説明

防湿化粧シートおよび化粧板

【課題】 古紙として再利用可能な紙基材であり、防湿性、印刷適性、表面強度に優れ、熱による変色が少ない防湿化粧シートを提供する。
【解決手段】 基材紙に合成樹脂を含有する防湿層を設けてなる防湿化粧シートであって、該基材紙中に填料として二酸化チタンが含まれる防湿化粧シート。該基材紙中に含まれる二酸化チタンが、パルプ絶乾質量に対して1〜15質量%である前記防湿化粧シート。該基材紙中にポリアクリルアミド系紙力剤を、パルプ絶乾質量に対して0.5〜3質量%含有する前記防湿化粧シート。防湿層表面の王研式平滑度が200秒以上である前記防湿化粧シート。防湿層に無機層状化合物が含まれる前記防湿化粧シート。前記防湿化粧シートが木質ボードに貼合されている化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質ボード等に貼合して化粧板を得るのに好適な防湿化粧シート、及び、該防湿化粧シートを貼合して得た化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、住宅の壁面、天井面、あるいはドアや襖等を初めとする各種建具、又はキッチン等の収納部に設けられた扉などの住宅設備機器、各種調度品等には、合板や平行合板、もしくはパーティクルボードやファイバーボード等の各種木質ボードを基材とする化粧板等、様々な木質材料が使用されている。
この中でも、機械的処理あるいは化学的処理等により得られた木材繊維を接着剤と混合し熱圧成型してなるファイバーボードは、均質で異方性がないこと、また原料として未利用廃材や低質木材が主に利用されるリサイクル製品であって、コスト面でも優れていることから、化粧板用の基材として多く使用されている。
このようなファイバーボードは、主に密度によって大別され、密度の低い方から、インシュレーションボード、中密度ファイバーボード(Mid Density Fiber Board,以下MDF)、ハードボードと呼ばれている。この中で通常は、MDFが化粧板用基材として使用されている。
ところで、木質材料は、温度や湿度の変化によってその含水率が変化する性質がある。従って、従って、温度や湿度条件による水分量の変動の結果、材料の収縮や膨張によって形状が変化し、「反り」や「ネジレ」等が発生するおそれがある。
特に、建具の場合、室内と室外等、異なる空間を仕切るものであって、表面と裏面が各々温度や湿度が異なる環境にさらされる。従って、このような用途に使用する場合、温度・湿度条件の変動に対して耐性を有し、形状変化が起こりにくいという特性がより重要となる。例えばドアの場合、反りやねじれが生じると、開閉できなくなったり、ドア枠とドア間に隙間が生じるという問題が発生する。
特に、木質ボードの中でもMDF等のファイバーボードの場合、構造上の特徴から、温度・湿度条件の変動により、通常8〜9%である含水率がかなり変化し、その結果、反りやネジレが生じ易いという問題があった。
【0003】
そこで、上記木質ボードを基材として化粧板を製造する場合は、防湿・防水加工を施して使用するのが一般的である。
例えば、木質ボードの表側面にはプラスチック系化粧シート、裏側面に防湿・防水加工としてプラスチックフィルムを貼合した構成の木質系化粧板がある。
あるいは、木質ボードの表側面には上記同様にプラスチック系化粧シートを貼合し、裏側面には、紙/プラスチックフィルム/紙(表裏を紙で覆ったプラスチックフィルム)からなる積層体を貼合した構成、金属箔/紙からなる積層体を貼合した構成の木質系化粧板が存在する。なお、裏側面に貼着するプラスチックフィルムや金属箔の表裏等に紙を貼合するのは、紙の多孔質性によってプラスチックフィルム等を木質板に接着し易くすると同時に、これにより得られた木質系化粧板を他の物に接着し易くする効果を有する。
具体的に述べると、特許文献1では、防湿性を有する内装材として、基板の少なくとも片面に、プラスチックフィルムや金属箔等からなる防湿シートを芯層としてその表裏に紙を積層した構成の防湿紙を、基板に接する内側の紙層内に接着剤が含浸されるように貼着した構成を開示している。
また、特許文献2には、木質板の表裏両面に塩化ビニリデン系樹脂を含む防湿防水塗膜層が形成され、更に表側の防湿防水塗膜層上に接着剤層を介して紙系化粧シートが貼着されてなる、木質系化粧板が開示されている。
しかし、このような従来の化粧シート(防湿化粧シート)は、紙を使用していても、フィルムや金属箔と貼合されているため、古紙として再利用が困難であった。従って、紙を基材として再生可能であって、しかも防湿性に優れた化粧シートが求められていた。
再生可能な防湿紙としては、ワックスを含有する防湿層を有する防湿紙等が存在するが(特許文献3等)、化粧シートとして使用可能な防湿紙としては、防湿性の他に、印刷適性と表面強度が優れていることが要求されるため、ワックスを含む防湿層を有する防湿紙は、その点においては化粧シートとしては使用することはできない。
また、印刷適性と表面強度を有する再生可能な防湿紙としては、合成樹脂と平板状顔料による防湿層を有する特許文献4が開示されている(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−251407号公報
【特許文献2】特開平11−348180号公報
【特許文献3】特公昭59−66598号公報
【特許文献4】特開平9−291499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような防湿紙を化粧シートとして使用する際には、新たな問題が発生することが判明した。即ち、化粧シートを木質ボードに貼合して化粧板を製造する際には加熱条件で貼合を行なうが、この際に、防湿層の合成樹脂が樹脂層が変色(主として黄変)する。このような変色は製品の美観や耐久性を損なうものであって、化粧板、化粧シートとしては非常に問題であった。
従って、古紙として再利用可能な紙基材であり、防湿性、印刷適性、表面強度に優れ、熱による変色が少ない防湿化粧シートが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために以下の方法をとる。
即ち、本発明の第1は、基材紙に合成樹脂を含有する防湿層を設けてなる防湿化粧シートであって、該基材紙中に填料として二酸化チタンが含まれる防湿化粧シートである。
【0007】
本発明の第2は、該基材紙中に含まれる二酸化チタンが、パルプ絶乾質量に対して1〜15質量%である本発明の第1に記載の防湿化粧シートである。
【0008】
本発明の第3は、該基材紙中にポリアクリルアミド系紙力剤を、パルプ絶乾質量に対して0.5〜3質量%含有する本発明の第1〜2のいずれかに記載の防湿化粧シートである。
【0009】
本発明の第4は、防湿層表面の王研式平滑度が200秒以上である本発明の第1〜3のいずれかに記載の防湿化粧シートである。
【0010】
本発明の第5は、防湿層に無機層状化合物が含まれる本発明の第1〜4のいずれかに記載の防湿化粧シートである。
【0011】
本発明の第6は、本発明の第1〜5のいずれかに記載の防湿化粧シートが木質ボードに貼合されている化粧板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、古紙として再利用可能な紙基材であり、防湿性、印刷適性、表面強度に優れ、熱等による変色が少ない防湿化粧シートを得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明する。
基材紙上に合成樹脂を含有する防湿層を設けた防湿化粧シートの防湿層の熱による変色(主に黄変)を防ぐために、本発明者らは、防湿層に含まれる合成樹脂(スチレン−ブタジエン系共重合対やアクリル−スチレン系共重合体)が、酸素と熱により酸化されることで変色されるのではないかと推測した。
