説明

開閉機構

【課題】簡単かつ確実に配線をアーム内に配設しうる開閉機構を提供する。
【解決手段】一端が第1の筐体12に接続されると共に他端が第2の筐体14に接続され、回転に伴い第1の筐体12に対して第2の筐体14を開閉させる一対の主動アーム16と、第1の筐体12と第2の筐体14との間に配設されるフレキシブルケーブル61とを有する開閉機構であって、一対の主動アーム16の内、少なくとも一つをアーム本体69とアームカバー70とにより構成される配線内設アーム16Aとし、このアーム本体69にアームカバー70をスライド装着するためのスライド溝67を形成すると共に、アームカバー70にスライド溝67に係合するスライド突起78を形成し、アーム本体69にアームカバー70を装着した際にアーム本体69とアームカバー70との間にフレキシブルケーブル61が配設される構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第1筐体に対して第2筐体を開閉する開閉機構に係り、特に第1筐体と第2筐体が配線で接続される開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テンキー等が配設された第1の筐体(固定基台)に対して液晶表示装置等が配設された第2の筐体(移動基台)を移動可能な構成とされた携帯端末装置が提供されている。またこの種の携帯端末装置では、長時間にわたり液晶表示装置を見ることを可能とするため、チルト機構を設けることにより液晶表示装置が配設された第2の筐体を第1の筐体に対して傾け(チルトさせ)、これにより液晶表示装置の視認性の向上を図ることが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
この種のチルト機構を有した電子機器では、第1の筐体と第2の筐体との間に、信号の授受及び給電を行うための配線を設ける必要がある。特許文献1に開示されたチルト機構では、第1の筐体と第2の筐体とを接続する配線を、第1の筐体と第2の筐体との間に設けられたアームに接着により固定したり、またインサート成形を利用して固定したりする方法が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3157566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着を用いてアームに配線を固定する方法では、アーム及び配線に加えて接着剤が必要となり、部品点数が増加してしまう。また、組み立て作業時に幅狭なアームにはみ出すことなく接着剤を塗布する必要があり、組み立て作業が面倒になるという問題点がある。
【0006】
また、インサート成形を利用して配線をアームに配設する方法では、特殊な金型が必要となるため金型コストが上昇すると共に、インサート成形時に配線が熱によりダメージを受けるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡単かつ確実に配線をアーム内に配設しうる開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、第1の観点からは、
一端が第1の筐体に接続されると共に他端が第2の筐体に接続され、回転に伴い前記第1の筐体に対して第2の筐体を開閉させる一対の主動アームと、
前記第1の筐体と前記第2の筐体との間に配設される配線とを有する開閉機構であって、
前記一対の主動アームの内、少なくとも一方をアーム本体とアームカバーとにより構成される配線内設アームとし、
該アーム本体に前記アームカバーをスライド装着するための第1のスライド部を形成すると共に、前記アームカバーに前記第1のスライド部に係合する第2のスライド部を形成し、
前記アーム本体に前記アームカバーを装着した際、前記アーム本体と前記アームカバーとの間に前記配線が固定される構成したことを特徴とする開閉機構により解決することができる。
【発明の効果】
【0009】
