説明

開閉弁

【課題】開閉弁内部における液体の流れを蛇行させることなく、液体の圧力損失を低下させ、開閉弁の流路内に残留した液体を短時間で効率的に洗浄し得るようにする。
【解決手段】開閉弁は第1のポート11と第2のポート12とを連通させる連通室36が形成された弁体収容ブロック10を有し、弁体収容ブロック10の弁体収容孔13内には両方のポート11,12を連通状態と遮断状態に切り換える弁体16が設けられている。第1のポート11は連通室36を形成する円錐面形状の円錐弁座面34aに開口しており、第2のポート12は円錐弁座面34aよりも大径側部分で連通室36に連通する。弁体16と連通室36の開口端との間はダイヤフラム39によりシールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体の流路を開閉する開閉弁に関し、特に流路が開口した弁座に弁体を接触させて流路を閉じる一方、弁体を弁座から離反させて流路を開放するようにした開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を案内する流路を開閉する開閉弁にはポペット型がある。ポペット型の開閉弁は、それぞれ液体を案内する第1と第2のポートを連通させる連通室が形成された弁体収容ケースつまり弁体収容ブロックを有し、弁体を第1のポートが開口する弁座つまりバルブシートに接触させて両方のポートの連通を遮断し、弁体を弁座から離反させて両方のポートを連通させるようにしている。第1のポートを流入側とした場合には、弁体が弁座から離れると、第1のポートから連通室に流入した液体は第2ポートから外部に排出される。一方、第2のポートを流入側とした場合には、第2のポートから連通室内に流入した液体は、弁体が弁座から離れると、第1のポートから外部に排出されることになる。
【0003】
ポペット型の開閉弁は、第1のポートを連通室に開口させる弁座面に対して弁体を、通常、直角方向に往復動することにより、弁座面に弁体を接近離反移動させてポートを開閉するようにしている。弁体を弁座面に対して直角方向に往復動するために、弁体は空気圧シリンダのピストンロッド等の駆動軸に連結されており、連通室内の液体が駆動軸と弁体収納ケースとの間の摺動部から漏出しないように、駆動軸にはOリング等のシール材が設けられている。
【0004】
半導体の製造ラインや各種の薬品の製造ライン等においては、これらのラインに設けられた製造装置に対して薬液や純水の供給を制御するために、特許文献1,2に記載されるように、ポペット型の開閉弁が使用されている。薬液や純水の供給を制御するための開閉弁としては、弁体の駆動軸と弁体収納ケースとの間をシールするために、ダイヤフラムが駆動軸に設けられている。ダイヤフラムを用いることにより、駆動軸の外周部と弁体収納ケースとの間の摺動隙間内に薬液が入り込むことを防止することができる。
【0005】
弁体収納ケースに複数の連通室を形成し、それぞれの連通室に連通する第1のポートを弁体収納ケースに形成された共通流路に連通させるようにすると、特許文献3,4に記載されるように、開閉弁は複数の開閉弁が集合されたタイプのマニホールド構造となる。マニホールド構造の開閉弁においては、それぞれの開閉弁に対して相互に異なった種類の薬液を第2のポートから供給するようにすると、共通流路から混合された薬液を製造装置に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−214547号公報
【特許文献2】特開2008−101757号公報
【特許文献3】特開2007−24307号公報
【特許文献4】特開2008−89085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液体の供給を制御する開閉弁においては、定期的に開閉弁の内部に残留した液体を洗浄液により洗浄するようにしている。洗浄作業を短時間で効率的に行うようにするには、液溜まり部の発生を無くして連通室内部と弁体の周囲に確実に洗浄液が回り込むようにすることが好ましい。しかしながら、従来のように、弁体の往復動方向に対して直角方向に弁座面が設けられていると、連通室内に供給された洗浄液は弁座の部分で直角方向に姿勢を大きく変更してポートに向かうことになるので、その部分における残留液体を迅速に除去することができない。そのため、残留液体の除去に時間がかかることから、洗浄時間を長く設定する必要がある。
【0008】
