説明

開閉装置用カバー機構

【課題】逃げ部からの塵埃の侵入を防止すると共に美感の向上を図った開閉装置用カバー機構を提供する。
【解決手段】回転することにより移動プレート14を閉位置と開位置との間で移動させるヒンジアーム18を有すると共に、開状態においてヒンジアーム18との干渉を防止する逃げ開口7を第2筐体3に形成した構成の開閉装置10に設けられる開閉装置用カバー機構であって、ヒンジアーム18が閉位置に位置する時に逃げ開口7を塞ぐと共に、開位置ではヒンジアーム18と係合し移動付勢されることにより逃げ開口7を塞ぐ位置から移動するカバー50と、このカバー5を逃げ部を塞ぐ方向に付勢するトーションスプリング60とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉装置用カバー機構に係り、特に筐体に形成された開口部を塞ぐカバーを駆動する開閉装置用カバー機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯端末装置に代表される携帯端末装置は、テンキー等が配設された第1筐体と、液晶表示装置等が配設され第1筐体に対して開閉可能とされた第2筐体とにより構成されている。また、第1筐体に対して第2筐体を開閉させる構造としては、第1筐体と第2筐体をヒンジ機構により接続し、第1筐体に対して第2筐体を回動させることにより開閉するタイプ(折り畳みタイプ)のものと、第1筐体に対して第2筐体をスライドさせることにより開閉するタイプ(スライドタイプ)のものが一般的である。
【0003】
ところで、近年携帯端末装置は多機能化が進んでおり、また地上デジタル放送を受信可能な装置も提供されるようになってきており、液晶表示装置の大型化も進んでいる。また、多機能化に伴い、携帯端末装置に対して入力処理を行うキーボードのキー数も増大する傾向にあり、よってキーボードも大型化する傾向にある。一方において携帯端末装置は携帯性の向上が恒常的に望まれており、液晶表示装置及びキーボードの大型化にも限度がある。
【0004】
上記した折り畳みタイプの携帯端末装置では、折り畳んだ状態では液晶表示装置は隠れた状態となってしまい、折り畳み状態では液晶表示装置を使用することができないという問題点がある。また、スライドタイプの携帯端末装置では上記の折り畳みタイプの問題点は発生しないが、開いた状態において必然的に第1筐体と第2筐体で重なる部分が発生し、スペースの有効利用ができないという問題点がある。
【0005】
そこで、第1筐体と第2筐体を開いた状態において、第1筐体と第2筐体が同一平面状(フルフラット)となる開閉装置が提案されている(特許文献1〜3参照)。この構成によれば、第1筐体と第2筐体を閉じた状態でも液晶表示装置を使用することができ、かつ第1筐体と第2筐体を開いた状態では両筐体に重なる部分がなく、スペースの有効利用を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−218674号公報
【特許文献2】特開2009−059102号公報
【特許文献3】特開2009−071588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1筐体と第2筐体が同一平面状(フルフラット)となる従来の開閉装置では、特許文献1〜3に示されるように、第1筐体と第2筐体との間にアームが配設され、このアームの回動に伴い第2筐体が第1筐体に対して開閉動作する構成とされている。
【0008】
従来の開閉装置では、このアームは第1及び第2筐体の側部に露出して設けられていた(特許文献1〜3参照)。しかしながら、筐体側部に露出してアームを設ける構成では、美観上好ましくなく、またアーム配設位置は操作者が筐体を把持できないため、操作性も悪化してしまう。
【0009】
これを回避するため、アームを筐体の内側に配置する構成も考えられる。しかしながら、この構成とした場合には、フルフラットになった際に略水平状態となったアームと第2筐体とが干渉しないよう、第2筐体にアームを逃げる逃げ部(開口状の切欠き)を設ける必要がある。
【0010】
この逃げ部は、第1筐体と第2筐体がフルフラット状態となるためには必須の構成である。しかしながら図18に示すように、従来ではこの逃げ部7を閉塞するカバーが設けられていなかった。このため、第1筐体2上に第2筐体3が重なった閉状態では、同図に示すように逃げ部7が外部に露出した状態となってしまう。このため、逃げ部7から塵埃が電子機器1A内に侵入するおそれがあり、また美観上も好ましくないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、逃げ部からの塵埃の侵入を防止すると共に美感の向上を図った開閉装置用カバー機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、第1の観点からは、
第1筐体に取り付けられる固定プレートと、
第2筐体に取り付けられると共に前記固定プレートに対して移動可能とされた移動プレートと、
前記固定プレートと前記移動プレートの間に配設されており、回転することにより前記移動プレートを、前記第1筐体と前記第2筐体が重なった閉位置と、前記第1筐体の表面と前記第2筐体の表面が略同一平面上に位置する開位置との間で移動させるヒンジアームと、
前記開位置において前記ヒンジアームと前記第2筐体が干渉しないよう、前記第2筐体に形成された逃げ部とを有する開閉装置に設けられ、
前記逃げ部を開閉する開閉装置用カバー機構であって、
前記移動プレートに設けられ、前記移動プレートが前記閉位置に位置する時に前記逃げ部を塞ぐと共に、回転する前記ヒンジアームと係合し移動付勢されることにより前記逃げ部を塞ぐ位置から移動するカバーと、
前記カバーを前記逃げ部を塞ぐ方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする開閉装置用カバー機構により解決することができる。
【発明の効果】
【0013】
開示の開閉装置用カバー機構によれば、逃げ部からの塵埃の侵入を防止すると共に美感の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である開閉装置用カバー機構が適用される開閉装置の斜視図であり、(A)は移動プレートが閉状態を示し、(B)は移動プレートが開状態を示す図である。
