説明

防爆型データ通信システム

【課題】防爆構造を使用した電磁誘導方式を用いた防爆型データ通信システムにおいて、防爆構造の強度を確保しつつ、通信距離を延ばす。
【解決手段】第1機器10が金属製の防爆筐体14内に設置され、防爆筐体14には窓開口14cが設けられて窓開口14cが非金属製の閉塞板14d、14eによって塞がれている。防爆筐体14に設けられた窓開口14cには、搬送周波数に同調する共鳴コイル50、52が設けられて、共鳴コイル50、52を介して第1機器のコイルアンテナと第2機器のコイルアンテナとの磁気結合を行い、第1機器と第2機器との間で非接触データ伝送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆構造を使用しなければならない環境下において、電磁誘導方式を用いたデータ通信を行う防爆型データ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防爆型データ通信システムとしては、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1では、質問波を放射する質問器と、受信した質問波を変調し応答波として放射する応答器とから構成され、質問器の筐体に耐圧防爆ケースを使用し、耐圧防爆ケースの一部に送受信用の電波を通過させる電波放射用窓を設けて、電波放射用窓を通して質問波と応答波とを送受している。
【0004】
特許文献2では、防爆構造の筐体内にアンテナを含む無線基地局装置を収納し、防爆構造の筐体においてアンテナとの対向面を非金属材料によって形成しており、アンテナが突出しないようにし、無線基地局装置がアンテナ及び非金属材料の対向面を介して外部との間で電波の送受信をすることができるようにしている。
【0005】
特許文献3では、耐圧防爆構造の無線通信機器において、第一のガラス板と第一のガラス板と合わせガラスを構成する第二のガラス板と、第一のガラス板と第二のガラス板との間に挟まれた導電体により防爆アンテナを構成するようにしている。
【0006】
また、電磁誘導方式を用いた防爆型データ通信システムとしては、特許文献4〜7に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3003069号公報
【特許文献2】特開2005−348542号公報
【特許文献3】特開2010−011225号公報
【特許文献4】特開2003−341798号公報
【特許文献5】特許第4072021号公報
【特許文献6】特許第4170036号公報
【特許文献7】特開2005−162248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電磁誘導方式を用いた防爆型データ通信システムにおいて、特許文献1または特許文献2のように防爆筐体内にアンテナを配置した場合には、非金属材料よりなる窓を介して磁界結合を行わなければならず、通信距離を延ばすことができず、外部とのデータ通信が困難であるという問題がある。窓の面積を大きくすれば、通信距離を延ばすことが可能であるが、あまり窓の面積を大きくすることは強度上好ましくない。
【0009】
特許文献3のように防爆アンテナを防爆筐体よりも突出させると、構造が複雑であり、また、強度上も好ましくない。
【0010】
また、特許文献3のようにアンテナを窓に一体とした場合には、窓を含む蓋部を開けてメンテナンスを行うとき等に、アンテナからのケーブルが蓋部と防爆筐体本体との間に挟まれるおそれがあり、好ましくない。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、防爆構造を有し、電磁誘導方式を用いた防爆型データ通信において、防爆構造の強度を確保しつつ、通信距離を延ばすことができる防爆型データ通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、第1機器と第2機器の一方が金属製の防爆筐体内に設置され、防爆筐体には開口が設けられて開口が非金属製の閉塞板によって塞がれており、開口を通して、第1機器のコイルアンテナと第2機器のコイルアンテナとの間の磁気結合により第1機器と第2機器との間で非接触データ伝送を行う防爆型データ通信システムにおいて、
開口内または閉塞板には、搬送周波数に同調する少なくとも1つの共鳴コイルが設けられて、共鳴コイルを介して第1機器のコイルアンテナと第2機器のコイルアンテナとの磁気結合を行うことを特徴とする。
【0013】
前記防爆筐体は、開口及び閉塞板を含む蓋部と、第1機器または第2機器が納まる本体とを備えており、蓋部は本体に対して変位可能とすることができる。
【0014】
また、前記磁気結合により、第1機器から第2機器に向けて非接触に電力を伝送することができる。
【0015】
そして、前記防爆筐体内に前記第1機器が設置されており、第1機器は前記第2機器に格納されたデータを読み出すものとすることができる。
【0016】
