錠前
【課題】本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置を提供すること。
【解決手段】デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向によって制動力が異なる回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、回転制御ダンパー部材は、錠箱内に固定されたケースと、このケースに内装されるロータのトルク軸の突出先端部に固定されかつラックギヤギヤと噛合するピニオンギヤと、ロータに設けられたブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根と、ケースに充填された高粘性物質とから成り、ブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根に対する高粘性物質の粘性抵抗は、合鍵の操作力に基づきデッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなる錠前。
【解決手段】デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向によって制動力が異なる回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、回転制御ダンパー部材は、錠箱内に固定されたケースと、このケースに内装されるロータのトルク軸の突出先端部に固定されかつラックギヤギヤと噛合するピニオンギヤと、ロータに設けられたブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根と、ケースに充填された高粘性物質とから成り、ブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根に対する高粘性物質の粘性抵抗は、合鍵の操作力に基づきデッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなる錠前。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
デッドボルトの完全後退時(解錠時)に発生する金属音等の衝突音を低減化する回転制御ダンパー部材を備えた錠前に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、特許文献1には、「ラッチ錠のラッチボルトに設けたラック歯車列に対して、そのピニオンが噛合すると共に、錠箱に固定された軸受けケースに高粘性物質を内蔵した回転制御ダンパー部材を配設し、前記高粘性物質の粘性抵抗を利用して前記ラッチボルトの突出時に発生する衝突音を低減化するラッチ錠の消音装置」が記載されている。
【0003】
ところで、このラッチ錠の課題は、(a)あくまでも、ラッチ錠のラッチボルトの突出時に発生する衝突音を低減化することであり、解錠方向、つまり、ラッチボルトの後退時に発生する動作音を低減化することではない。(b)それ故に、錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前、いわゆる本施錠に於いて、前記デッドボルトが解錠状態になるときに発生する動作音を低減化するものではない。(c)さらに、この特許文献1の消音部材は、高粘性物質の粘性抵抗が時計方向及び反時計方向にそれぞれ回転した場合に於いて、いずれの回転方向であってもそれぞれ均等の粘性抵抗が発生するものか、それとも一方の回転が他方の回転よりも粘性抵抗が大きいものか、その具体的構成が不明である。
【0004】
次に、特許文献2に記載の回転制御ダンパー部材は、トルク軸10の基端部に一体的に設けられたロータ20と、該ロータの回転方向如何によって位置変位するように該ロータの底部に設けられたトルク軸の回転制御用羽根(揺動羽根)23と、固定側部材に固定され得るケース40に充填された高粘性物質50とから成り、例えば電子機器の開閉体が開閉する際に、前記回転制御用羽根(揺動羽根)23が位置変位して前記高粘性物質の粘性抵抗が小さくなる(第1減衰力)態様と、該高粘性物質の粘性抵抗が第1減衰力よりも大きくなる(第2減衰力)態様がある旨が記載されている(符号は特許文献2のもの)。
【0005】
この特許文献2には、正逆いずれか一方向の回転に対してのみ「大きな減衰力」が必要な場合に実施可能である旨の記述があるものの(段落0030)、回転制御ダンパー部材を「本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置」に適用できる旨の記載はない。
【0006】
また、特許文献3に記載の方向性ローターリダンパーは、「固定側部材に固定される外筒状の筐体部3と、この筒状筐体部に内装されると共に、外拡変位可能な回転制御用羽根7を有する円盤状の駆動軸部1及び内筒状の従動部2と、前記筐体部3の内部空間に充填される高粘性物質とから成り、前記駆動軸部1がトルク軸5と共働して一方向に回転する際には、前記駆動軸部1は外拡変位する回転制御用羽根7を介して前記従動部2を高粘性物質の粘性対抗に抗して回転させ、一方、前記駆動軸部1が反対方向に回転した場合には、前記回転制御用羽根7が内側に変位して従動部2内を空転するものである。この特許文献3に記載の方向性ローターリダンパーは、一方向にのみ回転制動を与えるものである。
【0007】
この特許文献3に記載の方向性ローターリダンパーも前記特許文献2と同様に、正逆いずれか一方向の回転に対してのみ「大きな減衰力」が必要な場合に実施可能であるものの、該方向性ローターリダンパーを「本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置」に適用できる旨の記載はない。
【0008】
さらに、特許文献4及び特許文献5には、施・解錠時、デッドボルトを進退動方向へそれぞれ押し付けるクリック手段が開示されている。すなわち、特許文献4に記載のクリック手段は、図1の錠箱の内部空間の上方(上壁付近)に、その基端部が固定軸に軸支された押圧片と、前記固定軸に中央部が巻装された押圧バネとから成り、前記押圧片の自由端部は、いわゆるダルマ(回転駆動体)の駆動腕とは反対方向に山形状突設された係合突片に圧接する。
【0009】
また、特許文献5に記載のクリック手段は、デッドボルトの後端部に上下方向に組み込まれかつデッドボルトの駆動腕の先端部に押し付けられる押圧柱と、該押圧柱に巻装されたクリックバネ等から成る。これらのクリック手段は公知事項であるが、後述する本実施例に置換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−151653
【特許文献2】特開2001−254772
【特許文献3】特開平6−294430
【特許文献4】特開2006−89986
【特許文献5】特開2003−148023