【図2】図2は、開閉装置の分解斜視図である。
【図3】図3は開閉装置の電子機器への取り付けを説明するための分解斜視図である。
【図4】図4(A)は本発明の一実施形態である開閉装置用カバー機構を装着した電子機器の閉状態を示す斜視図であり、図4(B)は開状態を示す斜視図である。
【図5】図5(A)はヒンジアーム,スライドアーム,及びリンクアームが組み付けられた状態を示す斜視図であり、図5(B)はヒンジアーム,スライドアーム,及びリンクアームの組み付けを説明するための分解斜視図である。
【図6】図6(A)は外側プレートにラッチカムが取り付けられた状態を示す斜視図であり、図6(B)は外側プレートに対するラッチカムの取り付けを説明するための分解斜視図である。
【図7】図7は開閉装置に組み込まれる移動プレートの分解斜視図である。
【図8】図8は本発明の開閉装置の動作(その1)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図9】図9は開閉装置の動作(その2)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図10】図10は開閉装置の動作(その3)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図11】図11は開閉装置の動作(その4)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図12】図12は開閉装置の動作(その5)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図13】図13はガタ防止機構の動作を説明するための図であり、(A)はラッチがラッチカムの円周部に圧接した状態を示す図であり、(B)はラッチの突出部がラッチカムのカム部に係合した状態を示す図である。
【図14】図14はガタ防止機構の機能を説明するための図であり、(A)はガタが発生していない状態を示す図であり、(B)はガタが発生した状態を示す図である。
【図15】図15は本発明の一実施形態である開閉装置用カバー機構を構成するカバーを説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は斜視図、(D)はカバーの形状を説明するための図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態である開閉装置用カバー機構の斜視図である。
【図17】図17は、本発明の一実施形態である開閉装置用カバー機構の動作を説明するための図である。
【図18】図18は、開閉装置用カバー機構を設けていない電子機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の一実施形態である開閉装置用カバー機構が適用された開閉装置を示している。また、図3及び図4は開閉装置10が搭載された電子機器1を示している。
【0017】
電子機器1は例えば携帯端末装置であり、第1筐体2、第2筐体3、及び開閉装置10等により構成されている。第1筐体2の上面2aにはキーボード5等が設けられている。なお、第1筐体2の上面2aには液晶表示装置等を設けることも可能であるが、本実施形態ではキーボードを配設した例について説明する。また、第2筐体3の上面3aには、液晶表示装置4等が設けられている。
【0018】
また携帯端末装置は、携帯時においてはその形状を小さくして携帯性を向上させる必要がある。このため本実施形態に係る電子機器1は、開閉装置10を設けることにより第2筐体3を第1筐体2に対して閉位置と開位置との間で移動させる構成とされている。
【0019】
図4(A)は第2筐体3が閉位置にある状態(以下、閉状態という)を示しており、図4(B)は第2筐体3開位置にある状態(以下、開状態という)を示している。閉状態では、第2筐体3は第1筐体2の上部に重なった状態となっており、よって液晶表示装置4のみが表面3aに露出した状態となっている。よって、閉状態においても液晶表示装置4を外部から見ることができる。
【0020】
また本実施形態では、第1筐体2及び第2筐体3の平面視した形状は同一形状とされているため、閉状態では電子機器1の平面視した時の面積は開状態における面積の半分となっている。よって、閉状態においては、電子機器1は小型形状となり携帯性が確保される。
【0021】
ここで、図4(A)における第2筐体3のX2方向側の側面3cの両側近傍(Y1,Y2方向側)に注目すると、ここには逃げ開口7が形成されおり、この逃げ開口7はカバー50により塞がれた構成となっている。このカバー50及びカバー50を駆動するカバー機構25については、説明の便宜上、後述するものとする。
【0022】
一方、開状態においては、開閉装置10を構成するヒンジアーム18、スライドアーム20、及びリンクアーム22等が回転することにより、第2筐体3は閉位置から開位置に移動し、第1筐体2の上面2aと第2筐体3の上面3aとが同一平面上に位置した状態となる。この開状態では、図4(B)に示すように第1筐体2と第2筐体3は、重なることなく同一平面上に並設された状態となる。
【0023】
また開状態では、各筐体2,3の上面2a,3aの全面が上方に向け露出した状態となっている。よって、第1筐体2の上面2aの全面を電子機器1の構成部品の設置位置として使用することができ、同様に第2筐体3の上面3aの全面を電子機器1の構成部品の設置位置として使用することができる。
【0024】
このように開閉装置10を設けた電子機器1では、第1筐体2の上面全面及び第2筐体3の上面全面を構成部品の設置位置として使用できるため、各筐体2,3のスペースの使用効率を高めることができる。
【0025】
次に、開閉装置10について説明する。開閉装置10は、図1、図2、図8〜図12に示すように、固定プレート12、移動プレート14、支持プレート16、ヒンジアーム18、スライドアーム20、ガタ防止機構21、リンクアーム22、ヒンジユニット30、及び本発明の一実施形態であるカバー機構25等を有している。
【0026】
固定プレート12及び支持プレート16は、電子機器1の第1筐体2に固定される。具体的には図3に示されるように、固定プレート12及び支持プレート16は第1筐体2の第1下部半体2Bに形成された装着凹部2bに固定される。第1筐体2は第1上部半体2Aと第1下部半体2Bを組み合わせた構成とされており、よって第1筐体2は固定プレート12及び支持プレート16と一体的な構成となる。
