防眩性フィルム、防眩性偏光板及び画像表示装置
【課題】優れた防眩性等を示し、さらに気泡の発生を防止した防眩性フィルムを提供すること。
【解決手段】微細凹凸表面を有する防眩層101が、透明支持体104上に形成されている防眩性フィルム1であって、前記微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものであり、前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより形成されるものであり、且つ、前記塗工液の沈降度が、適切な範囲に制限される。
【解決手段】微細凹凸表面を有する防眩層101が、透明支持体104上に形成されている防眩性フィルム1であって、前記微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものであり、前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより形成されるものであり、且つ、前記塗工液の沈降度が、適切な範囲に制限される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸表面を有する防眩層が、透明支持体上に形成されている防眩性フィルム及びその製法に関する。また、それら防眩性フィルムを用いた防眩性偏光板や、画像表示装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話などにおいては、一般に、画像表示装置の表面に防眩性フィルムが配置される。
【0003】
このような防眩性フィルムとしては、透明支持体上に、特に鋳型を用いることなく、微粒子を含有した塗工液を塗工した後、乾燥、硬化して防眩層を形成したもの(特許文献1〜2)や、微粒子を含有した塗工液を塗工した後、乾燥し、次いで賦型フィルムで凹凸形状を転写しながら硬化して防眩層を形成したもの(特許文献3)が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−18706号公報
【特許文献2】特開平10−20103号公報
【特許文献3】特開2007−256962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防眩性フィルムには、防眩性が求められる他、画像表示装置の表面に配置した際に画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状とが干渉し、結果として輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」の発生を抑制することなどが要望されている。しかしながら、前述した公知の防眩性フィルムは、それらの点で必ずしも十分なものとはいえなかった。また、特許文献3に記載された防眩性フィルムのように、透明支持体上に、微粒子を含有した塗工液を塗工した後、乾燥し、次いで賦型フィルムで凹凸形状を転写しながら硬化する場合において、使用する塗工液によっては得られる防眩性フィルムに気泡が生じたり、塗工液を供給するダイなどに微粒子が蓄積し、これが製品や製造装置を汚染したりする問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つは、以下の構成を備えるものである。
微細凹凸表面を有する防眩層が、透明支持体上に形成されている防眩性フィルムであって、
前記微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものであり、
前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより形成されるものであり、且つ、
下記式(A)で示される前記塗工液における微粒子の沈降度Sが、1以上76以下であることを特徴とする防眩性フィルム。
S=100−x/30×100 (A)
〔式中、xは、微粒子が分散している前記塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置して観測される該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を表し、Sは、前記塗工液の沈降度を表す。〕
【0007】
また、本発明の1つは、前記防眩性フィルムを製造する方法であって、
前記塗工液を透明支持体上に塗工する塗工工程、
前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して積層体を得る乾燥工程、
前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる硬化工程、及び、
前記硬化工程の後、塗工面から鋳型を剥離する剥離工程
を含む防眩性フィルムの製造方法を提供するものである。
【0008】
くわえて、本発明は、前記防眩性フィルムの防眩層と反対側の面に偏光フィルムが貼合されている防眩性偏光板を提供するものであり、さらに、前記防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、前記防眩性偏光板が、防眩層を外側にして前記画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた防眩性を示しながら、「ギラツキ」の発生による視認性の低下を防止し、さらに気泡の発生を防止した防眩性フィルムを、安定した品質で製造して提供することができる。また、本発明の防眩性フィルムは、防眩性偏光板や画像表示装置の部材として好適に使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の防眩性フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の防眩性フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。
【図3】微細凹凸表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。
【図4】防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の傾斜角度分布のヒストグラムの一例を示すグラフである。
【図5】標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。
【図6】本発明の防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図である。
【図7】図6に示した二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して得られた標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示したものである。
【図8】図7に示したエネルギースペクトルH2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。
