間欠塗工装置
【課題】装置構造が簡単で且つ調整に多くの時間を必要としないようにする。
【解決手段】ケーシング16、弁装置17及び体積調整装置28を備えてダイDへ塗工液供給を断続的に行なうものである。弁装置17は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けられた弁座19と、ダイ側空間内に位置して弁座19から離座する開弁端位置Aから分岐空間へ向かう移動の途中で弁座19に液漏れなく内嵌して閉弁状態のまま移動して至る閉弁端位置Bまでの間を進退自在に設けられた弁体20と、弁体20を開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間で開弁端位置Aへ向かって前進又は閉弁端位置Bへ向かって後退させる弁体用操作装置21とを備え、弁体20が閉弁状態のまま閉弁端位置Aから押出用前進できると共に閉弁端位置Bまで吸引用後退できるように形成されている。
【解決手段】ケーシング16、弁装置17及び体積調整装置28を備えてダイDへ塗工液供給を断続的に行なうものである。弁装置17は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けられた弁座19と、ダイ側空間内に位置して弁座19から離座する開弁端位置Aから分岐空間へ向かう移動の途中で弁座19に液漏れなく内嵌して閉弁状態のまま移動して至る閉弁端位置Bまでの間を進退自在に設けられた弁体20と、弁体20を開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間で開弁端位置Aへ向かって前進又は閉弁端位置Bへ向かって後退させる弁体用操作装置21とを備え、弁体20が閉弁状態のまま閉弁端位置Aから押出用前進できると共に閉弁端位置Bまで吸引用後退できるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイから塗工液を吐出して基材へ塗工するときに、ダイからの吐出と停止とを繰り返すことで、基材に塗工域と非塗工域とを交互に形成する間欠塗工装置に関するものである。塗工は、基材とダイを相対移動させて行われ、例えば、基材を走行させてダイを停止させる場合と、基材を停止させてダイを走行させる場合とがある。
【背景技術】
【0002】
従来、間欠塗工装置には、特許文献1に記載のものがある。この間欠塗工装置1は、図14の概略図に示す如く、基材Wに塗工液Mを塗工するダイDと、ダイDへ塗工液Mを圧送する圧送手段2と、ダイDと圧送手段2の間に設けた断続バルブVaと、ダイDと断続バルブVaの間のダイ側給液路3aに連通するシリンダ内4aへピストン4bを押し引き自在に挿入した吸引・圧送手段4と、ダイ側給液路3aとシリンダ内4aを連通する第1開閉弁V1と、シリンダ内4aとダイ側給液路3aの外側の逃がし路7を連通する第2開閉弁V2と、吸引・圧送手段4等を制御する制御装置8とを備えている。圧送手段2は、タンクTと、タンクT内の塗工液Mを圧送するポンプPと、ダイDへ圧送しないときの塗工液MをタンクTへ還流させる開閉弁Vbとを備えている。間欠塗工装置1は、断続バルブVaを閉じるときに吸引・圧送手段4の引くピストン4bでダイ側給液路3aからシリンダ内4aへ塗工液を吸引(矢符イ)し、断続バルブVaを開くときに吸引・圧送手段4の押すピストン4bでシリンダ内4aからダイ側給液路3aへ塗工液Mを圧送(矢符ロ)するようにしてある。
【0003】
該制御装置8は、吸引・圧送手段4の操作具6、断続バルブVa、圧送手段2の開閉弁Vb、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2に対する指令を、図15のタイミングチャートに示すように発するものである。すなわち、基材Wに塗工域Cを形成する塗工時間帯Jでは、断続バルブVaに開の維持を、開閉弁Vbに閉の維持をそれぞれ指令する。基材Wに非塗工域Gを形成する塗工休止時間帯Kでは、断続バルブVaに閉の維持を、開閉弁Vbに開の維持をそれぞれ指令する。
【0004】
間欠塗工装置1は、基材Wに塗工域Cを形成するために断続バルブVaを開くときは、吸引・圧送手段4のピストン4bを押し移動させつつシリンダ内4aからダイ側給液路3aへ塗工液Mを圧送(図14中の矢符ロ)している途中(図15の時間帯Jaの途中であって、断続バルブVaの開への切替えから時間T1に至るとき)までは、第1開閉弁V1を開き且つ第2開閉弁V2を閉じることで塗工液Mをダイ側給液路3aへ供給し、この途中に達したときに第1開閉弁V1を閉じ且つ第2開閉弁V2を開いて、この途中以降に吸引・圧送手段4のシリンダ内4aから圧送される余分な塗工液Mを、逃がし路7を通じてダイ側給液路3aの外側となるタンクTへ逃がして、塗工域Cにおける始端Ct側の塗工膜の厚みを調整できるようになっている。この第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2の開閉を切り替える時間T1は、各種塗工条件に応じて適宜設定される。
【0005】
また、基材Wに非塗工域Gを形成するために断続バルブVaを閉じるときは、ダイ側給液路3aの塗工液Mを吸引・圧送手段4の引き移動するピストン4bでシリンダ内4aへ吸引(図14中の矢符イ)して、ダイDの吐出口Daから塗工域Cの終端Cbまで出ている塗工液MをダイDの内部へ吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4092462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の間欠塗工装置1は、制御装置8の制御対象が吸引・圧送手段4の操作具6、断続バルブVa、圧送手段2の開閉弁Vb、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2であり、その制御対象の数の多さから、装置が複雑になると共に、最適な間欠塗工とするために行なう各制御対象の動作タイミングの調整に多くの時間を必要とする問題がある。殊に、塗工域Cにおける始端Ct側の塗工膜の厚みを調整を行いつつ、続く塗工膜の厚みを所定寸法とするためには、断続バルブVaの開き動作、吸引・圧送手段4のピストン4bを押し移動させる開始動作、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2の開閉の切り替え動作のズレを、非常に短い時間(例えば、100〜500マイクロ秒)内に収める必要があり、調整に多くの時間が必要となる。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するために、装置構造が簡単で且つ調整に多くの時間を必要としない間欠塗工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
装置構造が簡単で且つ調整に多くの時間を必要としないようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、図1〜図6に示す如く、塗工液Mを吐出口Daから吐出するダイDと、塗工液Mを圧送する圧送手段12と、ダイDと圧送手段12の間に設けられ、ダイDへ塗工液Mの供給を断続的に行なうと共に不要な塗工液Mを還流路15へ戻す間欠供給装置14とを備えた間欠塗工装置において、前記間欠供給装置14は、ケーシング16及び弁装置17を備え、上記ケーシング16は、その内側に、圧送手段12及び還流路15に連通する分岐空間16aと、分岐空間16aに連通できると共にダイDに連通するダイ側空間16bとが形成され、上記弁装置17は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けられた弁座19と、ダイ側空間16b内に位置して弁座19から離座する開弁端位置Aから分岐空間16aへ向かう移動の途中で弁座19に液漏れなく内嵌して閉弁状態のまま移動して至る閉弁端位置Bまでの間を進退自在に設けられた弁体20と、弁体20を開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間で開弁端位置Aへ向かって前進又は閉弁端位置Bへ向かって後退させる弁体用操作装置21とを備え、弁体20が閉弁状態のまま閉弁端位置Bから押出用前進できる(図5参照)と共に閉弁端位置Bまで吸引用後退できる(図4参照)ように形成されたことを特徴とする間欠塗工装置である。
【0010】
請求項1記載の本発明にあっては、圧送手段から弁装置のケーシングの分岐空間へ圧送される塗工液は、弁体が弁体用操作装置で開弁端位置まで前進して開弁状態となる塗工時間帯では、開弁状態の弁座と弁体の隙間、ダイ側空間及びダイを通過してダイ吐出口から吐出して塗工され、逆に、弁体が弁体用装置装置で閉弁端位置まで後退して閉弁状態となる塗工休止時間帯では、ダイへの供給が停止される。
【0011】
また、請求項1記載の本発明にあっては、弁体が閉弁端位置から開弁端位置へ向かって前進するときにおいて、弁体が閉弁端位置から押出用前進して閉弁終了位置へ至る塗工休止時間帯の終期域では、閉弁状況下のダイ側空間内の塗工液充填体積を前進する弁体で減少させつつ塗工休止状態でダイ側空間及びダイ内に残存している塗工液をダイ吐出口の近辺まで押出し、続けて、弁体が開弁端位置へ至る塗工時間帯の初期域では、圧送手段から供給される塗工液をダイへ圧送し、ダイ吐出口から塗工液を吐出させて塗工域の始端を形成する。弁体が開弁端位置で停止している塗工時間帯の継続域では、圧送手段から圧送される塗工液をダイへ安定して供給し続け、ダイ吐出口から吐出し続ける塗工液で基材の塗工域を形成する。逆に、弁体が開弁端位置から閉弁端位置へ向かって後退するときにおいて、弁体が閉弁開始位置を経て吸引用後退して閉弁端位置へ至る塗工休止時間帯の初期域では、閉弁状況下のダイ側空間内の塗工液充填体積を後退する弁体で増大させつつ塗工休止直後のダイに残存している塗工液をダイ側空間側へ吸引することで、ダイ吐出口から基材の塗工域の終端形成箇所まで出ている塗工液をダイの内部へ吸引して、ダイ吐出口における液切れを良好にして塗工域の終端を形成する。
【0012】
更に、請求項1記載の本発明にあっては、圧送手段から分岐空間へ圧送する塗工液について、常に還流路へ還流するだけの流量を圧送できるので、塗工に必要な流量よりも多量の流量が通過する分岐空間内の塗工液圧力を常に高めることが可能となり、弁体が閉弁終了位置から開弁端位置まで更に前進するときに、塗工液圧力の高い分岐空間からダイ側空間を介してダイへ塗工液を迅速に供給できる。