【0027】
この固定プレート12及び支持プレート16は、金属板状材をプレス成形したものである。図2に示されるように固定プレート12は、第1下部半体2Bに固定されるベース部12aと、その両側に形成された起立部12bとを有している。外側(Y1方向側)の起立部12bには軸ピン19が取り付けられる軸孔12cが形成されており、また内側(Y2方向側)の起立部12bには後述するヒンジアーム18の軸受部18dを軸承する軸孔12dが形成されている。
【0028】
また、支持プレート16は、ベース部16aと起立部16bとを一体的に形成した構成とされている。ベース部16aは、第1下部半体2Bに固定される部位である。また起立部16bには後述する軸ピン19が取り付けられる軸孔16cが形成されている。
【0029】
移動プレート14は、固定プレート12に対して移動可能な構成とされている。この移動プレート14は、電子機器1の第2筐体3に固定される。具体的には図3に示されるように、移動プレート14は第2筐体3の第2下部半体3Bに形成された装着凹部3bに固定される。第2筐体3は第2上部半体3Aと第2下部半体3Bを組み合わせた構成とされており、よって第2筐体3と移動プレート14は一体的な構成となる。
【0030】
なお、本実施形態では、移動プレート14をY1,Y2方向に分離して配置した構成としている。しかしながら、各移動プレート14を連続させて一つの部材とすることも可能である。
【0031】
また、移動プレート14は、金属板状材をプレス成形した内側プレート23と外側プレート24とを有している。内側プレート23は、図1,2に加えて図7に示すように、ベース部23a,起立部23b,天板部23c,及び蓋体部23dを一体的に形成した構成とされている。
【0032】
ベース部23aは、前記した第2下部半体3Bに固定される。また、起立部23bには後述するヒンジアーム18の軸部18aが軸承する軸孔14aが形成されている。また天板部23cは、内側プレート23が外側プレート24と組み合わされて移動プレート14を構成する際に、外側プレート24の天板部24cと重ね合わされる。
【0033】
外側プレート24は、図1,2に加えて図6,7に示すように、ベース部24a,起立部24b,天板部24c,及びラッチ収納部24dを一体的に形成した構成とされている。ベース部24aは、第2下部半体3Bに固定される。起立部24bには、軸孔14a,14bが形成されている。軸孔14aは、後述するヒンジアーム18の軸部18aが軸承される。また、軸孔14bは、スライドアーム20に接続されるスライドアームシャフト44を軸承する。
【0034】
また天板部24cは、前記のように内側プレート23が外側プレート24と組み合わされて移動プレート14を構成する際、内側プレート23の天板部23cと重ねあわされる。そして、この重ね合わされた状態で両天板部23c,24cを溶接することにより、内側プレート23と外側プレート24は一体化された構成となる。
【0035】
またラッチ収納部24dは、後述するガタ防止機構21を構成するラッチ41がX1,X2方向にスライド可能に収納される。更に、内側プレート23と外側プレート24とが一体化された状態で、各プレート23,24の内側にはヒンジアーム18が回転に伴い内部に収納されるアーム収納部14e(空間部)が形成される。
【0036】
ヒンジアーム18は、上端部に形成された軸部18aと、下端部に形成された軸孔18cと、この軸部18aと軸孔18cとの間の位置に形成されたスライド孔18b(長孔)とを有している。
【0037】
ヒンジアーム18の上端部に形成された軸部18aは、前記のように移動プレート14に形成された軸孔14aに回転可能に接続される。なお、以下の説明において、ヒンジアーム18の軸部18aが移動プレート14に回転可能に接続される部位を第3軸部A3というものとする。
【0038】
また、図中矢印Y1方向に位置するヒンジアーム18の下端部に形成された軸孔18cには、ベースシャフト26が装着される。具体的には、図中矢印Y1方向に位置するヒンジアーム18には軸受部18dが形成されており、軸孔18cはこの軸受部18dに形成されている。ベースシャフト26のY1方向側の端部は、軸受部18dの軸孔18cに挿入された後、ピン29により軸受部18dに固定される。これにより、Y1方向側のヒンジアーム18はベースシャフト26と一体的に回転する構成となる。
【0039】
一方、図中矢印Y2方向に位置するヒンジアーム18の下端部に形成された軸孔18cは、その内部にヒンジユニット30の一部構成を収納する構成とされている。具体的には、ヒンジユニット30を構成するヘッドカム31及びヒンジプレート35が軸孔18cの内部に収納するよう構成とされている。
【0040】
ヘッドカム31及びヒンジプレート35の外周には突部が形成されており、ヒンジアーム18の軸孔18c内にはこの突部に対応した形状の凹部が形成されている。従って、ヘッドカム31及びヒンジプレート35が軸孔18c内に収納された状態で、ヘッドカム31及びヒンジプレート35はヒンジアーム18と一体的に回転する構成となる。
【0041】
ベースシャフト26のY2方向側の端部には、ヒンジユニット30を構成するヒンジシャフト28が配設される。具体的には、ヒンジシャフト28に形成されたホルダ部28bにベースシャフト26が挿入された後、ピン29で係止することにより、ベースシャフト26とヒンジシャフト28は一体的に回転する構成となる(以下の説明では、特に言及する場合を除き、ベースシャフト26といった場合にはヒンジシャフト28を含むものとする)。
【0042】
また、ヒンジシャフト28のY2方向先端部には、小判形状部28aが形成されている。また、軸部18a内に配設されたヒンジプレート35には、小判形状部28aに対応する形状の小判形状孔35aが形成されている。小判形状部28aは、このヒンジプレート35の小判形状孔35aに嵌入するよう構成されている。これにより、ヒンジアーム18は、ヒンジプレート35,ヒンジシャフト28を介してベースシャフト26と一体的に回転する構成となる。
【0043】
