鍛造加工方法および鍛造加工システム
【課題】生産性に優れ、品質の安定した閉塞鍛造等を行えるようにした鍛造加工方法を提供する。
【解決手段】鍛造プレス機に金型を脱着可能にセットしてコネクティングロッドの閉塞鍛造を行い、一回の鍛造成形毎にその都度金型を鍛造プレス機から取り出して、別の金型と交換する方式である。金型は、水平方向に接近離間可能な一対の閉塞ダイ12とこの閉塞ダイ12を収容するダイケース11とを有している。鍛造プレス機の圧下力に基づいてダイケース11は一対の閉塞ダイ12同士を型締め方向に駆動するようになっていて、一回の鍛造成形毎に閉塞ダイ12を鍛造品とともに鍛造プレス機から取り出して、別の閉塞ダイ12と交換する。
【解決手段】鍛造プレス機に金型を脱着可能にセットしてコネクティングロッドの閉塞鍛造を行い、一回の鍛造成形毎にその都度金型を鍛造プレス機から取り出して、別の金型と交換する方式である。金型は、水平方向に接近離間可能な一対の閉塞ダイ12とこの閉塞ダイ12を収容するダイケース11とを有している。鍛造プレス機の圧下力に基づいてダイケース11は一対の閉塞ダイ12同士を型締め方向に駆動するようになっていて、一回の鍛造成形毎に閉塞ダイ12を鍛造品とともに鍛造プレス機から取り出して、別の閉塞ダイ12と交換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞鍛造等のいわゆる型鍛造を目的とした鍛造加工方法および鍛造加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のコネクティングロッドの閉塞鍛造方法として特許文献1に記載のものが提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載の閉塞鍛造方法では、金型として下型が4分割されたものを採用した上で、予めコネクティングロッドの各構成部分に対応した体積配分がなされた予備成形体を用い、3方向(前後、左右方向および上下方向)からの押圧の時期を変時させた閉塞鍛造により、いわゆる一個取り方式にてコネクティングロッドを製造するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−197546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の閉塞鍛造方法では、いわゆる一個取り(打ち)方式の閉塞鍛造方式であるだけでなく、当然のことながら1成形サイクル毎にスケールの除去等を目的とした清掃(または洗浄)や潤滑剤の塗布作業が必須であることから、サイクルタイムが長くなることによって生産性の向上に限界がある。また、他の仕様の製品の閉塞鍛造に際しては金型全体を交換する必要があり、その金型交換には長時間を要するため、いわゆる他品種少量生産に対応することが困難となる。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、特に生産性に優れ、しかも品質の安定した閉塞鍛造等を行えるようにした鍛造加工方法および鍛造加工システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鍛造加工方法は、鍛造プレス機に金型を脱着可能にセットして型鍛造を行い、一回の鍛造成形毎に金型を鍛造プレス機からその都度取り出して、別の金型と交換することを基本とするものである。
【0008】
この場合、望ましくは、鍛造プレス機に隣接する待機エリアに次に投入すべき金型を待機させておくものとする。また、上記金型としては、例えば水平方向に接近離間可能な一対の内型とこの内型を収容する外型とを有しているものとし、鍛造プレス機の圧下力に基づいて外型は一対の内型同士を型締め方向に駆動するようになっていて、一回の鍛造成形毎に内型を鍛造成形後のワークとともに鍛造プレス機から取り出して、別の内型と交換するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一回の鍛造成形毎に金型を交換することで直ちに次の鍛造成形サイクルに移行できるので、サイクルタイムが短く、生産性が高いものとなるほか、いわゆる他品種少量生産にも柔軟に対応できる。また、その都度新規な金型で鍛造を行うことになるので、鍛造成形品の品質の向上と安定化が図れる。
【0010】
さらに、スケールの除去等を目的とした清掃(または洗浄)や潤滑剤の塗布作業は鍛造プレス機外で行えるので、これらの付帯作業がサイクルタイムに影響することがなく、一段と生産性が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の製造対象となるコネクティングロッドの鍛造後の形状を示す概略斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、図1に示したコネクティングロッドの鍛造に用いられる閉塞鍛造用金型の概略説明図。
【図4】図3に示した閉塞鍛造用金型の閉塞ダイが下死点に達した状態を示す説明図。
【図5】図3,4に示した閉塞鍛造用金型の大端部用パンチが下死点に達した状態を示す説明図。
【図6】図5のB−B線に沿う断面説明図。
【図7】図6の拡大図であって、大端部用パンチの成形面が平坦面である場合の説明図。
【図8】図7の要部拡大図。
【図9】図8での素材肉流動方向の説明図。
【図10】図3〜5に示した閉塞鍛造用金型の採用とその交換を目的とした鍛造加工システムの概略平面図。
【図11】図10の正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜6は本発明を実施するためのより具体的な形態としてコネクティングロッドの閉塞鍛造方法の一例を示している。特に図1,2は製造対象となるコネクティングロッド1の概略形状を、図3〜6は上記コネクティングロッド1の製造に用いられる閉塞鍛造装置としての温間鍛造のための金型構造とその挙動をそれぞれ示している。
【0013】
コネクティングロッド1は、大端部2と小端部3のほかそれらの両者をつなぐ棒状または軸状の連接ロッド部4を有している。大端部2には半割状で且つ半円状の軸受凹部5が形成されていて、その大端部2の端面2aであるところの突き合わせ面(分割面)に突き合わされる図示外の半円状のベアリングキャップと軸受メタルとを介して、同じく図示外のクランクシャフトのクランクピン部に回転可能に連結される。他方、小端部3にはピン穴4が形成されていて、このピン穴4に挿入される図示外のピストンピンを介してピストンに連結される。
