合することのできる鋼管矢板の継手構造及び鋼管矢板の施工方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鋼管矢板の継手構造は、外周に横連結継手が設けられた鋼管矢板と、高張力鋼材からなり前記鋼管矢板を接合する鋼管継手部材と、前記鋼管矢板の横連結継手と同一線上において前記鋼管継手部材に接合されるディスタントピースとを有し、前記鋼管継手部材に普通鋼材からなる取付部材を接合し、取付部材に前記ディスタントピースを溶接により接合するようにしたものである。
【0011】
また、上記の鋼管継手部材を、外側継手管と該外側継手管に嵌入して一体に結合される内側継手管とによって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したものである。
【0012】
また、上記の鋼管継手部材を、めねじを有する外側継手管と該外側継手管のめねじに螺入するおねじを有する内側継手管によって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したものである。
【0013】
また、本発明に係る鋼管矢板の施工方法は、外周に横連結継手が設けられ上端部に請求項2又は3の外側継手管若しくは内側継手管が取付けられた複数の下鋼管矢板と、外周に横連結継手が設けられ下端部に請求項2又は3の内側継手管若しくは外側継手管が取付けられた複数の上鋼管矢板とを有し、前記下鋼管矢板を地盤中に貫入して前記上鋼管矢板を接合し、該接合部にディスタントピースを接合して前記上鋼管矢板と下鋼管矢板を地盤中に貫入する工程と、該地盤中に貫入された上鋼管矢板の横連結継手に次の下鋼管矢板の横連結継手を嵌合して地盤中に貫入し、該下鋼管矢板に次の上鋼管矢板を接合して該接合部にディスタントピースを接合し、該次の下鋼管矢板と上鋼管矢板を地盤中に貫入する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼管矢板の継手構造によれば、高張力鋼材からなる鋼管継手部材に、あらかじめ工場等において普通鋼材からなる取付板を接合しておき、この取付板に施工現場でディスタントピースを溶接により接合するようにしたので、接合にあたって予熱や後熱などの配慮が不要であり、このためディスタントピースの溶接作業を容易かつ短時間に行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る鋼管矢板の施工方法は、施工にあたって上記の継手構造を採用することにより、鋼管矢板の接合に要する作業時間を大幅に低減することができ、また天候にも左右されないので、工期を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る鋼管矢板の継手構造の一例を示す斜視図、図2は図1の要部の断面図である。
本実施の形態に係る継手構造を構成する鋼管継手部材Jは、一方の鋼管矢板30に溶接により接合される外側継手管1と、他方の鋼管矢板40に溶接により接合され、外側継手管1に嵌入(差込み)されて結合される内側継手管2とから構成されている。
【0017】
50は鋼管矢板30,40を構成する鋼管本体31,41の軸方向の外周に、それぞれ180°隔てて対向して溶接により接合された横連結継手で、隣接する鋼管矢板に設けた横連結継手50と嵌合して連結される。図には、軸方向にスリット状の開口部51を有する断面C字状の横連結継手50(図4参照)が示してある。
【0018】
外側継手管1は、鋼管矢板30を構成する鋼管本体31と同径の円筒状に形成され、基部側(鋼管矢板30側)の内周面には深さhで拡径された凹陥部11が設けられており、この凹陥部11には一定の間隔でボルト挿通穴12が設けられている。
15は例えばSM400,SM490等の普通鋼材からなり、外側継手管1の外周面の軸方向に180°隔てて対向して接合された取付板で、あらかじめ工場等において溶接により外側継手管1に接合されている。
【0019】
内側継手管2はほぼ円筒状に形成されて、基端側(鋼管矢板40側)には鋼管矢板40を構成する鋼管本体41と同径の接合部21が形成されており、接合部21の下部には段部22を介して縮径部23が形成されている。この縮径部23には一定の間隔で軸方向にスリット24が設けられており、このスリット24により複数に分割されて分割片25が形成されている。そして、各分割片25の先端部寄りには、高さhで外方に突出した段部26が形成されており、また、下端部近傍には外側継手管1のボルト挿通穴12に対応してねじ穴27が設けられている。
【0020】
上記のように構成した鋼管継手部材Jにおいて、外側継手管1と内側継手管2を接合する場合は、内側継手管2を自重又は自重と圧下力により外側継手管1内に挿入する。これにより、内側継手管2の各分割片25は内側(縮径方向)に撓んで外側継手管1内に嵌入され、その段部22が外側継手管1の上端部14に当接して停止する。
このとき、図3に示すように、内側継手管2の段部26は外側継手管1の凹陥部11の上縁段部13と係止し、各ボルト挿通穴12とねじ穴27の位置が整合する。この状態で、各ボルト挿通穴12に挿通したボルト6をねじ穴27に螺入して、各分割片25を外側継手管1の内壁側に引寄せて固定する。
【0021】
