説明

防曇処理塗布液および防曇性物品

【課題】耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性、付着性および防曇回復性の良好な防曇性塗膜を与える防曇処理塗布液を提供すること。
【解決手段】上記塗布液は、側鎖に水酸基を有するエチレン性モノマーに由来する繰返し単位からなるホモポリマーまたはこの繰り返し単位とともに側鎖にエポキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基またはアミド基もしくはアミノ基をそれぞれ有するエチレン性モノマーのいずれかに由来する繰返し単位からなるコポリマーを樹脂成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇処理塗布液および防曇性物品に関する。さらに詳しくは耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性、付着性および防曇回復性に優れた防曇性物品およびそれを与える防曇処理塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に防曇性を付与する技術は数多く知られている。例えば(1)界面活性剤を塗布したもの(特許文献1参照)、(2)基材表面に親水化処理したもの(特許文献2、3参照)、(3)親水性硬化樹脂を基材表面に塗布したもの(特許文献4参照)、(4)親水性ポリマーと各種親水性アクリレートからなるもの(特許文献5参照)、(5)架橋したポリビニルアルコール塗膜の上に親水性塗膜を形成したもの(特許文献6参照)、(6)酸化チタンの光触媒機能を利用したもの(特許文献7参照)、(7)表面を粗面化したもの(特許文献8参照)、(8)シラン化合物とポリビニルアルアルコールからなる塗膜を形成したもの(特許文献9参照)、(9)親水性モノマーと非反応性界面活性剤を組合せた塗膜を形成したもの(特許文献10参照)、(10)樹脂とジアルキル琥珀酸エステルとを組合せた塗膜を形成したもの(特許文献11参照)等が知られている。
しかしながら、これらの従来技術は耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性および付着性の少なくともいずれか1つの性能に改善すべき点を有し、これらの全ての性能を備えたものとは云えない。
特に、耐擦傷性と防曇性との両立については従来からいくつかの試みがなされているが(特許文献12参照)、この両者ともに満足できる性能を兼ね備えた防曇性付与技術は未だ知られていない。
【0003】
さらに、物品の表面に塗膜を形成することにより防曇性を付与する技術の場合、経時的に低下した防曇性を回復する目的で塗膜に界面活性剤を塗布、浸透させることがよく行われる。しかし、従来知られている防曇性塗膜の場合、界面活性剤の再塗布によっても防曇性の回復が不十分であったり、あるいは一旦回復した防曇性能がすぐに再劣化することが問題となっている。
耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性、付着性および防曇回復性のすべての点において優れた性能を示す防曇性塗膜を形成することのできる防曇処理塗布液は未だ知られていない。
【特許文献1】特公昭52−47926号公報
【特許文献2】特公昭45−18972号公報
【特許文献3】特公昭50−1710号公報
【特許文献4】特開昭63−251401号公報
【特許文献5】特開平3−31369号公報
【特許文献6】特開平6−220428号公報
【特許文献7】特開平5−253544号公報
【特許文献8】特開昭61−91042号公報
【特許文献9】特開平10−212471号公報
【特許文献10】特開平3−215589号公報
【特許文献11】特開平9−13015号公報
【特許文献12】特開2003−73147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は、耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性、付着性および防曇回復性の良好な防曇性塗膜を与える防曇処理塗布液を提供することにあり、特に、上記の如き諸性能を備えた上記塗布液を一液型塗布液として提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記塗布液から形成された塗膜を備えた防曇性の物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
(A)下記式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXは水酸基を有し且つ酸素原子により中断されていてもよい脂肪族基である。)
で表わされる繰返し単位からなるホモポリマー、ならびに
上記式(1)および下記式(2)〜(5)
【0008】
【化2】

【0009】
(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはエポキシ基を有する脂肪族基である。)
【0010】
【化3】

【0011】
(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアルコキシカルボニル基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基またはテトラヒドロフルフリル基である。)
【0012】
【化4】

【0013】
(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはカルボキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族基である。)
【0014】
【化5】