【0014】
なお、上記軸受凹部5が半円状であるとは、当該軸受凹部5を軸心方向(コネクティングロッド1が組み付けられるクランクピン部の軸心方向)から見たときの形状を言う。また、図1に示したピン穴4は鍛造後であって機械加工前の不完全な形状のものである。
【0015】
図1,2に示すように、連接ロッド部4の表裏両面にはその幅方向両端部を含むようにリブ6が閉ループ状に突出形成されている。これにより連接ロッド部4自体は断面略H形状のものとして形成されていて、それらのリブ6,6同士の間に形成される溝7の幅寸法Wは大端部2寄りの部分で最大となっている。
【0016】
図3〜6は上記コネクティングロッド1の製造に用いられる閉塞鍛造装置としての温間鍛造のための金型構造とその挙動を示している。図3に示すように、この金型10は、大別して、四角形の外枠として機能するダイケース11と、このダイケース11に挿入される左右一対の閉塞ダイ(分割型)12と、これらの閉塞ダイ12にダイケース11への圧下力(押し込み力)を付与するパンチホルダー13と、このパンチホルダー13に相対移動可能(上下動可能)に支持された大端部用パンチ14とを備える。
【0017】
ダイケース11はその中央の四角孔状のダイ受容部15のうち正対する二面が傾斜カム面(テーパ面)15aとなっていて、他方、ダイ受容部15に収容または挿入されることになる左右一対の閉塞ダイ12はダイケース11側の傾斜カム面15aに対応する背面側がそれぞれ傾斜カム面(テーパ面)12aとなっている。これにより、実質的にダイケース11が外型として、そのダイケース11に収容される一対の閉塞ダイ12が内型としてそれぞれ機能することになる。
【0018】
そして、鍛造プレス機がパンチホルダー13に及ぼす圧下力をもって、一対の閉塞ダイ12がダイケース11内に押し込まれると、図4に示すように傾斜カム面12a,15a同士の摺接により一対の閉塞ダイ12,12同士が互いに接近動作することになる。なお、ダイケース11の機能よりして、外型としてのダイケース11は内型としての左右一対の閉塞ダイ12よりも硬質の材料で形成されていることが望ましい。
【0019】
左右一対の閉塞ダイ12の突き合わせ面(型割面)には製品であるコネクティングロッド1の形状に対応した半割状のインプレッション部が彫り込み形成されていて、それらのインプレッション部に予め加熱された例えば段付き棒状の素材(ブランク)16が挿入された状態で一対の閉塞ダイ12がダイケース11に収容または挿入される。なお、棒状の素材16は前工程にて段付き状に予備成形されていることから、いわゆるプリフォーム(予備成形体)とも言うべきものである。
【0020】
そして、上記のように傾斜カム面12a,15a同士の摺接により一対の閉塞ダイ12,12同士が互いに接近動作すると、やがては双方の閉塞ダイ12,12同士が突き合わされて、図4のようにいわゆる型締め状態となる。この時点で初めてダイケース11に対して閉塞ダイ12が下死点に到達したことになり、以降のダイケース11に対する閉塞ダイ12の押し込みが不能となる。
【0021】
この型締め状態に至る過程で素材16がコネクティングロッド1の粗形状に鍛造成形され、型締め状態では上記インプレッション部が不完全ながら密閉状態となって素材肉が充満することになる。なお、双方の閉塞ダイ12が下死点に到達して型締め状態となっても、双方の閉塞ダイ12の上面には大端部用パンチ14を挿入可能な開口部が確保されている。
【0022】
上記のように双方の閉塞ダイ12が下死点に到達して型締め状態となると、図5,6に示すように、やがてはパンチホルダー13に支持されている大端部用パンチ14が鍛造プレス機の圧下力を受けて下降して、インプレッション部内に押し込まれる。これにより、素材16、特に素材16のうちでも比較的ボリュームの大きな大端部2(図1参照)近傍を長手方向に据え込んで、軸受凹部5(図1参照)を含む当該大端部2近傍を据え込み成形する。
【0023】
以上の説明から明らかなように、大端部用パンチ14は、上記のような据え込み機能とともに、軸受凹部5のほか大端部2の端面2a(図1参照)である突き合わせ面(分割面)を所定形状に仕上げる機能を有している。このような大端部用パンチ14による据え込みにより、いわゆる閉塞鍛造のかたちでコネクティングロッド1の形状精度が高められ、これをもってコネクティングロッド1の粗形状の鍛造成形が完了することになる。なお、本実施の形態では、閉塞鍛造ではあっても密閉された閉塞空間内での一部の「ばり」の発生は許容される。
【0024】
ここで、先に述べたように大端部2の据え込み機能とともに軸受凹部5のほか大端部2の端面2aである突き合わせ面(分割面)の成形を司っている大端部用パンチ14について、図7,8に示すように大端部用パンチ14のうちでも軸受凹部5の最深部の成形を司っている部分について平坦な加圧拘束面18としてある。なお、図7,8では、軸受凹部5に駄肉17を付けた形状で鍛造成形する場合の例を示している。
【0025】
さらに、図1,2に基づいて先に述べたように、コネクティングロッド1における連接ロッド部4の表裏両面にはリブ6が突出形成されていることにより、連接ロッド部4自体は断面略H形状のものとして形成されていて、それらのリブ6,6同士の間に形成される溝7の幅寸法Wは大端部2寄りの部分で最大となっている。そこで、図8に示した平坦な底部加圧拘束面18の幅寸法Pとこの溝7の幅寸法Wの最大寸法W1との関係として、底部加圧拘束面18の幅寸法Pが溝7の最大幅寸法W1よりも大きくなるように予め設定してある。
【0026】
したがって、このような大端部用パンチ14を用いて、図7および図8に示すように大端部2の据え込みを行うと、上記底部加圧拘束面18の形状が転写されることによって整形される平坦面5aを含む半割状の軸受凹部5の内周面全面および軸受凹部5の分割面となる大端部2の端面2aを加圧拘束した状態で据え込み成形を完了することになるものの、平坦面5aを含む故に軸受凹部5は図1のような半円状のものとはならずに、軸受凹部5をその軸心方向から見たときに当該軸受凹部5の最深部側が平坦面5aとなる不完全な凹部形状のままで据え込み成形を完了することにほかならない。
