説明

防振装置および防振装置の製造方法

【課題】防振装置および防振装置の製造方法に関し、特に、防振脚部をブラケット部材にインサート成形する際のバリの発生を抑制して、防振脚部によるストッパ機能を確保することができる防振装置および防振装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂成形金型400は、第2押圧面部402eがシール面部53aを型締め方向へ向けて押圧するので、両面部402e,53aの押圧を強固とできる。よって、キャビティCに注入された樹脂材料を両面部402e,53aの間に浸入し難くして、バリの発生を抑制できる。また、両面部402e,53aの間に樹脂材料が浸入してバリが発生しても、ストッパ面部が段差53cの分だけシール面部53bが突出されているので、ストッパ面部のストローク(圧縮代)を確保して、そのストッパ機能を発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム状弾性体からなる防振脚部を樹脂材料からなるブラケット部材にインサート成形する構造の防振装置および防振装置の製造方法に関し、特に、インサート成形時のバリの発生を抑制して、防振脚部によるストッパ機能を確保することができる防振装置および防振装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防振装置の一例として、例えば、車体側に取着されるブラケット部材に内挿孔を設け、その内挿孔に内挿配置される内筒部材を振動源(例えば、エンジンやモータ、トランスミッションなど)側に取着すると共に、内挿孔の内周側と内筒部材の外周側とをゴム状弾性体からなる防振脚部で連結する構造のものが知られている。
【0003】
近年では、軽量化や低コスト化を目的として、ブラケット部材を樹脂材料から構成することが試みられている。例えば、特許文献1には、ブラケット部材を樹脂材料から構成すると共に、そのブラケット部材に設けたマウント装着孔(内挿孔)の内周面に金属プレートを配設し、その金属プレートに本体ゴム弾性体(防振脚部)を接着することで、本体ゴム弾性体をマウント装着孔の内周面に固着する技術が開示されている。また、このように、金属プレートを接着によってブラケット部材に固定する技術に加え、機械的な係合構造により固着させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−170634号公報(図1〜図5、段落[0007]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の防振装置では、機械的な係合構造により金属プレートを固着させる場合、ブラケット部材の内挿孔の内周面の一部を防振脚部へ向けて張り出させる構造であり、その張り出し部分がアンダーカット形状となるため、ブラケット部材を成形するための樹脂成形金型の構造が複雑になる。
【0006】
これに対し、本出願人は、鋭意検討した結果、防振脚部の他端側に外側部材を埋設させ、かかる外側部材と共に防振脚部の他端側をブラケット部材にインサート成形することで、防振脚部の他端側がブラケット部材から抜け出ることを抑制しつつ、樹脂成形金型の構造を簡素化できることを見いだした(本出願時において未公知)。
【0007】
ここで、かかる防振装置および樹脂成形金型の構造について、図16及び図17を参照して説明する。図16は、防振装置200の斜視図である。
【0008】
図16に示すように、防振装置200は、樹脂材料から構成されるブラケット部材230と、そのブラケット部材230に形成された内挿孔231に内挿配置される内筒部材240と、その内筒部材230に一端側が連結されると共にブラケット部材230の内挿孔231の内周側に他端側がインサート成形されゴム状弾性体から構成される一対の防振脚部250と、それら一対の防振脚部250の他端側に埋設される一対の外側部材260(図17参照)とを主に備える。防振脚部250の他端側には、外側部材260を覆う覆設ゴム部253が形成されている。この覆設ゴム部253は、ストッパ面として機能する部位であり、ブラケット部材230の外面から内筒部材240の軸方向へ向けて突出される。即ち、覆設ゴム部253に相手部品が当接されることで、その変位を規制する。
【0009】
図17は、型締めされた樹脂成形金型2400の断面図であり、図16のXVII−XVII線における段面図に対応する。防振装置200の製造は、内筒部材240及び防振脚部250が設置された樹脂成形金型2400を、内筒部材240の軸方向(図17上下方向)に型締めした後、キャビティC内へ樹脂材料を注入して固化させ、防振脚部250をブラケット部材230にインサート成形することで行われる。樹脂成形金型2400は、覆設ゴム部253のストッパ面(図17上側面)に連なる縦壁253aに当接面部2400aが当接することで、樹脂材料が注入されるキャビティCと覆設ゴム部253のストッパ面が収納される空間Sとを区画する。
【0010】
この場合、樹脂成形金型2400の当接面部2400aと覆設ゴム部253の縦壁253aとの密着が弱いと、キャビティC内に注入された樹脂材料が、当接面部2400aと縦壁253aとの間に浸入してバリとなる。かかるバリは樹脂材料からなり硬いため、覆設ゴム部253のストッパ面としての機能を阻害する。そのため、ストッパ機能を確保するためには、バリの発生を抑制する必要があり、樹脂成形金型2400の当接面部2400a及び防振脚部253の縦壁253aに高い寸法精度が要求される。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ゴム状弾性体からなる防振脚部を樹脂材料からなるブラケット部材にインサート成形する構造において、インサート成形時のバリの発生を抑制して、防振脚部によるストッパ機能を確保することができる防振装置および防振装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0012】
請求項1記載の防振装置によれば、ブラケット部材の外面から突出される突出ゴム部は、外縁側に位置する平坦面状のシール面部と、そのシール面部に段差を介して連設され段差の分だけシール面部よりも突出されるストッパ面部とを備え、樹脂成形金型の押圧面部が第1成形体の突出ゴム部におけるシール面部を押圧して、樹脂材料が注入されるキャビティと突出ゴム部のストッパ面部が収容される空間とを区画した状態で、ブラケット部材の内挿孔の内周側にインサート成形されたものであるので、防振装置の製造過程におけるバリの発生を抑制して、ストッパ機能を確保することができるという効果がある。
【0013】
即ち、突出ゴム部におけるシール面部が平坦面状に形成され、かかるシール面部を樹脂成形金型の押圧面部が押圧するので、これら押圧面部とシール面部とを強固に密着させることができる。よって、キャビティ内に注入された樹脂材料が押圧面部とシール面部との間に浸入することを抑制して、その分、インサート成形時のバリの発生が抑制されるという効果がある。
【0014】
また、このように、押圧面部とシール面部との密着を強固とすることができれば、その分、樹脂成形金型の押圧面部と、突出ゴム部のシール面部との寸法精度を緩やかとすることができるので、防振装置を製造するための樹脂成型金型およびゴム加硫金型の製造コストを低減することができるという効果がある。
【0015】
更に、突出ゴム部のストッパ面部は、シール面部に段差を介して連設され、その段差の分だけシール面部よりも突出されているので、キャビティ内に注入された樹脂材料が押圧面部とシール面部との間に浸入して、その浸入した樹脂材料がバリとなった場合であっても、ストッパ面部のストッパ面をバリから段差の分だけ離間させることができる。よって、仮に防振装置の製造過程においてバリが発生したとしても、ストッパ面部によるストッパ機能を確保することができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の防振装置の製造方法によれば、ゴム加硫工程において、内筒部材および外側部材がゴム加硫金型のキャビティ内に設置された後、そのキャビティ内にゴム状弾性体が注入され加硫成形されることで、一対の防振脚部の一端側が内筒部材に加硫接着された第1成形体が成形される。次いで、樹脂成形工程において、ゴム加硫工程により成形された第1成形体が樹脂成形金型のキャビティ内に設置されると共に、そのキャビティ内に樹脂材料が注入され固化されることで、第1成形体がブラケット部材にインサート成形される。
【0017】
この場合、ゴム加硫工程により成形される第1成形体は、突出ゴム部が、外縁側に位置する平坦面状のシール面部と、そのシール面部に段差を介して連設され段差の分だけシール面部よりも突出されるストッパ面部とを備え、樹脂成形工程では、樹脂成形金型の押圧面部が第1成形体の突出ゴム部におけるシール面部を押圧することで、樹脂材料が注入されるキャビティと第1成形体の突出ゴム部におけるストッパ面部が収容される空間とを区画するので、バリの発生を抑制して、ストッパ機能を確保することができるという効果がある。
