説明

防振連結ロッド

【課題】組み立て作業性に優れ製造不良が発生しにくい防振連結ロッドを提供することを目的とする。
【解決手段】第1筒部12aと第2筒部14aとを備えたロッド本体と、第1筒部12aに設けられた第1防振ブッシュ18と、第2筒部14a内に設けられた第2防振ブッシュ20とを備え、ロッド本体が、第1金属板34と、第1金属板34に重ね合わせられた第2金属板36とをかしめ固定してなる防振連結ロッド10において、ロッド本体が、第1金属板34と第2金属板36とを連通する貫通孔60を複数備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンを車体に対して防振しながら連結するトルクロッド等として用いることのできる防振連結ロッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体と振動発生源であるエンジンとの間には、エンジンのロール方向の動きや振動を抑制するためにトルクロッドと称される防振連結ロッドが設けられている。
【0003】
かかる防振連結ロッドとして、例えば、長手方向の一端部に設けられた第1筒部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒部と、第1筒部と第2筒部とを連結するロッド本体と、第1内筒と第1ゴム状弾性部とを備えて第1筒部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と第2ゴム状弾性部とを備えて第2筒部内に設けられた第2防振ブッシュとを備え、第1内筒及び第2内筒を取付部材としてエンジンや車体に取り付けられるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
このような防振連結ロッドの中には、第1防振ブッシュ及び第2防振ブッシュを挟み込むように2枚の金属板を重ね合わせ、一方の金属板に設けられたかしめ部が他方の金属板の周縁部を挟持するようにかしめ固定することで組み立てられる場合があるが、このような場合、かしめ工程時に一方の金属板が引っ張られ位置ずれを起こして第1防振ブッシュ18及び第2防振ブッシュ20を所望の位置で挟持できず、製造不良が発生しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−29432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、組み立て作業性に優れ製造不良が発生しにくい防振連結ロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る防振連結ロッドは、長手方向の一端部に設けられた第1筒部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒部と、前記第1筒部と前記第2筒部とを連結するロッド本体と、第1内筒と前記第1内筒の外周部を覆う第1ゴム状弾性部とを備えて前記第1筒部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と前記第2内筒の外周部を覆う第2ゴム状弾性部とを備えて前記第2筒部内に設けられた第2防振ブッシュとを備え、前記ロッド本体が、第1金属板と、前記第1金属板に重ね合わせられた第2金属板とをかしめ固定してなる防振連結ロッドにおいて、前記ロッド本体が、前記第1金属板と前記第2金属板とを貫通する貫通孔を複数備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る防振連結ロッドでは、ロッド本体が、前記第1金属板と前記第2金属板とを貫通する貫通孔を複数備えるため、前記貫通孔に位置決めピンを挿通することで第1金属板と第2金属板とをかしめ固定する際に生じる2枚の金属板の位置ずれを抑えて第1防振ブッシュ18及び第2防振ブッシュ20を所望の位置で挟持することができ、防振連結ロッドの組み立て作業が容易となる。
【0009】
上記の本発明において前記第1金属板と前記第2金属板とが、前記第1ゴム状弾性部と前記第2ゴム状弾性部とを挟持してもよく、このような場合、前記第1ゴム状弾性部と前記第2ゴム状弾性部があるために2枚の金属板の位置ずれが起こりやすいが、前記第1金属板と前記第2金属板とを貫通する貫通孔を複数備えるため、2枚の金属板に生じる位置ずれを抑えることができ、防振連結ロッドの組み立て作業が容易となる。
【0010】