【0015】
(ここで、RおよびR10は、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアミド基もしくはアミノ基、またはアミド基もしくはアミノ基を有する脂肪族基である。)
のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下とからなるコポリマー
からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分、
(B)ブロック化イソシアネート、多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、メラミン化合物、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、
(C)分子量1,000以下のポリオール化合物、ならびに
(D)HLB値が10以上の界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の防曇性能向上剤
を含有することを特徴とする防曇処理塗布液によって達成される。
【0016】
本発明の上記目的および利点は、第二に、
(A)上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマー、ならびに上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下とからなるコポリマー
からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分、
(B)ブロック化イソシアネート、多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、メラミン化合物、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、
(C)分子量1,000以下のポリオール化合物、ならびに
(D)HLB値が10以上の界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の防曇性能向上剤
を含有する塗膜を架橋して得られる膜を備えてなることを特徴とする防曇性物品によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(A)樹脂成分
本発明の防曇処理塗布液は、上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマー、ならびに上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下からなるコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分を含有する。
上記式(1)においてRおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは水酸基を有し且つ酸素原子により中断されていてもよい脂肪族基である。
上記式(1)で表わされる繰返し単位は、下記式(1’)
【0018】
【化6】

【0019】
(ここで、R、RおよびXの定義は上記式(1)と同じである。)
で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアリルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等を挙げることができる。
また、上記式(2)において、RおよびRは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xはエポキシ基を有する脂肪族基である。
上記式(2)で表わされる繰返し単位は、下記式(2’)
【0020】
【化7】

【0021】
(ここで、R、RおよびXの定義は上記式(2)と同じである。)
で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート等を挙げることができる。
上記式(3)において、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアルコキシカルボニル基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基またはテトラヒドロフルフリル基である。
上記式(3)で表わされる繰返し単位は、下記式(3’)
【0022】
【化8】

【0023】
(ここで、R、RおよびXの定義は上記式(3)と同じである。)
で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等を挙げることができる。
上記式(4)において、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはカルボキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族基である。
上記式(4)で表わされる繰返し単位は、下記式(4’)
【0024】
【化9】

【0025】
(ここで、R、RおよびXの定義は上記式(4)と同じである。)
で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
さらに、上記式(5)において、RおよびR10は、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアミド基もしくはアミノ基、またはアミド基もしくはアミノ基を有する脂肪族基である。ここで、アミド基またはアミノ基に含有される窒素原子に結合する水素原子が炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基で置換されていてもよい。
上記式(5)で表わされる繰返し単位は、下記式(5’)
【0026】
【化10】

【0027】
(ここで、R、R10およびXの定義は上記式(5)と同じである。)で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ(2−ヒドロキシメチル)アミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−iso−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N,N一ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等を挙げることができる。
【0028】
(A)樹脂成分が上記コポリマーを含むものである場合、上記コポリマーは上記式(1)で表わされる繰返し単位を、上記式(1)を1モルとして70〜100モル%、より好ましくは80〜95モル%で含有する。
上記ホモポリマーまたはコポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000を超えて500,000以下であることが好ましく、1,200〜100,000であることがより好ましく、さらに1,500〜20,000であることがより好ましい。
【0029】
(B)架橋剤
本発明の塗布液は、さらに(B)架橋剤を含有する。(B)架橋剤としては、ブロック化イソシアネート、2官能以上の多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、メラミン化合物、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物を挙げることができる。
ブロック化イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートの如きジイソシアネートのビウレット構造、アダクト構造またはイソシアヌレート構造からなる化合物の遊離のイソシアネート基を、ブロック化剤としてメタノール、β―ジケトン、オキシム、ε−カプロラクタム等を用いてブロック化し、熱に対する反応性を安定化したものが好ましく用いられる。これらは市販品として、住化バイエルウレタン(株)製のスミジュールBL3175、デスモジュールBL3475、デスモジュールBL3370、デスモジュール3272、デスモジュールVPLS2253、デスモジュールTPLS2134;および旭化成工業(株)製のデュラネート17B−60PX、デュラネートTPA−B80X、デュラネートMF−K60X等として入手することができる。
【0030】
多官能性有機珪素化合物としては、酸化物粒子の表面改質に用いられる有機シラン化合物として後述する二官能性シラン、三官能性シランおよび四官能性シランと同じ化合物を用いることができる。
エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物として、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、アニリン、トルイジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミンとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルアミン、シクロペンタジエンオキサイド等の脂環式エポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ハイドロジオーネビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ジグリシジルo−ペンタレート、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニル)修飾ε−カプロラクトン1,2:8,9ジエポキシリモネン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。これらは市販品として、ナガセケムテックス(株)製のデナコールEX−612、デナコールEX−512、デナコールEX−421、デナコールEX−314、デナコールEX−321、デナコールEX−211、デナコールEX−252、デナコールEX−810、デナコールEX−850、デナコールEX―821、デナコールEX−830、デナコールEX−841、デナコールEX−931、ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021、セロキサイド2081、セロキサイド3000、エポリードGT401等として入手することができる。
【0031】
オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物およびエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物として、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等が挙げられる。これらは市販品として、東亜合成(株)製のOXT−221、OXT−610、OX−SQ、PNOX−1009、荒川化学工業(株)製のコンポラセンE102、コンポラセンE201、コンポラセンE202として入手することができる。
メラミン化合物としては、例えばヘキサメチロールメラミン、メチロールメラミン、アルキルエーテル化メチロールメラミン等が挙げられる。
本発明の塗布液に含有される(B)架橋剤としては、ブロック化イソシアネート、2官能以上の多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ブロック化イソシアネートであることがより好ましい。
【0032】
(C)分子量1,000以下のポリオール化合物
本発明の塗布液は、さらに(C)分子量1,000以下のポリオール化合物(以下、「ポリオール化合物」という。)を含有する。(C)ポリオール化合物としては、一分子中の水酸基の数が3個以上であるものが好ましく、3〜6個であるものがより好ましく、さらに3〜4個であるものが好ましい。
このようなポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、短鎖ポリオール等を挙げることができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば下記式(6)
【0033】
【化11】