または、前記防爆筐体内に前記第2機器が設置されており、前記磁気結合により、前記第1機器から第2機器に向けて電力が供給されて、磁気結合が確立された状態でのみ第2機器または第2機器に接続された別の機器が動作するものとすることができる。
【0017】
また、第1機器と第2機器の他方が金属製の別の防爆筐体内に設置されて、別の防爆筐体には開口が設けられて開口が非金属製の閉塞板によって塞がれており、該開口を通して、第1機器と第2機器との間で非接触データ伝送を行うことができる。
【0018】
前記共鳴コイルは前記閉塞板の内面側に設けられることができる。
【0019】
また、前記開口には複数の閉塞板が設けられ、該複数の閉塞板の間に共鳴コイルが配置されることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、開口内または非金属製閉塞板に共鳴コイルを設けることにより、防爆筐体による磁束の損失を最小限として、第1機器のコイルアンテナと第2機器のコイルアンテナとの間の磁気結合による通信距離を延ばすことができる。このため、開口の面積が小さくても、防爆筐体内外で通信を行うことができるので、防爆筐体の強度を確保することができる。
【0021】
さらに、開口内または閉塞板には、コイルアンテナを設ける必要がなく共鳴コイルを設けるだけとすることができるので、開口及び閉塞板を含む蓋部を、防爆筐体の本体に対して変位させたときに、蓋部と共に共鳴コイルが変位し、その際に蓋部からケーブルが垂れ下がることがないので、メンテナンス等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による第1実施形態によるデータ通信システムを表す断面図である。
【図2】本発明による第1実施形態によるデータ通信システムを表す別の断面図である。
【図3】本発明による第1実施形態によるデータ通信システムを表すブロック図である。
【図4】本発明による第1実施形態によるデータ通信システムの窓開口付近の分解斜視図である。
【図5A】本発明による第1実施形態に対応する態様を表す断面図である。
【図5B】本発明による別の態様を表す断面図である。
【図5C】本発明による別の態様を表す断面図である。
【図5D】本発明による別の態様を表す断面図である。
【図6】共鳴コイルの効果を実証する実験条件を表す概略図である。
【図7】図6の実験による伝送効率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態によるデータ通信システムを表す図である。
【0025】
データ通信システムは、第1機器10と、第2機器12とから構成される。第1機器10はリーダ装置またはリーダ/ライタ装置とすることができ、第2機器12は、一般的にICカード、ICタグと呼ばれているメモリキャリアとすることができ、第1機器10から第2機器12へと電力が供給されると共に第1機器10からの送信信号に対して第2機器12から応答信号が返信されるようになっている。
【0026】
第1機器10と第2機器12とは互いに空間的に離れて、且つ、原則的には、相対的に移動可能であり、この実施形態では、第2機器12が可搬性のメモリキャリアとなっている。
【0027】
第1機器10は、金属製の防爆筐体14内に配置される。防爆筐体14は、第1機器10を含めた機器が納まる本体14aと、蓋部14bとからなり、蓋部14bは本体14aに対して開閉可能となっている。蓋部14bの一部には窓開口14cが設けられ、窓開口14cは、非金属製のガラスまたはプラスチックからなる閉塞板としての窓(第1窓)14d、窓(第2窓)14eによって塞がれている。窓開口14c内及び/または窓14d、14eには、後述の共鳴コイル50、52が設けられる。
【0028】
好ましくは、窓14d、14eは透明または半透明であり、窓14d、14eを介して外部から防爆筐体14内が視認可能となっている。そして、窓開口14cに対向するようにして、LCD表示装置16が設けられる。また、防爆筐体14内には、その他の任意の機器を含めることができる。第1機器10を含めて防爆筐体14内の機器には、防護筐体14外部から電源ケーブル(不図示)を介して電力が供給される。または、防護筐体14外部から電力が供給される代わりに、防爆筐体14内にバッテリが配置されて、バッテリから電力が供給されるようにしてもよい。
【0029】
図3に示すように、第1機器10は、信号処理回路20、発振器21、D/A変換器22、増幅器24、第1コイルアンテナ26、変調器28、増幅器30、フィルタ32、A/D変換器34及び相関計算器36を備える。
【0030】
第1機器10において、発振器21からの発振信号を適宜分周して得られる周波数fのデジタル信号は、信号処理回路20からD/A変換器22を経て、搬送周波数f(例えば、13.56MHz)の信号となり、また、信号処理回路20から出力されるベースバンド信号によって、変調器28によって変調されて、第1コイルアンテナ26から磁界が発生され、これが送信信号となる。
【0031】