また、本発明においてロッド本体は、前記貫通孔を2つ備え、2つの前記貫通孔が、前記第1内筒と前記第2内筒とを結ぶ直線を対称軸とする線対称位置に設けられてもよく、このような場合、2枚の金属板に穿設する貫通孔の個数を抑えつつ2枚の金属板の位置ずれを防止するとともに、第1金属板と第2金属板とを同一形状に設けることができ、防振連結ロッドを構成する部品の共通化を図り安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、2枚の金属板をかしめ固定してなるロッド本体を備えた防振連結ロッドを組み立て作業容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る防振連結ロッドの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る防振連結ロッドの分解斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る防振連結ロッドの組み立て方法を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の防振連結ロッド10は、自動車の車体と振動発生源であるエンジンとの間に組付けられて、エンジンのロール方向の動きや振動を抑制するトルクロッドである。
【0015】
この防振連結ロッド10は、図1及び図2に示すように、第1筒部12と第2筒部14とを備えたロッド本体16と、第1内部12に設けられた第1防振ブッシュ18と、第2筒部14内に設けられた第2防振ブッシュ20とからなる。
【0016】
第1防振ブッシュ18は、第1筒部12内に軸平行に配された第1内筒22と、第1内筒22の外周面を覆い第1内筒22と第1筒部12の間に介設された第1ゴム状弾性部24とから構成される。
【0017】
第1内筒22は、鉄、鋼やアルミニウムなどの金属製の円筒状の部材であり、車体とエンジンのいずれか一方、例えば車体側に連結される。第1ゴム状弾性部24は、第1内筒22の外周面に一体に加硫接着されたもので、第1内筒22の外周面における互いに対向する位置から径方向外方に突出する一対の凸部26を備える。
【0018】
第2防振ブッシュ20は、円筒状に設けられた第2筒部14内に軸平行かつ同軸状に配された第2内筒28と、第2内筒28の外周面を覆い第2内筒28と第2筒部14の間に介設された第2ゴム状弾性部30とから構成される。
【0019】
第2内筒28は、第1内筒22と同様、鉄、鋼やアルミニウムなどの金属製の円筒状の部材であり、車体とエンジンのいずれか一方、例えばエンジン側に連結される。第2ゴム状弾性部30は、第2内筒28の外周面に一体に加硫接着されたもので、第2内筒28の軸方向の中央部に径方向外方へ膨出する環状の膨出部32を備える。
【0020】
ロッド本体16は、長手方向Lの一端部に第1防振ブッシュ18を保持する第1筒部12と、他端部に第2防振ブッシュ20を保持する第2筒部14と、第1筒部12及び第2筒部14を連結する連結部15とを備え、互いに同一形状をなした第1金属板34と第2金属板36とを重ね合わせることで形成されている。
【0021】
詳細には、図2及び図3に示すように、第1筒部12は、開口部が角を丸めた矩形状をなした筒形状に設けられており、その内周面に外方へ陥没する一対の第1ゴム収容部38が設けられている。この一対の第1ゴム収容部38は、第1防振ブッシュ18の第1ゴム状弾性部24に設けられた凸部26が予圧縮された状態で嵌り込み第1防振ブッシュ18を保持する凹形状をなしており、第1筒部12に設けられた第1防振ブッシュ18の第1内筒22の軸心O1と、第2筒部14に設けられた第2防振ブッシュ20の第2内筒28の軸心O2とを結ぶ直線(以下、中心線という)Cを対称軸とする線対称位置、言い換えれば、中心線C及び第1筒部12の軸方向に対して垂直な方向Wに対向配置されている。
【0022】
第2筒部14は、円筒状に設けられており、その内周面に外方へ陥没する環状の第2ゴム収容部40が設けられている。第2ゴム収容部40は、第2防振ブッシュ20の第2ゴム状弾性部30に設けられた環状の膨出部32が嵌り込み、第2防振ブッシュ20を保持する。
【0023】
図1及び図4に示すように、第1筒部12と第2筒部14とを連結する連結部15には、第1金属板34及び第2金属板36を貫通する貫通孔60が複数(本実施形態では2つ)設けられている。2つの貫通孔60は、中心線Cを対称軸とする線対称位置に、つまり、2つの貫通孔60を結ぶ直線が中心線Cに直交し、かつ、中心線Cまでの距離が等しい位置に設けられている。
