説明

防振ダンパーの取付構造

【課題】本発明は、防振ダンパーの取付構造に関し、高架橋の電車や自動車の通過時における微振動が確実に防振ダンパーに伝達するような取付構造を提供することが課題である。
【解決手段】振動吸収用の防振ダンパー2の端部を、取付手段を介して防振対象物に取り付けて固定する構造において、前記取付手段3における表裏一体の取付面3a,3bは、防振対象物4側の取付面3aとこれと反対側の防振ダンパー2側の取付面3bとが、直交するようにした防振ダンパーの取付構造1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道高架橋等用いる振動吸収ダンパーの取り付けに使用する取付手段における防振ダンパーの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道高架橋に使われる振動吸収ダンパーは、微細な振動が伝達途中で損失することなく、効率良くダンパー入力となることが要求される。そこで、一般には、図7に示すように、軸式(ピン式)継手が用いられたり、若しくは、ボルト固定にしたりしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−295506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の軸式(ピン式)継手では、嵌合部のクリアランスが存在するので、微細な振動をダンパーに伝達することができない。また、ボルト固定にすると、施工時において取付具の上下に位置誤差が発生したまま固定することとなりダンパーに曲げモーメントを与えることとなって、摺動抵抗(セリ)が発生してダンパー減衰力に悪影響を与える。本発明に係る防振ダンパーの取付構造は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る防振ダンパーの取付構造の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、振動吸収用の防振ダンパーの端部を、取付手段を介して防振対象物に取り付けて固定する構造において、前記取付手段における表裏一体の取付面は、防振対象物側の取付面とこれと反対側の防振ダンパー側の取付面とが、直交していることである。
【0005】
前記取付手段の表裏一体の取付面のうち、片方の取付面には防振ダンパーの取付角度調整時の中心位置を保持する中心位置決め孔と取付角度調整時の誤差を吸収するようにボルトを遊嵌させるボルト用孔とが設けられ、他方の取付面には前記中心位置決め孔及び前記取付角度調整時の誤差を吸収するようにボルトを遊嵌させるボルト用孔が設けられていること、;
前記取付手段における片側の取付面に、弾性変形を許容する薄肉部が設けられていること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防振ダンパーの取付構造によれば、取付場所の相対的な誤差に対する調整が可能となって位置ズレが吸収される。これにより、鉄道高架橋等の電車通過時における微小な振動が確実に防振ダンパーに伝達され減衰されることになる。また、防振ダンパー用取付の施工を容易にすることができる。
更に、弾性変形を許容する薄肉部があるので、取付部の角度変位がダンパーに及ぼす力を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る防振ダンパーの取付構造1は、図1に示すように、振動吸収用の防振ダンパー2の端部2aを、取付手段である継手3を介して防振対象物のコンクリート梁・柱4等に取り付けて固定する構造において、前記取付手段の継手3における表裏一体の取付面3a,3bは、防振対象物4側の取付面3aとこれと反対側の防振ダンパー側の取付面3bとが、直交している。
【0008】
この継手3は、図2に示すように、防振ダンパー2の軸心a方向に対して、その軸心に直交するb方向と、同じく直交するc方向とにおける位置ズレを吸収するように、前記取付面3aと取付面3bとが直交しているのである。
【0009】
上記位置ズレの調整は、具体的には、図3に示すように、取付手段である継手3の表裏一体の取付面3a,3bのうち、片方の取付面3aには防振ダンパー2の取付角度調整時の中心位置を保持する中心位置決め孔3cが設けられている。この孔3cには遊び無く嵌合されるピン5が挿入される。更に、取付角度調整時の誤差を吸収するようにボルト6を遊嵌させる、前記ピン5を中心とした円弧状のボルト用孔3d若しくはボルト6の径よりも大きな径の丸孔3dが、複数個設けられている。
【0010】
他方の取付面3bには、図4(A),(B)に示すように、前記中心位置決め孔3c及び前記取付角度調整時の誤差を吸収するように高張力ボルトであるボルト7を遊嵌させるボルト用孔3eが、複数個設けられている。
【0011】
前記孔3dにより、取付時の前記ピン5を中心として回転する継手3の孔3dの位置と、梁4側の取付金具8の取付面8aにおける孔位置との、a軸とc軸との方向における位置ズレを吸収する。
また、前記孔3eは、防振ダンパー2に一体にして連結される連結金具9の取付孔9aとの、a軸とb軸との方向における位置ズレを吸収する。よって、孔3eは、ボルト7の棒本体の直径よりも大きな径の孔となっている。
【0012】
このようにして、防振ダンパー2を防振対象物4に取り付ける際に、位置ズレを無くして継手するので、防振対象物に伝達する微小振動も、前記防振ダンパー2に伝達される。
【0013】
本発明の他の実施例は、図5乃至図6(A),(B)に示すように、取付手段である継手3における片側の取付面3bに、弾性変形を許容する薄肉部3fが設けられている取付構造1aの実施例である。この薄肉部3fがあることで、防振対象物4の変位による曲げモーメントが防振ダンパー2に与える影響を低減させることができる。なお、この薄肉部3fのa軸方向の長さと肉厚とは設計事項である。また、この他の実施例では、連結金具9の取付部にも薄肉部9bを設けている。防振ダンパー2に与える曲げモーメントの影響を更に低減することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防振ダンパーの取付構造1を示す概略全体概念図である。
【図2】同本発明の防振ダンパー2の軸心aとそれに直交する軸b,cを示す説明図である。
【図3】同防振ダンパーの取付構造1の拡大詳細図である。
【図4】同防振ダンパーの取付構造1における、前方視拡大斜視図(A)、後方視拡大斜視図(B)である。
【図5】同本発明の他の実施例に係る防振ダンパーの取付構造1aの拡大詳細図である。
【図6】同防振ダンパーの取付構造1aにおける、前方視拡大斜視図(A)、後方視拡大斜視図(B)である。
【図7】従来例に係る防振ダンパーの取付構造における、前方視拡大斜視図(A)、後方視拡大斜視図(B)である。
【符号の説明】
【0015】
1,1a 防振ダンパーの取付構造、
2 防振ダンパー、 2a 端部、
3 継手、 3a,3b 取付面、
3c 中心位置決め孔、 3d ボルト用孔、
3e 孔、 3f 薄肉部、
4,4a,4b 梁,柱等の防振対象物、
5 ピン、
6 ボルト、
7 ボルト、
8 取付金具、 8a 取付面、
9 連結金具、 9a 取付孔、
9b 薄肉部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動吸収用の防振ダンパーの端部を、取付手段を介して防振対象物に取り付けて固定する構造において、
前記取付手段における表裏一体の取付面は、防振対象物側の取付面とこれと反対側の防振ダンパー側の取付面とが、直交していること、
を特徴とする防振ダンパーの取付構造。
【請求項2】
取付手段の表裏一体の取付面のうち、片方の取付面には防振ダンパーの取付角度調整時の中心位置を保持する中心位置決め孔と取付角度調整時の誤差を吸収するようにボルトを遊嵌させるボルト用孔とが設けられ、他方の取付面には前記中心位置決め孔及び前記取付角度調整時の誤差を吸収するようにボルトを遊嵌させるボルト用孔が設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の防振ダンパーの取付構造。
【請求項3】
取付手段における片側の取付面に、弾性変形を許容する薄肉部が設けられていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の防振ダンパーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−151204(P2008−151204A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338264(P2006−338264)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(503119111)株式会社ジェイアール総研エンジニアリング (12)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(000175582)三協オイルレス工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】