同一の開閉弁を用いて製造装置に供給される薬液の種類が変更される場合には、開閉弁内に残留した変更前の薬液の洗浄処理が終了しなければ、新たな薬液を使用して製造装置を稼働させることができないので、効率的に製造装置を稼働させるには、迅速に前の薬液を洗浄させる必要がある。
【0009】
しかも、液体供給源と製造装置の液体吐出部との間に設けられる開閉弁は、開閉弁の内部における圧力損失を少なくすることが好ましいが、開閉弁の内部で従来のように液体を大きく蛇行させるようにすると、開閉弁内部での液体の圧力損失が大きくなる。
【0010】
本発明の目的は、開閉弁内部における液体の流れを蛇行させることなく、液体の圧力損失を低下させることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、開閉弁の流路内に残留した液体を短時間で効率的に洗浄し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の開閉弁は、それぞれ液体を案内する第1のポートと第2のポートとを連通させる連通室を有し、前記第1と第2のポートを連通状態と遮断状態とに切り換える開閉弁であって、前記連通室を形成する円錐面形状部に設けられる円錐弁座面、前記円錐弁座面の頂点部分で前記連通室に連通する前記第1のポート、および前記円錐弁座面よりも大径側部分で前記連通室に連通する前記第2のポートが形成された弁体収容ブロックと、前記連通室内に前記円錐弁座面の中心軸と同軸上に軸方向に往復動自在に配置され、前記円錐弁座面に接触して前記第1のポートと前記第2のポートとの連通を遮断する一方、前記円錐弁座面から離れて前記第1のポートと前記第2のポートとを連通させる円柱形状の弁体と、前記弁体収容ブロックに取り付けられ、前記弁体を軸方向に往復動する駆動手段と、前記弁体と前記弁体収容ブロックとの間に装着され、前記弁体と前記連通室の開口端との間をシールするシール部材とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の開閉弁は、前記シール部材が前記弁体収容ブロックに固定される環状部と前記弁体との間に一体に設けられ、前記弁体の軸方向移動に伴って弾性変形するダイヤフラムであることを特徴とする。本発明の開閉弁は、前記第2のポートが前記連通室にその内周面に対して接線方向に開口することを特徴とする。本発明の開閉弁は、前記第1のポートの横断面形状を、前記円錐弁座面の稜線に一致する2辺と、前記弁体の先端面に沿う1辺とを有する三角形とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の開閉弁は、前記弁体収容ブロックにその長手方向に間隔を隔てて複数の連通室を相互に平行に形成し、それぞれの前記円錐弁座面に開口する前記第1のポートを前記弁体収容ブロックに長手方向に沿って一直線上に形成し、それぞれの前記連通室に連通する第2のポートを前記第1のポートに対して直角方向に前記弁体収容ブロックに形成することを特徴とする。本発明の開閉弁は、前記駆動手段が流体圧により軸方向に往復動し前記弁体に連結されるピストンを有する流体圧シリンダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の開閉弁は、第1のポートと第2のポートとを連通させる連通室を形成する弁体収容孔が円錐面形状となっており、第1のポートを連通室に開口させ弁体が接触する弁座が円錐弁座面となっているので、連通室を介して第1のポートと第2のポートとの間を流れる液体は、流路内を蛇行したり、大きく姿勢を変更したりすることなく、連通室内を流れることになる。これにより、開閉弁の内部を流れる薬液等の液体の流通抵抗を低減して圧力損失を低下させることができる。また、開閉弁内に洗浄液を流して薬液を洗浄する場合には、開閉弁の流路を短時間で効率的に洗浄することができる。さらに、円錐弁座面に弁体を当接させて第1のポートと第2のポートとの連通を遮断するようにすると、弁体が円錐弁座面に当接したときに弁体は、その中心軸が円錐弁座面の中心軸に一致するように円錐弁座面から調心作用を受けるので、弁体が閉じられたときには液体の流れが確実に遮断される。
【0016】
第2のポートを連通室にその内周面に対して接線方向に開口させると、連通室内には弁体の周りを旋回するように液体が流れるので、連通室内における液溜まりの発生を抑制することができる。第1のポートの横断面形状を三角形とすると、流路内における薬液の流通抵抗をより小さくすることができるとともに、洗浄液による洗浄効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態である開閉弁を示す断面図である。