このようにして外側継手管1と内側継手管2が接合された鋼管継手部材Jにおいては、管軸方向の圧縮荷重に対しては、外側継手管1の上端部14と内側継手管2の段部22との当接部によって抵抗し、引張り荷重に対しては、外側継手管1の上縁段部13と内側継手管2の段部26との当接部で抵抗する。なお、強力な引張力が作用した場合は、内側継手管2の分割片25が内側に撓んで、段部26が上縁段部13から外れるおそれがあるので、ボルト6がこれを防止する。つまり、ボルト6はあくまで補助手段である。
【0022】
次に、上記のように構成した鋼管継手部材Jにより、鋼管矢板30と鋼管矢板40を接合する手順の一例について説明する。
図4に示すように、鋼管矢板30を構成する鋼管本体31の外周の軸方向には、対向しかつ開口部51を互いに異なる方向に向けて横連結継手50a,50b(以下、単に50と記すことがある)が設けられており、また、鋼管本体31の上端部には、取付板15が接合された外側継手管1が、取付板15が横連結継手50a,50bの延長線上に位置するように、溶接により接合されている。
【0023】
また、同様に、横連結継手50a,50bが設けられた鋼管矢板40を構成する鋼管本体41の下端部には、内側継手管2が溶接により接合されている。
これら横連結継手50の鋼管本体31,41への接合、外側継手管1と内側継手管2の鋼管本体31,41への接合、及び外側継手管1への取付板15の接合は、あらかじめ工場等において溶接により行われるので、予熱や後熱などの処理が容易である。
【0024】
このような鋼管矢板30,40を接合するにあたっては、先ず、図5に示すように、鋼管矢板40の内側継手管2を、鋼管矢板30の外側継手管1に嵌入し、ボルト6で固定する。これにより、図3で説明したように、両者は一体に結合される。このとき、上下の横連結継手50aと50a、50bと50bは、その開口部51がそれぞれ同一線上に位置する。
【0025】
ついで、長さH1が上下の横連結継手50間の間隔Hとほぼ等しく、かつ同じ構造の普通鋼材からなるディスタントピース52を、上下の横連結継手50の間に挿入し、その開口部53を上下の横連結継手50の開口部51と整合させて取付板15に当接し、溶接により接合する。なお、図5(b)に示すように、取付板15の上下方向に、ディスタントピース52の外径とほぼ等しいか又はこれより若干大きい円弧状の凹部16を設け、この凹部16にディスタントピース52を当接して、溶接により接合してもよい。
【0026】
このときの状態を図6に示す。鋼管矢板30と40は外側継手管1と内側継手管2とにより一体かつ強固に接合され、また、ディスタントピース52は、上下の横連結継手50と連続し、かつ、その開口部53も同一線上に位置する。この場合、ディスタントピース52の外側継手管30への接合にあたっては、あらかじめ外側継手管1に設けた普通鋼材からなる取付板15に接合すればよく、普通鋼材どうしの溶接なので予熱や後熱などの特別な配慮をする必要がなく、作業現場において容易に溶接接合することができる。
【0027】
図7は本実施の形態に係る鋼管継手部材Jの他の例の斜視図である。本例においては、取付板15を十字状に形成してその腕部に外側継手管1のボルト挿通穴12に対応してボルト挿通穴17を設けたものである。そして、外側継手管1に内側継手管2を嵌入して、図3に示すように、両者をボルト6で一体に結合する際に、このボルト挿通穴17から外側継手管1のボルト挿通穴12に挿通したボルト6を、内側継手管2のねじ穴27に螺入することにより、一体に固定するようにしたものである。なお、本例の取付板15においても、図5(b)で説明したように、上下方向に円弧状の凹部16を設けてもよい。
【0028】
上記の説明では、鋼管矢板30に外側継手管1を、鋼管矢板40に内側継手管2を接合した場合を示したが、鋼管矢板30に内側継手管2を、鋼管矢板40に外側継手管1を接合してもよい。
また、内側継手管2にスリット24を設けて縮径機能を付与した場合を示したが、外側継手管1にスリットを設けて拡径機能を付与し、内側継手管2を嵌入したのち縮径させ、ボルト6で固定するようにしてもよい。
さらに、取付板15を外側継手管1に設けた場合を示したが、内側継手管2に設けてもよく、あるいは外側継手管1と内側継手管2の両者に設けてもよい。
【0029】
さらに、図1及び図7の差込式の鋼管継手部材Jに本発明を実施した場合を示したが、これに限定するものではなく、他の構造の差込式の継手部材にも本発明を実施することができる。
また、本発明は、外側継手管にめねじを設け、内側継手管にこのめねじに螺入するおねじを設けたねじ込み式の継手部材にも実施することができる。ただし、この場合は、外側継手管に内側継手管を接合したときに、上下の鋼管矢板に設けた横連結継手が同一線上に位置するような対策を講ずることが必要である。
【0030】
さらに、上記の説明では、鋼管矢板30,40に、図8(a)に示すようなC字状の横連結継手50を設けた場合を示したが、例えば、図8(b)に示すように、鋼管本体31(又は41)の一方の側にC字状の横連結継手50を取付け、他方の側にこれに嵌合するT字状の横連結継手54を取付けてもよい。また、図8(c)に示すように、鋼管本体31(又は41)の一方の側にT字状の横連結継手54を取付け、他方の側に開口部を隔てて一対の山形鋼を取付けるなど、適宜形状のものを用いることができる。
【0031】