開示のヒンジ機構によれば、アーム本体にアームカバーをスライド装着することにより配線を配線内設アーム内に固定できるため、確実かつ容易に配線をアームに配設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である開閉機構を示しており、移動基台が開き位置にある状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である開閉機構を示しており、移動基台が閉じ位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である開閉機構の分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態である開閉機構の動作を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態である開閉機構の主動アーム及びヒンジベース近傍を拡大して示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態である開閉機構の主動アーム及びヒンジベース近傍を拡大して示す分解斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態である開閉機構に設けられるヒンジ機構の斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態である開閉機構に設けられるヒンジ機構の分解斜視図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態である開閉機構に設けられる配線内設アームの斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態である開閉機構に設けられる配線内設アームの分解斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態である開閉機構の効果を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA−A線に沿う断面図、(C)は(A)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図12】図12は、比較例である開閉機構を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0012】
図1乃至図4は本発明の一実施形態である開閉機構を示している。本実施形態では、開閉機構の一種として、固定基台12(第1の筐体)に対して移動基台14(第2の筐体)を開閉し、固定基台12に対して移動基台14を傾けた状態で保持するチルト機構を例に挙げて説明するものとする。
【0013】
図1及び図2は本発明の一実施形態であるチルト機構10の外観を示す斜視図であり、図3は
チルト機構10の分解斜視図であり、図4はチルト機構10の動作を示す側面図である。本実施形態では、チルト機構10を携帯端末装置に適用した例について説明するものとする。
【0014】
チルト機構10は、大略すると固定基台12、移動基台14、主動アーム16A,16B、従動アーム18、及びヒンジ機構20A,20B等により構成されている。
【0015】
固定基台12は、携帯端末装置の本体部となるものである。歩実施形態では、固定基台12は図3に示されるように、第1筐体半体12Aと第2筐体半体12Bとを組み合わせた構成とされている。また、組み合わせた状態で内側に位置する第2筐体半体12Bには、後述するヒンジフレーム40を収納するためのヒンジベース収納部13が形成されている。この固定基台12の上面24には、例えばキーボード或いは液晶表示装置等の電子部品が設けられる。
【0016】
また移動基台14は携帯端末装置の蓋体部となるものであり、主動アーム16A,16B及び従動アーム18により、固定基台12に対して移動可能な構成とされている。この移動基台14の上面25には、液晶表示装置30等が設けられる。また、移動基台14も図3に示すように、第1筐体半体14Aと第2筐体半体14Bとを組み合わせた構成とされている。更に、内側に位置する第2筐体半体14Bには、後述する主動アーム16A,16B及び従動アーム18が収納される収納凹部15A〜15Cが形成されている。
【0017】
図1は固定基台12に対して移動基台14が開いた状態(以下、開状態という)を示しており、また図2は固定基台12に対して移動基台14が閉じた状態(以下、閉状態という)を示している。この閉状態において、移動基台14は固定基台12に重なるよう構成されており、よって携帯性が確保される。
【0018】
また開状態において、移動基台14は固定基台12上において所定の角度θだけ傾いた状態(チルトした状態)となるよう構成されている。この開状態において移動基台14の図中矢印Y1方向側の端部(端部となる側面)は固定基台12の上面24と当接した状態となっている(この端部を当接側端部31という)。
【0019】
このように、液晶表示装置30が設けられた移動基台14が固定基台12に対して傾いた状態で保持されることにより、液晶表示装置30の視認性を向上させることができる。尚、以下の説明において、開状態における移動基台14の位置を開き位置といい、閉状態における移動基台14の位置を閉じ位置というものとする。
