説明

長波長放射を有する非極性III窒化物発光ダイオード

m平面基板上に成長するIII窒化物薄膜は、27.5nm以上のバリヤー厚および8nm以上の井戸厚を有する複数の量子井戸(MQW)を含む。放射波長は、MQWのバリヤー厚を選択することによって制御され得る。III窒化物薄膜を用いて製作されるデバイスは、長波長放射を有する非極性III窒化物発光ダイオード(LED)を含む。III窒化物薄膜は、27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、35 U.S.C.Section 119(e)の下における、Hisashi Yamada、Kenji Iso、およびShuji Nakamuraによって2007年8月8日に出願され、名称が「NONPOLAR III−NITRIDE LIGHT EMITTING DIODES WITH LONG WAVELENGTH EMISSION」であり、代理人の整理番号30794.247−US−P1(2008−004−1)である、米国仮特許出願第60/954,770号の利益を主張し、該仮特許出願は本明細書に参考として援用される。
【0002】
本出願は、以下の同時係属中で同一人に譲渡された米国特許出願に関連する。すなわち
Asako Hirai、Zhongyuan Jia、Makoto Saito、Hisashi Yamada、Kenji Iso、Steven P.DenBaars、Shuji Nakamura、およびJames S.Speckによって2008年6月16日に出願され、名称が「PLANAR NONPOLAR M−PLANE GROUP III NITRIDE FILMS GROWN ON MISCUT SUBSTRATES」であり、代理人の整理番号30794.238−US−U1(2007−674−2)である、米国出願第12/140,096号であり、該出願は、Asako Hirai、Zhongyuan Jia、Makoto Saito、Hisashi Yamada、Kenji Iso、Steven P.DenBaars、Shuji Nakamura、およびJames S.Speckによって2007年6月15日に出願され、名称が「PLANAR NONPOLAR M−PLANE GROUP III NITRIDE FILMS GROWN ON MISCUT SUBSTRATES」であり、代理人の整理番号30794.238−US−P1(2007−674−1)である、米国仮出願第60/944,206号の利益を主張し、そして、
Kenji Iso、Hisashi Yamada、Makoto Saito、Asako Hirai、Steven P.DenBaars、James S.Speck、およびShuji Nakamuraによって本出願と同日に出願され、名称が「PLANAR NONPOLAR M−PLANE GROUP III−NITRIDE FILMS GROWN ON MISCUT SUBSTRATES」であり、代理人の整理番号30794.249−US−U1(2008−063−2)である、米国出願第xx/xxx,xxx号であり、該出願は、Kenji Iso、Hisashi Yamada、Makoto Saito、Asako Hirai、Steven P.DenBaars、James S.Speck、およびShuji Nakamuraによって2007年8月8日に出願され、名称が「PLANAR NONPOLAR M−PLANE GROUP III−NITRIDE FILMS GROWN ON MISCUT SUBSTRATES」であり、代理人の整理番号30794.249−US−P1(2008−063−1)である、米国仮出願第60/954,744号、および、Hisashi Yamada、Kenji Iso、Makoto Saito、Asako Hirai、Steven P.DenBaars、James S.Speck、およびShuji Nakamuraによって2007年8月8日に出願され、名称が「III−NITRIDE FILMS GROWN ON MISCUT SUBSTRATES」であり、代理人の整理番号30794.248−US−P1(2008−062−1)である、米国仮出願第60/954,767号の利益を主張し、
これらの出願のすべてが、本明細書に参考として援用される。
【0003】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、InGaN/GaN発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)に関し、より詳細には、波長が、複数の量子井戸(MQW)のバリヤー厚を選択することによって制御され得る非極性III窒化物LEDに関する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の説明)