【図9】本発明の防眩性フィルムを作製するために用いることができるパターンである画像データの一部を示す図である。
【図10】図9に示した階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示した図である。
【図11】図10に示したエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。
【図12】本発明の防眩性フィルムの製造に好ましく用いられる金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図13】本発明の防眩性フィルムの製造に好ましく用いられる金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図14】第1エッチング工程によって形成された凹凸面が第2エッチング工程によって鈍る状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<防眩性フィルム>
図1は、本発明の防眩性フィルムの一例を模式的に示す断面図である。本発明の防眩性フィルムは、図1に示される例のように、透明支持体104と、透明支持体104上に積層された防眩層101とを備える。防眩層101は、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物102と、微粒子103を含有する。防眩層101における透明支持体104とは反対側の表面は、微細な凹凸表面からなる。以下、本発明の防眩性フィルムについてより詳細に説明する。
【0012】
透明支持体は、実質的に光学的に透明なフィルムである限り特に制限されず、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。透明支持体の厚みは特に制限されないが、通常、10〜250μmであり、好ましくは20〜125μmである。
【0013】
防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いで凹凸形状を有する鋳型の該凹凸面を押し付けながら硬化処理することにより、形成される。ここでいう活性エネルギー線硬化型樹脂とは、活性エネルギー線の照射により重合、硬化する樹脂であり、たとえば、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。活性エネルギー線硬化性樹脂は市販品であってもよく、多くの場合は、活性エネルギー線硬化性樹脂に、重合開始剤や、その他必要に応じて添加された界面活性剤等の添加剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として市販されている。
【0014】
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、たとえば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0015】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
【0016】
これらから、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応によって得ることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
【0018】
また、ポリエステル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0019】
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中で、硬化物(被膜)の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体、アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体及びビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、厚膜化したとき可撓性(可とう性:柔軟性を示す性質)が良い点からウレタンアクリレート化合物を使用することが好ましい。また、これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0020】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、スチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、フマル酸ジt−ブチル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、N−イソプロピルアクリルアミド等を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独または2種類以上を混合して用いられる。
【0021】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、防眩層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーとしては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、及び、エポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマー等である。
【0022】
また、その他の重合性オリゴマーとしては、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、例えば、多価アルコールとして1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
【0023】
さらに、その他の重合性オリゴマーの例としては、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものとが挙げられる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものが挙げられる。
【0024】
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテル、及び、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルのそれぞれ水酸基において、イソシアネート類と反応させて得られる化合物が挙げられる。水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で挙げられたものである。水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド及び/またはε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、多価アルコールとしては、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものである。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで挙げられたものである。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0025】