本実施の形態によれば、高張力鋼材からなる機械式継手の鋼管継手部材Jに、あらかじめ工場等において、普通鋼材からなる取付板15を接合しておき、この取付板15に施工現場でディスタントピース52を溶接により接合するようにしたので、接合にあたって予熱や後熱などの配慮が不要であり、このため、鋼管継手部材Jへのディスタントピース52の溶接作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0032】
[実施の形態2]
本実施の形態は、実施の形態1に係る鋼管継手部材Jによって接合する鋼管矢板の施工方法に関するもので、図9〜図11によりその工程の一例を説明する。
先ず、図9(a)に示すように、取付板15が接合された外側継手管1が上端部に接合され、外周面に横連結継手50a,50bが設けられた鋼管矢板30(以下、下鋼管矢板という)を、打設等により地盤中に貫入する。このとき、外側継手管1及び横連結継手50a,50bの上部は地表Gから露出させておく。
【0033】
次に、図9(b)に示すように、下端部に内側継手管2が接合され、外周に横連結継手50a,50bが設けられた鋼管矢板40(以下、上鋼管矢板という)を、クレーン等で吊下げて下鋼管矢板30上に位置させ、横連結継手50a,50bを下鋼管矢板30の横連結継手50a,50bとそれぞれ位置合わせする。
そして、図9(c)に示すように、上鋼管矢板30を下降させてその内側継手管2を外側継手管1に嵌入し、ボルト6(図3参照)により一体に結合する。
【0034】
次に、図9(d)に示すように、上下の鋼管矢板30,40の横連結継手50aと50a、50bと50bの間にディスタントピース52をそれぞれ挿入し、その開口部53を上下の横連結継手50a,50bと整合させ、図5で説明した要領により、外側継手管1に設けた取付板15に溶接により接合する。
【0035】
この状態で、図10(e)に示すように、鋼管継手部材Jで接合されて一体化された下鋼管矢板30と上鋼管矢板40(以下、これを継鋼管矢板JPという)を、打設等により地中に貫入する。このとき、上鋼管矢板40の上部を地表Gから若干露出させておく。
【0036】
次に、埋設された下鋼管矢板30と同じ構造の第2の下鋼管矢板30aをクレーン等で吊上げて、埋設された上鋼管矢板40に隣接して位置させ、ついで、図10(f)に示すように、第2の下鋼管矢板30aを下降させて、その横連結継手50aを上鋼管矢板40の横連結継手50bに嵌合させる(図8(a)参照)。そして、打設等により第2の下鋼管矢板30aを上鋼管矢板40に沿って貫入し、外側継手管1及び横連結継手50a,50bの上部を、埋設された上鋼管矢板40の上端部より上方に位置させた状態で、貫入を中止する。
【0037】
次に、図10(g)に示すように、埋設された上鋼管矢板40と同じ構造の第2の上鋼管矢板40aを、クレーン等で吊下げて第2の下鋼管矢板30a上に位置させ、図11(h)に示すように、先に説明した図9(c)の場合と同じ要領で、第2の上鋼管矢板40aを第2の下鋼管矢板30aに接合する。そして、図11(i)に示すように、図9(d)の場合と同様に、外側継手管1に設けた取付板15にディスタントピース52を溶接により接合する。
【0038】
ついで、このようにして接合された第2の継鋼管矢板JPaの横連結継手50aを、先に埋設した継鋼管矢板JPの横連結継手50bに嵌合しつつ、打設等により地中に貫入する。このとき、ディスタントピース52は、取付板15に接合されているため上下の横連結継手50より取付板15の板厚分だけ外方に突出しているが、図8(a)に示すように、隣接する継鋼管矢板JP,JPaの横連結継手50は、余裕をもって嵌合するようになっているので、支障はない。
【0039】
これにより、図11(j)に示すように、先に埋設された継鋼管矢板JPと第2の継鋼管矢板JPaは、横連結継手50により連結され、並列して地盤中に埋設される。以下、同様にして第3、第4、…の継鋼管矢板JPb,JPc,…を前段の継鋼管矢板の横連結継手50に嵌合して順次埋設することにより、鋼管矢板基礎を造成することができる。なお、上記の説明では、2本の鋼管矢板30,40を鋼管継手部材Jで接合した場合を示したが、設置する場所によっては、3本又はそれ以上の鋼管矢板を接合することもあり、この場合も上記に準じて施工すればよい。
【0040】
図12は上記のようにして造成した鋼管矢板基礎の一例を示す説明図で、図12(a)は円形状、図12(b)は矩形状、図12(c)は小判形状、図12(d)は楕円形状の中に隔壁を設けたものである。
この場合、横連結継手50は、図8に示すように、隣接する継鋼管矢板JPの横連結継手50との嵌合に余裕があるので、180°隔てた位置に対向して設けた場合でも連結に支障を来すことはない。
【0041】
しかし、例えば矩形状に組込む場合は、四隅に位置する継鋼管矢板JPの横連結継手50は、90°の間隔で設ける必要があり、また、隔壁を設ける場合は、これに対応する継鋼管矢板JPは、90°間隔で3個の横連結継手50を設ける必要がある等、鋼管矢板基礎の形状に応じて、横連結継手50の取付位置を適宜変更することができる。
なお、図12はその一例を示すもので、継鋼管矢板を適宜建込んで横連結継手50を連結することにより、任意の閉鎖形状やオープン形状の鋼管矢板基礎を造成することができる。
【0042】
