説明

開閉機構

【課題】躯体の内部を通る通気通路の排気口または給気口に設けられて、これらの排気口または給気口を適切に開閉することで躯体の温度を安定的に維持することを可能とした開閉機構を提案する。
【解決手段】外断熱外壁11及び床版12からなる躯体10の内部を通る通気通路30の排気口31に設置されて当該排気口31を開閉する開閉機構40であって、上下に排気口31と同形状の通気口が形成されている箱部材と、箱部材の内部に収容されて通気口よりも大きい板材からなる扉部材と、箱部材に固定された固定板と、固定板に回転可能に軸支された回転部材と、回転部材の回転中心から離れた位置と扉部材とを連結する柱部材と、一端が固定板に固定されて、他端が回転部材に固定された伸長部材とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の換気システムに利用する開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然換気を利用して冷暖房負荷の削減を図る建物の換気システムが多数開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建物の外壁部に換気用の竪シャフトを設け、竪シャフトと建物の各部屋の温度差により換気を行う換気システムが開示されている。
かかる換気システムは、日射の透過する透明壁と、透過した日射を吸収してシャフト内の温度を調整させる蓄熱壁とで竪シャフトの周壁を構成している。そして、蓄熱壁が日射を蓄熱することで竪シャフト内の温度が上昇し、竪シャフト内に上昇気流が形成される。そのため、室内から竪シャフトに連通する排気通路を介して、各部屋の空気が吸い出されて、建物の換気が行われる。
【0004】
また、特許文献2には、建物を上下に貫通する給気筒と排気筒を備えた換気システムが開示されている。かかる換気システムは、給気筒の下端から外気を取り入れて室内に送気し、排気筒の上端から室内の空気を排気するように構成されており、煙突効果を利用して躯体冷却、内部発熱の自然な排出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−194826号公報
【特許文献2】特開2001−254995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来の換気システムは、建物を上下に貫通する竪シャフトを配置する必要があり、竪シャフトの配置が建物の間取りに影響を及ぼす場合があった。
また、換気を効果的に行うためには、竪シャフトが日射を受ける必要があり、竪シャフトの設置箇所が限定されるため、建物の設計が制約を受ける場合があった。
【0007】
また、前記従来の換気システムは、竪シャフトと室内との温度差を利用して換気を行う構成であるため、室内の温度や外気の温度等に応じて適切な放熱や蓄熱を行うことが難しかった。
【0008】
このような観点から、本発明は、躯体の内部を通る通気通路の排気口または給気口に設けられて、これらの排気口または給気口を適切に開閉することで躯体の温度を安定的に維持することを可能とした開閉機構を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、第一発明にかかる開閉機構は、外断熱外壁及び床版からなる躯体の内部を通る通気通路の排気口に設置されて当該排気口を開閉する開閉機構であって、上下に前記排気口と同形状の通気口が形成されている箱部材と、前記箱部材の内部に収容されて前記通気口よりも大きい板材からなる扉部材と、前記箱部材に固定された固定板と、前記固定板に回転可能に軸支された回転部材と、前記回転部材の回転中心から離れた位置と前記扉部材とを連結する柱部材と、一端が前記固定板に固定されて、他端が前記回転部材に固定された伸長部材とを備えていることを特徴としている。
【0010】
また、第二発明にかかる開閉機構は、外断熱外壁及び床版からなる躯体の内部を通る通気通路の給気口に設置されて当該給気口を開閉する開閉機構であって、上下に通気口が形成されている箱部材と、前記箱部材の内部に回転可能に設置された開閉弁と、前記開閉弁の回転中心に固定された回転部材と、一端が前記箱部材の内面に固定されて、他端が前記回転部材に固定された伸長部材とを備えていることを特徴としている。
【0011】
かかる開閉機構によれば、通気通路の排気口または給気口を開閉して、床版や外断熱外壁に形成された通気通路を通気させることで、構造体の放熱および蓄熱を効果的に行うことができる。
【0012】
前記開閉機構は、前記開閉機構直近の気温が第一閾値以下になったときに全閉状態となり、第一閾値よりも高い第二閾値以上になったときに全開状態となるように構成されているのが望ましい。