【0018】
即ち、突出ゴム部におけるシール面部が平坦面状に形成され、かかるシール面部を樹脂成形金型の押圧面部が押圧するので、これら押圧面部とシール面部とを強固に密着させることができる。よって、キャビティ内に注入された樹脂材料が押圧面部とシール面部との間に浸入することを抑制して、その分、インサート成形時のバリの発生を抑制できるという効果がある。
【0019】
また、このように、押圧面部とシール面部との密着を強固とすることができれば、その分、樹脂成形金型の押圧面部と、第1成形体の突出ゴム部におけるシール面部との寸法精度を緩やかとすることができるので、樹脂成型金型およびゴム加硫金型の製造コストを低減することができるという効果がある。
【0020】
更に、突出ゴム部のストッパ面部は、シール面部に段差を介して連設され、その段差の分だけシール面部よりも突出されているので、キャビティ内に注入された樹脂材料が押圧面部とシール面部との間に浸入して、その浸入した樹脂材料がバリとなった場合であっても、ストッパ面部のストッパ面をバリから段差の分だけ離間させることができる。よって、仮にバリが発生したとしても、ストッパ面部のストローク(圧縮代)を確保して、そのストッパ機能を発揮させることができるという効果がある。
【0021】
請求項3記載の防振装置の製造方法によれば、請求項2記載の防振装置の製造方法の奏する効果に加え、ゴム加硫工程は、外側部材を内筒部材と共に設置したゴム加硫金型のキャビティ内にゴム状弾性体を注入して加硫成形して、一対の防振脚部の一端側を内筒部材の外周面に連結すると共に一対の防振脚部の他端側に外側部材を埋設した第1成形体を成形し、樹脂成形工程は、樹脂成形金型の押圧面部が、突出ゴム部のシール面部であって、外側部材の少なくとも一部に重なる領域を押圧するので、押圧面部により押圧されたシール面部をその背面側から金属材料から構成される外側部材に支持させることができる。これにより、押圧面部とシール面部との密着をより強固とすることができるので、キャビティ内に注入された樹脂材料が押圧面部とシール面部との間に浸入することを抑制でき、その分、インサート成形時のバリの発生をより確実に抑制できるという効果がある。
【0022】
また、請求項3によれば、ゴム加硫行程において、金属材料から構成される外側部材が防振脚部の他端側に埋設され、その防振脚部の他端側が樹脂成形行程においてブラケット部材にインサート成形されることで、外側部材の少なくとも一部がブラケット部材に係合されるので、防振脚部の他端側がブラケット部材から抜き出ることを抑制できる防振装置を製造することができるという効果がある。
【0023】
請求項4記載の防振装置の製造方法によれば、請求項2又は3に記載の防振装置の製造方法の奏する効果に加え、樹脂成形工程で使用される樹脂成形金型は、押圧面部に連なる縦壁と、第1成形体のシール面部およびストッパ面部の間の段差との間に所定の隙間を有するので、押圧面部によりシール面部が押圧されることで押し出されるゴム状弾性体の余肉を、縦壁と段差との間の隙間に逃がして吸収させることができる。このように、余肉を逃がすことで、押圧面部とシール面部とを、余肉により阻害されることなく、密着させることができるという効果がある。その結果、キャビティ内に注入された樹脂材料が押圧面部とシール面部との間に浸入することを抑制できるので、その分、インサート成形時のバリの発生をより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施の形態における防振装置の斜視図である。
【図2】(a)は、防振装置の正面図であり、(b)は、防振装置の側面図である。
【図3】(a)は、外側部材の斜視図であり、(b)は、外側部材の背面図である。
【図4】(a)は、図3(b)のIVa−IVa線における外側部材の断面図であり、(b)は、図3(b)のIVb−IVb線における外側部材の断面図である。
【図5】第1成形体の斜視図である。
【図6】(a)は、第1成形体の正面図であり、(b)は、第1成形体の側面図である。
【図7】(a)は、図6(a)のVIIa−VIIa線における第1成形体の断面図であり、(b)は、図6(b)のVIIb−VIIb線における第1成形体の断面図である。
【図8】図6(a)のVIII−VIII線における第1成形体の断面図である。
【図9】内筒部材および外側部材がセットされて型締めされたゴム加硫金型の断面図である。
【図10】第1成形体がセットされて型締めされた樹脂成形金型の断面図である。
【図11】第1成形体がセットされて型締めされた樹脂成形金型の断面図である。
【図12】第1成形体がセットされて型締めされた樹脂成形金型の断面図である。
【図13】防振装置の部分断面図である。
【図14】防振装置の部分断面図である。
【図15】(a)は、第2実施の形態における外側部材の断面図であり、(b)は、第3実施の形態における外側部材の断面図である。
【図16】従来の防振装置の斜視図である。
【図17】型締めされた従来の樹脂成形金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して防振装置1の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における防振装置1の斜視図であり、図2(a)は、防振装置1の正面図であり、図2(b)は、防振装置1の側面図である。なお、図1及び図2において、矢印F,B方向は車両前後方向を、矢印L,R方向は車両左右方向を、矢印U,D方向は車両上下方向を、それぞれ表している。
【0026】
図1及び図2に示すように、防振装置1は、自動車の振動源(図示せず)を支持固定しつつ、その振動源から発生する振動を車体(図示せず)へ伝達させないようにするものであり、車体側に取り付けられる筒状の軸短取付金具11及び軸長取付金具12と、それら両取付金具11,12の外周面に加硫接着されると共にゴム状弾性体から構成される弾性体21,22と、それら両弾性体21,22がそれぞれ圧入される圧入孔を有すると共に樹脂材料から構成されるブラケット部材30と、そのブラケット部材30に形成された内挿孔31に内挿配置されると共に振動源側に取り付けられる内筒部材40と、その内筒部材40に一端側が連結されると共にゴム状弾性体から構成される一対の防振脚部50と、それら一対の防振脚部50の他端側がそれぞれ連結されると共にブラケット部材40に係合される一対の外側部材60(図7参照)と、を主に備えて構成される。
【0027】
なお、振動源は、本実施の形態では、モータであるが、他には、エンジンやトランスミッションなどが例示される。
【0028】
軸短取付金具11及び軸長取付金具12は、鉄鋼材料から構成され、車体側に取り付けられる金具である。これら両取付金具11,12は、貫通孔を有する筒状に形成されており、この貫通孔には、ボルト(図示せず)が内挿され、そのボルトの締結により、両取付金具11,12の端面がそれぞれ車体側に取り付けられる。
【0029】
ブラケット部材30は、樹脂材料から正面略矩形の枠状体として構成されており、圧入孔と内挿孔31とが厚み方向に貫通して形成されている。圧入孔には、外周面に弾性体21,22が加硫接着された各取付金具11,12が圧入されて保持される。内挿孔31には、内筒部材40が内挿される。なお、内挿孔31の内周面は、大変位入力時における内筒部材40を受け止めてその変位を規制するストッパ部としても機能する。
【0030】
ブラケット部材30の上端および下端には、複数の肉抜き穴32が厚み方向に貫通して形成されている。なお、圧入穴、内挿孔31および肉抜き孔32は、開口側へ向けて内径が拡大されるテーパ状の内周を有すると共に、内筒部材40及び後述する外側部材60の孔63aの軸心方向と平行に形成されている。よって、樹脂成形金型400(図10参照)からの脱型性が確保される。
【0031】
内筒部材40は、アルミ合金から貫通孔を有する断面楕円形の筒状に形成される。内筒部材40は、貫通孔に挿通されたボルト(図示せず)を介して、振動源側に締結固定される。一対の防振脚部50は、ゴム状弾性体から構成され、振動源側で発生する振動が車体側へ伝達されることを抑制するための部材であり、一端側が内筒部材40の外周面に連結されると共に他端側がブラケット部材30における挿通孔31の内周面にそれぞれ連結される。
【0032】
これら一対の防振脚部50は、内挿孔31の車両前後方向となる内周面に連結されており、内挿孔31の上側および下側(車両上方側および下方側)との間には空間が形成される。そのため、防振脚部50は、内筒部材40を車両上下方向へ変位させる際の上下方向ばね定数が、内筒部材40を車両左右方向へ変位させる際の左右方向ばね定数よりも小さくされている。
【0033】