また、後述するヒンジユニット30は、第1下部半体2Bに固定されるヒンジケース34を有している。ベースシャフト26は、このヒンジケース34に軸承されるよう構成されている。よって、ベースシャフト26は、第1下部半体2B(第1筐体2)に固定される固定プレート12及びヒンジケース34により第1筐体2上で軸承される。なお、以下の説明において、ベースシャフト26とヒンジアーム18とが接続される部位を第1軸部A1というものとする。
【0044】
また、ヒンジアーム18の軸部18aと軸孔18cとの間に形成されたスライド孔18bには、図5に拡大して示すように、スライドアーム20及びリンクアーム22の一端部が接続される。スライド孔18bは、ヒンジアーム18の内側側面に長手方向に延在するよう形成されている。
【0045】
スライドアーム20及びリンクアーム22をスライド孔18bに接続するには、スライドアーム20の下端部に形成された軸孔20aと、リンクアーム22の上端部に形成された軸孔22aとを位置合わせし、軸ピン17を各軸孔20a,22a及びスライド溝18bに挿通する。そして、軸ピン17のスライド溝18bより内側に突出した端部に、スライダ36及びスペーサ37を挿通する。その上で、軸ピン17の端部にEワッシャ38を固定する。これにより、スライドアーム20及びリンクアーム22は、スライド孔18bに接続される。
【0046】
この際、リンクアーム22には図5(B)に示すようにボス部22cが形成されており、このボス部22cはスライド孔18bにスライド可能に係合するよう構成されている。従って、スライドアーム20及びリンクアーム22がスライド孔18bと接続する位置は、スライド孔18bに沿って移動しうる構成となっている。以下の説明において、このスライドアーム20及びリンクアーム22がヒンジアーム18のスライド孔18bに接続される部位(即ち、軸ピン17の位置)を第5軸部A5というものとする。
【0047】
上記構成とされたヒンジアーム18は、固定プレート12に接続された第1軸部A1を中心に回転することにより、移動プレート14を固定プレート12に対して閉位置と開位置との間で移動させる機能を奏する。また、移動プレート14が閉位置と開位置との間で移動する際、第5軸部A5はスライド孔18b内をスライドする。
【0048】
スライドアーム20は、前記のように下端部が第5軸部A5に接続される。また、スライドアーム20の上端部に形成された軸孔20bには、スライドアームシャフト44が挿通される。このスライドアームシャフト44は、移動プレート14に形成された軸孔14bに回転可能に軸承される(図6(B)参照)。なお、以下の説明において、スライドアーム20が移動プレート14に回転可能に接続される部位を第4軸部A4というものとする。
【0049】
リンクアーム22は、リンクアーム本体22Aとリンクアームカバー22Bとを組み合わせた構成とされている。リンクアーム本体22Aは金属製であり、リンクアームカバー22Bは樹脂製である。リンクアーム本体22Aは、リンクアームカバー22B内にインサート成形された構成とされている。この構成とすることにより、リンクアーム22の強度をリンクアーム本体22Aにより実現し、かつリンクアーム22の表面における平滑性をリンクアームカバー22Bにより実現することができる。
【0050】
前記のように、リンクアーム22の上端部に形成された軸孔22aは、軸ピン17によりスライド孔18bに回転可能に接続される。またリンクアーム22の下端部に形成された軸孔22bは、固定プレート12に形成された軸孔12c或いは支持プレート16に形成された軸孔16cに軸ピン19により接続される。
【0051】
以下の説明において、リンクアーム22の下端部が固定プレート12又は支持プレート16に接続される部位を第2軸部A2というものとする。よって、リンクアーム22の上端部は第5軸部A5に回転可能に接続され、下端部は第2軸部A2に回転可能に接続された構成となる。よって、リンクアーム22の上端部も第5軸部A5に接続されるため、スライド孔18bに沿ってスライド可能な構成となる。
【0052】
次に、ヒンジユニット30について説明する。ヒンジユニット30は、ヒンジシャフト28、ヘッドカム31、スライドカム32、ヒンジスプリング33a,33b、ヒンジケース34、及びヒンジプレート35等を有した構成とされている。
【0053】
ヒンジシャフト28は、前記のようにベースシャフト26に接続されている。このヒンジシャフト28は、ヒンジケース34に対してY2方向に挿入される。ヘッドカム31及びスライドカム32等は、ヒンジシャフト28のヒンジケース34の内側に突出した部分に配設される。
【0054】
ヘッドカム31及びヒンジプレート35は、ヒンジアーム18の軸孔18c内に配設される(図2参照)。この際、ヒンジアーム18,ベースシャフト26,ヒンジシャフト28,ヘッドカム31,及びヒンジプレート35は、前記のように一体的に回転する構成とされている。
【0055】
一方、スライドカム32の外周にも突起部が形成されると共に、ヒンジケース34の内側にもこの突起部と係合する凹部が形成されている。従って、スライドカム32がヒンジケース34内に収納された状態で、スライドカム32はヒンジケース34に対して回転が規制された構成となっている。しかしながら、スライドカム32に形成された軸孔は、ヒンジシャフト28を回転可能とする軸径とされている。従って、ベースシャフト26はスライドカム32に対して回転可能で、かつベースシャフト26の軸方向(矢印Y1,Y2方向)にスライド可能な構成となっている。
【0056】
ヒンジスプリングは、本実施形態では外ヒンジスプリング33aと内ヒンジスプリング33bとを組み合わせた構成としている。ヒンジスプリング33a,33bは、一端がヒンジケース34の内壁に当接すると共に、他端がスライドカム32と当接している。よって、ヒンジスプリング33a,33bの弾性力は、スライドカム32をヘッドカム31に向け押圧する力として作用する。
【0057】
上記構成とされたヒンジユニット30において、ヘッドカム31とスライドカム32との当接面には、互いに嵌合する凸面と凹面がそれぞれ形成されている。各カム31,32の各凸面の頂点部同士が当接する位置(中立位置という)においては、回転トルクは発生しない。しかしながら、凸部が中立位置からずれると、各カム31,32の間にはヒンジスプリング33の弾性力により回転トルクが発生する。
【0058】