【0020】
主動アーム16A,16Bは金属又は硬質の樹脂により形成されており、図5及び図6に拡大して示すように、回転軸方向(図中、矢印X1方向或いはX2方向)から見た場合、全体としてクランク形状(Z形状)を有している。具体的には、図6において水平に延在する中心部62Aを中心とし、その一端部から直角に一の方向(Z1方向)に延出する第1延出部63A,63Bと、その他端部から直角に第1延出部63Aの延出方向と反対方向(Z2方向)に向け延出する第2延出部64A,64Bとを一体的に形成した形状とされている。
【0021】
また、主動アーム16A,16Bの図6における上端部には、移動側第1支軸34が回転可能に配設されている。この移動側第1支軸34は、固定基台12に取り付けられる。一方,主動アーム16A,16Bの図6における下端部は、固定側第1支軸32に固定されている。この固定側第1支軸32は、後述するヒンジ機構20A,20Bの一部を構成するものである。
【0022】
この主動アーム16A,16Bは、固定基台12側に配設された固定側第1支軸32が回転することにより、移動基台14を固定基台12に対して閉じ位置と開き位置との間で移動させる。この際、主動アーム16A,16Bの上端部も移動側第1支軸34を中心として回転する。
【0023】
しかしながら、主動アーム16A,16Bのみで固定基台12に対して移動基台14を移動させる構成では、移動側第1支軸34を中心として移動基台14が回転してしまい、移動時の姿勢が不安定となる。このため、固定基台12と移動基台14との間には、主動アーム16A,16Bと共に従動アーム18が設けられている。
【0024】
従動アーム18は、図6における下端部に固定側第2支軸36が回転可能に配設されており、上端部に移動側第2支軸38が回転可能に配設されている。固定側第2支軸36は固定基台12に取り付けられ、移動側第2支軸38は移動基台14に取り付けられる。尚、本実施形態では、主動アーム16と異なり従動アーム18を各基台12,14の片方の側部にのみ配置しているが、主動アーム16と同様に各基台12,14を挟んで2個設ける構成としてもよい。
【0025】
このように、固定基台12と移動基台14の間に主動アーム16A,16Bと共に従動アーム18を設けることにより、移動基台14を移動させる際に移動基台14は固定基台12に対して一定の移動軌跡を描いて移動する。よって、チルト機構10の開閉動作において、移動基台14の姿勢は安定し不要な変位の発生を防止できる。
【0026】
次に、ヒンジ機構20について説明する。図7はヒンジ機構20A,20Bの斜視図であり、図8はヒンジ機構20A,20Bの分解斜視図である。尚、ヒンジ機構20Aとヒンジ機構20Bは、主動アーム16A,16Bの回転に伴い反対方向に回転するため内部が対象な構成となっている点を除き略同一の構成とされている。このため、ヒンジ機構20A,20Bを一括的に説明するものとする(一括的に説明する場合は、ヒンジ機構20と示す)。
【0027】
ヒンジ機構20は、大略するとシャフト41、圧縮ばね50、ヘッドカム51、駆動カム52、ヒンジケース53,ワッシャ54等により構成されている。このヒンジ機構20は、いわゆるセミオートヒンジである。上記の圧縮ばね50、ヘッドカム51、駆動カム52、及びヒンジケース53がカム式のセミオート機構を構成する。
【0028】
シャフト41のヒンジケース53から露出する部分は、主動アーム16A,16Bが装着される固定側第1支軸32となる。また、圧縮ばね50、ヘッドカム51、及び駆動カム52は、シャフト41のヒンジケース53内に位置する部分に配設される。更に、シャフト41の端部に位置するワッシャ固定部41aは、ヒンジケース53の端部から突出し、この部分にワッシャ54が固定される。
【0029】
駆動カム52とヘッドカム51との当接面には、互いに嵌合する凸面と凹面が形成されており、凸面同士が当接する際には、圧縮ばね50により回転カムと固定カムの当接面に圧接力が付勢されて回転摺動トルクが発生する。駆動カム52及びヘッドカム51の各凸面の頂点部同士が当接する位置(この位置が中立位置となる)に至る前までは、この回転摺動トルクはシャフト41を元に戻す方向に作用する。しかしながら、凸面の頂点部が中立位置を越えると、回転摺動トルクはシャフト41を進ませる方向(元に戻す方向とは逆の方向)に作用する。
【0030】