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の所期の目的は、本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置を提供すること。すなわち、合鍵操作に基づいてかつクリック手段のクリックバネのバネ力がデッドボルトに作用するために発生する衝突音を低減化(静音化)し、いわゆる深夜の衝突音が人(例えば家族)の耳障りにならないようにすることである。第2の目的は、回転制御ダンパー部材を錠箱内に簡単に組み込むことができることである。その他の目的は、回転制御ダンパー部材を構成するロータ、トルク係合体が円滑かつ確実に作用することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の錠前は、錠箱内に、錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向によって制動力が異なる回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、該回転制御ダンパー部材は、前記錠箱内に固定されたケースと、このケースに内装されるロータのトルク軸の突出先端部に固定されかつ前記ラックギヤと噛合する前記ピニオンギヤと、前記ロータに設けられたブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根と、前記ケースに充填された高粘性物質とから成り、前記ブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根に対する前記高粘性物質の粘性抵抗は、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の錠前は、錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向如何によって制動力が発生するクラッチ機構を備えた一方向回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合には、前記クラッチ機構のロータと該ロータと組み合わせられたトルク係合体とが協働して回転することにより前記ロータに高粘性物質の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体がロータに対して空転状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(a)本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置を提供することができる。
付言すると、本発明は合鍵操作に基づいてかつクリック手段のクリックバネのバネ力がデッドボルトに作用するために発生する衝突音を低減化(静音化)し、いわゆる深夜の衝突音が人(例えば家族)の耳障りにならないようにすることができる。一方、デッドボルトを施錠するときは、高粘性物質の抵抗が極少ないので、合鍵操作に支障をきたすことはない。
(b)請求項2に記載の発明は、回転制御ダンパー部材を錠箱内に簡単に組み込むことができることである。
(c)請求項3乃至請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。特に、デッドボルトを施錠するときは、高粘性物質の抵抗が発生しないので、合鍵操作に全く支障をきたすことはない。
(d)また、請求項3乃至請求項5に記載の発明は、従動のロータの凹所に内装されるトルク係合体は、一方向に回転する場合にはスムース(円滑)に空転し、他方向に回転する場合には、その係合爪が前記凹所のラチェット歯に確実に係止されると共に、弧状楔部分(周接部分)の全体に外拡変位作用が生じるので、前記係合爪に集中的に力が作用しないように該弧状楔部分が従動のロータの内周壁に圧接する。したがって、トルク係合体と協働回転する従動のロータは、グリス、シリコンオイル等の高粘性物質の粘性抵抗を受けながら回転する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1乃至図8は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図9及び図10は本発明の第2実施形態を示す各説明図。図11は本発明の第3実施形態を示す説明図。
【図1】第1実施形態の環境を示す概略説明図。
【図2】図1の要部の説明図。
【図3】要部の概略断面説明図。
【図4】要部(合鍵、シリンダ錠、クリック手段)の説明図。
【図5】回転制御ダンパー部材の概略断面説明図。
【図6】ロータの説明図。
【図7】デッドボルトが解錠状態となる場合の説明図。
【図8】回転制御ダンパー部材の内部構造を示す説明図。
【図9】第2実施形態の説明図。
【図10】一方向回転制御ダンパー部材の内部構造を示す説明図。
【図11】本発明の第3実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(1)環境部材/本発明の前提要件
図1は本発明の環境部材を示す概略説明図である。この図に於いて、1は戸枠、2は戸枠に固定された受け具で、周知のように、受け具2はトロヨケとストライク板を有する。
一方、Xは扉3の自由端部に設けられた錠前で、この錠前Xを構成する錠箱4は扉3にねじ等で固定されている。錠箱4は、フロント5を有するケース身4aと、このケース身に固定されるケース蓋4bとから成り、例えば扉3の木口に組み込まれている。6は錠箱4に出没自在に設けられたデッドボルト、7はデッドボルト6の後端部の互いに対向する傾斜状係合面に選択的に係合する駆動腕7aを有するダルマ(回転駆動体)である。8はクリック手段、9はデッドボルト6の被係合部に係合し、該デッドボルト6の施錠状態を維持するストッパー片である。その他、錠箱4内の下部側空間には、図示しないラッチ機構が適宜に組み込まれている。
【0017】
図2乃至図4は、要部の各説明図である。これらの図に於いて、11は合鍵、12はシリンダー錠、そして、7は半径外方向に駆動腕7aを有するダルマ、8はクリック手段である。
【0018】
ここで、図4を参照にして前記クリック手段8等の一例を説明する。例えばクリック手段8は、十手形状の押し下げ部材8aと、この押し下げ部材8aの基部をダルマ7の駆動腕7aに軸支する枢支ピン8bと、前記押し下げ部材8aの長杆部に巻装されたクリックバネ(コイルバネ)8cとから構成されている。また、前記ダルマ7は、さらにサムター側の筒状の第1ダルマ構成片と、これと合体するシリンダー12側の筒状の第2ダルマ構成片とから成る。
【0019】
そこで、本発明の錠前Xは、錠箱4内に、少なくとも合鍵11の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマ7と、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕7aが選択的に係合する対向係合面6a、6bを有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具2と係脱するデッドボルト6と、該デッドボルト6が前記駆動腕7aによって押出される施錠時、及び前記駆動腕7aによって前記デッドボルト6が引き戻される解錠時、該デッドボルト6を移動方向(進出方向と後退動方向)に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段8を備えている。
