説明

防犯装置、プログラム

【課題】センサで検出した振動が人為的な原因によるものか他の要因によるものかを判別することにより、誤警報や異常事態の誤通知を減らすことができる防犯装置を提供する。
【解決手段】異常状態レベルを検出する異常検出部10と、他の防犯装置から検出された異常状態レベルデータを受信可能である通信部60と、異常検出部10の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定する判定部30と、判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報の発生を抑制する警報部70とを備え、センサで検出された振動を人為的な原因による振動か他の要因によるかを判別して誤警報や異常事態の誤通知を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物及び移動体への侵入者を監視して犯罪を未然に防ぐ防犯装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの基本的な防犯装置は、家等の建造物や駐車車両等の移動体に対する応力や振動をセンサで検出し、それらセンサのレベルが盗難やいたずら等の異常事態を示す所定値以上のレベルである場合や、単位時間当たりの発生回数が所定値以上である場合、ノイズフロアのレベルからセンサのレベルの移動平均が所定以上乖離している場合、あるいはそれらが複合して発生する場合に、音や光で警報を発生させている。また、通信手段を有している場合には、異常事態を示す所定の通知を所有者や警備会社に送出する。
【0003】
しかし、従来の防犯装置は、地震が発生した時、ダンプカー等の大型の車両や列車等が近傍を通過した時、花火大会等の大型花火や落雷等による非常に大きな音圧を受けた時、台風等の強風を受けた時、橋の上等の振動しやすい足場上で渋滞等により停止している時、等の自然事象や通常の交通事情等の中に入った時にも、センサで検出する応力や振動のレベルが異常事態を示す所定値以上になることから、異常事態の誤警報や誤通知を送出することがあった。
【0004】
また、通信手段を有する防犯装置の中には、自防犯装置の警報手段に不具合がある場合には、通信手段で異常事態であることを周辺に位置する他車両に通信手段で送信して通知することにより、その他車両内の防犯装置で警報を発生させるものが提案されていた。また、そのような防犯装置では、逆に、周辺に位置する他車両内の防犯装置の警報手段に不具合がある場合には、その防犯装置からの異常事態通知を通信手段で受信することにより自防犯装置の警報を発生させていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−35991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような従来の防犯装置は、センサで検出された振動が、犯罪またはいたずらのような人が何らかの意図で個別の車両に対して行った人為的な振動か、あるいは、自然事象や通常の交通事情等による振動かを判別できなかったので、誤警報や異常事態の誤通知を無くすことができなかった。また、特許文献1等の従来の通信手段を有する防犯装置であっても、通信手段で異常事態の通知を送受信はするが、その通知内容を用いて警報を発生するかしないかを判断するのみであった。従って従来の防犯装置は、センサで検出した振動が人為的な原因によるものか他の要因によるものかについて判断していないので、誤警報や異常事態の誤通知を減らすことができなかった。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、例えばセンサ等で検出された振動等を人為的な原因によるものか他の要因によるものかを判別して誤警報や異常事態の誤通知を減らすことができる防犯装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る防犯装置においては、異常状態レベルを検出する異常検出部と、他の防犯装置から検出された異常状態レベルデータを受信可能である通信部と、前記異常検出部の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータに基づき人為的な異常状態か否かを判定する判定部と、前記判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制する警報部とを備える。
警報を抑制するとは、例えば、警報を発生させないことや、発生している警報を中止することや、警報の強度を通常の強度よりも小さくすることを含む。例えば、警報部は異常検出部によって検出された異常状態レベルが警報を要するレベル(例えば、所定の基準レベル)を超える場合に警報を発する構成として、判定部による判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制する構成としてもよい。
本態様では、例えば、異常検出部で自機のセンサで異常状態を検出すると共に通信部で周囲の他の防犯装置のセンサで検出された異常状態のデータを受信する。そして、判定部で受信したデータと自機の検出データを比較して、各データが同様な範囲にあるか、又は、同様に変化する傾向を示すかを判定する。さらに、判定部は同様な範囲か変化と判定できる場合には人為的ではない可能性が高いので警報部の警報を抑制する。これにより異常事態の誤検出を減らすことができる。
例えば、周囲の他の防犯装置からの異常状態レベルデータと自装置の異常状態レベルのデータとを比較し、各データが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示す場合には、人為的な異常状態ではないと判定して警報を抑制するようにしてもよい。
【0009】
好ましくは、前記受信した異常状態レベルデータの有効度を加味して前記人為的な異常状態か否かの判定を行うとよい。例えば、前記判定部は、前記受信した異常状態レベルデータの有効度を求め、求めた有効度を加味して前記人為的な異常状態か否かの判定を行うとよい。有効度は、例えば異常状態レベルデータを送信する他の防犯装置の信頼度や、他の防犯装置と自己の防犯装置との関連度としてもよい。有効度は、例えば防犯装置の設置位置、自装置との距離、所有者、占有者、設置日時等のデータに基づいて求めるとよい。特に、これらの現在のデータだけでなく、過去のデータや、データの変化の状況などを加味して求めるようにするとよい。例えば、設置位置が自装置と近い場合、所有者・占有者が自己のものである場合、設置日時が長期間にわたるものである場合、設置位置の変動が少ないものである場合には有効度を高めるなど、各種の態様をとることができ、これらは複数組み合わせて有効度を求めると特によい。有効度は、例えば、センサ等の検出部で検出したデータに基づいて求めるようにしてもよいし、他の装置から通信等により取得したデータに基づいて求めるようにしてもよい。また、他の装置から取得したデータの数に基づいて求めるようにしてもよい。
例えば他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータの各レベルが前記人為的な異常状態と判定される所定のレベル以上のものばかりである場合(例えば所定数以上の場合)には、他の防犯装置を含む環境全体で発生している自然状態によるものであって、人為的な異常状態ではないと判定するようにしてもよい。複数の他の防犯装置から送信された異常状態レベルデータの統計値に基づいて判定するようにしてもよい。
本態様によれば、有効度を加味して判定を行うので、判定の精度を高めることができる。
受信した異常状態レベルデータの有効度を加味して判定する構成としては、例えば、前記判定部が、前記受信した異常状態レベルデータを、その有効度で選択し、該選択された異常状態レベルデータと前記異常検出部の異常状態レベルの検出結果とから前記判定を行う構成としてもよい。特に、受信した異常状態レベルデータの中から有効度が高いデータを選択して異常状態データの判定をするとよい。
より具体的な構成としては、例えば以下のような構成を採りうる。
【0010】
好ましくは、前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータには、当該装置の位置データを含み、地球上の位置を検出する位置検出部を有し、前記判定部は、前記位置検出部により検出した位置と前記受信した他の防犯装置の位置データとから前記他の防犯装置までの距離を演算する演算部を含み、前記有効度は、前記距離に基づいて決定するとよい。例えば、距離の近いものほど有効度の高い異常状態レベルデータとして加味するようにしてもよい。また、例えば、前記判定を行う際に、前記有効度の高いデータを選択するために前記受信した異常状態レベルデータに重み付けを実施し、該重み付けでは前記距離の近いものほど重くするようにしてもよい。
本態様によれば、距離が近い場合のデータの重み付けを重くすることで、判定結果の精度を向上させることができる。これは、窃盗等のための人が直接に与える人為的な異常状態が一つの移動体のみで検出されることに対して、地震あるいは強風等の自然現象や、大型花火の音圧等の自然物を媒介したり、橋梁上の振動等の構造物を媒介した異常状況は、近傍の全ての検出体で略同時に検出されるという現象の考察結果から、その現象を利用して人為的な場合以外の誤検出を減らすことができるためである。
好ましくは、移動体に搭載され、前記通信部は、無線通信による異常状態レベルデータを受信可能であり、前記判定部は、 前記有効度は、前記無線通信による異常状態レベルデータの信号強度に基づいて決定するとよい。例えば、前記判定を行う際に、前記有効度の高いデータを選択するために、前記無線通信による異常状態レベルデータの信号強度を用いるようにしてもよい。
本態様によれば、無線信号の信号強度を信頼度と有効度の判定に用いるので、例えばGPSの届かない地下駐車場などでも、異常状態の検出精度を向上させて適切な警報を行なうことができる。
【0011】
