説明

錐状螺旋杭

【課題】ポール、支柱、住宅の根太を支える束などを支持・固定する錐状螺旋杭とその工法、および該錐状螺旋杭を打ち込むための治工具を提供する。
【解決手段】中空木ネジ状のスクリュー16が形成され、スクリュー16の上部で傾斜段部13が形成されて大径になり、大径部分14の傾斜段部13より内側はスプラインスリーブ15になり、このスプラインスリーブ15に駆動源により回されるスプラインが嵌り合うようにした錐状螺旋杭10を、下端下向きに針37を突き出し、下端の横向きに垂直維持部材31を設けた角柱32と、この角柱32に被嵌した角状短筒33と一体の軸受け34に軸支された上下方向に摺動可能のスライドローラー35と、上記軸受け34から延び水準器40を取り付けたブラケット36と、このブラケット36に取り付けられる減速機22と一体のモーター21と、上記減速機22の出力軸23にスプラインを介して接続される中間軸24とからなる治工具20を用いて地中に打ち込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェンスや道路標識のポール、大形テントの支柱、一般住宅や仮設住宅の根太を支える束などを支持・固定する錐状螺旋杭とその打ち込み法およびそれに用いる治工具に関する。
【背景技術】
【0002】
螺旋杭に関する技術については可成り古くから存在するが、これらの技術は、高層建築物などの基礎杭を成すものであって、その先行技術を調査したところ、螺旋杭そのものの構造は、帯鋼をスパイラル状に巻き回して、その突き合わされる両縁を互いに溶接して筒状に成したものである。
【0003】
また、この螺旋杭の打ち込む技術について見ると、無限軌道車に特別なアタッチメントとともにオーガーを取り付け、これにより縦穴を掘削し、この縦穴に螺旋杭を装入するものであって、まさに高層建築物の基礎用杭打ち技術そのものであり、フェンスや道路標識のポールの立設、大形・小形テントの支柱の固定、一般住宅や仮設住宅の根太を支える束の支持・固定に適する錐状螺旋杭は存在しなかった。
【0004】
一方、フェンスや道路標識のポールの固定は、コンクリートを打って固定しており、大形テントの支柱の固定では、必要な強度を持たせるためにコンクリートを打つか、杭を深く打ち込んでこれに固定しており、一般住宅や仮設住宅の根太を支える束は、床下に束石を配置し、これに束を載せ固定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来工法では、工数と資材および機材を多く必要とするので、より経済的な工法が求められており、これに応えるものとしてフェンスや道路標識のポール、大形テントの支柱、一般住宅や仮設住宅の根太を支える束などを支持・固定する錐状螺旋杭とその工法、および錐状螺旋杭を打ち込むための治工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明は、大形の中空木ネジ状で、下端の錐状部分から上方にスクリューが形成され、スクリューの上部で傾斜段部が形成されて大径になり、大径部分の上端にフランジを一体に設けてなり(請求項1)、上記、大径部分の内側に正逆回転を伝達する(スプライン、フランジ、カップリング等)軸方向継ぎ手を形成し(請求項2)、上記傾斜段部の内側に凹面球座が形成され、中空部分の先端と上端に透孔を形成し(請求項3)、上記錐状螺旋杭のスクリューは、テーパー状中空筒体の表面に、フープを螺旋状に巻き回し溶接一体化(請求項4)し、上記フープは、平板を一定の幅で渦巻き状に裁断したもの(請求項5)である。
【0007】
また、下端に下向きの針を突き出し、下端に横向きの垂直維持部材を設けた角柱と、この角柱に被嵌した角状短筒と一体の軸受けに軸支された上下方向に摺動可能のスライドローラーと、上記軸受けから延び水準器を取り付けたブラケットと、このブラケットに取り付けられる減速機と一体のモーターと、上記減速機の出力軸に軸方向継ぎ手を介して接続される中間軸とからなり(請求項6)、上記減速機と一体のモーターは、ボルトナット、蟻と蟻溝、バヨネットマウントによりブラケットの前端に取り付けられるようにしたもの(請求項7)である。
【0008】