【0020】
したがって、合鍵11を解錠方向へ回転操作すると、ダルマ7は反時計(解錠)方向に回転するので、デッドボルト6は、ダマル7の駆動腕7aによって押出されている状態(施錠状態)から、押し下げ部材8aの長杆部が支持軸13の貫通孔内を通過するにつれてクリック手段8のクリックバネ8cは収縮し、それと同時に押し下げ部材8aの短杆部がストッパー片9を、その復帰バネ14のバネ力に抗して押し下げる。したがって、デッドボルト6はストッパー片9から解放されるので、錠箱4内へと後退する。その際、合鍵11を解錠方向へ操作する者は、普通一般に所要量回転するだけなので、前記クリック手段のクリックバネ8cは、デッドボルトを移動方向に押し付けるように作用し、その結果、「金属製の衝突音」が発生する。
【0021】
そこで、本実施例では、前記デッドボルト6の完全後退時、該デッドボルト6に起因して発生する衝突音を低減化する回転制御ダンパー部材21をデッドボルト6の一辺に設けられたラックギヤ16と噛合するように錠箱4内に配設している。
【0022】
(2)主要部
16はラックギヤで、このラックギヤは、デッドボルト6の一辺にその移動方向に沿って形成或いは設けられている。一方、21は、そのピニオンギヤ27が前記ラックギヤ16と噛合する回転制御ダンパー部材21である。
【0023】
しかして、回転制御ダンパー部材21は、デッドボルト6を基準として、該デッドボルト6よりも錠箱4の上方の空間に配設されている。そこで、該回転制御ダンパー部材21は、錠箱4のケース身4a(或いはケース蓋4b)の内壁に複数個の固着具22、22及び突片状取付け部分23a、23a及びケース身4aの位置決め基準用の嵌合孔10を介して固定された一端開口の有底の筒状ケース23と、この筒状ケース23に回転可能に内装されたロータ24のトルク軸25の突出先端部に固定され、かつ前述したラックギヤ16と仲介歯車を介して又は介さないで噛合するピニオンギヤ27と、前記ロータ24の回転方向如何によって内外に位置変位するように該ロータ24の底部に形成された切欠状凹所32に可撓性接続部28aを介して設けられた回転制御用羽根28と、筒状ケース23の内壁底面と前記ロータ24の底面との間の空間部分に充填された高粘性物質29とから成る。
【0024】
ところで、例えば図8に於いて、符号30は筒状ケース23の一端開口を閉じる蓋体で、前述したロータ24のトルク軸25は該蓋体30の中心の軸孔を貫通している。また、31はロータ24の底部の中心部に設けられた底上げ中心突起で、この中心突起31は筒状ケース23の内壁底面の中心部と摺接する。さらに、32はロータ24の底部の周端部の適宜箇所に形成された単数又は複数の切欠状凹所で、この切欠状凹所32の内壁面の適宜箇所に回転制御用羽根28の一端部が可撓性接続部28aを介してロータ24に一体的に設けられ、該可撓性接続部28aとは反対側に相当する回転制御用羽根28の自由端部には傾斜状のブレーキ面28bが形成されている。なお、回転制御用羽根28は、一方側にブレーキ面28bを有する単数又は複数の制御突起でも良い。
【0025】
上記構成の回転制御ダンパー部材21は、合鍵11を施錠方向へ回転操作してデッドボルト6が錠箱4から進出方向へ移動する際には、回転制御用羽根28の自由端部は切欠状凹所32の内壁面の底面側に位置変位するので、その筒状ケース23内に内蔵された高粘性物質29の粘性抵抗によって小さなトルク(第1減衰力)を発生さ、一方、合鍵11を解錠方向へ回転操作してデッドボルト6が錠箱4内に没入する方向へ移動したときには、前記デッドボルト6に後退動に対して、前記高粘性物質29の粘性抵抗によって前記第1減衰力よりも大きいトルク(第2減衰力)を発生する。付言すると、ブレーキ面28bを有する制御突起或いは回転制御用羽根28に対する高粘性物質29の粘性抵抗は、合鍵11の操作力に基づきデッドボルト6が施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルト6が解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなる
【実施例】
【0026】
この欄では、本発明の第2実施形態(実施例)の錠前X1について説明する。該錠前X1が第1実施例の錠前Xと主に異なる事項は、(a)回転制御ダンパー部材21Aの具体的構成(b)及び回転制御ダンパー部材21Aの作用である。
【0027】
図9及び図10は、一方向回転制御ダンパー部材21Aの具体的構成及び作用を示す。これらの図に於いて、第1実施例と同一(同様)の構成には同一又は同様の符号を付して重複する説明を割愛する。なお、第2実施例の環境図は、第1実施例の図1、図2等を援用する。
【0028】
この錠前X1は、デッドボルト6にその移動方向に沿ってラックギヤ16を設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤ27を有すると共に、回転方向如何によって制動力が発生するクラッチ機構を備えた一方向回転制御ダンパー部材21Aを錠箱4内に配設し、合鍵11の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合には、前記クラッチ機構のロータ24Aと該ロータと組み合わせられたトルク係合体25Aとが協働して回転することにより前記ロータに高粘性物質29の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルト6が解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体25Aがロータ24Aに対して空転状態となることを特徴とする。そして、前記クラッチ機構は、ロータ24Aと、該ロータの凹所に組み込まれかつトルク軸25を有するトルク係合体25Aとから成ることを特徴とする。
【0029】
そこで、まず、23Aは有底の筒状ケース、24Aは筒状ケースに回転可能に内装された従動のロータ、25Aは前記従動のロータ24Aの一側表面に形成された凹所に回転方向如何によっては単独で回転可能に内装されたトルク係合体、25はトルク係合体25Aの中心部に設けられかつ蓋体30を貫通するトルク軸、27はトルク軸25の突出先端部に固定されかつデッドボルト6のラックギヤ16に直接噛合するピニオンギヤである。
【0030】
しかして、この一方向回転制御ダンパー部材21Aは、前記従動のロータ24Aの一側表面(図10では上面)に凹所41を形成し、この凹所41の内壁底面に周方向に沿ってラチェット歯42を形成すると共に、該凹所41の前記内壁底面に直交する内周壁43に圧接し得るように外拡変位可能な弾性の弧状楔部分a及び該弧状楔部分aの先端部に前記ラチェット歯42と係脱する係合爪bをそれぞれ有するトルク係合体25Aを組み込んでいる。
