説明

防振装置

【課題】第一取付部材とブラケット部材とのガタツキに伴う異音や第一取付部材の破損を抑制することを目的とする。
【解決手段】振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結されるブラケット部材3と、ブラケット部材3に設けられた被嵌合部30の内側に嵌合されてブラケット部材3を介して振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結される筒状の第一取付部材20A,20B、振動発生体および振動受体のうちの何れか他方に連結される第二取付部材21A,21B、及び、第一取付部材20A,20Bと第二取付部材21A,21Bを弾性的に連結する弾性体22A,22B、を有する防振部材2A,2Bと、を備える防振装置1において、被嵌合部30の内周面と第一取付部材20A,20Bの外周面との間に、被嵌合部30に内装されていると共に第一取付部材20A,20Bに外装されたカラー6が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用機械や建設用機械のキャビンマウントやエンジンマウント等として用いられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防振装置として、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、エンジン(振動発生体)に連結されるエンジン取付けブラケット(ブラケット部材)と、そのエンジン取付けブラケットに保持された防振ゴム(防振部材)と、を備える構成が知られている。上記した防振ゴムは、エンジン取付けブラケットに設けられた被嵌合部の内側に嵌合された外筒(第一取付部材)と、その外筒の平面視内側に配設されていると共に車両(振動受体)にブラケットを介して連結される内筒(第二取付部材)と、外筒及び内筒を弾性的に連結するゴム弾性体(弾性体)と、を備えている。
【0003】
また、従来、例えば下記特許文献2に示されているような、外筒(第一取付部材)の外周面と支持部材(ブラケット部材)の嵌着孔(被嵌合部)の内周面との間に緩衝用のボス回り込み部が介在された防振装置が提案されている。上記したボス回り込み部は、外筒と内筒を弾性的に連結するゴム部(弾性体)と一体に形成されたゴム製の緩衝部であり、外筒の周方向に間欠的に配設されている。詳しく説明すると、このボス回り込み部は、外筒の内周面を被覆するゴム部から外筒の端面に回り込んで外筒の外周面まで伸延されている。これにより、外筒が支持部材に対して相対的に径方向に変位しても、外筒の外周面と嵌着孔の内周面とが直接当接せずにボス回り込み部によって緩衝されるので、異音を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−301196号公報
【特許文献2】特開2006−207705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した前者の従来の防振装置では、防振ゴムの圧縮力によって、外筒のフランジ部と受けブラケットのゴム弾性体との間、或いは、上下一対の防振ゴムの各外筒のフランジ部の間にエンジン取付けブラケットが挟み込まれて外筒とエンジン取付けブラケットとが固定されているだけであり、外筒の外周面とエンジン取付けブラケットの被嵌合部の内周面との間には隙間が形成されている。このため、外筒径方向に大荷重が入力されると、外筒とエンジン取付けブラケットとが径方向に相対変位し、外筒とエンジン取付けブラケットとの間でガタツキが生じる場合がある。この場合、外筒の外周面がエンジン取付けブラケットの被嵌合部の内周面に当接することによって、異音が生じると共に外筒が破損するおそれがある。
【0006】
また、上記した後者の従来の防振装置では、ゴム製のボス回り込み部が磨耗して無くなると、外筒と支持部材との間でガタツキが生じて異音や外筒の破損の問題が生じる。しかしながら、上記したボス回り込み部は、上筒と内筒を連結するゴム部と一体に形成されているため、上記したボス回り込み部だけを交換することはできず、仮にボス回り込み部が磨耗した場合には防振ゴム全体を交換する必要があり、メンテナンス費用が嵩むという問題がある。また、上記したボス回り込み部がゴム部と一体に形成されているため、ボス回り込み部の形状を変更するには、防振ゴムのゴム部のモールド金型の形状を変更する必要があり、支持部材の嵌着孔の形状ごとに専用の防振ゴムを製作する必要がある。