そこで、変色テストとして、空気中70℃と窒素中70℃で環境下で1日おいた後、分光白色時計で変色の度合いを比較したところ、空気中70℃の方が変色が大きいことが判明した。酸化による変色は、酸素がきっかけとなりラジカルが発生して、そのラジカルによって、合成樹脂が変質を受けて変色するものと考えられる。
そこで、本発明者らは酸化防止剤を防湿層中に加えることで、酸素やラジカル物質が捕捉され、その結果、変色が抑制されることを見出した。さらに、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、変色抑制に対して特に優れていることを見出した。また同時に、二酸化チタンにも変色抑制効果があることを見出した。
【0014】
しかしながら、酸化防止剤や二酸化チタンを防湿層中に添加する方法には限界があった。即ち、酸化防止剤や二酸化チタンの添加量を多くしても、変色抑制効果が頭打ちとなるばかりでなく、防湿性の悪化を招くことが判明した。
そこで、本発明者らは、二酸化チタンを基材紙に添加することで、熱による変色を抑制できないかを検討したところ、防湿層に添加するより熱による変色抑制効果が大きいことを見出し、本発明に至った。
【0015】
基材紙中の二酸化チタンが、基材紙表面に形成された防湿層の変色を抑制するメカニズムは、熱によって分解されて発生したラジカル物質を、二酸化チタンが捕捉、あるいは分解できるのではないかと推定される。
【0016】
二酸化チタンの結晶形としては、ルチル型とアナタース型があるが、本発明においては、そのいずれも使用可能であり、両者を併用することも可能である。また、二酸化チタンの表面を酸化アルミニウム(アルミナ)や酸化ジルコニウム、二酸化珪素(シリカ)、有機変性シロキサン系化合物(オルガノシロキサン:シランカップリング剤やテトラエトキシシランなど)で表面処理を施し、光触媒活性を抑制させたものも好適に使用できる。二酸化チタンの粒子径は、特に制限はないが、平均粒子径として5nm〜500nmが好ましく、10nm〜400nmがさらに好ましく、20nm〜300nmが好ましい。
【0017】
基材紙中の二酸化チタンの配合量としては、パルプ絶乾質量に対して1〜15質量%含まれることが好ましく、2〜12質量%がさらに好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。填料が1質量%未満では、熱による変色抑制効果が不十分である。また15質量%を越えると、基材紙の紙層間強度が弱くなってしまう。この場合に紙層間強度を発現させるために紙力剤を多量に添加すると、填料が凝集しやすく、系内汚れや、地合不良となる。
なお、本発明の基材紙中には、酸化チタンの他に、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、二酸化珪素、サチンホワイト等の公知の顔料を適宜選択し組み合わせて使用することが可能である。
【0018】
本発明の防湿化粧シートの基材紙の紙層間強度は、50N/m以上が好ましく、55N/m以上がさらに好ましく、60N/m以上が特に好ましい。
紙層間強度が50N/m未満では、通常使用される粘着テープを貼った後で剥がした時に紙層間で剥離しやすくなり、パーティクルボードなどの基材に貼合して化粧板として使用するのには適さない。また、化粧板を加工した時に化粧板断面から化粧板用薄葉紙の紙層間での剥離が発生する場合もある。
【0019】
上記紙層間強度を得るためには、基材紙に紙力剤を添加することが好ましい。使用する紙力剤としては公知のものから適宜選択して使用可能であるが、ポリアクリルアミド系内添紙力剤が最も好適である。
また、基材紙の高い紙層間強度を発現させるためには、ポリアクリルアミド系内添紙力剤を、パルプ絶乾質量に対して0.5〜3質量%添加することが好ましい。ポリアクリルアミドが0.5質量%未満では、紙層間強度が不十分となる恐れがある。また、3質量%を越えて多くなると、紙層間強度の向上効果が飽和して不経済であるばかりか、地合が悪化する恐れがある。
なお、本発明の基材紙においては、上記紙力剤以外に、必要に応じて、デンプン、サイズ剤、定着剤等を内添することができる。
【0020】
本発明の防湿化粧シート用の基材紙を抄造するのに使用するパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜混合して使用することが可能である。地合の均一性を考慮すると、LBKPの比率が多い方が好ましい。また必要に応じて任意の合成繊維や非木材繊維等を配合することが可能である。
また、上記パルプの叩解度を100〜400mlcsfに調成することにより、紙層間強度を発現させるとともに、基材紙の透気度が高まるため、その後の塗工時の塗料の浸透性をコントロールすることができる。
具体的には、基材紙の透気度は、50〜300secの範囲であることが好ましい。
【0021】
上記の調成した紙料を抄紙機で抄造し、本発明で用いる基材紙を得る。抄紙機は、長網抄紙機や傾斜ワイヤー抄紙機、円網抄紙機等、公知のものから適宜選択できる。
また、通常、防湿性化粧シートには、美粧性を付与するために、木目模様等の各種印刷層が設けられているため、印刷適性が求められる。
そのため、本発明の基材紙を抄造する場合は、片艶紙のように乾燥時にヤンキードライヤーを使用して強制乾燥するか、もしくは、カレンダー処理等を施すことで、少なくとも片面の平滑性を向上させることが望ましい。特にヤンキードライヤーを用いて乾燥した場合、平滑性が大きく向上するので特に望ましい。
即ち、高平滑性を有する紙基材表面に防湿層を設けた場合に、防湿層表面も高い平滑性を有するものとなり、その結果、印刷適性も向上するからである。
基材紙の表面の平滑度は、王研式平滑度で200〜2000秒が好ましく、300〜1500秒がさらに好ましく、400秒〜1000秒が特に好ましい。平滑度が200秒未満だと印刷の美粧性向上の効果が期待できない。また、2000秒を超えると、美粧性向上効果が頭打ちになるばかりか、製造スピードを落とさなくては製造できないため、生産性が悪化する。
【0022】
上記基材紙の坪量は、20〜50g/mが好ましい。20g/m未満の場合は、操業性や基材紙の強度や、隠蔽性が不十分となる恐れがある。また50g/m を越えた場合、化粧板薄葉紙を建材に仕上げた場合、表面の硬度(鉛筆硬度)が不足する場合があり好ましくない。なお、防湿化粧シートとしての坪量は25〜60g/mが好ましい。25g/m未満の場合は、紙の強度や、隠蔽性が不十分となる恐れがある。また60g/m を越えた場合、化粧板薄葉紙を建材に仕上げた場合、表面の硬度(鉛筆硬度)が不足する場合があり好ましくない。
防湿化粧シートの表面強度は、J.TAPPI―1(A法)のワックスピック強度で7A以上が好ましい。7A未満では、テープ剥離試験や、水・溶剤などの表面の汚染試験で塗工層が剥がれてしまうおそれがある。本発明の防湿化粧シートは、不透明度75%以上である。不透明度が75%未満では、隠蔽性が不十分であり、特に淡色の印刷をした場合には下地が透けてしまうという不具合が発生する。
【0023】
次に、基材紙上に設ける防湿層について説明する。
防湿層を構成する合成樹脂は、それ自体で成膜性があり耐水性を示すものであれば特に制限なく使用可能である。耐水性の指標としては、樹脂単独の被膜を作製し(ガラス板状に合成樹脂の溶液(水溶液あるいはアルカリ性水溶液)あるいはエマルジョンなどを、乾燥後の厚さが50μm〜100μmになるように塗布し、110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)。その被膜を23℃の水(サンプル質量に対して100倍以上の質量の水)の中に24時間、浸漬し(攪拌子でゆっくりとかき混ぜる)、被膜を取り出して乾燥させ(乾燥条件:110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)、その質量減が10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。
【0024】