窒化ガリウム(GaN)ならびにアルミニウムおよびインジウムを含んでいるGaNの三元化合物および四元化合物(AlGaN、InGaN、AlInGaN)の有用性は、可視および紫外の光電子デバイスおよび高出力電子デバイスの製作のために十分に確立されている。これらの化合物は、本明細書において、III窒化物、もしくはIII窒化物、もしくは単に窒化物と呼ばれるか、または命名法(Al,B,Ga,In)Nによって表される。これらの化合物から作られるデバイスは典型的には、分子線エピタキシー(MBE)、金属有機化学気相成長(MOCVD)、およびハイドライド気相エピタキシー(HVPE)を含む成長技術を用いてエピタキシャル成長させられる。
【0005】
電子デバイスおよび光電子デバイスの現在の窒化物技術は、極性のc方向に沿って成長した窒化物薄膜を用いる。しかしながら、III窒化物ベースの光電子デバイスおよび電子デバイスにおける従来のc平面量子井戸構造は、強い圧電分極および自発分極の存在により、望ましくない量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を被る。c方向に沿った強い固有の電界は、電子および空孔の空間的分離を引き起こし、このことは今度は、キャリア再結合効率の制限、発振器強度の減少、および長波長シフトエミッション(red−shifted emission)を生じさせる。
【0006】
III族窒化物光電子デバイスにおける自発分極効果および圧電分極効果を除去する1つのアプローチは、結晶の非極性平面上にデバイスを成長させることである。例えば、GaN結晶において、そのような平面は、等しい数のGa原子およびN原子を含み、電荷中立である。さらに、その後の非極性層は、互いに等価であり、それでバルク結晶は、成長方向に沿って分極されない。GaNにおける対称−等価の非極性平面の2つのそのような族は、総称的にa平面として公知の{11−20}族であり、総称的にm平面として公知の{10−10}族である。
【0007】
分極のもう一つの原因は、圧電分極である。これは、非類似の組成物(および従って異なる格子定数)の(Al,In,Ga,B)N層が窒化物ヘテロ構造で成長するときに起り得るように、材料が圧縮ひずみまたは引張りひずみを受けるとき、起る。例えば、GaN鋳型(template)上の薄いAlGaN層は、平面内の引張りひずみを有し、GaN鋳型上の薄いInGaN層は、平面内の圧縮ひずみを有し、これらは両方ともGaNに整合する格子に起因する。従って、GaN上のInGaN量子井戸に対して圧電分極は、InGaNおよびGaNの自発分極の方向とは反対の方向に向く。GaNに整合するAlGaN層格子に対して、圧電分極は、AlGaNおよびGaNの自発分極の方向と同じ方向に向く。
【0008】
c平面窒化物の上に非極性平面を用いる利点は、総分極が減少させられることである。特定の平面上における特定の合金組成物に対してゼロ分極でさえもあり得る。そのようなシナリオは、将来の科学論文において詳細に論議されるであろう。重要な点は、c平面窒化物構造の分極に比較して分極が減少させられることである。
【0009】
非極性軸上m平面GaN上の高性能光電子デバイスが明示されてきたが、m平面GaN上に成長するInGaN/GaN MQWから長波長放射を得ることは困難である。これは、おそらくInGaN/GaN MQWの低In含有に起因する。m平面上に成長するデバイスの放射波長は典型的には400nmであり、一方、同じ成長条件でc平面上に成長するデバイスの放射波長は450nmである。成長温度を下げることは、In含有を増加させるが、結晶品質が劣化する。これは、青、緑、黄、および白のLEDなどの用途に対して重大な問題である。
【0010】
本発明は、デバイスからの放射波長がデバイスにおけるMQWのバリヤー厚によって制御され得る非極性III窒化物発光デバイスの成長のための技術を説明する。例えば、本発明は、分極の効果なしに、青および緑の放射を得た。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
上記の先行技術の制限を克服し、本明細書を読みそして理解するとすぐ明らかになる他の制限を克服するために、本発明は、m平面基板上に成長するIII窒化物薄膜を開示し、薄膜におけるMQWのバリヤー厚は27.5nm以上である。
【0012】
