説明

防災無線応用災害支援システム

【課題】防災無線を有効活用し低コストで非常時でも機能を失わないようにした防災無線応用災害支援システムを提供する。
【解決手段】各市町村庁11〜1Nと都道府県庁20との間を防災無線30と電話回線40の2種の回線で接続し、各市町村庁11〜1Nと都道府県庁20との間で災害に関する情報を伝達する際に、データ量の少ない文字データ等の情報を防災無線30で伝送するとともに、データ量の多い画像データ等の情報を電話回線40で伝送し、且つ電話回線40が切断されたときは防災無線30により情報の全部を伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災無線と電話回線の2種の回線を利用して災害情報の伝送を行う防災無線応用災害支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震、台風、豪雨、津波などの多くの自然災害に見舞われてきたわが国では、国や地方自治体が主体となり、非常災害時における災害情報の収集・伝送手段の確保を目的とした防災無線が整備されてきた。
【0003】
防災無線では、一般に、超短波(VHF)と極超短波(UHF)の周波数帯が使われている。これは、超短波や極超短波は直進性があるものの、山や建物の陰にもある程度回り込んで伝わることができることからである。
【0004】
これらの超短波や極超短波は、図8に示すように、音声情報だけを考えれば、その特性を十分に活かせるものの、FAX情報をはじめ、地図や写真等の情報量の多い画像情報の伝送になるにつれて、その伝送時間が延び、あまり多角的な活用は難しい。特に、防災無線では、通話時間に制限があるため、音声情報を除いた用途での活用が難しいとされてきた。
【0005】
そこで、近年、高性能なコンピュータを中心に、GIS(地理情報システム)、画像伝送システム、光ファイバケーブル等の大容量回線を活用して、災害発生時に迅速かつ正確な災害発生地の特定、災害対策車両などへの的確な指示、被害や対策状況の把握等の実現を図った災害支援システムが各種提案されるに至っている。
【0006】
例えば、災害発生直後の時々刻々と変化する被害状況を迅速かつ的確な情報を広範囲からリアルタイムで収集するシステム(例えば、特許文献1)では、高性能の処理部を備え、大容量回線でシステムを構築し、迅速かつ高精度に被害情の収集が可能となるようにしている。
【0007】
また、災害による被害が発生したときに、迅速に被害状況を把握するとともに、災害復旧作業を的確に行うための情報を収集し、災害復旧の初動活動から対策活動までの一連の作業を効率的に行える被害情報収集管理装置(例えば、特許文献2)では、各被害エリアの代表点の位置と画像データの撮影場所の位置との距離を求め、最小の値となる被害エリアに関連付けて画像データを保存できるようにしている。
【0008】
さらに、携帯端末から無線を介し、各地域において被害状況に関する情報の収集や緊急活動等の作業を迅速的確に行えるシステム(例えば、特許文献3)では、作業者が持つ携帯端末にGPS受信機能を持たせておくことで、作業者の所在位置をセンターで把握し、被害状況の報告指示などを示す作業指示情報を特定の地域に所在する携帯端末に送信できるようにしている。
【0009】
一方、現在、自治体を中心に整備されつつある災害支援システムの一例として、図9に示すように、県内の全市町村庁11〜1Nと都道府県庁20との間を光ファイバケーブル50で結ぶ形で構成されるシステムがある。この災害支援システムでは、一般に、市町村庁11〜1Nにおいて収集した各種情報をPC端末から入力して光ファイバケーブル50により都道府県庁20に対してオンライン伝送し、都道府県庁20で一括収集してこれらの情報を県の災害対策などに役立てる他、国や関係機関との連携に役立てている。
【特許文献1】特開2003−346268号公報
【特許文献2】特開2001−344285号公報
【特許文献3】特開2002−015099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3で提案されたものは、近年の情報通信製品(技術)を取り込み、システムの拡張を図った発明にすぎず、既存の防災無線の能力を引き出そうとする観点から発明したものではない。また、これらはシステムの高度化を目指しているが、システム自体の災害対策までを踏まえたものではない。
【0011】
一方、図9に示したシステムでは、光ファイバケーブル50等の大容量回線は、その敷設や整備維持費用が高額であり、また、その多くは、大雨や地震などの際に断線が発生するなどの災害時に弱いという問題がある。したがって、図10に示すように、光ファイバケーブル50等の他に、衛生回線60等のバックアップ回線を備えることが望まれるところであるが、さらなるコスト高を招く問題がある。
【0012】