また、円盤の中心線上中央に0からNまでの等間隔目盛りを付した気泡管を配設し、上記中心線に直交する中心線が上記円盤の外周と交わる交点を基点として1/4の外周に0からNの等間隔目盛りを付した水準器と、上記錐状螺旋杭の頂部内径に合わせた外周円と中心孔を同心上に設け、上記外周円と中心孔との間に偏心円を画いて偏心孔とし、この偏心孔の外側をアウタースリーブ、内側をインナースリーブとし、アウタースリーブ上面に、偏心方向中心線に対し、直交する外周円中心線と外周円との交点を指す外向き矢印と、偏心孔の偏心方向中心線に対し、直交する偏心孔中心線と偏心孔との交点を指す内向き矢印とを刻設し、インナースリーブが偏心して最大肉厚となった部分を中点とし、この中点から90度ずつ振り分けにして0からNの等間隔目盛りを表面に刻設したインナースリーブとからなり(請求項8)、上記錐状螺旋杭の垂直度調整用治具において、アウタースリーブとインナースリーブとの接触面を球面接触にした(請求項9)ものである。
【0009】
また、地中にねじ込まれた錐状螺旋杭の頂面に円盤と一体の水準器を載せ、水準器の気泡が中央にくる位置を探り、その位置で円盤外周に刻設した等間隔目盛りの9に合わせて錐状螺旋杭の頂部鍔面にマーキングし、次いで、水準器の気泡の振れが最大になる位置を探り、そのときの気泡が位置する目盛りを確認する第一の工程と、アウタースリーブとインナースリーブとを嵌め合わせた状態で錐状螺旋杭の頂部内孔に嵌め込み、アウタースリーブの外向き矢印と前記錐状螺旋杭の頂部鍔面にチェックしたマーキングとを一致させる第二の工程と、アウタースリーブの内向き矢印に、上記確認した水準器の気泡位置の目盛りと同じインナースリーブの目盛りを一致させる第三の工程とからなる(請求項10)。
【0010】
また、上記錐状螺旋杭を、垂直回転機能を備えた重機、または地質・地盤調査用ボーリングマシーンにより地中に打ち込むことができる。
【発明の効果】
【0011】
上記の如く構成するこの発明によれば、フェンスや道路標識のポールの立設においては、コンクリート打ちをせずにポールを立設することが可能になり、一般住宅や仮設住宅の根太を支える束の支持においては、束石を配置する必要がなくなる。
【0012】
また、仮設するものにあっては、打ち込んだ錐状螺旋杭を抜き取り、繰り返し使用することができ環境保全にも役立てることができる。
【0013】
また、上記錐状螺旋杭を、垂直回転機能を備えた重機、または地質・地盤調査用ボーリングマシーンにより地中に打ち込むときは、強力にかつ垂直に打ち込むことができる。
【0014】
上記錐状螺旋杭の打ち込みに使用する治工具は、可搬の大きさで工事現場に随時持ち込み、錐状螺旋杭を簡単に打ち込むことができ、地中の石ころや地層の変化で、斜めに打ち込まれたときは、垂直度調整用治具により簡単に修正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次にこの発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(a)は、本発明の地中に打ち込んだ錐状螺旋杭の中間部分を省略した一部切り欠き正面図、同(b)はポールを取り付けた地上部の断面図で、図2は、この錐状螺旋杭の上端から中間部分までの断面を示し、内部に、錐状螺旋杭を打ち込むための中間回転軸をスプライン結合した状態を示す断面図である。
【0017】
錐状螺旋杭10の形状は、大形の中空の木ネジ状で先端に錐11が一体に固着され、中空部分の先端と上部には透孔12が設けられ、下端から約2/3上方に傾斜段部13が形成されて大径になり、上記傾斜段部13の大径部分14の下側は鍛造により六角形のスプラインスリーブ15に成形され、このスプラインスリーブ15に減速機22の出力軸23に繋がった中間軸24先端のスプライン25が嵌り合うようになっている。なお、上記錐状螺旋杭10の要部寸法(単位mm)は下記の通りであるが、この寸法は特許請求の範囲を拘束するものではない。

D1=130 L1=820
D2=100 L2=200
D3= 90 L3= 60
D4= 80 L4=500
D5= 25 L5= 60
【0018】
上記錐状螺旋杭10と中間軸24とをスプラインスリーブ15とスプラインによる軸方向継ぎ手としたが、他の公知の軸方向継ぎ手を採用することができ、中間軸を省略して駆動源の出力軸に直接接続することもできる。また、錐状螺旋杭10のスクリュー16はテーパー状中空筒体17の表面にフープ18を螺旋状に巻き回し、溶接一体化したものである。なお、上記フープを、平板を一定の幅で渦巻き状に裁断したものを採用することができる。