防振脚部50の他端側には、ブラケット部材30の前面および背面となる外面(図2(b)左側面および右側面)から、内筒部材40の軸方向(図2左右方向)へ向けて突出される第2壁覆設ゴム53が連なっている。第2壁覆設ゴム53は、シール面部53a及びストッパ面部53bを備える。ストッパ面部53bは、シール面部53aに段差53cを介して連設されており、その段差53cの分だけシール面部53aよりも内筒部材40の軸方向へ突出されている。即ち、ストッパ面部53bは、シール面部53aよりもブラケット部材30の外面からの突出高さが高くされている。内筒部材40に締結固定された相手部品500(図13参照)が大変位入力時に相対変位した場合には、その相手部品にストッパ面部53bが当接してその変位を規制するストッパ部として機能する。
【0034】
次いで、図3及び図4を参照して、外側部材60について説明する。図3(a)は、外側部材60の斜視図であり、図3(b)は、外側部材60の背面図である。図4(a)は、図3(b)のIVa−IVa線における外側部材60の断面図であり、図4(b)は、図3(b)のIVb−IVb線における外側部材60の断面図である。
【0035】
図3及び図4に示すように、外側部材60は、金属材料からなる1枚の平板状体にプレス加工機による絞り加工を施すことで、容器状に形成された部材であり、一対の防振脚部50の他端側にそれぞれ埋設されると共に、ブラケット部材30に係合される。この外側部材60は、背面視矩形状に形成される基板部61と、その基板部61の外縁であって対向する2辺(図3(b)上側および下側)から背面側(図3(b)紙面手前側)へ向けて延設される一対の第1壁部62と、基板部61の残りの2辺から背面側へ向けて延設されると共に一対の第1壁部61の端部同士を連結する一対の第2壁部63とを備える。
【0036】
基板部61は、背面側へ向けて凸となり軸心L1を有する円弧状に湾曲して形成される(図4(a)参照)。即ち、基板部61は、図4(a)において、紙面垂直方向に軸心L1が伸びる円筒の側壁の一部を切り取った形状に形成される。基板部61の板面中央には、背面視略矩形状の貫通孔61aが穿設される。
【0037】
貫通孔61aは、一対の第2壁部63に対してはそれらの対向間中央に配置されているが、一対の第1壁部62に対してはそれらの対向間中央よりも一方側(図3(b)及び図4(a)下側)へ偏って配置されている。よって、図4(a)において、貫通孔61aの上方側の基板部61により形成される弧の中心角θaは、貫通孔61aの下方側の基板部61により形成される弧の中心角θbよりも大きくされている。
【0038】
第1壁部62は、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両上下方向(矢印U,D)への移動を主に規制するための平板状の部位であり(図12参照)、一対が対向配置されると共に、それら一対の対向間隔が、基板部61の背面側から離間するに従って拡大する末広がり状に形成されている(図4(a)参照)。なお、一対の第1壁部62は互いに同じ形状に形成されている。
【0039】
第2壁部63は、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両左右方向(矢印L,R)への移動を主に規制するための平板状の部位であり(図10参照)、一対が平行を保ちつつ対向配置されている(図4(b)参照)。これら一対の第2壁部63には、正面視円形の孔63aが、各第2壁部63に対して2箇所ずつ合計4箇所に穿設されている。
【0040】
これら各孔63aは、図4(a)に示すように、一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62側(図4(a)下側)に偏った位置に配置されている。詳細には、2箇所に穿設される孔63aの内の一方の孔63aは一対の第1壁部62間の略中央に、他方の孔63aは一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62側に、それぞれ配置されている。
【0041】
第2壁部63には、正面視半円状の膨出部が外縁から膨出形成されており、その膨出部と同心となる位置に各孔63aが配置されている。なお、このように、膨出部と貫通孔61aとが共に、一対の第1壁部61の対向間中央よりも一方側に偏って配置されていることで、貫通孔61aによる強度の低下を、膨出部により補うことができるので、外側部材60全体としての強度の向上を図ることができる。
【0042】
ここで、一対の第2壁部63は、孔63aの配置も含め、互いに同じ形状に形成されている。そのため、外側部材60は、防振装置1(第1成形体100)の左右いずれにも共通に使用することができる(図7参照)。
【0043】
次いで、図5から図8を参照して、第1成形体100について説明する。図5は、第1成形体100の斜視図である。図6(a)は、第1成形体100の正面図であり、図6(b)は、第1成形体100の側面図である。また、図7(a)は、図6(a)のVIIa−VIIa線における第1成形体100の断面図であり、図7(b)は、図6(b)のVIIb−VIIb線における第1成形体100の断面図であり、図8は、図6(a)のVIII−VIII線における第1成形体100の断面図である。
【0044】
図5から図8に示すように、第1成形体100は、防振装置1を製造する過程(ゴム加硫金型300を使用した加硫工程)における1次加工品であり、内筒部材40と、その内筒部材40に一端側が連結される一対の防振脚部50と、それら一対の防振脚部50の他端側がそれぞれ連結される一対の外側部材60と、その外側部材60を覆う各覆設ゴム51〜53とを主に備え、左右(図6(a)左右)対称に形成される。
【0045】
図5から図8に示すように、内筒部材40の上方側および下方側は、一対の防振脚部50の一端側同士が連なることで、ゴム状弾性体により覆われており、車両上下方向(矢印U,D方向)への大変位入力時には、このゴム状弾性体を介して、内筒部材40が挿通孔31の内周面に当接される(図1参照)。
【0046】
一対の外側部材60は、その背面側を向き合わせつつ所定間隔を隔てて対向配置され、その対向間に内筒部材40が配置される。なお、一対の外側部材60は、その基板部61の軸心L1(図4(a)参照)が内筒部材40の軸心と平行となる状態で配置される。
【0047】
一対の防振脚部50は、内筒部材40と一対の外側部材60との間をそれぞれ連結し、正面視において、左右に直線状に延びる形状に形成されている。防振脚部50には、外側部材60の外面を覆う各覆設ゴム51〜53が連なっている。
【0048】
基板覆設ゴム51は、貫通孔61a内に充填されつつ、基板部61の外面を一定の厚み寸法で覆う。基板部61の前面側(第1及び第2壁部62,63が延設される側)に覆設される基板覆設ゴム51の厚み寸法は、十分に薄くされており、本実施の形態では、基板部61の厚み寸法よりも小さくされている。そのため、後述するように、樹脂成形工程において、空間Sに樹脂材料が充填されると、その射出圧力により、樹脂材料が貫通孔61aに嵌り込む。
【0049】
第1壁覆設ゴム52は、一対の第1壁部62の外面をそれぞれ一定の厚み寸法で覆い、第2壁覆設ゴム53は、一対の第1壁部63の外面をそれぞれ一定の厚み寸法で覆う。なお、第2壁覆設ゴム53には、厚み寸法を厚くした箇所(ストッパ面部53b)が部分的に形成されている。また、第2壁部53の孔53aには、ゴム加硫金型300のゴム型下ピン301a及びゴム型上ピン302aが挿通されるので、第2壁覆設ゴム53が充填されていない。同様に、第2壁部63の外面(対向面と反対側の面)は、ゴム加硫金型300のゴム型座部301c,302cが当接されるので、ゴム型座部301c,302cに対応する形状の窪みが第2壁覆設ゴム53(シール面部53a)に形成される。また、第2壁部63の対向面側に覆設される第2壁覆設ゴム53は、孔63aに対応する部分のみ厚み寸法が厚くされている。
【0050】
このように、外側部材60の外面を、各覆設ゴム51〜53が所定の厚み寸法で覆うことで、外側部材60の第1壁部62及び第2壁部63の対向面間(即ち、基板部61、第1壁部62及び第2壁部63で取り囲まれた部分)に空間Sが形成される。かかる空間Sには、後述するように、ブラケット部材30の一部が内嵌される。
【0051】
なお、第2壁覆設ゴム53は、上述したように、シール面部53a及びストッパ面部53bを備える。シール面部53aは、第1壁覆設ゴム52に連設され、外面(空間Sと反対側の面)が内筒部材40の軸方向に直交する平坦面状に形成されている。ストッパ面部53bは、正面視(図6(a)参照)においてシール面部53aよりも小さな外形に形成されると共に内筒部材40側の縁部に沿って位置し、かつ、シール面部53aの外面から内筒部材40の軸方向へ向けて突出され、シール面部53aとの間に段差53cが形成されている。
【0052】
次いで、図9から図12を参照して、防振装置1の製造方法について説明する。図9は、内筒部材40及び外側部材60がセットされて型締めされたゴム加硫金型300の断面図であり、キャビティ内にゴム状弾性体が注入される前の状態が図示されている。また、図10は、第1成形体100がセットされて型締めされた樹脂成形金型400の断面図であり、キャビティC内に樹脂材料が注入される前の状態が図示されている。なお、図9及び図10における断面は、図7(a)に示す断面に対応する。