【図2】図1における2−2線断面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1における4−4線断面図である。
【図5】開閉弁が開いた状態における図4と同様の部分を示す断面図である。
【図6】図1〜図5に示された弁体収納ブロックの一部を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である開閉弁における図2と同様の部分を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である開閉弁における図5と同様の部分を示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である開閉弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3はマニホールド構造の開閉弁を示し、この開閉弁は横断面四角形の棒状のブロックからなる弁体収容ブロック10を有している。この弁体収容ブロック10には長手方向に間隔を隔てて5つの弁体収容孔13が形成されている。それぞれの弁体収容孔13は、相互に平行となって弁体収容ブロック10に形成されており、図1における弁体収容ブロック10の上面に開口されている。
【0019】
弁体収容ブロック10には液体を案内する流路として第1のポート11が弁体収容ブロック10の長手方向に沿って一直線となって形成されている。第1のポート11はそれぞれの弁体収容孔13の底部に連通されており、5つの弁体収容孔13のそれぞれに連通する共通のポートとなっている。図2に示されるように、5つの弁体収容孔13に対応させて5つの第2のポート12がそれぞれ第1のポート11よりも上方に位置させて、弁体収容ブロック10には第1のポート11に対して直角方向となって形成されている。第1のポート11とそれぞれの第2のポート12は横断面形状が円形となっている。
【0020】
弁体収容ブロック10の一端部には、図1に示されるように、第1のポート11に連通するジョイント部14が突出しており、このジョイント部14には液体を案内する図示しないホースが接続されるようになっている。弁体収容ブロック10の側面には、それぞれの第2のポート12に連通するジョイント部15が5つ突出しており、それぞれのジョイント部15には液体を案内する図示しないホースが接続されるようになっている。
【0021】
それぞれの弁体収容孔13内には、図4に示されるように、横断面が円形となった円柱形状の弁体16が配置されており、この弁体16の中心軸Oは弁体収容孔13の中心軸と同軸上となっている。弁体16を直線往復動することにより、開閉弁は、第1のポート11と第2のポート12とを相互に連通させる状態と連通を遮断する状態とに開閉動作を行う2ポート弁が5つ設けられた形態となっている。それぞれの弁体16を軸方向に往復動するために、それぞれの弁体収容孔13の開口端面には、図4に示されるように、スペーサ17を介してシリンダブロック18が取り付けられている。このシリンダブロック18内にはピストン20が軸方向に往復動自在に組み込まれており、ピストン20に設けられたピストンロッド21がシリンダブロック18に設けられた隔壁22を貫通して弁体16に連結されている。隔壁22にはピストンロッド21を案内するためのスリーブ23が一体に設けられている。
【0022】
シリンダブロック18にはカバー24が取り付けられており、シリンダブロック18の内部はピストン20によりカバー24側のばね室25と隔壁22側の圧力室26とに仕切られている。弁体収容ブロック10には、カバー24と対向するようにして支持板27が取り付けられている。弁体収容ブロック10とスペーサ17とシリンダブロック18は、図3に示されるように、これらとカバー24とを貫通し、支持板27にねじ結合されるねじ部材28により、カバー24と支持板27とにより挟み付けられるように組み立てられている。シリンダブロック18には、図2に示されるように、ねじ部材28が貫通する取付孔28aが形成されている。
【0023】
ピストン20に対して弁体収容孔13に向かう方向、つまり図4において下方に向かう方向の推力を加えるために、ばね室25内には圧縮コイルばねからなるばね部材29が装着されている。圧力室26に連通する圧力ポート31がシリンダブロック18に形成されており、外部から圧力ポート31を介して圧力室26に圧縮空気を供給すると、ピストン20には弁体収容孔13から離れる方向、つまり図4において上方に向かう方向に推力が加えられる。ピストン20はカバー24に設けられたストッパ面24aに当接する位置まで移動すると、ストッパ面24aにより上方への移動が規制される。ピストン20が上方に向かうときには、ばね室25内の空気を外部に排出するために息付きポート32がシリンダブロック18に設けられている。