【0027】
そのため、図9に示すように、大端部用パンチ14による据え込みの際の素材肉の流れ方向m1が連接ロッド部4側に向かって底部加圧拘束面18(その底部加圧拘束面18によって成形される平坦面5a)と面直角方向を指向するようになり、比較的ボリュームの大きな大端部2と連接ロッド部4とのつなぎ部分の段差がある部分に積極的に充満させることができるようになる。そのため、当該つなぎ部分での欠肉等の鍛造欠陥の発生を未然に防止することが可能となる。この傾向は、図8に示した平坦な底部加圧拘束面18の幅寸法Pとリブ6,6同士の間の溝7の最大幅寸法W1との関係としてP>W1に予め設定してあることで一段と顕著となる。
【0028】
その上、図3〜6に示したように、インプレション部を有する左右一対の閉塞ダイ12をダイケース11に押し込んで鍛造成形する方式であるため、閉塞ダイ12,12同士の位置合わせが容易となるとともに、閉塞ダイ12,12同士を合わせたときに狙いとする形状が精度良く得られるようになり、ひいてはそれぞれの閉塞ダイ12のインプレッション部の型彫り加工も容易となる。
【0029】
ここで、軸受凹部5をその軸心方向から見たときに当該軸受凹部5の最深部側が平坦面5aとなる不完全な凹部形状のままで据え込み成形を完了することは、軸受凹部5の形状が正規な半円状のものとならずに軸受凹部5として不完全な形状のままであることを意味する。そこで、閉塞鍛造にて成形されたコネクティングロッド1に後工程にて機械加工を施すにあたり、上記平坦面5aよりも最深部側を駄肉17とともに略三日月状に切除するようにすれば、図1のように正規な半円状の軸受凹部5として仕上げることができる。
【0030】
図10,11は先に図3〜6に示した金型構造の採用を前提とした鍛造加工システムの概略を示し、特に図10はその平面図を、図11は正面図をそれぞれ示している。
【0031】
このシステムでは、いわゆる一個取り(打ち)方式のコネクティングロッド1の閉塞鍛造に際してその生産性向上のために、先に述べた外型としてのダイケース11を鍛造プレス機8に対して定位置固定式のものとする一方、そのダイケース11に対して脱着可能な内型としての左右一対の閉塞ダイ12を1セットとしてその都度ダイケース11にセットして閉塞鍛造を行うものとする。そして、一回の鍛造成形毎に閉塞ダイ12を鍛造後のコネクティングロッド1とともにダイケース11から取り出して、別の左右一対の閉塞ダイ12と交換する方式としてある。なお、以降の図10,11に関する説明にあたっては、上記左右一対の閉塞ダイ12が1セットとなったものを便宜上内型112と称するものとする。
【0032】
図10,11に示すように、鍛造プレス機8の近傍にはその鍛造プレス機8に隣接して、ロータリーテーブル20を主要素とするロータリーインデックスタイプであって且つマルチステーションタイプのストレージ装置21を配置してあるとともに、鍛造プレス機8とストレージ装置21との間には搬送手段としてのハンドリングロボット22を配置してある。ロータリーテーブル20は鍛造プレス機8の鍛造成形サイクルに同期して図示外の割り出し駆動機構によって所定角度毎に図10の矢印M方向に割り出し回転駆動される。
【0033】
このストレージ装置21は、先に述べたように一回の鍛造成形毎にその都度内型112を交換するにあたり、複数の内型112を待機させておくための待機エリアまたは循環型のストレージエリアとして機能することになる。同時に、内型112のスケール除去や潤滑剤塗布等のために定期的なメンテナンスを行うステージとしても機能する。
【0034】
上記ロータリーテーブル20上には、金型予熱ステーションS1、金型潤滑ステーションS2、ブランク金型セットステーションS3、金型投入/取出しステーションS4、ワーク取出しステーションS5、金型洗浄ステーションS6および金型損傷確認ステーションS7の各ステーション(ステージ)が設定されている。
【0035】
金型予熱ステーションS1には金型予熱装置23が用意されており、内型112が例えば60℃〜100℃程度に加熱されている。ロータリーテーブル20が金型予熱ステーションS1に割り出されると、前ステーションから送られてきた内型112を金型予熱装置23に取り込む一方、金型予熱装置23で既に加熱されている内型112をロータリーテーブル20上に移載する。なお、この金型予熱装置23には、当該金型予熱装置23で予熱されている内型112とは別に予熱完了後の内型112が少なくとも一つは待機しているものとする。
【0036】
金型潤滑ステーションS2では当該金型潤滑ステーションS2に割り出された内型112に対してそのインプレション部に潤滑剤を塗布する。この潤滑剤塗布作業は自動化機器による作業でも手作業でも良い。
【0037】
ブランク金型投入ステーションS3では先に潤滑剤が塗布されている内型112のインプレッション部に素材16であるブランク(プリフォーム)を投入する。なお、ブランクは温感鍛造に適した温度に予め加熱されている。このブランクの投入は、内型112、すなわち左右一対でセットとなった閉塞ダイ12,12同士の対向間隙であるインプレッション部にブランクを投入した上で、そのブランクが位置ずれしないように突き合わせておくものとする。
【0038】
金型投入/取出しステーションS4では、鍛造プレス機8側での1サイクル毎の鍛造成形サイクルが終わるのを待って、図3〜5に示したダイケース11から内型112(内型112が左右一対でセットとなった閉塞ダイ12を指すものであることは先に述べたとおりである。)をハンドリングロボット22にて取り出し、ロータリーテーブル20に移載する。なお、内型112には鍛造成形された鍛造品としてのコネクティングロッド1が収められたままである。そして、ロータリーテーブル20が割り出し回転するのを待って、前ステーションにてブランクが予めセットされている内型112をハンドリングロボット22にて鍛造プレス機8側のダイケース11にセットする。
【0039】
