説明

防振装置

【課題】耐久性を向上させること。
【解決手段】本体ゴム部22の軸O方向の外端部22dの体積は、本体ゴム部22とストッパゴム部27との間に設けられた第1環状空間29aの容積と、本体ゴム部22において軸O方向の内側を向き、内周縁26cが内筒に連結された環状の内端面26と、該内端面26の内周縁26cからストッパ隙間Aの軸O方向の距離Lと同等の距離だけ軸O方向の内側に延在する仮想周面30と、を隔壁に有するとともに、内端面26の外周縁26dよりも径方向の内側に位置する第2環状空間29dの容積と、の和よりも小さい防振装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用機械や建設用機械のキャビンマウントやエンジンマウント等として用いられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の防振装置として、例えば下記特許文献1に示されるような構成が知られている。この防振装置は、軸方向に互いに向き合わされて配置された一対の防振ゴムと、これらの両防振ゴムにより軸方向の両側から挟み込まれるとともに、振動発生体および振動受体のうち、いずれか一方に連結されるブラケット部材と、両防振ゴムを軸方向の両側から挟み込むとともに、振動発生体および振動受体のうち、いずれか他方に連結される一対のプレート部材と、を備えている。
【0003】
両防振ゴムはそれぞれ、ブラケット部材に連結された外筒と、プレート部材に連結された内筒と、これらの外筒および内筒を弾性的に連結する本体ゴム部と、本体ゴム部が径方向の内側に配設された環状のストッパゴム部と、を備えている。また、本体ゴム部の軸方向の外端部は、ストッパゴム部の軸方向の外端縁よりも軸方向の外側に位置するとともに、ストッパゴム部の軸方向の外端縁とプレート部材との間には、軸方向のストッパ隙間が設けられている。
【0004】
この防振装置では、軸力が入力されると、一方の防振ゴム側のプレート部材がストッパゴム部の外端縁に突き当たるまで、一方の防振ゴムにおける本体ゴム部が軸方向に圧縮変形させられる。このとき、本体ゴム部が、内筒の軸方向の移動に追従して変形させられながら、本体ゴム部の外端部が、プレート部材により軸方向の内側に押し込まれることで、本体ゴム部が軸方向に圧縮変形させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−91049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の防振装置では、軸力が入力され、一方の防振ゴムにおける本体ゴム部が圧縮変形させられたときに、この本体ゴム部に過度な変形が生じ、例えば、本体ゴム部において軸方向の内側を向く内端面が軸方向の外側に向けて折り込まれるように本体ゴム部が変形して亀裂が生じたり、変形した本体ゴム部がストッパゴム部とプレート部材との間に挟み込まれて摩耗したりする等のおそれがあり、耐久性を向上させることに改善の余地があった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、耐久性を向上させることができる防振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る防振装置は、軸方向に互いに向き合わされて配置された一対の防振ゴムと、これらの両防振ゴムにより軸方向の両側から挟み込まれるとともに、振動発生体および振動受体のうち、いずれか一方に連結されるブラケット部材と、前記両防振ゴムを軸方向の両側から挟み込むとともに、振動発生体および振動受体のうち、いずれか他方に連結される一対のプレート部材と、を備え、前記両防振ゴムはそれぞれ、前記ブラケット部材に連結された外筒と、前記プレート部材に連結された内筒と、これらの外筒および内筒を弾性的に連結する本体ゴム部と、該本体ゴム部が径方向の内側に配設された環状のストッパゴム部と、を備え、前記本体ゴム部の軸方向の外端部は、前記ストッパゴム部の軸方向の外端縁よりも軸方向の外側に位置するとともに、前記ストッパゴム部の軸方向の外端縁と前記プレート部材との間には、軸方向のストッパ隙間が設けられた防振装置であって、前記本体ゴム部の軸方向の外端部の体積は、前記本体ゴム部と前記ストッパゴム部との間に設けられた第1環状空間の容積と、前記本体ゴム部において軸方向の内側を向き、内周縁が前記内筒に連結された環状の内端面と、該内端面の内周縁から前記ストッパ隙間の軸方向の距離と同等の距離だけ軸方向の内側に延在する仮想周面と、を隔壁に有するとともに、前記内端面の外周縁よりも径方向の内側に位置する第2環状空間の容積と、の和よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