【0024】
ロッド本体16を構成する第1金属板34は、図2〜図4に示すように、金属板を所定形状にプレス成形したものであり、その長手方向Lの一端部に角を丸めた矩形状の第1矩形孔部42が、他端部に円形状の第1円孔部46がそれぞれ穿設されるとともに、第1矩形孔部42と第1円孔部46との間に2つの貫通孔60aが穿設されている。
【0025】
第1矩形孔部42の周縁部にはロッド本体16の外方(つまり、第1金属板34に重ね合わせた第2金属板36から離れる方向)へ立ち上がる第1筒部分12aが形成されている。第1筒部分12aには、第1筒部分12aの外方に陥没するとともに第2金属板36との合わせ面へ開口する第1ゴム収容部分38aが設けられている。
【0026】
第1円孔部46の周縁部には、ロッド本体16の外方へ立ち上がる第2筒部分14aが形成されている。第2筒部分14aには、第1円孔部46の周縁部から先端側に行くほど径方向内方に傾斜するテーパ状の第2ゴム収容部分40aが設けられている。
【0027】
また、第2金属板36は、金属板を第1金属板34と同一形状にプレス成形したものであり、具体的には、その長手方向Lの一端部に角を丸めた矩形状の第2矩形孔部44が、他端部に円形状の第2円孔部48がそれぞれ穿設されるとともに、第2矩形孔部44と第2円孔部48との間に2つの貫通孔60bが穿設されている。
【0028】
第2矩形孔部44の周縁部にはロッド本体16の外方(つまり、第2金属板36に重ね合わせた第1金属板34から離れる方向)へ立ち上がる第1筒部分12bが形成されている。第1筒部分12bには、第1筒部分12aの外方に陥没するとともに第1金属板34との合わせ面へ開口する第1ゴム収容部分38bが設けられている。
【0029】
第2円孔部48の周縁部には、ロッド本体16の外方へ立ち上がる第2筒部分14bが形成されている。第2筒部分14bには、第2円孔部48の周縁部から先端側に行くほど径方向内方に傾斜するテーパ状の第2ゴム収容部分40bが設けられている。
【0030】
そして、第1金属板34と、第1金属板34に対して中心線Cを回転対称軸として表裏反転させて配置した第2金属板36とを重ね合わせることで、第1ゴム収容部分38aと第1ゴム収容部分38bを連結してなる第1ゴム収容部38を備えた第1筒部12が第1筒部分12a及び第1筒部分12bから形成されるとともに、第2ゴム収容部分40aと第2ゴム収容部分40bを連結してなる第2ゴム収容部40を備えた第2筒部14が第2筒部分14a及び第2筒部分14bから形成される。このように重ね合わせた2枚の金属板34,36は、第1金属板34に設けられた複数(本実施形態では4つ)の第1かしめ部50と、第2金属板36に設けられた複数(本実施形態では4つ)の第2かしめ部52によってかしめ固定され、ロッド本体16を形成する。
【0031】
以上のような構成の防振連結ロッド10を組み立てるには、まず、図5に示すように、第1金属板34及び第2金属板36のいずれか一方(例えば、ここでは第2金属板36)に設けられた2つの貫通孔60bに位置決めピン62をそれぞれ挿通する。この位置決めピン62は、貫通孔60a及び貫通孔60bに隙間なく嵌る寸法に設けられており、第2金属板36の位置ずれを防止する。
【0032】
次いで、位置決めピン62に挿通された第2金属板36の第1ゴム収容部分38bに第1防振ブッシュ18の凸部26を配設するとともに、第2ゴム収容部分40bに第2防振ブッシュ20の膨出部32を配設する。なお、特に図示しないが、第2金属板36を載置する載置台には、上記した位置決めピン62以外にも、第2金属板36の第1筒部分12b及び第2筒部分14bの内方の所定位置に挿通されるロッドが突出しており、第1筒部分12bの内方に配されたロッドに第1内筒22を挿通しながら第1防振ブッシュ18の凸部26を第1ゴム収容部分38bに配設するとともに、第2筒部分14bの内方に配されたロッドに第2内筒28を挿通しながら第2防振ブッシュ18の膨出部32を第2ゴム収容部分40bに配設する。
【0033】
次に、第2の金属板36に対して中心線Cを回転対称軸として表裏反転させた第1金属板34を第2金属板36に重ね合わせる。第1金属板34を第2金属板36に重ね合わせる際に、位置決めピン62を第1金属板34に設けられた貫通孔60aに挿通しながら第1金属板34に設けられた第1ゴム収容部分38aに第1防振ブッシュ18の凸部26を嵌め込み、第2ゴム収容部分40bに第2防振ブッシュ20の膨出部32を嵌め込む。これにより、第1金属板34及び第2金属板36は、位置決めピン62により位置ずれが防止された状態で第1防振ブッシュ18及び第2防振ブッシュ20を挟持する。