これらの重合性オリゴマー化合物はそれぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。なお、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、前記単官能(メタ)アクリレート系化合物、及び、重合性オリゴマーも、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0026】
前記塗工液は、重合開始剤を含有するのが好ましい。ここでいう重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラtert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。
【0027】
重合開始剤は色素増感剤と組み合わせて用いてもよい。色素増感剤としては、たとえば、キサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンなどが挙げられる。重合開始剤と色素増感剤との組み合わせとしては、たとえば、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB/日本油脂(株)製)とキサンテンとの組み合わせ、BTTBとチオキサンテンとの組み合わせ、BTTBとクマリンとの組み合わせ、BTTBとケトクマリンとの組み合わせなどが挙げられる。
【0028】
微粒子は、有機微粒子、無機微粒子のいずれも使用できる。有機微粒子としては、たとえば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂等の高分子化合物からなる微粒子が挙げられ、架橋された高分子であってもよい。また、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエン等から選ばれる2種以上のモノマーが共重合されてなる共重合体を使用することもできる。無機微粒子としては、たとえば、シリカ、シリコーン、酸化チタン等からなる微粒子や、ガラスビーズが挙げられる。また、これらを単独で使用してもよく、2種類以上を使用してもよい。本発明では、防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子が、有機微粒子であることが好ましい。
【0029】
微粒子の形状については適宜選択しうるが、防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子は、球状であることが好ましい。また、防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子の平均粒子径は、6μm以上15μm以下であるのが好ましく、6μm以上10μm以下であるのがより好ましい。当該平均粒子径が6μmを下回る場合には、微粒子による広角側の散乱光強度が上昇し、画像表示装置に適用したときに透過鮮明度を低下させる傾向にあり好ましくない。また、当該平均粒子径が15μmを上回る場合には、微粒子によるレンズ効果が顕著となり、画像表示装置に適用したときにギラツキを増加させる傾向にあり好ましくない。
【0030】
防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子と、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物との屈折率差が、0.005以上0.16以下であるのが好ましく、0.02以上0.05以下であることがより好ましい。屈折率差が0.16を上回る場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物と微粒子の界面における反射率が増大し、結果として後方散乱が上昇し、全光線透過率が低下する傾向にある。全光線透過率の低下は、防眩性フィルムのヘイズを増大させ、画像表示装置に適用したときのコントラストの低下を生じさせるので好ましくない。屈折率差が0.005を下回る場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物と微粒子の界面における光屈折の効果がほとんど得られず、結果として目的とする防眩性能を得ることができないので好ましくない。
【0031】
微粒子を構成する材料は、上述した屈折率差を満たすものであるのが好ましい。防眩層を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物の屈折率は、通常、1.50程度であるため、微粒子の屈折率は、1.40〜1.65程度のものから、防眩性フィルムの設計に合わせて適宜選択することができる。かかる好適な微粒子の例を以下に掲げる。
メラミンビーズ(屈折率1.60)、
ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、
メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、
ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、
ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、
ポリスチレンビーズ(屈折率1.60)、
ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、
シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.43)など。
【0032】
前記塗工液における微粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し10重量部以上100重量部以下であるのが好ましく、15重量部以上70重量部以下であるのがより好ましい。10重量部未満である場合には、微粒子による防眩性能が不十分であるので好ましくない。また、100重量部を超える場合には、微粒子による透過鮮明度の低下が顕著であるので好ましくない。
【0033】
希釈溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後は、上記溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明における防眩層を形成するための塗工液は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶媒を含有するものであり、かつ、下記式(A)で示される前記塗工液の沈降度Sが、1以上76以下であることを特徴とする。