この発明では、軸力が入力されると、一方の防振ゴム側のプレート部材がストッパゴム部の外端縁に突き当たるまで、一方の防振ゴムにおける本体ゴム部が圧縮変形させられる。このとき、本体ゴム部の前記外端部が、プレート部材により軸方向の内側に押し込まれながら、本体ゴム部が、内筒の軸方向の移動に追従して変形させられて、本体ゴム部の内端面の内周縁がストッパ隙間の軸方向の距離と同等の距離だけ軸方向の内側に移動する。ここで、本体ゴム部の前記外端部の体積が、前記第1環状空間の容積と、前記第2環状空間の容積と、の和よりも小さいので、このとき、第1環状空間および第2環状空間を満たすように本体ゴム部を変形させて、これらの両環状空間に、プレート部材により押し込まれた前記外端部に相当する分、本体ゴム部を逃がすことが可能になり、本体ゴム部に過度な変形が生じるのを抑えることができる。これにより、耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、前記本体ゴム部は、前記ストッパゴム部と別体に形成されるとともに前記外筒内に嵌合されていても良い。
【0011】
この場合、本体ゴム部が、ストッパゴム部と別体に形成されるとともに外筒内に嵌合されているので、この防振装置における本体ゴムの形状などを適宜選択し易くすることが可能になり、防振装置の特性を高精度に設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る防振装置によれば、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る防振装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す防振装置の要部の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る防振装置の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す防振装置の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明に係る防振装置の第1実施形態を説明する。
この防振装置は、例えばエンジンマウントとして適用されるものであり、建設機械等に搭載された図示せぬエンジン(振動発生体)から入力される振動を減衰あるいは吸収し、図示せぬ機体(振動受体)への振動伝達が抑えられるようになっている。
【0015】
図1に示すように、防振装置1は、軸O方向に互いに向き合わされて配置された一対の防振ゴム2と、これらの両防振ゴム2により軸O方向の両側から挟み込まれるとともに、図示せぬエンジンおよび機体のうち、いずれか一方に連結されるブラケット部材3と、両防振ゴム2を軸O方向の両側から挟み込むとともに、図示せぬエンジンおよび機体のうち、いずれか他方に連結される一対のプレート部材4と、を備えている。
【0016】
ブラケット部材3は、肉厚プレート状の部材であり、略水平方向に沿って延設されている。ブラケット部材3には、このブラケット部材3を軸O方向に貫通する取付け孔31が形成されている。
防振ゴム2は、前記取付け孔31内に嵌合されてブラケット部材3に連結された外筒20と、外筒20よりも小径に形成され外筒20の内側に配置されるとともにプレート部材4に連結された内筒21と、外筒20と内筒21との間に介在された本体ゴム部22と、該本体ゴム部22が径方向の内側に配設された環状のストッパゴム部27と、を備えている。
【0017】
これらの外筒20、内筒21、本体ゴム部22およびストッパゴム部27はそれぞれ、円筒状に形成されるとともに、共通軸上に配置されている。以下、この共通軸を軸Oといい、軸O方向に直交する方向を径方向という。
ここで一対の防振ゴム2は、軸O方向の内側の端部同士が互いに向き合わされた状態で、軸Oと同軸上に軸O方向に対称に配設されている。以下、一対の防振ゴム2のうちの一方の防振ゴム2において、軸O方向に沿った他方の防振ゴム2側を軸O方向の内側といい、その反対側を軸O方向の外側という。
【0018】
外筒20の軸O方向の内側の端部には、径方向の内側に向けて突出する内フランジ部24が形成されている。内フランジ部24は、外筒20の全周にわたって連続して延在するとともに、径方向に沿って平行に延在している。
また外筒20には、径方向の内側に突出する環状ゴム部25が設けられている。この環状ゴム部25は、外筒20の内周面に加硫接着されるとともに軸Oと同軸に配置され、本体ゴム部22を形成するゴム材料の硬度以上のゴム材料で形成されている。
【0019】
またこの環状ゴム部25は、その軸O方向の内側を向く内端面が、前記内フランジ部24において軸O方向の外側を向く外面に加硫接着されている。さらに、この環状ゴム部25において軸O方向の外側を向く外端面25bのうち、径方向の外側に位置する外側部分25cは、径方向に沿って延在している。またこの外端面25bのうち、前記外側部分25cよりも径方向の内側に位置する内側部分25dは、面取り加工されており、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、軸O方向の外側から内側に向けて傾斜している。