具体的には、本発明は、27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸から構成されるIII窒化物薄膜を開示する。量子井戸は、少なくとも第1のバリヤーと第2のバリヤーとの間に挟まれ得、第1のバリヤーおよび第2のバリヤーは、各々27.5nm以上の厚さを有する。さらに、量子井戸の厚さは、8nm以上であり得る。
【0013】
量子井戸は、非極性であり得る。さらに、量子井戸は薄膜を通過する入射電流の範囲に応答してピーク波長を有する光を放射し、量子井戸は、非極性配向を有し得、その結果、
量子井戸とバリヤー厚との間の界面および量子井戸間の界面は、非極性平面であり、非極性平面および活性層の合金組成物は、薄膜または量子井戸の分極を減少させるように選択され、その結果、ピーク波長は入射電流の範囲に対して実質的に一定のままであり、それによって、量子井戸または薄膜の非極性の度合を定義する。入射電流の範囲は放射された光の強度の範囲を生成し得、最大の強度は最小強度の少なくとも37倍である。
【0014】
量子井戸は、2つ以上の量子井戸(すなわちMQW)を備え得る。薄膜は、m平面GaN上に成長し得る。量子井戸はInGaN量子井戸であり得、バリヤーはGaNバリヤーであり得る。
【0015】
バリヤー厚は475nmより長いピーク波長を有する量子井戸から光放射を得るように選択され得、光放射は、III窒化物薄膜の伝導帯における量子井戸状態の電子とIII窒化物薄膜の価電子帯における量子井戸状態の空孔との間の電子空孔対再結合に起因し得る。バリヤー厚を増加させることは放射波長を増加させる。
【0016】
さらに、本発明は、上記のIII窒化物薄膜を用いて製作されるデバイスを開示する。例えば、薄膜は、発光デバイスの活性層であり得る。
【0017】
最後に、本発明は、27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸から光を放射することを包含する、III窒化物薄膜から光を放射する方法
、および、27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸を成長させることを包含する、III族窒化物薄膜を製作する方法を開示する。
【0018】
ここで図面を参照すると、同様の参照番号は、全体を通じて対応する部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】図1(a)は、本発明の薄膜の断面概略図であり、図1(b)は、図1(a)に描かれる薄膜の層を通る帯域図である。
【図1b】図1(a)は、本発明の薄膜の断面概略図であり、図1(b)は、図1(a)に描かれる薄膜の層を通る帯域図(band diagram)である。
【図2】図2は、量子井戸によって放射される波長対量子井戸のバリヤー厚を表すグラフである。
【図3】図3は、種々の入射電流に対して、37.5nmのバリヤー厚を有するLEDのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを示し、スペクトルは、下から上まで、1mA、2mA、5mA、10mA、20mA、30mA、40mA、50mA、60mA、70mA、80mA、90mA、および100mAの入射電流に対するスペクトルである。
【図4】図4は、量子井戸からのピーク放射波長対電流のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
好ましい実施形態の以下の説明において、本明細書の一部を形成する添付図面に参照がなされ、該図面において本発明が実施され得る特定の実施形態が例示として示される。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、構造的な変更がなされ得ることは理解されるべきである。
【0021】
(概観)
本発明は、薄膜からの放射波長が、薄膜におけるMQWのバリヤー厚を選択することによって制御され得るm平面基板上に成長するIII族窒化物薄膜を説明する。
【0022】
現在の窒化物デバイスは、典型的には極性の[0001]c方向に成長し、このことは、結果として垂直デバイスにおける一次伝導方向に沿った電荷分離をもたらす。結果として生じる分極電界は、最新技術の光電子デバイスの性能に有害である。
【0023】
非極性方向に沿ったこれらのデバイスの成長は、伝導方向に沿った固有の電界を減少させることによってデバイス性能を実質的に改善した。しかしながら、軸上のm平面に成長するLEDの放射波長は典型的には400nmであり、これは光学デバイスの用途に限定される。
【0024】