好ましくは、前記通信部は、複数の前記異常状態レベルデータを受信可能であり、前記判定部は、前記異常状態レベルデータの各レベルが、前記人為的な異常状態と判定されたレベルである各異常状態レベルデータの数を記録するデータ数記憶部を有し、前記データ数記憶部に記録された異常状態レベルデータの数が所定数よりも多い場合に、前記人為的な異常状態ではないと判定するようにしてもよい。
本態様によれば、周辺の異常状態レベルデータの数を加味することで、異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、前記通信部は、複数の前記異常状態レベルデータを受信可能であり、前記異常状態レベルデータの各レベルを記録するデータレベル記憶部を有し、前記判定部は、前記データレベル記憶部に記録された各異常状態レベルデータの統計値により前記人為的な異常状態か否かを判定するようにしてもよい。この場合の統計値としては、例えば、平均、最頻値(モード)、中央値(メジアン)、分散、標準偏差等を用いることができる。そして、統計値に基づいてとは、例えば、各異常状態レベルデータと統計値との差に基づくものとするとよい。例えば、各異常状態レベルデータが統計値と所定の許容値の範囲内にない場合、
本態様によれば、検出された異常状態レベルデータが、周辺から受信した異常状態レベルのデータの統計値と大幅に異なる場合には人為的な異常であると判断することで,異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0013】
好ましくは、前記データレベル記憶部は、過去の所定位置における異常状態レベルデータを記憶し、前記判定部は、前記異常状態レベルとして、前記過去の所定位置における異常状態レベルデータにより前記人為的な異常状態か否かを判定するようにしてもよい。
本態様によれば、周辺に他の検出体(防犯装置)が無い場合には、自防犯装置の同位置の同時刻における過去のデータを利用して判定するので、同位置の同時刻に同様な事象が発生する場合には、精度良く異常状態を検出することができる。
【0014】
好ましくは、時刻を計時する計時部を有し、前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータには、当該異常状態レベルデータを検出した時刻データを含み、前記判定部は、所定の時刻範囲に検出された前記異常状態レベルデータ及び受信した異常状態レベルデータとに基づいて前記人為的な異常状態か否かを判定するようにしてもよい。
所定の時刻範囲内とは、例えば、防犯上警報が要求される場合の時刻の範囲内であり、一般的には略同時刻としてもよい。例えば、車両等の移動体用の防犯装置であれば、防犯上警報が要求される時刻の範囲は、自装置の異常状態レベルが警報を要するレベルに達してから前後数秒から十数秒以内である。その範囲に受信した異常状態レベルデータの時刻データが入っていれば、検出された異常状態レベルデータは人為的な異常状態ではないと判断できる。
本態様によれば、所定の時刻範囲内における異常状態データ同士を比較することで,異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0015】
好ましくは、前記判定部は、前記異常検出部の異常状態レベル検出結果と、受信した異常状態レベルデータとを比較する比較部を含み、該比較部で比較した差と判定用の所定値との大小により人為的な異常状態か否かを判定するようにしてもよい。
本態様によれば、受信したレベルと検出したレベルとの差が所定値以上の場合に人為的と判断することで、判定結果の精度を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、前記判定部は、前記比較部で比較した差との大小が判定される所定値を、前記距離の遠近により変化させるようにしてもよい。
本態様によれば、受信したデータの検出された位置との距離により、人為的かを判断するための判定用の所定値を大小させることで、判定結果の精度を向上させることができる。
【0017】
好ましくは、前記判定部は、前記異常検出部が異常状態レベルを検出した時、前記通信部を介して、前記他の防犯装置に対して検出された異常状態レベルデータを送信するように要求するようにしてもよい。
本態様によれば、異常状態が検出されたときに周囲にデータを要求して判断するので、通常時には無駄な電力や演算を行わず、ランニングコストを下げることができる。
【0018】
好ましくは、前記判定部は、送信要求に基づき前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータでは前記有効度の高いデータが選択できない場合、前記他の防犯装置に対して、更に別の防犯装置に対して検出された異常状態レベルデータを送信するように要求し、当該異常状態レベルデータを中継するように要求するようにしてもよい。
本態様によれば、送信要求に基づき受信した異常状態レベルデータでは前記有効度の高いデータが選択できない場合に、他の防犯装置に中継を要求するので、信頼性及び有効度の高いデータが不足する事態を減らすことができ、異常状態の検出精度を向上させることができる。また、中継した防犯装置の数に基づいて受信したデータが検出された防犯装置までの近さを判定してもよい。そしてこの数に基づいて前述の重み付けを実施するようにしてもよい。
【0019】
好ましくは、前記判定部は、前記異常状態レベルとして、物体の存在又は接近を検出可能なセンサにより検出された物体の存在レベル又はその変化レベルの値、衝撃又は振動を含む多方向の加速度を検出可能なセンサにより検出された加速度レベルの値、傾斜を検出可能なセンサにより検出された傾斜のレベル又はその変化の値の中から、少なくとも一つの値を用いるようにしてもよい。
本態様によれば、接近センサ、衝撃センサ、傾斜センサ等の少なくとも何れか一つを含む値と、受信データとを比較して判断するので、精度良く異常状態を検出することができる。
【0020】
さらに、前記判定部は、前記異常検出部で検出された異常状態レベルが、所定の基準レベルを超える場合に当該異常状態レベルは前記人為的な異常状態であると判定する構成であって、前記異常検出部で検出された異常状態レベルの値と前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータの値との差が、所定値以上である場合には、前記異常検出部で検出された異常状態レベルが、所定の基準レベルを超えない場合であっても、前記人為的な異常状態と判定するようにしてもよい。
このようにすれば、花火や自然現象による過剰な誤警報の問題を減らすことで精度を上げるだけでなく、逆に警報を鳴らすべき時に鳴らない警報の不足の問題を減らすことも可能となる。すなわち、本態様によれば、所定の基準レベルを超えていないが実際には警報を発すべき場合に警報が発せられないという問題を減らすことできる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る防犯システムにおいては、異なる場所に設置された少なくとも2個の防犯装置により構成され、各防犯装置は、異常状態レベルを検出する異常検出部と、他の防犯装置から検出された異常状態レベルデータを受信可能であると共に、自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを前記他の防犯装置に向けて送信可能である通信部とを有し、少なくとも一つの防犯装置が、前記異常検出部の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定する判定部と、前記判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制する警報部とを有する。
本態様によれば、各装置の通信部は検出結果を送信でき、防犯システム中の各装置において、上記した防犯装置の場合と同様な構成を有する。これにより防犯システム中の各装置において異常事態の誤検出を減らすことができる。
【0022】
なお、上述した防犯装置の機能はコンピュータにより実現させるためのプログラムとして構成するとよい。例えば、最初に述べた防犯装置の構成を採る場合、「異常状態レベルを検出する異常検出ステップと、他の防犯装置から検出された異常状態レベルデータを受信可能である通信ステップと、前記異常検出部の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータに基づき人為的な異常状態か否かを判定する判定ステップと、前記判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制する警報ステップを備えることを特徴とするプログラム」とすることができる。上述したほかの防犯装置の構成についても同様に、「〜部」と記載した箇所を「〜ステップ」に置き換えた構成で、プログラムを構成することができる。
【0023】
また、上記した各実施態様の各防犯装置は、車両等の移動体に搭載した場合に特に顕著な効果を有する。また、車両等の移動体に搭載される機器として、例えば、ナビゲーション装置、車両盗難防止装置、及び、レーダー探知器等の装置に本実施態様の防犯装置の機能を備えさせて、電源等の共用化や省スペース化を図ってもよい。また、本実施態様の防犯装置は、例えば上記した装置を操作するためのリモコン装置や、移動体を保管する車庫等に設けてもよく、また、その際に全ての場所に全ての構成を備える装置を設置する必要は無く、1箇所に判定部を備える装置が設置されていれば、残りの装置は少なくとも異常検出部及び通信部を備えていればよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、異常事態の誤検出、誤警報、及び、誤通知を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の防犯システムの第1実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の防犯システムの第2実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2の第1検出体の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の防犯システムの第3実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4の防犯システムにおける処理フローの一例を示す図である。