【0024】
ピストン20が組み込まれたシリンダブロック18およびカバー24等は、弁体16を軸方向に往復動する駆動手段としての流体圧シリンダ30を構成している。この流体圧シリンダ30は、圧力室26に圧縮空気が供給されないときにはばね力により第1のポート11と第2のポート12との連通を遮断するので、流体圧シリンダ30により駆動される弁体16は常閉式の開閉弁となっている。流体圧シリンダ30の圧力室26に供給される圧縮空気に代えて、油圧等の他の流体によりピストン20を駆動するようにしても良い。図示する流体圧シリンダ30は、ピストン20を下方に向けてばね力により駆動するようにした単動型となっているが、ばね室25内にばね部材29を組み込むことなく、ばね室25を圧力室として息付きポート32から圧縮空気を供給するようにすると、この流体圧シリンダ30は複動型となる。
【0025】
弁体収容孔13は、図4〜図6に示されるように、その底部側を頂点とする円錐面形状部34と、この最大内径部分に連なる円筒面形状部35とを有しており、弁体収容孔13により第1のポート11と第2のポート12とを連通させる連通室36が形成されている。弁体収容孔13の開口端部には径方向を向いてスペーサ17に対向する段部37が形成されている。弁体16には、段部37に配置されてスペーサ17と弁体収容ブロック10との間で挟み付けられる環状部38がダイヤフラム39を介して一体に設けられている。このダイヤフラム39は弁体16と弁体収容ブロック10との間に装着されて、弁体16と連通室36の開口端との間をシールするためのシール部材を構成している。ダイヤフラム39は、弁体16が軸方向に移動すると、それに追従して弾性変形する。シリンダブロック18には隔壁22とダイヤフラム39との間に形成される空間40を外部に連通させる息付き孔41が形成されており、弁体16が軸方向に移動して空間40の容積が変化したときには、空間40内の空気は息付き孔41を介して給排される。
【0026】
環状部38とダイヤフラム39を含めてこれらが一体となった弁体16は、フッ素樹脂等の樹脂により形成されており、弁体収容ブロック10も同様の樹脂により形成されている。これらの部材が耐腐食性を有するフッ素樹脂により形成されているので、開閉弁内に薬液を流すようにしても、薬液により弁体収容ブロック10および弁体16が腐食されることを防止できる。ただし、薬液の種類によってはアルミニウム合金等の他の素材により弁体収容ブロック10を形成するようにしても良い。スペーサ17、シリンダブロック18、カバー24、および支持板27は、それぞれアルミニウム合金等の金属材料により形成されている。
【0027】
図4および図5に示されるように、円錐面形状部34の小径側部は弁体16が接触する円錐弁座面34aとなっており、円錐面形状部34には円錐弁座面34aが設けられている。第1のポート11は連通室36を形成する円錐面形状部34の頂点部分つまり弁体収容孔13の円錐面形状部34の底部に形成され、円錐弁座面34aの頂点部分で連通室36に連通している。一方、第2のポート12は円錐面形状部34のうち円錐弁座面34aよりも大径側部分で連通室36と連通している。円錐面形状部34のうち円錐弁座面34aよりも第1のポート11側の部分には円弧面34bが設けられており、円錐弁座面34aは円弧面34bを介して第1のポート11の内周面になだらかに連なっている。ただし、円弧面34bをも円錐弁座面34aと同様に円錐面としても良い。
【0028】
弁体16の先端には、円錐弁座面34aに接触する接触面16aが形成されており、この接触面16aは円錐弁座面34aに対応する円錐面となっている。円錐面形状部34は円錐弁座面34aを含めて全体的に傾斜角度が同一となっているが、円錐弁座面34aとこの円錐弁座面34aよりも頂点側部分と大径側部分との傾斜角度を相違させるようにしても良い。
【0029】
圧力室26内の圧縮空気を圧力ポート31から排出すると、ピストン20に加わるばね力により弁体16は接触面16aが円錐弁座面34aに接触まで前進移動する。接触面16aが円錐弁座面34aに接触すると、図4に示されるように、第1のポート11は閉じられ、第1のポート11と第2のポート12との連通は遮断される。弁体16が円錐弁座面34aに接触すると、弁体16の中心軸Oは弁体収容孔13の中心軸と同軸上となっており、弁体16の接触面16aも円錐面となっているので、弁体16は中心軸Oが弁体収容孔13の中心に一致する方向の調心作用を受けて確実に接触面16a全体が円錐弁座面34aに接触することになる。これにより、第1のポート11と第2のポート12との連通は確実に遮断される。