さらに、環状ゴム部25の内径は、前記内フランジ部24の内径よりも小さくなっており、環状ゴム部25の内周面25aは、内フランジ部24の内周縁よりも径方向の内側に位置している。
【0020】
また、外筒20の軸O方向の外側の端部には、径方向の外側に向けて突出する外フランジ部23が形成されている。外フランジ部23は、外筒20の全周にわたって連続して延在している。また図示の例では、外フランジ部23の径方向の内端部には、軸O方向の外側に向けて膨出する膨出部23aが形成されている。
外フランジ部23は、ブラケット部材3の表裏面における取付け孔31の周辺部分に軸O方向の外側から当接しており、これにより、両防振ゴム2の一対の外フランジ部23は、軸O方向の両側からブラケット部材3を挟み込んでいる。
【0021】
ストッパゴム部27は、外フランジ部23から軸O方向の外側に突設されており、本体ゴム部22を径方向の外側から支持する。このストッパゴム部27は、本体ゴム部22とは別体に形成され、本体ゴム部22を形成するゴム材料の硬度以上のゴム材料で形成されている。またストッパゴム部27は、軸Oと同軸に配置され、外フランジ部23において軸O方向の外側を向く外面において前記膨出部23aを含むほぼ全域にわたって加硫接着されている。
【0022】
なお本実施形態では、環状ゴム部25およびストッパゴム部27は同一のゴム材料で一体に形成されている。図示の例では、外筒20の内周面と外フランジ部23との接続部分が、ゴム材料で薄肉の筒状に形成された連結片28で覆われており、この連結片28を介して、環状ゴム部25とストッパゴム部27とが一体に連結されている。なお連結片28は、軸O方向に沿って内側から外側に向かうに従い漸次拡径した筒状に形成されている。
【0023】
内筒21は、外筒20よりも軸O方向に沿った長さが長く、外筒20内にこの外筒20から軸O方向の外側に突出した状態で配置されている。この内筒21と前記環状ゴム部25の内周面25aとの間には、全周にわたって延在する間隙が設けられている。
本体ゴム部22は、内周面が内筒21の外周面に加硫接着され、外周面が外筒20内に離脱可能に嵌合されて、外筒20と内筒21とを弾性的に連結している。
【0024】
本体ゴム部22において、軸O方向の外側部分22aは、軸O方向に沿って外側から内側に向かうに従い漸次、外径が大きくなるとともに、軸O方向の内側部分22bは、軸O方向に沿って外側から内側に向かうに従い漸次、外径が小さくなっており、これらの両部分22a、22bの間に位置する軸O方向の中央部22cで外径が最も大きくなっている。この本体ゴム部22において、軸O方向の中央部22cがストッパゴム部27内に嵌合され、軸O方向の内側部分22bが連結片28内(外筒20内)に嵌合されている。
なお、この本体ゴム部22の前記中央部22cには、ストッパゴム部27の内周面に突設された係合突起27aが、軸O方向の外側から係合している。
【0025】
そして、この本体ゴム部22において軸O方向の内側を向き、内周縁26cが内筒21に連結されるとともに外周縁26dが連結片28を介して外筒20に連結された環状の内端面26のうち、径方向の外側に位置する外側部分26aは、環状ゴム部25の前記外端面25bの前記外側部分25c上に配置されている。また、この内端面26のうち、径方向の内側に位置する内側部分26bは、前記外端面に非接触とされて軸O方向に開放されるとともに、軸O方向の外側に向けて窪んでいる。また内端面26の内周縁26cは、外筒20内に位置している。
【0026】
なお、本体ゴム部22、ストッパゴム部27、環状ゴム部25および連結片28はそれぞれ、NR若しくはNBR等で形成されている。また、本体ゴム部22を形成するゴム材料の硬度は、例えば40°〜75°とされ、ストッパゴム部27、環状ゴム部25および連結片28を形成するゴム材料の硬度(例えば70°〜80°)よりも低くなっている。さらに本実施形態では、本体ゴム部22は、ストッパゴム部27、環状ゴム部25および連結片28を形成するゴム材料よりも動倍率が低いゴム材料で形成されている。また、ストッパゴム部27、環状ゴム部25および連結片28は、本体ゴム部22を形成するゴム材料よりも損失正接が高いゴム材料で形成されている。
【0027】
一対のプレート部材4は、一対の防振ゴム2を軸O方向の両側から挟む板材であり、一対の防振ゴム2の軸O方向の外側の端部にそれぞれ取り付けられ、内筒21の軸O方向の外側の端面に当接している。一対のプレート部材4のうちの少なくとも一方は、図示せぬエンジンおよび機体のうちのいずれか他方に固定されている。また、一対のプレート部材4には、内筒21内に開口するボルト孔40がそれぞれ形成されている。