つまり、様々な形状の防振ゴムと支持部材との組み合わせを簡単に変更することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、第一取付部材とブラケット部材とのガタツキに伴う異音や第一取付部材の破損を抑制することができ、また、防振部材を交換せずに第一取付部材とブラケット部材との間の緩衝部分(カラー)だけを交換することが可能であり、メンテナンス費用を低く抑えることができ、さらに、防振部材及びブラケット部材の組み合わせを容易に変更することができる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る防振装置は、振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結されるブラケット部材と、該ブラケット部材に設けられた被嵌合部の内側に嵌合されて前記ブラケット部材を介して前記振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結される筒状の第一取付部材、前記振動発生体および振動受体のうちの何れか他方に連結される第二取付部材、及び、前記第一取付部材と前記第二取付部材を弾性的に連結する弾性体、を有する防振部材と、を備える防振装置において、前記被嵌合部の内周面と前記第一取付部材の外周面との間に、前記被嵌合部に内装されていると共に前記第一取付部材に外装されたカラーが介在されていることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、第一取付部材の径方向に大荷重が入力され、第一取付部材とブラケット部材とが径方向に相対変位しても、カラーによってブラケット部材の被嵌合部の内周面と第一取付部材の外周面との間が緩衝される。
また、上記したカラーは、被嵌合部の内側に内装されていると共に第一取付部材に外装されており、ブラケット部材や防振部材と別体の部材であるため、カラーが磨耗したり破損したりしても防振部材を交換することなくカラーだけを交換するだけでよく、また、第一取付部材の外周形状や被嵌合部の内周形状に合わせてカラーの形状を変更することで、様々な形状の第一取付部材及び被嵌合部を嵌め合わせることが可能である。
【0010】
また、本発明に係る防振装置は、前記第一取付部材の軸方向の端面同士を互いに向かい合わせにして配置された一対の前記防振部材と、該一対の防振部材を軸方向両側から挟持する一対の挟持部材と、筒状に形成された前記第二取付部材の内側に挿通されて前記一対の挟持部材を連結する締結部材と、が備えられ、前記一対の防振部材の各第一取付部材に、径方向外側に向けて突出されたフランジ部がそれぞれ設けられ、前記締結部材を締め込んで前記一対の挟持部材を軸方向内側にそれぞれ押し込むことにより、前記フランジ部の間に前記ブラケット部材が挟み込まれて前記一対の防振部材が前記ブラケット部材に保持されていると共に、前記一対の挟持部材を介して前記弾性体が予圧縮されていることが好ましい。
【0011】
これにより、一対の防振部材を備えるサンドイッチ型の防振装置において、カラーによってブラケット部材の被嵌合部の内周面と第一取付部材の外周面との間が緩衝され、また、カラーが磨耗したり破損したりしても防振部材を交換することなくカラーだけを交換するだけでよく、さらに、カラーの形状を変更することで様々な形状の第一取付部材及び被嵌合部を組み合わせることが可能である。
【0012】
また、本発明に係る防振装置は、前記カラーが前記被嵌合部の内側に圧入されていることが好ましい。
これにより、カラーとブラケット部材とのガタツキが抑えられ、径方向大荷重の入力時におけるカラーとブラケット部材の衝突が防止される。また、カラーを被嵌合部の内側に圧入することでブラケット部材とカラーが固定されるので、防振装置の組立作業が容易となる。
【0013】
また、本発明に係る防振装置は、前記第一取付部材が前記カラーの内側に圧入されていることが好ましい。
これにより、第一取付部材とカラーとのガタツキが抑えられ、径方向大荷重の入力時における第一取付部材とカラーの衝突が防止される。また、第一取付部材をカラーの内側に圧入することで第一取付部材とカラーが固定されるので、防振装置の組立作業が容易となる。
【0014】
ところで、従来の防振装置では、防振部材(防振ゴム)の圧縮力によって第一取付部材(外筒)のフランジ部でブラケット部材(エンジン取付けブラケット、支持部材)を挟み込むことで防振部材がブラケット部材に保持されており、第一取付部材がブラケット部材の被嵌合部の内側に緩挿されていただけであるので、防振装置の組み立て作業が煩雑であるという問題がある。例えば、サンドイッチ型の防振装置では、まず、振動受体に連結された下側の挟持部材の上に下側の防振部材を載置する。次に、振動発生体に連結されたブラケット部材を前記した下側の防振部材の上方から設置し、ブラケット部材の被嵌合部の内側に下側の防振部材の第一取付部材を嵌め込ませる。次に、上側の防振部材をブラケット部材の上方から設置し、ブラケット部材の被嵌合部の内側に上側の防振部材の第一取付部材を嵌め込ませる。次に、上側の防振部材の上に上側の挟持部材を載せた後、締結部材を締め込んで上下一対の挟持部材を介して上下の防振部材を圧縮し、上下一対の防振部材の各第一取付部材のフランジ部でブラケット部材を挟み込む。以上により、防振装置の組み立てが完了するが、工数が多くて煩雑である。