本実施形態では、上記構成とされたヒンジ機構20(20A,20B)が、主動アーム16A,16Bに夫々配設された構成とされている。具体的には、主動アーム16Aにはヒンジ機構20Aが配設され、主動アーム16Bにはヒンジ機構20Bが配設されている。よって、主動アーム16Aと主動アーム16Bとは独立した構成とされており、シャフト等を用いて連結された構成とはされていない(これについては、後に詳述する)。このヒンジ機構20Aが設けられた主動アーム16A及びヒンジ機構20Bが設けられた主動アーム16Bは、ヒンジフレーム40に装着される。
【0031】
次に、ヒンジフレーム40について、主に図6及び図5を用いて説明する。ヒンジフレーム40は、硬質樹脂あるは金属により形成されている。このヒンジフレーム40は、前記のように第2筐体12Bに形成されたヒンジベース収納部13内に収納されることにより、固定基台12に固定される(図4参照)。
【0032】
ヒンジフペース40は、フレーム本体42、主動アーム収納部43A,43B、従動アーム収納部44、及びヒンジ収納部45A,45B等を一体的に形成した構成とされている。フレーム本体42は図中X1,X2方向に長く延在する薄板形状を有した部位であり、その両側に主動アーム収納部43A,43B及びヒンジ収納部45A,45Bが形成され、またX2方向側の端部に従動アーム収納部44が形成されている。
【0033】
主動アーム収納部43Aとヒンジ収納部45Aは隣接して設けられており、主動アーム収納部43Bとヒンジ収納部45Bも隣接して設けられている。主動アーム収納部43A,43Bは、主動アーム16A,16Bの下端所定部分が回転可能に収納される凹部である。また、ヒンジ収納部45A,45Bは、内部にヒンジ機構20A,20Bが収納される収納用孔が形成されている(図6のX1方向側のヒンジ収納部45Aを参照)。この収納用孔は、ヒンジ収納部45A,45BをX1,X2方向に貫通するよう形成されている。
【0034】
主動アーム16A,16B及びヒンジ機構20A,20Bをヒンジフペース40に取り付けるには、次のように行う。予め、主動アーム16A,16Bをヒンジ機構20A,20Bの固定側第1支軸32から取り外しておく。そして、主動アーム16A,16Bを図中矢印Z2方向に移動させ、その下端部を主動アーム収納部43A,43B内に装着する。
【0035】
続いて、ヒンジ機構20Aをヒンジ収納部45Aに形成された収納用孔に矢印X1方向に挿入すると共に、ヒンジ機構20Bをヒンジ収納部45Bに形成された収納用孔に矢印X2方向に挿入する。これにより、各ヒンジ機構20A,20Bはヒンジ収納部45A,45Bに装着される。この挿入に伴い、固定側第1支軸32は主動アーム16A,16Bの下端に形成されている取り付け孔内に圧入される。これにより、ヒンジ機構20A,20Bと主動アーム16A,16Bは一体的な構成となる。
【0036】
また、主動アーム収納部43A,43Bの外側壁には軸受部46が形成されている(図では、主動アーム収納部43Aの外側壁に形成された軸受部46のみが図に現れる)。主動アーム16A,16Bから突出した固定側第1支軸32の先端部は、この軸受部46に軸承される。これにより、主動アーム16A,16Bは、ヒンジ機構20A,20Bの動作に伴いヒンジフレーム40に対して回転可能な構成となる。
【0037】
また、従動アーム18は、固定側第2支軸36を取り外した状態で従動アーム収納部44内に挿入する。従動アーム収納部44の両側壁には、固定側第2支軸36が装着される装着孔が形成されている。従動アーム18を従動アーム収納部44にZ2方向に向け移動させて従動アーム収納部44に装着した後、側壁に形成された装着孔から固定側第2支軸36を挿入し、従動アーム18の下端部に形成された取り付け孔に取り付ける。これにより、従動アーム収納部44はヒンジフレーム40に対して回転可能な構成となる。
【0038】
本実施形態に係るチルト機構10では、各主動アーム16A,16Bに夫々ヒンジ機構20A,20Bが設けられ、また各主動アーム16A,16Bは独立した構成となっている。しかしながら、主動アーム16A,16Bは単一のヒンジフレーム40に共に配設され、このヒンジフレーム40に対して回転可能な構成となっている。これにより、各主動アーム16A,16Bが独立した構成であっても、移動基台14が移動する際に主動アーム16A,16Bは夫々が同期して回転することとなる。よって、移動基台14の移動時にガタツキが発生するようなことはなく、開き位置と閉じ位置との間で移動基台14を安定して移動させることができる。
【0039】
また、本実施形態に係るチルト機構10では、主動アーム16A,16Bをヒンジフレーム40に設けることにより、従来主動アーム16A,16B間に配設されていたシャフトを不要とすることが可能となった。これについて、図11及び図12を用いて説明する。