【図6】図1、図2、図4の第1検出体1内のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1に示された本発明の第1実施形態の防犯システムは、第1検出体1、通信ネットワーク800、及び、第2検出体2で構成される。第2検出体2は、第1検出体1に隣接する位置や近傍に位置することが望ましいが、数十m離れている場合や数百m離れている場合でも、条件によっては検出誤差を低減させるために有益な検出データを得ることができる。
【0027】
本実施形態の第1検出体1は、本発明の防犯装置を含んでいる構造体又は移動体の全体である。構造体は、例えば家屋等の建造物であり、移動体は、例えば、自動車やレジャーボート等の人を乗せて移動する構造物である。従って第1検出体1は、家屋等の固定の構造体に異常検出部10、判定部30、通信部60、及び、警報部70を設けて第1検出体1としてもよいし、車両等の移動可能な構造体に異常検出部10、判定部30、通信部60、及び、警報部70を設けて第1検出体1としてもよい。第2検出体は、少なくとも本発明の防犯装置における異常検出部210及び通信部260を含む構造体又は移動体の全体であるが、第1検出体1と同様な構成であっても良い。
【0028】
異常検出部10は、窃盗犯等が窓等を損壊して家屋や車両等に侵入するときの異常な衝撃又は異常な振動を加速度として検出するためのセンサとして加速度センサ12を備える。加速度センサ12は、一般的に重力、振動と動き、衝撃を検出でき、さらに重力検出ができることから筐体の縦横検出や傾き検出が可能である。また、加速度センサ12は、圧電素子を用いる圧電方式、静電容量を計測する方式、ひずみゲージで測定する方式、2光ファイバ間の光路差を干渉計で測定する光ファイバ方式等の多数の方式のものがある。また、小型化した半導体加速度センサでは、ピエゾ抵抗式、静電容量式、熱分布検知式等の方式のものがある。また、異常を検出できるセンサであれば、加速度センサ12に代えて他のセンサ、例えば音圧センサ(マイク)により車体への接触音やガラスの破壊音やドアを開いたときの車中の気圧変化の値を検出するようにしてもよい。
【0029】
判定部30は、例えば、マイクロプロセッサ、CPU、又は、演算可能で演算や処理を実施するための記憶用のRAM等を有する半導体素子である。判定部30の中には、各種の演算や処理を実施する演算部40と、プログラムや外部から入力したデータを記憶する記憶部50が設けられている。演算部40には、さらに、異常検出部10で検出された異常状態を示す値(本実施形態では加速度の値)と、外部の装置から入力した異常状態を示す値(加速度の値)とを比較する比較部42を有している。記憶部50には、上記したような自機で検出された異常状態を示す値と、外部の装置から入力した異常状態を示す値を記憶するデータレベル記憶部52を有している。また、異常を示す他の値として、例えば上記した加速度に代わる音圧センサ等を用いた値、例えば音圧の値を比較するようにしてもよい。
【0030】
通信部60は、少なくとも第2検出体2から送出された異常状態を示す値のデータを受信して、データレベル記憶部52に送出する。また、第2検出体2が第1検出体1と同様に判定部30等を有している場合には、通信部60は、異常検出部10で検出された異常状態を示す値のデータを送信するようにしてもよい。また、安全監視センタ等を設けてセキュリティの集中管理を行う場合には、その安全監視センタに向けて異常状態を示す値のデータを送信するようにしてもよい。また、第1検出体1の使用者の子機や携帯電話に無線接続可能である場合には、その子機や携帯電話に向けて異常状態を示す値のデータを送信するようにしてもよい。
【0031】
通信方式としては、第1検出体1が移動体である場合には、近距離の無線方式であることが望ましいが、第1検出体1が建造物のように固定されている場合には、無線方式に限らず、平行線や同軸ケーブル等の電線を用いて電気信号で通信する方式でも、光ファイバを用いて光信号で通信する方式でもよい。近距離の無線通信方式としては、微弱無線、特定小電力無線、各種無線LAN及びBluetooth(登録商標)等の様々な方式を利用することができ、また、近距離無線ではないが携帯電話回線も利用することができる。有線方式でも、独自仕様に限らず有線LAN対応の各種方式を利用することができる。
【0032】
警報部70は、例えば、スピーカーやブザー等の発音体が設けられており、ブザー音、ホーン音、サイレン音等の音響を出力することや音声で異常であることを出力することにより異常を周囲に報知できる。また、警報部70は、必要に応じて、光学的なインターフェースにフラッシュライト(LED)や赤色灯等の光学的な警報装置を設けて、それらにより異常であることを出力することにより異常を周囲に報知しても良い。
【0033】
通信ネットワーク800は、上記したように第1検出体1又は第2検出体2の少なくとも一方が移動体である場合には、微弱電波、特定小電力、各種無線LAN対応方式、携帯電話回線利用方式等を利用する無線方式の通信回線又はネットワークである。第1検出体1及び第2検出体2の双方が建造物のように固定されている場合には、上記したような各種方式を利用して独自仕様又は有線LAN対応で接続する通信回線やネットワークであってもよい。
【0034】
第2検出体2には、第1検出体1と同様な異常検出部210と通信部260が設けられている。異常検出部210には、さらに加速度センサ212を有している。異常検出部210の内部構成は、第1検出体1の異常検出部1と同様である。通信部260の内部構成も、第1検出体1の通信部60と同様であるが、異常検出結果をこちらから第1検出体1の通信部60に送信する。
【0035】
本実施形態の第1検出体1の動作としては、まず、異常検出部10で異常状態を検出したら、判定部30では、その異常状態の検出レベルが警報を出すレベルであるか否かの判断をする。警報を出すレベルであった場合、判定部30は、通信部60を介して、次に近傍に配置された第2検出体2に向けて異常状態の検出データを問い合わせる。第2検出体2から異常状態の検出データを受信したら、判定部30は、受信した異常状態の検出データのレベルと、異常検出部10で検出した検出レベルとを比較し、同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかを判定する。両データのレベルが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示す場合には、判定部30は、異常検出部10で検出した異常状態は人為的ではないと判断し、警報を抑制する。逆に、両データのレベルが同様な範囲に無いか同様に変化する傾向を示さない場合には、判定部30は、異常検出部10で検出した異常状態は人為的であると判断し、警報部70から警報を出力する。
【0036】
受信した異常状態の検出データのレベルと、異常検出部10で検出した検出レベルとが同様な範囲にある場合とは、例えば、2つの異なる場所(近傍)に設けられた測定装置で略同じ検出レベルの範囲で異常が検出される場合である。近傍に配置された2つの測定装置において、測定する内容、基準、スケール、精度、校正値等が同様である場合に、地震等の異常を検出した場合には、装置間の個体差を除けば略同じ検出レベルの範囲で異常が検出される。又、2つの測定装置が時系列的に測定可能である場合には、略同様に変化する傾向を示すことが検出される。そのような場合の異常事態は、地震等であり、犯罪者等の人為的な振動等による異常ではないことになる。
【0037】
このように本実施形態の防犯システムでは、防犯装置である第1検出体1において受信データと検出データを比較し、第2検出体2からの受信データと自機の検出データが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかを判定する。そして、同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示す場合には、第1検出体1は、自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを人為的ではないと判定する。これにより本実施形態の防犯システム及び防犯装置(第1検出体1)は異常事態の誤検出を減らすことができる。
本実施形態の防犯システムは、これに限らず、異なる場所に設置された少なくとも2個の防犯装置により構成してもよい。各防犯装置の設置位置は、なるべく近傍であることが好ましい。そして、各防犯装置は、異常状態レベルを検出する異常検出部10と、少なくとも他の防犯装置である第2検出体2から検出された異常状態レベルデータを受信可能である通信部60と、異常検出部10の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定する判定部30と、判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報の発生を抑制する警報部70とを備えるようにするとよい。
【0038】
また、例えば、第1検出体1と第2検出体2で異常状態レベルを検出する工程(ステップ)と、第2検出体2において自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを第1検出体1に向けて送信する工程と、第1検出体1において第2検出体2から検出された異常状態レベルデータを受信する工程と、第1検出体1において異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定する工程と、第1検出体1において判定結果が人為的な異常状態でない場合に警報を抑制する工程とを有するプログラムをROM等の記憶素子に記憶しておき、上記各工程の制御は、マイクロコンピュータ又はCPU等の演算素子で記憶素子に記憶されたプログラムを実行することにより実施するようにするとよい。