【0015】
これに対し、上記したようにカラーが被嵌合部の内側に圧入されていると共に、第一取付部材がカラーの内側に圧入されていると、防振部材をブラケット部材に容易に組み付けることができるので、防振装置を容易に組み立てることが可能である。例えば、サンドイッチ型の防振装置では、まず、振動発生体に連結されたブラケット部材の被嵌合部の内側にカラーを圧入する。次に、前記したカラーの内側に第一取付部材を圧入して、ブラケット部材に一対の防振部材をそれぞれ組み付ける。次に、振動受体に連結された下側の挟持部材の上に一対の防振部材をブラケット部材ごと載置すると共に、上側の防振部材の上に上側の挟持部材を載せ、その後、締結部材を締め込んで上下一対の挟持部材を介して上下の防振部材を圧縮し、上下一対の防振部材の各第一取付部材のフランジ部でブラケット部材を挟み込む。以上により、防振装置の組み立てが完了する。このように、上記した従来の防振装置の場合に比べて防振装置の組立工数が削減される。
【0016】
また、従来の防振装置では、第一取付部材(外筒)の外周面とブラケット部材(エンジン取付けブラケット)の被嵌合部の内周面との間の隙間は極力小さいことが望ましいため、第一取付部材やブラケット部材の被嵌合部に高い加工精度が要求され、製造コストが高くなるという問題がある。
これに対し、カラーが被嵌合部の内側に圧入されていると共に、第一取付部材がカラーの内側に圧入されていると、それらの圧入代があるため、第一取付部材やブラケット部材の被嵌合部の加工精度に多少の誤差が生じても組み立て可能である。したがって、第一取付部材やブラケット部材の被嵌合部について高い加工精度が要求されない。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る防振装置によれば、第一取付部材とブラケット部材との間に介在されたカラーの緩衝作用によって、第一取付部材とブラケット部材とのガタツキに伴う異音の発生や第一取付部材及びブラケット部材の破損を抑制することができる。また、防振部材を交換せずにカラーだけを交換することが可能であるので、メンテナンス費用を低く抑えることができる。さらに、カラーの形状を変更することで様々な形状の第一取付部材及び被嵌合部を嵌め合わせることが可能であるので、防振部材とブラケット部材の組み合わせを容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための防振装置の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための防振装置の組立工程を示した縦断面図である。
【図3】本発明の変形例を説明するための防振装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、図1に示す符号Oは、防振装置1の中心軸線を示しており、軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とし、軸線O回りの方向を「周方向」とする。また、一方の防振部材2A(2B)からみて他方の防振部材2B(2A)に対向する対向面側を軸方向内側とし、その反対側を軸方向外側とする。
【0020】
図1に示すように、防振装置1は、例えばエンジンマウントとして適用されるものであり、建設機械等に搭載された図示せぬエンジン(本発明の振動発生体に相当する。)から入力される振動を減衰吸収して図示せぬ車体(本発明の振動受体に相当する。)への振動伝達を抑制するためのものである。
【0021】
この防振装置1は、いわゆるサンドイッチ型の防振装置であり、同形状の一対の防振部材2A,2Bが、軸線Oの垂直面を対称面にして対称に配置された構成からなる。詳しく説明すると、防振装置1の概略構成としては、図示せぬエンジンに連結されるブラケット部材3と、後述する外筒20A,20B(本発明における第一取付部材に相当する。)の軸方向内側の端面同士を向かい合わせにして同軸に配置されていると共に上記したブラケット部材3にそれぞれ装着された一対の防振部材2A,2Bと、一対の防振部材2A,2Bを軸方向両側から挟持する一対の挟持部材4A,4Bと、後述する内筒21A,21Bの内側に挿通されて一対の挟持部材4A,4Bを連結する締結部材5と、ブラケット部材3の被嵌合部30の内側に外筒20A,20Bを嵌合させるためのカラー6と、を備えている。