防湿層を構成する合成樹脂の単独被膜の防湿性は、厚さ20μm換算で透湿度が800g/m・24hr以下、好ましくは600g/m・24hr以下、より好ましくは400g/m・24hr以下である。具体的な測定方法は、上記耐水性の指標と同様に合成樹脂被膜を形成し、JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で透湿度を測定し、該合成樹脂被膜の厚さを測定し、20μm換算の透湿度を求める。この時、透湿度は厚さに反比例すると仮定する。
防湿層を構成する合成樹脂は、水性エマルジョン(ラテックス、乳化物、マイクロエマルジョン、分散物などもエマルジョンに含まれるとする)、あるいはアルカリ水に溶解させたものが好ましい。水溶性あるいは熱水可溶性(水あるいは熱水に対する溶解度が5%以上)の合成樹脂は防湿性が上述した透湿度よりはるかに大きいため好ましくない。例えばポリビニルアルコール(PVA)は水に対する溶解度が5〜30%の範囲にあるが(溶解度は分子量あるいはケン化度に依存する)、その単独被膜(20μm)の透湿度は上述した条件化で1000g/m・24hrを越えるため、本発明では使用できない。
【0025】
また、合成樹脂としては、芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和脂肪酸系単量体、αオレフィン系単量体及びその他の共重合可能な単量体の中から1種又は2種以上を乳化重合したものが挙げられる。具体的には、芳香族ビニル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−ブタジエン系共重合体(SBR)、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるメチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体(MBR)、芳香族ビニル系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−アクリル系共重合体、αオレフィン系単量体と不飽和脂肪酸系単量体の乳化重合から得られるエチレン−アクリル酸系共重合体、1種類あるいは2種類以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体の乳化重合から得られるアクリルエステル系重合体などが挙げられる。これら共重合体は、他の単量体と共重合させて使用してもかまわない。
【0026】
次に単量体について詳述する。芳香族ビニル系単量体は合成樹脂に耐水性と適度な硬さを付与させるもので、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどがあり、スチレンが好適に使用される。
脂肪族共役ジエン系単量体は合成樹脂に柔軟性を付与させるもので、具体的には、ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、1,3−ブタジエンが好適に使用される。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体は合成樹脂に耐水性を付与させるとともに、合成樹脂の硬さやガラス転移温度(Tg)、最低造膜温度(MFT)を調整させるもので、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。
【0027】
不飽和脂肪酸単量体は、合成樹脂の成膜性を向上させるとともに、共重合体の水中でのコロイドとしての安定性を高めるもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル;アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸及びその塩が挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸が好適に使用される。
αオレフィン系単量体は合成樹脂に耐水性と柔軟性を付与させるもので具体的にはエチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0028】
上述した単量体と共重合可能な他の単量体は、合成樹脂の耐水性を高めたり、カチオン基を導入して接着性を高めたり、架橋性の官能基を導入して強度を高めたりするもので、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル;アクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸β-ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸β-ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド及びその誘導体; アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;アクロレイン及びアリルアルコール等のビニル化合物などが挙げられる。
合成樹脂の水性エマルジョンは、上記した各単量体を用いて公知の乳化重合法により製造することができる。即ち、所望の単量体を混合し、これに乳化剤、重合開始剤等を加えて水系で乳化重合を行えばよく、一括して仕込み重合する方法、各成分を連続供給しながら重合する方法などの各種の方法が適用できる。
【0029】
乳化重合用の乳化剤としてはアルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤などが例示される。乳化剤の使用量はエマルジョンに対して要求される性質に応じて変わりうるが、一般に重合安定性を向上させる目的やエマルジョンの機械的、化学的安定性を良好にする目的には乳化剤の使用量は多いことが望ましく、乾燥皮膜の耐水性を向上させるためには逆に使用量が少ない方が望ましく、通常は単量体の合計量100質量部に対して0.1〜5質量部程度の範囲内から目的に応じて使用量が決められる。
【0030】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性タイプなどが用いられる。またさらに必要に応じ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L-アスコルビン酸、糖類、アミン類などの還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。それらの使用量は単量体の合計量100質量部に対して0.01〜3質量部程度とすればよい。重合反応は通常35〜90℃程度で行えばよく、反応時間は通常3〜10時間程度とすればよい。
なお、乳化重合の開始時あるいは終了後に塩基性物質を加えてpHを調整することにより、エマルジョンの重合安定性、凍結安定性、機械的安定性、化学的安定性等を向上させることができる。特に膨潤性無機層状化合物との配合安定性を得るためには、得られるエマルジョンのpHが5以上となるように調整することが好ましい。膨潤性無機層状化合物の水分散液は通常アルカリ性(pH7〜11)を示すため、混和性の面から合成樹脂のエマルジョンはアルカリ性(pH7以上)がより好ましい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0031】
合成樹脂水性分散体の粒子径は一般に100nm〜300nmであるが、粒子径150nm以下、特に60〜100nm程度の小さい粒子径の水性分散体を使用すると成膜性が向上し欠陥の少ない膜ができるため好ましい。
また、合成樹脂としてはポリエステル系樹脂、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリカプロラクタムなど、また、天然系生分解性樹脂も含まれる)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂なども使用することができる。
【0032】
合成樹脂のガラス転移温度(Tg)、最低増膜温度(MFT)、ゲル分率(トルエンに対する不溶分)などには特に制限はないが、Tgは−30℃〜60℃、より好ましくは−20℃〜50℃、更に好ましくは−10℃〜40℃である。MFTは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下が好ましい。ゲル分率は20%〜99%が好ましく、より好ましくは30%〜95%、更に好ましくは40%〜90%である。
Tgが−30℃より小さいと防湿面の粘着性が強くブロッキングを生じやすくなり、Tgが60℃を越えて大きくなると成膜性が低下して防湿性が悪くなる。MFTが70℃より大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。ゲル分率が20%未満になるとブロッキングを生じやすくなり、また、99%を越えて大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。
【0033】
また、本発明の合成樹脂はエマルジョンあるいはラテックスの形態で使用されるが、合成樹脂のエマルジョンあるいはラテックスはアニオン性のものが好ましい。アニオン性にするためにはカルボン酸やスルホン酸基を有するモノマーを共重合させた合成樹脂を使用することが好ましい。合成樹脂がアニオン性を示すと、無機層状化合物に吸着した含窒素化合物と強い総合作用、含窒素化合物中のアミノ基やアミド基と合成樹脂中のカルボン酸基やスルホン酸基が強いイオン結合あるいは、乾燥過程で脱水反応を起こし共有結合を形成し、耐水性が向上し、その結果防湿性が向上する。
【0034】
次に、本発明の防湿化粧シートの防湿層は、無機層状化合物を含有していても良い。
本発明の防湿層に好適に使用できる無機層状化合物としては、第1にはフィロケイ酸塩鉱物が挙げられる。フィロケイ酸塩鉱物に属するものは板状又は薄片状で明瞭な劈開性を有し、雲母族、パイロフィライト、タルク(滑石)、緑泥石、セプテ緑石、蛇紋石、スチルプノメレーン、粘土鉱物などがある。これらの中でも産出される時の粒子が大きく産出量が多い鉱物、例えば雲母族やタルクが好ましい。雲母族には、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母、合成マイカ)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母、カリ四ケイ素雲母、ナトリウム四ケイ素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトなどが挙げられる。組成的にタルクに類似する合成雲母などの合成品も本発明の範疇に含むものとする。
カオリンなどの粘土鉱物は一般的には平板結晶といわれている。しかし、結晶一個をとれば、平板状の部分はあるが全体としては粒状である。しかし、カオリンのうち、意識的に結晶層を剥離し、平板にしたデラミカオリンなどは、本発明における無機層状化合物として用いることができる。また、無機層状化合物の粒子径は、防湿層の膜厚に対応したものを使用することが好ましい。その場合は、無機層状化合物をボールミル、サンドグラインダー、コボルミル、ジェットミルなどの粉砕機で粉砕分級して所望の粒子径を得た後、本発明に使用するものとする。
【0035】
本発明に好適に用いられる無機層状化合物の第2として、膨潤性無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト等を挙げることができる。
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0036】
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
これらの粘土系鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族などの粘土鉱物を挙げることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。特にスメクタイトが好ましく、スメクタイトにはモンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどを挙げることができる。
【0037】
粘土性鉱物(天然品)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、合成スメクタイトとしては、式Na0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OH及び/又はF)1.5〜2.5で示されるものが挙げられる。合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
水熱反応法は、珪酸塩、マグネシウム塩、アルカリ金属イオン、アルカリ金属塩、フッ素イオンなど各種原料を含んだ水溶液あるいは水性スラリーをオートクレーブやパイプリアクターの中で100〜400℃の高温、高圧化のもとで反応させ合成させる方法である。水熱反応法では、結晶の成長が遅いため一般に大きな粒子のものが得られなく、一般に粒子径が10〜100nmのものがほとんどである。もちろん、水熱反応においても、低濃度、低温、長時間の条件で合成すれば粒子径が1μm以上の大きな粒子を製造することは可能だが、製造コストが極端に高くなるといった問題がある。
【0038】
固相反応法はタルクと珪フッ化アルカリと他の原料とともに400℃〜1000℃の範囲で数時間反応させ、合成マイカを製造する方法である。固相反応は原料のタルクの構造を残したまま元素移動を起こしマイカが生成する(トポタキシー)ため、得られる合成マイカの品質が原料のタルク物性やその不純物に依存したり、元素移動を完全にコントロールできないため合成マイカの純度や結晶化度が低いといった問題がある。
熔融法は、無水珪酸、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム、炭酸カリウム、その他の原料をマイカの熔融点(例えば1500℃)以上で熔融後、徐冷結晶化し、合成マイカや合成スメクタイトを製造する方法である。また、加熱方法の違いにより、外熱式熔融法と内熱式熔融法がある。外熱式熔融法は原料を入れたるつぼを熔融点以上の温度の室に入れて昇温後、熔融点以下の温度の室に移動させて製造する方法であるがるつぼの費用が高いといった問題点がある。内熱式熔融法は黒鉛(炭素)電極や金属電極を備えた容器中で通電により原料を加熱熔融させた後、冷却させる方法であり、熔融合成法においては内熱式熔融法が一般的である。熔融合成法は冷却結晶化した塊を粉砕、分級することにより粒子径をコントロールした合成品を製造することができる。熔融合成法は原料として純度が高い原料を使用することができ、熔融化するため原料が均一に混合できるため、結晶化度が高く、粒子径が大きく、純度の高い合成マイカや合成スメクタイトを製造することができるといった利点がある。
【0039】
合成無機層状化合物としては、フッ素金雲母(KMgAlSi10F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg2.5Si10、熔融法)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5Si10、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMgLiSi10、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMgLiSi10、熔融法)などの合成マイカ、ナトリウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi4.010(OH)、水熱反応法)などの合成スメクタイトが挙げられる。