なお、前記第一閾値が15℃であって、前記第二閾値が26℃であれば、前記開閉機構直近の気温の温度が下がり、暖房負荷となった場合に通気通路を閉塞して蓄熱し、日射などにより前記開閉機構直近の気温が高温になった場合に通気通路の排気口を全開にして放熱するため、冷暖房を効率的に行うことが可能となる。
【0013】
さらに、前記伸長部材が形状記憶合金により構成されていれば、形状記憶合金の伸縮により通気通路の開閉を自動的に行うことができるため、複雑な機構を要する必要がなく安価であるとともに、メンテナンスに要する手間や費用も削減できる。
また、空気圧により通気通路の排気口を開閉するように構成しても、同様の効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の開閉機構によれば、躯体の内部を通る通気通路の排気口または給気口を適切に開閉し、建物の躯体温度を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る放蓄熱構造体の概要を示す断面図である。
【図2】(a)および(b)は第一開閉機構を示す模式図である。
【図3】(a)〜(c)は第二開閉機構を示す模式図である。
【図4】気温が低い場合の放蓄熱構造体の状況を示す断面図である。
【図5】気温が高い場合の放蓄熱構造体の状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る放蓄熱構造体1は、自然換気を利用して、照明等により躯体1に蓄熱された発熱負荷を取り除くものである。
【0017】
放蓄熱構造体1は、図1に示すように、外断熱外壁11と床版12とを備えた躯体10と、躯体10の開口部13に設けられた内窓21と、内窓21の外側に設けられた外窓22と、躯体10の内部を通る通気通路30と、通気通路30の排気口31または給気口32を開閉する開閉機構40と、を備えて構成されている。
【0018】
外断熱外壁11は、躯体10の外周囲を覆う版材であって、本実施形態では鉄筋コンクリートにより形成された壁本体11bと壁本体11bの表面に設置された断熱材11aとにより構成されている。なお、断熱材11aを構成する材料は限定されるものではない。また、壁本体11bを構成する材料は限定されるものではなく、例えば鉄骨鉄筋コンクリートであってもよい。
【0019】
外断熱外壁11には、開口部13が形成されている。なお、開口部13の形状や配置等は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
開口部13には、内窓21と外窓22が設けられている。
【0020】
床版12は、建物の階層を区分する水平版材であって、本実施形態では、鉄筋コンクリートにより構成する。なお、床版12を構成する材料は限定されるものではなく、例えば鉄骨コンクリートにより構成してもよい。
【0021】
床版12の下面には、躯体10の内部空間15を照らすための照明14が設置されている。なお、照明14の形状、個数、配置等は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0022】
また、外断熱外壁11および床版12には、内部に通気通路30が形成されている。
【0023】
内窓21は、開口部13の内部空間15側を閉塞するように設けられている。内窓21はガラスにより構成されており、太陽光の透過が可能となるように構成されている。なお、内窓21を構成する材料は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0024】
外窓22は、開口部13の屋外側を閉塞するように設けられている。外窓22は、内窓21の外側に所定の間隔(空間23)をあけて配設されている。外窓22はガラスにより構成されており、太陽光の透過が可能に構成されている。なお、外窓22を構成する材料は限定されるものではない。
【0025】
外窓22の上部には、空間23から屋外に通じる排気路24が形成されている。また、外窓22の下部には、屋外から空間23に至る給気路25が形成されている。空間23内は、給気路25からの給気および排気路24からの排気により、上方向に流れる気流が形成されている。
なお、排気路24と給気路25の配置は限定されるものではなく、例えば外窓22に上部に給気路25が形成され、下部に排気路24が形成されていてもよい。
【0026】
外断熱外壁11に形成された通気通路30と床版12に形成された通気通路30とは、互いに連通している。
通気通路30は、排気口31が空間23に開口している。この排気口31には、第一開閉機構41(開閉機構)が配設されている。第一開閉機構41は、通気通路30の排気口31を開閉する。
【0027】
本実施形態では、空間23の上部に、通気通路30に通じる給気口32を形成するものとする。
給気口32には、第二開閉機構42(開閉機構)が形成されている。第二開閉機構42は、通気通路30の給気口32を開閉する。
【0028】