【0040】
図12は、シャフト130を用いたチルト機構100を示している。このチルト機構100は、固定基台112に対して移動基台114を開き位置と閉じ位置との間で移動させるものである。このチルト機構100は、主動アーム116A,116B及び従動アーム118を有しており、また主動アーム116Bにのみヒンジ機構120が設けられている。更に、主動アーム116Aと主動アーム116Bはシャフト130により連結されており、これにより主動アーム116A,116Bは同期して回転する構成とされている。
【0041】
しかしながら、この従来構成のチルト機構100では、主動アーム116A,116Bの間にX1,X2方向に長くシャフト130が位置する。このシャフト130が配設される部位は、外部に近い位置であるため、外部接続用のコネクタ端子等を配設するのに好適な部位である。しかしながら、従来のチルト機構100では、この部位にシャフト130が配設されるため、外部接続用のコネクタ端子等の電子部品の配設位置の自由度が低下するという問題点がある。
【0042】
これに対して、図11は本実施形態に係るチルト機構10を示している。本実施形態では、主動アーム16Aと主動アーム16Bとの間には従来必要とされたシャフト130等は設けられていない。また、主動アーム16A,16Bは共にヒンジフレーム40に配設されているため、シャフト等で連結されていなくても移動基台14が移動した際に各主動アーム16A,16Bは同期して回転することができる。更に、ヒンジフレーム40のフレーム本体42の厚さW(図11(C)に矢印で示す)は、1mm以下の薄い寸法とすることが可能である。
【0043】
よって、本実施形態のチルト機構10では、主動アーム16Aと主動アーム16Bとの間に図11(C)に一点鎖線で示す空間部Sが形成される。よって、この空間部Sに外部接続用のコネクタ端子等の電子部品を配設することが可能となり、電子部品を固定基台12内に実装する際の自由度を高めることが可能となる。
【0044】
次に、チルト機構10を構成する主動アーム16(16A,16B)、及び従動アーム18等の寸法について説明する。図3(A)は、主動アーム16及び従動アーム18の各長さ寸法を矢印で示している。
【0045】
以下説明する各寸法の基準として、移動基台14の図中矢印Y1方向の当接側端部31と、固定基台12の矢印Y2方向の端部28(以下、この端部を基準端部28という)を用いることとする。尚、基準端部28は、移動基台14が閉じ位置に位置する時、固定基台12の当接側端部31側の端部26に対して反対側の端部として定義される。
【0046】
ここで、主動アーム16の固定側第1支軸32と移動側第1支軸34との間の距離をW1とする。また、基準端部28と固定側第1支軸32との間の距離をW2とする。また、当接側端部31と移動側第1支軸34との間の距離をW3とする。
【0047】
一方、従動アーム18の固定側第2支軸36と移動側第2支軸38との間の距離をL1とする。また、基準端部28と固定側第2支軸36との間の距離をL2とする。更に、当接側端部31と移動側第2支軸38との間の距離をL3とする。この時、本実施形態に係るチルト機構10では、各距離W1,W2,W3,L1,L2,L3が、W1<W2+W3及びL1<L2+L3となる条件を満たすよう設定している。
【0048】
仮に、各距離W1,W2,W3,L1,L2,L3をW1>W2+W3及びL1>L2+L3となるよう設定した場合、移動基台14は固定基台12上にチルト状態とはならず、固定基台12と移動基台14とがフラットに並んだ状態まで移動してしまう。しかしながら、上記のように各距離W1,W2,W3,L1,L2,L3をW1<W2+W3及びL1<L2+L3とすることにより、移動基台14を固定基台12上で傾いた状態(チルト状態)で確実に保持することができる。
【0049】
次に、チルト機構10の具体的な動作について説明する。図4は、移動基台14が閉状態から開状態に移動する動作を示している。
【0050】
図4(A)は、閉状態のチルト機構10を示している。この閉状態では、移動基台14は固定基台12の上部に重なった状態となっている。また、従動アーム18は固定側第2支軸36を中心として時計方向に回転し、また主動アーム16(16A,16B)も固定側第1支軸32を中心として時計方向に回転している。この際、主動アーム16は、ヒンジ機構20の前記した圧縮ばね50の弾性付勢力により時計方向に回転付勢されている。この回転付勢力により、移動基台14は固定基台12に押し付けられ、両基台12,14間のガタツキが防止されている。
【0051】