【0053】
図9に示すように、ゴム加硫金型300は、第1成形体100を加硫成形するための金型であり、上下(図9上下方向、内筒部材40の軸方向)に型締めされる下型301及び上型302と、それら上下型301,302の間に挟まれる中型303とを備え、ゴム加硫工程において、型締めにより形成されるキャビティ内に注入孔(図示せず)から注入されて充填されたゴム状弾性体を加硫することで、第1成形体100(図5参照)を成形する。
【0054】
下型301は、第1成形体100の正面側(図6(a)紙面手前側)の外形を形成するための部位であり、内筒部材40を係止するための内筒係止部301aと、外側部材60を係止するためのゴム下型ピン301b及びゴム下型座部301cとを備える。
【0055】
内筒係止部301aは、内筒部材40の下端を係止する部位であり、内筒部材40の下端が内嵌可能に凹設された凹設溝部と、内筒部材40の下端開口から挿入される挿入ピンとを備える。
【0056】
ゴム下型ピン301bは、外側部材60の孔63aに挿入される円柱状のピンであり、片側2箇所ずつ合計4箇所に形成されている。これら各ゴム下型ピン301bが各孔63aに挿入されることで、外側部材60が所定位置に位置決めされる。
【0057】
ゴム下型座部301cは、外側部材60の第2壁部63の外面を支持する部位であり、ゴム下型ピン301bよりも大径の円柱状に形成されると共にゴム下型ピン301bと同心に形成されている。よって、ゴム下型ピン301bは、ゴム下型ピン301bとの間に平坦面状の段差面を有し、その段差面が第2壁部63の外面に当接して支持する円環状の座面とされている。なお、かかる座面は、その直径が第2壁部63に形成される半円状の膨出部よりも小径に設定されており、第2壁部63の外面内に収まるように形成されている。
【0058】
上型302は、第1成形体100の背面側(図6(a)紙面奥側)の外形を形成するための部位であり、下型301に対して上下動(図9上下方向移動)することで、型締め及び型開き可能に構成され、内筒部材40を係止するための内筒係止部302aと、外側部材60を係止するためのゴム上型ピン302b及びゴム上型座部302cとを備える。
【0059】
なお、内筒係止部302a、ゴム上型ピン302b及びゴム上型座部302cは、下型301における内筒係止部301a、ゴム下型ピン301b及びゴム下型座部301cと同一の構成であるので、その説明を省略する。但し、ゴム上型ピン302bは、最大径が下型301におけるゴム下型ピン301bの外径よりも若干小さくされると共に、先端側ほど小径となる円錐形状のテーパピンとして構成されている。これにより、外側部材60をセットする際には、その外側部材60の寸法公差を吸収して、作業性の向上を図ることができると共に、外側部材60のキャビティ内での保持を適正な姿勢で強固に行うことができる。
【0060】
また、中型303は、第1成形体100の上下面および両側面(図6(a)上下面および左右面)の外形を形成するための部位であり、分割可能な複数から構成され、下型301の所定位置に配置される。
【0061】
図10に示すように、樹脂成形金型400は、第1成形体100をブラケット部材30にインサート成形するための金型であり、上下(図9上下方向、内筒部材40の軸方向)に型締めされる下型401及び上型402を備え、型締めにより形成されるキャビティC内に注入孔(図示せず)から樹脂材料を注入(射出)して固化させることで、防振装置1を成形する。
【0062】
下型401は、上型402と共にブラケット30の外形を形成するための部位であり、内筒部材40を係止するための内筒係止部401aと、外側部材60を係止するための樹脂下型ピン401b及び樹脂下型座部401cとを備える。なお、内筒係止部401a、樹脂下型ピン401b及び樹脂下型座部401cは、ゴム加硫金型300の下型301における内筒係止部301a、ゴム下型ピン301b及びゴム下型座部301cと同一の構成であるので、その説明を省略する。
【0063】
上型402は、下型401に対して上下動(図10上下方向移動)することで、型締め及び型開き可能に構成され、内筒部材40を係止するための内筒係止部402aと、外側部材60を係止するための樹脂上型ピン402b及び樹脂上型座部402cとを備える。なお、内筒係止部402a、樹脂上型ピン402b及び樹脂上型座部402cは、ゴム加硫金型300の上型302における内筒係止部302a、ゴム上型ピン302b及びゴム上型座部302cと同一の構成であるので、その説明を省略する。
【0064】
なお、下型401及び上型402には、圧入孔形成ピン(図示せず)が形成されており、樹脂加硫工程において、ブラケット部材30の所定位置に2つの圧入孔(各取付金具11,12とそれらの外周面にそれぞれ加硫接着される弾性体21,22とからなるブッシュが圧入される孔、図1参照)を貫通形成する。
【0065】
防振装置1の製造は、まず、ゴム加硫工程を行い、第1成形体100を成形し、次いで、樹脂成形工程へ移行し、第1成形体100をブラケット部材30にインサート成形することで行われる。
【0066】
即ち、ゴム加硫工程では、まず、ゴム加硫金型300の下型301に内筒部材40及び外側部材60をセットし、次いで、中型303を下型301の所定位置に配置した後、上型302を下降移動させて、型締めする。これにより、図9に示すように、ゴム状弾性体を加硫するための加硫空間であるキャビティが形成されるので、図示しない注入孔からキャビティ内にゴム状弾性体を注入して、かかるキャビティ内にゴム状弾性体を充填する。そして、ゴム加硫金型300を加圧・加熱した状態で所定時間保持することで、ゴム状弾性体(防振脚部50及び各覆設ゴム51〜53)が加硫され、第1成形体100が成形される。
【0067】
この場合、外側部材60は、一対の第2壁部63のそれぞれに2箇所ずつ孔63aが穿設されている。これら各孔63aは、一対の第1壁部62の対向間中央よりも一方側に偏った位置に配置されている(図4(a)参照)。そのため、外側部材60をゴム加硫金型300の下型301にセットする際には、第2壁部63に穿設された各孔63aへ各ゴム下型ピン301bをそれぞれ適切に挿通させることが必要とされる。
【0068】
即ち、外側部材60の向きを正しく設定して、各孔63aのそれぞれへ対応するゴム下型ピン301bをそれぞれ挿通させなければ、外側部材60の第2壁部63を下型301のキャビティ(凹部)内に収容させることができない(第1壁覆設ゴム62の厚み寸法が一対の第2壁部52の離間間隔よりも十分に小さいため)。よって、貫通孔61aが偏った位置に形成され、外側部材60に方向性がある場合であっても、かかる外側部材60をゴム加硫金型300へセットする際の作業不良(設置不良)を確実に抑制することができる。
【0069】
また、一対の第2壁部63には、それぞれ2箇所ずつに孔63aが穿設されるので、ゴム加硫工程において、外側部材60を下型301にセットした状態では、かかる外側部材60の回転を確実に規制することができる。よって、上型302を下型301に型締めする際には、各ゴム上型ピン302bを各孔63aへ確実に挿入させることができる。
【0070】
更に、一対の第2壁部63のそれぞれの各孔63aにゴム下型ピン301b及びゴム上型ピン302bがそれぞれ挿通されることで、ゴム加硫金型300のキャビティ内において、外側部材60を確実に保持できるので、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力による外側部材60の変形を抑制することができる。
【0071】
また、このように、外側部材60の設置不良および変形の抑制を可能とするために、孔63a及びゴム下型ピン301b等を複数設ける構成であっても、これら孔63a及びゴム下型ピン301b等は、断面円形という簡素な形状に形成されているので、その製造を容易として、防振装置1及びゴム加硫金型300の製品コストの低減を図ることができる。
【0072】
外側部材60を覆う各覆設ゴム51〜53は、防振脚部50に連なるゴム状弾性体からなるので、防振脚部50と各覆設ゴム51〜53とを同時に加硫成形することができ、その分、製造コストの削減を図ることができる。また、このように、各覆設ゴム51〜53を形成することで、外側部材60全体をゴム状弾性体で覆うことができるので、外側部材60の耐食性の向上を図ることができる。
【0073】
ここで、ゴム加硫金型300のキャビティ内に設置された外側部材60は、その外面を覆う各覆設ゴム51〜53の厚みの分、全面にわたってゴム加硫金型300との間に隙間が空くため、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力によって、変形されやすい。特に、基板部61は、ゴム下型ピン301b等により支持される第2壁部63に比較して、変形が顕著となる。これに対し、本実施の形態における防振装置1では、基板部61に貫通孔61aが貫通形成されているので、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力を、貫通孔61aによって逃がすことができ、その結果、外側部材60の変形を抑制することができる。