【0013】
塗工膜の膜厚み調節ができるようにするため請求項2記載の本発明が採用した手段は、図9〜図13に示す如く、前記弁座19は、前記ケーシング16に取着した環状シール(図示略)で形成され、前記弁体48は、ダイ側空間16b寄りの閉弁行程領域48bと分岐空間16a寄りの開弁行程領域48dを連接させてなり、閉弁行程領域48bに、弁座19に全周囲を当接させて前記押出用前進及び前記吸引用後退を確保できる寸法の外周面48aが進退方向に沿って形成され、開弁行程領域48dに、弁座19に当接することなくダイ側空間16b及び分岐空間16aに開口できるように進退方向へ延設した流量調節用の通液部48cが設けられ、ダイ側空間16b側へ向かって移動するのに伴い通液部48cを通過する流量が多くなるように通液部48cを形成した請求項1記載の間欠塗工装置である。
【0014】
請求項2記載の本発明にあっては、弁座に開行程領域を臨ませた状態でダイ側空間へ向かって弁体を前進させるのに伴い塗工液の流量を増大させることができるので、弁体の停止位置である開弁端位置を変更することでダイへ供給する塗工液の流量を調節して、基材に形成される塗工域の塗工膜厚みを最適値にできる。
【0015】
請求項3記載の本発明が採用した手段は、図2及び図9に示す如く、前記弁体用操作装置21が、前記弁体20(48)から延設して前記ケーシング16を貫通する弁軸24と、位置決め制御及び速度制御可能な電動サーボモータからなる駆動源22と、弁軸24と駆動源22の間に設けられ、電動サーボモータの回転力を弁軸24に伝達して弁体20(48)を進退移動させる動力伝達機構23とを備え、弁体20(48)の起動から停止までの時間帯おける各経過時刻と、開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間おける弁体20(48)の各経過位置との関係を任意に設定できるようにした請求項1又は2記載の間欠塗工装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の本発明に係る間欠塗工装置は、一つの弁体を弁体用操作装置で開弁端位置から閉弁端位置まで進退させる簡単な構成で、塗工液の吐出を停止しているダイ吐出口の近辺まで塗工液を押出す塗工休止時間帯の終期域動作と、基材に塗工域の始端を形成するために塗工液を吐出させる塗工時間帯の初期域動作と、基材に塗工域を形成するために塗工液をダイ吐出口から継続的に吐出させる塗工時間帯の継続動作と、基材に塗工域の終端を形成するためにダイ吐出口への塗工液の供給の停止を準備する塗工時間帯における終期域動作と、基材に塗工域の終端を形成するために吐出している塗工液をダイの内部へ吸引させる塗工休止時間帯の初期域動作と、基材の非塗工域を形成するためにダイ吐出口からの塗工液の吐出を停止させる塗工休止時間帯の継続動作とを連続的に繰り返すことができるので、装置構造を簡単にできると共にこれら動作のタイミングの調整を簡単にできる優れた効果を有する。
【0017】
請求項2記載の本発明に係る間欠塗工装置は、弁体の停止位置である開弁端位置を変更してダイへ供給する塗工液の流量を調節することで、基材に形成される塗工域の塗工膜厚みを最適値にできる。
【0018】
請求項3記載の本発明に係る間欠塗工装置は、開弁端位置から閉弁端位置までの間おける弁体の各経過位置と、弁体の起動から停止までの時間帯おける各経過時刻との関係を任意に設定できることから、塗工時間帯の初期域動作及び塗工休止時間帯の初期域動作を最適な状態で行わせる弁体の移動状況を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る間欠塗工装置(以下、「本発明間欠塗工装置」と言う。)の第1の実施の形態を示すものであり、図(A)は全体の概略図、図(B)は図(A)中のb部分の拡大図、図(C)は図(A)中のc部分の拡大図である。
【図2】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が開弁端位置Aに位置する態様を示している。
【図3】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が閉弁開始位置H1に位置する状態を示している。
【図4】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が閉弁開始位置H1(二点鎖線)から閉弁端位置B(実線)へ後退する状態を示している。
【図5】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が閉弁端位置B(二点鎖線)から閉弁終了位置H2(実線)へ前進する状態を示している。
【図6】第1の実施の形態における弁体20の動作を示すタイミングチヤートである。
【図7】本発明間欠塗工装置の第2の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体38が開弁位置Aに位置する態様を示している。
【図8】第2の実施の形態における弁装置37の近辺を示す部分断面図であって、図(A)は弁体38が閉弁開始位置H1(二点鎖線)から閉弁端位置B(実線)へ後退した状態を示し、図(B)は弁体38が閉弁端位置B(二点鎖線)から閉弁終了位置H2(実線)へ前進した状態を示している。
【図9】本発明間欠塗工装置の第3の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体48が開弁端位置Aに位置する状態を示している。
【図10】第3の実施の形態における弁装置47の近辺を示す部分断面図であって、図(A)は弁体48が閉弁開始位置H1(二点鎖線)からから閉弁端位置B(実線)へ後退した状態を示し、図(B)は弁体48が閉弁端位置B(二点鎖線)から閉弁終了位置H2(実線)へ前進した状態を示している。
【図11】第3の実施の形態における弁体48を拡大して示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は縦断面した正面図、図(C)は底面図である。
【図12】第3の実施の形態における異なる態様の弁体48を拡大して示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は縦断面した正面図、図(C)は底面図である。
【図13】第3の実施の形態における更に異なる態様の弁体48を拡大して示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は底面図である。
【図14】従来の間欠塗工装置の概略図である。
【図15】従来の間欠塗工装置のタイミングチヤートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
図1乃至図8に示す第1の実施の形態に係る本発明間欠塗工装置11は、圧送されてきた塗工液Mを吐出口Daから基材Wへ吐出するダイDと、塗工液Mを圧送する圧送手段12と、ダイDと圧送手段12の間に設けられ、ダイDへ塗工液Mの供給を断続的に行なうと共にダイDへ供給されない不要な塗工液Mを還流路15へ戻す間欠供給装置14と、間欠供給装置14の弁体用操作装置21を制御する制御装置18とを備えている。本発明間欠塗工装置11を用いた塗工の形態は、基材WとダイDの相対移動で行われ、例えば、基材Wを走行させてダイDを停止させる態様(前者の態様)と、基材Wを停止させてダイDを走行させる態様(後者の態様)とがある。前者の態様の一例としては、図示は省略したが、一定速度で回転駆動するバックアップロールに巻き掛けて走行する基材Wの表面に、固定したダイDの吐出口Daから吐出する塗工液を塗工するものがある。後者の態様の一例としては、固定盤に固定した基材Wの表面に、基材Wの表面に沿って移動するダイDの吐出口Daから吐出する塗工液Mを塗工するものがある。基材Wとしては、前者の態様ではプラスチックフィルム等の連続したものが選択され、後者の態様ではガラス板等の適宜長さに切断したものが選択される。塗工液Mは、電池電極又は液晶板等に適用されるものが選択される。ダイDの姿勢としては、吐出口Daの吐出方向を水平に向ける場合以外に、図示は省略したが、吐出口Daの吐出方向を下方または上方に向ける場合があり、塗工条件に応じて最適な姿勢が選択される。このダイDの姿勢の選択は、前記の前者の態様又は後者の態様の選択と合わせて行われる。
【0021】
前記ダイDは、図1に示す如く、従来と同様に、分割可能に接合した二つのリップ部材Db,Dcの境界部にコートハンガー状等の分散用液路DdやマニホールドDeが形成され、該境界部の先端にスリット状の吐出口Daを開口している。ダイDは、吐出口Daの厚みとなるリップ部材Db,Dcの隙間寸法(例えば、50〜1500μm)を調整できるようにして、各種塗工条件に対応できるようにしてある。
【0022】
前記圧送手段12は、従来と同様に、塗工液Mを貯えるタンクTと、タンクT内の塗工液MをダイDへ圧送するポンプPとを備えている。圧送手段12とダイDは、間欠供給装置14を介して送液路13で接合され、圧送手段12と間欠供給装置14が圧送手段側送液路13bで接続され、間欠供給装置14とダイDがダイ側送液路13aで接続されている。前記還流路15は、間欠供給装置14から延びてタンクTに接合され、不要な塗工液Mを戻すようにしてある。ダイ側送液路13aには、送液路13a内の圧力を検知する圧力計PG1(図2参照)が必要に応じて設けられている。
【0023】
前記間欠供給装置14は、図2に示す如く、ケーシング16及び弁装置17を備え、ケーシング16の内側に、圧送手段12及び還流路15に連通する分岐空間16aと、分岐空間16aに連通できると共にダイDに連通するダイ側空間16bが形成されている。ケーシング16は、適所で分割・接合できるようにすることで、内側の清掃をし易くすることもある。分岐空間16aとダイ側空間16bは、弁装置17が開弁状態(図2参照)のときに連通し、弁装置17が閉弁状態(図4参照)のときに連通しないようになっている。分岐空間16aと還流路15の間には、圧力調節弁27が必要に応じて設けられ、分岐空間16a内の圧力を検知する圧力計PG2の検知圧力値mと設定器で設定した設定圧力値nの差を小さくするように圧力調節弁27が作動して、分岐空間16a内における塗工液Mの圧力を設定圧力値となるようにしてある。
【0024】