粘土鉱物の市販品としては、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(商標:バンダービルト社製)、ラポナイト(商標:ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts、NTO−5(熔融法、ナトリウム四珪素雲母、商標:トピー工業製)、ベンゲル(商標:豊順洋行社製)、ソマシフME−100(固相反応法合成マイカ、商標:コープケミカル)等を挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。
【0040】
本発明により好ましいものは、水中で容易に膨潤、壁開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開」試験により評価することができる。該膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。膨潤性の具体的なものとしては、上記クニピア(膨潤力:65mL/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60mL/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30mL/2g以上)、ME−100(商標:コープケミカル社製、膨潤力:20mL/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38mL/2g以上)等である。
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。これらの場合、溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0041】
膨潤性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物2gを溶媒100mLにゆっくり加える(100mLメスシリンダーを容器とする)。静置後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(膨潤性無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
へき開性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパーMH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0042】
また、本発明で使用するのに好ましい膨潤性無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が100g当り、30〜300meq、より好ましくは50〜250meq、特に好ましくは60〜200meqである。陽イオン交換容量が30meq/100g未満だと含窒素化合物との効果が小さくなり防湿性に優れない。また、300meq/100gを越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。一般に、天然及び合成スクメタイトは85〜130meq/100gの陽イオン交換容量を有するものが本発明において特に好ましいものである。
陽イオン交換容量の測定は一般にアルコール洗浄法(Schollenberger法あるいはその改良法、和田光史(1981)粘土科学21,160-163参照)と呼ばれる測定方法で行う。膨潤性無機層状化合物の粉末0.2〜1.0gあるいは約1〜3%水分散液を約10〜30mlを100ml容量の遠心分離管に採取する。1Nの酢酸アンモニウム(CHCOONH)液(pH7)を加えて約80mlとして、十分に振とうした後、遠心沈降させ上澄みを捨てる(遠沈洗浄)。遠沈洗浄を4回繰り返した後、遠心分離管に残っている余剰の塩を取り除くため80%エタノール水溶液(pH7)で遠沈洗浄を3回行う。次に10%のNaCl水溶液を用いて遠沈洗浄を4回繰り返し、遠心管の上澄み液をすべて集めて抽出液とする。抽出液のNH4を蒸留法で定量し、試料の乾燥質量(100g)当りのミリグラム当量数(meq)を陽イオン交換容量(cation exchange capacity,CEC)の値とする。なお測定は23℃の環境下で行う。また、測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。
【0043】
膨潤性無機層状化合物としては、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での平均粒子径(レーザー回折法で測定。堀場製作所LA−910.屈折率1.3、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みであり。厚みは、防湿層の断面をSEMやTEMによる写真観察によって求めた値である。平均粒子径は0.1〜100μmが好ましく、とりわけ0.5〜50μmが好ましい。粒子径が0.1μm未満になるとアスペクト比が小さくなる上、防湿層中で防湿面に対して平行に並びにくくなり、防湿効果が不十分になる。粒子径が100μmを越えて大きくなると防湿層から膨潤性無機層状化合物が突き出てしまい好ましくない。
【0044】
これら膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト、天然スメクタイト(モンモリロナイト)が好ましい。これらの中でも、粒子径、アスペクト比、結晶性の面からから熔融合成法で製造されたナトリウム四珪素雲母(トピー工業製、DMA350)やタルクにフッ化ケイ素をインターカレートし約800℃で焼成して得られる膨潤性フッ素マイカが特に好ましい。
また、本発明で使用する無機層状化合物は水、あるいは溶剤中で分散された状態での平均粒子径が20nm〜100μmの間にあるものが好適であり、好ましくは0.1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜30μmである。平均粒子径が20nm未満であると、アスペクト比が小さくなり防湿性向上効果が小さい。一方100μmを越えると塗工層表面から顔料が突き出し、外観不良や防湿性低下を招き好ましくない。
【0045】
本発明で用いる無機層状化合物の水あるいは溶剤に分散された平均粒子径は、平均粒子径が0.1μm以上のものは光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値である。また、水あるいは溶剤に分散された平均粒子径が0.1μmのものについは動的光散乱法を用いて測定した値である。
また、本発明で使用する無機層状化合物の好ましいアスペクト比は5以上であり、特に好ましくはアスペクト比が10以上である。アスペクト比が5未満のものは曲路効果が小さいために防湿性が低下する。アスペクト比は大きいほど無機層状化合物の塗工層中における層数が大きくなるため高い防湿性能を発揮する。無機層状化合物の厚みは、防湿膜の断面写真より測定する。厚みが0.1μm以上のものは電子顕微鏡写真より画像解析して求める。厚みが0.1μm未満のものは透過型電子顕微鏡写真より画像解析して求める。本発明でいうアスペクト比は、上記水、又は溶剤に分散された平均粒子径を防湿膜の断面写真より求めた厚さで除したものである。
防湿層における合成樹脂と無機層状化合物の配合量は、質量換算で99/1〜30/70が好ましく、より好ましくは93/7〜35/65、特に好ましくは95/5〜40/60である。無機層状化合物の配合量が1%未満になると、防湿性向上効果及び離解性向上効果が小さくなる。無機層状化合物が70%を越えて大きくなると、無機層状化合物の間を埋める樹脂が不足して、空隙やピンホールの増大を招き防湿性が悪化する。
【0046】
なお、防湿層には、前述の合成樹脂、無機層状化合物に加えて、防湿性向上のために含窒素化合物が含まれた方が好ましい。