【0034】
(式(6)中、、m1は2〜9の整数であり、R11はm1価の有機基であり、R12はエステル結合を含む2価の有機基であり、m1個あるn1はそれぞれ独立に1〜5の数である。)
で表されるポリエステルポリオールを挙げることができる。
上記式(6)中のm1は好ましくは3〜6の整数であり、より好ましくは3または4であり、さらに3であることが好ましい。n1は好ましくは1である。R11の好ましい例としては、例えばトリアルコールから3つの水酸基を除いた基またはテトラアルコールから4つの水酸基を除いた基を挙げることができる。ここでトリアルコールの例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール等を挙げることができる。またテトラアルコールの例としては、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等を挙げることができる。R12の好ましい例としては、例えば下記式
【0035】
【化12】

【0036】
(式中、R13およびR14はそれぞれアルキレン基もしくはフェニレン基またはこれらが結合した2価の基であり、R15はアルキレン基である。)
で表わされる2価の基を挙げることができる。
上記式中のR13、R14およびR15のアルキレン基の好ましい例としては、例えばトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等を挙げることができる。これらのアルキレン基に含有される水素分子の一部または全部が炭素数1〜4のアルキル基によって置換されていてもよい。これらのうち、テトラメチレン基、ペンタメチレン基または3−メチルペンタメチレン基が好ましい。R13およびR14のフェニレン基の好ましい例としては、p−フェニレン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基等を挙げることができる。これらのフェニレン基に含有される水素分子の一部または全部が炭素数1〜4のアルキル基によって置換されていてもよい。これらのうち、p−フェニレン基が好ましい。
このようなポリエステルポリオールは、例えばカプロラクトンポリオール、アジピン酸ポリオール、テレフタル酸ポリオール、イソフタル酸ポリオール、フタル酸ポリオール等の名称で市販品としても入手することができ、かかる市販品として例えばプラクセル303、プラクセル305、プラクセル308(以上、ダイセル化学工業(株)製)、クラレポリオールF−510((株)クラレ製)、デスモフェン(住化バイエルウレタン(株)製)等を挙げることができる。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば下記式(7)
【0038】
【化13】

【0039】
(式(7)中、m2は2〜9の整数であり、R16はm2価の有機基であり、R17はエーテル結合を含む2価の有機基であり、m2個あるn2はそれぞれ独立に1〜5の数である。)
表されるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
上記式(7)中のm2は好ましくは3〜6の整数り、より好ましくは3または4であり、さらに3であることが好ましい。n2は好ましくは1である。R16の好ましい例は、式(6)中のR11の好ましい例として上記したところと同様である。R17の好ましい例としては、下記式
【0040】
【化14】