ここで、第1コイルアンテナ26は、コンデンサCと共にLC並列共振回路を構成しており、搬送周波数fに同調されている。但しLC並列共振回路の代わりにLC直列共振回路を構成してもよい。
【0032】
第2機器12は、第2コイルアンテナ40、制御回路42、不揮発性メモリ44、拡散符号系列発生回路46及び負荷変調回路48を備える。制御回路42はさらに、図示しないが内部に電源発生回路及び復調回路を備える。
【0033】
第1コイルアンテナ26によって発生された磁界により第2コイルアンテナ40に誘導された電圧は、制御回路42中の電源発生回路において、整流、平滑され直流電源となる。同時に、制御回路42の復調回路によって復調が行われ、復調信号に含まれたコマンドに従ったデータが不揮発性メモリ44から読み出される。そして、そのデータに応じて、拡散符号系列発生回路46で発生する拡散符号系列が指定される。負荷変調回路48において、搬送波を分周して副搬送波を発生し、拡散符号系列発生回路46で発生された拡散符号系列に応じて副搬送波で負荷を変動させて、第2コイルアンテナ40によって発生させる磁界を変動させて、それを返信信号とする。
【0034】
尚、第2機器12は、負荷変調を行う代わりに位相変調することもでき、この場合でも、同様に、第1機器10においてフィルタ32で搬送周波数を除去し、返信信号を確実に受信することができる。また、第1機器10にPLL回路を備えて位相復調することで、返信信号を復調することができる。
【0035】
ここで、第2コイルアンテナ40においても、コンデンサCと共にLC並列共振回路を構成しており、搬送周波数fに同調されている。
【0036】
第2コイルアンテナ40からの返信信号は、第1コイルアンテナ26で捉えられると、増幅器30で増幅され、フィルタ32によって搬送周波数と副搬送周波数との差周波数近傍の信号だけが取り出されて、A/D変換器34でデジタル変換されて、相関計算器36に入力される。
【0037】
相関計算器36は、ソフトウエアまたはハードウエアによって所定の拡散符号系列との相関をとり、その相関計算結果を信号処理回路20へと送るものである。
【0038】
図4に示すように、第1コイルアンテナ26は、防爆筐体14の本体14a内に配置され、この例では、LCD表示装置16の表示部16aの周囲に数巻して固着される。
【0039】
また、防爆筐体14の蓋部14bの窓開口14c内には、共鳴コイル50、52が設けられる。共鳴コイル50は、第1コイルアンテナ26との磁界結合が可能な程度に近傍に距離をおいて配置される。この例では、窓開口14cの第1窓14dの裏面(内面)に、第1コイルアンテナ26と同じように、数巻して固着される。共鳴コイル50は、コイルの分布容量によってLC共振回路を構成しており、その自己共振周波数fは、搬送周波数にほぼ同調されており、そのQは50〜200程度の間に設定される。
【0040】
同様に、共鳴コイル52は、共鳴コイル50との磁界結合が可能な程度に近傍に距離をおいて配置される。この例では、窓開口14cの第2窓14eの裏面(内面)に形成された溝内に配置されるので、共鳴コイル52は、第1窓14dの表面(外面)側に設けられる。共鳴コイル52は、コイルの分布容量によってLC共振回路を構成しており、その自己共振周波数fは、搬送周波数にほぼ同調されており、そのQは50〜200程度の間に設定される。
【0041】
以上のように構成されるデータ通信システムにおいては、共鳴コイル50、52を窓開口14c内に設けることによって、そのエネルギー伝送効率を上げることができて、金属製の防爆筐体14によって磁束の損失が発生したとしても、その磁束の損失を最小限として、第1コイルアンテナ26と第2コイルアンテナ40との間の通信距離を延ばすことができる。
【0042】
よって、窓開口14cの面積が小さくても、防爆筐体14内外で通信を行うことができるので、防爆筐体14の強度を確保することができる。
【0043】
また、蓋部14bを開けて、本体14a内の機器のメンテナンスを行う際にも、共鳴コイル50、52には給電ケーブルといったケーブルが一切接続されていないので、ケーブルが挟まったりする恐れも無く、容易に蓋部14bを開閉することができる。
【0044】
窓開口14cを介してLCD表示装置16の表示部16aの表示を防爆筐体14の外部から視認することができ、この際に、第1コイルアンテナ26、共鳴コイル50、52が表示の邪魔になることがない。
【0045】
表示部16aで表示される内容としては、第2機器12からの返信信号に含まれるデータとしてもよいし、または、防爆筐体14内の別の機器からのデータ、例えばアラーム等の表示としてもよい。
【0046】
尚、共鳴コイルとコイルアンテナとの磁界結合の結合係数は、互いの距離が近いときに、共振周波数がスプリットして上下に僅かにずれたところで結合係数が高くなる傾向がある。そして、共振周波数よりも僅かに小さいところでは、コイルアンテナと共鳴コイルの電流の向きが同相となり、共振周波数よりも僅かに大きいところでは、コイルアンテナと共鳴コイルの電流の向きが逆相となるため、共振周波数よりも僅かに小さい方が伝送効率がよい。そのため、LC共振回路を搬送周波数fに同調させるときに、共鳴コイルとコイルアンテナとの間の距離に応じて、その搬送周波数fが伝送効率のよい方の周波数に合致するように調整されるとよい。