第一開閉機構41は、形状記憶合金を含んで構成されている。第一開閉機構41は図2(b)に示すように、第一開閉機構41直近の気温が15℃(第一閾値)以下になったときに全閉状態となり、26℃(第二閾値)以上になったときに全開状態となるように構成されている。なお、第一開閉機構41の開閉の基準となる気温は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。また、第一開閉機構41の開閉の制御は、気温に限定されるものではなく、例えば気圧により制御してもよい。
【0029】
第一開閉機構41は、空間23の下部に配設されていて、排気口31を開閉する。第一開閉機構41は、排気口31に対応する位置に配設されており、第一開閉機構41直近の温度が高温のときに排気口31を開口し、第一開閉機構41直近の温度が低温のときに排気口31を閉塞する。
【0030】
第一開閉機構41は、図2(a)に示すように、箱部材41aと扉部材41bと固定板材41cと回転部材41dと柱部材41eと伸長部材41fを備えて構成されている。
【0031】
箱部材41aは、上下に排気口31と同形状に形成された通気口41gが形成されており、排気口31上に設置されている。
扉部材41bは、箱部材41aの内部に収容されており、通気口41gよりもわずかに大きい板材により構成されている。
【0032】
固定板材41cは、箱部材41aに固定された板材であって、回転部材41dを回転可能に軸支している。
回転部材41dは、中心部において回転可能に軸支された部材である。
【0033】
柱部材41eは、扉部材41bの上面に一体に立設された板材であって、回転部材41dの中心から離れた位置において回転部材41dに連結されている。
伸長部材41fは、一端が固定板材41cに固定されて、他端が回転部材41dに連結された部材であって、形状記憶合金により構成されている。伸長部材41fは第一開閉機構41直近の気温に応じて変形するように構成されている。
【0034】
回転部材41dは、伸長部材41fの変形に伴い回転する。回転部材41dが回転すると、扉部材41bが上下し、通気口の開閉を行う。
【0035】
第二開閉機構42は、形状記憶合金を含んで構成されている。第二開閉機構42は、図3(a)および(b)に示すように、第二開閉機構42直近の気温が15℃(第一閾値)以下または26℃(第二閾値)以上になったときに全閉状態となり、図3(b)に示すように5℃(第一閾値)〜26℃(第二閾値)の範囲内のときに開口状態となるように構成されている。なお、第二開閉機構42の開閉の基準となる気温は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。また、第二開閉機構42の開閉の制御は、気温に限定されるものではなく、例えば気圧により制御してもよい。
【0036】
第二開閉機構42は、空間23の上部の給気口32に対応する位置に配設されていて、給気口32を開閉する。
【0037】
第二開閉機構42は、図3(a)に示すように、箱部材42aと開閉弁42bと回転部材42cと伸長部材42dとを備えて構成されている。
【0038】
箱部材42aは、給気口32の下面に沿って形成された箱型の部材であって、上下に給気口32に形状に応じて形成された通気口が形成されている。通気口の周縁には、開閉弁42bと当接可能に形成された爪部42eが形成されている。
【0039】
開閉弁42bは、箱部材42aの内部に収納された板材であって、回転部材42cの中心(箱部材42aの断面中心)を軸に回転可能に設置されている。
【0040】
回転部材42cは、その中心が開閉弁42bの軸心と同一となるように開閉弁42bに固定されている。
【0041】
伸長部材42dは、形状記憶合金により構成されており、第二開閉機構42直近の気温に応じて所定の形状に変化するように構成されている。伸長部材42dの一端は箱部材42aの内面に固定されており、他端は回転部材42cに連結されている。
【0042】
伸長部材42dの形状が変化することにより回転部材42cが回転するため、開閉弁42bが、回転部材42cに伴って回転する。
【0043】
開閉弁42bが回転することで、開閉弁42bの先端が爪部42eに当接し、通気口を遮蔽するように構成されている。
【0044】
次に、本実施形態の放蓄熱構造体1の作用について説明する。
開閉機構40直近の気温が第一閾値(15℃)と第二閾値(26℃)との間のときは、図1に示すように、第一開閉機構41は開口状態となり、排気口31は、開口している。また、第二開閉機構42の開閉弁42bは、つめ部42eの間に配置されるため、給気口32を閉塞することなく通気が可能な状態を維持する。
【0045】
排気口31および吸気口32が開口しているため、通気通路30内に外気が取り込まれるとともに、通気通路30内の空気が空間23を介して屋外に排出されるため、通気通路30内に気流が形成されて、照明14等により躯体10に蓄えられた熱が放出される。