この閉状態から移動基台14を開き位置に向け移動操作すると、移動基台14は固定基台12から離間して開き位置に向け移動を開始する。この際、主動アーム16は固定基台12に対して固定側第1支軸32を中心として回転し、従動アーム18も固定基台12に対して固定側第2支軸36を中心として回転する。またこれと同時に、主動アーム16は移動基台14に対して移動側第1支軸34を中心として回転し、従動アーム18も移動基台14に対して移動側第2支軸38を中心として回転する。
【0052】
この移動の際、移動基台14は主動アーム16及び従動アーム18の二つのアームにより支持される。このため、移動基台14の移動姿勢は一義的に決められ、一つのアームのみで支持する構成のように移動基台14が不安定になるようなことはない。
【0053】
また、上記のように主動アーム16が回転することにより、ヒンジ機構20を構成するシャフト41も回転する。しかしながら、駆動カム52及びヘッドカム51の各凸面が中立位置に達していない状態では、移動操作を解除すると固定基台12は圧縮ばね50の付勢力により再び閉じ位置に向け戻る動作を行う。
【0054】
図4(B)は、移動基台14が中立位置まで移動した状態を示している。前記したように、中立地位置においては駆動カム52及びヘッドカム51の各凸面の頂点部同士が当接した状態となっている。よって、この中立位置より更に移動基台14を開き位置に向け操作することにより、駆動カム52とヘッドカム51との当接面に発生する回転摺動トルクはシャフト41を進ませる方向に反転する。これにより、主動アーム16は固定側第1支軸32を中心として反時計方向に回転付勢される。
【0055】
よって、中立地位置より移動基台14を開き位置に向け若干操作した後は、移動基台14は自動的に開き位置に向けて移動する。そして、移動基台14の当接側端部31が固定基台12の上面24に当接した時点で、移動基台14の移動は停止する。これにより、図4(C)に示すように移動基台14は開状態(チルト状態)となる。この開状態における固定基台12(上面24)に対する移動基台14の傾き角度θ(チルト角度)は、前記した各距離W1,W2,W3,L1,L2,L3及び移動基台14のY1,Y2方向の長さ等を調整することにより、角度調整することが可能である。
【0056】
また開状態では、主動アーム16はヒンジ機構20の圧縮ばね50の弾性付勢力により反時計方向に回転付勢されている。この回転付勢力により、移動基台14の当接側端部31は固定基台12に押し付けられるため、移動基台14の固定基台12上におけるガタツキが防止される。
【0057】
また本実施例では、主動アーム16がクランク形状であるため、固定基台12の基準端部28に主動アーム16を逃げるための逃げ穴の形成を不要とすることができる。即ち、仮に固定側第1支軸32と移動側第1支軸34をクランク形状ではなく、直線状の主動アーム(図4(C)に一点鎖線16−1で示す)を配設した場合、基準端部28の矢印Pで示す位置が主動アーム16−1と干渉してしまうため、この位置Pに逃げ穴の形成する必要が生じる。しかしながら、固定基台12に逃げ穴を形成した場合、この逃げ穴から塵埃が固定基台12内に侵入してしまう。また、固定基台12の外周部分に逃げ穴が存在すると、デザイン的にも見栄えが良くない。
【0058】
これに対して、本実施形態のように主動アーム16をクランク形状とすることにより、主動アーム16は基準端部28を迂回した構成となり、基準端部28に逃げ穴を形成する必要を無くすることができる。これにより、固定基台12内への塵埃の侵入及び固定基台12のデザイン性の低下を抑制することができる。尚、主動アーム16をクランク形状としても、主動アーム16自体の本来的な動作が妨げられるようなことはない。
【0059】
尚、図4(C)に示す開状態から、移動基台14を閉じ位置に向け移動させる操作及び動作は、図4を用いて説明した上記の操作及び動作の反対となるため、その説明については省略するものとする。
【0060】
上記のように本実施形態に係るチルト機構10は、簡単な機構で開き位置において移動基台14を固定基台12に対して傾けた状態(チルト状態)に保持し、閉じ位置においては移動基台14を固定基台12に重ねた状態で保持することができる。
【0061】
次に、固定基台12とヒンジベース収納部13との間における配線の配設方法について説明する。
【0062】
前記のように、固定基台12には液晶表示装置及びテンキー等が配設され、また移動基台14には液晶表示装置等が配設されるため、固定基台12と移動基台14とを電気的に接続する必要がある。本実施形態では、この固定基台12と移動基台14を電気的に接続する配線としてフレキシブルケーブル61(フレキシブル配線基板)を用いると共に、このフレキシブルケーブル61を一対の主動アーム16A,16Bの内、一方の主動アーム16Aに内設したことを特徴としている(以下の説明において、この主動アーム16Aを特に配線内設アーム16Aという)。