前記弁装置17は、図2に示す如く、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けた環状の弁座19と、ダイ側空間16b内に位置して弁座19から開度Fで離座する開弁端位置Aから分岐空間16aへ向かう移動の途中で弁座19に液漏れなく内嵌して閉弁状態(着座状態)のまま移動して至る閉弁端位置B(図4参照)までの間を進退自在に設けられた弁体20と、弁体20を進退させる弁体用操作装置21と、弁体20と弁体用操作装置21を連結する弁軸24とを備えている。弁体20は、図4に示すように二点鎖線で示す閉弁開始位置H1(弁体20が開弁端位置Aから閉弁端位置Bへ向かって後退しているときに閉弁状態が最初に始まる位置)から閉弁状態のまま実線で示す閉弁端位置Bまで吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退(矢符eへの移動)できると共に、図5に示すように二点鎖線で示す閉弁端位置Bから閉弁状態のまま実線で示す閉弁終了位置H2(弁体20が閉弁端位置Bから開弁端位置Aへ向かって前進しているときに閉弁状態が終了する位置)まで押出用移動寸法L2だけ押出用前進(矢符dへの移動)できるようなっている。なお、閉弁開始位置H1と閉弁終了位置H2は、弁座19の構造により、異なる位置になる場合も、又は同一の位置になる場合もある。
【0025】
前記弁座19は、ケーシング16に凹設した環状凹溝(図示略)に内嵌したOリングからなる環状シールや、単動シールでU字型のシールジャケットとV字型の耐腐食性スプリングで構成された環状シール、例えば、Busak+Shamban社製のロトバリシール(登録商標名)等を用いることができる。弁座19は、シール部19sに弁体20の後述する外周面20aが当接したとき、弁装置17を閉弁状態にする。
【0026】
前記弁体20は、図2に示す如く、中実の短円柱状又は分岐空間16a側を開口するよえに中刳したコップ状等に形成され、外周面20aが弁座19の内周に形成された円状のシール部19sに液漏れなく内嵌して閉弁状態(図4及び図5参照)となるようになっており、中実部を貫通した弁軸24の一端24aに着脱可能に嵌着したナット等の締結具26で弁軸24に接合してある。弁軸24は、シール25を介してケーシング16を貫通して弁体用操作装置21へ至っている。弁体20の進退方向に沿った寸法は、前記吸引用移動寸法L1(図4参照)及び押出用移動寸法L2(図5参照)を確保できる寸法となっている。弁体20は、弁座19から開度Fで離座する開弁端位置Aに位置するとき、ダイ側空間16bを形成するケーシング内周面16dに遊嵌合して、該ケーシング内周面16dとの間に環状の通液路を形成するようになっている。本例の弁体20は、図4に示す如く、開弁端位置A(図2参照)から分岐空間16aへ向かって後退中に、弁座19のシール部19sに外周面20aの分岐空間側端面20b側を当接させたとき、前記閉弁開始位置H1となる。逆に、弁体20は、図5に示す如く、閉弁端位置Bからダイ側空間16bへ向かって前進中に、弁座19のシール部19sに外周面20aの分岐空間側端面20b側を当接させたとき、前記閉弁終了位置H2となる。
【0027】
前記弁体用操作装置21は、位置決め制御及び速度制御可能な電動サーボモータからなる駆動源22と、駆動源22と前記弁軸24の間に設けられ、駆動源22である電動サーボモータの回転力を弁軸24に伝達して弁体20を進退移動させる動力伝達機構23と、駆動源22に制御指令を発する制御装置18(図1参照)とを備えている。動力伝達機構23は、図示は省略したが、駆動源22である電動サーボモータの出力軸に接合したピニオンギヤと、弁軸24に連結されると共にピニオンギヤが歯合して弁体進退方向に沿って摺動自在なラックギヤとを組合せたギヤ機構や、駆動源22である電動サーボモータの出力軸に接合したクランクと、弁軸24に連結され弁体進退方向に沿って摺動自在なスライダーと、クランクとスライダーを回転連鎖で連結する連結軸とを組合せたガタ付きが非常に少ないリンク機構等が採用される。
【0028】
前記弁体用操作装置21は、制御装置18(図1参照)の発する制御指令を受けた駆動源22である電動サーボモータの位置決め制御により、弁体20の停止位置である開弁端位置A(図2参照)及び閉弁端位置B(図4参照)の各位置を最適位置に設定できるようにしてある。また、弁体用操作装置21は、弁体20の開弁端位置A及び閉弁端位置Bの設定を変更可能としてあり、開弁端位置Aにおける弁体20の開度F(図2に示す弁体20分岐空間側端面20bから弁座19のシール部19sまでの弁体進退方向に沿った寸法)や、弁体20の前記吸引用移動寸法L1及び押出用移動寸法L2を間欠塗工に適した寸法に調節できるようにしてある。
【0029】
また、弁体用操作装置21は、制御装置18の発する制御指令を受けた駆動源22である電動サーボモータの速度制御により、弁体20の進退時の速度を変更できるようになっている。すなわち、弁体用操作装置21は、図6に示す如く、弁体20を起動位置である閉弁端位置Bから停止位置である開弁端位置Aへ向かって前進(図5の矢符dの方向への移動)させるときに、起動から停止までの前進移動時間U(すなわち、塗工休止時間帯Rの終期域Rc及び塗工時間帯Qの初期域Qaの所要時間であって、例えば10ミリ秒)の時間帯における起動からの各経過時刻と、起動から停止までの前進移動経路における弁体20の各通過位置との関係を変更可能にして、各経過時刻と各通過位置の関係を任意に設定できるようになっており、弁体20の各通過位置における移動速度を塗工条件に応じた最適値とすることで、塗工域Cにおける始端Ct側(図1参照)を良好な状態に形成できるようにしてある。なお、塗工条件に応じた弁体20の移動速度の最適値は、予め塗工テストを行なって求めておくとよい。
【0030】
更に、弁体用操作装置21は、駆動源22である電動サーボモータの速度制御により、弁体20を起動位置である開弁端位置Aから停止位置である閉弁端位置Bへ向かって後退(図3の矢符eの方向への移動)させるときに、図6に示す起動から停止までの後退移動時間Y(すなわち、塗工時間帯Qの終期域Qc及び塗工休止時間帯Rの初期域Raの所要時間であって、例えば7ミリ秒)の時間帯における起動からの各経過時刻と、起動から停止までの後退移動経路における弁体20の各通過位置との関係を任意に設定できるようになっており、弁体20の各通過位置における移動速度を塗工条件に応じた最適値とすることで、塗工域Cにおける終端Cbまで出ている塗工液M(図1の図(C)において破線Eで囲まれている部分)をダイDの内部へ円滑に吸引して、終端Cb側を良好な状態に形成できるようにしてある。
【0031】
前記制御装置18は、弁装置17の弁体用操作装置21の位置決め制御及び速度制御可能な駆動源22の電動サーボモータに対して指令を行なうものである。制御装置18は、弁装置17の駆動源22に関して、開弁端位置Aにおける弁体20の開度Fと閉弁端位置Bにおける弁体20の吸引用移動寸法L1や押圧用移動寸法L2の設定値を塗工条件に応じて変更できるように回路構成されると共に、開弁端位置Aと閉弁端位置Bとの間おける弁体20の起動からの各経過時刻と、開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間おける弁体20の各通過位置との関係を任意に設定して、弁体20の各通過位置における移動速度を塗工条件に対応できるように回路構成されている。
【0032】
上述の如く構成された本実施の形態に係る間欠塗工装置11は、制御装置18で弁体用操作装置21の駆動源22を制御して、図1に示す如く、ダイDの吐出口Daから塗工液Mを基材Wへ吐出して塗工域Cを形成する塗工時間帯Q(図6参照)と、塗工液Mを吐出せずに非塗工域Gを形成する塗工休止時間帯R(図6参照)を交互に形成するようにしてある。圧送手段12から間欠供給装置14のケーシング16の分岐空間16aへ圧送された塗工液Mは、図2に示す如く、弁体用操作装置21で弁体20が開弁端位置Aまで前進した塗工時間帯Q(図6参照)では、弁体20と弁座19との隙間(開度F)、ダイ側空間16b及びダイDを通過してダイ吐出口Daから基材Wへ吐出して塗工され、逆に、弁体20が弁体用装置装置21で閉弁端位置B(図4参照)まで後退した塗工休止時間帯Rでは、ダイDへの供給が停止される。
【0033】
そして、図5に示すように弁体20が二点鎖線で示す閉弁端位置Bから前進(矢符d)して図2に示す開弁端位置Aへ至る開弁動作のときにおいて、弁体20が閉弁端位置Bから押出用移動寸法L2だけ移動して閉弁終了位置H2へ至る塗工休止時間帯R(図6参照)の終期域Rcでは、閉弁状況下のダイ側空間16b内の塗工液充填体積を減少させることで、ダイ側空間16bに残存している停止状態の塗工液Mを、送液路13a内を矢符fの方向へ圧送してダイDの内部へ押出して塗工の準備状態となる。続いて、弁体20が閉弁終了位置H2を経て更に前進(矢符d)して開弁端位置A(図2参照)へ至る塗工時間帯Q(図6参照)の初期域Qaでは、圧送手段12から分岐空間16aへ圧送された塗工液Mを、弁体20と弁座19との隙間(開度F)及びダイ側空間16bを通過させてダイ吐出口Daから吐出させ、基材Wに塗工域Cの始端Ct寄りを形成する。開弁端位置A(図2参照)へ至って停止している弁体20の開弁が継続している塗工時間帯Qの継続域Qbでは、基材Wに塗工域Cを形成する。
【0034】
逆に、図2に示す弁体20が開弁端位置Aから後退(矢符e)して図4に示す閉弁端位置Bへ至る閉弁動作のときにおいて、塗工時間帯Q(図6参照)の終期域Qcにおいて弁体20が急速に後退した後に、続けて、弁体20が図4に示す閉弁開始位置H1から吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退して閉弁端位置Bへ至る塗工休止時間帯Rの初期域Raでは、閉弁状況下のダイ側空間16b内の塗工液充填体積を増大させて、塗工休止直後のダイDに残存している塗工液Mを、送液路13a内を矢符gの方向へ通過させてダイ側空間16b側へ吸引することで、ダイDの吐出口Daから塗工域Cの終端Cbまで出ている塗工液M(図1の図(C)において破線Eで囲まれている部分)をダイDの内部へ吸引して、ダイ吐出口Daの幅方向の全域にわたって液切れを良好して、吐出口Daの長手方向(基材Wを横断する方向)へ沿って塗工域Cの終端Cbを一直線となるようにシャープに形成できる。
【0035】
本発明間欠塗工装置11は、圧送手段12から分岐空間16aへ圧送する塗工液について、常に還流路15へ還流させる余分な流量を増量して供給できるので、塗工に必要な流量よりも多量の流量が通過する分岐空間16a内の塗工液圧力を常に高めることが可能となり、弁体20が閉弁終了位置H2(図5)から開弁端位置A(図2参照)まで更に前進するときに、塗工液圧力の高い分岐空間16aからダイ側空間16bを介してダイDへ塗工液Mを迅速に供給することが可能となる。