【0031】
上記構成に於いて、合鍵11の操作力に基づきデッドボルト6が施錠状態から解錠状態になる場合には、ロータ24Aと該ロータの凹所43に組み込まれたトルク係合体25Aとが協働して回転することにより、ブレーキ用の制御突起或いは回転制御用羽根28Aに高粘性物質29の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルト6が解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体25Aがロータ24Aに対して空転状態となる。
【0032】
付言すると、合鍵11を施錠方向へ回したときは、デッドボルト6は受け具2側に進出するが、その際、トルク軸25と一体の(トルク軸25と協働する)トルク係合体25Aの係合爪bは、ラチェット歯42の各歯を摺接しながら乗り越えるので、該トルク係合体25Aは従動ロータ24Aに対して空転状態(空回り)となる。したがって、操作部材としての合鍵11の操作に対して回転制御ダンパー部材21Aの制動(負荷)が掛からない。
【0033】
これに対して、合鍵11を解錠方向へ回したときは、前記トルク係合体25Aの二つの係合爪bはラチェット歯42に係止されるので、弧状楔部分aの全体に外拡変位作用が生じて従動のロータ24Aの内周壁43に弧状楔部分aが圧接し、両者間に摩擦抵抗が発生する。
【0034】
その結果、トルク係合体25Aと従動のロータ24Aは一緒に協働して回転する。その時、従動のロータ24Aの底部に成形された単数又は複数のブレーキ用制御突起28A(或いは第1実施例のような回転制御羽根28A)により、該従動のロータ24Aに対する高粘性物質29の粘性抵抗が衝突音を低減化するように「比較的大きな減衰力」として発生する。
【0035】
最後に、図11は本発明の第3実施形態を示す説明図である。この第3実施例が前記第1実施例と主に異なる点はダルマ7である。このダルマ7は、例えば合鍵の操作力によって直接回転する第1回転体7Aと、該第1回転体7Aに噛合すると共に半径外方向に延在する駆動腕7aを有する第2回転体7Bとから成る。このように、ダルマ7を複数個(例えば2個、3個)の回転体に構成して、第1回転体7Aの駆動力で回転する従動の第2回転体7B(或いは図示しない第3回転体)に設けた駆動腕7aによりデッドボルト6Aを錠箱4から出没させても良い。また、この第3実施例が前記第1実施例と主に異なる点はクリック手段8Aである。このクリック手段8Aは、デッドボルト6Aにその一端部が取付けられて位置変位する、いわゆるメガネバネを採用している。このようにダルマ7やクリック手段8Aを公知事項に置換しても、本発明と同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
ところで、前述した第2実施例に於いて、トルク係合体がロータに対して空転状態となる態様であっても、従動ロータの凹所(トルク係合体)が筒状ケースの内壁底面に対向するように従動ロータ、トルク係合体等を筒状ケースに逆様に組み合わせている場合には、操作部材11を施錠方向へ操作した場合であっても、高粘性物質29の抵抗は多少受ける。もちろん、これらの各部材の組み合わせ態様は、発明の目的を逸脱しない範囲で可能である。
【0037】
また、単数又は複数のブレーキ用制御突起28Aに代えて、第1実施例のような回転制御羽根を従動ロータ24Aに設ける場合には、該回転制御羽根の接続部を可撓性接続部28aではなく、例えば軸と軸孔の構成で接続することもできる。したがって、回転制御羽根の接続部の構成は、発明の本質的事項ではない。
【0038】
さらに、第1実施例の回転制御ダンパー部材21も第2実施例の一方向回転制御ダンパー部材21Aも、錠箱4の幅広側壁に位置決め用の嵌合孔10が形成され、一方向回転制御ダンパー部材のケース23は、前記嵌合孔10に該ケースの一端部が嵌合した状態でかつ該ケースに突設した不番の取付け孔を有するフランジ部分23a、23a、複数の固着具22を介して前記幅広側壁の内壁面に固定されている(特徴事項)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は錠前や建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0040】
X、X1…錠前、1…戸枠、2…受け具、3…扉、4…錠箱、4b…ケース蓋、6、6A…デッドボルト、7…ダルマ、8、8A…クリック手段、8c…リクックバネ、9…ストッパー片、10…嵌合孔、11…合鍵、12…シリンダー錠、13…支軸、16…ラックギヤ、21、21A…回転制御ダンパー部材、22…固着具、23、23A…ケース、23a…フランジ部分、24…ロータ、24A…従動のロータ、25…トルク軸、25A…トルク係合体、27…ピニオンギヤ、28…回転制御用羽根(或いは制御突起)、28a…可撓性接続部、28b…突出端部のブレーキ面、28A…ブレーキ用制御突起、29…高粘性物質、30…蓋体、31…中心突起、32…切欠状凹所、41…凹所、42…ラチェット歯、43…内周壁、a…弧状楔部分、b…係合爪。
【技術分野】
【0001】
デッドボルトの完全後退時(解錠時)に発生する金属音等の衝突音を低減化する回転制御ダンパー部材を備えた錠前に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、特許文献1には、「ラッチ錠のラッチボルトに設けたラック歯車列に対して、そのピニオンが噛合すると共に、錠箱に固定された軸受けケースに高粘性物質を内蔵した回転制御ダンパー部材を配設し、前記高粘性物質の粘性抵抗を利用して前記ラッチボルトの突出時に発生する衝突音を低減化するラッチ錠の消音装置」が記載されている。
【0003】
ところで、このラッチ錠の課題は、(a)あくまでも、ラッチ錠のラッチボルトの突出時に発生する衝突音を低減化することであり、解錠方向、つまり、ラッチボルトの後退時に発生する動作音を低減化することではない。(b)それ故に、錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前、いわゆる本施錠に於いて、前記デッドボルトが解錠状態になるときに発生する動作音を低減化するものではない。(c)さらに、この特許文献1の消音部材は、高粘性物質の粘性抵抗が時計方向及び反時計方向にそれぞれ回転した場合に於いて、いずれの回転方向であってもそれぞれ均等の粘性抵抗が発生するものか、それとも一方の回転が他方の回転よりも粘性抵抗が大きいものか、その具体的構成が不明である。
【0004】
次に、特許文献2に記載の回転制御ダンパー部材は、トルク軸10の基端部に一体的に設けられたロータ20と、該ロータの回転方向如何によって位置変位するように該ロータの底部に設けられたトルク軸の回転制御用羽根(揺動羽根)23と、固定側部材に固定され得るケース40に充填された高粘性物質50とから成り、例えば電子機器の開閉体が開閉する際に、前記回転制御用羽根(揺動羽根)23が位置変位して前記高粘性物質の粘性抵抗が小さくなる(第1減衰力)態様と、該高粘性物質の粘性抵抗が第1減衰力よりも大きくなる(第2減衰力)態様がある旨が記載されている(符号は特許文献2のもの)。