【0019】
上記錐状螺旋杭10の傾斜段部13の内部には、道路標識DやフェンスFのポールPを差し込み、垂直度を調整したとき、その下端が円運動をするので、この運動に対応してポールの下端を受けとめる球座を形成することができる。
【実施例2】
【0020】
次に上記錐状螺旋杭10を地中に打ち込むための治工具20について図3を参照しながら説明する。
【0021】
この治工具20は、下端に垂直維持部材31を設けた角柱32と、この角柱32に被嵌した角状短筒33と一体の軸受け34に軸支されたスライドローラー35と、上記軸受け34から延びるブラケット36と、このブラケット36に取り付けられる減速機22と一体のモーター21と、上記減速機22の出力軸23にスプライン(図示せず)を介して接続される中間軸24とからなっている。
【0022】
上記角柱32は、その下端に針37が突き出ており、角柱32の下端から水平に延びる垂直維持部材31を踏み付けることにより、上記針37が地中に刺し込まれ、ブラケット36は、上記スライドローラー35と角状短筒33によって上下方向に摺動可能に支持され、ブラケット36の上面には水準器40が取り付けられて角柱32が垂直になっているかを確認できるようになっていて、ブラケット36の前端には減速機22と一体のモーター21が取り付けられる。
【0023】
減速機22と一体のモーター21は図に現れていないボルト・ナットによりブラケット36の前端に取り付けられるようになっているが、ブラケット36の前端と減速機22の端面との間に蟻と蟻溝やバヨネットマウントを構成し、これらの機構にロック機構を付加したものとすることができる。
【0024】
減速機22の出力軸23の端はスプライン(図示せず)になっており、このスプラインは、中間軸24上端のスプラインスリーブ(図に現れてない)に嵌り回転が伝達されるようになっている。なお、上記出力軸と中間軸との接続は、スプラインの他、公知の軸方向継ぎ手を採用することができ、また、錐状螺旋杭の上端にスプラインを受け入れるアダプターを取り付け、中間軸を省いて減速機の出力軸のスプラインを直接結合させることも出来る。
【0025】
上記中間軸24のスプラインスリーブ(図に現れてない)には、減速機22出力軸のスプライン(図に現れてない)との結合をロックするロックピン(図に現れてない)が付設されていて、スプラインを結合させるとき、上記ロックピンを図示しない押しスプリングの付勢に抗して押し込みロックピンの凹所とスプラインの凸部(図示せず)とを一致させてスプラインを結合し、結合後はロックピンの押し込みを解放してロックする。
【0026】
上記実施例では、垂直維持部材31はブラケット36が延びる方向の反対側に設けているが、3方向、4方向に設けることができる。このとき、足で踏み付ける部分以外の端にレベル調整ネジを設けると支柱が前後・左右に傾いているのをコントロールすることができる。
【0027】
次に上記治工具20を用いて、錐状螺旋杭10を地中に打ち込む作業を説明する。まず錐状螺旋杭10を打ち込むポイントをマーキングし、それに対応して角柱32の下端に設けた針37位置をマーキングし、この位置に角柱32の針37を刺し込み、錐状螺旋杭10を打ち込むポイントに錐状螺旋杭10の先端を一致させ、中間軸24のスプライン25を錐状螺旋杭10のスプラインスリーブ15に嵌め込み、また、中間軸24の上端のスプラインスリーブに減速機22の出力軸23のスプライン(図示せず)を嵌め込んでブラケット36の端に減速機22と一体のモーター21を取り付ける。
【0028】
この状態で水準器40をみて角柱32が垂直になっているか否か、即ち、錐状螺旋杭10が垂直になっているか否かを確認し、モーター21に電源を入れると錐状螺旋杭10が回転し、先端のスクリュー16の推力とブラケット36および減速機22と一体のモーター21の重力により錐状螺旋杭10が打ち込まれる。
【実施例3】
【0029】
上記のように地中に打ち込んだ錐状螺旋杭10は、垂直になっている筈であるが残念ながら地中に存在する石ころや地層の変化によって真っ直ぐに入るとは限らず若干ゆがんで打ち込まれることがあり、この状態の錐状螺旋杭10にフェンスFや道路標識DのポールPを差し込んで立設すると、ポールPが斜めになった状態になる。
【0030】