ここで、図11に示すように、鍛造プレス機8側には可動式の潤滑剤塗布装置24が付帯していることから、ダイケース11から内型112を取り出した後であって且つ次の内型112がセットされる前に、ダイケース11のうち内型112との摺動面を中心として潤滑剤を例えばスプレー方式にて塗布する。ダイケース11に新たな内型112がセットされた鍛造プレス機8側では、直ちに次の鍛造成形サイクルに移行することができる。
【0040】
ワーク取出しステーションS5では、内型112を開いて、鍛造成形されたコネクティングロッド1を取り出す。
【0041】
また、金型洗浄ステーションS6には金型洗浄機25が用意されており、例えばエアノズルやワイヤブラシ等を用いて特に内型112のコンプレッション部に付着しているスケール等の除去を目的とした洗浄が行われる。ロータリーテーブル20が金型洗浄ステーションS6に割り出されると、前ステーションから送られてきた内型112をハンドリングロボット26にて金型洗浄機25に取り込む一方、金型洗浄機25で既に洗浄された内型112をロータリーテーブル20上に移載する。なお、この金型洗浄機25には、当該金型洗浄機25で洗浄されている内型112とは別に洗浄完了後の内型112が少なくとも一つは待機しているものとする。
【0042】
金型損傷確認ステーション7では、作業者による外観の目視検査や打音検査のほか、例えばAE(アコースティック・エミッション)式の探傷機器を用いて内型112の割れ(クラック)等の異常の有無の検査を行う。異常が発見された場合には、該当する内型112をロータリーテーブル20から抜き出す一方、代わって新しい内型やメンテナンス済みの予備の内型をロータリーテーブル20に投入する。
【0043】
このようなストレージ装置21における各ステーションS1〜S7での作業を鍛造プレス機8側での鍛造成形サイクルに同期して行うことにより、鍛造プレス機8側では所定の鍛造成形サイクルを繰り返すだけとなり、いわゆる一個取り方式のコネクティングロッド1の鍛造ではあっても、鍛造プレス機8側での休止時間が大幅に短くなることから、生産性の高い効率的な閉塞鍛造を行うことができる。
【0044】
言い換えるならば、ブランクの投入や鍛造後のコネクティングロッド1の取り出しのほか、内型112の洗浄および潤滑剤塗布等の付帯的な補助作業は、いずれも鍛造プレス機8外で行われることになるので、これらの補助作業に要する時間が鍛造プレス機8側での鍛造成形サイクルに影響を及ぼすことがなくなり、鍛造成形サイクルタイムの短縮化によって生産性の向上を図ることができる。
【0045】
また、鍛造プレス機8のスライドの圧下ストロークが一定であって、ダイケース11および内型112の外形状が共通化されていれば、他品種少量生産にも容易且つ柔軟に対応することができる。
【0046】
ここで、上記以外の個々の効果を列挙するならば次のとおりである。
【0047】
(1)外型であるダイケース11を残して内型112(左右一対の閉塞ダイ12)のみをその都度交換する方式であるので、ダイケース11を含んだ金型全体を交換する方式と比べて、設備の小型化が図れる。
【0048】
(2)毎回洗浄済みの新鮮な内型112で鍛造を行うので、鍛造品の品質の向上と安定化が図れる。
【0049】
(3)内型112を予め予熱しておくことで、上記と同様に鍛造品の品質の向上と安定化が図れる。
【0050】
(4)内型112の損傷の有無の確認をその都度行い、必要に応じて内型112の入れ換えを行うことで、万が一内型112の損傷が発生した場合でも鍛造プレス機8を止めることなく対応することができ、生産を継続することができる。これによってもまた生産性が向上する。
【符号の説明】
【0051】
1…コネクティングロッド(鍛造品)
8…鍛造プレス機
11…ダイケース(外型)
12…閉塞ダイ(内型)
16…素材
20…ロータリーテーブル
21…ストレージ装置(待機エリア、循環型のストレージエリア)
22…ハンドリングロボット(搬送手段)
S1…金型予熱ステーション
S2…金型潤滑ステーション
S3…ブランク金型セットステーション
S4…金型投入/取出しステーション
S5…ワーク取出しステーション
S6…金型洗浄ステーション
S7…金型損傷確認ステーション
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞鍛造等のいわゆる型鍛造を目的とした鍛造加工方法および鍛造加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のコネクティングロッドの閉塞鍛造方法として特許文献1に記載のものが提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載の閉塞鍛造方法では、金型として下型が4分割されたものを採用した上で、予めコネクティングロッドの各構成部分に対応した体積配分がなされた予備成形体を用い、3方向(前後、左右方向および上下方向)からの押圧の時期を変時させた閉塞鍛造により、いわゆる一個取り方式にてコネクティングロッドを製造するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−197546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の閉塞鍛造方法では、いわゆる一個取り(打ち)方式の閉塞鍛造方式であるだけでなく、当然のことながら1成形サイクル毎にスケールの除去等を目的とした清掃(または洗浄)や潤滑剤の塗布作業が必須であることから、サイクルタイムが長くなることによって生産性の向上に限界がある。また、他の仕様の製品の閉塞鍛造に際しては金型全体を交換する必要があり、その金型交換には長時間を要するため、いわゆる他品種少量生産に対応することが困難となる。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、特に生産性に優れ、しかも品質の安定した閉塞鍛造等を行えるようにした鍛造加工方法および鍛造加工システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鍛造加工方法は、鍛造プレス機に金型を脱着可能にセットして型鍛造を行い、一回の鍛造成形毎に金型を鍛造プレス機からその都度取り出して、別の金型と交換することを基本とするものである。
【0008】