前記のようにヒンジアーム18は閉位置と開位置との間で移動するが、本実施形態では閉位置と開位置との中間位置が、各カム31,32の中立位置となるよう設定されている。従って,ヒンジアーム18が閉位置と中間位置との間にある状態では、ヒンジユニット30によりヒンジアーム18は閉位置に向け回転付勢され、ヒンジアーム18が中間位置と開位置との間にある状態ではヒンジアーム18は開位置に向け回転付勢される。よって、上記構成とされたヒンジユニット30は、いわゆるカム式のセミオートヒンジを構成する。
【0059】
従って、固定プレート12(第1筐体2)に対して移動プレート14(第2筐体3)を開く場合には、閉位置から中立位置まで開き操作を行えば、その後自動的に移動プレート14は開位置に向かい移動する。逆に、固定プレート12に対して移動プレート14を閉じる場合には、開位置から中立位置まで閉じ操作を行えば、その後、自動的に移動プレート14は閉位置に向かい移動する。このように、セミオートヒンジタイプのヒンジユニット30を設けることにより、開閉装置10(電子機器1)の操作性を向上させることができる。
【0060】
次に、ガタ防止機構21について説明する。ガタ防止機構21は、図2に加えて図6,7に示すように、スライドアーム20、ラッチカム40、及びラッチ41等により構成されている。このガタ防止機構21は、図14(A)に示すように、移動プレート14が開位置まで移動した際、移動プレート14が図14(B)に矢印Sで示す方向に移動する動作(ガタ)の発生を防止する機能を奏するものである。
【0061】
即ち、図14(A)に示す状態において、移動プレート14に矢印Dで示す方向に力が作用した場合、移動プレート14には第3軸部A3を中心とした回転力が発生し、部品間のクリアランス等に起因して移動プレート14にガタが発生する可能性がある(図14(B)参照)。この際、スライドアーム20と移動プレート14との接続位置である第4軸部A4は、図中S方向に変位する。ガタ防止機構21は、このように移動プレート14に発生するガタを防止する機能を奏するものである。
【0062】
ラッチカム40は大略すると円柱形上を有しており、円周部40aの一部にカム部40bを形成した構成を有したカムである。また、ラッチカム40には軸孔40c及び取り付け孔40dが形成されている。このラッチカム40は、スライドアームシャフト44に固定される。
【0063】
スライドアームシャフト44は、前記のように移動プレート14(外側プレート24)に形成された軸孔14bに軸承されるシャフトである。このスライドアームシャフト44の両端部には、小判形状部44a,44bが形成されている。
【0064】
スライドアームシャフト44の小判形状部44aは、スライドアーム20に接続される。スライドアーム20の上端部に形成された軸孔20bは、小判形状部44aの形状に対応した形状とされている。よって、小判形状部44aが軸孔20bに固着されることにより、スライドアームシャフト44はスライドアーム20と一体的に回転する構成となる。
【0065】
また、スライドアームシャフト44の他端部は、ラッチカム40の軸孔40cに挿通される。ラッチカム40の外側の側面には、ラッチプレート43が装着される。ラッチプレート43は、小判形状部43aと、ラッチカム40に形成された取り付け孔40dに取り付けられる一対の取り付けアーム43bが形成されている。
【0066】
小判形状部43aは、スライドアームシャフト44の小判形状部44bの形状に対応するよう構成されている。よって、スライドアームシャフト44を取り付け孔40dに挿通し、ラッチカム40に取り付けられたラッチプレート43の小判形状部43aに固着することにより、ラッチカム40はスライドアームシャフト44と一体的に回転する構成となる。従って、スライドアーム20とラッチカム40は、一体的に回転する構成となる。
【0067】
一方、ラッチ41は、角柱形状を有しており、ラッチカム40と対峙する端部に突出部41aが形成されている。この突出部41aは、ラッチカム40に形成されたカム部40bと係合する形状とされている。
【0068】
このラッチ41は、外側プレート24に形成されたラッチ収納部24d内にラッチスプリング42と共に装着される。ラッチ41のX1方向側の端部にはスプリング受け部41bが形成されており、ラッチスプリング42はこのスプリング受け部41bに装着される。
【0069】
前記ように、ラッチ収納部24dが形成された外側プレート24は内側プレート23と溶接されることにより移動プレート14を構成する。この際、内側プレート23と外側プレート24を組み合わせた状態で、内側プレート23に形成されている蓋体部23dは、ラッチ収納部24dの上部開口部分を覆うよう構成されている。このように、ラッチ収納部24dの上部開口部分が蓋体部23dで閉蓋されることにより、ラッチ41の外側プレート24(移動プレート14)からの離脱を防止することができる。
【0070】
前記のように、ラッチカム40はスライドアーム20の回転に伴い回転する。また、ラッチ41はラッチスプリング42のばね力により常に突出部41aをラッチカム40に向かう方向(X1方向)に押圧する構成とされている。図13(A)に示すように、ラッチ41の突出部41aがラッチカム40の円周部40aに圧接している状態では、ラッチカム40は回転可能であり、よってスライドアーム20も回転可能な状態となっている。
【0071】
これに対して図13(B)に示すように、突出部41aがカム部40bと係合した状態では、ラッチ41によりラッチカム40(スライドアーム20)の回転は規制される。図14(B)を用いて説明したように、移動プレート14にガタが発生する場合、スライドアーム20が接続された第4軸部A4はS方向に変位する。本実施形態に係るガタ防止機構21は、スライドアーム20の変位をガタ防止機構21で規制することにより、開位置において移動プレート14にガタが発生しないよう構成している。
【0072】
次に、本発明の一実施形態であるカバー機構25について説明する。
【0073】
カバー機構25は、第1筐体2と第2筐体3が閉状態となった際に、第1筐体2に形成されたヒンジアーム18の逃げ部となる逃げ開口7を塞ぐ機能を奏するものである。ここで説明の便宜上、カバー機構25の説明に先立ち、先ず逃げ開口7について説明する。
【0074】