本発明で使用できる含窒素化合物は、水溶液中でカチオン性を示す化合物であれば特に制限はないが、カチオン化度が0.1〜10meq/gのものが好ましく、0.2〜7meq/gが更に好ましく、0.5〜5meq/gが特に好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、カチオン性が弱く、無機層状化合物への吸着力が弱くなるため防湿性が悪くなり、9meq/gを越えて大きいと、塗料が凝集しやすくなり取扱いが困難となるばかりでなく、防湿性も悪化する。
含窒素化合物を具体的に挙げると、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリビニルアミンなどがある。また、含窒素化合物は特開平9−291499号公報に記載の含窒素化合物も使用できる。
【0047】
更に、含窒素化合物としてはイミン化合物やアミン化合物と称せられるものが代表である。これらのうちイミン化合物としてはポリアルキレンイミンが代表であり、ポリエチレンイミン、アルキルあるいはシクロペンチル変性ポリエチレンイミン、エチレン尿素のイミン付加物、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又は、これらのアルキル変性体、アルケニル変性体、ベンジル変性体、もしくは、脂肪族環状炭化水素変性体、ポリアミドイミド、ポリイミドワニス、からなる群より選ばれたポリイミン系化合物がある。
また、アミン化合物としてはポリアルキレンポリアミンがある。例えばポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの化合物である。また同様の効果を示すものとしては、ポリアミドのポリエチレンイミド付加物などの化合物などのポリアミド、ヒドラジン化合物、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物(炭素数3〜10の飽和二塩基性カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとからポリアミドをエピクロルヒドリンと反応させて得られる水溶性で陽イオン性の熱硬化性樹脂)などのポリアミンアミド化合物、4級窒素含有アクリルポリマー、4級窒素含有ベンジルポリマー、ウレタン、カルボン酸アミン塩基を有する化合物、メチロール化メラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン樹脂が挙げられる(カチオン樹脂については特開平8−90898号公報、特開昭63−162275号公報、特開昭62−148292号公報を参照されたい)。更に、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などの尿素化合物やジシアンジアミド誘導体なども本発明の範疇である。
【0048】
また、含窒素化合物はカチオン性を示すために、無機層状化合物のアニオン部分やアニオン性の合成樹脂エマルジョンと混合した時にショック(塗料凝集)を起こすことがある。このようなショックを防止するために塩基性物質を含窒素化合物、無機層状化合物の水溶液や合成樹脂エマルジョン中に加えてアルカリ側(pH7〜10が好ましい)に調整した方が好ましい。特に含窒素化合物に塩基性化合物を添加する方法がショック防止の効果が大きい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0049】
本発明においては、防湿層中にも公知の酸化防止剤を添加することが可能である。防湿層中にも酸化防止剤を添加することで、より変色防止効果を高めることができる。
酸化防止剤としては、二酸化チタン、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらのうちから適宜選択して使用することができる。また、複数組み合わせて使用してもよい。
これらの酸化防止剤の内、フェノール系酸化防止剤の一種であるヒンダードフェノール系酸化防止剤の変色抑制効果が優れており、好適に使用することができる。
【0050】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、フェノールの水酸基に隣接する位置にアルキル基を有する構造を持つ、フェノール由来の水酸基を有する有機化合物である。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−第3ブチル−4−メチルフェノール、2−第3ブチル−4−メトキシ−フェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−エチリデン−ビス(2,4−第3ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−第3ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル、2,4,6−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(4−第3ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−第3ブチル)−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス〔1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−第3−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキザスピロ〔5,5〕ウンデカン、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−第3ブチルフェノール)などがある。
これらの酸化防止剤は合成樹脂に対して0.1〜10質量部添加され使用される。より好適な添加範囲は0.5〜7質量部であり、さらに好適な添加範囲は1〜5質量部である。添加量が0.1質量部未満の場合変色防止効果が不十分となり、添加量が10質量部を超えると変色防止効果が頭打ちになり不経済である。
また、二酸化チタンはアナターゼ型とルチル型がありいずれも本発明の酸化防止剤として使用できる。二酸化チタンの粒子径は5〜300nmが好ましい。
【0051】
本発明においては、防湿層に、さらに、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物などの光安定剤を添加することによって、耐候性を改善することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5′−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3′,5′−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−第3ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾール)フェノール等のベンゾトリアゾール類、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−第3ブチルフェニル−3′−5′−ジ第3ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3−5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類が挙げられる。
【0052】
以上で述べた、合成樹脂エマルジョン、また、これに必要に応じて、無機層状化合物、酸化防止剤等を含有する防湿塗料を調製し、これを紙基材に塗工して防湿層を形成し、本発明の防湿化粧シートを得る。塗工設備には特に限定はなく、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、カーテンコーター等の公知の方式から適宜選択が可能である。特に、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター等の、塗工表面をスクレイプする形式の塗工設備が、無機層状化合物の配向を促し、防湿性を向上させるという点で好ましい。