本発明の新規な特徴は、長波長を放射するIII窒化物薄膜が厚いバリヤーMQWを用いて成長させられ得ることである。この証明として、本発明は、様々なバリヤー厚を有するm平面基板上にInGaN/GaNIベースのLEDを成長させた。12.5nmのバリヤー厚を有する成長した薄膜の放射波長は439nmであり、一方、27.5nm以上のバリヤー厚を有する成長した薄膜の放射波長は480nmであった。
【0025】
(技術的な説明)
本発明は、成長プロセスにおいてMQWの厚いバリヤーを利用して長放射波長を有するIII窒化物薄膜を備えている。一実施形態において、バリヤー厚は、27.5nm以上であり、MQWから超波長放射を得る。
【0026】
図1(a)は、27.5nm以上の厚さ106a、106bのバリヤー層104a、104bを有する1つ以上の量子井戸102を備えているIII窒化物膜100を例示する。量子井戸102は、典型的にはIII窒化物量子井戸を含むインジウムである。量子井戸102は、典型的には第1のバリヤー104aと第2のバリヤー104bとの間に挟まれ、第1のバリヤー104aおよび第2のバリヤー104bは各々、27.5nm以上のバリヤー厚106a、106bを有する。薄膜100は、量子井戸102と、厚さ106aを有する第1のバリヤー104aと、厚さ106bを有する第2のバリヤー104bとを備え得る。
【0027】
量子井戸102の厚さ108は、8nm以上であり得る。薄膜の量子井戸102は、非極性であり得る。薄膜100は、2つ以上の量子井戸102を備え得、それによってMQWを形成し、量子井戸102の各々は、バリヤー層104a、104bによって覆われる(例えば、MQWは、複数の積み重ねられた量子井戸同期を含み得、量子井戸同期は、バリヤー104a、104bによって覆われた量子井戸102を含む)。薄膜100に対する成長基板は、m平面GaN110であり得る。薄膜100は、LEDなどのデバイスを製作するために、バリヤー104bと基板110の間のn型層、およびバリヤー層104a上のp型層などのさらなる層を備え得る。量子井戸102はInGaN量子井戸であり得、バリヤー104a、104bはGaNバリヤーであり得る。
【0028】
図1(b)は、層104a、102および104bを通って上から下における位置の関数としての薄膜100の概略帯域図であり、量子井戸102の量子井戸エネルギ112aを備えている伝導帯と、量子井戸102の量子井戸エネルギ112bを備えている価電子帯と、第1のバリヤー104aの第1のバリヤーエネルギ114aを備えている伝導帯と、第1のバリヤー104aの第1のバリヤーエネルギ114bを備えている価電子帯エネルギと、第2のバリヤー104bの第2のバリヤーエネルギ116aを備えている伝導帯と、第2のバリヤー104bの第2のバリヤーエネルギ116bを備えている価電子帯エネルギとを備えている伝導帯とを示す。バリヤー厚106a、106bは、量子井戸102から、例えば400nmまたは475nmより長いピーク波長を有する光放射を得るように選択され得る。
【0029】
図1(b)は、III窒化物薄膜100の伝導帯における124a、124bなどの量子井戸状態における電子122と、III窒化物薄膜100の価電子帯における128a、128bなどの量子井戸状態における孔126との間の電子空孔対再結合120から光放射118がどのように生じ得るかを示す。
【0030】
本発明において、LEDデバイス構造のエピタキシャル層は、従来のMOCVD法を用いて、固定されていないm平面GaN基板上に成長させられた。LED構造は、5μm厚のSiドープ処理されたGaN層と、6期間のGaN/InGaN MQWと、15nm厚のドープ処理されていないAl0.15Ga0.85N層と、0.3μm厚のMgドープ処理されたGaNとから構成された。MQWは、8nm厚のInGan井戸を備えていた。GaNバリヤー厚は、12.5nmから42.5nmに変化させられた。LED構造の結晶成長後、試料はp型活性のためにアニーリングされ、その後、n型およびp型の金属化プロセスが実行された。p接点は300μmの直径を有し、放射特性は室温で測定された。測定は、室温で1mA〜100mA(DC)の順方向電流で実行された。
【0031】
(実験結果)
バリヤー厚の関数としての、20mAでのLEDのELピーク波形が、図2に示される。測定は、室温で20mA(DC)の順方向電流で実行された。8nm(12.5nm)の井戸(バリヤー)厚を有するLEDの放射波長は、439nmであることが見出された。ピーク波長がバリヤー厚を12.5nmから27.5nmに増加させることによって増加するように見えることが見出された。12.5nm、20nm、および27.5nmのバリヤー厚を有するLEDのピーク放射波長は、それぞれ439nm、455nm、および483nmであった。27.5nm以上のバリヤー厚を有するLEDのピーク放射波長は、おおよそ480nmであった。従って、m平面基板上で27.5nm以上のバリヤー厚を有する厚いバリヤーMQWによって長波長の放射を得ることが可能である。