【0005】
この特許文献2には、正逆いずれか一方向の回転に対してのみ「大きな減衰力」が必要な場合に実施可能である旨の記述があるものの(段落0030)、回転制御ダンパー部材を「本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置」に適用できる旨の記載はない。
【0006】
また、特許文献3に記載の方向性ローターリダンパーは、「固定側部材に固定される外筒状の筐体部3と、この筒状筐体部に内装されると共に、外拡変位可能な回転制御用羽根7を有する円盤状の駆動軸部1及び内筒状の従動部2と、前記筐体部3の内部空間に充填される高粘性物質とから成り、前記駆動軸部1がトルク軸5と共働して一方向に回転する際には、前記駆動軸部1は外拡変位する回転制御用羽根7を介して前記従動部2を高粘性物質の粘性対抗に抗して回転させ、一方、前記駆動軸部1が反対方向に回転した場合には、前記回転制御用羽根7が内側に変位して従動部2内を空転するものである。この特許文献3に記載の方向性ローターリダンパーは、一方向にのみ回転制動を与えるものである。
【0007】
この特許文献3に記載の方向性ローターリダンパーも前記特許文献2と同様に、正逆いずれか一方向の回転に対してのみ「大きな減衰力」が必要な場合に実施可能であるものの、該方向性ローターリダンパーを「本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置」に適用できる旨の記載はない。
【0008】
さらに、特許文献4及び特許文献5には、施・解錠時、デッドボルトを進退動方向へそれぞれ押し付けるクリック手段が開示されている。すなわち、特許文献4に記載のクリック手段は、図1の錠箱の内部空間の上方(上壁付近)に、その基端部が固定軸に軸支された押圧片と、前記固定軸に中央部が巻装された押圧バネとから成り、前記押圧片の自由端部は、いわゆるダルマ(回転駆動体)の駆動腕とは反対方向に山形状突設された係合突片に圧接する。
【0009】
また、特許文献5に記載のクリック手段は、デッドボルトの後端部に上下方向に組み込まれかつデッドボルトの駆動腕の先端部に押し付けられる押圧柱と、該押圧柱に巻装されたクリックバネ等から成る。これらのクリック手段は公知事項であるが、後述する本実施例に置換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−151653
【特許文献2】特開2001−254772
【特許文献3】特開平6−294430
【特許文献4】特開2006−89986
【特許文献5】特開2003−148023
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の所期の目的は、本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置を提供すること。すなわち、合鍵操作に基づいてかつクリック手段のクリックバネのバネ力がデッドボルトに作用するために発生する衝突音を低減化(静音化)し、いわゆる深夜の衝突音が人(例えば家族)の耳障りにならないようにすることである。第2の目的は、回転制御ダンパー部材を錠箱内に簡単に組み込むことができることである。その他の目的は、回転制御ダンパー部材を構成するロータ、トルク係合体が円滑かつ確実に作用することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の錠前は、錠箱内に、錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向によって制動力が異なる回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、該回転制御ダンパー部材は、前記錠箱内に固定されたケースと、このケースに内装されるロータのトルク軸の突出先端部に固定されかつ前記ラックギヤと噛合する前記ピニオンギヤと、前記ロータに設けられたブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根と、前記ケースに充填された高粘性物質とから成り、前記ブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根に対する前記高粘性物質の粘性抵抗は、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の錠前は、錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向如何によって制動力が発生するクラッチ機構を備えた一方向回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合には、前記クラッチ機構のロータと該ロータと組み合わせられたトルク係合体とが協働して回転することにより前記ロータに高粘性物質の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体がロータに対して空転状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(a)本施錠におけるデッドボルトの解錠時の消音装置を提供することができる。
付言すると、本発明は合鍵操作に基づいてかつクリック手段のクリックバネのバネ力がデッドボルトに作用するために発生する衝突音を低減化(静音化)し、いわゆる深夜の衝突音が人(例えば家族)の耳障りにならないようにすることができる。一方、デッドボルトを施錠するときは、高粘性物質の抵抗が極少ないので、合鍵操作に支障をきたすことはない。
(b)請求項2に記載の発明は、回転制御ダンパー部材を錠箱内に簡単に組み込むことができることである。
(c)請求項3乃至請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。特に、デッドボルトを施錠するときは、高粘性物質の抵抗が発生しないので、合鍵操作に全く支障をきたすことはない。
(d)また、請求項3乃至請求項5に記載の発明は、従動のロータの凹所に内装されるトルク係合体は、一方向に回転する場合にはスムース(円滑)に空転し、他方向に回転する場合には、その係合爪が前記凹所のラチェット歯に確実に係止されると共に、弧状楔部分(周接部分)の全体に外拡変位作用が生じるので、前記係合爪に集中的に力が作用しないように該弧状楔部分が従動のロータの内周壁に圧接する。したがって、トルク係合体と協働回転する従動のロータは、グリス、シリコンオイル等の高粘性物質の粘性抵抗を受けながら回転する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1乃至図8は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図9及び図10は本発明の第2実施形態を示す各説明図。図11は本発明の第3実施形態を示す説明図。