【0022】
ここで、防振部材2A(2B)単体の構成について説明する。
防振部材2A(2B)は、ブラケット部材3を介して図示せぬエンジンに連結される外筒20A(20B)と、上記した一対の挟持部材4A,4Bのうちの下側の挟持部材4Bを介して図示せぬ車体に連結された内筒21A(21B)(本発明における第二取付部材に相当する。)と、外筒20A(20B)と内筒21A(21B)を弾性的に連結する弾性体22A(22B)と、から構成されている。
【0023】
外筒20A(20B)は、金属製の円筒形状の筒体であり、上記した軸線Oを中心軸線にして軸方向に延設されている。この外筒20A(20B)の軸方向外側の端部には、径方向外側に向けて突出したフランジ部23A(23B)が設けられている。このフランジ部23A(23B)は、外筒20A(20B)の全周に亘って延設された円環部である。
【0024】
内筒21A(21B)は、平面視において外筒20A(20B)の内側に配置されていると共に軸線Oを共通軸にして外筒20A(20B)と同軸に配置された円筒形状の筒部材であり、外筒20A(20B)よりも全長が長く、外筒20A(20B)の軸方向外側へ突出した状態で配置されている。この内筒21A(21B)の軸方向内側の端面は、防振部材2A(2B)が無負荷状態(図2(b)に示す状態)において、外筒20A(20B)の軸方向内側の端面よりも軸方向外側にあり、一対の防振部材2A,2Bの内筒21A,21Bの軸方向内側の端面同士は離間されており、一対の防振部材2A,2Bが締結部材5によって締め付けられた締結状態(図1に示す状態)において、一対の防振部材2A,2Bの内筒21A,21Bの軸方向内側の端面同士が互いに突き合わして当接されている。
【0025】
弾性体22A(22B)は、外筒20A(20B)と内筒21A(21B)との間に介在されたゴム体であり、外筒20A(20B)の内周面20a及びフランジ部23A(23B)の軸方向外側の外側面23aにそれぞれ加硫接着されているとともに、内筒21A(21B)の外周面21aに加硫接着されている。弾性体22A(22B)は、軸方向外側にいくに従い漸次縮径されたテーパー状の形状を成しており、弾性体22A(22B)の軸方向内側の端面22aは、湾曲状に凹んだ形状になっている。
【0026】
ブラケット部材3は、図示せぬ車体に固定される肉厚プレート状の部材である。このブラケット部材3には、一対の防振部材2A,2Bの外筒20A,20Bがカラー6を介してそれぞれ嵌合された被嵌合部30が形成されている。この被嵌合部30は外筒20A,20Bの外形よりも一回り小さい形状の開口であり、平面視円形状に形成されている。ブラケット部材3の被嵌合部30の周辺部分は、一対の防振部材2A,2Bの上下のフランジ部23A,23B間に配置され、これら上下のフランジ部23A,23Bによって挟み込まれている。
【0027】
カラー6は、ブラケット部材3の被嵌合部30に内装されていると共に一対の防振部材2A,2Bの各外筒20A,20Bに外装された略円筒形状の樹脂製の筒体であり、ブラケット部材3の被嵌合部30の内周面と外筒20A,20Bの外周面との間に介在されている。このカラー6の外径は被嵌合部30の内径と略同径であり、カラー6は被嵌合部30の内側に圧入されている。また、カラー6の内径は外筒20A,20Bの外径と略同径であり、カラー6の内側に一対の防振部材2A,2Bの各外筒20A,20Bがそれぞれ圧入されている。
【0028】
図1に示すように、一対の挟持部材4A,4Bは、一対の防振部材2A,2Bを軸方向両側から挟持するプレート部材であり、一対の防振部材2A,2Bの軸方向外側の端部にそれぞれ取り付けられている。この一対の挟持部材4A,4Bのうちの下側の挟持部材4Bは、図示せぬ車体ブラケットを介して図示せぬ車体に固定されている。また、一対の挟持部材4A,4Bには、内筒21A,21Bの内側に連通されたボルト孔40A,40Bがそれぞれ形成されている。
【0029】
締結部材5は、一対の挟持部材4A,4Bを連結する部材であり、具体的には、ボルト50とナット51とからなる。ボルト50は、一方の挟持部材4Aの軸方向外側から当該挟持部材4Aのボルト孔40A内に挿入され、上下一対の内筒21A,21Bの内側及び他方の挟持部材4Bのボルト孔40Bにそれぞれ挿通され、他方の挟持部材4Bの軸方向外側(図1における下方側)に突出される。そして、他方の挟持部材4Bのボルト孔40Bから突出したボルト50の先端には、ナット51が螺合される。
【0030】