【0039】
また、図1の第1検出体1と第2検出体2とが双方とも移動体である場合、通信ネットワーク800は無線方式の通信回線又はネットワークとするとよく、無線電波の届く範囲にある第1検出体1と第2検出体2とを接続するようにする。又は、無線通信方式や無線電波の強度によっては基地局やリピータを介して第1検出体1と第2検出体2とが接続されるようにする。無線通信方式は、上記したように微弱電波、特定小電力、各種無線LAN対応方式、携帯電話回線利用方式等のような各種の方式から目的や用途に合わせて選択するとよい。
【0040】
例えば、第1検出体1及び第2検出体2は、異なる車両内に設置し、第1検出体1は、近傍に駐車する第2検出体2からの受信データと自機の検出データが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかを判定することにより、自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを人為的か否かを判定する。近傍に駐車する他の移動体からデータを取得する場合、例えば、無線電波の到達範囲が限定されることから、第2検出体2の無線電波の届く範囲が近傍となるように出力を調整するとよい。また、第1検出体1の駐車位置は、日時により異なる可能性があり、第2検出体2の駐車位置も日時により異なる可能性がある。また、第2検出体2自体が同一車両であるとは限らず、異なる車両に入れ替わる可能性がある。
【0041】
このように本実施形態の防犯システムにおける各防犯装置は、上記したように異常状態レベルを検出する異常検出部10と、他の防犯装置から検出された異常状態レベルデータを受信可能である通信部60と、異常検出部10の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータとを比較し、周囲の装置からの受信データと自機の検出データが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかで人為的な異常状態か否かを判定する判定部30と、判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報の発生を抑制する警報部70とを備えるので、人為的ではない場合の異常事態の誤検出を減らすことができる。
【0042】
また、各防犯装置の判定部30は、例えば、比較部42で、異常検出部10の異常状態レベル検出結果と、受信した異常状態レベルデータとを比較し、比較部42で比較した差と判定用の所定値との大小に基づいて人為的な異常状態か否かを判定するようにしてもよい。この場合、受信したレベルと検出したレベルとの差が所定値以上の場合に人為的と判断するようにするとよい。このようにすれば
判定結果の精度を向上させることができる。
【0043】
また、各防犯装置の判定部30は、比較部42で、人為的かを判断するための判定用の所定値を、受信したデータの検出された位置との距離の遠近により大小に変化させるようにしてもよい。この距離は、例えば予め記憶部50に記憶しておき、遠近を判定するようにしてもよい。このようにすれば、判定結果の精度を向上させることができる。
【0044】
また、各防犯装置のデータレベル記憶部52は、過去の所定位置における異常状態レベルデータを記憶し、判定部30は、異常状態レベルとして、過去の所定位置における異常状態レベルデータにより人為的な異常状態か否かを判定するようにしてもよい。このようにすれば、周辺に他の検出体(防犯装置)が無い場合でも、精度良く異常状態を検出することができる。これは、例えば、列車の通過等の同位置の同時刻に同様な事象が発生する場合には、自防犯装置の同位置の同時刻における過去のデータを利用して判定することができるためである。なお、ここでの所定位置とは、例えば、駐車場の位置等の移動体が長時間停車する位置である。
【0045】
一般的に住宅や車両等のガラスに接するように設置される振動又は衝撃検出型の防犯装置は、暴風雨や地震等による振動で誤動作する事態を軽減するために、検出感度を上げることが困難であった。しかし、近傍の検出体とデータの比較をして、同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示す場合に、自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを人為的ではないと判定することにより、検出感度を上げても誤動作を避けることができる。
【0046】
<第2実施形態>
図2は、本発明の防犯システムの第2実施形態の概略構成を示すブロック図である。第2実施形態の防犯システムでは、第1実施形態と、主に以下の相違がある。
(1)第1検出体1が検出データを受信する他の検出体の数が2個に増加している。
(2)受信した検出データの検出体ID、検出時刻、データ数(検出体数)を記憶する。
(3)異常検出部10内のセンサの数が3個に増加している。
(4)各検出体が地球上の位置を検出する機能を有している。
(5)第1検出体で、自検出体の位置情報と他検出体の位置情報から、各他検出体までの距離を演算する。
(6)第1検出体で、各検出体からの受信データに対し、その検出体までの距離に応じた重み付けを行い、距離が近い受信データを優先する。
以下、主に上記した相違点について記載し、第1実施形態と同様な構成については重複する記載を省略する。
【0047】
第1検出体1内の異常検出部10には、第1実施形態で説明した加速度センサ12の他に、接近センサ14、傾斜センサ16が設けられている。接近センサ14は、近傍の物体が接近するか、離れるかを検出する。傾斜センサ16は、重力の鉛直方向に対する装置の傾きを検出する。また、傾斜センサ16については、上記したように加速度センサ12で傾斜も計測できる場合には、加速度センサ12が兼用するようにしてもよい。なお、接近センサ14は、例えば、マイクロ波やレーザ光を利用して接近するか、または、離れていく物体との距離や速度を検出できるドップラーセンサや赤外線センサであり、近接センサと称する場合もある。また、上記したように加速度に代えて音圧を計測するようにしてもよい。なお、各センサについては図6を用いて後述する。
【0048】
第1検出体1内の判定部30の演算部40には、後述する位置検出部80で検出された位置データと、受信した異常状態レベルデータに付随する位置データに基づいて距離を演算する距離演算部44が設けられている。なお、受信した異常状態レベルデータには、上記した位置データの他にも、各検出体を個別に認識するための識別(ID)符号のデータと、そのデータが取得された時刻のデータが付随する。識別符号については、個別に識別可能であれば任意の符号を用いることができる。位置データ及び時刻データは、例えば、後述する位置検出部80と計時部90の機能を有するグローバル・ポジショニング・システム(GPS)の受信信号から得ることができる。
【0049】
データ数記憶部54は、受信した検出データの数を記憶する。データの数が1個の場合よりも、2個の場合の方がデータの信頼性が増加する。また、近傍に存在する異常状態を検出可能な検出体の数を把握することができる。
【0050】
データ検出時刻記憶部56は、異常検出部10で異常が検出された時に、その異常状態レベルデータに関連付けて、計時部90で計測された時刻データを記憶する。また、第2検出体2や第3検出体3から受信した異常状態レベルデータに付随する時刻データを、受信した各異常状態レベルデータに関連付けて記憶する。
【0051】
データ検出体ID記憶部58は、通信時に使用する第1検出体1を個別に認識するための識別(ID)符号のデータを、異常検出部10で検出された異常状態レベルデータに関連付けて記憶する。また、第2検出体2や第3検出体3から受信した異常状態レベルデータに付随する第2検出体2や第3検出体3を個別に認識するための識別(ID)符号のデータを、受信した各異常状態レベルデータに関連付けて記憶する。
【0052】
位置検出部80は、衛星軌道上の数個の衛星からの信号を受信して3次元測位により現在位置を検出する。例えば、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)では、受信機は4つの原子時計を搭載した衛星からの信号から時刻データと衛星軌道データを得て、受信機内部の時計を校正しながら、発信から受信されるまでの時刻差と電波の伝搬速度を演算することで、各衛星からの距離を計算する。3個の衛星からの距離を得られれば空間上の一点を決定することができる。
【0053】
計時部90は、異常が検出された時刻を計時する。クオーツ時計等を用いることもできるが、GPS受信機を搭載している場合には、GPS受信機内部で位置測定のために原子時計に基づくより正確な時刻を得ているので、その時刻を利用してもよい。
【0054】
第3検出体3は、第2検出体2の異常検出部210及び通信部260と同様な構成を少なくとも備える検出体であり、さらに第1検出体1と同様な判定部30等の構成も備えていることが望ましい。
【0055】
図3は、図2の第1検出体の処理フローの一例を示すフローチャートである。本実施形態の第1検出体1の動作としては、まず、位置検出部80で位置を検出し(S51)、他の検出体に向けてその位置情報を送出する(S52)と共に、他の検出体(第2検出体2及び第3検出体3)からそれらの位置情報を受信する(S53)。
【0056】
次に、距離演算部44で、自検出体の位置情報と、第2検出体2及び第3検出体3の位置情報から、各他の検出体(第2検出体2及び第3検出体3)までの距離を演算する(S54)。判定部30は、この距離が短い方を優先して、異常の判定に利用する他の検出体を選択する。また、判定部30は、この距離に基づき、異常の判定に利用する他の検出体から受信した各異常状態レベルデータの有効度を判定し、各データの選択を行う。