【0074】
なお、ゴム加硫金型300は、第1成形体100のパーティングラインPL(下型301と中型303との合わせ面および上型302と中型303との合わせ面に沿って第1成形体100の表面に形成されるバリ、図11及び図12参照)の位置が、外側部材60の第2壁部63よりも内方側(即ち、貫通孔61a側)となるように、上下型301,302と中型303との割り面の位置を設定している。
【0075】
次いで、樹脂成形工程では、樹脂成形金型400の下型401に第1成形体100をセットし、次いで、上型402を下降移動させて、型締めする。これにより、図10に示すように、樹脂材料を充填して固化させるための空間であるキャビティCが形成されるので、図示しない注入孔からキャビティC内に樹脂材料を注入(射出)して、所定時間保持することで、樹脂材料が固化され、第1成形体100がブラケット部材30にインサート成形される。最後に、ブッシュをブラケット部材30の圧入孔へ圧入することで、防振装置1の製造が完了する。
【0076】
この場合、樹脂成形金型400の下型401への第1成形体100のセットは、外側部材60の第2壁部63に穿設された孔63aに樹脂下型ピン401bを挿通させることで行われるので、上述したゴム加硫工程の場合と同様に、第1成形体100の向き(即ち、外側部材60の向き)を正しく設定して、各孔63aのそれぞれへ対応する樹脂下型ピン401bをそれぞれ挿通させなければ、第1成形体100を下型401のキャビティ(凹部)内に収容させることができない。よって、外側部材60の貫通孔61aが偏った位置に形成され、第1成形体100に方向性がある場合であっても、かかる第1成形体100を樹脂成形金型400へセットする際の作業不良(設置不良)を確実に抑制することができる。
【0077】
また、上述したゴム加硫工程の場合と同様に、第1成形体100を下型401にセットした状態では、第2壁部63の2箇所の孔63aそれぞれに樹脂下型ピン401bが挿入されることで、第1成形体100の回転を確実に規制することができる。よって、上型402を下型401に型締めする際には、各樹脂上型ピン402bを各孔63aへ確実に挿入させることができる。
【0078】
更に、一対の第2壁部63のそれぞれの各孔63aに樹脂下型ピン401b及び樹脂上型ピン402bがそれぞれ挿通されることで、樹脂成形金型400のキャビティ内において、外側部材60を確実に保持できるので、キャビティ内に射出された樹脂材料の射出圧力による外側部材60の変形を抑制することができる。
【0079】
なお、上述したゴム加硫工程の場合と同様に、樹脂下型ピン401b及び樹脂上型ピン402bは、断面円形という簡素な形状に形成されているので、その製造を容易として、樹脂成形金型400の製品コストの低減を図ることができる。
【0080】
ここで、ゴム加硫工程では、外側部材60の第2壁部63をゴム下型座部301c及びゴム上型座部302cとで支持する。これらゴム下型座部301c及びゴム上型座部302cの座面は、孔63aと同心で第2壁部63の膨出部よりも直径が小さい円環状なので、第2壁部63の外縁からはみ出さずその第2壁部63の板面内に収まる。よって、第2壁部63を覆う第2壁覆設ゴム53は、孔63a近傍が部分的に凹設されるのみであり、四隅に凹部が形成されない。
【0081】
即ち、従来の製造方法では、第2壁部63の四隅をゴム加硫金型で支持するので、第2壁覆設ゴム53の四隅にゴム加硫金型の支持部に対応する凹部が形成される。そのため、樹脂成形工程では、樹脂材料のシール性を確保することが困難となるため、樹脂成形金型の構造や形状が複雑化して、製造コストが嵩む。これに対し、本実施の形態における製造方法によれば、第2壁覆設ゴム53の四隅に凹部がなく、シール性の確保が容易であるので、樹脂成形金型400の構造や形状を簡素化して、製造コストの低減を図ることができる。
【0082】
また、従来の製造方法のように、第2壁部63の四隅をゴム加硫型で支持する構造であると、第2壁部63と基板部61との間に曲げ加工によるR形状がある場合、かかるR形状は寸法公差が大きいため、その分、R形状部を支持するゴム加硫金型側の支持部も寸法公差を大きく設定する必要が生じ、外側部材60のゴム加硫金型に対する位置精度が低下する。これに対し、本実施の形態における製造方法によれば、第2壁部63の孔63aにゴム下型ピン301b等を挿通させる構成であれば、寸法公差を小さくして、ゴム加硫金型300に対する位置精度の向上を図ることができる。その結果、外側部材60と内筒部材40や防振脚部50との相対位置精度を向上させることができるので、防振装置1の静的および動的な特性の安定化を図ることができる。
【0083】
ここで、ゴム加硫工程で成形される第1成形体100には、外側部材60の第1壁部62と第2壁部63とで取り囲まれた部分(即ち、第1壁覆設ゴム52と第2壁覆設ゴム53とに囲まれた部分)に空間Sが形成される。樹脂成形工程において樹脂材料が樹脂成形金型のキャビティ内に注入されると、その樹脂材料が空間Sに充填される。その結果、ブラケット部材30の一部が空間Sに内嵌された状態に第1成形体100がブラケット部材30にインサート成形される。
【0084】
この場合、外側部材60の基板部61に貫通孔61aが貫通形成されているので、樹脂成形工程において、樹脂成形金型のキャビティ内に注入された樹脂材料の注入(射出)圧力を、貫通孔61aを通じて、防振脚部50へ作用させることができる。これにより、防振脚部50に予圧縮を付与することができるので、耐久性の優れた防振部材50を製造することができる。
【0085】
また、樹脂材料の注入圧力を変更することで、防振脚部50に付与される予圧縮量を変化させることができるので、防振部材1を製造する際に、防振脚部50のばね特性を調整することができる。即ち、防振脚部50の特性をゴム状弾性体の特性(例えば、ゴム硬度)を変更することで調整する場合、そのゴム硬度のロット毎のばらつきが大きいため、特性の微調整が困難である。これに対し、樹脂材料の注入(射出)圧力は、射出成形機の設定により高精度か容易に調整できるので、予圧縮量の変更による防振脚部50のばね特性の調整を確実に行うことができる。
【0086】
また、例えば、かかる樹脂材料の注入(射出)圧力を高めることで、空間Sに充填された樹脂材料を、貫通孔61aを通じて、防振脚部50側へ押し込み、かかる樹脂材料が貫通孔61aを貫通しつつ防振脚部50に嵌り込んだ内嵌状態を形成することができる(但し、後述する図13及び図14では、樹脂材料の注入圧力が低い場合の成形状態が図示されている)。よって、このような内嵌状態を形成した場合には、ブラケット部材30からの外側部材60の抜け出しをより確実に防止し得る防振装置1を製造することができる。
【0087】
次いで、図11及び図12を参照して、樹脂成形金型400により第1成形体100をブラケット部材30へインサート成形する際のシール構造について説明する。なお、下型401によるシール構造は、上型402によるシール構造と同様であるため、上型402を例に説明し、下型401についてはその説明を省略する。
【0088】
図11及び図12は、第1成形体100がセットされて型締めされた樹脂成形金型400の断面図であり、キャビティC内に樹脂材料が注入される前の状態が図示されている。なお、図11は、図10の拡大図に対応し、図12は、図6(a)のXII−XII線における断面図に対応する。また、図11及び図12では、第2壁覆設ゴム53の表面上に形成されるパーティングラインPLの位置を矢印により図示する。
【0089】
図11及び図12に示すように、樹脂成形金型400は、第2壁覆設ゴム53のシール面部53aの側面(図11及び図12左側面)を押圧してシールする第1押圧面部402dと、その第1押圧面部402dに連設され第2壁覆設ゴム53のシール面部53aの上面を押圧してシールする第2押圧面部402eと、その第2押圧面部402eとの間に立て壁402fを介して連設され第2壁覆設ゴム53のストッパ面部53bの上面を押圧してシールする第3押圧面部402gとを主に備える。
【0090】
第1押圧面部401dは、シール面部53aの側面(図11及び図12左側面)に平行な平坦面に形成されると共に、内筒部材40の軸心からの距離がシール面部53aの側面よりも短くされている。第2押圧面部402eは、シール面部53aの上面に平行な平坦面に形成され、第3押圧面部402gは、ストッパ面部53bの上面に平行な平坦面に形成されている。これら第2押圧面部402e及び第3押圧面部403gは、下型401における第2押圧面部および第3押圧面部(図示せず)との間の対向間距離(図11及び図12上下方向寸法)が、一対のシール面部53a及び一対のストッパ面部53bの上面の間の対向間距離(図11及び図12上下方向寸法)よりもそれぞれ短くされている。なお、本実施の形態では、第1押圧面部401dが内筒部材40の軸方向に平行に形成される一方、第2押圧面部402e及び第3押圧面部403gが内筒部材40の軸方向に直交して形成されている。