次に、上記した構成の防振装置1の設置方法について説明する。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、図示せぬエンジンに連結されたブラケット部材3の被嵌合部30の内側にカラー6を圧入する。このとき、カラー6の軸方向の端部が被嵌合部30の外側に突出しないように、カラー6の軸方向の位置合わせを行う。具体的には、カラー6の軸方向の端面とブラケット部材3の表面とが略面一になるようにカラー6を被嵌合部30の内側に配設する。
【0032】
次に、図2(b)に示すように、次に、上記したカラー6の内側に外筒20A,20Bを圧入して、ブラケット部材3に一対の防振部材2A,2Bをそれぞれ組み付ける。詳しく説明すると、上側の防振部材2Aの外筒20Aをブラケット部材3の上方からカラー6内に圧入するとともに、下側の防振部材2Bの外筒20Bをブラケット部材3の下方からカラー6内に圧入する。これにより、一対の防振部材2A,2Bの各外筒20A,20Bがカラー6を介してブラケット部材3の被嵌合部30の内側に嵌合され、一対の防振部材2A,2Bがブラケット部材3にそれぞれ保持される。このとき、一対の防振部材2A,2Bの内筒21A,21Bの軸方向内側の端面同士が離間されており、また、一対の防振部材2A,2Bの各外筒20A,20Bのフランジ部23A,23Bがブラケット部材3の表面に当接されている。
【0033】
次に、図1に示すように、図示せぬ車体に連結された下側の挟持部材4Bの上に上記した一対の防振部材2A,2Bをブラケット部材3ごと載置すると共に、上側の防振部材2Aの上に上側の挟持部材4Aを載せ、その後、それら一対の挟持部材4A,4Bを締結部材5で連結すると共に、締結部材5を締め込んで弾性体22A,22Bに予圧縮力を付与し、上下一対の防振部材2A,2Bの各外筒20A,20Bのフランジ部23A,23Bでブラケット部材3を挟み込む。
【0034】
詳しく説明すると、まず、下側の挟持部材4Bの上面に下側の防振部材2Bの下端面(軸方向外側の端面)を載せる。また、上側の防振部材2Aの上端面(軸方向外側の端面)に上側の挟持部材4Aを載せる。このとき、下側の防振部材2Bの内筒21Bの内側と下側の挟持部材4Bのボルト孔40Bとの位置を合わせると共に、上側の防振部材2Aの内筒21Aの内側と上側の挟持部材4Aのボルト孔40Aとの位置を合わせる。
【0035】
続いて、一方の挟持部材4Aのボルト孔40Aからボルト50を挿入し、一対の内筒21A,21B内を挿通させ、ボルト50の先端を、他方の挟持部材4Bのボルト孔40Bから突出させ、突出したボルト50の先端にナット51を螺着させる。そして、ボルト50又はナット51を軸回転させて締結部材5を締め付けていく。締結部材5を締め付けていくと、一対の挟持部材4A,4Bがそれぞれ軸方向内側に押し込まれ、一対の挟持部材4A,4B間の間隔が狭くなり、一対の防振部材2A,2Bが一対の挟持部材4A,4Bにより軸方向両側からそれぞれ押圧される。これにより、一対の内筒21A,21Bが軸方向内側に向けてそれぞれ押し込まれ、一対の内筒21A,21Bの軸方向内側の端面同士が互いに突き合わせられる。
【0036】
また、上述したように締結部材5を締め込んで一対の挟持部材4A,4Bを軸方向内側にそれぞれ押し込むことにより、一対の外筒20A,20Bの各フランジ部23A,23Bの間にブラケット部材3が上下から挟み込まれ、各フランジ部23A,23Bがブラケット部材3にそれぞれ密接される。これにより、ブラケット部材3が上下のフランジ部23A,23B間に挟持され、一対の防振部材2A,2Bがブラケット部材3に保持される。
【0037】
さらに、上述したように締結部材5を締め込んで一対の挟持部材4A,4Bを軸方向内側にそれぞれ押し込むことにより、一対の挟持部材4A,4Bを介して弾性体22A,22Bが軸方向に圧縮され、弾性体22A,22Bが径方向外側に膨らむように弾性変形する。これにより、弾性体22A,22Bに予圧縮力が付与される。
以上により、図示せぬエンジンが防振装置1を介して図示せぬ車体にマウントされる。
【0038】
上記した防振装置1によれば、径方向に大荷重が入力され、一対の防振部材2A,2Bの外筒20A,20Bとブラケット部材3とが径方向に相対変位しても、カラー6によってブラケット部材3の被嵌合部30の内周面と外筒20A,20Bの外周面との間が緩衝される。これにより、外筒20A,20Bとブラケット部材3とのガタツキに伴う異音の発生を抑制することができ、また、上記したガタツキによる外筒20A,20Bやブラケット部材3の破損を抑制することができる。
【0039】
また、上記したカラー6は、被嵌合部30の内側に内装されていると共に外筒20A,20Bに外装されており、ブラケット部材3や防振部材2A,2Bと別体の部材であるため、カラー6が磨耗したり破損したりしても防振部材2A,2Bを交換することなくカラー6だけを交換するだけでよい。これにより、メンテナンス費用を低く抑えることができる。