この実施例は、上記のように斜めに打ち込まれた錐状螺旋杭10の垂直度を修正する手段に係り、円盤41の中心線上中央振り分け位置に、中央を4.5とする0から9(0からN)の等間隔目盛りを付した気泡管43を配設した水準器40と、外径を錐状螺旋杭10の頂部内径に合わせて外周円51を画き、その外周円51の中心を軸にして中心円を画いて中心孔57とし、この外周円51と中心孔57との間で偏心させた中間円を画いて偏心孔53とし、この偏心孔53の外側に形成された筒体をアウタースリーブ55とし、偏心孔53の内側に形成された筒体をインナースリーブ56とする。
【0031】
上記アウタースリーブ55の外周円51の中心点と偏心孔の中心点を通る線に対し、直角に交叉する外周円の中心線が外周円51と交わるところで外向きに矢印52を刻設し、偏心孔53の偏心方向中心線に対し、直角に交叉する偏心孔の中心線が偏心孔53と交わるところで内向きの矢印54を刻設したアウタースリーブ55と、上記アウタースリーブ55の偏心孔53に嵌り、中心孔57を設けたインナースリーブ56の上面で、上記偏心孔53が最大偏心して最大肉厚となった部分を4.5とし、そこから90度ずつ振り分けて、4.5から0、4.5から9(0から9で180度)の目盛り58を刻設したインナースリーブ56とからなる。
【0032】
なお、上記構成のアウタースリーブ55とインナースリーブ56との接触面を図5,図6のように球面接触59とし、傾斜して打ち込まれた錐状螺旋杭と、傾きを修正されたポール間で自在継ぎ手が形成されて、無理なくポールを立設することができる。
【0033】
また、道路標識DやフェンスFのポールPは、用途や設置条件などによって、そのサイズが異なるので、錐状螺旋杭10に刺し込み立設するポールPとインナースリーブ56の中心孔57間のギャップが大小変化するので、このギャップを埋めるギャップ調整用スリーブG(図5(c),図7参照)を用意することができる。
【0034】
次に地中に打ち込まれた錐状螺旋杭10の垂直度調整作業について説明する。地中に打ち込まれた錐状螺旋杭10の頂面に、この頂部に嵌り込む円盤41と一体の水準器40を載せ、水準器40の気泡管43の気泡が中央にくる位置を探り、その位置で円盤41外周に刻設した9の目盛りに合わせて錐状螺旋杭10の頂部鍔面10aにマーキングし、次いで、水準器40の気泡が最大に振れる位置を探り、そのときの気泡が位置する気泡管43の目盛り44を読み取り確認する。
【0035】
次にアウタースリーブ55とインナースリーブ56とを嵌め合わせた状態で錐状螺旋杭10の頂部内孔に嵌め込み、アウタースリーブ55の外側矢印52と前記錐状螺旋杭の頂部鍔面10aにチェックしたマーキングとを一致させる。
【0036】
次にアウタースリーブ55の内側矢印54に、気泡管43の気泡が最大に振れた目盛り44の読みをインナースリーブ56の同じ目盛りに一致させることにより錐状螺旋杭10の傾きが修正される。
【0037】
図7はインナースリーブ56の中心孔57と差し込まれるポールPとのギャップを埋めるギャップ調整用スリーブGの一例を示し、同図(c)は一番外径が大きいポールに対応するもので、次に(b),その次に(a)で最も外径の小さいポールに対応するのが(d)である。なお、同図(e)は、同図(d)の側面図でインナースリーブの中心孔の内径とギャップ調整用スリーブとの寸法差を放射線状のリブGrで埋めるようにしたもので、このようにすれば注型された樹脂が冷えるときの歪みを最小限に止めることができ、樹脂の消費量を節約することができる。
【0038】
図8は、地中に打ち込まれた錐状螺旋杭10に被せるキャップCである。錐状螺旋杭10を打ち込んだ後、すぐにポールPを刺し込み立設しない場合、そのまま放置すると錐状螺旋杭10の内部に土砂が落ち込んだり雨水が流れ込んだりする。これを防止するためのキャップCで錐状螺旋杭10の上部側面にボルト・蝶ナットBによりキャップCのリード部分を固定しておき、必要なときに錐状螺旋杭10の頂部に嵌め込み、使用しないときは外して紛失しないようになっている。
【0039】
図9は、錐状螺旋杭10の頂部に取り付ける各種アタッチメントを示す。同図(a)は錐状螺旋杭10に柱Zを取り付けるアタッチメントA1を示し、同図(b)は錐状螺旋杭10の頂部に根太Yを取り付けるアタッチメントA2を示し、同図(c)は控え棒Xを取り付けるためのアタッチメントA3を示す。
【0040】