【0091】
よって、樹脂成形工程において、上型402が内筒部材40の軸方向に平行に下降移動され、型締めされると、かかる上型402の第2押圧面部402eが、第2壁覆設ゴム53のシール面部53aの上面を型締め方向(図11及び図12下方)へ向けて押圧する。これにより、樹脂材料が注入されるキャビティCとストッパ面部53bが収容される側の空間Rとを区画できるので、インサート成形時の樹脂材料によるバリの発生を抑制して、ストッパ機能を確保することができる。
【0092】
即ち、上述した通り、シール面部53aが内筒部材40の軸方向(即ち、型締め方向)に直交する平坦面状に形成され、かかるシール面部53aを上型402の第2押圧面部402eが型締め方向へ押圧するので、これら第2押圧面部402eとシール面部53aとを強固に密着させることができる。よって、キャビティC内に注入された樹脂材料が第2押圧面部402eとシール面部53aとの間に浸入することを抑制して、その分、インサート成形時のバリの発生を抑制できる。
【0093】
なお、このように、第2押圧面部402eとシール面部53aとの密着を強固とすることができれば、その分、樹脂成形金型400の他の押圧面部(第1押圧面部402d及び第3押圧面部402g)と、第1成形体100のシール面部53a及びストッパ面部53bとの寸法精度を緩やかとすることができるので、樹脂成型金型400及びゴム加硫金型300の製造コストを低減することができる。
【0094】
また、ストッパ面部53bは、シール面部53aに段差53cを介して連設され、その段差53cの分だけシール面部53aよりも高さ寸法が大きくされている(内筒部材40の軸方向へ突出されている)ので、仮に、キャビティC内に注入された樹脂材料が第2押圧面部402eとシール面部53aとの間に浸入して、その浸入した樹脂材料がバリとなった場合であっても、ストッパ面部53bのストッパ面(上面側、図11及び図12上側)をバリから段差53cの分だけ離間させることができる。よって、仮にバリが発生したとしても、ストッパ面部53bのストローク(圧縮代)を確保して、そのストッパ機能を発揮させることができる。
【0095】
この場合、第2押圧面部402eは、樹脂成形金型400の型締め方向視において、外側部材60の第2壁部63の少なくとも一部に重なるように形成されている。即ち、本実施の形態では、上型402の縦壁402fが、第2壁部63の基板部61と反対側(図11及び図12左側)の端部と基板部61との間に位置する。
【0096】
これにより、上型402が型締めされ、かかる上型402の第2押圧面部402eが、第2壁覆設ゴム53のシール面部53aの上面を型締め方向(図11及び図12下方)へ向けて押圧する場合には、外側部材60(第2壁部63)の少なくとも一部に重なる領域を押圧するので、第2押圧面部402eにより押圧されたシール面部53aを、その背面側(図11及び図12下側)から金属材料から構成される外側部材60に支持させることができる。これにより、第2押圧面部402eとシール面部53aとの密着をより強固とすることができるので、キャビティC内に注入された樹脂材料が第2押圧面部402eとシール面部53aとの間に浸入することを抑制でき、その分、インサート成形時のバリの発生をより確実に抑制できる。
【0097】
また、本実施の形態では、樹脂成形金型400が型締めされると、第1押圧面部402dも、第2壁覆設ゴム53のシール面部53aの側面(図11及び図12左側面)を押圧する。よって、第2押圧面部402eの側面においてシールすることができるので、かかるシールにより、キャビティC内に注入された樹脂材料が、第2押圧面部402eとシール面部53aの上面との間まで到達することをより確実に抑制できる。その結果、インサート成形時のバリの発生によりストッパ機能が阻害されることをより確実に抑制することができる。
【0098】
一方で、第1押圧面部402dは、シール面部53aの側面(図11及び図12左側面)の全領域を押圧するのではなく、少なくともパーティングラインPLよりもシール面部53aの上面側(図11及び図12上側面)に位置する領域のみを押圧する。これにより、樹脂成形工程において、第1成形体100がブラケット部材30にインサート成形されると、パーティングラインPLを樹脂で覆う(ブラケット部材30内に埋設する)ことができる。その結果、防振装置100の外観からパーティングラインPLを隠すことができ、製品の美観を高めることができると共に、パーティングラインPLが基点となり第1成形体100に亀裂が発生することを抑制できる。
【0099】
ここで、本実施の形態では、樹脂成形金型400が、第2押圧面部402e及び第3押圧面部402gを連設する縦壁402fと、シール面部53a及びストッパ面部53bを連設する段差53cとの間に空間としての隙間Tを有するように形成されている。これにより、型締め時に、第1押圧面部402d及び第2押圧面部402eによりシール面部53aが押圧されることで押し出されるゴム状弾性体の余肉を、縦壁402fと段差53cとの間の隙間Tに逃がして吸収させることができる。
【0100】
このように、余肉を逃がすことで、第1押圧面部402d及び第2押圧面部402eとシール面部53aとを、余肉により阻害されることなく、密着させることができる。その結果、キャビティC内に注入された樹脂材料が第1押圧面部402d及び第2押圧面部402eとシール面部53aとの間に浸入することを抑制できるので、その分、インサート成形時のバリの発生をより確実に抑制できる。
【0101】
以上のように構成された防振装置1の詳細構成について、図13及び図14を参照して説明する。図13及び図14は、防振装置1の部分断面図であり、それぞれ図7(a)及び図7(b)に示す断面に対応する。なお、図13では、防振装置1が車両へ組み付けられた際に第2壁覆設ゴム53に対向配置される相手部品500が図示されている。また、図14では、防振装置1の一部が部分的に拡大図示され、かかる拡大部分では、図面を簡素化するために、ブラケット部材30及び各覆設ゴム51,52の断面線の図示が省略されている。
【0102】
図13及び図14に示すように、防振脚部50の他端側(図13及び図14左側)が基板部61の背面側に加硫接着され、その基板部61の外縁からは、ブラケット部材30へ向けて(即ち、防振脚部50と反対側へ向けて)、一対の第1壁部62が末広がり状に延設されると共に、一対の第2壁部63が平行を保ちつつ延設され、これら第1壁部62及び第2壁部63が周方向に(即ち、基板部61の外縁に沿って)連結されつつ、ブラケット部材30に埋設されている。
【0103】
よって、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両左右方向(矢印L,R方向、図13上下方向)の移動については、一対の第2壁部63とそれら一対の第2壁部63の対向間に内嵌されたブラケット部材30の被内嵌部分との係合により、規制することができる。
【0104】
また、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両上下方向(矢印U,D方向、図14上下方向)の移動については、一対の第1壁部62とそれら一対の第1壁部62の対向間に内嵌されたブラケット部材30の被内嵌部分との係合、及び、一対の第1壁部62とそれら一対の第1壁部62を狭持するブラケット部材30の狭持部分との係合により、規制することができる。
【0105】
更に、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両前後方向(矢印F,B方向、図14左右方向)であって、ブラケット部材30から抜け出る方向(図14右方向)への外側部材60の移動については、一対の第1壁部62とそれら一対の第1壁部62の外面側に突出するブラケット部材30の突出部分(即ち、図14において範囲Lで示す部分)との係合により、規制することができる。
【0106】
このように、外側部材60とブラケット部材30との車両前後方向における係合は、外側部材60の一対の第1壁部62をブラケット部材30に埋設させることで達成する構造であるので、外側部材60を係合するためにブラケット部材30を防振脚部50へ向けて張り出させる必要がなく、従来品のようにアンダーカット形状が形成されることを抑制することができる。よって、ブラケット部材30を成形する樹脂成形金型400の構造の簡素化を図ることができる。
【0107】
また、防振装置1は、ブラケット部材30に対する外側部材60の移動を各方向において規制することができるので、内筒部材40がいずれの方向へ変位しても、外側部材60とブラケット部材30との係合状態を保ち、かかる外側部材60がブラケット部材30から抜け出ることを防止することができる。
【0108】