【0030】
一方、圧力室26内に圧縮空気を供給すると、図5に示されるように、ピストン20はばね力に抗して後退移動してストッパ面24aに当接し、弁体16は円錐弁座面34aから離れることになる。これにより、第1のポート11と第2のポート12は連通室36を介して連通状態となる。
【0031】
図3に示すように、このマニホールド構造の開閉弁においては、第2のポート12を薬液を開閉弁に供給する一次側ポートとし、第1のポート11を薬液を吐出する二次側ポートとし、それぞれの第2のポート12から相互に異なった種類の薬液を供給することができる。例えば、図3において符号A1〜A5で示された別々の薬液をそれぞれの第2のポート12から供給するようにすると、第1のポート11からは5種類の薬液が混合された混合薬液Bを外部に吐出することができる。図示する開閉弁の弁体収容ブロック10には第2のポート12が5つ設けられているので、最大5種類の薬液を混合させて第1のポート11から吐出させることができる。それぞれの第2のポート12から供給される薬液の混合割合を変化させる場合には、それぞれの弁体16が開放されて第2のポート12と第1のポート11が連通状態となる時間と、弁体16が閉塞されてポートが遮断状態となる時間の割合を変化させることになる。これにより、単位時間当たりにおける第1のポート11に流入する薬液の量が変化して混合割合を変化させることができる。
【0032】
さらに、共通の第1のポート11に所定時間毎にいずれかの第2のポート12から薬液を供給するようにすることもできる。例えば、図3において、符号A1〜A3で示す薬液を第2のポート12に供給するようにして3種類の薬液が混合された混合薬液Bを外部に吐出した後に、符号A4,A5で示す薬液を第2のポート12に供給して2種類の薬液が混合された混合薬液Bを吐出することもできる。弁体収容ブロック10に設けられる第2のポート12の数は、図示する5つの限定されることなく、開閉弁の使用形態に対応させて任意の数に設定することができる。
【0033】
それぞれの第2のポート12から供給される薬液の種類が変更されたり、第1のポート11から吐出される薬液の混合割合や薬液の種類が変更されたりする場合には、開閉弁内に残留した薬液を洗浄することになる。薬液を洗浄するには、弁体16を図5に示されるように円錐弁座面34aから離した状態のもとで、それぞれの第2のポート12から洗浄液として純粋を供給する。第2のポート12から洗浄液が供給されると、連通室36内に流入した洗浄液は、弁体16のストレートとなった外周面とこれに平行となった円筒面形状部35との間に流入するとともに弁体16の外周面と円錐面形状部34との間に流入してこの部分を洗浄する。次いで、洗浄液は、弁体収容孔13の円錐面形状部34と弁体16との間の隙間を通って円錐面形状部34の内面に沿って第1のポート11に向けて流れ、弁体16の平坦な先端面と円錐面形状部34とにより形成される部分を洗浄し、第1のポート11に排出される。
【0034】
連通室36は円錐面形状の弁体収容孔13により形成されているので、連通室36内に流入した洗浄液は大きく姿勢変更することなく、第1のポート11に向けてそのまま真っ直ぐに向かうことになる。これにより、洗浄液は開閉弁内の流路を蛇行したり、姿勢を大きく変更したりすることなく流れるので、開閉弁内に残留した薬液を短時間で迅速に除去することができる。全ての連通室36に連通する共通の第1のポート11は全体的に同一断面形状となっているので、確実に残留液を除去することができる。このように、開閉弁内の流路を流れる液体を蛇行させたり、姿勢を大きく変更したりすることなく、案内することができるので、薬液をそれぞれの第2のポート12から供給して、第1のポート11に吐出する場合においても、薬液の流通抵抗を小さくすることができ、薬液の圧力損失を低減することができる。
【0035】
上述したマニホールド構造の開閉弁は、第2のポート12を一次側として第1のポート11に薬液を吐出するようにしているが、第1のポート11を一次側として、第2のポート12に薬液を吐出するようにも使用することができる。その場合には、一種類の薬液をそれぞれ別々の製造装置に対して第2のポート12から同時あるいは所定時間毎に供給することができる。そのような使用形態においても、流路内の薬液の流通抵抗を小さくすることができるので、薬液の圧力損失を低減することができる。