【0028】
この一対のプレート部材4は、両防振ゴム2の一対の内筒21内に挿通された締結部材5により軸O方向の内側に押し込まれることで、該両防振ゴム2を軸O方向の両側から挟み込んでいる。締結部材5は、ボルト50とナット51とを備えている。ボルト50は、一方のプレート部材4の軸O方向の外側から当該プレート部材4のボルト孔40内に挿入され、上下一対の内筒21内および他方のプレート部材4のボルト孔40にそれぞれ挿通され、他方のプレート部材4から軸O方向の外側に突出している。そして、ボルト50において他方のプレート部材4のボルト孔40から突出した先端部に、ナット51が螺合されて締め付けられている。
【0029】
ここで本実施形態では、一対のプレート部材4が、前述のように両防振ゴム2を軸O方向の両側から挟み込む前の状態では、各防振ゴム2の内筒21の軸O方向の内側の端縁は、外筒20の軸O方向の内側の端縁よりも軸O方向の外側に位置している。そして、一対のプレート部材4が、両防振ゴム2を軸O方向の両側から挟み込むことで、内筒21が軸O方向の内側に押し出され、内筒21の軸O方向の内側の端縁が、外筒20の軸O方向の内側の端縁よりも軸O方向の内側に位置し、一対の防振ゴム2それぞれの内筒21における軸O方向の内側の端縁同士が互いに突き合わされている。
【0030】
またこのように、一対のプレート部材4が、両防振ゴム2を軸O方向の両側から挟み込むことで、本体ゴム部22が軸O方向の内側に圧縮変形させられるとともに、前記外フランジ部23が、ブラケット部材3に軸O方向の外側から密接させられる。なおこのとき、本体ゴム部22は、外筒20およびストッパゴム部27により径方向の外側に向けた膨出変形が規制されるため、本体ゴム部22は径方向にも圧縮変形させられることとなる。
【0031】
そしてこの防振装置1では、本体ゴム部22の軸O方向の外端部22dは、ストッパゴム部27の外端縁27bよりも軸O方向の外側に位置するとともに、ストッパゴム部27の軸O方向の外端縁27bとプレート部材4との間には、軸O方向のストッパ隙間Aが設けられている。ストッパゴム部27の外端縁27bは、径方向に沿って延在する平面状となっている。
【0032】
また、本体ゴム部22とストッパゴム部27との間には、第1環状空間29aが設けられている。第1環状空間29aは、本体ゴム部22の前記外側部分22aと、ストッパゴム部27と、の間に設けられており、軸O方向の外側に向けて開口するとともに全周にわたって連続して延在している。この第1環状空間29aは、軸O方向の外側から内側に向かうに従い漸次、径方向の大きさが小さくなっている。
【0033】
また、本体ゴム部22の前記外端部22dと内筒21との間には、軸O方向の外側に向けて開口するとともに全周にわたって連続して延在する環状溝29bが形成されている。この環状溝29bを画成する面のうち、本体ゴム部22の前記外端部22dからなる部分は、軸O方向の外側から内側に向かうに従い漸次、径方向の外側から内側に向けて傾斜している。
【0034】
さらに、防振ゴム2における軸O方向の内側の端部には、軸O方向の内側に向けて開口する環状間隙29cが設けられている。この環状間隙29cは、隔壁として、内筒21の外周面と、本体ゴム部22の前記内端面26における前記内側部分26bと、環状ゴム部25の前記外端面25bにおける前記内側部分25dと、環状ゴム部25の内周面25aと、を有している。
【0035】
そして本実施形態では、本体ゴム部22の前記外端部22dの体積は、図2に示すように、本体ゴム部22の内端面26と、該内端面26の内周縁26cから前記距離Lと同等の距離だけ軸O方向の内側に延在する仮想周面30と、を隔壁に有するとともに、仮想周面30の軸O方向の内端縁30aよりも軸O方向の外側に位置し、かつ内端面26の外周縁26dよりも径方向の内側に位置する第2環状空間29dの容積と、第1環状空間29aの容積と、の和よりも小さくなっている。
【0036】
前記仮想周面30は、内筒21の外周面上に位置するとともに、仮想周面30の軸O方向の内端縁30aは、外筒20内、図示の例では、環状ゴム部25内に位置しており、第2環状空間29dは、環状間隙29cのうち、仮想周面30の軸O方向の内端縁30aよりも軸O方向の外側に位置する部分となっている。また、第2環状空間29dの開口面29eは、仮想周面30の軸O方向の内端縁30aから径方向の外側に径方向に沿って延在し、この開口面29eの外周縁は、環状ゴム部25の前記外端面25bにおける前記内側部分25d上に位置している。
【0037】
次に、以上のように構成された防振装置1に軸力が入力され、一方の防振ゴム2における本体ゴム部22が圧縮変形したときの作用について説明する。