【0036】
本発明間欠塗工装置11は、弁装置17の一つの弁体20を弁体用操作装置21で開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間を進退させる簡単な構成で、基材Wに塗工域Cの始端Ctを形成するための準備となる塗工休止時間帯Rの終期Rcの動作及び塗工液Mをダイ吐出口Daから吐出させる塗工時間帯Qの初期域Qaの動作と、基材Wの塗工域Cを形成するために塗工液Mをダイ吐出口Daから継続的に吐出させる塗工時間帯Qの継続域Qbの動作と、基材Wに塗工域Cの終端Cbを形成するためにダイ吐出口Daからの塗工液Mの吐出を停止する塗工時間帯Qの終期Qcの動作及び吐出している塗工液MをダイDの内部へ吸引させる塗工休止時間帯Rの初期域Raの動作と、基材Wの非塗工域Gを形成するためにダイ吐出口Daからの塗工液Mの吐出を停止させる塗工休止時間帯Rの継続域Rbの動作とを連続的に繰り返すことができるので、装置構造を簡単にできると共にこれら動作のタイミングの調整が簡単にできる優れた効果を有する。
【0037】
(第2の実施の形態)
図7及び図8に示す第2の実施の形態に係る本発明間欠塗工装置31は、弁装置37が前記第1の実施の形態の弁装置17と大きく異なり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図7及び図8において第1の実施の形態を示す図1乃至図5と同一符号は相当部分を示す。
【0038】
前記弁装置37は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けた弁座39と、弁体38と、弁体38を進退させる弁体用操作装置21を備えている。該弁体38は、短円柱状の主体部38aと、短円柱状部38aから分岐空間16aへ延設した通水部38cと、主体部38aの外周面に凹設した環状凹溝にOリングからなるシール又は前記ロトバリシール(登録商標名)等を内嵌して環状シール部38bとをからなり、通水部38cの外径寸法を分岐空間16aへ向かって行く程に小さくなるようにして、開弁したときに、通水部38cと弁座39の間に通水抵抗の小さな液路を形成するようにしてある。該弁座39は、ケーシング16の内面面16dから突設する輪状に形成され、内側に形成した円形の貫通孔39aへ弁体38の環状シール部38bを液漏れなく内嵌できるようにしてある。
【0039】
前記弁体用操作装置21は、弁体38に接合した弁棒24を押し引き操作して、弁体38が、図8の図(A)に示すように、二点鎖線で示す閉弁開始位置H1から閉弁状態のまま実線で示す閉弁端位置Bまで吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退(矢符eへの移動)できると共に、同図の図(B)に示すように、二点鎖線で示す閉弁端位置Bから閉弁状態のまま実線で示す閉弁終了位置H2まで押出用移動寸法L2だけ押出用前進(矢符dへの移動)できるようなっている。なお、閉弁開始位置H1と閉弁終了位置H2は、弁体48の環状シール部48hの構造により、異なる位置となる場合も、又は同一の位置となる場合もある。
【0040】
(第3の実施の形態)
図9乃至図14に示す第3の実施の形態に係る本発明間欠塗工装置41は、弁装置47が前記第1の実施の形態と大きく異なり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図9乃至図14において第1の実施の形態を示す図1乃至図5と同一符号は相当部分を示す。
【0041】
前記弁装置47は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けた環状の弁座19と、弁体48と、弁体48を進退させる弁体用操作装置21を備え、弁体48の進退範囲を、図10の図(A)に示すように、二点鎖線で示す閉弁開始位置H1から閉弁状態のまま実線で示す閉弁端位置Bまで吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退(矢符eへの移動)できると共に、同図の図(B)に示すように、二点鎖線で示す閉弁端位置Bから閉弁状態のまま実線で示す閉弁終了位置H2まで押出用移動寸法L2だけ押出用前進(矢符dへの移動)できるようなっている。なお、閉弁開始位置H1と閉弁終了位置H2は、弁座19の構造により、異なる位置となる場合も、又は同一の位置となる場合もある。
【0042】
前記弁座19は、第1の実施の形態と同様に、ケーシング16に取着した環状シールで形成され、例えば、ケーシング16に凹設した環状凹溝(図示略)に内嵌したOリングからなるシールや、ロトバリシール(登録商標名)等を環状シールとして用いることができる。
【0043】
前記弁体48は、ダイ側空間16b寄りの閉弁行程領域48bと分岐空間16a寄りの開弁行程領域48dを連接させてなり、閉弁行程領域48bに、弁座19に全周囲を当接させることができる外周面48aが形成され、開弁行程領域48dに、弁座19に当接することなくダイ側空間16b及び分岐空間16aに開口して連通させることができる複数個の通液部48cが設けられている。閉弁行程領域48bの外周面48aは、弁体48の進退方向に沿った寸法が、前記吸引用移動寸法L1及び押出用移動寸法L2を確保するのに十分な寸法となっている。複数個の通液部48cは、弁体48がダイ側空間16bへ向かって前進するのに伴い、分岐空間16aから全部の通液部48cを通過してダイ側空間16bへ流れる塗工液Mの流量が多くなるように形成してある。
【0044】
前記弁体48の開弁行程領域48dは、図11に示す如く、閉弁行程領域48bから等間隔で延設された複数本の通液部形成用脚部48eからなり、隣接する脚部48e,48eの間に開口した通液部48cを形成すると共に、脚部48e,48e…で囲まれた内側に、分岐空間16a側を開口すると共に各通液部48cに連通する中空部48fが形成されている。弁体48は、図9に示す流量調節状態のときに、各通液部形成用脚部48eの円弧状の外側面が弁座19に当接すると共に、開口した通液部48cが弁座19に当接しないようになっている。流量調節状態の弁体48は、分岐空間16aへ圧送された塗工液Mを、内側の中空部48f(図11参照)及び各通液部48cのうちダイ側空間16bに開口する部分を通過させてダイ側空間16bへ導き、ダイDへ供給することができる。弁体48は、ダイ側空間16bへ向かう方向へ前進(矢符d)して、ダイ側空間16bに開口する各通液部48cの開口面積が大きくなる程に、開弁行程領域48dを通過する塗工液の流量を多くすることができる。
【0045】
前記弁体48の開弁行程領域48dに形成する各通液部48cは、図12に示す如く、閉弁行程領域48bから延びる外周面48aの一部に凹設され、分岐空間16a側へ向かって行く程に半径方向の深さ寸法hが大きくなるように形成することも可能である。更に、弁体48の開弁行程領域48dに形成する各通液部48cは、図13に示す如く、分岐空間16a側へ向かって行く程に外周面の半径が小さくなるように截頭円錐状に形成することも可能である。
【0046】
前記弁装置47は、図9に示す如く、弁座19に弁体48の閉弁行程領域48bを臨ませた状態でダイ側空間16bへ向かう方向へ前進(矢符d)させるのに伴い塗工液の流量を増大させることができるので、弁体48の停止位置である開弁端位置Aを変更してダイDへ供給する塗工液の流量を調節することで、基材Wに形成される塗工域Cの塗工膜厚みを最適値にすることができる。
【符号の説明】
【0047】
11…本発明間欠塗工装置、12…圧送手段、13…送液路、13a…ダイ側送液路、13b…圧送手段側送液路、14…間欠供給装置、15…還流路、16…ケーシング、16a…分岐空間、16b…ダイ側空間、17…弁装置、18…制御装置、19…弁座、20…弁体、20a…外周面、20b…閉弁行程領域、20c…通液部、20d…開弁行程域、21…弁体用操作装置、22…駆動原、23…動力伝達機構、24…弁軸、25…シール、26…締結具、27…圧力調節弁、A…開弁位置、B…閉弁位置、Rb…継続域、C…塗工域、Cb…終端、Ct…始端、D……ダイ、Da…吐出口、F…弁体の開度、G…非塗工域、H…開閉分岐位置、L…吸引・圧送用寸法、M…塗工液、P…ポンプ、Q…塗工時間帯、Qa…初期域、Qb…継続域、Qc…終期域、R…塗工休止時間帯、Ra…初期域、Rb…継続域、Rc…終期域、T…タンク、31…本発明間欠塗工装置、37…弁装置、38…弁体、38a…主体部、38b…通水部、38c…環状シ−ル部、39…弁座、39a…貫通孔、41…本発明間欠塗工装置、47…弁装置、48…弁体、48a…外周面、48b…閉弁行程領域、48c…通液部、48d…開弁行程域、48e…脚部、48f …中空部、h…深さ寸法
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイから塗工液を吐出して基材へ塗工するときに、ダイからの吐出と停止とを繰り返すことで、基材に塗工域と非塗工域とを交互に形成する間欠塗工装置に関するものである。塗工は、基材とダイを相対移動させて行われ、例えば、基材を走行させてダイを停止させる場合と、基材を停止させてダイを走行させる場合とがある。
【背景技術】
【0002】
従来、間欠塗工装置には、特許文献1に記載のものがある。この間欠塗工装置1は、図14の概略図に示す如く、基材Wに塗工液Mを塗工するダイDと、ダイDへ塗工液Mを圧送する圧送手段2と、ダイDと圧送手段2の間に設けた断続バルブVaと、ダイDと断続バルブVaの間のダイ側給液路3aに連通するシリンダ内4aへピストン4bを押し引き自在に挿入した吸引・圧送手段4と、ダイ側給液路3aとシリンダ内4aを連通する第1開閉弁V1と、シリンダ内4aとダイ側給液路3aの外側の逃がし路7を連通する第2開閉弁V2と、吸引・圧送手段4等を制御する制御装置8とを備えている。圧送手段2は、タンクTと、タンクT内の塗工液Mを圧送するポンプPと、ダイDへ圧送しないときの塗工液MをタンクTへ還流させる開閉弁Vbとを備えている。間欠塗工装置1は、断続バルブVaを閉じるときに吸引・圧送手段4の引くピストン4bでダイ側給液路3aからシリンダ内4aへ塗工液を吸引(矢符イ)し、断続バルブVaを開くときに吸引・圧送手段4の押すピストン4bでシリンダ内4aからダイ側給液路3aへ塗工液Mを圧送(矢符ロ)するようにしてある。