本実施の形態によれば、鋼管矢板基礎を構築する多数の下鋼管矢板30と上鋼管矢板40を鋼管継手部材Jで接合するにあたり、鋼管継手部材Jにあらかじめ普通鋼材からなる取付板15を設けたので、ディスタントピース52を温度管理等を考慮したり天候などに左右されることがなく、短時間で簡単に接合することができる。このため作業時間が大幅に低減され、これにより工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1に係る鋼管矢板の継手構造の斜視説明図である。
【図2】図1の鋼管継手部材の要部の縦断面図である。
【図3】図1の鋼管継手部材を接合した状態を示す要部の縦断面図である。
【図4】鋼管矢板の説明図、平面図及び横連結継手の平面図である。
【図5】鋼管継手部材の接合手順の説明図である。
【図6】鋼管継手部材を接合した状態を示す説明図である。
【図7】実施の形態1の鋼管継手部材の他の例を示す斜視説明図である。
【図8】横連結継手の例を示す説明図である。
【図9】実施の形態1の鋼管継手部材で接合される鋼管矢板の施工手順の説明図である。
【図10】実施の形態1の鋼管継手部材で接合される鋼管矢板の施工手順の説明図である。
【図11】実施の形態1の鋼管継手部材で接合される鋼管矢板の施工手順の説明図である。
【図12】鋼管矢板で造成される鋼管矢板基礎の例の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 外側継手管、2 内側継手管、15 取付板、30,40 鋼管矢板、50(50a,50b) 横連結継手、51 開口部、52 ディスタントピース、J 鋼管継手部材、JP 継鋼管矢板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、護岸工事あるいは河口や湾岸線等の大水深、軟弱地盤上に計画される橋梁基礎等の基礎構造物に適用される鋼管矢板の継手構造及び鋼管矢板の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼管矢板の施工においては、打設を要する深度に到達するまでに複数本の鋼管矢板を接続して施工される。従来、このような鋼管矢板の継ぎ作業は、施工現場において溶接によって行われていたが、品質が安定しないことや特殊技術が必要とされること、作業時間が長くまた天候に左右されるために工程に問題が生じ易いなどの問題があった。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために、溶接に代わる鋼管矢板の継手手段として、鋼管杭の継手として提案され一部で実施されている差込み式やねじ込み式などの機械式継手を採用することが考えられている。
【0004】
溶接によらない鋼管杭の継手構造として、第1杭の端部に延設される係合部材と、第2杭の端部に延設される被係合部材とを備え、係合部材及び被係合部材の少なくとも一方は弾性を有しており、係合部材と被係合部材が当接して相対的に変形し、第1杭と第2杭が接合されるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、嵌合雌部の内周にその端面から軸方向に形成された軸方向溝部分とその下部に連なって周方向に形成された周方向溝部分とからなる複数の係合溝が周方向に間隔を置いて設けられ、嵌合雄部の外周には嵌合雌部との嵌合に伴って係合溝の軸方向溝部分に嵌入する複数の係合突起が周方向に間隔を置いて設けられるとともに、各係合突起の上方にあってかつ該突起と軸方向に整列するように回転阻止部材が仮止めされ、嵌合雌部に嵌合された嵌合雄部を回転させると、係合突起が係合溝の周方向溝部分に嵌入するとともに、回転阻止部材の仮止めが解除されて該回転阻止部材が軸方向溝部分内を落下して、周方向溝部分の入口部を閉鎖するようにした鋼管杭の継手構造がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−3463号公報
【特許文献2】特開2003−90034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋼管矢板は、隣接する鋼管矢板と連結するために、通常、鋼管本体の外壁面の軸方向に対向して、ほぼ全長にわたって例えば断面C字状の横連結継手(図4参照)が設けられており、上記のような機械式の鋼管継手部材により上下の鋼管矢板を接合した場合は、この鋼管継手部材の外壁面に鋼管本体に設けた横連結継手に対応してディスタントピースを設ける必要がある。
【0008】
ところで、特許文献1、2のような差込み式あるいはねじ込み式継手部材は、鋼管本体以上の強度を確保するために、一般に高張力鋼材(強度600N/mm2以上)が用いられているため、鋼管継手部材の外壁面に溶接によりディスタントピースを接合するにあたっては、予熱、後熱などの特別の配慮をしなければならない。
しかしながら、施工現場では、予熱、後熱などの処理はその手間が繁雑であり、ディスタントピースの鋼管継手部材への溶接に時間がかかるばかりでなく、温度管理も難かしいため、きわめて困難であった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、鋼管矢板の施工現場において、鋼管継手部材に容易かつ短時間にディスタントピースを接合することのできる鋼管矢板の継手構造及び鋼管矢板の施工方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鋼管矢板の継手構造は、外周に横連結継手が設けられた鋼管矢板と、高張力鋼材からなり前記鋼管矢板を接合する鋼管継手部材と、前記鋼管矢板の横連結継手と同一線上において前記鋼管継手部材に接合されるディスタントピースとを有し、前記鋼管継手部材に普通鋼材からなる取付部材を接合し、取付部材に前記ディスタントピースを溶接により接合するようにしたものである。