このとき、本体ゴム部22の前記外端部22dが、プレート部材4により軸O方向の内側に押し込まれる。ここで本実施形態では、前記環状溝29bを画成する面のうち、本体ゴム部22の前記外端部22dからなる部分が、軸O方向の外側から内側に向かうに従い漸次、径方向の外側から内側に向けて傾斜しているので、環状溝29b内に倒れ込むのを抑えることが可能になり、防振装置1のクリープ性を良好なものとすることができる。
【0038】
またこのとき、本体ゴム部22が、内筒21の軸O方向の移動に追従して変形させられて、本体ゴム部22の内端面26の内周縁26cがストッパ隙間Aの軸O方向の距離Lと同等の距離だけ軸O方向の内側に移動する。ここで本実施形態では、本体ゴム部22の前記外端部22dの体積が、前記第1環状空間29aの容積と、前記第2環状空間29dの容積と、の和よりも小さいので、このとき、第1環状空間29aおよび第2環状空間29dを満たすように本体ゴム部22を変形させて、これらの両環状空間29a、29dに、プレート部材4により押し込まれた前記外端部22dに相当する分、本体ゴム部22を逃がすことができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置1によれば、本体ゴム部22の前記外端部22dの体積が、前記第1環状空間29aの容積と、前記第2環状空間29dの容積と、の和よりも小さいので、この防振装置1に軸力が入力され、一方の防振ゴム2における本体ゴム部22が圧縮変形させられたときに、第1環状空間29aおよび第2環状空間29dを満たすように本体ゴム部22を変形させて、これらの両環状空間29a、29dに、プレート部材4により押し込まれた前記外端部22dに相当する分、本体ゴム部22を逃がすことが可能になり、本体ゴム部22に過度な変形が生じるのを抑えることができる。これにより、耐久性を向上させることができる。
【0040】
さらに、本体ゴム部22が、ストッパゴム部27と別体に形成されるとともに外筒20内に嵌合されているので、この防振装置1における本体ゴム部22の形状などを適宜選択し易くすることが可能になり、防振装置1の特性を高精度に設定することができる。
またこのように、この防振装置1における本体ゴム部22の形状などを適宜選択し易くすることができるので、本体ゴム部22の前記外端部22dの体積および第1環状空間29aの容積を多様に設定することができる。これにより、本体ゴム部22の前記外端部22dの体積と、両環状空間29a、29dの各容積の和と、を調整し易くすることが可能になり、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0041】
なお本実施形態では、環状ゴム部25の前記外端面25bの前記内側部分25dが、面取り加工されているものとしたが、面取り加工されていなくても良い。また、内フランジ部24の内周縁部を環状ゴム部25の内周縁部で覆ってもよい。
また本実施形態では、内フランジ部24および連結片28を有するものとしたが、これらを有しない防振装置1を採用してもよい。さらに、外フランジ部23に膨出部23aを形成しなくてもよい。
【0042】
また本実施形態では、本体ゴム部22は、ストッパゴム部27、環状ゴム部25および連結片28を形成するゴム材料よりも動倍率が低いゴム材料で形成されているものとしたが、これに限られない。さらに、ストッパゴム部27、環状ゴム部25および連結片28は、本体ゴム部22を形成するゴム材料よりも損失正接が高いゴム材料で形成されているものとしたが、これに限られない。
【0043】
また、仮想周面30の軸O方向の内端縁30aの軸O方向位置が、環状ゴム部25の内周面25aにおける軸O方向の内側の端縁と一致し、第2環状空間29dが環状間隙29cと一致しても良い。この場合、第2環状空間29dが環状間隙29cと一致しているので、環状間隙29cの容積を算出することで第2環状空間29dの容積を高精度に算出することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の防振装置を説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0045】
図3に示すように、この防振装置60では、本体ゴム部22とストッパゴム部27とは一体に形成されており、図示の例では、本体ゴム部22のうち、軸O方向の内側部分22bが、外筒20の内周面に加硫接着されるとともに、軸O方向の中央部22cが、ストッパゴム部27の内周面に一体に連結されている。
また、本体ゴム部22の前記内端面26は、軸O方向の外側に窪む凹曲面状に形成されている。本体ゴム部22の前記内端面26の外周縁26dは、この内端面26の内周縁26cよりも軸O方向の内側に位置している。
【0046】
また前記環状間隙29cは、内筒21と外筒20との間に設けられており、隔壁として、本体ゴム部22の前記内端面26と、内筒21の外周面と、外筒20の内周面と、を有している。