【0034】
次に、第2金属板36の周縁部を挟持するように第1金属板34に設けられた複数の第1かしめ部50を折り曲げる第1のかしめ工程を行い、第1金属板34と第2金属板36とをかしめ固定する。
【0035】
そして、第1金属板34の周縁部を挟持するように第2金属板36に設けられた複数の第2かしめ部52を折り曲げる第2のかしめ工程を行い、第1金属板34と第2金属板36とを更にかしめ固定した後、ロッド本体16に設けられた貫通孔60に挿通された位置決めピン62と、第1内筒22及び第2内筒28に挿通された不図示のロッドとを抜き取り、防振連結ロッド10の組み立てを完了する。
【0036】
以上のように本実施形態では、ロッド本体16に第1金属板34及び第2金属板36を貫通する貫通孔60が設けられているため、この貫通孔60に隙間なく嵌る位置決めピン62を挿通することにより、第1金属板34及び第2金属板36の位置ずれを防止した状態で、第1防振ブッシュ18及び第2防振ブッシュ20を挟持しつつ第1金属板34及び第2金属板36をかしめ固定することができる。そのため、第1金属板34及び第2金属板36をかしめ固定する際に2枚の金属板34,36が位置ずれを起こすことがなく、防振連結ロッドの組み立て作業が容易となる。
【0037】
また、本実施形態の防振連結ロッド10では、2つの貫通孔60が中心線Cを対称軸とする線対称位置に設けられているため、第1金属板34と第2金属板36とを同一形状に設けた場合であっても、第2の金属板36に対して中心線Cを回転対称軸として表裏反転させた第1金属板34を第2金属板36に重ね合わせると、第1金属板34に設けられた貫通孔60aと第2金属板36に設けられた貫通孔60bとが上下に重なり連通する。そのため、第1金属板34と第2金属板36とを同一形状に設けて部品の共通化を図り防振連結ロッドを安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…防振連結ロッド
12…第1筒部
14…第2筒部
15…連結部
16…ロッド本体
18…第1防振ブッシュ
20…第2防振ブッシュ
22…第1内筒
24…第1ゴム状弾性部
26…凸部
28…第2内筒
30…第2ゴム状弾性部
32…膨出部
34…第1金属板
36…第2金属板
38…第1ゴム収容部
40…第2ゴム収容部
50…第1かしめ部
52…第2かしめ部
60…貫通孔
C…中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部に設けられた第1筒部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒部と、前記第1筒部と前記第2筒部とを連結するロッド本体と、第1内筒と前記第1内筒の外周部を覆う第1ゴム状弾性部とを備えて前記第1筒部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と前記第2内筒の外周部を覆う第2ゴム状弾性部とを備えて前記第2筒部内に設けられた第2防振ブッシュとを備え、前記ロッド本体が、第1金属板と、前記第1金属板に重ね合わせられた第2金属板とをかしめ固定してなる防振連結ロッドにおいて、
前記ロッド本体が、前記第1金属板と前記第2金属板とを貫通する貫通孔を複数備えることを特徴とする防振連結ロッド。
【請求項2】
前記第1金属板と前記第2金属板とが、前記第1ゴム状弾性部と前記第2ゴム状弾性部とを挟持したことを特徴とする請求項1に記載の防振連結ロッド。
【請求項3】
前記ロッド本体は、前記貫通孔を2つ備え、
2つの前記貫通孔が、前記第1内筒と前記第2内筒とを結ぶ直線を対称軸とする線対称位置に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の防振連結ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−189140(P2012−189140A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53180(P2011−53180)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】