図12は、開状態における第1筐体2と第2筐体3を示している。この開状態では、第1筐体2の上面2aと第2筐体3の上面3aは同一面上にあるようになっている(フルフラット状態となっている)。
【0075】
この際、ヒンジアーム18の軸部18aは第2筐体3に配設された移動プレート14に軸承されており、軸受部18dは第1筐体2に配設された固定プレート12等に軸承されている。よって、ヒンジアーム18は第1筐体2と第2筐体3との間に配設された構成とされている。このヒンジアーム18が第1軸部A1を中心として回転することにより、移動プレート14は固定プレート12及びヒンジケース34に対して移動し、これに伴い第2筐体3は第1筐体2に対して閉位置と開位置との間で移動する。
【0076】
ここで、図12(B),(C)に注目すると、開状態においては第1筐体2と第2筐体3がフルフラット状態となっているため、ヒンジアーム18の略水平状態となっている。また、本実施形態ではヒンジアーム18は第1筐体2及び第2筐体3の外側(特許文献1〜3参照)ではなく、内側に配設された構成とされている。
【0077】
このように、開状態において第1及び第2筐体2,3内にヒンジアーム18が水平状態で位置できるよう、各筐体2,3にはヒンジアーム18の逃げ部となる逃げ開口7,8が形成されている(図3参照)。これにより、開状態において、第1筐体2の上面2aと第2筐体3の上面3aを同一平面状(フルフラット状態)とすることが可能となる。
【0078】
上記のように逃げ開口7,8は、第1筐体と第2筐体がフルフラット状態となるためには必須の構成である。しかしながらカバー機構25を設けない構成では、閉状態において逃げ開口7,8は開口した状態となる。この内、第1筐体2に形成される逃げ開口8については、本実施形態ではその近傍にヒンジアーム18の軸受部18dが配設されており、この軸受部18dの外周部分で逃げ開口8が覆われるため問題は生じない。
【0079】
しかしながら、第2筐体3に形成された逃げ開口7については、図18に示したように開口した状態となってしまい、塵埃等の侵入及び美観の低下等の問題が生じる。このため、本実施形態に係るカバー機構25は、閉状態において逃げ開口7を塞ぐよう構成されている。
【0080】
以下、カバー機構25の具体的な構成について説明する。カバー機構25は、図7、図15、及び図16に示されるように、カバー50とトーションスプリング60(請求項に記載の付勢手段に相当する)とを有した構成とされている。
【0081】
カバー50は樹脂成型品であり、図15(A)〜(C)に示すように、カバー本体51、アーム部52a,52b、回転軸53a,53b、及びガイドピン54(請求項に記載のピン部材に相当する)を一体的に形成した構成とされている。カバー本体51は閉状態において、逃げ開口7を塞ぐ部位である。このため、カバー本体51のフロント面51aの形状は、第2筐体3の側面3cの形状(図15(D)の矢印Pで示す側面形状)に対応するよう構成されている。従って、カバー本体51により逃げ開口7が塞がれた際、図4(A)に示すように、フロント面51aと側面3cは略面一の状態となり、よって美観の向上を図ることができる。
【0082】
アーム部52a,アーム部52bは、カバー本体51の両側部から延出するよう形成されている。一方のアーム部52aには回転軸53a及びガイドピン54が形成され、他方のアーム部52bには回転軸53bが形成されている。
【0083】
回転軸53aと回転軸53bは同一軸上に形成されており、よってカバー50は回転軸53a,53bを中心として回転可能な構成とされている。この回転軸53aは移動プレート14を構成する内側プレート23(起立部23b)に形成された軸孔14cに軸承され、回転軸53bは外側プレート24(起立部24b)に形成された軸孔14cに軸承される。よって、カバー50は内側プレート23と外側プレート24との間で回転可能に軸承された構成となる。
【0084】
一方、前記したように内側プレート23と外側プレート24との内側には、ヒンジアーム18が進入し収納されるアーム収納部14eが形成される。よって、カバー50はこのアーム収納部14e内に配設されることになる。
【0085】
また本実施形態では、一対のアーム部52a,52b間の距離(図15(A)に矢印W2で示す)は、ヒンジアーム18の幅寸法(図5(B)に矢印W1で示す)よりも大きく設定されている(W2>W1)。よって、ヒンジアーム18がアーム収納部14e内に進入した際、ヒンジアーム18はカバー50の一対のアーム部52a,52b間に進入することが可能な構成となっている。
【0086】
ガイドピン54は、回転軸53aから偏倚した位置に形成されている。また、起立部23bの14cが形成された位置の近傍には、三日月状のガイド溝14dが形成されている。ガイドピン54は、このガイド溝14d内で移動可能な構成とされている。即ち、カバー50が回転軸53a,53bを中心として移動プレート14(アーム収納部14e)内で図中矢印E1,E2方向に回転移動することにより、ガイドピン54もガイド溝14d内で回転軸53aを中心としてE1,E2方向に回転移動する。
【0087】
トーションスプリング60は、中央に位置する巻回部60cが回転軸53aに軸承されると共に、一端部60aがガイドピン54に接続され、他端部60bがベース部23aに当接するよう構成されている。このトーションスプリング60は、ガイドピン54を矢印E2方向に向け弾性付勢するよう構成されている。
【0088】
従って、カバー50はトーションスプリング60により、回転軸53a,53bを中心としてE2方向(図16及び図17における反時計方向)に回転付勢される。しかしながら、ガイドピン54がガイド溝14dのE2方向側の端部と当接することにより、それ以上の回転が規制される構成とされている。
【0089】
また、ガイドピン54がガイド溝14dのE2方向側の端部と当接し、かつ移動プレート14が閉位置に移動した状態で、カバー50のフロント面51aは第2筐体3の逃げ開口7を塞ぐ位置に移動した状態となっている(以下、カバー50が逃げ開口7を塞ぐ位置を閉塞位置という)。更に、カバー50がこの閉塞位置にある状態では、ヒンジアーム18はカバー50から離間した状態となっている。
【0090】
図16は、ヒンジアーム18がカバー50から離間した状態を示している。同図に示すように、ヒンジアーム18がカバー50から離間した状態では、カバー50はトーションスプリング60の弾性力よりE2方向に回転しており、よってカバー50は閉塞位置に位置している。