【0057】
有効度は、そのデータを本発明の方法に適用する場合にどれだけ使える(使用に有効である)かという言わば使用可能性を示すものである。例えば、距離に基づいて距離が近い物は同じ事象に遭遇する確率が高いという経験則に基づき、また同じ事象に遭遇した装置の検出データは類似した範囲の値や同じ傾向を示すことから、距離が近い装置からのデータの有用度が高くなるようにして判定している。
しかし、これに限らず、有用度は、そのデータがどれだけ信頼または信用できるかを示すもの(信用度を示すもの)でもよく、例えば、過去の実績データや経験値から判定するようにしてもよい。また、その他にも、例えば、自分で設置した防犯装置やセンサからのデータは、自分で動作や性能等を確認したものであるので、信頼度(有用度)は高いと判定するようにしてもよい。自分で設置したものであるか否かは、例えば、各機器に識別符号(ID)を付与し、予め自分で設置したものに対応するIDをスイッチ等の入力部から入力して記憶させておき、各機器から異常状態レベルデータにこのIDを付加して送受信するようにし、記憶させてあるIDと受信したIDとが一致する場合に受信した異常状態レベルデータが自分で設置したものから送信されたものであると特定すればよい。その他、空間的な距離だけでなく、時間的な間隔や時間的な条件でも信頼度が変わることを加味して信頼度(有用度)を判定してもよい。例えば、毎日同じ時刻に同じ位置に配置される防犯装置やセンサは近隣に居住する定住者の車両等と考えられ、そのデータの信頼度は高いとしてもよい。同様に、毎日同時刻や同じ曜日、月の中の毎5/10日(5の付く日や10の倍数の日)に同じ位置に配置される防犯装置やセンサは、定期的な業務の車両等と考えられ、そのデータの信頼度は高いとしてもよい。また、通信方式が無線方式の場合、無線の信号強度が高い受信データについては、距離が近いと考えられ得ることから、信号強度検出し、この信号強度に応じて信頼度を高くするようにしてもよい。例えば通信部60で信号強度を検出するようにするとよい。このように無線の信号強度を利用すれば、例えば、GPSの届かない地下駐車場など位置検出ができないような状況であっても、無線信号強度により信頼度が高い適切な受信データを選択でき、誤警報を減らして警報の精度を高めることができる。
【0058】
また、本実施形態では相手との距離に基づいて判定しているが、その他にも、通信可能な相手の数、上記したデータの信頼度により判定することができる。また、空間的な距離だけでなく、時間的な間隔や時間的な条件でも信頼度が変わる。例えば、周辺が静かになる深夜はノイズフロアのレベルも下がるので、データの信頼度も高まるが、本発明の方法の精度も高めることができるので、実施可能性も高くなり、有効度が高くなる。逆に、例えば、週末等の日中に交通量が増加する場所では、ノイズフロアのレベルが上がり、データの信頼性も本発明の方法の精度も低下し、実施可能性が低くなり、有効度が低くなる。
【0059】
そして、判定部30では、受信した異常状態レベルデータを、有効度で選択し、その選択された異常状態レベルデータと異常検出部10の異常状態レベルの検出結果とから判定を行う。
【0060】
判定部30は、距離が近い検出体の異常状態レベルデータについては、有効度を高くし、選択可能性も高くする。それに対して距離が遠い検出体の異常状態レベルデータについては、判定部30は、有効度を低くし、選択可能性も低くする。例えば、距離の値の逆数を有効度の値としてもよい。なお、距離が一定以上はなれている場合には、比較対象として利用しない有効度(例えば0)に設定してもよい(S55)。
【0061】
その後、異常検出部10で異常状態を検出する(S56)。異常状態を検出したら(S56:YES)、判定部30では、その異常状態の検出レベルを取得して(S57)、その検出レベルが警報を出すレベル(例えば、警報基準値を超えるレベル)であるか否かの判定をする(S58)。異常状態を検出しない場合(S56:NO)は、判定部30は、最初のステップS51に戻って位置を検出する。
【0062】
警報を出すレベルであった場合(S58:YES)、判定部30は、他の検出体からの同時刻の異常状態レベルデータをまだ受信していないか否かを検出する(S59)。警報を出すレベルではない(例えば、警報基準値以下のレベル)場合(S58:NO)、判定部30は、最初のステップS51に戻って位置を検出する。
【0063】
他の検出体からの略同時刻の異常状態レベルデータを受信していない場合(S59:YES)、判定部30は、通信部60を介して他の検出体(第2検出体2及び第3検出体3)に向けて異常状態の検出データの問い合わせを送信する(S60)。その結果、他の検出体(第2検出体2及び第3検出体3)の異常状態の検出データを通信部60を介して受信(S61)したら、判定部30は、受信した異常状態の検出データのレベルと、異常検出部10で検出した検出レベルに対して、検出された距離に基づき、異常の判定に利用する他の検出体から受信した各異常状態レベルデータに対して距離が近いものほど優遇して重くする重み付け処理を行う。判定部30は、受信され重み付け処理された異常状態の検出データのレベルと、異常検出部10で検出した検出レベルとを比較部42で比較し、同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかを判定する。
【0064】
また、判定部30は、送信要求に基づき他の防犯装置(第2検出体2、第3検出体3)から受信した異常状態レベルデータでは有効度の高いデータ(例えば有効度が基準値より高いデータ)が選択できない場合、例えば、その他の防犯装置(第2検出体2、第3検出体3)に対して、更に別の防犯装置に対して検出された異常状態レベルデータを送信するように要求し、さらに、その送信要求に基づいて受信した異常状態レベルデータについては中継するように要求する。この場合、判定部30は、例えば、最初の送信要求で受信した異常状態レベルデータでは有効度の高いデータが選択できない場合に、さらに遠方の他の防犯装置から中継により異常状態レベルデータを入手し、有効度の高いデータが選択できない事態を減らすことができ、異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0065】
他の検出体からの略同時刻の異常状態レベルデータをすでに受信していた場合(S59:NO)、判定部30は、すでに受信していた異常状態の検出データのレベルと、異常検出部10で検出した検出レベルとに対して、ステップS62で重み付け処理を実施し、その重み付け処理された異常状態の検出データのレベルと、異常検出部10で検出した検出レベルとを比較部42で比較し、同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかを判定する。
なお、略同時刻とは、例えば、車両等の移動体用の防犯装置であれば、防犯上警報が要求される時刻の範囲は、自装置の異常状態レベルが警報を要するレベルに達してから前後数秒から十数秒以内とするとよい。
【0066】
両データのレベルが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示す場合(S63:YES)には、判定部30は、異常検出部10で検出した異常状態は人為的ではないと判断し、警報を抑制する(S64)。逆に、両データのレベルが同様な範囲に無いか同様に変化する傾向を示さない場合(S63:NO)には、判定部30は、異常検出部10で検出した異常状態は人為的であると判断し、警報部70からの警報動作を実施する(S65)。
【0067】
本実施形態の防犯システムにおける防犯装置1は、上記したように他の防犯装置2、3から受信した異常状態レベルデータには、当該装置2、3の位置データを含み、地球上の位置を検出する位置検出部80を有し、判定部30は、位置検出部80により検出した位置と受信した他の防犯装置2、3の位置データとから他の防犯装置2、3までの距離を演算する演算部40を含み、人為的な異常状態か否かを判定する際の異常状態レベルデータの重み付けを、距離の近いものほど重くするので、判定結果の精度を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態の防犯装置1における通信部60は、上記したように複数の位置データを含む異常状態レベルデータを受信可能であり、判定部30は、位置データから周辺であると判断された異常状態レベルデータの各レベルが、人為的な異常状態と判定されたレベルである各異常状態レベルデータの数を記録するデータ数記憶部54を有し、データ数記憶部54に記録された異常状態レベルデータの数が所定数よりも多い場合に、人為的な異常状態と判定するので、周辺から受信した異常状態レベルのデータのうち人為的な異常であると判断できる周辺の異常状態データの数を多くして人為的ではないと判断することで,異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態の防犯システムにおける防犯装置1は、上記したように時刻を計時する計時部90を有し、他の防犯装置(検出体)2、3から受信した異常状態レベルデータには、その異常状態レベルデータを検出した時刻データを含み、判定部30は、所定の時刻範囲に検出された異常状態レベルデータ及び受信した異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定するので、異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態の防犯装置1における判定部30は、上記したように異常検出部10が異常状態レベルを検出した時、通信部60を介して、他の防犯装置2、3に対して検出された位置データを含む異常状態レベルデータを送信するように要求するので、通常時には無駄な電力や演算を行わず、ランニングコストを下げることができる。
【0071】