この場合、望ましくは、鍛造プレス機に隣接する待機エリアに次に投入すべき金型を待機させておくものとする。また、上記金型としては、例えば水平方向に接近離間可能な一対の内型とこの内型を収容する外型とを有しているものとし、鍛造プレス機の圧下力に基づいて外型は一対の内型同士を型締め方向に駆動するようになっていて、一回の鍛造成形毎に内型を鍛造成形後のワークとともに鍛造プレス機から取り出して、別の内型と交換するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一回の鍛造成形毎に金型を交換することで直ちに次の鍛造成形サイクルに移行できるので、サイクルタイムが短く、生産性が高いものとなるほか、いわゆる他品種少量生産にも柔軟に対応できる。また、その都度新規な金型で鍛造を行うことになるので、鍛造成形品の品質の向上と安定化が図れる。
【0010】
さらに、スケールの除去等を目的とした清掃(または洗浄)や潤滑剤の塗布作業は鍛造プレス機外で行えるので、これらの付帯作業がサイクルタイムに影響することがなく、一段と生産性が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の製造対象となるコネクティングロッドの鍛造後の形状を示す概略斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、図1に示したコネクティングロッドの鍛造に用いられる閉塞鍛造用金型の概略説明図。
【図4】図3に示した閉塞鍛造用金型の閉塞ダイが下死点に達した状態を示す説明図。
【図5】図3,4に示した閉塞鍛造用金型の大端部用パンチが下死点に達した状態を示す説明図。
【図6】図5のB−B線に沿う断面説明図。
【図7】図6の拡大図であって、大端部用パンチの成形面が平坦面である場合の説明図。
【図8】図7の要部拡大図。
【図9】図8での素材肉流動方向の説明図。
【図10】図3〜5に示した閉塞鍛造用金型の採用とその交換を目的とした鍛造加工システムの概略平面図。
【図11】図10の正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜6は本発明を実施するためのより具体的な形態としてコネクティングロッドの閉塞鍛造方法の一例を示している。特に図1,2は製造対象となるコネクティングロッド1の概略形状を、図3〜6は上記コネクティングロッド1の製造に用いられる閉塞鍛造装置としての温間鍛造のための金型構造とその挙動をそれぞれ示している。
【0013】
コネクティングロッド1は、大端部2と小端部3のほかそれらの両者をつなぐ棒状または軸状の連接ロッド部4を有している。大端部2には半割状で且つ半円状の軸受凹部5が形成されていて、その大端部2の端面2aであるところの突き合わせ面(分割面)に突き合わされる図示外の半円状のベアリングキャップと軸受メタルとを介して、同じく図示外のクランクシャフトのクランクピン部に回転可能に連結される。他方、小端部3にはピン穴4が形成されていて、このピン穴4に挿入される図示外のピストンピンを介してピストンに連結される。
【0014】
なお、上記軸受凹部5が半円状であるとは、当該軸受凹部5を軸心方向(コネクティングロッド1が組み付けられるクランクピン部の軸心方向)から見たときの形状を言う。また、図1に示したピン穴4は鍛造後であって機械加工前の不完全な形状のものである。
【0015】
図1,2に示すように、連接ロッド部4の表裏両面にはその幅方向両端部を含むようにリブ6が閉ループ状に突出形成されている。これにより連接ロッド部4自体は断面略H形状のものとして形成されていて、それらのリブ6,6同士の間に形成される溝7の幅寸法Wは大端部2寄りの部分で最大となっている。
【0016】
図3〜6は上記コネクティングロッド1の製造に用いられる閉塞鍛造装置としての温間鍛造のための金型構造とその挙動を示している。図3に示すように、この金型10は、大別して、四角形の外枠として機能するダイケース11と、このダイケース11に挿入される左右一対の閉塞ダイ(分割型)12と、これらの閉塞ダイ12にダイケース11への圧下力(押し込み力)を付与するパンチホルダー13と、このパンチホルダー13に相対移動可能(上下動可能)に支持された大端部用パンチ14とを備える。
【0017】
ダイケース11はその中央の四角孔状のダイ受容部15のうち正対する二面が傾斜カム面(テーパ面)15aとなっていて、他方、ダイ受容部15に収容または挿入されることになる左右一対の閉塞ダイ12はダイケース11側の傾斜カム面15aに対応する背面側がそれぞれ傾斜カム面(テーパ面)12aとなっている。これにより、実質的にダイケース11が外型として、そのダイケース11に収容される一対の閉塞ダイ12が内型としてそれぞれ機能することになる。
【0018】
そして、鍛造プレス機がパンチホルダー13に及ぼす圧下力をもって、一対の閉塞ダイ12がダイケース11内に押し込まれると、図4に示すように傾斜カム面12a,15a同士の摺接により一対の閉塞ダイ12,12同士が互いに接近動作することになる。なお、ダイケース11の機能よりして、外型としてのダイケース11は内型としての左右一対の閉塞ダイ12よりも硬質の材料で形成されていることが望ましい。
【0019】
左右一対の閉塞ダイ12の突き合わせ面(型割面)には製品であるコネクティングロッド1の形状に対応した半割状のインプレッション部が彫り込み形成されていて、それらのインプレッション部に予め加熱された例えば段付き棒状の素材(ブランク)16が挿入された状態で一対の閉塞ダイ12がダイケース11に収容または挿入される。なお、棒状の素材16は前工程にて段付き状に予備成形されていることから、いわゆるプリフォーム(予備成形体)とも言うべきものである。
【0020】
そして、上記のように傾斜カム面12a,15a同士の摺接により一対の閉塞ダイ12,12同士が互いに接近動作すると、やがては双方の閉塞ダイ12,12同士が突き合わされて、図4のようにいわゆる型締め状態となる。この時点で初めてダイケース11に対して閉塞ダイ12が下死点に到達したことになり、以降のダイケース11に対する閉塞ダイ12の押し込みが不能となる。
【0021】