【0003】
該制御装置8は、吸引・圧送手段4の操作具6、断続バルブVa、圧送手段2の開閉弁Vb、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2に対する指令を、図15のタイミングチャートに示すように発するものである。すなわち、基材Wに塗工域Cを形成する塗工時間帯Jでは、断続バルブVaに開の維持を、開閉弁Vbに閉の維持をそれぞれ指令する。基材Wに非塗工域Gを形成する塗工休止時間帯Kでは、断続バルブVaに閉の維持を、開閉弁Vbに開の維持をそれぞれ指令する。
【0004】
間欠塗工装置1は、基材Wに塗工域Cを形成するために断続バルブVaを開くときは、吸引・圧送手段4のピストン4bを押し移動させつつシリンダ内4aからダイ側給液路3aへ塗工液Mを圧送(図14中の矢符ロ)している途中(図15の時間帯Jaの途中であって、断続バルブVaの開への切替えから時間T1に至るとき)までは、第1開閉弁V1を開き且つ第2開閉弁V2を閉じることで塗工液Mをダイ側給液路3aへ供給し、この途中に達したときに第1開閉弁V1を閉じ且つ第2開閉弁V2を開いて、この途中以降に吸引・圧送手段4のシリンダ内4aから圧送される余分な塗工液Mを、逃がし路7を通じてダイ側給液路3aの外側となるタンクTへ逃がして、塗工域Cにおける始端Ct側の塗工膜の厚みを調整できるようになっている。この第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2の開閉を切り替える時間T1は、各種塗工条件に応じて適宜設定される。
【0005】
また、基材Wに非塗工域Gを形成するために断続バルブVaを閉じるときは、ダイ側給液路3aの塗工液Mを吸引・圧送手段4の引き移動するピストン4bでシリンダ内4aへ吸引(図14中の矢符イ)して、ダイDの吐出口Daから塗工域Cの終端Cbまで出ている塗工液MをダイDの内部へ吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4092462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の間欠塗工装置1は、制御装置8の制御対象が吸引・圧送手段4の操作具6、断続バルブVa、圧送手段2の開閉弁Vb、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2であり、その制御対象の数の多さから、装置が複雑になると共に、最適な間欠塗工とするために行なう各制御対象の動作タイミングの調整に多くの時間を必要とする問題がある。殊に、塗工域Cにおける始端Ct側の塗工膜の厚みを調整を行いつつ、続く塗工膜の厚みを所定寸法とするためには、断続バルブVaの開き動作、吸引・圧送手段4のピストン4bを押し移動させる開始動作、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2の開閉の切り替え動作のズレを、非常に短い時間(例えば、100〜500マイクロ秒)内に収める必要があり、調整に多くの時間が必要となる。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するために、装置構造が簡単で且つ調整に多くの時間を必要としない間欠塗工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
装置構造が簡単で且つ調整に多くの時間を必要としないようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、図1〜図6に示す如く、塗工液Mを吐出口Daから吐出するダイDと、塗工液Mを圧送する圧送手段12と、ダイDと圧送手段12の間に設けられ、ダイDへ塗工液Mの供給を断続的に行なうと共に不要な塗工液Mを還流路15へ戻す間欠供給装置14とを備えた間欠塗工装置において、前記間欠供給装置14は、ケーシング16及び弁装置17を備え、上記ケーシング16は、その内側に、圧送手段12及び還流路15に連通する分岐空間16aと、分岐空間16aに連通できると共にダイDに連通するダイ側空間16bとが形成され、上記弁装置17は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けられた弁座19と、ダイ側空間16b内に位置して弁座19から離座する開弁端位置Aから分岐空間16aへ向かう移動の途中で弁座19に液漏れなく内嵌して閉弁状態のまま移動して至る閉弁端位置Bまでの間を進退自在に設けられた弁体20と、弁体20を開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間で開弁端位置Aへ向かって前進又は閉弁端位置Bへ向かって後退させる弁体用操作装置21とを備え、弁体20が閉弁状態のまま閉弁端位置Bから押出用前進できる(図5参照)と共に閉弁端位置Bまで吸引用後退できる(図4参照)ように形成されたことを特徴とする間欠塗工装置である。
【0010】
請求項1記載の本発明にあっては、圧送手段から弁装置のケーシングの分岐空間へ圧送される塗工液は、弁体が弁体用操作装置で開弁端位置まで前進して開弁状態となる塗工時間帯では、開弁状態の弁座と弁体の隙間、ダイ側空間及びダイを通過してダイ吐出口から吐出して塗工され、逆に、弁体が弁体用装置装置で閉弁端位置まで後退して閉弁状態となる塗工休止時間帯では、ダイへの供給が停止される。
【0011】
また、請求項1記載の本発明にあっては、弁体が閉弁端位置から開弁端位置へ向かって前進するときにおいて、弁体が閉弁端位置から押出用前進して閉弁終了位置へ至る塗工休止時間帯の終期域では、閉弁状況下のダイ側空間内の塗工液充填体積を前進する弁体で減少させつつ塗工休止状態でダイ側空間及びダイ内に残存している塗工液をダイ吐出口の近辺まで押出し、続けて、弁体が開弁端位置へ至る塗工時間帯の初期域では、圧送手段から供給される塗工液をダイへ圧送し、ダイ吐出口から塗工液を吐出させて塗工域の始端を形成する。弁体が開弁端位置で停止している塗工時間帯の継続域では、圧送手段から圧送される塗工液をダイへ安定して供給し続け、ダイ吐出口から吐出し続ける塗工液で基材の塗工域を形成する。逆に、弁体が開弁端位置から閉弁端位置へ向かって後退するときにおいて、弁体が閉弁開始位置を経て吸引用後退して閉弁端位置へ至る塗工休止時間帯の初期域では、閉弁状況下のダイ側空間内の塗工液充填体積を後退する弁体で増大させつつ塗工休止直後のダイに残存している塗工液をダイ側空間側へ吸引することで、ダイ吐出口から基材の塗工域の終端形成箇所まで出ている塗工液をダイの内部へ吸引して、ダイ吐出口における液切れを良好にして塗工域の終端を形成する。
【0012】
更に、請求項1記載の本発明にあっては、圧送手段から分岐空間へ圧送する塗工液について、常に還流路へ還流するだけの流量を圧送できるので、塗工に必要な流量よりも多量の流量が通過する分岐空間内の塗工液圧力を常に高めることが可能となり、弁体が閉弁終了位置から開弁端位置まで更に前進するときに、塗工液圧力の高い分岐空間からダイ側空間を介してダイへ塗工液を迅速に供給できる。
【0013】
塗工膜の膜厚み調節ができるようにするため請求項2記載の本発明が採用した手段は、図9〜図13に示す如く、前記弁座19は、前記ケーシング16に取着した環状シール(図示略)で形成され、前記弁体48は、ダイ側空間16b寄りの閉弁行程領域48bと分岐空間16a寄りの開弁行程領域48dを連接させてなり、閉弁行程領域48bに、弁座19に全周囲を当接させて前記押出用前進及び前記吸引用後退を確保できる寸法の外周面48aが進退方向に沿って形成され、開弁行程領域48dに、弁座19に当接することなくダイ側空間16b及び分岐空間16aに開口できるように進退方向へ延設した流量調節用の通液部48cが設けられ、ダイ側空間16b側へ向かって移動するのに伴い通液部48cを通過する流量が多くなるように通液部48cを形成した請求項1記載の間欠塗工装置である。
【0014】
請求項2記載の本発明にあっては、弁座に開行程領域を臨ませた状態でダイ側空間へ向かって弁体を前進させるのに伴い塗工液の流量を増大させることができるので、弁体の停止位置である開弁端位置を変更することでダイへ供給する塗工液の流量を調節して、基材に形成される塗工域の塗工膜厚みを最適値にできる。
【0015】
請求項3記載の本発明が採用した手段は、図2及び図9に示す如く、前記弁体用操作装置21が、前記弁体20(48)から延設して前記ケーシング16を貫通する弁軸24と、位置決め制御及び速度制御可能な電動サーボモータからなる駆動源22と、弁軸24と駆動源22の間に設けられ、電動サーボモータの回転力を弁軸24に伝達して弁体20(48)を進退移動させる動力伝達機構23とを備え、弁体20(48)の起動から停止までの時間帯おける各経過時刻と、開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間おける弁体20(48)の各経過位置との関係を任意に設定できるようにした請求項1又は2記載の間欠塗工装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の本発明に係る間欠塗工装置は、一つの弁体を弁体用操作装置で開弁端位置から閉弁端位置まで進退させる簡単な構成で、塗工液の吐出を停止しているダイ吐出口の近辺まで塗工液を押出す塗工休止時間帯の終期域動作と、基材に塗工域の始端を形成するために塗工液を吐出させる塗工時間帯の初期域動作と、基材に塗工域を形成するために塗工液をダイ吐出口から継続的に吐出させる塗工時間帯の継続動作と、基材に塗工域の終端を形成するためにダイ吐出口への塗工液の供給の停止を準備する塗工時間帯における終期域動作と、基材に塗工域の終端を形成するために吐出している塗工液をダイの内部へ吸引させる塗工休止時間帯の初期域動作と、基材の非塗工域を形成するためにダイ吐出口からの塗工液の吐出を停止させる塗工休止時間帯の継続動作とを連続的に繰り返すことができるので、装置構造を簡単にできると共にこれら動作のタイミングの調整を簡単にできる優れた効果を有する。
【0017】
請求項2記載の本発明に係る間欠塗工装置は、弁体の停止位置である開弁端位置を変更してダイへ供給する塗工液の流量を調節することで、基材に形成される塗工域の塗工膜厚みを最適値にできる。
【0018】