【0011】
また、上記の鋼管継手部材を、外側継手管と該外側継手管に嵌入して一体に結合される内側継手管とによって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したものである。
【0012】
また、上記の鋼管継手部材を、めねじを有する外側継手管と該外側継手管のめねじに螺入するおねじを有する内側継手管によって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したものである。
【0013】
また、本発明に係る鋼管矢板の施工方法は、外周に横連結継手が設けられ上端部に請求項2又は3の外側継手管若しくは内側継手管が取付けられた複数の下鋼管矢板と、外周に横連結継手が設けられ下端部に請求項2又は3の内側継手管若しくは外側継手管が取付けられた複数の上鋼管矢板とを有し、前記下鋼管矢板を地盤中に貫入して前記上鋼管矢板を接合し、該接合部にディスタントピースを接合して前記上鋼管矢板と下鋼管矢板を地盤中に貫入する工程と、該地盤中に貫入された上鋼管矢板の横連結継手に次の下鋼管矢板の横連結継手を嵌合して地盤中に貫入し、該下鋼管矢板に次の上鋼管矢板を接合して該接合部にディスタントピースを接合し、該次の下鋼管矢板と上鋼管矢板を地盤中に貫入する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼管矢板の継手構造によれば、高張力鋼材からなる鋼管継手部材に、あらかじめ工場等において普通鋼材からなる取付板を接合しておき、この取付板に施工現場でディスタントピースを溶接により接合するようにしたので、接合にあたって予熱や後熱などの配慮が不要であり、このためディスタントピースの溶接作業を容易かつ短時間に行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る鋼管矢板の施工方法は、施工にあたって上記の継手構造を採用することにより、鋼管矢板の接合に要する作業時間を大幅に低減することができ、また天候にも左右されないので、工期を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る鋼管矢板の継手構造の一例を示す斜視図、図2は図1の要部の断面図である。
本実施の形態に係る継手構造を構成する鋼管継手部材Jは、一方の鋼管矢板30に溶接により接合される外側継手管1と、他方の鋼管矢板40に溶接により接合され、外側継手管1に嵌入(差込み)されて結合される内側継手管2とから構成されている。
【0017】
50は鋼管矢板30,40を構成する鋼管本体31,41の軸方向の外周に、それぞれ180°隔てて対向して溶接により接合された横連結継手で、隣接する鋼管矢板に設けた横連結継手50と嵌合して連結される。図には、軸方向にスリット状の開口部51を有する断面C字状の横連結継手50(図4参照)が示してある。
【0018】
外側継手管1は、鋼管矢板30を構成する鋼管本体31と同径の円筒状に形成され、基部側(鋼管矢板30側)の内周面には深さhで拡径された凹陥部11が設けられており、この凹陥部11には一定の間隔でボルト挿通穴12が設けられている。
15は例えばSM400,SM490等の普通鋼材からなり、外側継手管1の外周面の軸方向に180°隔てて対向して接合された取付板で、あらかじめ工場等において溶接により外側継手管1に接合されている。
【0019】
内側継手管2はほぼ円筒状に形成されて、基端側(鋼管矢板40側)には鋼管矢板40を構成する鋼管本体41と同径の接合部21が形成されており、接合部21の下部には段部22を介して縮径部23が形成されている。この縮径部23には一定の間隔で軸方向にスリット24が設けられており、このスリット24により複数に分割されて分割片25が形成されている。そして、各分割片25の先端部寄りには、高さhで外方に突出した段部26が形成されており、また、下端部近傍には外側継手管1のボルト挿通穴12に対応してねじ穴27が設けられている。
【0020】
上記のように構成した鋼管継手部材Jにおいて、外側継手管1と内側継手管2を接合する場合は、内側継手管2を自重又は自重と圧下力により外側継手管1内に挿入する。これにより、内側継手管2の各分割片25は内側(縮径方向)に撓んで外側継手管1内に嵌入され、その段部22が外側継手管1の上端部14に当接して停止する。
このとき、図3に示すように、内側継手管2の段部26は外側継手管1の凹陥部11の上縁段部13と係止し、各ボルト挿通穴12とねじ穴27の位置が整合する。この状態で、各ボルト挿通穴12に挿通したボルト6をねじ穴27に螺入して、各分割片25を外側継手管1の内壁側に引寄せて固定する。
【0021】
このようにして外側継手管1と内側継手管2が接合された鋼管継手部材Jにおいては、管軸方向の圧縮荷重に対しては、外側継手管1の上端部14と内側継手管2の段部22との当接部によって抵抗し、引張り荷重に対しては、外側継手管1の上縁段部13と内側継手管2の段部26との当接部で抵抗する。なお、強力な引張力が作用した場合は、内側継手管2の分割片25が内側に撓んで、段部26が上縁段部13から外れるおそれがあるので、ボルト6がこれを防止する。つまり、ボルト6はあくまで補助手段である。