この型締め状態に至る過程で素材16がコネクティングロッド1の粗形状に鍛造成形され、型締め状態では上記インプレッション部が不完全ながら密閉状態となって素材肉が充満することになる。なお、双方の閉塞ダイ12が下死点に到達して型締め状態となっても、双方の閉塞ダイ12の上面には大端部用パンチ14を挿入可能な開口部が確保されている。
【0022】
上記のように双方の閉塞ダイ12が下死点に到達して型締め状態となると、図5,6に示すように、やがてはパンチホルダー13に支持されている大端部用パンチ14が鍛造プレス機の圧下力を受けて下降して、インプレッション部内に押し込まれる。これにより、素材16、特に素材16のうちでも比較的ボリュームの大きな大端部2(図1参照)近傍を長手方向に据え込んで、軸受凹部5(図1参照)を含む当該大端部2近傍を据え込み成形する。
【0023】
以上の説明から明らかなように、大端部用パンチ14は、上記のような据え込み機能とともに、軸受凹部5のほか大端部2の端面2a(図1参照)である突き合わせ面(分割面)を所定形状に仕上げる機能を有している。このような大端部用パンチ14による据え込みにより、いわゆる閉塞鍛造のかたちでコネクティングロッド1の形状精度が高められ、これをもってコネクティングロッド1の粗形状の鍛造成形が完了することになる。なお、本実施の形態では、閉塞鍛造ではあっても密閉された閉塞空間内での一部の「ばり」の発生は許容される。
【0024】
ここで、先に述べたように大端部2の据え込み機能とともに軸受凹部5のほか大端部2の端面2aである突き合わせ面(分割面)の成形を司っている大端部用パンチ14について、図7,8に示すように大端部用パンチ14のうちでも軸受凹部5の最深部の成形を司っている部分について平坦な加圧拘束面18としてある。なお、図7,8では、軸受凹部5に駄肉17を付けた形状で鍛造成形する場合の例を示している。
【0025】
さらに、図1,2に基づいて先に述べたように、コネクティングロッド1における連接ロッド部4の表裏両面にはリブ6が突出形成されていることにより、連接ロッド部4自体は断面略H形状のものとして形成されていて、それらのリブ6,6同士の間に形成される溝7の幅寸法Wは大端部2寄りの部分で最大となっている。そこで、図8に示した平坦な底部加圧拘束面18の幅寸法Pとこの溝7の幅寸法Wの最大寸法W1との関係として、底部加圧拘束面18の幅寸法Pが溝7の最大幅寸法W1よりも大きくなるように予め設定してある。
【0026】
したがって、このような大端部用パンチ14を用いて、図7および図8に示すように大端部2の据え込みを行うと、上記底部加圧拘束面18の形状が転写されることによって整形される平坦面5aを含む半割状の軸受凹部5の内周面全面および軸受凹部5の分割面となる大端部2の端面2aを加圧拘束した状態で据え込み成形を完了することになるものの、平坦面5aを含む故に軸受凹部5は図1のような半円状のものとはならずに、軸受凹部5をその軸心方向から見たときに当該軸受凹部5の最深部側が平坦面5aとなる不完全な凹部形状のままで据え込み成形を完了することにほかならない。
【0027】
そのため、図9に示すように、大端部用パンチ14による据え込みの際の素材肉の流れ方向m1が連接ロッド部4側に向かって底部加圧拘束面18(その底部加圧拘束面18によって成形される平坦面5a)と面直角方向を指向するようになり、比較的ボリュームの大きな大端部2と連接ロッド部4とのつなぎ部分の段差がある部分に積極的に充満させることができるようになる。そのため、当該つなぎ部分での欠肉等の鍛造欠陥の発生を未然に防止することが可能となる。この傾向は、図8に示した平坦な底部加圧拘束面18の幅寸法Pとリブ6,6同士の間の溝7の最大幅寸法W1との関係としてP>W1に予め設定してあることで一段と顕著となる。
【0028】
その上、図3〜6に示したように、インプレション部を有する左右一対の閉塞ダイ12をダイケース11に押し込んで鍛造成形する方式であるため、閉塞ダイ12,12同士の位置合わせが容易となるとともに、閉塞ダイ12,12同士を合わせたときに狙いとする形状が精度良く得られるようになり、ひいてはそれぞれの閉塞ダイ12のインプレッション部の型彫り加工も容易となる。
【0029】
ここで、軸受凹部5をその軸心方向から見たときに当該軸受凹部5の最深部側が平坦面5aとなる不完全な凹部形状のままで据え込み成形を完了することは、軸受凹部5の形状が正規な半円状のものとならずに軸受凹部5として不完全な形状のままであることを意味する。そこで、閉塞鍛造にて成形されたコネクティングロッド1に後工程にて機械加工を施すにあたり、上記平坦面5aよりも最深部側を駄肉17とともに略三日月状に切除するようにすれば、図1のように正規な半円状の軸受凹部5として仕上げることができる。
【0030】
図10,11は先に図3〜6に示した金型構造の採用を前提とした鍛造加工システムの概略を示し、特に図10はその平面図を、図11は正面図をそれぞれ示している。
【0031】
このシステムでは、いわゆる一個取り(打ち)方式のコネクティングロッド1の閉塞鍛造に際してその生産性向上のために、先に述べた外型としてのダイケース11を鍛造プレス機8に対して定位置固定式のものとする一方、そのダイケース11に対して脱着可能な内型としての左右一対の閉塞ダイ12を1セットとしてその都度ダイケース11にセットして閉塞鍛造を行うものとする。そして、一回の鍛造成形毎に閉塞ダイ12を鍛造後のコネクティングロッド1とともにダイケース11から取り出して、別の左右一対の閉塞ダイ12と交換する方式としてある。なお、以降の図10,11に関する説明にあたっては、上記左右一対の閉塞ダイ12が1セットとなったものを便宜上内型112と称するものとする。
【0032】
図10,11に示すように、鍛造プレス機8の近傍にはその鍛造プレス機8に隣接して、ロータリーテーブル20を主要素とするロータリーインデックスタイプであって且つマルチステーションタイプのストレージ装置21を配置してあるとともに、鍛造プレス機8とストレージ装置21との間には搬送手段としてのハンドリングロボット22を配置してある。ロータリーテーブル20は鍛造プレス機8の鍛造成形サイクルに同期して図示外の割り出し駆動機構によって所定角度毎に図10の矢印M方向に割り出し回転駆動される。
【0033】