請求項3記載の本発明に係る間欠塗工装置は、開弁端位置から閉弁端位置までの間おける弁体の各経過位置と、弁体の起動から停止までの時間帯おける各経過時刻との関係を任意に設定できることから、塗工時間帯の初期域動作及び塗工休止時間帯の初期域動作を最適な状態で行わせる弁体の移動状況を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る間欠塗工装置(以下、「本発明間欠塗工装置」と言う。)の第1の実施の形態を示すものであり、図(A)は全体の概略図、図(B)は図(A)中のb部分の拡大図、図(C)は図(A)中のc部分の拡大図である。
【図2】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が開弁端位置Aに位置する態様を示している。
【図3】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が閉弁開始位置H1に位置する状態を示している。
【図4】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が閉弁開始位置H1(二点鎖線)から閉弁端位置B(実線)へ後退する状態を示している。
【図5】第1の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体20が閉弁端位置B(二点鎖線)から閉弁終了位置H2(実線)へ前進する状態を示している。
【図6】第1の実施の形態における弁体20の動作を示すタイミングチヤートである。
【図7】本発明間欠塗工装置の第2の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体38が開弁位置Aに位置する態様を示している。
【図8】第2の実施の形態における弁装置37の近辺を示す部分断面図であって、図(A)は弁体38が閉弁開始位置H1(二点鎖線)から閉弁端位置B(実線)へ後退した状態を示し、図(B)は弁体38が閉弁端位置B(二点鎖線)から閉弁終了位置H2(実線)へ前進した状態を示している。
【図9】本発明間欠塗工装置の第3の実施の形態における主要部を示す部分断面図であって、弁体48が開弁端位置Aに位置する状態を示している。
【図10】第3の実施の形態における弁装置47の近辺を示す部分断面図であって、図(A)は弁体48が閉弁開始位置H1(二点鎖線)からから閉弁端位置B(実線)へ後退した状態を示し、図(B)は弁体48が閉弁端位置B(二点鎖線)から閉弁終了位置H2(実線)へ前進した状態を示している。
【図11】第3の実施の形態における弁体48を拡大して示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は縦断面した正面図、図(C)は底面図である。
【図12】第3の実施の形態における異なる態様の弁体48を拡大して示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は縦断面した正面図、図(C)は底面図である。
【図13】第3の実施の形態における更に異なる態様の弁体48を拡大して示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は底面図である。
【図14】従来の間欠塗工装置の概略図である。
【図15】従来の間欠塗工装置のタイミングチヤートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
図1乃至図8に示す第1の実施の形態に係る本発明間欠塗工装置11は、圧送されてきた塗工液Mを吐出口Daから基材Wへ吐出するダイDと、塗工液Mを圧送する圧送手段12と、ダイDと圧送手段12の間に設けられ、ダイDへ塗工液Mの供給を断続的に行なうと共にダイDへ供給されない不要な塗工液Mを還流路15へ戻す間欠供給装置14と、間欠供給装置14の弁体用操作装置21を制御する制御装置18とを備えている。本発明間欠塗工装置11を用いた塗工の形態は、基材WとダイDの相対移動で行われ、例えば、基材Wを走行させてダイDを停止させる態様(前者の態様)と、基材Wを停止させてダイDを走行させる態様(後者の態様)とがある。前者の態様の一例としては、図示は省略したが、一定速度で回転駆動するバックアップロールに巻き掛けて走行する基材Wの表面に、固定したダイDの吐出口Daから吐出する塗工液を塗工するものがある。後者の態様の一例としては、固定盤に固定した基材Wの表面に、基材Wの表面に沿って移動するダイDの吐出口Daから吐出する塗工液Mを塗工するものがある。基材Wとしては、前者の態様ではプラスチックフィルム等の連続したものが選択され、後者の態様ではガラス板等の適宜長さに切断したものが選択される。塗工液Mは、電池電極又は液晶板等に適用されるものが選択される。ダイDの姿勢としては、吐出口Daの吐出方向を水平に向ける場合以外に、図示は省略したが、吐出口Daの吐出方向を下方または上方に向ける場合があり、塗工条件に応じて最適な姿勢が選択される。このダイDの姿勢の選択は、前記の前者の態様又は後者の態様の選択と合わせて行われる。
【0021】
前記ダイDは、図1に示す如く、従来と同様に、分割可能に接合した二つのリップ部材Db,Dcの境界部にコートハンガー状等の分散用液路DdやマニホールドDeが形成され、該境界部の先端にスリット状の吐出口Daを開口している。ダイDは、吐出口Daの厚みとなるリップ部材Db,Dcの隙間寸法(例えば、50〜1500μm)を調整できるようにして、各種塗工条件に対応できるようにしてある。
【0022】
前記圧送手段12は、従来と同様に、塗工液Mを貯えるタンクTと、タンクT内の塗工液MをダイDへ圧送するポンプPとを備えている。圧送手段12とダイDは、間欠供給装置14を介して送液路13で接合され、圧送手段12と間欠供給装置14が圧送手段側送液路13bで接続され、間欠供給装置14とダイDがダイ側送液路13aで接続されている。前記還流路15は、間欠供給装置14から延びてタンクTに接合され、不要な塗工液Mを戻すようにしてある。ダイ側送液路13aには、送液路13a内の圧力を検知する圧力計PG1(図2参照)が必要に応じて設けられている。
【0023】
前記間欠供給装置14は、図2に示す如く、ケーシング16及び弁装置17を備え、ケーシング16の内側に、圧送手段12及び還流路15に連通する分岐空間16aと、分岐空間16aに連通できると共にダイDに連通するダイ側空間16bが形成されている。ケーシング16は、適所で分割・接合できるようにすることで、内側の清掃をし易くすることもある。分岐空間16aとダイ側空間16bは、弁装置17が開弁状態(図2参照)のときに連通し、弁装置17が閉弁状態(図4参照)のときに連通しないようになっている。分岐空間16aと還流路15の間には、圧力調節弁27が必要に応じて設けられ、分岐空間16a内の圧力を検知する圧力計PG2の検知圧力値mと設定器で設定した設定圧力値nの差を小さくするように圧力調節弁27が作動して、分岐空間16a内における塗工液Mの圧力を設定圧力値となるようにしてある。
【0024】
前記弁装置17は、図2に示す如く、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けた環状の弁座19と、ダイ側空間16b内に位置して弁座19から開度Fで離座する開弁端位置Aから分岐空間16aへ向かう移動の途中で弁座19に液漏れなく内嵌して閉弁状態(着座状態)のまま移動して至る閉弁端位置B(図4参照)までの間を進退自在に設けられた弁体20と、弁体20を進退させる弁体用操作装置21と、弁体20と弁体用操作装置21を連結する弁軸24とを備えている。弁体20は、図4に示すように二点鎖線で示す閉弁開始位置H1(弁体20が開弁端位置Aから閉弁端位置Bへ向かって後退しているときに閉弁状態が最初に始まる位置)から閉弁状態のまま実線で示す閉弁端位置Bまで吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退(矢符eへの移動)できると共に、図5に示すように二点鎖線で示す閉弁端位置Bから閉弁状態のまま実線で示す閉弁終了位置H2(弁体20が閉弁端位置Bから開弁端位置Aへ向かって前進しているときに閉弁状態が終了する位置)まで押出用移動寸法L2だけ押出用前進(矢符dへの移動)できるようなっている。なお、閉弁開始位置H1と閉弁終了位置H2は、弁座19の構造により、異なる位置になる場合も、又は同一の位置になる場合もある。
【0025】
前記弁座19は、ケーシング16に凹設した環状凹溝(図示略)に内嵌したOリングからなる環状シールや、単動シールでU字型のシールジャケットとV字型の耐腐食性スプリングで構成された環状シール、例えば、Busak+Shamban社製のロトバリシール(登録商標名)等を用いることができる。弁座19は、シール部19sに弁体20の後述する外周面20aが当接したとき、弁装置17を閉弁状態にする。
【0026】
前記弁体20は、図2に示す如く、中実の短円柱状又は分岐空間16a側を開口するよえに中刳したコップ状等に形成され、外周面20aが弁座19の内周に形成された円状のシール部19sに液漏れなく内嵌して閉弁状態(図4及び図5参照)となるようになっており、中実部を貫通した弁軸24の一端24aに着脱可能に嵌着したナット等の締結具26で弁軸24に接合してある。弁軸24は、シール25を介してケーシング16を貫通して弁体用操作装置21へ至っている。弁体20の進退方向に沿った寸法は、前記吸引用移動寸法L1(図4参照)及び押出用移動寸法L2(図5参照)を確保できる寸法となっている。弁体20は、弁座19から開度Fで離座する開弁端位置Aに位置するとき、ダイ側空間16bを形成するケーシング内周面16dに遊嵌合して、該ケーシング内周面16dとの間に環状の通液路を形成するようになっている。本例の弁体20は、図4に示す如く、開弁端位置A(図2参照)から分岐空間16aへ向かって後退中に、弁座19のシール部19sに外周面20aの分岐空間側端面20b側を当接させたとき、前記閉弁開始位置H1となる。逆に、弁体20は、図5に示す如く、閉弁端位置Bからダイ側空間16bへ向かって前進中に、弁座19のシール部19sに外周面20aの分岐空間側端面20b側を当接させたとき、前記閉弁終了位置H2となる。
【0027】
前記弁体用操作装置21は、位置決め制御及び速度制御可能な電動サーボモータからなる駆動源22と、駆動源22と前記弁軸24の間に設けられ、駆動源22である電動サーボモータの回転力を弁軸24に伝達して弁体20を進退移動させる動力伝達機構23と、駆動源22に制御指令を発する制御装置18(図1参照)とを備えている。動力伝達機構23は、図示は省略したが、駆動源22である電動サーボモータの出力軸に接合したピニオンギヤと、弁軸24に連結されると共にピニオンギヤが歯合して弁体進退方向に沿って摺動自在なラックギヤとを組合せたギヤ機構や、駆動源22である電動サーボモータの出力軸に接合したクランクと、弁軸24に連結され弁体進退方向に沿って摺動自在なスライダーと、クランクとスライダーを回転連鎖で連結する連結軸とを組合せたガタ付きが非常に少ないリンク機構等が採用される。