また、本実施形態の防犯装置1における判定部30は、上記したように異常状態レベルとして、物体の存在又は接近を検出可能なセンサ14により検出された物体の存在レベル又はその変化レベルの値、衝撃又は振動を含む多方向の加速度を検出可能なセンサ12により検出された加速度レベルの値、傾斜を検出可能なセンサ16により検出された傾斜のレベル又はその変化の値の中から、少なくとも一つの値を用い、受信データとを比較して判断するので、精度良く異常状態を検出することができる。
【0072】
また、本実施形態の防犯システムは、上記したように異なる場所に設置された少なくとも2個の防犯装置1、2、3により構成される。各防犯装置1、2、3は、異常状態レベルを検出する異常検出部10と、他の防犯装置から検出された位置データを含む異常状態レベルデータを受信可能であると共に、自防犯装置で検出された位置データを含む異常状態レベルデータを他の防犯装置に向けて送信可能である通信部60とを有する。防犯装置1、2、3中の少なくとも一つの防犯装置が、異常検出部10の異常状態レベルの検出結果及び受信した位置データから周辺であると判断された異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定する判定部30と、判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報の発生を抑制する警報部70とを有する。これにより、各防犯装置1、2、3は、相互に検出結果を送受信し、自検出結果と比較するので、判定結果の精度を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の防犯システムの判定方法は、上記したように異なる場所に設置された少なくとも2個の防犯装置1、2、3により構成された防犯システムの判定方法であって、各防犯装置1、2、3で異常状態レベルを検出する工程と、各防犯装置1、2、3において、自防犯装置で検出された位置データを含む異常状態レベルデータを他の防犯装置に向けて送信する工程と、自防犯装置で異常状態レベルを判定する各防犯装置において、他の防犯装置から検出された位置データを含む異常状態レベルデータを受信する工程と、自防犯装置で異常状態レベルを判定する各防犯装置において、異常状態レベルの検出結果及び受信した位置データから周辺であると判断された異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定する工程と、自防犯装置で異常状態レベルを判定する各防犯装置において、判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制する工程とを有する。これにより、各防犯装置1、2、3は、相互に検出結果を送受信し、自検出結果と比較するので、判定結果の精度を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の防犯システムの判定プログラムは、上記したように異なる場所に設置された少なくとも2個の防犯装置1、2、3により構成された防犯システムの判定プログラムであって、各防犯装置1、2、3で異常状態レベルを検出するプログラムと、各防犯装置1、2、3において、自防犯装置で検出された位置データを含む異常状態レベルデータを前記他の防犯装置に向けて送信するプログラムと、自防犯装置で異常状態レベルを判定する各防犯装置において、他の防犯装置から検出された位置データを含む異常状態レベルデータを受信するプログラムと、自防犯装置で異常状態レベルを判定する各防犯装置において、異常状態レベルの検出結果及び受信した位置データから周辺であると判断された異常状態レベルデータとから人為的な異常状態か否かを判定するプログラムと、自防犯装置で異常状態レベルを判定する各防犯装置において、判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制するプログラムとを有する。これにより、各防犯装置1、2、3は、相互に検出結果を送受信し、自検出結果と比較するので、判定結果の精度を向上させることができる。
【0075】
このように、本実施形態では複数の近傍の検出体とデータの比較をして、距離に基づく選択も行うので、第1実施形態よりも正確に、自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを人為的ではないと判定することができ、検出感度を上げても誤動作を避けることができる。
なお、判定部30は、異常検出部10で検出された異常状態レベルが、所定の基準レベルを超える場合に当該異常状態レベルは前記人為的な異常状態であると判定する構成とし、異常検出部10で検出された異常状態レベルの値と前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータの値との差が、所定値以上である場合には、異常検出部10で検出された異常状態レベルが、所定の基準レベルを超えない場合であっても、人為的な異常状態と判定するようにしてもよい。例えば、S58の処理で、警報を出すレベルではない(例えば、警報基準値以下のレベル)場合(S58:NO)、判定部30は、最初のステップS51に戻って位置を検出するのではなく、続けてS59〜S62の処理と同様の処理を行い、その後、異常検出部10で検出された異常状態レベルの値と前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータの値との差が、所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合、S65へ移行して警報を発し、所定値未満である場合、S64に移行して警報を中止するようにしてもよい。なお、この所定値は、想定される状況を起こしてみて適正な値を決定すればよい。このようにすれば、S58の判定で所定の基準レベルは超えていないが、周囲の状況は警報を発すべき基準レベルを超える場合(自防犯装置の異常状態レベルと他防犯装置の異常状態レベルデータとの乖離が大きい場合)、実際には警報を発すべき場合であるのに警報が発せられないという問題を減らすことできる。
【0076】
<第3実施形態>
図4は、本発明の防犯システムの第3実施形態の概略構成を示すブロック図である。第3実施形態の防犯システムでは、第2実施形態と、主に、以下の相違がある。
(1)第1検出体1が検出データを受信する他の検出体の数が6個に増加している。
(2)異常検出部10内のセンサの数が6個に増加している。
(3)演算部10内に統計演算をする演算部を有する。
(4)記憶部50内に統計データの記憶部を有する。
以下、主に上記した相違点について記載し、第1実施形態と同様な構成については重複する記載を省略する。
【0077】
第1検出体1内の異常検出部10には、第2実施形態で説明した各センサの他に、圧力センサ20、トルクセンサ22、音圧センサ24が設けられている。圧力センサ20は、検出体に加わる圧力レベルを検出する。トルクセンサ22は、検出体の一部材に加わるトルクレベルを検出する。音圧センサ24は、周囲の音圧レベルを検出する。これらのセンサの検出結果を組み合わせて判断することにより、検出漏れを無くすと共に誤検出を減らし、検出精度を高めることができる。なお、各センサについては図6を用いて後述する。
【0078】
判定部30の演算部40には、データレベル記憶部52に格納されている他の検出体から受信した各異常状態レベルデータの統計値を演算する統計演算部46が設けられている。統計値とは、例えば、平均値、中心値、標準偏差値等である。また、第2実施形態で説明したように、距離演算部44で演算された各検出体までの距離に基づき、各異常状態レベルデータに所定係数を掛ける等の重み付けを行ったデータに対して、統計演算を実施してもよい。その演算結果は、記憶部50内の統計データ記憶部59に格納される。
【0079】
本実施形態では、第2検出体2〜第7検出体7は、図2に示した第2検出体2の異常検出部210及び通信部260と同様な構成を少なくとも備える検出体であり、さらに第1検出体1と同様な判定部30等の構成も備えていることが望ましい。
【0080】
図5は、図4の防犯システムにおける処理フローの一例を示す図である。なお、便宜上から図4に示した第2検出体2〜第7検出体7のうち、第4検出体4までを図5に示したが、第5検出体5以降も同様である。本実施形態の第1検出体1の動作としては、まず、位置検出部80で位置を検出する(S1)。その際に、他の第2検出体2〜第7検出体7でも位置の検出が実施されている(S21、S31、S41)。なお、各検出体における位置の検出は、イベント入力が有ったときに限らず、所定の短い周期で定期的に実施されていてもよい。
【0081】
第1検出体1は、必要に応じて他の検出体に向けてその位置情報を送出するが、他の検出体(第2検出体2〜第7検出体7)は必然としてそれらの位置情報を送信し(S22、S32、S42)、第1検出体1では、それらの各検出体からの位置情報を受信する(S2)。この場合の位置情報は、各検出体の異常状態レベルデータとそれに付随する検出体3を個別に認識するための識別(ID)符号のデータと時刻データ等である。
【0082】
次に、距離演算部44で、自検出体の位置情報と、第2検出体2〜第7検出体7の位置情報から、各他の検出体(第2検出体2〜第7検出体7)までの距離を演算する(S3)。判定部30は、この距離が短い方を優先して、異常の判定に利用する他の検出体を選択する。また、判定部30は、この距離に基づき、異常の判定に利用する他の検出体から受信した各異常状態レベルデータの有効度及び/又は信頼度を判定し、各データの選択を行う。
【0083】
判定部30は、距離が近い検出体の異常状態レベルデータについては、有効度及び/又は信頼度を高くし、選択可能性も高くする。それに対して距離が遠い検出体の異常状態レベルデータについては、判定部30は、有効度及び/又は信頼度を低くし、選択可能性も低くし、場合によっては比較対象として利用しない(S4)。
【0084】
その後、異常検出部10で異常状態を検出する(S5)。その際に、他の第2検出体2〜第7検出体7でも異常状態の検出が実施されている(S23、S33、S43)。なお、各検出体における異常状態の検出は、イベント入力が有ったときに限らず、所定の短い周期で定期的に実施されていてもよい。