【0036】
図7は本発明の他の実施の形態である開閉弁を示す断面図であり、図7には図2と同様の部分が示されている。
【0037】
図7に示される開閉弁においては、上述した開閉弁における第2のポート12が弁体収容孔13の中心軸に交差させて形成されているのに対して、第2のポート12は弁体収容孔13の中心軸から変位されて弁体収容孔13の円錐面形状部34に対し接線方向となっている。このように、第2のポート12を連通室36に対して変位して連通させるようにすると、第2のポート12から連通室36内に供給された薬液は、連通室36内において弁体16と弁体収容孔13とにより形成される円筒形状の空間内を旋回するように流れることになる。連通室36内に薬液の旋回流を生成するようにすると、第2のポート12から供給された薬液が連通室36内で部分的に残留することが防止される。また、薬液を洗浄する場合にも、連通室36内に洗浄液の旋回流が生成されるので、洗浄時間を図2に示す場合よりも短くすることができる。
【0038】
図8は本発明の他の実施の形態である開閉弁を示す断面図であり、図8には図5と同様の部分が示されている。
【0039】
図8に示される開閉弁においては、第1のポート11の横断面形状は三角形となっている。三角形の断面を形成する3辺のうちの相互に対向する2辺11a,11bは円錐面形状部34の稜線、つまり円錐弁座面34aの稜線に一致するようになっており、他の1辺11cは弁体16の先端面に沿っている。しかも、弁体16の先端面に沿う他の1辺11cは、弁体16が円錐弁座面34aに接触して両方のポート11,12の連通を遮断したときにおける弁体16の先端面にほぼ一致させて弁体収容ブロック10に形成されている。このように第1のポート11の横断面形状を三角形とすると、図8と図5の比較により明らかなように、弁体16が円錐弁座面34aから離れたときには、弁体16の先端面から第1のポート11までにおける円錐面形状部34の長さが短くなり、薬液の流通抵抗をより小さくすることができるとともに、洗浄液による洗浄効率をより高めることができる。
【0040】
図9は本発明の他の実施の形態である開閉弁を示す断面図である。図9に示す開閉弁は、上述した開閉弁がマニホールド構造であるのに対して、弁体収容ブロック10には1つの弁体収容孔13が形成された単体品となっている。
【0041】
図9に示されるように、弁体収容ブロック10の相互に反対側の側面には第1のポート11に連通するジョイント部14と、第2のポート12に連通するジョイント部15とが設けられており、両方のジョイント部14,15は同一の中心線上に設けられている。図9に示されるように、弁体16に一体に設けられるダイヤフラム39は、上述したダイヤフラム39に比して弁体16の先端部側に設けられており、弁体収容孔13は上述した円筒面形状部35を有しておらず、弁体収容孔13は円錐面形状部34のみにより形成されている。したがって、第2のポート12の開口部とダイヤフラム39との間の寸法が短くなり、連通室36の容積は図4との比較により明らかなようにより小さくなっている。これにより、弁体収容ブロック10の軸方向の長さ寸法を短くすることができ、さらに、薬液の残留液を少なくすることができるとともに洗浄液を使用した薬液洗浄時間をより短縮することができる。
【0042】
第2のポート12はジョイント部15と同心上の部分12aと、この部分から連通室36に向けて屈曲された部分12bとを有しており、ジョイント部15が弁体収容ブロック10の軸方向中央部に設けられている。これにより、第2のポート12の開口部に段部37を接近させても、ジョイント部15の強度が確保される。
【0043】
図9に示す開閉弁は単体品であり、この開閉弁においては、第1のポート11に連通するジョイント部14と第2のポート12に連通するジョイント部15とが一直線上の位置に形成されているが、上述した開閉弁と同様に、2つのポート11,12を相互に直角方向として弁体収容ブロック10に形成し、ジョイント部14,15を相互に直角方向に設けるようにしても良い。図9に示す開閉弁の第1のポート11は、弁体収容孔13の底部に形成される断面三角形の部分で連通するようになっているが、図4および図5に示されるように連通部分を断面円形としても良い。図1〜図6に示した開閉弁においては、弁体収容孔13は円錐面形状部34と円筒面形状部35とを有しているが、図9に示される開閉弁のように、弁体収容孔13を円錐面形状部34のみにより形成するようにしても良い。その場合には、ダイヤフラム39は弁体16の先端部側に設けられることになり、開閉弁は弁体収容ブロック10の軸方向寸法が短くなった形態となる。