【0028】
前記弁体用操作装置21は、制御装置18(図1参照)の発する制御指令を受けた駆動源22である電動サーボモータの位置決め制御により、弁体20の停止位置である開弁端位置A(図2参照)及び閉弁端位置B(図4参照)の各位置を最適位置に設定できるようにしてある。また、弁体用操作装置21は、弁体20の開弁端位置A及び閉弁端位置Bの設定を変更可能としてあり、開弁端位置Aにおける弁体20の開度F(図2に示す弁体20分岐空間側端面20bから弁座19のシール部19sまでの弁体進退方向に沿った寸法)や、弁体20の前記吸引用移動寸法L1及び押出用移動寸法L2を間欠塗工に適した寸法に調節できるようにしてある。
【0029】
また、弁体用操作装置21は、制御装置18の発する制御指令を受けた駆動源22である電動サーボモータの速度制御により、弁体20の進退時の速度を変更できるようになっている。すなわち、弁体用操作装置21は、図6に示す如く、弁体20を起動位置である閉弁端位置Bから停止位置である開弁端位置Aへ向かって前進(図5の矢符dの方向への移動)させるときに、起動から停止までの前進移動時間U(すなわち、塗工休止時間帯Rの終期域Rc及び塗工時間帯Qの初期域Qaの所要時間であって、例えば10ミリ秒)の時間帯における起動からの各経過時刻と、起動から停止までの前進移動経路における弁体20の各通過位置との関係を変更可能にして、各経過時刻と各通過位置の関係を任意に設定できるようになっており、弁体20の各通過位置における移動速度を塗工条件に応じた最適値とすることで、塗工域Cにおける始端Ct側(図1参照)を良好な状態に形成できるようにしてある。なお、塗工条件に応じた弁体20の移動速度の最適値は、予め塗工テストを行なって求めておくとよい。
【0030】
更に、弁体用操作装置21は、駆動源22である電動サーボモータの速度制御により、弁体20を起動位置である開弁端位置Aから停止位置である閉弁端位置Bへ向かって後退(図3の矢符eの方向への移動)させるときに、図6に示す起動から停止までの後退移動時間Y(すなわち、塗工時間帯Qの終期域Qc及び塗工休止時間帯Rの初期域Raの所要時間であって、例えば7ミリ秒)の時間帯における起動からの各経過時刻と、起動から停止までの後退移動経路における弁体20の各通過位置との関係を任意に設定できるようになっており、弁体20の各通過位置における移動速度を塗工条件に応じた最適値とすることで、塗工域Cにおける終端Cbまで出ている塗工液M(図1の図(C)において破線Eで囲まれている部分)をダイDの内部へ円滑に吸引して、終端Cb側を良好な状態に形成できるようにしてある。
【0031】
前記制御装置18は、弁装置17の弁体用操作装置21の位置決め制御及び速度制御可能な駆動源22の電動サーボモータに対して指令を行なうものである。制御装置18は、弁装置17の駆動源22に関して、開弁端位置Aにおける弁体20の開度Fと閉弁端位置Bにおける弁体20の吸引用移動寸法L1や押圧用移動寸法L2の設定値を塗工条件に応じて変更できるように回路構成されると共に、開弁端位置Aと閉弁端位置Bとの間おける弁体20の起動からの各経過時刻と、開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間おける弁体20の各通過位置との関係を任意に設定して、弁体20の各通過位置における移動速度を塗工条件に対応できるように回路構成されている。
【0032】
上述の如く構成された本実施の形態に係る間欠塗工装置11は、制御装置18で弁体用操作装置21の駆動源22を制御して、図1に示す如く、ダイDの吐出口Daから塗工液Mを基材Wへ吐出して塗工域Cを形成する塗工時間帯Q(図6参照)と、塗工液Mを吐出せずに非塗工域Gを形成する塗工休止時間帯R(図6参照)を交互に形成するようにしてある。圧送手段12から間欠供給装置14のケーシング16の分岐空間16aへ圧送された塗工液Mは、図2に示す如く、弁体用操作装置21で弁体20が開弁端位置Aまで前進した塗工時間帯Q(図6参照)では、弁体20と弁座19との隙間(開度F)、ダイ側空間16b及びダイDを通過してダイ吐出口Daから基材Wへ吐出して塗工され、逆に、弁体20が弁体用装置装置21で閉弁端位置B(図4参照)まで後退した塗工休止時間帯Rでは、ダイDへの供給が停止される。
【0033】
そして、図5に示すように弁体20が二点鎖線で示す閉弁端位置Bから前進(矢符d)して図2に示す開弁端位置Aへ至る開弁動作のときにおいて、弁体20が閉弁端位置Bから押出用移動寸法L2だけ移動して閉弁終了位置H2へ至る塗工休止時間帯R(図6参照)の終期域Rcでは、閉弁状況下のダイ側空間16b内の塗工液充填体積を減少させることで、ダイ側空間16bに残存している停止状態の塗工液Mを、送液路13a内を矢符fの方向へ圧送してダイDの内部へ押出して塗工の準備状態となる。続いて、弁体20が閉弁終了位置H2を経て更に前進(矢符d)して開弁端位置A(図2参照)へ至る塗工時間帯Q(図6参照)の初期域Qaでは、圧送手段12から分岐空間16aへ圧送された塗工液Mを、弁体20と弁座19との隙間(開度F)及びダイ側空間16bを通過させてダイ吐出口Daから吐出させ、基材Wに塗工域Cの始端Ct寄りを形成する。開弁端位置A(図2参照)へ至って停止している弁体20の開弁が継続している塗工時間帯Qの継続域Qbでは、基材Wに塗工域Cを形成する。
【0034】
逆に、図2に示す弁体20が開弁端位置Aから後退(矢符e)して図4に示す閉弁端位置Bへ至る閉弁動作のときにおいて、塗工時間帯Q(図6参照)の終期域Qcにおいて弁体20が急速に後退した後に、続けて、弁体20が図4に示す閉弁開始位置H1から吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退して閉弁端位置Bへ至る塗工休止時間帯Rの初期域Raでは、閉弁状況下のダイ側空間16b内の塗工液充填体積を増大させて、塗工休止直後のダイDに残存している塗工液Mを、送液路13a内を矢符gの方向へ通過させてダイ側空間16b側へ吸引することで、ダイDの吐出口Daから塗工域Cの終端Cbまで出ている塗工液M(図1の図(C)において破線Eで囲まれている部分)をダイDの内部へ吸引して、ダイ吐出口Daの幅方向の全域にわたって液切れを良好して、吐出口Daの長手方向(基材Wを横断する方向)へ沿って塗工域Cの終端Cbを一直線となるようにシャープに形成できる。
【0035】
本発明間欠塗工装置11は、圧送手段12から分岐空間16aへ圧送する塗工液について、常に還流路15へ還流させる余分な流量を増量して供給できるので、塗工に必要な流量よりも多量の流量が通過する分岐空間16a内の塗工液圧力を常に高めることが可能となり、弁体20が閉弁終了位置H2(図5)から開弁端位置A(図2参照)まで更に前進するときに、塗工液圧力の高い分岐空間16aからダイ側空間16bを介してダイDへ塗工液Mを迅速に供給することが可能となる。
【0036】
本発明間欠塗工装置11は、弁装置17の一つの弁体20を弁体用操作装置21で開弁端位置Aから閉弁端位置Bまでの間を進退させる簡単な構成で、基材Wに塗工域Cの始端Ctを形成するための準備となる塗工休止時間帯Rの終期Rcの動作及び塗工液Mをダイ吐出口Daから吐出させる塗工時間帯Qの初期域Qaの動作と、基材Wの塗工域Cを形成するために塗工液Mをダイ吐出口Daから継続的に吐出させる塗工時間帯Qの継続域Qbの動作と、基材Wに塗工域Cの終端Cbを形成するためにダイ吐出口Daからの塗工液Mの吐出を停止する塗工時間帯Qの終期Qcの動作及び吐出している塗工液MをダイDの内部へ吸引させる塗工休止時間帯Rの初期域Raの動作と、基材Wの非塗工域Gを形成するためにダイ吐出口Daからの塗工液Mの吐出を停止させる塗工休止時間帯Rの継続域Rbの動作とを連続的に繰り返すことができるので、装置構造を簡単にできると共にこれら動作のタイミングの調整が簡単にできる優れた効果を有する。
【0037】
(第2の実施の形態)
図7及び図8に示す第2の実施の形態に係る本発明間欠塗工装置31は、弁装置37が前記第1の実施の形態の弁装置17と大きく異なり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図7及び図8において第1の実施の形態を示す図1乃至図5と同一符号は相当部分を示す。
【0038】
前記弁装置37は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けた弁座39と、弁体38と、弁体38を進退させる弁体用操作装置21を備えている。該弁体38は、短円柱状の主体部38aと、短円柱状部38aから分岐空間16aへ延設した通水部38cと、主体部38aの外周面に凹設した環状凹溝にOリングからなるシール又は前記ロトバリシール(登録商標名)等を内嵌して環状シール部38bとをからなり、通水部38cの外径寸法を分岐空間16aへ向かって行く程に小さくなるようにして、開弁したときに、通水部38cと弁座39の間に通水抵抗の小さな液路を形成するようにしてある。該弁座39は、ケーシング16の内面面16dから突設する輪状に形成され、内側に形成した円形の貫通孔39aへ弁体38の環状シール部38bを液漏れなく内嵌できるようにしてある。
【0039】
前記弁体用操作装置21は、弁体38に接合した弁棒24を押し引き操作して、弁体38が、図8の図(A)に示すように、二点鎖線で示す閉弁開始位置H1から閉弁状態のまま実線で示す閉弁端位置Bまで吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退(矢符eへの移動)できると共に、同図の図(B)に示すように、二点鎖線で示す閉弁端位置Bから閉弁状態のまま実線で示す閉弁終了位置H2まで押出用移動寸法L2だけ押出用前進(矢符dへの移動)できるようなっている。なお、閉弁開始位置H1と閉弁終了位置H2は、弁体48の環状シール部48hの構造により、異なる位置となる場合も、又は同一の位置となる場合もある。
【0040】
(第3の実施の形態)