本発明の目的は、防災無線を有効活用し低コストで非常時でも機能を失わないようにした防災無線応用災害支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、複数の市町村庁と都道府県庁との間で災害に関する情報を伝送する防災無線応用災害支援システムであって、前記各市町村庁と前記都道府県庁との間を防災無線と電話回線の2種の回線で接続し、前記各市町村庁と前記都道府県庁との間で災害に関する情報を伝達する際に、データ量の少ない文字データ等の情報を前記防災無線で伝送するとともに、データ量の多い画像データ等の情報を前記電話回線で伝送し、且つ前記電話回線が切断されたときは前記防災無線により前記情報の全部を伝送することを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の防災無線応用災害支援システムにおいて、前記電話回線が切断された1又は2以上の前記市町村庁から前記防災無線で前記都道府県庁に伝送される前記情報のデータを、前記都道府県庁において受信順にまとめてから前記市町村庁毎に組み立てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防災無線の有効活用を図り、回線の二重化を低コストで実現することができる。また、通常災害時は防災無線と電話回線を情報の性質に応じて使い分けることで情報伝送の高速化を図ることができ、電話回線が切断された非常災害時では防災無線を使用することで情報伝送の確実性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の防災無線応用災害支援システムは、図1に示すように、複数の市町村庁11〜1Nと1つの都道府県庁20とを結ぶ回線として、既存の防災無線30に加えて、アナログ又はデジタルの電話回線40を備え、伝送路を二重化したものである。この防災無線応用災害支援システムの運用においては、通常の災害発生時は、図1に示すように、防災無線30と電話回線40の両方を伝送路として使用するが、電話回線40自体が断線になった非常災害時は、図2に示すように、防災無線30による伝送路を専ら使用するものである。このように、既存の防災無線30と既存の電話回線40を併用することで、防災無線30の有効利用、情報伝送量の増大化、電話回線40の断線に対する備えを、低コストで実現できる。
【実施例】
【0016】
図3は、本発明の実施例の防災無線応用災害支援システムの伝送処理の説明図である。防災無線30と電話回線40が共に正常に機能している通常の災害発生時には、市町村庁11(他の市町村庁12〜1Nも同じ)で収集した災害情報は、防災無線30の伝送速度と電話回線40の伝送速度と情報の種類とに応じて、それら防災無線30用と電話回線40用に2種類に振り分けられる。つまり、文字データ等の小さなデータ量の情報は防災無線30用に振り分けられ、画像データ等の大きなデータ量の情報は電話回線40用に振り分けられて、それぞれ都道府県庁20に伝送される。例えば、市町村庁11からデータA〜Fからなる災害情報を都道府県庁20に伝送するとき、小さなデータAは防災無線30により送り、大きなデータB,C,D,E,Fは電話回線40により送ることにより、全情報をほぼ同時的に伝送することができる。
【0017】
図4は、例えば市町村庁11〜15と都道府県庁20との間の電話回線40が断線不通になった非常時の伝送処理の説明図である。この場合は、各市町村庁11〜15において送信すべき災害情報のデータを、防災無線30を用いて都道府県庁20に送り、都道府県庁20にて各市町村庁11〜15から送られてきたデータを受信順にまとめてから、市町村庁11〜15毎の情報に組み立て、情報収集する。
【0018】
例えば、市町村庁11〜15毎の情報が、データA1〜F1,A2〜F2,A3〜F3,A4〜F4,A5〜F5であるとき、ある時刻範囲では、市町村庁11からデータA1が、市町村庁12からデータA2が、市町村庁13からデータA3が、市町村庁14からデータA4が、市町村庁15からデータA5が、それぞれ防災無線30により都道府県庁20に送られ、当初はそれらが受信され、A1〜A5が受信データとなる。以後、データB1〜B5,C1〜C5,D1〜D5,E1〜E5,F1〜F5が順次送られて、都道府県庁20で受信される。そして、これらの受信毎のデータが、各市町村庁11〜15毎の情報のデータA1〜F1,A2〜F2,A3〜F3,A4〜F4,A5〜F5として組み立てられる。このように、電話回線40が断線した際は、防災無線30で情報が伝送できるので時間はかかるものの、情報途絶を回避することができる。
【0019】