本発明における防湿層の塗工量は、0.1〜20g/mが好適な範囲である。防湿層塗工量が0.1g/m未満であると、十分な防湿性を得ることができず好ましくない。また塗工量が20g/mを越えると、防湿性が頭打ちとなるため不経済であり、また防湿層の割合が大きくなることで古紙としての価値が低下する。
なお、本発明の防湿層を形成する防湿塗料には、必要に応じて、ポリカルボン酸などの分散剤、シリコーン系などの消泡剤、界面活性剤、保水剤、色合い調整剤、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、マイカ等の任意の顔料などを、添加することが可能である。
なお、防湿塗料の塗工適性や塗工量減少のために、紙基材と防湿層の間に適宜アンカー層を設けることも可能である。
【0053】
前述の通り、通常、防湿化粧シートには、美粧性を付与するために、木目模様等の各種印刷層が設けられているため、防湿性表面に印刷を施す場合、その表面には、印刷適性が必要である。従って、防湿層表面は、高平滑度性であることが望ましい。
防湿層の表面の平滑度は、王研式平滑度で200〜2000秒が好ましく、300〜1500秒がさらに好ましく、400秒〜1000秒が特に好ましい。平滑度が200秒未満だと印刷適性に劣り、美粧性向上の効果が期待できない。また、2000秒を超えると、美粧性向上効果が頭打ちになるばかりか、製造スピードを落とさなくては製造できないため、生産性が悪化する
基材紙の表面の平滑度は、王研式平滑度で200秒以上が好ましく、300秒以上がさらに好ましく、400秒以上が特に好ましい。平滑度が200秒未満だと印刷適性が十分でない場合がある。
また、本発明においては、印刷適性を向上させるために、防湿層を形成後にカレンダー処理を施して、表面平滑性を向上させることができる。
【0054】
また、本発明の防湿化粧シートには、その最外層に、保護樹脂層を設けることがさらに好ましい。保護樹脂層としては、通常塗工に用いられる任意の合成樹脂から目的に応じて適宜選択が可能であるが、アクリルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリウレタン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が好適に用いられる。
【0055】
本発明の防湿化粧シートを木質ボードの少なくとも片面に貼合することで、化粧板が得られる。
木質ボードとは、木質材料からなる面材であれば特に限定はなく、単板、合板、平行合板、パーティクルボード、さらには、インシュレーションボード、MDF、ハードボード等のファイバーボードが使用可能である。
この中でも、湿度の影響によって反りが生じ易いMDFにおいても、本発明の防湿化粧シートを貼合することで、優れた反り防止効果が発揮される。
防湿化粧シートを木質ボードに貼合する場合は接着剤を用いることが好ましい。使用する接着剤には特に制限は無く、要求物性等に応じて従来公知の接着剤から適宜選択使用することができる。例えば具体的には、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂、或いはウレタン樹脂等の硬化性樹脂等を用いることができる。
これらの接着剤は、溶液や分散液、或いは溶融物等任意の形態で木質ボードに塗工することができる。塗工は、ロールコートやスプレーコート等の従来公知の方法で行なうことができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により詳説する。
<防湿塗料A>
水83質量部に、25%アンモニア水(和光純薬製、特級)5.5部を攪拌しながら添加後、カチオン性樹脂(住友化学製、商標:SPI203、固形分50%、ポリアミンポリアミド樹脂)41質量部を添加し、10分間攪拌した。この水性分散液にSBRラテックス(日本ゼオン製、商標LX407S12、固形分46%)を1000質量部添加後、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、商標NTO−5、固形分6.0%、合成マイカ、ナトリウム四珪素雲母)460質量部を添加し10分間攪拌して防湿塗料Aを得た。
【0057】
<防湿塗料B>
水83質量部に、25%アンモニア水(和光純薬製、特級)5.5部を攪拌しながら添加後、カチオン性樹脂(住友化学製、商標:SPI203、固形分50%、ポリアミンポリアミド樹脂)41質量部を添加し、10分間攪拌した。この水性分散液にSBRラテックス(日本ゼオン製、商標LX407S12、固形分46%)を1000質量部添加後、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、商標NTO−5、固形分6.0%、合成マイカ、ナトリウム四珪素雲母)460質量部を添加し10分間攪拌した。この水性分散液に酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤である4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリブチル−3−メチルフェノール)(分子量383、融点205℃以上、川口化学工業製、商標:アンテージ W−300)の水分散液(固形分30%、ポリカルボン酸系分散剤を酸化防止剤に対して1質量%添加して、カウレス分散機で30%間分散した液)46質量部を添加し10分間攪拌して防湿塗料Bを得た。
【0058】
<防湿塗料C>
水153質量部に、25%アンモニア水(和光純薬製、特級)5.5部を攪拌しながら添加後、カチオン性樹脂(住友化学製、商標:SPI203、固形分50%、ポリアミンポリアミド樹脂)41質量部を添加し、10分間攪拌した。この水性分散液にSBRラテックス(日本ゼオン製、商標LX407S12、固形分46%)を1000質量部添加後、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、商標NTO−5、固形分6.0%、合成マイカ、ナトリウム四珪素雲母)460質量部を添加し10分間攪拌した。この水性分散液に酸化防止剤として二酸化チタン(硫酸法酸化チタン、アナタース型、石原産業製、商標:W−10、平均粒子径0.15μm)の水分散液(固形分60%、ポリカルボン酸系分散剤を二酸化チタンに対して1質量%添加して、カウレス分散機で30%間分散したもの)77質量部を添加し10分間攪拌して防湿塗料Cを得た。
【0059】
<防湿塗料D>
水83質量部に、25%アンモニア水(和光純薬製、特級)5.5部を攪拌しながら添加後、カチオン性樹脂(住友化学製、商標:SPI203、固形分50%、ポリアミンポリアミド樹脂)41質量部を添加し、10分間攪拌した。この水性分散液にSBRラテックス(日本ゼオン製、商標LX407S12、固形分46%)を1000質量部添加後、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、商標NTO−5、固形分6.0%、合成マイカ、ナトリウム四珪素雲母)460質量部を添加し10分間攪拌した。この水性分散液に酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤である4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリブチル−3−メチルフェノール)(分子量383、融点205℃以上、川口化学工業製、商標:アンテージ W−300)の水分散液(固形分30%、ポリカルボン酸系分散剤を酸化防止剤に対して1質量%添加して、カウレス分散機で30%間分散した液)46質量部を添加し10分間攪拌し、さらに二酸化チタン(硫酸法酸化チタン、アナタース型、石原産業製、商標:W−10、平均粒子径0.15μm)の水分散液(固形分60%、ポリカルボン酸系分散剤を二酸化チタンに対して1質量%添加して、カウレス分散機で30%間分散したもの)77質量部を添加し10分間攪拌して防湿塗料Dを得た。