【0035】
S=100−x/30×100 (A)
【0036】
〔式中、xは、微粒子が分散している前記塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置して観測される該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を表し、Sは、前記塗工液の沈降度を表す。〕
【0037】
ここで沈降度Sは、前述したとおり、微粒子が分散している所定量の塗工液を所定時間放置して、微粒子の沈降度合いを評価した指標であり、沈降度Sが低い値を示すほど、微粒子が速く沈降することを意味し、沈降度Sが高い値を示すほど、微粒子が遅く沈降することを意味するものである。本発明では、沈降度Sは、10以上40以下が好ましい。沈降度Sが1を下回ると、塗工液を供給するダイなどに微粒子が蓄積し、これが原因となって製品や製造装置の汚染を引き起こしてしまう。一方、沈降度Sが76を上回ると、形成される防眩層に気泡が生じてしまう。
【0038】
沈降度Sを制御するには、主に塗工液の粘度、微粒子の平均粒子径、微粒子の密度を調整すればよい。微粒子の平均粒子径や、微粒子の密度は、防眩性フィルムに所望の光学特性を付与する点から決定されることが多いため、沈降度Sを制御する手段として、塗工液の粘度を調整することが好ましい。塗工液の粘度を調整するには、希釈溶剤の量、種類を調整することが好ましい。塗工液の粘度を低くするには、希釈溶剤の量を多く、また粘度の低い希釈溶媒を使用すればよく、塗工液の粘度を高くするには、希釈溶剤の量を少なく、また粘度の高い希釈溶媒を使用すればよい。
【0039】
塗工液は、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を含有するのが好ましい。レベリング剤を含有する塗工液を使用すると、耐汚染性、耐擦傷性を付与することを可能とする。レベリング剤は、耐熱性が要求されるフィルム状光透過性基材(例えばトリアセチルセルロース)に好ましくは利用される。
【0040】
また、塗工液には、前述した成分の他に、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、帯電防止剤、防汚剤などを添加してもよい。
【0041】
図1に示すように、本発明の防眩性フィルムの防眩層101は微細な凹凸表面を有するものであり、その微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものである。このような所定の傾斜角度分布を有することにより、優れた防眩性能を示しつつ、白ちゃけを効果的に防止する上で一層有効となる。傾斜角度が5°以下である面の割合が95%を下回ると、凹凸表面の傾斜角度が急峻になって、周囲からの光を集光し、表示面が全体的に白くなる白ちゃけが発生しやすくなる。このような集光効果を抑制し、白ちゃけを防止するためには、微細凹凸表面の傾斜角度が5°以下である面の割合が高ければ高いほどよく、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
【0042】
また、本発明の防眩層は、所定の塗工液を透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより、形成されるものである。このようにスタンパーで押し付けながら硬化処理しているため、図1に示すように、微粒子103は、防眩層101中に分散され、かつ、防眩層101の表面から突出していない状態となっている。そして、微粒子103が防眩層101の表面から突出していないことにより、たとえば、微粒子の形状の振れに伴う微細凹凸表面形状の振れといった該表面形状へ影響することが排除でき、その結果、該表面形状を高精度で制御することが可能となる。
【0043】
図2は、本発明の防眩性フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。図2に示されるように、本発明の防眩性フィルム1は、微細な凹凸2から構成される微細凹凸表面を有する防眩層を備える。ここで、本発明でいう「微細凹凸表面の傾斜角度」とは、図2を参照して、防眩性フィルム1表面の任意の点Pにおいて、防眩性フィルムの主法線方向5に対する、そこでの凹凸を加味した局所的な法線6のなす角度(表面傾斜角度)ψを意味する。微細凹凸表面の傾斜角度については、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。
【0044】
ここで、図3は、微細凹凸表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。
具体的な傾斜角度の決定方法を説明すると、図3に示すように、点線で示される仮想的な平面FGHI上の着目点Aを決定し、そこを通るx軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点BおよびDを、また点Aを通るy軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点CおよびEをとり、これらの点B,C,D,Eに対応する防眩性フィルム面上の点Q,R,S,Tを決定する。なお図3では、防眩性フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、防眩性フィルム厚み方向の座標をzで表示している。平面FGHIは、y軸上の点Cを通るx軸に平行な直線、および同じくy軸上の点Eを通るx軸に平行な直線と、x軸上の点Bを通るy軸に平行な直線、および同じくx軸上の点Dを通るy軸に平行な直線とのそれぞれの交点F,G,H,Iによって形成される面である。また図3では、平面FGHIに対して、実際の防眩性フィルム面の位置が上方にくるように描かれているが、着目点Aのとる位置によって当然ながら、実際の防眩性フィルム面の位置が平面FGHIの上方にくることもあるし、下方にくることもある。
【0045】
傾斜角度は、着目点Aに対応する実際の防眩性フィルム面上の点Pと、その近傍にとられた4点B,C,D,Eに対応する実際の防眩性フィルム面上の点Q,R,S,Tの合計5点により張られるポリゴン4平面、すなわち、四つの三角形PQR,PRS,PST,PTQの各法線ベクトル6a,6b,6c,6dを平均して得られる平均法線ベクトル(平均法線ベクトルは、図2に示される凹凸を加味した局所的な法線6と同義である)の極角を、測定された表面形状の三次元情報から求めることにより得ることができる。各測定点について傾斜角度を求めた後、ヒストグラムが計算される。
【0046】