【図1】第1実施形態の環境を示す概略説明図。
【図2】図1の要部の説明図。
【図3】要部の概略断面説明図。
【図4】要部(合鍵、シリンダ錠、クリック手段)の説明図。
【図5】回転制御ダンパー部材の概略断面説明図。
【図6】ロータの説明図。
【図7】デッドボルトが解錠状態となる場合の説明図。
【図8】回転制御ダンパー部材の内部構造を示す説明図。
【図9】第2実施形態の説明図。
【図10】一方向回転制御ダンパー部材の内部構造を示す説明図。
【図11】本発明の第3実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(1)環境部材/本発明の前提要件
図1は本発明の環境部材を示す概略説明図である。この図に於いて、1は戸枠、2は戸枠に固定された受け具で、周知のように、受け具2はトロヨケとストライク板を有する。
一方、Xは扉3の自由端部に設けられた錠前で、この錠前Xを構成する錠箱4は扉3にねじ等で固定されている。錠箱4は、フロント5を有するケース身4aと、このケース身に固定されるケース蓋4bとから成り、例えば扉3の木口に組み込まれている。6は錠箱4に出没自在に設けられたデッドボルト、7はデッドボルト6の後端部の互いに対向する傾斜状係合面に選択的に係合する駆動腕7aを有するダルマ(回転駆動体)である。8はクリック手段、9はデッドボルト6の被係合部に係合し、該デッドボルト6の施錠状態を維持するストッパー片である。その他、錠箱4内の下部側空間には、図示しないラッチ機構が適宜に組み込まれている。
【0017】
図2乃至図4は、要部の各説明図である。これらの図に於いて、11は合鍵、12はシリンダー錠、そして、7は半径外方向に駆動腕7aを有するダルマ、8はクリック手段である。
【0018】
ここで、図4を参照にして前記クリック手段8等の一例を説明する。例えばクリック手段8は、十手形状の押し下げ部材8aと、この押し下げ部材8aの基部をダルマ7の駆動腕7aに軸支する枢支ピン8bと、前記押し下げ部材8aの長杆部に巻装されたクリックバネ(コイルバネ)8cとから構成されている。また、前記ダルマ7は、さらにサムター側の筒状の第1ダルマ構成片と、これと合体するシリンダー12側の筒状の第2ダルマ構成片とから成る。
【0019】
そこで、本発明の錠前Xは、錠箱4内に、少なくとも合鍵11の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマ7と、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕7aが選択的に係合する対向係合面6a、6bを有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具2と係脱するデッドボルト6と、該デッドボルト6が前記駆動腕7aによって押出される施錠時、及び前記駆動腕7aによって前記デッドボルト6が引き戻される解錠時、該デッドボルト6を移動方向(進出方向と後退動方向)に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段8を備えている。
【0020】
したがって、合鍵11を解錠方向へ回転操作すると、ダルマ7は反時計(解錠)方向に回転するので、デッドボルト6は、ダマル7の駆動腕7aによって押出されている状態(施錠状態)から、押し下げ部材8aの長杆部が支持軸13の貫通孔内を通過するにつれてクリック手段8のクリックバネ8cは収縮し、それと同時に押し下げ部材8aの短杆部がストッパー片9を、その復帰バネ14のバネ力に抗して押し下げる。したがって、デッドボルト6はストッパー片9から解放されるので、錠箱4内へと後退する。その際、合鍵11を解錠方向へ操作する者は、普通一般に所要量回転するだけなので、前記クリック手段のクリックバネ8cは、デッドボルトを移動方向に押し付けるように作用し、その結果、「金属製の衝突音」が発生する。
【0021】
そこで、本実施例では、前記デッドボルト6の完全後退時、該デッドボルト6に起因して発生する衝突音を低減化する回転制御ダンパー部材21をデッドボルト6の一辺に設けられたラックギヤ16と噛合するように錠箱4内に配設している。
【0022】
(2)主要部
16はラックギヤで、このラックギヤは、デッドボルト6の一辺にその移動方向に沿って形成或いは設けられている。一方、21は、そのピニオンギヤ27が前記ラックギヤ16と噛合する回転制御ダンパー部材21である。
【0023】
しかして、回転制御ダンパー部材21は、デッドボルト6を基準として、該デッドボルト6よりも錠箱4の上方の空間に配設されている。そこで、該回転制御ダンパー部材21は、錠箱4のケース身4a(或いはケース蓋4b)の内壁に複数個の固着具22、22及び突片状取付け部分23a、23a及びケース身4aの位置決め基準用の嵌合孔10を介して固定された一端開口の有底の筒状ケース23と、この筒状ケース23に回転可能に内装されたロータ24のトルク軸25の突出先端部に固定され、かつ前述したラックギヤ16と仲介歯車を介して又は介さないで噛合するピニオンギヤ27と、前記ロータ24の回転方向如何によって内外に位置変位するように該ロータ24の底部に形成された切欠状凹所32に可撓性接続部28aを介して設けられた回転制御用羽根28と、筒状ケース23の内壁底面と前記ロータ24の底面との間の空間部分に充填された高粘性物質29とから成る。
【0024】
ところで、例えば図8に於いて、符号30は筒状ケース23の一端開口を閉じる蓋体で、前述したロータ24のトルク軸25は該蓋体30の中心の軸孔を貫通している。また、31はロータ24の底部の中心部に設けられた底上げ中心突起で、この中心突起31は筒状ケース23の内壁底面の中心部と摺接する。さらに、32はロータ24の底部の周端部の適宜箇所に形成された単数又は複数の切欠状凹所で、この切欠状凹所32の内壁面の適宜箇所に回転制御用羽根28の一端部が可撓性接続部28aを介してロータ24に一体的に設けられ、該可撓性接続部28aとは反対側に相当する回転制御用羽根28の自由端部には傾斜状のブレーキ面28bが形成されている。なお、回転制御用羽根28は、一方側にブレーキ面28bを有する単数又は複数の制御突起でも良い。
【0025】
上記構成の回転制御ダンパー部材21は、合鍵11を施錠方向へ回転操作してデッドボルト6が錠箱4から進出方向へ移動する際には、回転制御用羽根28の自由端部は切欠状凹所32の内壁面の底面側に位置変位するので、その筒状ケース23内に内蔵された高粘性物質29の粘性抵抗によって小さなトルク(第1減衰力)を発生さ、一方、合鍵11を解錠方向へ回転操作してデッドボルト6が錠箱4内に没入する方向へ移動したときには、前記デッドボルト6に後退動に対して、前記高粘性物質29の粘性抵抗によって前記第1減衰力よりも大きいトルク(第2減衰力)を発生する。付言すると、ブレーキ面28bを有する制御突起或いは回転制御用羽根28に対する高粘性物質29の粘性抵抗は、合鍵11の操作力に基づきデッドボルト6が施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルト6が解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなる
【実施例】
【0026】
この欄では、本発明の第2実施形態(実施例)の錠前X1について説明する。該錠前X1が第1実施例の錠前Xと主に異なる事項は、(a)回転制御ダンパー部材21Aの具体的構成(b)及び回転制御ダンパー部材21Aの作用である。
【0027】
図9及び図10は、一方向回転制御ダンパー部材21Aの具体的構成及び作用を示す。これらの図に於いて、第1実施例と同一(同様)の構成には同一又は同様の符号を付して重複する説明を割愛する。なお、第2実施例の環境図は、第1実施例の図1、図2等を援用する。
【0028】
この錠前X1は、デッドボルト6にその移動方向に沿ってラックギヤ16を設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤ27を有すると共に、回転方向如何によって制動力が発生するクラッチ機構を備えた一方向回転制御ダンパー部材21Aを錠箱4内に配設し、合鍵11の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合には、前記クラッチ機構のロータ24Aと該ロータと組み合わせられたトルク係合体25Aとが協働して回転することにより前記ロータに高粘性物質29の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルト6が解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体25Aがロータ24Aに対して空転状態となることを特徴とする。そして、前記クラッチ機構は、ロータ24Aと、該ロータの凹所に組み込まれかつトルク軸25を有するトルク係合体25Aとから成ることを特徴とする。
【0029】
そこで、まず、23Aは有底の筒状ケース、24Aは筒状ケースに回転可能に内装された従動のロータ、25Aは前記従動のロータ24Aの一側表面に形成された凹所に回転方向如何によっては単独で回転可能に内装されたトルク係合体、25はトルク係合体25Aの中心部に設けられかつ蓋体30を貫通するトルク軸、27はトルク軸25の突出先端部に固定されかつデッドボルト6のラックギヤ16に直接噛合するピニオンギヤである。
【0030】
しかして、この一方向回転制御ダンパー部材21Aは、前記従動のロータ24Aの一側表面(図10では上面)に凹所41を形成し、この凹所41の内壁底面に周方向に沿ってラチェット歯42を形成すると共に、該凹所41の前記内壁底面に直交する内周壁43に圧接し得るように外拡変位可能な弾性の弧状楔部分a及び該弧状楔部分aの先端部に前記ラチェット歯42と係脱する係合爪bをそれぞれ有するトルク係合体25Aを組み込んでいる。
【0031】
上記構成に於いて、合鍵11の操作力に基づきデッドボルト6が施錠状態から解錠状態になる場合には、ロータ24Aと該ロータの凹所43に組み込まれたトルク係合体25Aとが協働して回転することにより、ブレーキ用の制御突起或いは回転制御用羽根28Aに高粘性物質29の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルト6が解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体25Aがロータ24Aに対して空転状態となる。
【0032】
付言すると、合鍵11を施錠方向へ回したときは、デッドボルト6は受け具2側に進出するが、その際、トルク軸25と一体の(トルク軸25と協働する)トルク係合体25Aの係合爪bは、ラチェット歯42の各歯を摺接しながら乗り越えるので、該トルク係合体25Aは従動ロータ24Aに対して空転状態(空回り)となる。したがって、操作部材としての合鍵11の操作に対して回転制御ダンパー部材21Aの制動(負荷)が掛からない。
【0033】
これに対して、合鍵11を解錠方向へ回したときは、前記トルク係合体25Aの二つの係合爪bはラチェット歯42に係止されるので、弧状楔部分aの全体に外拡変位作用が生じて従動のロータ24Aの内周壁43に弧状楔部分aが圧接し、両者間に摩擦抵抗が発生する。
【0034】
その結果、トルク係合体25Aと従動のロータ24Aは一緒に協働して回転する。その時、従動のロータ24Aの底部に成形された単数又は複数のブレーキ用制御突起28A(或いは第1実施例のような回転制御羽根28A)により、該従動のロータ24Aに対する高粘性物質29の粘性抵抗が衝突音を低減化するように「比較的大きな減衰力」として発生する。
【0035】
最後に、図11は本発明の第3実施形態を示す説明図である。この第3実施例が前記第1実施例と主に異なる点はダルマ7である。このダルマ7は、例えば合鍵の操作力によって直接回転する第1回転体7Aと、該第1回転体7Aに噛合すると共に半径外方向に延在する駆動腕7aを有する第2回転体7Bとから成る。このように、ダルマ7を複数個(例えば2個、3個)の回転体に構成して、第1回転体7Aの駆動力で回転する従動の第2回転体7B(或いは図示しない第3回転体)に設けた駆動腕7aによりデッドボルト6Aを錠箱4から出没させても良い。また、この第3実施例が前記第1実施例と主に異なる点はクリック手段8Aである。このクリック手段8Aは、デッドボルト6Aにその一端部が取付けられて位置変位する、いわゆるメガネバネを採用している。このようにダルマ7やクリック手段8Aを公知事項に置換しても、本発明と同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
ところで、前述した第2実施例に於いて、トルク係合体がロータに対して空転状態となる態様であっても、従動ロータの凹所(トルク係合体)が筒状ケースの内壁底面に対向するように従動ロータ、トルク係合体等を筒状ケースに逆様に組み合わせている場合には、操作部材11を施錠方向へ操作した場合であっても、高粘性物質29の抵抗は多少受ける。もちろん、これらの各部材の組み合わせ態様は、発明の目的を逸脱しない範囲で可能である。
【0037】
また、単数又は複数のブレーキ用制御突起28Aに代えて、第1実施例のような回転制御羽根を従動ロータ24Aに設ける場合には、該回転制御羽根の接続部を可撓性接続部28aではなく、例えば軸と軸孔の構成で接続することもできる。したがって、回転制御羽根の接続部の構成は、発明の本質的事項ではない。
【0038】
さらに、第1実施例の回転制御ダンパー部材21も第2実施例の一方向回転制御ダンパー部材21Aも、錠箱4の幅広側壁に位置決め用の嵌合孔10が形成され、一方向回転制御ダンパー部材のケース23は、前記嵌合孔10に該ケースの一端部が嵌合した状態でかつ該ケースに突設した不番の取付け孔を有するフランジ部分23a、23a、複数の固着具22を介して前記幅広側壁の内壁面に固定されている(特徴事項)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は錠前や建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0040】