【0060】
<実施例1>
広葉樹晒パルプ(LBKP)100%の原料をフリーネス300mlcsfに叩解する。填料として二酸化チタン(硫酸法酸化チタン、アナタース型、石原産業製、商標:W−10、平均粒子径0.15μm)を灰分5%となるように調整して添加し、また、絶乾原料パルプに対し、紙力増強剤としてポリアクリルアミド(荒川化学工業社製ポリストロン197)2.0%、カチオン化澱粉(王子コンスターチ社製、エースK100)0.8%、サイズ剤(荒川化学社製、サイズパインN−775)0.25%、その定着剤として硫酸バンド1.6%(各薬品とも絶乾質量%)を添加し、パルプスラリーとした。
このパルプスラリーを、短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキードライヤーにて乾燥して、坪量30g/mの原紙を得た。艶面の王研式平滑度は680秒であった。
続いて、調整例1で得られた防湿塗料Aを上記原紙の片艶面にコーターにより12g/m2塗工し、スーパーカレンダー処理を施して、防湿化粧シートを製造した。
【0061】
<実施例2>
二酸化チタンの内添量を灰分として1%としたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0062】
<実施例3>
二酸化チタンの内添量を灰分として3%としたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0063】
<実施例4>
二酸化チタンの内添量を灰分として10%としたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0064】
<実施例5>
二酸化チタンの内添量を灰分として15%としたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0065】
<実施例6>
填料として、二酸化チタン(塩素法酸化チタン、ルチル型、石原産業製、商標:CR−50、平均粒子径0.25μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0066】
<実施例7>
防湿塗料Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0067】
<実施例8>
防湿塗料Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0068】
<実施例9>
防湿塗料Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0069】
<実施例10>
防湿塗料の塗工量を6g/mとしたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0070】
<実施例11>
防湿塗料の塗工量を3g/mとしたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0071】
<実施例12>
原紙の坪量を20g/mとしたこと以外は、実施例10と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0072】
<実施例13>
原紙の坪量を45g/mとしたこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0073】
<比較例1>
二酸化チタンを内添しなかったこと以外は、実施例1と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0074】
<比較例2>
二酸化チタンを内添しなかったこと以外は、実施例7と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0075】
<比較例3>
二酸化チタンを内添しなかったこと以外は、実施例8と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0076】
<比較例4>
二酸化チタンを内添しなかったこと以外は、実施例9と同様にして防湿化粧シートを製造した。
【0077】
実施例、比較例で得た防湿化粧シートを以下の方法で評価、結果を表1に示す。
[評価方法]
1.耐熱黄変のテスト
防湿化粧シートを3枚ずつバラバラにして150℃に調整した定温機中で10分間放置した後、L値を測定した。なお、測定面は防湿面として反対側には暗箱を設置した。測定機はスガ試験機製の分光白色時計「SC−10WP」を用いた。
ΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2で定義されるΔEが3未満を合格、3以上を不合格とした。
ΔL=(熱処理後のΔL)−(熱処理前のΔL
Δa=(熱処理後のΔa)−(熱処理前のΔa
Δb=(熱処理後のΔb)−(熱処理前のΔb
【0078】
2.透湿度の測定
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で、防湿包装紙の塗工面を外側にして透湿度を測定した。(単位:g/m・24hr)
【0079】
3.紙層間強度(J.TAPPI19−2に準ずる)
試験シートの表裏面にテープを貼り付けた後、試験シートを巾方向15mm、流れ方向は約200mmにカットする。テープ端部を持ち、予め試験片の一端から約20mmの長さにわたって、厚さの中央に近い部分で紙層間を剥離しておく。剥離した部分を試験機に挟み、T字形になるようにして、引張試験機にて剥離していく。剥離速度は500mm/minとする。剥離強さの平均値を読み取る。
【0080】
4.平滑度
王研式平滑度(J.TAPPI−5)によって防湿面の平滑度を測定した。
5.坪量
防湿化粧シートを23℃50%の環境に3時間放置して調湿してJISP8113に準じて坪量を求めた。
【0081】
表1により明らかなように、基材紙に二酸化チタンを内添させることで、耐熱黄変が良好な防湿化粧シートを得ることができる。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材紙に合成樹脂を含有する防湿層を設けてなる防湿化粧シートであって、該基材紙中に填料として二酸化チタンが含まれることを特徴とする防湿化粧シート。
【請求項2】
該基材紙中に含まれる二酸化チタンが、パルプ絶乾質量に対して1〜15質量%であることを特徴とする請求項1に記載の防湿化粧シート。
【請求項3】
該基材紙中にポリアクリルアミド系紙力剤を、パルプ絶乾質量に対して0.5〜3質量%含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の防湿化粧シート。
【請求項4】
防湿層表面の王研式平滑度が200秒以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防湿化粧シート。
【請求項5】
防湿層に無機層状化合物が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防湿化粧シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防湿化粧シートが木質ボードに貼合されていることを特徴とする化粧板。

【公開番号】特開2009−68137(P2009−68137A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237339(P2007−237339)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000191320)王子特殊紙株式会社 (79)
【Fターム(参考)】