【0022】
次に、上記のように構成した鋼管継手部材Jにより、鋼管矢板30と鋼管矢板40を接合する手順の一例について説明する。
図4に示すように、鋼管矢板30を構成する鋼管本体31の外周の軸方向には、対向しかつ開口部51を互いに異なる方向に向けて横連結継手50a,50b(以下、単に50と記すことがある)が設けられており、また、鋼管本体31の上端部には、取付板15が接合された外側継手管1が、取付板15が横連結継手50a,50bの延長線上に位置するように、溶接により接合されている。
【0023】
また、同様に、横連結継手50a,50bが設けられた鋼管矢板40を構成する鋼管本体41の下端部には、内側継手管2が溶接により接合されている。
これら横連結継手50の鋼管本体31,41への接合、外側継手管1と内側継手管2の鋼管本体31,41への接合、及び外側継手管1への取付板15の接合は、あらかじめ工場等において溶接により行われるので、予熱や後熱などの処理が容易である。
【0024】
このような鋼管矢板30,40を接合するにあたっては、先ず、図5に示すように、鋼管矢板40の内側継手管2を、鋼管矢板30の外側継手管1に嵌入し、ボルト6で固定する。これにより、図3で説明したように、両者は一体に結合される。このとき、上下の横連結継手50aと50a、50bと50bは、その開口部51がそれぞれ同一線上に位置する。
【0025】
ついで、長さH1が上下の横連結継手50間の間隔Hとほぼ等しく、かつ同じ構造の普通鋼材からなるディスタントピース52を、上下の横連結継手50の間に挿入し、その開口部53を上下の横連結継手50の開口部51と整合させて取付板15に当接し、溶接により接合する。なお、図5(b)に示すように、取付板15の上下方向に、ディスタントピース52の外径とほぼ等しいか又はこれより若干大きい円弧状の凹部16を設け、この凹部16にディスタントピース52を当接して、溶接により接合してもよい。
【0026】
このときの状態を図6に示す。鋼管矢板30と40は外側継手管1と内側継手管2とにより一体かつ強固に接合され、また、ディスタントピース52は、上下の横連結継手50と連続し、かつ、その開口部53も同一線上に位置する。この場合、ディスタントピース52の外側継手管30への接合にあたっては、あらかじめ外側継手管1に設けた普通鋼材からなる取付板15に接合すればよく、普通鋼材どうしの溶接なので予熱や後熱などの特別な配慮をする必要がなく、作業現場において容易に溶接接合することができる。
【0027】
図7は本実施の形態に係る鋼管継手部材Jの他の例の斜視図である。本例においては、取付板15を十字状に形成してその腕部に外側継手管1のボルト挿通穴12に対応してボルト挿通穴17を設けたものである。そして、外側継手管1に内側継手管2を嵌入して、図3に示すように、両者をボルト6で一体に結合する際に、このボルト挿通穴17から外側継手管1のボルト挿通穴12に挿通したボルト6を、内側継手管2のねじ穴27に螺入することにより、一体に固定するようにしたものである。なお、本例の取付板15においても、図5(b)で説明したように、上下方向に円弧状の凹部16を設けてもよい。
【0028】
上記の説明では、鋼管矢板30に外側継手管1を、鋼管矢板40に内側継手管2を接合した場合を示したが、鋼管矢板30に内側継手管2を、鋼管矢板40に外側継手管1を接合してもよい。
また、内側継手管2にスリット24を設けて縮径機能を付与した場合を示したが、外側継手管1にスリットを設けて拡径機能を付与し、内側継手管2を嵌入したのち縮径させ、ボルト6で固定するようにしてもよい。
さらに、取付板15を外側継手管1に設けた場合を示したが、内側継手管2に設けてもよく、あるいは外側継手管1と内側継手管2の両者に設けてもよい。
【0029】
さらに、図1及び図7の差込式の鋼管継手部材Jに本発明を実施した場合を示したが、これに限定するものではなく、他の構造の差込式の継手部材にも本発明を実施することができる。
また、本発明は、外側継手管にめねじを設け、内側継手管にこのめねじに螺入するおねじを設けたねじ込み式の継手部材にも実施することができる。ただし、この場合は、外側継手管に内側継手管を接合したときに、上下の鋼管矢板に設けた横連結継手が同一線上に位置するような対策を講ずることが必要である。
【0030】
さらに、上記の説明では、鋼管矢板30,40に、図8(a)に示すようなC字状の横連結継手50を設けた場合を示したが、例えば、図8(b)に示すように、鋼管本体31(又は41)の一方の側にC字状の横連結継手50を取付け、他方の側にこれに嵌合するT字状の横連結継手54を取付けてもよい。また、図8(c)に示すように、鋼管本体31(又は41)の一方の側にT字状の横連結継手54を取付け、他方の側に開口部を隔てて一対の山形鋼を取付けるなど、適宜形状のものを用いることができる。
【0031】
本実施の形態によれば、高張力鋼材からなる機械式継手の鋼管継手部材Jに、あらかじめ工場等において、普通鋼材からなる取付板15を接合しておき、この取付板15に施工現場でディスタントピース52を溶接により接合するようにしたので、接合にあたって予熱や後熱などの配慮が不要であり、このため、鋼管継手部材Jへのディスタントピース52の溶接作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0032】
[実施の形態2]