【0041】
(式中、R18はアルキレン基である。)
で表わされる2価の基を挙げることができる。
上記式中のR18の好ましい例としては、例えばエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。かかるポリエーテルポリオールの市販品としては、例えばエクセノール430、エクセノール385SO、エクセノール450ED、エクセノール500ED、エクセノール750ED(以上、旭硝子(株)製)等を挙げることができる。
アクリルポリオールは、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の重合体または水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とその他の不飽和化合物との共重合体として得ることができる。水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、上記式(1’)で表される化合物として例示した(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができ、またその他の不飽和化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン、1,3−ブタジエン、イソプレン等を挙げることができる。
さらに、短鎖ポリオールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0042】
本発明の塗布液に含有される(C)ポリオール化合物としては、上記のうちポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールがより好ましく、特に上記式(6)においてR12がカプロラクトンに由来する繰り返し単位であるカプロラクトンポリオールが好ましい。
本発明の塗布液に含有される(C)ポリオール化合物の分子量は1,000以下であるが、この値は好ましくは100〜1,000であり、より好ましくは150〜800である。なお、ポリオール化合物が高分子量体である場合には、ここでいう分子量は数平均分子量として理解されるべきである。
【0043】
(A)ないし(C)成分の配合割合
次に、本発明の塗布剤における(A)ないし(C)成分の配合割合について説明する。
本発明の塗布剤における(B)架橋剤の配合量としては、(B)架橋剤の有する官能基の合計のモル数が、(A)樹脂成分および(C)ポリオール化合物の有する水酸基の合計のモル数を100とした場合に40〜100であることが好ましく、より好ましくは50〜80である。ここで、(B)架橋剤の有する官能基の合計のモル数とは、ブロック化イソシアネートの有するイソシアナト基、多官能性有機珪素化合物の有する加水分解性基、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物の有するエポキシ基、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物の有するオキセタン環、メラミン化合物の有するメチロール基、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物の有するエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基の総モル数をいう。
(C)ポリオール化合物の配合量としては、(A)樹脂成分および(C)ポリオール化合物の合計量に対して30〜70重量%であることが好ましく、40〜60重量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明の塗布液に含有される(D)防曇性能向上剤は、親水性と疎水性のバランスを示す指標であるHLB値が10以上である界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。
HLB値10以上の界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型およびポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤が好ましい。
これらの界面活性剤は、市販品として入手することができ、それらの具体例としては、日本油脂(株)製のニッサンノニオンP−240(HLB=17.5)、E−212(HLB=13.3)、E−215(HLB=14.2)、E−230(HLB=16.6)、S−211(HLB=12.7)、S−215(HLB=14.2)、S−230(HLB=16.5)、旭電化(株)製のアデカトールLO−7(HLB=11.7)、LO−9(HLB=12.9)、LO−20(HLB=16.0)の如きポリオキシエチレンアルキルエーテル型;
ライオン(株)製のエソミンO/20(HLB=12.5)の如きポリオキシエチレンアルキルアミン型;および
ライオン(株)製のエソマイドO/15(HLB=10.4)、エソマイドHT/15(HLB=10.4)の如きポリオキシエチレンアルキルアミド型が挙げられる。
(D)防曇性能向上剤の配合割合としては、(A)樹脂成分、(B)架橋剤および(C)ポリオール化合物の合計100重量部に対して、好ましくは25重量部以下であり、より好ましくは5〜20重量部である。
【0045】
その他の成分
本発明の塗布液は、上記した(A)ないし(C)成分を必須成分として含有するが、その他に必要に応じて(E)酸化物粒子、(F)レベリング剤、(G)硬化触媒等を含有してもよい。
(E)酸化物粒子は、ケイ素または金属の酸化物からなる微粒子であり、前記金属の種類としては、例えば、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiから選ばれる1種以上が用いられる。酸化物の具体例としては、例えばSiO、Al、SnO、Sb、Ta、CeO、La、Fe、ZnO、WO、ZrO、In、TiOを用いることができる。これらの酸化物粒子は一種のみを用いることができ、あるいは二種以上を混合して使用してもよい。酸化物粒子の粒径は、1〜100nmの範囲にあることが好ましく、5〜50nmの範囲にあることがより好ましい。
これら酸化物粒子のうちSiO粒子が好ましく、コロイダルシリカを使用することがより好ましい。かかるコロイダルシリカは市販品として入手することができ、その例としては例えば日産化学工業(株)製のIPA−ST(粒径:10〜20nm、固形分:30%、イソプロパノール溶媒)、メタノールシリカゾル(粒径:10〜20nm、固形分:30%、メタノール溶媒)、NPC−ST−30(粒径:10〜20nm、固形分:30%、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル溶媒)、EG−ST(粒径:10〜20nm、固形分:30%、エチレングリコール溶媒)、ST−OUP(鎖状シリカ、粒径:10〜20nm、固形分:15%、水溶媒)IPA−ST−UP(鎖状シリカ、粒径:10〜20nm、固形分:15%、イソプロパノール溶媒)等の鎖状または分岐状シリカを挙げることができる。
【0046】
(E)酸化物粒子は、溶媒への分散性を高めるため有機シラン化合物の加水分解物で予め表面改質してから用いることができる。
かかる有機シラン化合物の加水分解物による表面改質は、酸化物粒子に対して好ましくは40重量%以下、より好ましくは1〜40重量%となる割合の有機シラン化合物を酸化物粒子と接触させ、次いで有機シラン化合物の加水分解を行うか、あるいは上記に相当する割合の有機シラン化合物を予め加水分解した後に酸化物粒子と接触させることによって行うことができる。上記接触は、適当な分散媒体中において行われることが好ましい。
かかる有機シラン化合物としては、例えば
式RSiX(ここでRはアルキル基、フェニル基もしくはビニル基または(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基もしくはエポキシ基を有する有機基でありそしてXは加水分解可能な基である)で表わされる単官能性シラン;
式RSiX(R、Xの定義は上記に同じ)で表わされる二官能性シラン;
式RSiX(R、Xの定義は上記に同じ)で表わされる三官能性シラン;
および式SiX(Xの定義は上記に同じ)で表わされる四官能性シランを挙げることができる。
上記において、有機基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、加水分解可能な基としては、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
【0047】
これらの有機シラン化合物の具体例としては、例えばトリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトブロピルジメチルエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシランの如き単官能性シラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ一グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランの如き二官能性シラン;