ここで、外側部材60は、ブラケット部材30に対する移動を各方向において規制可能としつつ、その製造を簡易に行うことができる。即ち、外側部材60は、板状の基板部61の外縁から板状の第1及び第2壁部62,63が一方へ向けて延設される形状(いわゆる容器形状)に形成されているので、1枚の平らな素板にパンチとダイとを用いてプレス加工機により絞り加工を施すことで、簡易に製造することができる。従って、外側部材60の製造コストを低減して、その分、防振装置1全体としての製品コストを低減することができる。
【0109】
この場合、第1壁部62と第2壁部63とは、その端部同士が連結される、即ち、周方向に連続して形成されているので、それら各壁部62,63の曲げ方向(基板部61に対して揺動する方向)の強度を高めることができる。よって、その分、外側部材60の板厚を小さくすることができるので、材料コストの低減を図ることができると共に、軽量化を図ることができる。
【0110】
また、上述した通り、第2壁部63を覆う第2壁覆設ゴム53は、ストッパ面部53bがブラケット部材30の外面から相手部品500側へ突出して形成されているので、かかる第2壁覆設ゴム53のストッパ面部53bを、相手部品500に当接してその変位を規制するストッパ部として利用できる。この場合、第2壁覆設ゴム53には、一対が平行配置される平板状の第2壁部63がストッパ面部53bの近傍に埋設されているので、相手部品500が当接される際の衝撃力を第2壁部63で受け止めて、ブラケット部材30の負担を軽減することができる。これにより、ブラケット部材30が樹脂材料から形成される場合であっても、その耐久性の向上を図ることができる。
【0111】
更に、第2壁部63は、上述したように、その端部が第1壁部62の端部と連結され、曲げ方向の強度が高められているので、相手部品500が当接される際の衝撃力を強固に受け止めることができると共に、外側部材60自体だけでなくブラケット部材30の耐久性も向上させることができる。
【0112】
次いで、図15を参照して、第2及び第3実施の形態について説明する。図15(a)は、第2実施の形態における外側部材2060の断面図であり、図15(b)は、第3実施の形態における外側部材3060の断面図である。なお、図15(a)及び図15(b)は、図3(a)のIVa−IVa線における外側部材の断面図に対応する。
【0113】
第1実施の形態では、外側部材60の第2壁部63に正面視円形の孔63aが穿設される場合を説明したが、第2及び第3実施の形態における外側部材2060,3060の第2壁部2063,3063には、正面視長円形および正面視台形の孔2063a,3063aが穿設されている。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0114】
図15(a)及び図15(b)に示すように、第2壁部2063,3063は、第1実施の形態における第2壁部63に対応し、一対が平行を保ちつつ対向配置される平板状の部位である。第2壁部2063には、正面視長円形の孔2063aが各第2壁部2063に対して1箇所ずつ合計2箇所に穿設される。同様に、第2壁部3063には、正面視台形の孔3063aが各第2壁部3063に対して1箇所ずつ合計2箇所に穿設される。
【0115】
これら各孔2063a,3063aは、図15(a)及び図15(b)に示すように、一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62側(図15(a)及び図15(b)の左側)に偏った位置に配置されている。また、第2壁部2063,3063には、膨出部が外縁から膨出形成されており、この膨出部によって各孔2063a,3063aが取り囲まれている。
【0116】
ここで、一対の第2壁部2063及び一対の第2壁部3063は、孔2063a,3063の配置も含め、それぞれ互いに同じ形状に形成されている。そのため、外側部材2060,3060は、第1実施の形態の場合と同様に、防振装置1(第1成形体100)の左右いずれにも共通に使用することができる。
【0117】
なお、ゴム加硫金型および樹脂成形金型は、ゴム下型ピン、ゴム上型ピン、樹脂下型ピン及び樹脂上型ピンの外形が各孔2063a,3063aに対応する形状(即ち、断面長円形または断面台形)に形成されており、これら各ピンが各孔2063a,3063aに挿入されることで、外側部材2060,3060が所定位置に位置決めされる。
【0118】
また、ゴム下型座部、ゴム上型座部、樹脂下型座部および樹脂下型座部は、各ピンよりも大きな外形であって、かつ、膨出部よりも小さな外形(即ち、第2壁部2063,3063の外面内に収まる形状)に形成され、各ピンとの間に形成された平坦面状の段差面が第2壁部2063,3063の外面に当接して支持する座面とされている。
【0119】
よって、第2及び第3実施の形態においても、第1実施の形態の場合と同様に、外側部材2060,3060をゴム加硫金型へセットする際の作業不良(設置不良)を抑制することができる。また、外側部材2060,3060を下型にセットした状態では、かかる外側部材2060,3060の回転を規制することができるので、上型を下型に型締めする際に、各ゴム上型ピンを各孔2063a,3063aへ確実に挿入させることができる。
【0120】
また、第1実施の形態における場合と同様に、一対の第2壁部2063,3063のそれぞれの各孔2063a,3063aに各ピンがそれぞれ挿通されることで、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力による外側部材2060,3060の変形を抑制することができる。
【0121】
更に、第1実施の形態の場合と同様に、第2壁覆設ゴムの四隅に凹部を形成せずに第1成形体を形成することができるので、樹脂成形工程におけるシール性の確保を容易とすることができる。よって、樹脂成形金型の構造や形状を簡素化して、その製造コストの低減を図ることができる。
【0122】
また、第1実施の形態の場合と同様に、外側部材2060,3060の各孔2063a,3063aを各ピンにより係止する金型構造とすることで、四隅を支持する構造の場合と比較して、外側部材2060,3060のゴム加硫金型に対する位置精度を向上させることができ、内筒部材40や防振脚部50との相対位置精度を向上させることができるので、防振装置の静的および動的な特性の安定化を図ることができる。
【0123】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0124】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記第1実施の形態では、孔63aを一対の第2壁部63の合計4箇所に穿設する場合を説明したが、合計3箇所以下であっても良く、或いは、合計5箇所以上であっても良い。例えば、一対の第2壁部63の一方には2箇所に、他方には1箇所に穿設する構成でも良い。最小の配設個数により、外側部材60のゴム加硫工程における回転および倒れを確実に防止できるからである。第2及び第3実施の形態についても同様であり、各孔2063a,3063aの配設個数は任意に設定することができる。
【0125】
なお、上記各実施の形態のように、一対の第2壁部63,2063,3063のそれぞれに形成する孔63a,2063a,3063aの配設個数を同数とすることで、絞り加工や穴あけ加工を対称に行い得るようにして、その加工精度の向上を図ることができる。
【0126】
上記各実施の形態では、外側部材60,2060,3060を、1枚の平らな素板からプレス加工機を用いた絞り加工によりプレス成形する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の成形方法を採用することは当然可能である。
【0127】
なお、他の成形方法としては、例えば、複数の板材料を溶接固定して成形する方法や直方体の素材から切削可能による削り出しにより成形する方法などが例示される。この場合、外側部材は、上記各実施の形態のように、容器形状である必要はない。例えば、先端へ向かうほど末広がりとなる(即ち、先端へ向かうほど断面積が大きくなる)棒状体の基部を基板部61の正面(防振脚部50が連結される背面の反対側)に固着(例えば、溶接固定)し、かかる棒状体をブラケット部材30に埋設しても良い。これによっても、ブラケット部材30に対する外側部材の各方向への移動を規制して、その抜け出しを防止することができる。
【0128】