本実施の形態は、実施の形態1に係る鋼管継手部材Jによって接合する鋼管矢板の施工方法に関するもので、図9〜図11によりその工程の一例を説明する。
先ず、図9(a)に示すように、取付板15が接合された外側継手管1が上端部に接合され、外周面に横連結継手50a,50bが設けられた鋼管矢板30(以下、下鋼管矢板という)を、打設等により地盤中に貫入する。このとき、外側継手管1及び横連結継手50a,50bの上部は地表Gから露出させておく。
【0033】
次に、図9(b)に示すように、下端部に内側継手管2が接合され、外周に横連結継手50a,50bが設けられた鋼管矢板40(以下、上鋼管矢板という)を、クレーン等で吊下げて下鋼管矢板30上に位置させ、横連結継手50a,50bを下鋼管矢板30の横連結継手50a,50bとそれぞれ位置合わせする。
そして、図9(c)に示すように、上鋼管矢板30を下降させてその内側継手管2を外側継手管1に嵌入し、ボルト6(図3参照)により一体に結合する。
【0034】
次に、図9(d)に示すように、上下の鋼管矢板30,40の横連結継手50aと50a、50bと50bの間にディスタントピース52をそれぞれ挿入し、その開口部53を上下の横連結継手50a,50bと整合させ、図5で説明した要領により、外側継手管1に設けた取付板15に溶接により接合する。
【0035】
この状態で、図10(e)に示すように、鋼管継手部材Jで接合されて一体化された下鋼管矢板30と上鋼管矢板40(以下、これを継鋼管矢板JPという)を、打設等により地中に貫入する。このとき、上鋼管矢板40の上部を地表Gから若干露出させておく。
【0036】
次に、埋設された下鋼管矢板30と同じ構造の第2の下鋼管矢板30aをクレーン等で吊上げて、埋設された上鋼管矢板40に隣接して位置させ、ついで、図10(f)に示すように、第2の下鋼管矢板30aを下降させて、その横連結継手50aを上鋼管矢板40の横連結継手50bに嵌合させる(図8(a)参照)。そして、打設等により第2の下鋼管矢板30aを上鋼管矢板40に沿って貫入し、外側継手管1及び横連結継手50a,50bの上部を、埋設された上鋼管矢板40の上端部より上方に位置させた状態で、貫入を中止する。
【0037】
次に、図10(g)に示すように、埋設された上鋼管矢板40と同じ構造の第2の上鋼管矢板40aを、クレーン等で吊下げて第2の下鋼管矢板30a上に位置させ、図11(h)に示すように、先に説明した図9(c)の場合と同じ要領で、第2の上鋼管矢板40aを第2の下鋼管矢板30aに接合する。そして、図11(i)に示すように、図9(d)の場合と同様に、外側継手管1に設けた取付板15にディスタントピース52を溶接により接合する。
【0038】
ついで、このようにして接合された第2の継鋼管矢板JPaの横連結継手50aを、先に埋設した継鋼管矢板JPの横連結継手50bに嵌合しつつ、打設等により地中に貫入する。このとき、ディスタントピース52は、取付板15に接合されているため上下の横連結継手50より取付板15の板厚分だけ外方に突出しているが、図8(a)に示すように、隣接する継鋼管矢板JP,JPaの横連結継手50は、余裕をもって嵌合するようになっているので、支障はない。
【0039】
これにより、図11(j)に示すように、先に埋設された継鋼管矢板JPと第2の継鋼管矢板JPaは、横連結継手50により連結され、並列して地盤中に埋設される。以下、同様にして第3、第4、…の継鋼管矢板JPb,JPc,…を前段の継鋼管矢板の横連結継手50に嵌合して順次埋設することにより、鋼管矢板基礎を造成することができる。なお、上記の説明では、2本の鋼管矢板30,40を鋼管継手部材Jで接合した場合を示したが、設置する場所によっては、3本又はそれ以上の鋼管矢板を接合することもあり、この場合も上記に準じて施工すればよい。
【0040】
図12は上記のようにして造成した鋼管矢板基礎の一例を示す説明図で、図12(a)は円形状、図12(b)は矩形状、図12(c)は小判形状、図12(d)は楕円形状の中に隔壁を設けたものである。
この場合、横連結継手50は、図8に示すように、隣接する継鋼管矢板JPの横連結継手50との嵌合に余裕があるので、180°隔てた位置に対向して設けた場合でも連結に支障を来すことはない。
【0041】
しかし、例えば矩形状に組込む場合は、四隅に位置する継鋼管矢板JPの横連結継手50は、90°の間隔で設ける必要があり、また、隔壁を設ける場合は、これに対応する継鋼管矢板JPは、90°間隔で3個の横連結継手50を設ける必要がある等、鋼管矢板基礎の形状に応じて、横連結継手50の取付位置を適宜変更することができる。
なお、図12はその一例を示すもので、継鋼管矢板を適宜建込んで横連結継手50を連結することにより、任意の閉鎖形状やオープン形状の鋼管矢板基礎を造成することができる。
【0042】
本実施の形態によれば、鋼管矢板基礎を構築する多数の下鋼管矢板30と上鋼管矢板40を鋼管継手部材Jで接合するにあたり、鋼管継手部材Jにあらかじめ普通鋼材からなる取付板15を設けたので、ディスタントピース52を温度管理等を考慮したり天候などに左右されることがなく、短時間で簡単に接合することができる。このため作業時間が大幅に低減され、これにより工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1に係る鋼管矢板の継手構造の斜視説明図である。
【図2】図1の鋼管継手部材の要部の縦断面図である。
【図3】図1の鋼管継手部材を接合した状態を示す要部の縦断面図である。