X、X1…錠前、1…戸枠、2…受け具、3…扉、4…錠箱、4b…ケース蓋、6、6A…デッドボルト、7…ダルマ、8、8A…クリック手段、8c…リクックバネ、9…ストッパー片、10…嵌合孔、11…合鍵、12…シリンダー錠、13…支軸、16…ラックギヤ、21、21A…回転制御ダンパー部材、22…固着具、23、23A…ケース、23a…フランジ部分、24…ロータ、24A…従動のロータ、25…トルク軸、25A…トルク係合体、27…ピニオンギヤ、28…回転制御用羽根(或いは制御突起)、28a…可撓性接続部、28b…突出端部のブレーキ面、28A…ブレーキ用制御突起、29…高粘性物質、30…蓋体、31…中心突起、32…切欠状凹所、41…凹所、42…ラチェット歯、43…内周壁、a…弧状楔部分、b…係合爪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向によって制動力が異なる回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、該回転制御ダンパー部材は、前記錠箱内に固定されたケースと、このケースに内装されるロータのトルク軸の突出先端部に固定されかつ前記ラックギヤと噛合する前記ピニオンギヤと、前記ロータに設けられたブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根と、前記ケースに充填された高粘性物質とから成り、前記ブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根に対する前記高粘性物質の粘性抵抗は、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなることを特徴とする錠前。
【請求項2】
請求項1に於いて、錠箱の幅広側壁に位置決め用の嵌合孔が形成され、回転制御ダンパー部材のケースは、前記嵌合孔に該ケースの一端部が嵌合した状態でかつ該ケースに突設したフランジ部分を介して前記幅広側壁の内壁面に固定されていることを特徴とする錠前。
【請求項3】
錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向如何によって制動力が発生するクラッチ機構を備えた一方向回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合には、前記クラッチ機構のロータと該ロータと組み合わせられたトルク係合体とが協働して回転することにより前記ロータに高粘性物質の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体がロータに対して空転状態となることを特徴とする錠前。
【請求項4】
請求項3に於いて、クラッチ機構は、ロータと、該ロータの凹所に組み込まれかつトルク軸を有するトルク係合体とから成ることを特徴とする錠前。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に於いて、ロータの凹所に内装されるトルク係合体は、一方向に回転する場合には空転し、他方向に回転する場合には、その係合爪が前記凹所に形成したラチェット歯に係止されると共に、弧状楔部分に外拡変位作用が生じ、該弧状楔部分が前記ロータの内周壁に圧接することを特徴とする錠前。
【請求項1】
錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向によって制動力が異なる回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、該回転制御ダンパー部材は、前記錠箱内に固定されたケースと、このケースに内装されるロータのトルク軸の突出先端部に固定されかつ前記ラックギヤと噛合する前記ピニオンギヤと、前記ロータに設けられたブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根と、前記ケースに充填された高粘性物質とから成り、前記ブレーキ面を有する制御突起或いは回転制御用羽根に対する前記高粘性物質の粘性抵抗は、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合の方が、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合よりも大きくなることを特徴とする錠前。
【請求項2】
請求項1に於いて、錠箱の幅広側壁に位置決め用の嵌合孔が形成され、回転制御ダンパー部材のケースは、前記嵌合孔に該ケースの一端部が嵌合した状態でかつ該ケースに突設したフランジ部分を介して前記幅広側壁の内壁面に固定されていることを特徴とする錠前。
【請求項3】
錠箱内に、少なくとも合鍵の操作力によって施・解錠方向へ回転するダルマと、後端側の係合部に該ダルマの駆動腕が選択的に係合する対向係合面を有すると共に、その先端部が戸枠側の受け金具と係脱するデッドボルトと、該デッドボルトが前記駆動腕によって押出される施錠時、及び前記駆動腕によって前記デッドボルトが引き戻される解錠時、該デッドボルトを移動方向に押し付けるようにバネ力がそれぞれ作用するクリック手段を備えた錠前に於いて、前記デッドボルトにその移動方向に沿ってラックギヤを設け、一方、該ラックギヤに噛合するピニオンギヤを有すると共に、回転方向如何によって制動力が発生するクラッチ機構を備えた一方向回転制御ダンパー部材を前記錠箱内に配設し、前記合鍵の操作力に基づき前記デッドボルトが施錠状態から解錠状態になる場合には、前記クラッチ機構のロータと該ロータと組み合わせられたトルク係合体とが協働して回転することにより前記ロータに高粘性物質の抵抗が作用し、これに対して、該デッドボルトが解錠状態から施錠状態になる場合には、前記トルク係合体がロータに対して空転状態となることを特徴とする錠前。
【請求項4】
請求項3に於いて、クラッチ機構は、ロータと、該ロータの凹所に組み込まれかつトルク軸を有するトルク係合体とから成ることを特徴とする錠前。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に於いて、ロータの凹所に内装されるトルク係合体は、一方向に回転する場合には空転し、他方向に回転する場合には、その係合爪が前記凹所に形成したラチェット歯に係止されると共に、弧状楔部分に外拡変位作用が生じ、該弧状楔部分が前記ロータの内周壁に圧接することを特徴とする錠前。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−77441(P2012−77441A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220431(P2010−220431)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】
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