【0091】
ここで、移動プレート14が図16に示す状態から図中矢印Fで示す方向に移動した場合を想定する(この移動は、移動プレート14が閉位置に向け移動する場合に相当する)。移動プレート14がF方向に移動することにより、ヒンジアーム18は相対的にG方向に移動し、よってヒンジアーム18は移動プレート14内に進行する。
【0092】
ヒンジアーム18が14内に進行することにより、ヒンジアーム18はカバー50のカバー本体51と係合する。よって、カバー50は相対的にG方向に進行するヒンジアーム18に付勢され、トーションスプリング60の弾性力に抗して回転軸53a,53bを中心として閉塞位置から矢印E1方向に回転移動を行う。
【0093】
この際、ガイドピン54もガイド溝14d内をE1方向に移動する。また、トーションスプリング60の弾性力も、カバー50を閉塞位置に移動付勢しうるだけの比較的小さな弾性力に設定されている。従って、アーム収納部14e内にカバー50を配設しても、ヒンジアーム18がアーム収納部14e内に進行する際にカバー50がその移動の邪魔をするようなことはない。
【0094】
図1(B)は、ヒンジアーム18がアーム収納部14e内に収納された状態を示している。同図に示すように、ヒンジアーム18がアーム収納部14e内に収納された状態では、カバー50が回転することにより、カバー本体51はヒンジアーム18の上部に位置している。またこの状態で、ヒンジアーム18はカバー50の一対のアーム部52a,52bの間に入り込んだ状態となっている。
【0095】
次に、図8乃至図12を用いて上記構成とされた電子機器1及び開閉装置10の具体的な動作について説明する。
【0096】
図8乃至図12は、第2筐体3及び移動プレート14が閉状態から開状態に移動する動作を示している。なお、各図において(A)は電子機器1の動作を示し、(B)はガタ防止機構21が設けられた開閉装置10の動作を示し、(C)はガタ防止機構21を取り外した状態の開閉装置10の動作を示している。
【0097】
図8は、閉状態の電子機器1及び開閉装置10を示している。この閉状態では、図8(A)に示すように、電子機器1の第2筐体3は第1筐体2の上部に重なった状態となっている。また、図8(B),(C)に示すように閉状態では、開閉装置10のヒンジアーム18は第1軸部A1を中心として図中反時計方向に回転した状態となっている。
【0098】
また閉状態では、第5軸部A5はスライド孔18b内の第3軸部A3側の端部(移動プレート14に近い側の端部)に位置している。また、ヒンジアーム18、スライドアーム20、及びリンクアーム22は略一直線上に並んだ構成となっており、よってコンパクトな状態となっている。
【0099】
また、閉状態においてヒンジユニット30は、ヒンジアーム18を第1軸部A1を中心として図中反時計方向に付勢している。また、ガタ防止機構21は、図8(b)に示すようにラッチ41がラッチカム40のカム部40bに圧接した状態となっている。このため、スライドアーム20は回転可能な状態となっている。
【0100】
更に、カバー機構25は、閉位置ではカバー50がヒンジアーム18と離間することにより矢印E2方向に移動している。また、移動プレート14は、図1(A)に示すように、ベースシャフト26に対してX2方向に移動した位置にあり、この状態でカバー50(カバー本体51)は逃げ開口7を塞ぐ閉塞位置に位置している。よって閉状態では、前記のように逃げ開口7はカバー50により塞がれ、塵埃の侵入の防止及び美観の向上が図られている。
【0101】
この閉状態から、ヒンジユニット30の付勢力に抗して第2筐体3を開位置に向けて移動操作すると、第2筐体3は第1筐体2から離間して図9(A)に示すように開位置に向け移動する。これに伴い、ヒンジアーム18は第1軸部A1を中心として図9(B)に矢印Pで示す方向に回転を開始し、これによりスライドアーム20及びリンクアーム22も各軸部A2,A3,A4,A5を中心として回転を開始し、これにより移動プレート14は閉位置から移動を開始する。
【0102】
この際、スライドアーム20の下端部及びリンクアーム22の上端部は、ヒンジアーム18に移動可能に係合した第5軸部A5に接続されている。よって、ヒンジアーム18がP方向に回転することにより、スライドアーム20及びリンクアーム22は第5軸部A5をスライド孔18bに沿って第1軸部A1に向かう方向(図中、矢印Zで示す方向)に移動させる。このように、第5軸部A5がスライド孔18bに沿って移動するため、各アーム18,20,22は円滑な回転動作を行いうる。
【0103】
この移動の際、移動プレート14はスライドアーム20によりヒンジアーム18に対して支持され、ヒンジアーム18はリンクアーム22により固定プレート12及びヒンジケース34に対して支持される。このため、移動プレート14の移動姿勢は安定し、ヒンジアーム18に対して移動プレート14が不要に変位するようなことはない。
【0104】
図10は、第2筐体3(移動プレート14)が中立位置まで移動した状態を示している。本実施形態では、ヒンジアーム18が閉状態から直立した位置が中立位置となるよう設定されている。
【0105】
前記したように中立位置においては、ヒンジユニット30のヘッドカム31とスライドカム32の各凸面の頂点部同士が当接した状態となっている。この中立位置では、瞬間的にヒンジユニット30によるヒンジアーム18の回転付勢力がなくなる。そして、この中立位置より更に第2筐体3(移動プレート14)を開位置に向け操作することにより、ヘッドカム31とスライドカム32の当接面に発生する回転トルクは反転し、移動プレート14が開位置に向かい移動する方向にベースシャフト26を回転付勢する。
【0106】
これにより中立位置以降は、ヒンジアーム18は第1軸部A1を中心として時計方向(開方向)に回転付勢される。従って、中立位置より第2筐体3(移動プレート14)を開位置に向け若干操作した後は、図11〜図12に示すように、第2筐体3(移動プレート14)は自動的に開位置に向けて順次移動する。
【0107】
なお、中立位置においても、図10(B)に示すように、ガタ防止機構21のラッチ41はラッチカム40の円周部40aに圧接しており、スライドアーム20の回転は維持されている。
【0108】