【0047】
尚、以上の例では、表示部16aを防爆筐体14外部から視認できるように第1コイルアンテナ26、共鳴コイル50、52を巻線としていたが、これに限らず、プリントコイルとすることもでき、特に、表示部16aの視認が不要である場合には、閉塞板自体にプリントコイルを形成することも可能である。また、この場合には、閉塞板は透明または半透明とする必要もない。
【0048】
図5A〜図5Dは、第1実施形態を含めた様々な態様を表す図である。但し、この態様は例示であり、この態様に限らず、任意の態様が可能である。
【0049】
図5A(a)は、防爆筐体14内に第1機器であるリーダ装置10が配置され、防爆筐体14の外部に可搬性の第2機器であるメモリキャリア12が配置される第1実施形態の例である。
【0050】
この態様では、防爆筐体14外のメモリキャリア12のメモリ44に格納されるデータを防爆筐体14内のリーダ装置10によって読み出すことで、様々な応用をすることができる。
【0051】
例えば、入退出するメモリキャリア12内のデータをリーダ装置10で読み出して、そのデータを管理することで、爆発引火の恐れのある環境下における入退出管理、入出荷管理等を行うことができる。
【0052】
または、防爆筐体14内で動作するリーダ装置である第1機器10のデータを書き換える必要がある場合に、メモリキャリア12を用いて外部からそのデータを書き換えて、第1機器の設定や調整を行うことができる。
【0053】
尚、必要に応じて、可搬性のメモリキャリア12も別個の防爆筐体70内に配置することが可能である(図5A(b))。この場合には、別の防爆筐体70に設けられた開口70aが非金属製の閉塞板70bによって閉塞されており、開口70a及び閉塞板70bを通して磁気結合が行われる。
【0054】
図5Bは、防爆筐体14内に第2機器であるメモリキャリア12が配置され、防爆筐体14の外部に可搬性の第1機器10である携帯型リーダ/ライタ装置が配置される態様である。第1機器10にはバッテリ60が内蔵されている。
【0055】
この態様では、メモリキャリア12内のメモリ44に格納されるデータを防爆筐体14外部の第1機器10で書き換えることで、メモリキャリア12自身の設定、またはメモリキャリア12のメモリ44のデータを利用する別途の機器の設定や調整を行うことができる。
【0056】
尚、必要に応じて、可搬性の第1機器10も別個の防爆筐体70内に配置することが可能である(図5B(b)参照)。
【0057】
図5Cは、防爆筐体14内に第2機器12であるメモリキャリアが配置され、防爆筐体14の外部に可搬性の第1機器10である携帯型リーダ装置または携帯型リーダ/ライタ装置が配置される態様である。第1機器10にはバッテリ60が内蔵されており、第2機器12はメモリ44を有すると共に、第1機器10によって供給される電力によって動作する別の機器62に接続されている。別の機器62としては、無電源回路、スイッチ、センサ等とすることができ、第1機器10によって電力を供給されたときに一時的に動作するものとすることができる。
【0058】
別の機器62は、動作を行った結果のデータを第2機器12のメモリ44に格納することができ、このデータを携帯型リーダ装置10または携帯型リーダ/ライタ装置10で読み取ることもできる。
【0059】
また、別の機器62の動作条件等をメモリ44に格納することができ、この動作条件等をリーダ/ライタ装置10で書き換えることができる。
【0060】
尚、必要に応じて、可搬性の第1機器10も別個の防爆筐体70内に配置することが可能である(図5B(b)参照)。
【0061】
図5Dは、防爆筐体14内に第2機器12であるメモリキャリアが配置され、防爆筐体14の外部に可搬性の第1機器10である携帯型リーダ装置または携帯型リーダ/ライタ装置が配置される態様である。第1機器10にはバッテリ60が内蔵されており、第2機器12はメモリ44を有すると共に、第1機器10によって供給される電力によって動作する別の機器62に接続されている。さらに、防爆筐体14内にはバッテリ64が設けられて、該バッテリ64で蓄電された電力で第2機器12または別の機器62が動作することができるようになっている。
【0062】
バッテリ64は、第1機器10から供給される電力を蓄電することができ、第1機器10との非接触通信が行われているときに蓄電することができる。
【0063】
(実験例)
図6は、共鳴コイルの効果を実証するための実験例の説明図である。図において、第1コイルアンテナ26、共鳴コイル50、共鳴コイル52及び第2コイルアンテナ40は、それぞれ以下の条件とし、第1コイルアンテナ26を防爆筐体14内に配置した。また、窓開口14cの大きさを67mm×125mmとした。
【0064】
【表1】

【0065】