【0040】
また、外筒20A,20Bの外周形状や被嵌合部30の内周形状に合わせてカラー6の形状を変更することで、様々な形状の外筒20A,20B及び被嵌合部30を嵌め合わせることが可能である。したがって、防振部材2A,2Bとブラケット部材3の組み合わせを容易に変更することができる。
【0041】
また、上記したカラー6が被嵌合部30の内側に圧入されているので、カラー6とブラケット部材3とのガタツキが抑えられ、径方向大荷重の入力時におけるカラー6とブラケット部材3の衝突が防止される。これにより、カラー6とブラケット部材3とのガタツキに伴う異音の発生を確実に抑制することができると共に、そのガタツキによるカラー6やブラケット部材3の破損をより確実に抑制することができる。
また、カラー6を被嵌合部30の内側に圧入することでブラケット部材3とカラー6が固定されるので、防振装置1の組立作業が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
また、外筒20A,20Bがカラー6の内側に圧入されているので、外筒20A,20Bとカラー6とのガタツキが抑えられ、径方向大荷重の入力時における外筒20A,20Bとカラー6の衝突が防止される。これにより、外筒20A,20Bとカラー6とのガタツキに伴う異音の発生を確実に抑制することができると共に、そのガタツキによる外筒20A,20Bやカラー6の破損をより確実に抑制することができる。
また、外筒20A,20Bをカラー6の内側に圧入することで外筒20A,20Bとカラー6が固定されるので、防振装置1の組立作業が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0043】
また、上記した防振装置1では、カラー6が被嵌合部30の内側に圧入されていると共に外筒20A,20Bがカラー6の内側に圧入されているので、締結部材5等を用いることなく、一対の防振部材2A,2Bをブラケット部材3に組み付けることが可能である。これにより、従来の防振装置の組立方法に比べて工数を低減させることができ、防振装置1を容易に組み立てることが可能である。
【0044】
また、上記した防振装置1では、カラー6が被嵌合部30の内側に圧入されていると共に外筒20A,20Bがカラー6の内側に圧入されているので、それらの圧入代によって、外筒20A,20Bやブラケット部材3の被嵌合部30の加工精度に多少の誤差が生じても防振装置1を組み立てることが可能である。したがって、外筒20A,20Bやブラケット部材3の被嵌合部30について高い加工精度が要求されず、製造コストの低減を図ることができる。
【0045】
以上、本発明に係る防振装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明は、図3に示すように、弾性体122A(122B)が、外筒120A(120B)に加硫接着された環状の第一弾性部122aと、内筒21A(21B)に加硫接着されて上記した第一弾性部122aの内側に嵌合された第二弾性部122bと、からなり、防振部材102A(102B)が2つに分割可能な構成であってもよい。
【0046】
また、上記した実施の形態では、外筒20A,20Bの外周面と被嵌合部30の内周面との間に円筒形状の樹脂製のカラー6が介在されているが、本発明は、カラー6の形状は外筒20A,20Bや被嵌合部30の形状に合わせて適宜変更可能である。また、本発明のカラーは、平面視環状の筒体に限定されず、例えば平面視C字形状のカラーであってもよい。さらに、本発明は、樹脂製以外のカラーを用いることも可能である。
【0047】
また、上記した実施の形態では、被嵌合部30の内側にカラー6が圧入され、そのカラー6の内側に外筒20A,20Bが圧入されているが、本発明は、カラー6が被嵌合部30の内側に緩挿されていてもよく、また、外筒20A,20Bがカラー6の内側に緩挿されていてもよい。この場合、被嵌合部30の内周面とカラー6の外周面とを接着剤等で接着してもよく、また、カラー6の内周面と外筒20A,20Bの外周面とを接着剤等で接着してもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、挟持部材4A、4Bがプレート状の部材からなるが、本発明は、プレート状以外の挟持部材であってもよく、例えば、円錐台形状や箱状の挟持部材を用いることも可能である。
また、上記した実施の形態では、外筒20A、20Bの軸方向外側の端部にフランジ部23A、23Bが設けられているが、本発明は、外筒20A、20Bの軸方向の中間部にフランジ部23A、23Bが設けられた構成にすることも可能である。
【0049】