【0046】
開閉機構40直近の気温が第一閾値以下の場合は、図4に示すように、第一開閉機構41および第二開閉機構42により排気口31および給気口32は、閉塞される。
すると、通気通路30内の空気が屋外に放出されることが防止されるとともに、冷たい空気が躯体10の内部に入る込むことがないので、照明14等から発生した熱を躯体10に蓄熱することが可能となる。そのため、暖房効率を向上させることが可能となる。
【0047】
開閉機構40直近の気温が第二閾値以上の場合は、図5に示すように、第一開閉機構41排気口31が全開となる。これにより通気通路30内の空気が排気口31を介して空間23の気流により排気路24から放出される。したがって、通気通路30内の空気とともに照明14等により躯体10に蓄えられた熱も放出される。故に、冷房効率の向上を図ることができる。このとき通気通路30内には、内部空間15の空気が流入する。
一方、給気口32は、第二開閉機構42により閉塞されるため、熱い空気が躯体10の内部に入ることが防止される。
【0048】
以上、本実施形態の外断熱外壁11および床版12からなる放蓄熱構造体1によれば、動力等を用いることなく、自然換気を利用して躯体10に形成された通気通路30内に気流を形成し、躯体蓄熱の放出または蓄熱をすることが可能なため、COの排出を削減することが可能となり、環境保護の面で優れた効果を得ることが可能となる。
【0049】
また、特別な機構を必要としないため、メンテナンスに要する手間や費用を省略することが可能となる。
【0050】
また、外断熱外壁11とすることで気象環境の変動によらず、躯体10を一定の温度に保ち、快適性と空調冷暖房負荷の削減を実現することができる。
躯体10全体を立体的な通気通路として利用しているため、竪シャフトなどの特殊な構造体を必要とせず、日射や意匠的な制約を受けない。
【0051】
なお、本実施形態では、通気通路30の排気口31を内窓21と外窓22との間に形成された空間23に開口するものとしたが、通気通路30の排気口31の形成箇所は限定されるものではない。例えば、外断熱外壁11に排気口31を開口して、通気通路30からの排気を直接屋外に行ってもよい。
【0052】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることは言うまでもない。
【0053】
例えば、開閉機構の構成は、形状記憶合金を含んで構成されたものに限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
また、開閉機構の形状や構成は限定されるものではない。
【0054】
また、前記実施形態では、二重窓の空間に通気通路に通じる給気口を形成するものとしたが、給気口は必要に応じて形成すればよく、省略することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 放蓄熱構造体
10 躯体
11 外断熱外壁
12 床版
13 開口部
21 内窓
22 外窓
23 空間
30 通気通路
31 排気口
40 開閉機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外断熱外壁及び床版からなる躯体の内部を通る通気通路の排気口に設置されて当該排気口を開閉する開閉機構であって、
上下に前記排気口と同形状の通気口が形成されている箱部材と、
前記箱部材の内部に収容されて前記通気口よりも大きい板材からなる扉部材と、
前記箱部材に固定された固定板と、
前記固定板に回転可能に軸支された回転部材と、
前記回転部材の回転中心から離れた位置と前記扉部材とを連結する柱部材と、
一端が前記固定板に固定されて、他端が前記回転部材に固定された伸長部材と、を備えていることを特徴とする、開閉機構。
【請求項2】
外断熱外壁及び床版からなる躯体の内部を通る通気通路の給気口に設置されて当該給気口を開閉する開閉機構であって、
上下に通気口が形成されている箱部材と、
前記箱部材の内部に回転可能に設置された開閉弁と、
前記開閉弁の回転中心に固定された回転部材と、
一端が前記箱部材の内面に固定されて、他端が前記回転部材に固定された伸長部材と、を備えていることを特徴とする、開閉機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64596(P2013−64596A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249453(P2012−249453)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【分割の表示】特願2009−121490(P2009−121490)の分割
【原出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】