このストレージ装置21は、先に述べたように一回の鍛造成形毎にその都度内型112を交換するにあたり、複数の内型112を待機させておくための待機エリアまたは循環型のストレージエリアとして機能することになる。同時に、内型112のスケール除去や潤滑剤塗布等のために定期的なメンテナンスを行うステージとしても機能する。
【0034】
上記ロータリーテーブル20上には、金型予熱ステーションS1、金型潤滑ステーションS2、ブランク金型セットステーションS3、金型投入/取出しステーションS4、ワーク取出しステーションS5、金型洗浄ステーションS6および金型損傷確認ステーションS7の各ステーション(ステージ)が設定されている。
【0035】
金型予熱ステーションS1には金型予熱装置23が用意されており、内型112が例えば60℃〜100℃程度に加熱されている。ロータリーテーブル20が金型予熱ステーションS1に割り出されると、前ステーションから送られてきた内型112を金型予熱装置23に取り込む一方、金型予熱装置23で既に加熱されている内型112をロータリーテーブル20上に移載する。なお、この金型予熱装置23には、当該金型予熱装置23で予熱されている内型112とは別に予熱完了後の内型112が少なくとも一つは待機しているものとする。
【0036】
金型潤滑ステーションS2では当該金型潤滑ステーションS2に割り出された内型112に対してそのインプレション部に潤滑剤を塗布する。この潤滑剤塗布作業は自動化機器による作業でも手作業でも良い。
【0037】
ブランク金型投入ステーションS3では先に潤滑剤が塗布されている内型112のインプレッション部に素材16であるブランク(プリフォーム)を投入する。なお、ブランクは温感鍛造に適した温度に予め加熱されている。このブランクの投入は、内型112、すなわち左右一対でセットとなった閉塞ダイ12,12同士の対向間隙であるインプレッション部にブランクを投入した上で、そのブランクが位置ずれしないように突き合わせておくものとする。
【0038】
金型投入/取出しステーションS4では、鍛造プレス機8側での1サイクル毎の鍛造成形サイクルが終わるのを待って、図3〜5に示したダイケース11から内型112(内型112が左右一対でセットとなった閉塞ダイ12を指すものであることは先に述べたとおりである。)をハンドリングロボット22にて取り出し、ロータリーテーブル20に移載する。なお、内型112には鍛造成形された鍛造品としてのコネクティングロッド1が収められたままである。そして、ロータリーテーブル20が割り出し回転するのを待って、前ステーションにてブランクが予めセットされている内型112をハンドリングロボット22にて鍛造プレス機8側のダイケース11にセットする。
【0039】
ここで、図11に示すように、鍛造プレス機8側には可動式の潤滑剤塗布装置24が付帯していることから、ダイケース11から内型112を取り出した後であって且つ次の内型112がセットされる前に、ダイケース11のうち内型112との摺動面を中心として潤滑剤を例えばスプレー方式にて塗布する。ダイケース11に新たな内型112がセットされた鍛造プレス機8側では、直ちに次の鍛造成形サイクルに移行することができる。
【0040】
ワーク取出しステーションS5では、内型112を開いて、鍛造成形されたコネクティングロッド1を取り出す。
【0041】
また、金型洗浄ステーションS6には金型洗浄機25が用意されており、例えばエアノズルやワイヤブラシ等を用いて特に内型112のコンプレッション部に付着しているスケール等の除去を目的とした洗浄が行われる。ロータリーテーブル20が金型洗浄ステーションS6に割り出されると、前ステーションから送られてきた内型112をハンドリングロボット26にて金型洗浄機25に取り込む一方、金型洗浄機25で既に洗浄された内型112をロータリーテーブル20上に移載する。なお、この金型洗浄機25には、当該金型洗浄機25で洗浄されている内型112とは別に洗浄完了後の内型112が少なくとも一つは待機しているものとする。
【0042】
金型損傷確認ステーション7では、作業者による外観の目視検査や打音検査のほか、例えばAE(アコースティック・エミッション)式の探傷機器を用いて内型112の割れ(クラック)等の異常の有無の検査を行う。異常が発見された場合には、該当する内型112をロータリーテーブル20から抜き出す一方、代わって新しい内型やメンテナンス済みの予備の内型をロータリーテーブル20に投入する。
【0043】
このようなストレージ装置21における各ステーションS1〜S7での作業を鍛造プレス機8側での鍛造成形サイクルに同期して行うことにより、鍛造プレス機8側では所定の鍛造成形サイクルを繰り返すだけとなり、いわゆる一個取り方式のコネクティングロッド1の鍛造ではあっても、鍛造プレス機8側での休止時間が大幅に短くなることから、生産性の高い効率的な閉塞鍛造を行うことができる。
【0044】
言い換えるならば、ブランクの投入や鍛造後のコネクティングロッド1の取り出しのほか、内型112の洗浄および潤滑剤塗布等の付帯的な補助作業は、いずれも鍛造プレス機8外で行われることになるので、これらの補助作業に要する時間が鍛造プレス機8側での鍛造成形サイクルに影響を及ぼすことがなくなり、鍛造成形サイクルタイムの短縮化によって生産性の向上を図ることができる。
【0045】
また、鍛造プレス機8のスライドの圧下ストロークが一定であって、ダイケース11および内型112の外形状が共通化されていれば、他品種少量生産にも容易且つ柔軟に対応することができる。
【0046】
ここで、上記以外の個々の効果を列挙するならば次のとおりである。
【0047】
(1)外型であるダイケース11を残して内型112(左右一対の閉塞ダイ12)のみをその都度交換する方式であるので、ダイケース11を含んだ金型全体を交換する方式と比べて、設備の小型化が図れる。
【0048】
(2)毎回洗浄済みの新鮮な内型112で鍛造を行うので、鍛造品の品質の向上と安定化が図れる。
【0049】
(3)内型112を予め予熱しておくことで、上記と同様に鍛造品の品質の向上と安定化が図れる。
【0050】
(4)内型112の損傷の有無の確認をその都度行い、必要に応じて内型112の入れ換えを行うことで、万が一内型112の損傷が発生した場合でも鍛造プレス機8を止めることなく対応することができ、生産を継続することができる。これによってもまた生産性が向上する。