【0085】
ステップS5で異常検出部10が異常状態を検出したら、判定部30では、その異常状態の検出レベルを取得して、その検出レベルが警報を出すレベルであるか否かの判定をする(S6)。そして、ステップ6で警報を出すレベルであった場合には、判定部30は、他の検出体からの同時刻の異常状態レベルデータをまだ受信していないか否かを検出する(S7)。
【0086】
ステップS7で他の検出体からの同時刻の異常状態レベルデータを受信していない場合には、判定部30は、通信部60を介して他の検出体(第2検出体2〜第7検出体7)に向けて異常状態の検出データの問い合わせを送信する(S8)。他の検出体(第2検出体2〜第7検出体7)では、異常状態の検出データの問い合わせを受信したら(S24、S34、S44)、各検出体(第2検出体2〜第7検出体7)内の該当する時刻の異常状態の検出データを、当該時刻データ及び識別(ID)符号のデータを付随させて、第1検出体1に送信する(S25、S35、S45)。
【0087】
第1検出体1では、他の検出体(第2検出体2〜第7検出体7)の各異常状態の検出データを通信部60を介して受信(S9)したら、判定部30は、各異常状態の検出データの平均値等の統計演算値を求める演算を実施し(S10)、受信した各異常状態の検出データのレベルの統計演算値と、異常検出部10で検出した検出レベルとを比較部42で比較し、同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示すかを判定する(S11)。
【0088】
両データのレベルが同様な範囲にあるか同様に変化する傾向を示す場合には、第1検出体1の判定部30は、異常検出部10で検出した異常状態は人為的ではないと判断し、警報を抑制するが、両データのレベルが同様な範囲に無いか同様に変化する傾向を示さない場合には、判定部30は、異常検出部10で検出した異常状態は人為的であると判断し、警報部70からの警報動作を実施する(S12)。
【0089】
また、本実施形態の防犯装置1における通信部60は、上記したように複数の位置データを含む異常状態レベルデータを受信可能であり、防犯装置1は、異常状態レベルデータの各レベルを記録するデータレベル記憶部52を有し、判定部30は、データレベル記憶部52に記録された位置データから周辺であると判断された各異常状態レベルデータの平均値により人為的な異常状態か否かを判定するので、周辺の防犯装置2〜7から受信した異常状態レベルのデータの平均値と大幅に異なる場合には人為的な異常であると判断することで、異常状態の検出精度を向上させることができる。
【0090】
このように、本実施形態では複数の近傍の検出体とデータの比較をして、データに距離に基づく重み付けを行った上に、比較対象となるデータに多数のデータから得られた平均値等の統計処理結果を用いるので、第1及び第2実施形態よりも正確に、自防犯装置で検出された異常状態レベルデータを人為的ではないと判定することができ、検出感度を上げても誤動作を避けることができる。
【0091】
図6は、上記した各実施形態の第1検出体1内のハードウェア構成の一例を示す図である。
なお、以下に説明する図6に示した第1検出体1の内部構成ブロックは、必要に応じて第2検出体2〜第7検出体7にも適用することができる。また、検出体の数は、複数(2個以上)であれば、7個以下でも、8個以上であっても良い。また、第1検出体1は、記憶媒体としてRAMとROMのみ又はそれにHDドライブのみを追加した構成であってもよい。また、第2検出体2〜第7検出体7は、表示装置やユーザインターフェース及び入出力装置等の対人インターフェース部分、警報装置を有していない構成であってもよい。
【0092】
第1検出体1は、主コントローラ111により相互に接続されるCPU101、RAM103、グラフィック・コントローラ109、及び表示装置110を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ112により主コントローラ111に接続される通信インターフェイス104、ハードディスクドライブ105、及びCD−ROMドライブ107を有する入出力部と、入出力コントローラ112に接続されるROM102、フレキシブルディスク・ドライブ106、及び入出力チップ108を有するレガシー入出力部とを備える。
【0093】
主コントローラ111は、RAM103と、高い転送レートでRAM103をアクセスするCPU101、及びグラフィック・コントローラ109とを接続する。CPU101は、ROM102、及びRAM103に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ109は、CPU101等がRAM103内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置110上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ109は、CPU101等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0094】
入出力コントローラ112は、主コントローラ111と、比較的高速な入出力装置であるハードディスクドライブ105、通信インターフェイス104、CD−ROMドライブ107、ユーザインターフェース113、データインターフェース121、センサインターフェース131、音響インターフェース141を接続する。ハードディスクドライブ105は、CPU101が使用するプログラム、及びデータを格納する。通信インターフェイス104は、通信ネットワーク800に接続してプログラムまたはデータを送受信する。通信ネットワーク800は、図6では有線の場合を示しているが、各検出体が移動体である場合には無線通信を用いて各検出体間の通信を確立するものであることが望ましい。各検出体が固定されている場合は、電気信号や光信号を用いる有線通信を用いるものであってもよい。
【0095】
CD−ROMドライブ107は、CD−ROM160からプログラムまたはデータを読み取り、RAM103を介してハードディスクドライブ105、及び通信インターフェイス104に提供する。ユーザインタフェース113には、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等の手入力装置、又は、音声入力装置等が接続される。データインターフェース121には、例えば、グローバルポジショニングシステム(GPS)等が位置検出装置123及び計時装置122として接続される。これにより、検出体の正確な緯度データと経度データ及びその正確な取得時刻データを得ることができる。
【0096】
センサインターフェース131には、図6に示された中の少なくとも1つのセンサが接続され、必要に応じて各種のセンサが接続される。加速度センサ132は、例えば衝撃による加速度、振動による加速度を測定する。接近センサ133は、例えば、周辺の物体(電気的な容量を有する)が移動することによる電界強度の変化を測定することで、その物体が接近する方向に移動しているか、離れる方向に移動しているかを検出する。傾斜センサ134は、例えば、重力により吊り下げられた一方の電極と、間隔を置いて周囲に設置された他方の電極が接触することで傾斜を検出する。傾斜センサ134では、重力加速度を検出することで、盗難等の際に移動体がジャッキアップされる事態検出することができる。
【0097】
窃盗等を行う犯罪者が検出体の内部に侵入する場合や、検出体の付属物を取り外す場合には、検出体に近づいて衝撃又は振動を与えるので、このように加速度や傾斜を測定したり接近度を測定することにより異常事態の検出が可能になる。但し、加速度センサ及び傾斜センサ等は原理的に、地震が発生した時、ダンプカー等の大型の車両や列車等が近傍を通過した時、花火大会等の大型花火による音圧を受けた時、台風等の強風を受けた時、橋の上等の振動しやすい足場上で渋滞等により停止している時にも加速度や傾斜を検出する。また、接近センサも、原理的に人以外の犬や猫の接近や、犯罪者以外の通行人等の通過時にも、その物体の接近を検出する。従って、これらのセンサを備えることのみでは誤検出を避けることはできない。
【0098】
センサインターフェース131に接続するその他のセンサとしては、例えば、検出体の少なくとも一つの面に加わる圧力レベル又はそのレベル変化を検出する圧力センサ20、検出体を構成するか付属する少なくとも一つの部材に加わるトルクレベル又はそのレベル変化を検出するトルクセンサ22、及び、検出体の周囲の音圧レベルを検出する音圧センサ24等がある。検出体に極めてゆっくり力が加わる場合には加速度センサ12では検出が困難である可能性があるが、圧力センサ20を用いることでそのような犯罪者による応力を検出することができる。また、検出体が大きい場合には個々の小さな部材への犯罪者の応力は検出し難い場合があるが、それら個々の部材にトルクセンサ22を設けることで検出が確実になる。また、人声や作業による騒音を一種のマイクロフォンである音圧センサ24で検出することで犯罪者が作業を実施していることを検出することができる。また、音圧センサ24は、移動体の筐体(車体)への接触音やガラスの破壊音やドアを開いたときの車中の気圧変化を検出することができるので、犯罪者がそのような事象が起こる作業を実施していることも検出することができる。
【0099】
音響インターフェース141には、ブザーや警音器等の音響による警報装置142を接続することができる。警音器はサイレン等の音響だけでなく音声により異常を報知できるようにしてもよい。必要に応じて、光学的なインターフェースにフラッシュライト(LED)や赤色灯等の光学的な警報装置を接続しても良い。
【0100】