【0048】
メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの如き三官能性シランおよびテトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケートの如き四官能性シランを挙げることができる。
【0049】
酸化物粒子の表面改質の際に使用できる分散媒体としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノールの如き飽和脂肪族アルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブの如きセロソルブ;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートの如きプロピレングリコール誘導体;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル類;ジエチルエーテル、メチルイソブチルエーテルの如きエーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類;キシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素;およびエチレングリコール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン等を挙げることができる。
(E)酸化物粒子の配合割合としては、(A)樹脂成分、(B)架橋剤および(C)ポリオール化合物の合計100重量部に対して、好ましくは250重量部以下であり、より好ましくは10〜125重量部である。
【0050】
(F)レベリング剤は、本発明の塗布液の塗布性を改善して塗膜の外観を改良するために添加することができる。かかる(F)レベリング剤としては、ノニオン型フッ素系界面活性剤およびその他のノニオン型界面活性剤が挙げられる。これらは市販品として、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF−472SF、メガファックF−443、メガファックF−1405、ダイキン工業(株)製のユニダインNS−1605、ユニダインNS−2107、ユニダインDS−451(以上はノニオン型フッ素系界面活性剤)、日本油脂(株)製のノニオンK220、ノニオンE215、ノニオンE230、ノニオンTA413、ノニオンTA415(以上はその他のノニオン型界面活性剤)として入手することができる。
(F)レベリング剤の配合割合としては、本発明の塗布液100重量部に対し、好ましくは1重量部以下であり、より好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0051】
(G)硬化触媒は、(B)架橋剤が作用して各成分が架橋縮合反応をして硬化する反応を効率的に促進させるために添加することができる。(G)硬化触媒としては、例えば酢酸ナトリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アセチルアセトンの金属塩、アンモニウム塩、エチルアセトアセテートの金属塩、アセチルアセトンとエチルアセテートが配位した金属塩、エチレンジアミンの金属塩水和物、第1〜3級アミン、ポリアルキルアミン、スルホン酸塩、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸錫等の有機金属塩、四塩化錫、四塩化チタン、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。また、これら化合物と有機メルカプタン、メルカプトアルキルシラン等を併用してもよい。硬化触媒の配合割合は、本発明の塗布液から形成された塗膜を硬化後に残る重量の10重量%以下に相当する量とすることが好ましく、0.001〜10重量%の範囲に相当する量とすることがより好ましい。
【0052】
本発明の塗布液は、好ましくは溶媒を含有する。本発明の塗布液の好ましい固形分濃度(塗布液から溶媒を除いた重量の、塗布液全重量に対する割合)は採用する塗布方法により異なり、例えばディッピング法またはスプレー法により塗布する場合には5〜40重量%が好ましく、スピンコート法により塗布する場合には15〜40重量%であることが好ましく、ロールコート法またはグラビアコート法で塗布する場合には20〜50重量%であることが好ましく、スクリーン印刷法により塗布する場合には20〜80重量%であることが好ましい。
本発明の塗布液が含有する溶媒としては、酸化物粒子の表面改質の際に用いられる分散溶媒として記載した溶媒と同じものを挙げることができる。
【0053】
塗布液の使用方法
本発明の防曇処理塗布液は、基材に塗布し、次いで溶媒を除去して塗膜を形成し、さらに加熱して架橋させることにより用いることができる。
本発明の防曇処理塗布液を適用することのできる基材としては、透明基材が好ましく用いられる。かかる基材としては、例えばガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂製の各種基材を挙げることができ、その具体例には例えば乗車用の窓ガラスの内面、安全メガネの内面、オートバイ等のヘルメットシールドの内面および洗面化粧台の鏡面ならびに強化ガラス、半強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、単板ガラスならびにその他の各種鏡面に防曇性を付与することができる。
基材に本発明の処理塗布液を塗布するにあたっては適宜の塗布方法、例えばディッピング法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等により塗布することができる。
塗布後の塗布液は、次いで溶媒を除去され塗膜とされる。溶媒除去工程における温度としては、雰囲気温度として好ましくは15〜300℃であり、より好ましくは40〜200℃である。溶媒除去工程の時間としては、好ましくは1秒〜24時間であり、より好ましくは10秒〜5時間である。
本溶媒除去後の塗膜の厚みは、基材の種類や用途により異なるが、防曇性能は膜厚が大きいほど優れ、また膜厚が大きくても透明性を維持できるので、例えば30μm以上とすることもできる。通常10μm以下であり、10nm〜10μmが好ましい。
【0054】
本発明の塗布液により物品の表面上に形成された塗膜は、次いで架橋される。
本発明の塗布液から形成された塗膜は、架橋されて耐擦傷性の優れた塗膜を形成するが、上記式(1)で表わされる繰返し単位および(C)ポリオール化合物に由来する水酸基の残存量が塗膜の防曇性能に影響を与えることが判明しており、水酸基の適当量が残存していることが好ましい。一方で、塗膜が十分な耐擦傷性を発揮するためには、架橋の割合が高いほど好ましい。
このような架橋反応は、塗膜を、雰囲気温度として好ましくは40〜300℃、より好ましくは60〜200℃の温度において、好ましくは1秒〜24時間、より好ましくは10秒〜5時間加熱することによって行うことができる。架橋反応は、上記の溶媒除去工程と各別に実施してもよく、あるいは一連の工程として実施してもよい。
【0055】
以上のとおり、本発明の防曇処理塗布液は、塗膜構造中に(A)樹脂成分および(C)ポリオール化合物に由来する水酸基を有し、薄膜化した場合においてさえ、初期防曇性、防曇維持性に優れた塗膜を与える。また、(C)防曇性能向上剤としてHLB値の高い界面活性剤を含有するものにあっては、(C)防曇性能向上剤の溶出量が少ないため、一層優れた初期防曇性、防曇維持性を与える。さらに、コロイダルシリカ等の(D)酸化物粒子を含有するものにあっては優れた耐擦傷性を示し、さらに(B)架橋剤として有機珪素化合物を含むものにあっては無機系下地(基材)とも安定した付着性を示し、ブロック化イソシアネートを含むものにあっては長期間に亘り一液安定性がある。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
1.樹脂成分の合成
防曇性を発現させるための樹脂成分は以下のようにして合成した。なお、下記において、樹脂成分の分子量は、すべてGPCによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<防曇樹脂1>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート94重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート6重量部を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱撹拌し、共重合させた。得られた共重合体は、分子量が約10,000の2−ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーであった。
