説明

鋼管部材の内面めっきの腐食量推定方法

【課題】極めて簡単かつ低コストで測定して、当該測定結果から定量的に腐食速度を求め、さらにn年後の腐食量を推定することができる鋼管部材の内面めっきの腐食量推定方法を提供する。
【解決手段】ある期間毎に鋼管部材全体の厚さ及び外面めっき層の厚さを測定し、これを少なくとも4〜5回行い、各回の測定時の鋼管部材全体の厚さの測定値Aから外面めっきの厚さの測定値Bを減じた値を算出してこれを算出値Cとし、第2回以降の各回の測定時に算出した算出値Cから第1回の測定時に算出した算出値Cを減じた値が第1回の測定時に対する第2回以降の測定時の内面めっき厚の減少値でありこの絶対値Dを第2回以降の各回の腐食量とし、これらの腐食量から腐食速度を統計的処理により算出又は推定し、n年後の腐食量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、簡単な方法で鋼管部材の内面に施されているめっきの腐食速度を求め、これによりn年後の内面めっきの腐食量を推定する推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管鉄塔部材の内面めっきの腐食速度に関する知見について現在確立されたものはなく、ある周期で鋼管内面のめっき厚を測定乃至推定して、その測定間隔と腐食量(めっき厚の減少量を腐食量と考える)から算出する方法をとらざるを得ない。めっき厚を測定乃至推定する方法としては以下のものがある。
【0003】
一つはCCDカメラによる目視判定から大まかなめっき厚を推定する方法。他の一つは鋼管内面にめっき厚を測定する装置を挿入し、測定する方法である。
この後者の方法である特許文献1のものは、図4に示すように、調査装置51を鋼管鉄塔の主柱材52の内部中心部へ保持しながら任意の位置で、調査装置51の両端部に備えられたメインリンク53、54を開き、これらの先端を内部壁面55に押し付けることにより、調査装置51は鋼管中心部に保持され、さらに調査装置51を吊り下げているロープ56を固定することにより調査装置51を固定する。この状態で測定部からアーム57を伸ばして内部壁面55へプローブ58を押し当て、当該内部壁面55に施されためっき層の膜厚を測定する。
【0004】
【特許文献1】特開2000−321047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者のCCDカメラによるめっき厚の推定は、目視判断による定性的な評価であり、定量的にめっき厚を推定できない。また、後者の方法は、装置が大掛かりとなり、ある周期で測定する都度、膨大なコストがかかる。そして、腐食速度を推定して、次回の点検時期を定めるまでに膨大なコストがかかる。
【0006】
この発明は、これらの従来技術を考慮し、極めて簡単かつ低コストで測定して、当該測定結果から定量的に腐食速度を求め、さらにn年後の腐食量を推定することができる鋼管部材の内面めっきの腐食量推定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ある期間毎に鋼管部材全体の厚さ及び外面めっき層の厚さを測定し、これを少なくとも4〜5回行い、各回の測定時の鋼管部材全体の厚さの測定値Aから外面めっきの厚さの測定値Bを減じた値を算出してこれを算出値Cとし、第2回以降の各回の測定時に算出した算出値Cから第1回の測定時に算出した算出値Cを減じた値が第1回の測定時に対する第2回以降の測定時の内面めっき厚の減少値でありこの絶対値Dを第2回以降の各回の腐食量とし、これらの腐食量から腐食速度を統計的処理により算出又は推定し、n年後の腐食量を求める、鋼管部材の内面めっき層の腐食量の推定方法とした。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、使用開始時の鋼管部材の内面めっきの厚さを測定しておき、算出した第1回目の内面めっきの厚さと使用開始時の内面めっきの厚さとの差を第1回目の腐食量とする、鋼管部材の内面めっき層の腐食量の推定方法とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば既存のポータブルな器具を用いて板厚測定と外面めっき厚測定を鋼管外面から測定することで、定量的にn年後の鋼管部材の内面めっきの腐食量の推定を、極めて簡易にできる。従って、次回点検時期を設定する際に、膨大なコストを必要とせず、低コストで合理的に次回点検時期を設定できる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、使用開始時の内面めっきの厚さを測定して初期値を出しておけば、より正確な腐食量の推定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明は、ある期間毎に鋼管部材全体の厚さ及び外面めっき層の厚さを測定し、これを少なくとも4〜5回行い、各回の測定時の鋼管部材全体の厚さの測定値Aから外面めっきの厚さの測定値Bを減じた値を算出してこれを算出値Cとし、第2回以降の各回の測定時に算出した算出値Cから第1回の測定時に算出した算出値Cを減じた値が第1回の測定時に対する第2回以降の測定時の内面めっき厚の減少値でありこの絶対値Dを第2回以降の各回の腐食量とし、これらの腐食量から腐食速度を統計的処理により算出又は推定し、n年後の腐食量を求める、鋼管部材の内面めっき層の腐食量の推定方法である。