図9乃至図14に示す第3の実施の形態に係る本発明間欠塗工装置41は、弁装置47が前記第1の実施の形態と大きく異なり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図9乃至図14において第1の実施の形態を示す図1乃至図5と同一符号は相当部分を示す。
【0041】
前記弁装置47は、ケーシング16の分岐空間16aとダイ側空間16bの境界に設けた環状の弁座19と、弁体48と、弁体48を進退させる弁体用操作装置21を備え、弁体48の進退範囲を、図10の図(A)に示すように、二点鎖線で示す閉弁開始位置H1から閉弁状態のまま実線で示す閉弁端位置Bまで吸引用移動寸法L1だけ吸引用後退(矢符eへの移動)できると共に、同図の図(B)に示すように、二点鎖線で示す閉弁端位置Bから閉弁状態のまま実線で示す閉弁終了位置H2まで押出用移動寸法L2だけ押出用前進(矢符dへの移動)できるようなっている。なお、閉弁開始位置H1と閉弁終了位置H2は、弁座19の構造により、異なる位置となる場合も、又は同一の位置となる場合もある。
【0042】
前記弁座19は、第1の実施の形態と同様に、ケーシング16に取着した環状シールで形成され、例えば、ケーシング16に凹設した環状凹溝(図示略)に内嵌したOリングからなるシールや、ロトバリシール(登録商標名)等を環状シールとして用いることができる。
【0043】
前記弁体48は、ダイ側空間16b寄りの閉弁行程領域48bと分岐空間16a寄りの開弁行程領域48dを連接させてなり、閉弁行程領域48bに、弁座19に全周囲を当接させることができる外周面48aが形成され、開弁行程領域48dに、弁座19に当接することなくダイ側空間16b及び分岐空間16aに開口して連通させることができる複数個の通液部48cが設けられている。閉弁行程領域48bの外周面48aは、弁体48の進退方向に沿った寸法が、前記吸引用移動寸法L1及び押出用移動寸法L2を確保するのに十分な寸法となっている。複数個の通液部48cは、弁体48がダイ側空間16bへ向かって前進するのに伴い、分岐空間16aから全部の通液部48cを通過してダイ側空間16bへ流れる塗工液Mの流量が多くなるように形成してある。
【0044】
前記弁体48の開弁行程領域48dは、図11に示す如く、閉弁行程領域48bから等間隔で延設された複数本の通液部形成用脚部48eからなり、隣接する脚部48e,48eの間に開口した通液部48cを形成すると共に、脚部48e,48e…で囲まれた内側に、分岐空間16a側を開口すると共に各通液部48cに連通する中空部48fが形成されている。弁体48は、図9に示す流量調節状態のときに、各通液部形成用脚部48eの円弧状の外側面が弁座19に当接すると共に、開口した通液部48cが弁座19に当接しないようになっている。流量調節状態の弁体48は、分岐空間16aへ圧送された塗工液Mを、内側の中空部48f(図11参照)及び各通液部48cのうちダイ側空間16bに開口する部分を通過させてダイ側空間16bへ導き、ダイDへ供給することができる。弁体48は、ダイ側空間16bへ向かう方向へ前進(矢符d)して、ダイ側空間16bに開口する各通液部48cの開口面積が大きくなる程に、開弁行程領域48dを通過する塗工液の流量を多くすることができる。
【0045】
前記弁体48の開弁行程領域48dに形成する各通液部48cは、図12に示す如く、閉弁行程領域48bから延びる外周面48aの一部に凹設され、分岐空間16a側へ向かって行く程に半径方向の深さ寸法hが大きくなるように形成することも可能である。更に、弁体48の開弁行程領域48dに形成する各通液部48cは、図13に示す如く、分岐空間16a側へ向かって行く程に外周面の半径が小さくなるように截頭円錐状に形成することも可能である。
【0046】
前記弁装置47は、図9に示す如く、弁座19に弁体48の閉弁行程領域48bを臨ませた状態でダイ側空間16bへ向かう方向へ前進(矢符d)させるのに伴い塗工液の流量を増大させることができるので、弁体48の停止位置である開弁端位置Aを変更してダイDへ供給する塗工液の流量を調節することで、基材Wに形成される塗工域Cの塗工膜厚みを最適値にすることができる。
【符号の説明】
【0047】
11…本発明間欠塗工装置、12…圧送手段、13…送液路、13a…ダイ側送液路、13b…圧送手段側送液路、14…間欠供給装置、15…還流路、16…ケーシング、16a…分岐空間、16b…ダイ側空間、17…弁装置、18…制御装置、19…弁座、20…弁体、20a…外周面、20b…閉弁行程領域、20c…通液部、20d…開弁行程域、21…弁体用操作装置、22…駆動原、23…動力伝達機構、24…弁軸、25…シール、26…締結具、27…圧力調節弁、A…開弁位置、B…閉弁位置、Rb…継続域、C…塗工域、Cb…終端、Ct…始端、D……ダイ、Da…吐出口、F…弁体の開度、G…非塗工域、H…開閉分岐位置、L…吸引・圧送用寸法、M…塗工液、P…ポンプ、Q…塗工時間帯、Qa…初期域、Qb…継続域、Qc…終期域、R…塗工休止時間帯、Ra…初期域、Rb…継続域、Rc…終期域、T…タンク、31…本発明間欠塗工装置、37…弁装置、38…弁体、38a…主体部、38b…通水部、38c…環状シ−ル部、39…弁座、39a…貫通孔、41…本発明間欠塗工装置、47…弁装置、48…弁体、48a…外周面、48b…閉弁行程領域、48c…通液部、48d…開弁行程域、48e…脚部、48f …中空部、h…深さ寸法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液を吐出口から吐出するダイと、塗工液を圧送する圧送手段と、ダイと圧送手段の間に設けられ、ダイへ塗工液の供給を断続的に行なうと共に不要な塗工液を還流路へ戻す間欠供給装置とを備えた間欠塗工装置において、
前記間欠供給装置は、ケーシング及び弁装置を備え、
上記ケーシングは、その内側に、圧送手段及び還流路に連通する分岐空間と、分岐空間に連通できると共にダイに連通するダイ側空間とが形成され、
上記弁装置は、ケーシングの分岐空間とダイ側空間の境界に設けられた弁座と、ダイ側空間内に位置して弁座から離座する開弁端位置から分岐空間へ向かう移動の途中で弁座に液漏れなく内嵌して閉弁状態のまま移動して至る閉弁端位置までの間を進退自在に設けられた弁体と、弁体を開弁端位置から閉弁端位置までの間で開弁端位置へ向かって前進又は閉弁端位置へ向かって後退させる弁体用操作装置とを備え、弁体が閉弁状態のまま閉弁端位置から押出用前進できると共に閉弁端位置まで吸引用後退できるように形成された
ことを特徴とする間欠塗工装置。
【請求項2】
前記弁座は、前記ケーシングに取着した環状シールで形成され、
前記弁体は、ダイ側空間寄りの閉弁行程領域と分岐空間寄りの開弁行程領域を連接させてなり、閉弁行程領域に、弁座に全周囲を当接させて前記押出用前進及び前記吸引用後退を確保できる寸法の外周面が進退方向に沿って形成され、開弁行程領域に、弁座に当接することなくダイ側空間及び分岐空間に開口できるように進退方向へ延設した流量調節用の通液部が設けられ、ダイ側空間側へ向かって移動するのに伴い通液部を通過する流量が多くなるように通液部を形成した請求項1記載の間欠塗工装置。
【請求項3】
前記弁体用操作装置が、前記弁体から延設して前記ケーシングを貫通する弁軸と、位置決め制御及び速度制御可能な電動サーボモータからなる駆動源と、弁軸と駆動源の間に設けられ、電動サーボモータの回転力を弁軸に伝達して弁体を進退移動させる動力伝達機構とを備え、弁体の起動から停止までの時間帯おける各経過時刻と、開弁端位置から閉弁端位置までの間おける弁体の各経過位置との関係を任意に設定できるようにした請求項1又は2記載の間欠塗工装置。
【請求項1】
塗工液を吐出口から吐出するダイと、塗工液を圧送する圧送手段と、ダイと圧送手段の間に設けられ、ダイへ塗工液の供給を断続的に行なうと共に不要な塗工液を還流路へ戻す間欠供給装置とを備えた間欠塗工装置において、
前記間欠供給装置は、ケーシング及び弁装置を備え、
上記ケーシングは、その内側に、圧送手段及び還流路に連通する分岐空間と、分岐空間に連通できると共にダイに連通するダイ側空間とが形成され、
上記弁装置は、ケーシングの分岐空間とダイ側空間の境界に設けられた弁座と、ダイ側空間内に位置して弁座から離座する開弁端位置から分岐空間へ向かう移動の途中で弁座に液漏れなく内嵌して閉弁状態のまま移動して至る閉弁端位置までの間を進退自在に設けられた弁体と、弁体を開弁端位置から閉弁端位置までの間で開弁端位置へ向かって前進又は閉弁端位置へ向かって後退させる弁体用操作装置とを備え、弁体が閉弁状態のまま閉弁端位置から押出用前進できると共に閉弁端位置まで吸引用後退できるように形成された
ことを特徴とする間欠塗工装置。
【請求項2】
前記弁座は、前記ケーシングに取着した環状シールで形成され、
前記弁体は、ダイ側空間寄りの閉弁行程領域と分岐空間寄りの開弁行程領域を連接させてなり、閉弁行程領域に、弁座に全周囲を当接させて前記押出用前進及び前記吸引用後退を確保できる寸法の外周面が進退方向に沿って形成され、開弁行程領域に、弁座に当接することなくダイ側空間及び分岐空間に開口できるように進退方向へ延設した流量調節用の通液部が設けられ、ダイ側空間側へ向かって移動するのに伴い通液部を通過する流量が多くなるように通液部を形成した請求項1記載の間欠塗工装置。
【請求項3】
前記弁体用操作装置が、前記弁体から延設して前記ケーシングを貫通する弁軸と、位置決め制御及び速度制御可能な電動サーボモータからなる駆動源と、弁軸と駆動源の間に設けられ、電動サーボモータの回転力を弁軸に伝達して弁体を進退移動させる動力伝達機構とを備え、弁体の起動から停止までの時間帯おける各経過時刻と、開弁端位置から閉弁端位置までの間おける弁体の各経過位置との関係を任意に設定できるようにした請求項1又は2記載の間欠塗工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−167408(P2010−167408A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239243(P2009−239243)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000119254)井上金属工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000119254)井上金属工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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