図9(a)では、上向きコ字状の金具で、柱を抱くようにしボルト・ナットで締め付けるようになり、同(b)では、上面角座になり、それに根太が乗るようになり、必要ならば木ねじで固定する。同(c)では、両側に軸受けが設けられ、この軸受けにボルト・ナットが貫通し、このボルト・ナットに控え棒が連結されて回動自在になっている。
【0041】
図10は車道と歩道を区切る安全柵Jに錐状螺旋杭10を適用した例を示し、図11は工事現場の安全柵Kに錐状螺旋杭10を適用した例を示し、図12は鎖柵Lに錐状螺旋杭10を適用した例を示す。なお、図11の工事現場安全柵においては、フェンスFのポールPが二本立っているのでインナースリーブ56の中心孔57は、それに対応して二個の円形孔が並列した状態で設けられる。
【0042】
図13は、道路標識DのポールPの立設に錐状螺旋杭10を適用した例を示し、図14は、仮設住宅Hの根太Yを支える束に、この発明に係る錐状螺旋杭10を適用した例を示す。このように設置した錐状螺旋杭10は、仮設住宅Hを解体した後、前述の治工具を逆転させることにより地中から抜き取ることができ、回収して再利用することができる。なお、再利用については、仮設のフェンスや仮設の安全柵についても同様である。
【0043】
上記錐状螺旋杭を図15に示すように垂直回転機能を備えた重機に取付け杭打ちをすることができる。この場合、上記錐状螺旋杭を重機の垂直回転部に取付けるアダプターは、その上記の垂直回転機構に適宜合ったものを用意するものとする。また、同図は錐状螺旋杭を取付けている段階で、錐状螺旋杭を打ち込むときはカラムを垂直に立てることは言うまでもない。
【0044】
また、上記実施例では垂直回転機能を備えた重機を用いているが、地質・地盤調査用ボーリングマシーンでも、上記錐状螺旋杭を打ち込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明した如くこの発明によれば、フェンスや道路標識のポールの立設、一般・仮設住宅の根太を支える束の設置等において、極めて簡単に工事を行なうことができるようになり、また、工事に用いる治工具は可搬のものであるから随時移動可能で、仮設の場合は、用済み後、錐状螺旋杭を抜き取り繰り返し利用可能で環境保全でも大いに効果を発揮し、産業上の利用可能性は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に係る錐状螺旋杭を地中に打ち込んだ状態の(a)中間を省略した一部切り欠き正面図、(b)ポールを取り付けている地上部の断面図
【図2】(a)同錐状螺旋杭の上部に中間軸をスプライン結合した状態の説明図、(b)(a)のA−A矢視図
【図3】錐状螺旋杭の打ち込み説明図
【図4】本発明で使用する水準器の(a)平面図、(b)(a)のB−B矢視図
【図5】(a)錐状螺旋杭の頂部に垂直度調整スリーブを装着した状態の断面図、(b)(a)のC−C矢視図、(c)錐状螺旋杭の頂部に嵌る垂直度調整スリーブの分解斜視図
【図6】錐状螺旋杭頂部に嵌めた垂直度調整スリーブの(a)平面図、(b)(a)のD−D矢視図、(c)(a)のE−E矢視図
【図7】(a),(b),(c),(d)各種ギャップ調整スリーブの断面図、(e)(d)の側面図
【図8】防水キャップの説明図
【図9】錐状螺旋杭頂部に取り付けられるアタッチメントで(a)は柱用、(b)は根太用、(c)は控え棒用
【図10】歩道安全柵への適用例説明図
【図11】工事現場安全柵への適用例説明図
【図12】鎖柵への適用例説明図
【図13】道路標識ポール立設例説明図
【図14】仮設住宅の束への適用例説明図
【図15】垂直回転機能を備えた上記による錐状螺旋杭を打ち込む状態の斜視図
【符号の説明】
【0047】
10 錐状螺旋杭
11 錐
12 透孔
13 傾斜段部
14 大径部分
15 スプラインスリーブ
16 スクリュー
17 テーパー状中空筒体
18 フープ
20 治工具
21 モーター
22 減速機
23 出力軸(減速機の)
24 中間軸
25 スプライン(中間軸の)
31 垂直維持部材
32 角柱
33 角状短筒
34 軸受け
35 スライドローラー
36 ブラケット
37 針
40 水準器
41 円盤
42 目盛り(円盤の)
43 気泡管
44 目盛り(気泡管の)
51 外周円
52 外向きの矢印
53 偏心孔
54 内向きの矢印
55 アウタースリーブ
56 インナースリーブ
57 中心孔