【実施例1】
【0012】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の鋼管部材の断面平面図である。図2はこの発明の方法によるある期間毎の内面めっきの腐食量を示すグラフ図である。
【0013】
まず、当該鋼管部材Kは、鉄製の鋼管1の外周に外面めっき2を、内周に内面めっき3が施されたものである。そしてこの鋼管部材Kの全体の板厚Aを既存のポータブルな測定器を用いて測定する。この測定器は、磁力式、渦電流式、ベータ線方式、蛍光X線方式と任意のものでよい。また、外面めっき2の厚さBを既存のポータブルな測定器で測定する。この測定器は例えば、電磁式膜厚計を使用する。この測定をある年数ごと、例えば1年毎に5年間測定する。
【0014】
前記測定した板厚A値から外面めっき厚B値を減ずると(鋼管厚+内面めっき厚)C値を得られる。
そこで、1年毎の前記測定により、各年の(鋼管厚+内面めっき厚)C値をそれぞれ算出し、2年以降の算出値Cから1年後の算出値Cを減ずる。すなわち、2年後の算出値C−1年後の算出値C、3年後の算出値C−1年後の算出値C、4年後の算出値C−1年後の算出値C、5年後の算出値C−1年後の算出値Cをそれぞれ算出すると、鋼管厚は不変であるため、2年目以降の1年目に対する内面めっき厚の減少値が出る。これを図2に示す。縦軸に内面めっき厚、横軸に測定年を表示したものである。
【0015】
この内面めっき厚の減少値の絶対値Dを腐食量ととらえる。これを図2に示すように1年目以降の腐食量を各年毎にプロットしていき、各年毎の腐食量の折れ線グラフで表す。このグラフの折れ線から、測定した5年以降の腐食速度を統計的処理により求めることができる。また、基準となる第1年目から各年毎の腐食量の値を算出し、統計的な処理として、これらの値にもっとも近似した近似直線を求める。この近似直線を求める方法としては、例えば、最小二乗法を用いる方法がある。この近似直線を求めることにより、この直線の傾きから腐食速度を算出することができる。
【0016】
このようにして、第1年目から第5年目までの腐食量の変化を統計的処理して腐食速度を求め、この腐食速度から例えば、20年後の腐食量を推定し、20年後までには、当該鋼管部材の内面めっきの補修をするとか、部材自体を取り換える等の処置を予定することができる。
【0017】
また、使用開始時の内面めっき厚を測定するか、基準となる第1年目の測定の際、内面めっき厚を測定しておき、初期値を出しておけば、基準となる前記第1年目の腐食量を算出でき、腐食速度の推定がより正確となる。
【0018】
なお、上記実施例1では、1年目から5年目まで毎年前記測定を行うこととしたが、それに限らず、例えば、1年目から4年目又は6年目まで測定しても良い。また、測定を毎年ではなく、半年、又は2年毎、或いは、不規則に測定しても腐食速度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施例1に使用する鋼管部材の断面平面図である。
【図2】この発明の実施例1の測定年における内面めっき厚の減少量を示すグラフ図である。
【図3】この発明の実施例1の測定年における腐食量の変化を示すグラフ図ある。
【図4】従来の鋼管部材の内面めっき厚の測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 鋼管 2 外面めっき
3 内面めっき K 鋼管部材
A 板厚 B 外面めっき厚
C 鋼管厚+内面めっき厚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある期間毎に鋼管部材全体の厚さ及び外面めっき層の厚さを測定し、これを少なくとも4〜5回行い、各回の測定時の鋼管部材全体の厚さの測定値Aから外面めっきの厚さの測定値Bを減じた値を算出してこれを算出値Cとし、第2回以降の各回の測定時に算出した算出値Cから第1回の測定時に算出した算出値Cを減じた値が第1回の測定時に対する第2回以降の測定時の内面めっき厚の減少値でありこの絶対値Dを第2回以降の各回の腐食量とし、これらの腐食量から腐食速度を統計的処理により算出又は推定し、n年後の腐食量を求めることを特徴とする、鋼管部材の内面めっき層の腐食量の推定方法。
【請求項2】
使用開始時の鋼管部材の内面めっきの厚さを測定しておき、算出した第1回目の内面めっきの厚さと使用開始時の内面めっきの厚さとの差を第1回目の腐食量とすることを特徴とする、請求項1に記載の鋼管部材の内面めっき層の腐食量の推定方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−185795(P2011−185795A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52343(P2010−52343)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】