また、上記各実施の形態では、対向する一対の第1壁部62の全体が基板部61から離間するに従って末広がり状に延設される(即ち、一対の第1壁部62の全体がその対向間隔を拡大させる)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一対の第1壁部62の少なくとも一部がブラケット部材30に係合可能であれば良い。なお、係合可能とは、第1壁部62がブラケット部材30内から抜き取られる方向へ外側部材60が変位する場合に、第1壁部62の抜き取り方向への移動がブラケット部材30の樹脂材料により規制されることを意味する。従って、例えば、一対の第1壁部62は、基板部61側(図4(a)右側)の部分が互いに平行に形成され、残りの部分(基板部61と反対側の部分、図4(a)左側)のみが末広がり状(対向間隔が漸次大きくなる形状)に形成されていても良い。或いは、一対の第1壁部62は、互いに平行に形成され第2壁部63と同じ高さ位置まで延設される部位と、その部位の延設端(図4(a)左側端)から外方または内方へ向けて折り返されるフランジ状の部位とを有して形成されていても良い。いずれの形状であっても、ブラケット部材30と係合可能になるからである。
【0129】
また、上記各実施の形態では、一対の第1壁部62と一対の第2壁部63との端部同士が連結される(周方向に連続して形成される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら第1壁部62及び第2壁部63の端部同士の一部または全部を連結せずに形成することは当然可能である。
【0130】
上記各実施の形態では、基板部61に貫通孔61aを貫通形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる貫通孔61aの形成を省略しても良い。また、貫通孔61aの形状は、正面視矩形状である必要はなく、円形や楕円形などの曲線形状であっても良く、或いは、三角形や五角形以上の多角形であっても良い。また、その配設個数も任意の個数を設定できる。
【0131】
また、上記各実施の形態では、外側部材60,2060,3060を防振脚部50の他端側に埋設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる外側部材60,2060,3060の埋設を省略しても良い。即ち、ゴム加硫工程において、内筒部材40のみをゴム加硫金型300にセットし、外側部材60を省略した状態で第1成形体100を加硫成形し、次いで、その第1成形体100を樹脂成形金型400にセットしインサート成形することで、防振装置1を製造しても良い。
【0132】
この場合、ゴム下型ピン301bや樹脂下型ピン401bなどの各ピン301b,302b,401b,402b、及び、ゴム下型座部301cや樹脂下型座部401cなどの各座部301c,302c,401c,402cは省略する。この場合であっても、防振脚部50の他端側に窪んで形成される空間S(図10参照)へのブラケット部材30の内嵌および第1壁覆設ゴム652の傾斜によるブラケット部材30への係合(図14参照)により、ブラケット部材30から防振脚部50が抜け出ることを、外側部材60が埋設される場合と同様に、抑制することができる。
【0133】
また、上記各実施の形態では、第1押圧面部402dを設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1押圧面部402dの形成を省略しても良い。即ち、図11及び図12において、第2押圧面部402eとキャビティCの上面(図11及び図12上側面)とを面一に形成しても良い。或いは、キャビティCの上面を第2押圧面部402eと第3押圧面部402gとの間の高さ位置としても良い。
【0134】
同様に、上記各実施の形態では、第3押圧面部402gを設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第3押圧面部402gの形成を省略しても良い。即ち、型締め時に、第3押圧面部402gとストッパ面53bの上面(図11及び図12上側面)との間に隙間を有するように構成しても良い。
【0135】
また、上記各実施の形態では、縦壁402fと段差53cとの間に隙間Tを設ける場合を説明したが(図11及び図12参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる隙間Tを設けず、縦壁402fが段差53cを押圧するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0136】
1 防振装置
30 ブラケット部材
31 内挿孔
40 内筒部材
50 防振脚部
53 第2壁覆設ゴム(突出ゴム部)
53a シール面部
53b ストッパ面部
53c 段差
60,2060,3060 外側部材
100 第1成形体
300 ゴム加硫金型
400 樹脂成形金型
402e 第2押圧面部(押圧面部)
402f 縦壁
R 空間(ストッパ面部が収容される空間)
C キャビティ
T 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生体側または車体側の一方に取着される筒状の内筒部材と、前記内筒部材が内挿配置される内挿孔を有し樹脂材料からなると共に前記振動発生体側または車体側の他方に取着されるブラケット部材と、前記内筒部材の外周面に一端側が連結されると共に他端側が前記ブラケット部材の内挿孔の内周側にインサート成形により連結されゴム状弾性体からなる一対の防振脚部と、を備える防振装置であって、
前記防振脚部は、前記ブラケット部材の内挿孔の内周側にインサート成形された前記他端側の側面に形成されると共に前記ブラケット部材の外面から突出される突出ゴム部を備え、
前記突出ゴム部は、外縁側に位置する平坦面状のシール面部と、前記シール面部に段差を介して連設され前記段差の分だけ前記シール面部よりも突出されるストッパ面部とを備え、
前記防振脚部の他端側は、樹脂成形金型の押圧面部が前記突出ゴム部のシール面部を押圧することで、前記樹脂材料が注入されるキャビティと前記突出ゴム部のストッパ面部が収容される空間とを区画した状態で、前記ブラケット部材の内挿孔の内周側にインサート成形されたものであることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
振動発生体側または車体側の一方に取着される筒状の内筒部材と、前記内筒部材が内挿配置される内挿孔を有し樹脂材料からなると共に前記振動発生体側または車体側の他方に取着されるブラケット部材と、前記内筒部材の外周面に一端側が連結されると共に他端側が前記ブラケット部材の内挿孔の内周側に連結されゴム状弾性体からなる一対の防振脚部と、を備える防振装置を製造する防振装置の製造方法において、
前記内筒部材が設置されたゴム加硫金型のキャビティ内にゴム状弾性体を注入して加硫成形することで、前記一対の防振脚部の一端側が前記内筒部材の外周面に加硫接着された第1成形体を成形するゴム加硫工程と、
前記ゴム加硫工程により成形された第1成形体が設置された樹脂成形金型のキャビティ内に樹脂材料を注入して固化させることで、前記第1成形体の前記防振脚部の他端側を前記ブラケット部材の内挿孔の内周側にインサート成形する樹脂成形工程と、を備え、
前記ゴム加硫工程により成形された第1成形体は、前記ブラケット部材の内挿孔の内周側にインサート成形された前記防振脚部の他端側の側面に形成されると共に前記ブラケット部材の外面から突出される突出ゴム部を備えると共に、前記突出ゴム部は、外縁側に位置する平坦面状のシール面部と、前記シール面部に段差を介して連設され前記段差の分だけ前記シール面部よりも突出されるストッパ面部とを備え、
前記樹脂成形工程で使用される樹脂成形金型は、前記第1成形体の突出ゴム部におけるシール面部を押圧する押圧面部を備え、前記押圧面部が前記シール面部を押圧することで、前記樹脂材料が注入されるキャビティと第1成形体の突出ゴム部におけるストッパ面部が収容される空間とを区画することを特徴とする防振装置の製造方法。
【請求項3】
前記防振装置は、前記防振脚部の他端側に埋設されると共に金属材料から構成され少なくとも一部が前記ブラケット部材に係合される外側部材を備え、
前記ゴム加硫工程は、前記外側部材を前記内筒部材と共に設置したゴム加硫金型のキャビティ内にゴム状弾性体を注入して加硫成形することで、前記一対の防振脚部の一端側を前記内筒部材の外周面に連結すると共に前記一対の防振脚部の他端側に前記外側部材を埋設し、
前記樹脂成形工程は、前記樹脂成形金型の押圧面部が、前記突出ゴム部のシール面部であって、前記外側部材の少なくとも一部に重なる領域を押圧することを特徴とする請求項2記載の防振装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂成形工程で使用される樹脂成形金型は、前記押圧面部に連なる縦壁と、前記第1成形体のシール面部およびストッパ面部の間の段差との間に所定の隙間を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の防振装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−47231(P2012−47231A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188578(P2010−188578)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】