また、上記した実施の形態の防振装置1は、一対の防振部材2A,2Bと、それら一対の防振部材2A,2Bを両側から挟持する一対の挟持部材4A,4Bと、それら一対の挟持部材4A,4Bを連結する締結部材5と、を備えるサンドイッチ型の防振装置であるが、本発明は、サンドイッチ型以外の防振装置にすることも可能である。例えば、防振部材が1つだけ備えられ、その防振部材の第一取付部材(外筒)がブラケット部材の被嵌合部に嵌合された構成の防振装置であってもよい。また、その場合、第二取付部材(内筒)は筒形状以外の形状に形成されていてもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、ブラケット部材3が図示せぬエンジン(振動発生部)に連結され、内筒21A,21Bが一対の挟持部材4A,4Bのうちの下側の挟持部材4Bを介して図示せぬ車体(振動受部)に連結されているが、本発明は、ブラケット部材3が車体(振動受部)に連結され、内筒21A,21Bが挟持部材4Aを介してエンジン(振動発生部)に連結されてもよい。また、本発明は、内筒21A,21Bが一対の挟持部材4A,4Bのうちの上側の挟持部材4Aを介して図示せぬエンジン(振動発生部)や車体(振動受部)に連結されてもよく、或いは、内筒21A,21Bが一対の挟持部材4A,4Bの両方を介して図示せぬエンジン(振動発生部)や車体(振動受部)に連結されてもよい。さらに、本発明は、内筒21A,21Bが挟持部材4A,4Bを介さずに他のブラケット部材を介して図示せぬエンジン(振動発生部)や車体(振動受部)に連結されてもよい。
【0051】
また、本発明に係る防振装置は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に防振装置に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0052】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 防振装置
2A、2B、102A、102B 防振部材
3 ブラケット部材
4A,4B 挟持部材
5 締結部材
6 カラー
20A、20B、120A、120B 外筒(第一取付部材)
21A、21B 内筒(第二取付部材)
22A、22B、122A、122B 弾性体
23A、23B フランジ部
30 被嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結されるブラケット部材と、
該ブラケット部材に設けられた被嵌合部の内側に嵌合されて前記ブラケット部材を介して前記振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結される筒状の第一取付部材、前記振動発生体および振動受体のうちの何れか他方に連結される第二取付部材、及び、前記第一取付部材と前記第二取付部材を弾性的に連結する弾性体、を有する防振部材と、
を備える防振装置において、
前記被嵌合部の内周面と前記第一取付部材の外周面との間に、前記被嵌合部に内装されていると共に前記第一取付部材に外装されたカラーが介在されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置において、
前記第一取付部材の軸方向の端面同士を互いに向かい合わせにして配置された一対の前記防振部材と、該一対の防振部材を軸方向両側から挟持する一対の挟持部材と、筒状に形成された前記第二取付部材の内側に挿通されて前記一対の挟持部材を連結する締結部材と、が備えられ、
前記一対の防振部材の各第一取付部材に、径方向外側に向けて突出されたフランジ部がそれぞれ設けられ、
前記締結部材を締め込んで前記一対の挟持部材を軸方向内側にそれぞれ押し込むことにより、前記フランジ部の間に前記ブラケット部材が挟み込まれて前記一対の防振部材が前記ブラケット部材に保持されていると共に、前記一対の挟持部材を介して前記弾性体が予圧縮されていることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防振装置において、
前記カラーが前記被嵌合部の内側に圧入されていることを特徴とする防振装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の防振装置において、
前記第一取付部材が前記カラーの内側に圧入されていることを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−163366(P2011−163366A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23513(P2010−23513)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】