<防曇樹脂2>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート90重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート10重量部を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱撹拌し、共重合させた。得られた共重合体は、分子量が約10,000の2−ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーであった。
【0057】
<防曇樹脂3>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート94重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート6重量部を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で2時間加熱撹拌し、共重合させた。得られた共重合体は、分子量が約1,500の2−ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーであった。
<防曇樹脂4>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート94重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート6重量部を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で8時間加熱撹拌し、共重合させた。得られた共重合体は、分子量が約100,000の2−ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーであった。
【0058】
2.塗布液の調製
各塗布液は、下記の調合表に基づいてそれぞれの原料および溶媒としてプロピレングリコールモノエチルエーテル(以下、「PGME」という。)を混合し、所定の固形分量となるように調製した。
調製例
<塗布液1/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 29重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液2/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 27重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 24重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 5重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.7(モル比)
【0059】
<塗布液3/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 21重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 27重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 4重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=1.0(モル比)
<塗布液4/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 32重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 21重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.5(モル比)
【0060】
<塗布液5/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 36重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 19重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.4(モル比)
<塗布液6/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 28重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 21重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 12重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0061】
<塗布液7/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 30重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 2重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液8/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 36重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 22重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 5重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0062】
<塗布液9/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 23重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液10/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 34重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 20重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量550) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0063】
<塗布液11/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 33重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 20重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量500) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液12/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 36重量部
架橋剤:MF―B60X(固形分60重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0064】
<塗布液13/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂2(固形分21重量%) 30重量部
架橋剤:BL―3175(固形分75重量%) 22重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液14/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂3(固形分21重量%) 33重量部
架橋剤:BL―3175(固形分75重量% :26重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 7重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 7重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=40重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0065】
<塗布液15/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂4(固形分21重量%) 25重量部
架橋剤:BL―3175(固形分75重量% :19重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 5重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 5重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 4重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=30重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液16/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 29重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0066】