58 等間隔目盛り(インナースリーブの)
59 球面接触
A アタッチメンド
B ボルト・蝶ナット
C キャップ
D 道路標識
F フェンス
G ギャップ調整用スリーブ
H 仮設住宅
J 安全柵
K 安全柵
L 鎖柵
M 垂直回転機能を備えた重機
P ポール
X 控え棒
Y 根太
Z 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大形の中空木ネジ状で、下端の錐状部分から上方にスクリューが形成され、スクリューの上部で傾斜段部が形成されて大径になり、大径部分の上端にフランジを一体に設けてなる錐状螺旋杭。
【請求項2】
大径部分の内側に正逆回転を伝達する軸方向継ぎ手を形成してなる請求項1に記載の錐状螺旋杭。
【請求項3】
上記傾斜段部の内側に凹面球座が形成され、中空部分の先端と上端に透孔を形成した請求項1または2に記載の錐状螺旋杭。
【請求項4】
上記錐状螺旋杭のスクリューは、テーパー状中空筒体の表面に、フープを螺旋状に巻き回し溶接一体化したものである請求項1乃至3のいずれかに記載の錐状螺旋杭。
【請求項5】
上記フープは、平板を一定の幅で渦巻き状に裁断したものである請求項4に記載の錐状螺旋杭。
【請求項6】
下端に下向きの針を突き出し、下端に横向きの垂直維持部材を設けた角柱と、この角柱に被嵌し、角状短筒と一体の軸受けに軸支された上下方向に摺動可能のスライドローラーと、上記軸受けから延び水準器を取り付けたブラケットと、このブラケットに取り付けられる減速機と一体のモーターと、上記減速機の出力軸に軸方向継ぎ手を介して接続される中間軸とからなる錐状螺旋杭打ち込み用治工具。
【請求項7】
上記減速機と一体のモーターは、ボルト・ナット、蟻と蟻溝、バヨネットマウントによりブラケットの前端に取り付けられるようにした請求項6に記載の錐状螺旋杭打ち込み用治工具。
【請求項8】
円盤の中心線上中央に0からNまでの等間隔目盛りを付した気泡管を配設し、上記中心線に直交する中心線が上記円盤の外周と交わる交点を基点として1/4の外周に0からNの等間隔目盛りを付した水準器と、上記錐状螺旋杭の頂部内径に合わせた外周円と中心孔を同心上に設け、上記外周円と中心孔との間に偏心円を画いて偏心孔とし、この偏心孔の外側をアウタースリーブ、内側をインナースリーブとし、アウタースリーブ上面に、偏心方向中心線に対し、直交する外周円中心線と外周円との交点を指す外向き矢印と、偏心孔の偏心方向中心線に対し、直交する偏心孔中心線と偏心孔との交点を指す内向き矢印とを刻設し、インナースリーブが偏心して最大肉厚となった部分を中点とし、この中点から90度ずつ振り分けにして0からNの等間隔目盛りを表面に刻設したインナースリーブとからなる錐状螺旋杭の垂直度調整用治具。
【請求項9】
上記錐状螺旋杭の垂直度調整用治具において、アウタースリーブとインナースリーブとの接触面を球面接触にした請求項8に記載の錐状螺旋杭の垂直度調整用治具。
【請求項10】
地中にねじ込まれた錐状螺旋杭の頂面に円盤と一体の水準器を載せ、水準器の気泡が中央にくる位置を探り、その位置で円盤外周に刻設した等間隔目盛りの9に合わせて錐状螺旋杭の頂部鍔面にマーキングし、次いで、水準器の気泡の振れが最大になる位置を探り、そのときの気泡が位置する目盛りを確認する第一の工程と、
アウタースリーブとインナースリーブとを嵌め合わせた状態で錐状螺旋杭の頂部内孔に嵌め込み、アウタースリーブの外向き矢印と前記錐状螺旋杭の頂部鍔面にチェックしたマーキングとを一致させる第二の工程と、
アウタースリーブの内向き矢印に、上記確認した水準器の気泡位置の目盛りと同じインナースリーブの目盛りを一致させる第三の工程とからなる錐状螺旋杭の垂直度調整方法。
【請求項11】
請求項1乃至5の錐状螺旋杭を、垂直回転機能を備えた重機、または地質・地盤調査用ボーリングマシーンにより地中に打ち込む錐状螺旋杭の打ち込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−118336(P2006−118336A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2884(P2005−2884)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(598067289)
【Fターム(参考)】