図11は、ヒンジアーム18が中立位置から更に回転し、開位置近傍まで回転した状態を示している。ヒンジアーム18は中立位置を過ぎると、第3軸部A3を下方に向け押し下げるよう作用する。このため、図11に示すように、ヒンジアーム18のP方向への回転に伴い、第2筐体3(移動プレート14)の水平方向に対する角度(チルト角θ)は漸次小さくなる。即ち、第2筐体3(移動プレート14)の姿勢は前記水平に寝た状態に近づく。
【0109】
そして、図12に示すように第2筐体3(移動プレート14)が開位置まで移動した時点で、第1筐体2の上面と第2筐体3の上面は同一平面となる。この開状態において、各アーム18,20,22は一直線状となっており、また各アーム18,20,22はベースシャフト26の軸方向(Y1,Y2方向)に重なった状態となっている。このため、開閉装置10は、開状態においてもコンパクトな状態となっている。
【0110】
また、ガタ防止機構21は、移動プレート14が閉位置まで移動した状態で、ラッチ41の突出部41aがラッチカム40のカム部40bと係合するよう構成されている。従って、移動プレート14が閉位置まで移動した状態でガタ防止機構21によりスライドアーム20の回転は規制される。これにより、図14を用い手説明したように、移動プレート14の第4軸部A4が矢印Sで示す方向に変位することに起因したガタの発生を防止することができる。従って、開状態において第2筐体3がガタツクことを防止でき、電子機器1の使用性を向上させることができる。
【0111】
ここで、図11に示す状態から図12に示す開位置まで第2筐体3(移動プレート14)が移動する際のカバー機構25の動作について、図17を用いて説明する。
【0112】
図17(A)に示す状態は、図11に示した状態と等価の状態である。この図17(A)に示す状態では、ヒンジアーム18はカバー50から離間した状態であり、カバー50はトーションスプリング60の弾性力により矢印E2方向に移動した状態となっている。
【0113】
図17(A)に示す状態から移動プレート14が矢印P方向に移動すると、図17(B)に示すように、カバー50のカバー本体51の下端部51bがヒンジアーム18の上面と当接する。その後に更に移動プレート14がP方向に移動することにより、カバー本体51は相対的に上方向に移動付勢され、これによりカバー50は回転軸53a,53bを中心として矢印E1方向への回転移動を開始する。
【0114】
図17(C)は開状態のカバー機構25を示しており、図12に示した状態と等価の状態である。閉状態では、前記のようにヒンジアーム18はアーム収納部14e内に収納され、カバー50が回転することによりカバー本体51はヒンジアーム18の上部に位置した状態となっている。
【0115】
上記のように、本実施形態に係るカバー機構25は、第2筐体3(移動プレート14)が閉状態である時には、カバー50(カバー本体51)が逃げ開口7を塞ぐため、塵埃の第2筐体3内への侵入を防止すると共に美観の向上を図ることができる。また、開状態においては、カバー50はヒンジアーム18に付勢されることにより移動するため、ヒンジアーム18のアーム収納部14eへの収納の邪魔になるようなことはない。
【0116】
なお、図12に示す開状態から、第2筐体3(移動プレート14)を閉位置に向け移動させる操作及び動作は、図8乃至図12、図17を用いて説明した上記した操作及び動作の反対となるため、その説明については省略するものとする。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0118】
1 電子機器
2 第1筐体
3 第2筐体
7,8 逃げ開口
10 開閉装置
12 固定プレート
14 移動プレート
16 支持プレート
18 ヒンジアーム
20 スライドアーム
22 リンクアーム
25 カバー機構
26 ベースシャフト
30 ヒンジユニット
34 ヒンジケース
40 ラッチカム
41 ラッチ
50 カバー
51 カバー本体
52a,52b アーム部
53a,53b 回転軸
54 ガイドピン
60 トーションスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体に取り付けられる固定プレートと、
第2筐体に取り付けられると共に前記固定プレートに対して移動可能とされた移動プレートと、
前記固定プレートと前記移動プレートの間に配設されており、回転することにより前記移動プレートを、前記第1筐体と前記第2筐体が重なった閉位置と、前記第1筐体の表面と前記第2筐体の表面が略同一平面上に位置する開位置との間で移動させるヒンジアームと、
前記開位置において前記ヒンジアームと前記第2筐体が干渉しないよう、前記第2筐体に形成された逃げ部とを有する開閉装置に設けられ、
前記逃げ部を開閉する開閉装置用カバー機構であって、
前記移動プレートに設けられ、前記移動プレートが前記閉位置に位置する時に前記逃げ部を塞ぐと共に、回転する前記ヒンジアームと係合し移動付勢されることにより前記逃げ部を塞ぐ位置から移動するカバーと、
前記カバーを前記逃げ部を塞ぐ方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする開閉装置用カバー機構。
【請求項2】
前記カバーは、
前記逃げ部を塞ぐと共に前記ヒンジアームと係合するカバー本体と、
該カバー本体の両側から延出したアームに形成され、前記移動プレートに回転可能に軸承される軸部と、
該軸部の形成位置から偏倚した位置に設けられ、前記付勢手段が接続されるピン部材とを有することを特徴とする請求項1記載の開閉装置用カバー機構。
【請求項3】
前記移動プレートは前記ヒンジアームを内部に収納するアーム収納部を有し、
前記カバーは該アーム収納部内で移動することを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置用カバー機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−67470(P2012−67470A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211522(P2010−211522)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】