【符号の説明】
【0051】
1…コネクティングロッド(鍛造品)
8…鍛造プレス機
11…ダイケース(外型)
12…閉塞ダイ(内型)
16…素材
20…ロータリーテーブル
21…ストレージ装置(待機エリア、循環型のストレージエリア)
22…ハンドリングロボット(搬送手段)
S1…金型予熱ステーション
S2…金型潤滑ステーション
S3…ブランク金型セットステーション
S4…金型投入/取出しステーション
S5…ワーク取出しステーション
S6…金型洗浄ステーション
S7…金型損傷確認ステーション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造プレス機に金型を脱着可能にセットして型鍛造を行い、一回の鍛造成形毎に金型を鍛造プレス機から取り出して、別の金型と交換することを特徴とする鍛造加工方法。
【請求項2】
鍛造プレス機に隣接する待機エリアに次に投入すべき金型を待機させておくことを特徴とする請求項1に記載の鍛造加工方法。
【請求項3】
上記金型は、水平方向に接近離間可能な一対の内型とこの内型を収容する外型とを有していて、鍛造プレス機の圧下力に基づいて外型は一対の内型同士を型締め方向に駆動するようになっていて、
一回の鍛造成形毎に内型を鍛造成形後の鍛造品とともに鍛造プレス機から取り出して、別の内型と交換することを特徴とする請求項2に記載の鍛造加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の鍛造加工方法に用いる鍛造加工システムであって、
上記待機エリアは複数のステーションを有する循環型のストレージエリアとなっていて、
このストレージエリアは内型のメンテナンスを司るステーションを含んでいることを特徴とする鍛造加工システム。
【請求項5】
上記メンテナンスを司るステーションとして、内型の洗浄および潤滑剤塗布を司るそれぞれのステーションを含んでいることを特徴とする請求項4に記載の鍛造加工システム。
【請求項6】
上記ストレージエリアは、内型からの鍛造成形後の鍛造品の取り出しおよび内型への素材の投入を司るそれぞれのステーションを含んでいることを特徴とする請求項5に記載の鍛造加工システム。
【請求項7】
上記ストレージエリアは内型の予熱を司るステーションを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の鍛造加工システム。
【請求項8】
上記鍛造プレス機とストレージエリアとの間での内型の搬出入を司る搬送手段を設けてあることを特徴とする請求項7に記載の鍛造加工システム。
【請求項9】
上記ストレージエリアはロータリーテーブルを主要素とするマルチステーションタイプのものとして構成してあることを特徴とする請求項8に記載の鍛造加工システム。
【請求項10】
上記型鍛造は閉塞鍛造であって、且つ内型は閉塞鍛造用のものであることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一つに記載の鍛造加工システム。
【請求項11】
上記外型は内型よりも硬質の材料で形成されていることを特徴とする請求項4〜10のいずれか一つに記載の鍛造加工システム。
【請求項1】
鍛造プレス機に金型を脱着可能にセットして型鍛造を行い、一回の鍛造成形毎に金型を鍛造プレス機から取り出して、別の金型と交換することを特徴とする鍛造加工方法。
【請求項2】
鍛造プレス機に隣接する待機エリアに次に投入すべき金型を待機させておくことを特徴とする請求項1に記載の鍛造加工方法。
【請求項3】
上記金型は、水平方向に接近離間可能な一対の内型とこの内型を収容する外型とを有していて、鍛造プレス機の圧下力に基づいて外型は一対の内型同士を型締め方向に駆動するようになっていて、
一回の鍛造成形毎に内型を鍛造成形後の鍛造品とともに鍛造プレス機から取り出して、別の内型と交換することを特徴とする請求項2に記載の鍛造加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の鍛造加工方法に用いる鍛造加工システムであって、
上記待機エリアは複数のステーションを有する循環型のストレージエリアとなっていて、
このストレージエリアは内型のメンテナンスを司るステーションを含んでいることを特徴とする鍛造加工システム。
【請求項5】
上記メンテナンスを司るステーションとして、内型の洗浄および潤滑剤塗布を司るそれぞれのステーションを含んでいることを特徴とする請求項4に記載の鍛造加工システム。
【請求項6】
上記ストレージエリアは、内型からの鍛造成形後の鍛造品の取り出しおよび内型への素材の投入を司るそれぞれのステーションを含んでいることを特徴とする請求項5に記載の鍛造加工システム。
【請求項7】
上記ストレージエリアは内型の予熱を司るステーションを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の鍛造加工システム。
【請求項8】
上記鍛造プレス機とストレージエリアとの間での内型の搬出入を司る搬送手段を設けてあることを特徴とする請求項7に記載の鍛造加工システム。
【請求項9】
上記ストレージエリアはロータリーテーブルを主要素とするマルチステーションタイプのものとして構成してあることを特徴とする請求項8に記載の鍛造加工システム。
【請求項10】
上記型鍛造は閉塞鍛造であって、且つ内型は閉塞鍛造用のものであることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一つに記載の鍛造加工システム。
【請求項11】
上記外型は内型よりも硬質の材料で形成されていることを特徴とする請求項4〜10のいずれか一つに記載の鍛造加工システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−228707(P2012−228707A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97921(P2011−97921)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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