共鳴コイル50及び52がないとした場合(比較例1)、防爆筐体14の外部にある第2コイルアンテナ40では全く、通信を行うことができなかった。
【0066】
第1コイルアンテナ26から10mm離れた位置に1つの共鳴コイル50だけを防爆筐体14の窓開口14cに配置した場合(実施例1)、防爆筐体14の金属表面から5mmの位置にある第2コイルアンテナ40で通信が可能となった。
【0067】
さらに、2つの共鳴コイル50及び52を互いの距離を20mmとして、防爆筐体14の窓開口14cに配置した場合(実施例2)、防爆筐体14の金属表面から40mmの位置にある第2コイルアンテナ40で通信が可能となった。
【0068】
図7は、第2コイルアンテナ40をプローブコイルとし、共鳴コイル50及び52がない場合の金属表面から50mm離れた位置にプローブコイルを設置した場合(比較例2)、第1コイルアンテナ26から10mm離れた位置に共鳴コイル50のみを設けた場合の金属表面から50mm離れた位置にプローブコイルを設置した場合(実施例3)及び金属表面から10mm離れた位置にプローブコイルを設置した場合(実施例4)、共鳴コイル50と共鳴コイル52との間を30mmとして2つの共鳴コイル50、52を設けた場合の金属表面から50mm離れた位置にプローブコイルを設置した場合(実施例5)、について、それぞれベクトルネットワークアナライザー(VNA)を用いて、挿入損失S21、リターンロスS11を求めた結果である。共鳴コイルを有る場合と無い場合とで、最大15dBの差が得られた。
【0069】
以上のことにより共鳴コイルによる通信距離延長の効果が立証された。
【符号の説明】
【0070】
10 第1機器(リーダ装置)
12 第2機器(メモリキャリア)
14 防爆筐体
14c 窓開口(開口)
14d、14e 窓(閉塞板)
16 LCD表示装置(別の機器)
26 第1コイルアンテナ
40 第2コイルアンテナ
50 共鳴コイル
52 共鳴コイル
62 別の機器
70 別の防爆筐体
70a 開口
70b 閉塞板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1機器と第2機器の一方が金属製の防爆筐体内に設置され、防爆筐体には開口が設けられて該開口が非金属製の閉塞板によって塞がれており、前記開口を通して、第1機器のコイルアンテナと第2機器のコイルアンテナとの間の磁気結合により第1機器と第2機器との間で非接触データ伝送を行う防爆型データ通信システムにおいて、
前記開口内または前記閉塞板には、搬送周波数に同調する少なくとも1つの共鳴コイルが設けられて、共鳴コイルを介して第1機器のコイルアンテナと第2機器のコイルアンテナとの磁気結合を行うことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記防爆筐体は、開口及び閉塞板を含む蓋部と、第1機器または第2機器が納まる本体とを備えており、蓋部は本体に対して変位可能であることを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項3】
前記磁気結合により、第1機器から第2機器に向けて非接触に電力が伝送されることを特徴とする請求項1または2記載のデータ通信システム。
【請求項4】
前記防爆筐体内に前記第1機器が設置されており、第1機器は前記第2機器に格納されたデータを読み出すものであることを特徴とする請求項3に記載のデータ通信システム。
【請求項5】
前記防爆筐体内に前記第2機器が設置されており、前記磁気結合により、前記第1機器から第2機器に向けて電力が供給されて、磁気結合が確立された状態でのみ第2機器または第2機器に接続された別の機器が動作することを特徴とする請求項3に記載のデータ通信システム。
【請求項6】
第1機器と第2機器の他方が金属製の別の防爆筐体内に設置されて、別の防爆筐体には第2開口が設けられて該第2開口が非金属製の閉塞板によって塞がれており、該第2開口を通して、第1機器と第2機器との間で非接触データ伝送を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のデータ通信システム。
【請求項7】
前記共鳴コイルは前記閉塞板の内面側に設けられることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデータ通信システム。
【請求項8】
前記開口には複数の閉塞板が設けられ、該複数の閉塞板の間に共鳴コイルが配置されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のデータ通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119830(P2012−119830A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266293(P2010−266293)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】