<塗布液17/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 29重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:第4級アンモニウム塩型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液18/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 29重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:1、2、4−ブタントリオール(一分子中の水酸基数3) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0067】
<塗布液19/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 29重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型フッ素系界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液20/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 31重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 24重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 6重量部
酸化物粒子:0重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0068】
<塗布液21/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 48重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 12重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 10重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.2(モル比)
<塗布液22/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 18重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 28重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 4重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=1.2(モル比)
【0069】
<塗布液23/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 11重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 23重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 9重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液24/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 49重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 22重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 3重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0070】
<塗布液25>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 31重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 22重量部
ポリオール化合物:ポリエーテルポリオール(一分子中の水酸基数4、数平均分子量500) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液26>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 31重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 21重量部
ポリオール化合物:ポリエーテルポリオール(一分子中の水酸基数4、数平均分子量540) 6重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0071】
比較調製例
<塗布液27/調合表>
樹脂成分:0重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 24重量部
ポリオール化合物:カプロラクトンポリオール(一分子中の水酸基数3、数平均分子量300) 11重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
<塗布液28/調合表>
樹脂成分:防曇樹脂1(固形分21重量%) 63重量部
架橋剤:BL3175(固形分75重量%) 21重量部
ポリオール化合物:0重量部
酸化物粒子:PGME分散コロイダルシリカ(固形分25重量%) 6重量部
防曇性能向上剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤 5重量部
レベリング剤:ノニオン型界面活性剤(固形分10重量%) 0.5重量部
固形分濃度=35重量%
NCO/OH=0.6(モル比)
【0072】
実施例1〜26ならびに比較例1および2
I.防曇膜の形成
アルカリ洗浄処理により清浄にしたフロートガラス基板(100×100mm、5mm厚)上に、前記各塗布液をスピンコート法により成膜した。その後、常温常湿環境で風乾処理を30分おこない、150℃30分間の焼成を行った。いずれの実施例、比較例においても膜の透明性は良好であった。
II.防曇膜の評価
上記のようにして得た各防曇膜につき、以下のようにして評価した。結果を表1および表2に示した。
【0073】
(1)膜厚
表面粗さ形状測定装置 型式:アルファステップ200(KLAテンコール社製)で測定した。
(2)初期防曇性
温度20℃、湿度50%RHの室内で、50℃の温水上に設置し、処理面が曇るか曇らないかにより初期防曇性能を判定した。
(3)防曇維持性
30℃−60%RHの恒温恒湿槽に2週間放置し、その後の防曇性を評価した。防曇性の評価は、初期防曇性能評価方法と同じである。
(4)防曇耐水性
流水に1分間浸漬後、表面水を除去し、さらに1時間室温放置後の防曇性を評価した。
(5)防曇回復性
20℃の純水中に1時間侵漬し、次いで室温(20℃)にて30分間乾燥した。その後、塗布液の調製で使用したと同じ界面活性剤である防曇性能向上剤を濃度50重量%にてにより塗布し、室温(20℃)で1時間静置した後、固く絞った湿布で表面を拭き取り、表面の剰余の防曇性能向上剤を除去した。
上記の操作を施した物品を試料として、上記(3)初期防曇性および(4)防曇維持性に準じて評価した。
【0074】
(7)耐擦傷性/乾布
500g/cm2の荷重をかけた乾いたベンコット(旭化成(株)製)で表面を100回擦った。その時の傷つき方を判定した。
1…傷つかない。
2…数本の傷がつく。
3…多数の傷がつく。
4…膜が剥がれる。
(8)耐擦傷牲/湿布
上記ベンコットを8枚重ね、水1cc/cm2含有させ、500g/cm2の荷重をかけて、表面を100回擦った。その時の傷つき方を判定した。
1…傷つかない。
2…数本の傷がつく。
3…多数の傷がつく。
4…膜が剥がれる。
(9)耐アルカリ性試験
1規定のNaOH水溶液を防曇膜上に滴下、24時間放置した。その後、流水で同試験液を洗い流し、水を除去し、付着部の膜の損傷の程度を確認した。
1…膜の損傷なし
2…軽微な損傷(膜のふくれ、うすい白化など)
3…膜の損傷あり(ハガレ、白化)
(10)耐酸性試験
1規定のHCl水溶液を防曇膜上に滴下、6時間放置した。その後、流水で同試験液を洗い流し、水を除去し、付着部の膜の損傷の程度を確認した。
1…膜の損傷なし
2…軽微な損傷(膜のふくれ、うすい白化など)
3…膜の損傷あり(ハガレ、白化)
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
【化1】