また、入出力コントローラ112には、例えば、さらにROM102と、及び入出力チップ108の比較的低速な入出力装置(フレキシブルディスク・ドライブ106)とが接続される。ROM102は、第1検出体1が起動時に実行するブート・プログラムや、第1検出体1のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ106は、フレキシブルディスク150からプログラムまたはデータを読み取り、RAM103を介してハードディスクドライブ105、及び通信インターフェイス104に提供する。入出力チップ108は、フレキシブルディスク・ドライブ106や、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0101】
CPU101が実行するプログラムは、例えば、フレキシブルディスク150、CD−ROM160、またはICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。記録媒体に格納されたプログラムは圧縮されていても非圧縮であってもよい。プログラムは、記録媒体からハードディスクドライブ105にインストールされ、RAM103に読み出されてCPU101により実行される。
【0102】
CPU101により実行されるプログラムは、第1検出体1を、図1、図2に関連して説明したように機能させる。また、図3の第1検出体1についても、同様に機能させる。図2の第2検出体2〜第7検出体等の他の検出体についても、同様の構成を有する場合は、同様に機能させる。
【0103】
以上に示したプログラムは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク150、CD−ROM160の他に、DVDやPD等の光学記録媒体、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介して第1検出体1に提供してもよい。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲、背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段の記載内容を適宜各実施形態に当てはめ、当業者の技術常識を適用して実施の形態とすることができる。例えば、プログラムの構成についても当業者の技術常識を適用して多様な変更または改良を加えることが可能であり、例えば、課題を解決するための手段の欄に記載のステップとして処理を構成するとよい。
【符号の説明】
【0105】
1 第1検出体、
2 第2検出体、
3 第3検出体、
4 第4検出体、
5 第5検出体、
6 第6検出体、
7 第7検出体、
10 異常検出部、
12 加速度センサ、
14 接近センサ、
16 傾斜センサ、
20 圧力センサ、
22 トルクセンサ、
24 音圧センサ、
30 判定部、
40 演算部、
42 比較部、
44 距離演算部、
50 記憶部、
52 データレベル記憶部、
54 データ数記憶部、
56 データ検出時刻記憶部、
58 データ検出体ID記憶部、
60 通信部、
70 警報部、
80 位置検出部、
90 計時部、
101 CPU(セントラル・プロセシング・ユニット)、
102 ROM(リード・オンリー・メモリ)、
103 RAM(ランダム・アクセス・メモリ)、
104 通信インターフェース(I/F)、
105 ハードディスク(HD)ドライブ、
106 フロッピー(登録商標)ディスク(FD)ドライブ、
107 CD−ROMドライブ、
108 入出力(I/O)チップ、
109 グラフィックコントローラ、
110 表示装置、
111 主コントローラ、
112 入出力(I/O)コントローラ、
113 ユーザーインターフェース(I/F)、
114 入出力装置、
121 データインターフェース(I/F)、
122 計時装置、
123 位置検出装置、
131 センサインターフェース(I/F)、
132 加速度センサ、
133 接近センサ、
134 傾斜センサ、
141 音響インターフェース(I/F)、
142 警報装置、
210 異常検出部、
212 加速度センサ、
260 通信部、
800 通信ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常状態レベルを検出する異常検出部と、
他の防犯装置から検出された異常状態レベルデータを受信可能である通信部と、
前記異常検出部の異常状態レベルの検出結果及び受信した異常状態レベルデータに基づき人為的な異常状態か否かを判定する判定部と、
前記判定結果が人為的な異常状態でない場合、警報を抑制する警報部と
を備えることを特徴とする防犯装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記受信した異常状態レベルデータの有効度を加味して前記人為的な異常状態か否かの判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の防犯装置。
【請求項3】
前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータには、当該装置の位置データを含み、
地球上の位置を検出する位置検出部を有し、
前記判定部は、
前記位置検出部により検出した位置と前記受信した他の防犯装置の位置データとから前記他の防犯装置までの距離を演算する演算部を含み、
前記有効度は、前記距離に基づいて決定すること
を特徴とする請求項2に記載の防犯装置。
【請求項4】
移動体に搭載され、
前記通信部は、無線通信による異常状態レベルデータを受信可能であり、
前記判定部は、
前記有効度を、前記無線通信による異常状態レベルデータの信号強度に基づいて決定すること
を特徴とする請求項2または3に記載の防犯装置。
【請求項5】
前記通信部は、複数の前記異常状態レベルデータを受信可能であり、
前記判定部は、
前記異常状態レベルデータの各レベルが、前記人為的な異常状態と判定されたレベルである各異常状態レベルデータの数を記録するデータ数記憶部を有し、
前記データ数記憶部に記録された異常状態レベルデータの数が所定数よりも多い場合に、
前記人為的な異常状態ではないと判定する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の防犯装置。
【請求項6】
前記通信部は、複数の前記異常状態レベルデータを受信可能であり、
前記異常状態レベルデータの各レベルを記録するデータレベル記憶部を有し、
前記判定部は、
前記データレベル記憶部に記録された各異常状態レベルデータの統計値に基づいて前記人為的な異常状態か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の防犯装置。
【請求項7】
前記データレベル記憶部は、過去の所定位置における異常状態レベルデータを記憶し、
前記判定部は、
前記異常状態レベルとして、前記過去の所定位置における異常状態レベルデータにより前記人為的な異常状態か否かを判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の防犯装置。
【請求項8】
時刻を計時する計時部を有し、
前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータには、当該異常状態レベルデータを検出した時刻データを含み、
前記判定部は、
所定の時刻範囲内に検出された前記異常状態レベルデータ及び受信した異常状態レベルデータとに基づいて前記人為的な異常状態か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の防犯装置。
【請求項9】
前記判定部は、
前記異常検出部が異常状態レベルを検出した時、
前記通信部を介して、前記他の防犯装置に対して検出された異常状態レベルデータを送信するように要求する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の防犯装置。
【請求項10】
前記判定部は、送信要求に基づき前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータでは前記有効度の高いデータが選択できない場合、前記他の防犯装置に対して、更に別の防犯装置に対して検出された異常状態レベルデータを送信するように要求し、当該異常状態レベルデータを中継するように要求する
ことを特徴とする請求項9に記載の防犯装置。
【請求項11】
前記判定部は、
前記異常状態レベルとして、物体の存在又は接近を検出可能なセンサにより検出された物体の存在レベル又はその変化レベルの値、衝撃又は振動を含む多方向の加速度を検出可能なセンサにより検出された加速度レベルの値、傾斜を検出可能なセンサにより検出された傾斜のレベル又はその変化の値の中から、少なくとも一つの値を用いる
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の防犯装置。
【請求項12】
前記判定部は、
前記異常検出部で検出された異常状態レベルが、所定の基準レベルを超える場合に当該異常状態レベルは前記人為的な異常状態であると判定する構成であって、
前記異常検出部で検出された異常状態レベルの値と前記他の防犯装置から受信した異常状態レベルデータの値との差が、所定値以上である場合には、前記異常検出部で検出された異常状態レベルが、所定の基準レベルを超えない場合であっても、前記人為的な異常状態と判定する
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の防犯装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の防犯装置の機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−44037(P2011−44037A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192363(P2009−192363)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】