【0063】
フレキシブルケーブル61は薄いため、配線内設アーム16Aに内設することが可能である。また、フレキシブルケーブル61は可撓性に富むため、上記のように移動基台14の移動に伴い回転する配線内設アーム16A内に配設しても、断線や経時劣化が発生するおそれは少ない。
【0064】
配線内設アーム16Aは、アーム本体69とアームカバー70とにより構成されている。図9はフレキシブルケーブル61及びアームカバー70をアーム本体69に取り付けた状態を示しており、図10はフレキシブルケーブル61及びアームカバー70をアーム本体69から取り外した状態を示している。
【0065】
図10に示すように、アーム本体69は中心部62A,第1延出部63A,第2延出部64Aを有している。また、第1延出部63Aのアームカバー70が配設される側の面(以下、内側面という)にはケーブル収納部62aが形成されている。同様に、第1延出部63Aの内側面にはケーブル収納部63aが、第2延出部64Aの内側面にはケーブル収納部64aが夫々形成されている。この各ケーブル収納部62a〜64aは連続しており、また両側部には壁部65,66が形成されている。
【0066】
また、ケーブル収納部63aの両側に形成された壁部65,66には、上端部から図中矢印H1方向に所定長さのスライド溝67が形成されている。同様に、ケーブル収納部64aの両側に形成された壁部65,66にも、上端部から図中矢印H1方向に所定長さのスライド溝68が形成されている。
【0067】
アームカバー70は樹脂成型品であり、中心部72,第1延出部73、及び第2延出部74を一体的に形成した構成とされている。この中心部72はアーム本体69のケーブル収納部62aの形状と対応するよう形成されている。同様に、第1延出部73はケーブル収納部63aの形状と対応し、第2延出部74はケーブル収納部64aの形状と対応するよう形成されている。
【0068】
また、第1延出部73の両側壁にはスライド突起77が形成されており、第2延出部74の両側壁にはスライド突起78が形成されている。スライド突起77とスライド溝67は対をなし、対応した形状とされている。また、スライド突起78と前記したスライド溝68も対をなし、対応した形状とされている。
【0069】
フレキシブルケーブル61を配線内設アーム16Aに取り付けるには、先ずフレキシブルケーブル61をアーム本体69に形成されたケーブル収納部62a〜64a内に挿入する。この際、フレキシブルケーブル61は可撓性を有するため、前記のようにクランク形状とされた配線内設アーム16Aであっても、配線内設アーム16Aをケーブル収納部62a〜64a内に確実に装着することができる。また、ケーブル収納部62a〜64aの両側部には、壁部65,66が形成されているため、フレキシブルケーブル61は両側縁を壁部65,66にガイドされる。これによっても配線内設アーム16Aを位置精度よくケーブル収納部62a〜64a内に収納することができる。
【0070】
上記のようにケーブル収納部62a〜64a内にフレキシブルケーブル61が装着されると、続いてアーム本体69にアームカバー70を装着する。
【0071】
具体的には、アーム本体69の上部においてスライド溝67とスライド突起77との位置合わせを行うと共に、スライド溝68とスライド突起78との位置合わせを行い、続いて、アームカバー70を図9に矢印H1で示す方向に移動させ、スライド突起77をスライド溝67内に挿入すると共にスライド溝68をスライド溝68内に挿入する。
【0072】
スライド溝67,68及びスライド突起77,78の長さは等しく設定されている。よって、各スライド突起77,78の下端部が各スライド溝67,68の下端部に当接することにより、アームカバー70はアーム本体69に固定される。これにより、フレキシブルケーブル61はアーム本体69とアームカバー70との間に配設された構成となる。
【0073】
スライド突起77,78の形状は、スライド溝67,68の形状と同一か若干大きく設定されている。このため、アームカバー70がアーム本体69に装着された状態で、スライド突起77,78はスライド溝67,68に強く係合する。このため、移動基台14の移動に伴い配線内設アーム16Aが回転しても、アームカバー70がアーム本体69から離脱するようなことはない。また、スライド突起77とスライド溝67との対、及びスライド突起78とスライド溝68との対の二つの対がそれぞれ係合することにより、確実にアームカバー70をアーム本体69に装着することができる。