【0032】
図3は、様々な入射電流に対する、37.5nmのバリヤー厚を有するLEDのELスペクトルを示す。すべてのスペクトルが475nm近辺で単一のピーク放射波長を示すことが見出された。
【0033】
入射電流の関数としてのEL強度およびピーク波長が、図4に示される。1mAおよび100mAでのピーク波長は、それぞれ478.4nmおよび476.1nmであり、2.3nmの青へのシフトが観察されたことを示した。このことは、分極が減少したことを示唆する。
【0034】
図3および図4はまた、量子井戸102が薄膜100を通過する入射電流の範囲に応答して、ピーク波長を有する光118を放射することが可能であり得る方法を示し、そして量子井戸は、量子井戸102とバリヤー厚106a、106bの間の界面130a、130b、および量子井戸102同期間の界面132が非極性平面となるように非極性配向を有し得、非極性平面および/または活性層(例えば、量子井戸102および/またはバリヤー104a、104b)の合金組成物は、薄膜100の分極を減少させるように選択され得、その結果、ピーク波長は、入射電流の範囲に対して実質的に一定(例えば、2.3nmのピーク波長以内であるが、これに限定されない)のままであり、それによって、量子井戸102または薄膜100の非極性の度合を定義する。電流の範囲は放射された光の強度の範囲を生成し得、最大強度は、例えば最小強度の少なくとも37倍である(すなわち、電流の範囲における最大電流は、電流の範囲において最小電流によって作られる最小強度の少なくとも37倍である最大強度を作る)。しかしながら、電流の範囲および強度は、特定の範囲に限定されない。
【0035】
(可能な修正および変形)
上記のm平面GaNの固定されていない基板の他に、a平面基板、もしくはGaNのミスカット基板、または、c−Al2O3、r−Al2O3、m平面SiC、ZnO、およびγ−LiAlO2などの他の異質の基板もまた、開始材料として用いられ得る。非極性III窒化物化合物の成長に適した任意の基板が用いられ得る。
【0036】
本発明はInGaN/GaN薄膜を用いて明示されたが、AlN、InNまたは任意の関連した合金(例えば、III族窒化物化合物)もまた、用いられ得る。
【0037】
本発明は、上記のMOCVDエピタキシャル成長法に限定されるのではなく、HVPE、MBEなどの他の結晶成長方法も用い得る。
【0038】
さらに、当業者は、これらの技術、プロセス、材料などが、c軸方向、c平面基板などの他の方向にa平面基板、ミスカット基板にも適用し、類似の結果を得ることを認識する。
【0039】
バリヤー厚106a、106bを増加させることが量子井戸102からの光放射118のピーク波長を400nmを超えて増加させる限り、本発明は、バリヤー厚106a、106bまたは井戸厚108の特定の範囲に限定されない。デバイスは薄膜100を用いて製作され得、例えば、薄膜100、具体的にはバリヤー104a、104bによって覆われた量子井戸102は、発光デバイスの活性層であり得る。デバイス構造は、特定の発光デバイス構造に限定されないで、例えば、デバイスはLEDであり得、薄膜100は、活性層に電力を供給するためにn型層とp型層との間に活性層をさらに備え得、活性層は、2つのバリヤー層104a、104bの間に挟まれたインジウム含有III窒化物量子井戸102であり得、バリヤー層104a、104bの各々の厚さ106a、106bは、例えば400nmまたは475nmより長いピーク波長を有する光放射118を量子井戸102から得るように選択され得る。例えば、バリヤー厚106a、106bは、425nmより大きいピーク波長を有する光放射118を達成するために10nm以上であるように選択され得、バリヤー厚106a、106bを10nmを超えて増加させることは、ピーク波長を増加させる。従って、バリヤー厚106a、106bを増加させることは、放射波長を増加させ得る。III族窒化物薄膜100は、発光デバイスの活性層であり得る。
【0040】
(利点および改良)
本発明以前に、軸上m平面GaNエピタキシャル層上に成長したInGaN/GaN MQWの放射波長は、おおよそ400nmに限定された。MQWのバリヤー厚を制御することによって、構造からの長波長放射が達成され得る。
【0041】