(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXは水酸基を有し且つ酸素原子により中断されていてもよい脂肪族基である。)
で表わされる繰返し単位からなるホモポリマー、ならびに
上記式(1)および下記式(2)〜(5)
【化2】

(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはエポキシ基を有する脂肪族基である。)
【化3】

(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアルコキシカルボニル基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基またはテトラヒドロフルフリル基である。)
【化4】

(ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはカルボキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族基である。)
【化5】

(ここで、RおよびR10は、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアミド基もしくはアミノ基、またはアミド基もしくはアミノ基を有する脂肪族基である。)
のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下とからなるコポリマー
からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分、
(B)ブロック化イソシアネート、多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、メラミン化合物、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、
(C)分子量1,000以下のポリオール化合物、ならびに
(D)HLB値が10以上の界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の防曇性能向上剤
を含有することを特徴とする、防曇処理塗布液。
【請求項2】
(C)ポリオール化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールおよび短鎖ポリオールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の防曇処理塗布液。
【請求項3】
(B)架橋剤の有する官能基の合計のモル数が、(A)樹脂成分および(C)ポリオール化合物の有する水酸基の合計のモル数を100とした場合に40〜100である、請求項1に記載の防曇処理塗布液。
【請求項4】
(C)ポリオール化合物の配合量が、(A)樹脂成分および(C)ポリオール化合物の合計量に対して30〜70重量%である、請求項1に記載の防曇処理塗布液。
【請求項5】
(D)防曇性能向上剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン型界面活性剤およびポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の防曇処理塗布液。
【請求項6】
(E)酸化物粒子をさらに含有する、請求項1に記載の防曇処理塗布液。
【請求項7】
(A)上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマー、ならびに
上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下とからなるコポリマー
からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分、
(B)ブロック化イソシアネート、多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、メラミン化合物、ならびにエポキシ基、シラノール基およびオキセタニル基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、
(C)分子量1,000以下のポリオール化合物、ならびに
(D)HLB値が10以上の界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の防曇性能向上剤
を含有する塗膜を架橋して得られる膜を備えてなることを特徴とする、防曇性物品。

【公開番号】特開2008−7677(P2008−7677A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180958(P2006−180958)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】