また図4に示すように、第2環状空間29dの開口面29eは、仮想周面30の内端縁30aから径方向の外側に径方向に傾斜して延在しており、この開口面29eの外周縁は、本体ゴム部22の前記内端面26の外周縁26dと一致している。第2環状空間29dは、環状間隙29cのうち、前記開口面29eよりも軸O方向の外側に位置する部分となっている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置60によれば、前記第1実施形態の防振装置1と同様の作用効果を奏功させることができる。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、環状溝29bを有しない防振装置1、60を採用してもよい。
また前記実施形態では、ストッパゴム部27は、外フランジ部23から軸O方向の外側に突設されているものとしたが、これに限られるものではなく、また、外フランジ部23はなくても良い。
【0049】
また前記実施形態では、仮想周面30が内筒21の外周面上に位置しているものとしたが、これに限られない。
さらに前記実施形態では、本体ゴム部22の前記内端面26の内周縁26cが、外筒20内に位置しているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、外筒20よりも軸O方向の内側や外側に位置していても良い。
さらにまた、前記実施形態では、仮想周面30の内端縁30aが、外筒20内に位置しているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、外筒20よりも軸O方向の内側や外側に位置していても良い。
【0050】
また前記実施形態では、一対の防振ゴム2として、同一の構成の防振ゴム2を組み合わせているが、本発明は、一対の防振ゴム2として、異なる構成の防振ゴム2を組み合わせてもよい。例えば、外筒20や内筒21や本体ゴム部22等の形状や素材が異なる防振ゴム2を組み合わせてもよい。
【0051】
また、本発明に係る防振装置1、60は、エンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0052】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、60 防振装置
2 防振ゴム
3 ブラケット部材
4 プレート部材
20 外筒
21 内筒
22 本体ゴム部
22d 外端部
26 内端面
26c 内周縁
26d 外周縁
27 ストッパゴム部
27b 外端縁
29a 第1環状空間
29d 第2環状空間
30 仮想周面
A ストッパ隙間
L 距離
O 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に互いに向き合わされて配置された一対の防振ゴムと、
これらの両防振ゴムにより軸方向の両側から挟み込まれるとともに、振動発生体および振動受体のうち、いずれか一方に連結されるブラケット部材と、
前記両防振ゴムを軸方向の両側から挟み込むとともに、振動発生体および振動受体のうち、いずれか他方に連結される一対のプレート部材と、を備え、
前記両防振ゴムはそれぞれ、前記ブラケット部材に連結された外筒と、前記プレート部材に連結された内筒と、これらの外筒および内筒を弾性的に連結する本体ゴム部と、該本体ゴム部が径方向の内側に配設された環状のストッパゴム部と、を備え、
前記本体ゴム部の軸方向の外端部は、前記ストッパゴム部の軸方向の外端縁よりも軸方向の外側に位置するとともに、前記ストッパゴム部の軸方向の外端縁と前記プレート部材との間には、軸方向のストッパ隙間が設けられた防振装置であって、
前記本体ゴム部の軸方向の外端部の体積は、
前記本体ゴム部と前記ストッパゴム部との間に設けられた第1環状空間の容積と、
前記本体ゴム部において軸方向の内側を向き、内周縁が前記内筒に連結された環状の内端面と、該内端面の内周縁から前記ストッパ隙間の軸方向の距離と同等の距離だけ軸方向の内側に延在する仮想周面と、を隔壁に有するとともに、前記内端面の外周縁よりも径方向の内側に位置する第2環状空間の容積と、の和よりも小さいことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1記載の防振装置であって、
前記本体ゴム部は、前記ストッパゴム部と別体に形成されるとともに前記外筒内に嵌合されていることを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87871(P2012−87871A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234890(P2010−234890)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】