図5は本実施例の防災無線応用災害支援システムの具体的構成を示すブロック図、図6は市町村庁の側の処理のフローチャート、図7は都道府県庁の側の処理のフローチャートである。災害発生時には、各市町村庁11,12(ここでは、2個のみを示す)において、PC端末101によって災害情報のデータを入力し、伝送すべきデータを作成する(S1)。このとき、そのデータはデータベース102にも蓄積される。また、伝送すべき情報のデータ量の算出やデータ構成(文字データ、画像データ等の区別)の把握を行う(S2)。次に、利用回線を選定する(S3)が、通常の災害発生時は、前記したように、防災無線30と電話回線40の両方を使う。そして、伝送すべき情報について、前記したように、例えば、小さなデータ量の情報は防災無線30に割り振り、大きなデータ量の情報は電話回線40に割り振るよう情報を分解する(S4)。なお、電話回線40が断線している場合は、伝送すべき情報の全てのデータを防災無線30に割り振る。そして、データを伝送する(S5)。なお、この伝送データはパケット化されるが、その前にデータ総量がステップS1で作成されたデータの総量と同じことを確認する。防災無線30を経由するデータは、インターフェース103で変調され、無線機104を介して防災無線30の電波により伝送される。電話回線40を経由するデータは、モデム105により変調されて電話回線40に送られる。
【0020】
都道府県庁20では、防災無線30を経由した情報は、無線機201で受信され、インターフェース202において復調され、内部のLAN203に送られる。また、電話回線40を経由した情報は、モデム204で復調されてからLAN203に送られる。そして、LAN203に載せられた災害情報のデータは、データ制御サーバ205と処理サーバ206によって処理される。すなわち、各市町村毎に伝送されてくるデータ総量は先頭のパケットにより把握され(S11)、また市町村毎に把握したデータ総量について、利用回線毎のデータ量の把握も行われ(S12)、利用回線毎にデータが受信される(S13)。そして、そのデータを一時保存して(S14)、利用回線毎にステップS12で把握したデータ量と一致することの確認が行われる。この後、それらのデータは市町村庁毎の情報のデータに合成され(S15)、ステップS11で把握したデータ総量と一致することが確認されてからデータベースサーバ207により保存される。このようにして得られた各市町村毎の災害情報は、Webサーバ208により関係機関に伝送されたり公開される他、PC端末209により閲覧可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1つの実施例の防災無線応用災害支援システムの構成図である。
【図2】図1の防災無線応用災害支援システムにおいて、電話回線が切断された際に行われる運用の説明図である。
【図3】市町村庁から都道府県庁に通常災害時に災害情報を伝送するときの情報のデータの防災無線と電話回線への割り振りの処理の説明図である。
【図4】市町村庁から都道府県庁に電話回線切断時に災害情報を伝送するときの情報のデータの割り振りと組み立ての処理の説明図である。
【図5】図1の防災無線応用災害支援システムの具体的な構成を示すブロック図である。
【図6】図5における市町村庁での処理のフローチャートである。
【図7】図5における都道府県庁での処理のフローチャートである。
【図8】情報の種別による伝送時間の違いの特性図である。
【図9】従来の災害支援システムの一例の構成図である。
【図10】図9の災害支援システムを改善した一例の構成図である。
【符号の説明】
【0022】
11〜1N:市町村庁、101:PC端末、102:データベース、103:インターフェース、104:無線機、105:モデム
20:都道府県庁、201:無線機、202:インターフェース、203:LAN、204:モデム、205:データ制御サーバ、206:処理サーバ、207:データベースサーバ、208:Webサーバ、209:PC端末
30:防災無線
40:電話回線
50:光ファイバケーブル
60:衛星回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の市町村庁と都道府県庁との間で災害に関する情報を伝送する防災無線応用災害支援システムであって、
前記各市町村庁と前記都道府県庁との間を防災無線と電話回線の2種の回線で接続し、前記各市町村庁と前記都道府県庁との間で災害に関する情報を伝達する際に、データ量の少ない文字データ等の情報を前記防災無線で伝送するとともに、データ量の多い画像データ等の情報を前記電話回線で伝送し、且つ前記電話回線が切断されたときは前記防災無線により前記情報の全部を伝送することを特徴とする防災無線応用災害支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の防災無線応用災害支援システムにおいて、
前記電話回線が切断された1又は2以上の前記市町村庁から前記防災無線で前記都道府県庁に伝送される前記情報のデータを、前記都道府県庁において受信順にまとめてから前記市町村庁毎に組み立てることを特徴とする防災無線応用災害支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−228149(P2007−228149A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45395(P2006−45395)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】