例えば、分極効果のない青、緑、黄、および白のLEDは、デバイスの性能を高める。さらに、本発明は、任意のデバイスの性能を高める。
【0042】
(結論)
ここでは、本発明の好ましい実施形態の説明の結論を下す。本発明の1つ以上の実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的のために提示された。網羅的であることまたは開示された正確な形態に本発明を限定することは意図されない。上記の教示を考慮して多くの修正および変形が可能である。本発明の範囲はこの詳細な説明によって限定されるのではなく、逆に本明細書に添付された特許請求の範囲によって限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸を備えている、III窒化物薄膜。
【請求項2】
前記量子井戸は、少なくとも第1のバリヤーと第2のバリヤーとの間に挟まれ、該第1のバリヤーおよび第2のバリヤーは、各々27.5nm以上の厚さを有する、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項3】
前記量子井戸の厚さは、8nm以上である、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項4】
前記量子井戸は、非極性である、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項5】
前記量子井戸は、前記薄膜を通過する入射電流の範囲に応答してピーク波長を有する光を放射し、
該量子井戸は、非極性配向を有し、その結果、該量子井戸と前記バリヤー厚との間の界面および該量子井戸間の界面は、非極性平面であり、該非極性平面および活性層の合金組成物は、該薄膜または量子井戸の分極を減少させるように選択され、その結果、該ピーク波長は該入射電流の範囲に対して実質的に一定のままであり、それによって、該量子井戸または該薄膜の非極性の度合を定義する、請求項4に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項6】
前記入射電流の範囲は前記放射された光の強度の範囲を生成し、最大強度は最小強度の少なくとも37倍である、請求項5に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項7】
前記量子井戸は、2つ以上の量子井戸を備えている、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項8】
前記薄膜は、m平面ガリウム窒化物(GaN)上に成長する、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項9】
前記量子井戸はInGaN量子井戸であり、前記バリヤーはGaNバリヤーである、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項10】
前記バリヤー厚は475nmより長いピーク波長を有する前記量子井戸からの光放射を得るように選択され、該光放射は、前記III窒化物薄膜の伝導帯における量子井戸状態の電子と、該III窒化物薄膜の価電子帯における量子井戸状態の空孔との間の電子空孔対再結合から生じる、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項11】
前記バリヤー厚を増加させることは放射波長を増加させる、請求項1に記載のIII窒化物薄膜。
【請求項12】
請求項1に記載のIII窒化物薄膜を用いて製作されるデバイス。
【請求項13】
前記III族窒化物薄膜は発光デバイスの活性層である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸を成長させることを包含する、III族窒化物薄膜を製作する方法。
【請求項15】
27.5nm以上のバリヤー厚を有する1つ以上のインジウム含有の量子井戸から光を放射することを包含する、III族窒化物薄膜から光を放射する方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−536182(P2010−536182A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520336(P2010−520336)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/072682
【国際公開番号】WO2009/021206
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】