【図4】鋼管矢板の説明図、平面図及び横連結継手の平面図である。
【図5】鋼管継手部材の接合手順の説明図である。
【図6】鋼管継手部材を接合した状態を示す説明図である。
【図7】実施の形態1の鋼管継手部材の他の例を示す斜視説明図である。
【図8】横連結継手の例を示す説明図である。
【図9】実施の形態1の鋼管継手部材で接合される鋼管矢板の施工手順の説明図である。
【図10】実施の形態1の鋼管継手部材で接合される鋼管矢板の施工手順の説明図である。
【図11】実施の形態1の鋼管継手部材で接合される鋼管矢板の施工手順の説明図である。
【図12】鋼管矢板で造成される鋼管矢板基礎の例の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 外側継手管、2 内側継手管、15 取付板、30,40 鋼管矢板、50(50a,50b) 横連結継手、51 開口部、52 ディスタントピース、J 鋼管継手部材、JP 継鋼管矢板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に横連結継手が設けられた鋼管矢板と、高張力鋼材からなり前記鋼管矢板を接合する鋼管継手部材と、前記鋼管矢板の横連結継手と同一線上において前記鋼管継手部材に接合されるディスタントピースとを有し、
前記鋼管継手部材に普通鋼材からなる取付部材を接合し、該取付部材に前記ディスタントピースを溶接により接合するようにしたことを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
【請求項2】
前記鋼管継手部材を、外側継手管と該外側継手管に嵌入して一体に結合される内側継手管とによって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したことを特徴とする請求項1記載の鋼管矢板の継手構造。
【請求項3】
前記鋼管継手部材が、めねじを有する外側継手管と該外側継手管のめねじに螺入するおねじを有する内側継手管によって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したことを特徴とする請求項1記載の鋼管矢板の継手構造。
【請求項4】
外周に横連結継手が設けられ上端部に請求項2又は3の外側継手管若しくは内側継手管が取付けられた複数の下鋼管矢板と、外周に横連結継手が設けられ下端部に請求項2又は3の内側継手管若しくは外側継手管が取付けられた複数の上鋼管矢板とを有し、
前記下鋼管矢板を地盤中に貫入して前記上鋼管矢板を接合し、該接合部にディスタントピースを接合して前記上鋼管矢板と下鋼管矢板を地盤中に貫入する工程と、
該地盤中に貫入された上鋼管矢板の横連結継手に次の下鋼管矢板の横連結継手を嵌合して地盤中に貫入し、該下鋼管矢板に次の上鋼管矢板を接合して該接合部にディスタントピースを接合し、該次の下鋼管矢板と上鋼管矢板を地盤中に貫入する工程とを有することを特徴とする鋼管矢板の施工方法。
【請求項1】
外周に横連結継手が設けられた鋼管矢板と、高張力鋼材からなり前記鋼管矢板を接合する鋼管継手部材と、前記鋼管矢板の横連結継手と同一線上において前記鋼管継手部材に接合されるディスタントピースとを有し、
前記鋼管継手部材に普通鋼材からなる取付部材を接合し、該取付部材に前記ディスタントピースを溶接により接合するようにしたことを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
【請求項2】
前記鋼管継手部材を、外側継手管と該外側継手管に嵌入して一体に結合される内側継手管とによって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したことを特徴とする請求項1記載の鋼管矢板の継手構造。
【請求項3】
前記鋼管継手部材が、めねじを有する外側継手管と該外側継手管のめねじに螺入するおねじを有する内側継手管によって構成し、前記外側継手管若しくは内側継手管又はその両者の外周に前記取付板を接合したことを特徴とする請求項1記載の鋼管矢板の継手構造。
【請求項4】
外周に横連結継手が設けられ上端部に請求項2又は3の外側継手管若しくは内側継手管が取付けられた複数の下鋼管矢板と、外周に横連結継手が設けられ下端部に請求項2又は3の内側継手管若しくは外側継手管が取付けられた複数の上鋼管矢板とを有し、
前記下鋼管矢板を地盤中に貫入して前記上鋼管矢板を接合し、該接合部にディスタントピースを接合して前記上鋼管矢板と下鋼管矢板を地盤中に貫入する工程と、
該地盤中に貫入された上鋼管矢板の横連結継手に次の下鋼管矢板の横連結継手を嵌合して地盤中に貫入し、該下鋼管矢板に次の上鋼管矢板を接合して該接合部にディスタントピースを接合し、該次の下鋼管矢板と上鋼管矢板を地盤中に貫入する工程とを有することを特徴とする鋼管矢板の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−257715(P2006−257715A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75241(P2005−75241)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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