図9に示す開閉弁においても、他の実施の形態における開閉弁と同様に、第1のポート11と第2のポート12のいずれをも薬液を供給する一次側ポートとしても良い。さらに、開閉弁の流路内に残留した薬液を洗浄する場合にも、第1のポート11から洗浄液を供給し、第2のポート12から洗浄液を排出するようにしても良い。その場合にも、短時間で洗浄処理を行うことができる。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、弁体16を直線往復動する駆動手段としては、空気圧や液圧により作動する流体圧シリンダ30に代えて電磁石等を用いるようにしても良い。また、開閉弁に供給される液体の種類によっては、弁体16に一体にダイヤフラム39と環状部38を設けることなく、弁体16の外周に環状溝を形成し、その環状溝にOリング等のシール材を装着し、弁体16と弁体収容ブロック10との間をシールするようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
10 弁体収容ブロック
11 第1のポート
12 第2のポート
13 弁体収容孔
14,15 ジョイント部
16 弁体
18 シリンダブロック
20 ピストン
21 ピストンロッド
25 ばね室
26 圧力室
29 ばね部材
30 流体圧シリンダ(駆動手段)
34 円錐面形状部
34a 円錐弁座面
34b 円弧面
35 円筒面形状部
36 連通室
38 環状部
39 ダイヤフラム(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ液体を案内する第1のポートと第2のポートとを連通させる連通室を有し、前記第1と第2のポートを連通状態と遮断状態とに切り換える開閉弁であって、
前記連通室を形成する円錐面形状部に設けられる円錐弁座面、前記円錐弁座面の頂点部分で前記連通室に連通する前記第1のポート、および前記円錐弁座面よりも大径側部分で前記連通室に連通する前記第2のポートが形成された弁体収容ブロックと、
前記連通室内に前記円錐弁座面の中心軸と同軸上に軸方向に往復動自在に配置され、前記円錐弁座面に接触して前記第1のポートと前記第2のポートとの連通を遮断する一方、前記円錐弁座面から離れて前記第1のポートと前記第2のポートとを連通させる円柱形状の弁体と、
前記弁体収容ブロックに取り付けられ、前記弁体を軸方向に往復動する駆動手段と、
前記弁体と前記弁体収容ブロックとの間に装着され、前記弁体と前記連通室の開口端との間をシールするシール部材とを有することを特徴とする開閉弁。
【請求項2】
請求項1記載の開閉弁において、前記シール部材が前記弁体収容ブロックに固定される環状部と前記弁体との間に一体に設けられ、前記弁体の軸方向移動に伴って弾性変形するダイヤフラムであることを特徴とする開閉弁。
【請求項3】
請求項1または2記載の開閉弁において、前記第2のポートが前記連通室にその内周面に対して接線方向に開口することを特徴とする開閉弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の開閉弁において、前記第1のポートの横断面形状を、前記円錐弁座面の稜線に一致する2辺と、前記弁体の先端面に沿う1辺とを有する三角形とすることを特徴とする開閉弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の開閉弁において、前記弁体収容ブロックにその長手方向に間隔を隔てて複数の連通室を相互に平行に形成し、それぞれの前記円錐弁座面に開口する前記第1のポートを前記弁体収容ブロックに長手方向に沿って一直線上に形成し、それぞれの前記連通室に連通する第2のポートを前記第1のポートに対して直角方向に前記弁体収容ブロックに形成することを特徴とする開閉弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の開閉弁において、前記駆動手段が流体圧により軸方向に往復動し前記弁体に連結されるピストンを有する流体圧シリンダであることを特徴とする開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−220422(P2011−220422A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89112(P2010−89112)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】