【0074】
また、アームカバー70がアーム本体69に装着された状態で、アームカバー70とケーブル収納部62a〜64aとの間にはフレキシブルケーブル61の厚みと同じか、これより若干狭い間隙が形成されるよう構成されている。よって、アームカバー70がアーム本体69に装着された状態で、アームカバー70はフレキシブルケーブル61をケーブル収納部62a〜64aに押圧する。
【0075】
これにより、移動基台14の移動に伴い配線内設アーム16Aが回転しても、フレキシブルケーブル61が配線内設アーム16Aに対してずれることを防止できる。特に、本実施形態に係る配線内設アーム16Aは、直線形状ではなく、クランク形状を有している。よって、フレキシブルケーブル61も配線内設アーム16A内で折り曲げられた状態となる。このため、配線内設アーム16A内でフレキシブルケーブル61が不要に移動することを規制でき、これにより経時劣化が防止され、フレキシブルケーブル61の長寿命化を図ることができる。更に、固定基台12と移動基台14を電気的に接続するフレキシブルケーブル61が外部に露出することがないため、チルト機構10のデザイン性を向上させることもできる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0077】
10 チルト機構
12 固定基台
14 移動基台
16,16A,16B 主動アーム
(16A 配線内設アーム)
18 従動アーム
20 ヒンジ機構
32 固定側第1支軸
34 移動側第1支軸
36 固定側第2支軸
38 移動側第2支軸
40 ヒンジフレーム
62A 中心部
63A 第1延出部
64A 第2延出部
62a,63a,64aケーブル収納部
65,65 壁部
67,68 スライド溝
70 アームカバー
72 中心部
73 第1延出部
74 第2延出部
77,78 スライド突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が第1の筐体に接続されると共に他端が第2の筐体に接続され、回転に伴い前記第1の筐体に対して前記第2の筐体を開閉させる一対の主動アームと、
前記第1の筐体と前記第2の筐体との間に配設される配線とを有する開閉機構であって、
前記一対の主動アームの内、少なくとも一方をアーム本体とアームカバーとにより構成される配線内設アームとし、
該アーム本体に前記アームカバーをスライド装着するための第1のスライド部を形成すると共に、前記アームカバーに前記第1のスライド部に係合する第2のスライド部を形成し、
前記アーム本体に前記アームカバーを装着した際、前記アーム本体と前記アームカバーとの間に前記配線が固定される構成したことを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
回転軸方向から前記配線内設アームを見た際、該配線内設アームの形状をクランク状に折り曲げられた形状としたことを特徴とする請求項1記載の開閉機構。
【請求項3】
前記配線をフレキシブルケーブルとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の開閉機構。
【請求項4】
前記配線内設アームに、前記第1のスライド部と前記第2のスライド部との対を2対設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項5】
前記一対の主動アームの各々に、前記主動アームを回転付勢した際に所定中立位置までは戻し方向に前記主動アームを回転付勢し、該中立位置を過ぎた位置まで前記主動アームが回転されると前記戻し方向とは反対方向に前記主動アームを回転付勢するヒンジ機構を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項6】
前記第1の筐体に固定される平板状の本体部と、該本体部の両端部に前記主動アームが装着されるアーム装着部とを有したベース部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の開閉機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−222189(P2012−222189A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87127(P2011−87127)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】