図4は、防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の傾斜角度分布のヒストグラムの一例を示すグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸は傾斜角度であって、0.5°刻みで分割してある。たとえば、一番左の縦棒は、傾斜角度が0〜0.5°の範囲にある集合の分布を示し、以下、右へ行くにつれて角度が0.5°ずつ大きくなっている。図4では、横軸の2目盛毎に値の下限値を表示しており、たとえば、横軸で「1」とある部分は、傾斜角度が1〜1.5°の範囲にある集合の分布を示す。また、縦軸は傾斜角度の分布を表し、合計すれば1(100%)になる値である。この例では、傾斜角度が5°以下である面の割合は略100%である。
【0047】
また、防眩層の微細凹凸表面が「微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトル」を用いて規定される特定の空間周波数分布を有するのが好ましい。すなわち、防眩層における微細凹凸表面の標高の空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH12と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H12/H22が3〜15の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH32と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H32/H22が0.1以下であるのが好ましい。このような数値範囲となる防眩性フィルムは、優れた防眩性能を示し、かつ、白ちゃけによる視認性の低下を防止することができるとともに、高精細の画像表示装置に適用した場合においても、ギラツキを発生せずに高いコントラストを発現するものとなる。
【0048】
くわえて、前述したとおり、防眩層の表面から微粒子が突出していないことにより、微粒子による防眩層の微細凹凸表面への影響は排除しうるため、前記所定の空間周波数分布を精度よく制御することができ、その結果、優れた光学特性を有する本発明の防眩性フィルムを再現性よく得ることができる。また、本発明の防眩性フィルムは、その防眩層に微粒子を含有するため、微粒子を含有しない防眩性フィルムと比較して、防眩性能をより効果的に発現することができる。従来、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物と異なる屈折率を有する微粒子を防眩層に分散させた防眩性フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物との界面における光の散乱によって、透過鮮明度の低下が過剰となる問題があったが、本発明の防眩性フィルムによれば、透過鮮明度の過剰な低下を生じさせることなく、微粒子による防眩性の効果が得られる。
【0049】
防眩層が有する微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルについて説明する。図2に示されるように、本発明の防眩性フィルム1は、微細な凹凸2から構成される微細凹凸表面を有する防眩層を備える。ここで、本発明でいう「微細凹凸表面の標高」とは、防眩性フィルム1表面の任意の点Pにおける、微細凹凸表面の最低点の高さにおいて当該高さを有する仮想的な平面(標高は基準として0μm)からの防眩フィルムの主法線方向5(上記仮想的な平面における法線方向)における直線距離を意味する。図2に示すように、防眩フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示した際には、微細凹凸表面の標高は座標(x,y)の二次元関数h(x,y)で表すことができる。図2には、防眩フィルム全体の面を投影面3で表示している。
【0050】
微細凹凸表面の標高は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。測定機に要求される水平分解能は、少なくとも5μm以下、好ましくは2μm以下であり、また垂直分解能は、少なくとも0.1μm以下、好ましくは0.01μm以下である。この測定に好適な非接触三次元表面形状・粗さ測定機としては、New View 5000シリーズ(Zygo Corporation社製、日本ではザイゴ(株)から入手可能)、三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)などを挙げることができる。測定面積は、標高のエネルギースペクトルの分解能が0.01μm-1以下である必要があるため、少なくとも200μm×200μm以上とするのが好ましく、より好ましくは、500μm×500μm以上である。
【0051】
次に、二次元関数h(x,y)より標高のエネルギースペクトルを求める方法について説明する。まず、二次元関数h(x,y)より、下記式(1)で定義される二次元フーリエ変換によって二次元関数H(fx,fy)を求める。
【0052】
【0053】
ここで、fxおよびfyは、それぞれx方向およびy方向の空間周波数であり、長さの逆数の次元を持つ。また、式(1)中のπは円周率、iは虚数単位である。得られた二次元関数H(fx,fy)を二乗することによって、標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を求めることができる。このエネルギースペクトルH2(fx,fy)は、防眩層の微細凹凸表面の空間周波数分布を表している。
【0054】
以下、防眩層の微細凹凸表面のエネルギースペクトルを求める方法をさらに具体的に説明する。上記の共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡などによって実際に測定される表面形状の三次元情報は、一般的に離散的な値、すなわち、多数の測定点に対応する標高として得られる。図5は、標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。図5に示すように、防眩性フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、防眩性フィルムの投影面3上にx軸方向にΔx毎に分割した線およびy軸方向にΔy毎に分割した線を破線で示すと、実際の測定では微細凹凸表面の標高は、防眩性フィルムの投影面3上の各破線の交点毎の離散的な標高値として得られる。
【0055】
得られる標高値の数は、測定範囲とΔxおよびΔyによって決まり、図5に示すようにx軸方向の測定範囲をX=MΔxとし、y軸方向の測定範囲をY=NΔyとすると、得られる標高値の数は(M+1)×(N+1)個である。
【0056】
図5に示すように、防眩性フィルムの投影面3上の着目点Aの座標を(jΔx,kΔy)(ここで、jは0以上M以下であり、kは0以上N以下である。)とすると、着目点Aに対応する防眩性フィルム表面上の点Pの標高は、h(jΔx,kΔy)と表すことができる。
【0057】
ここで、測定間隔ΔxおよびΔyは、測定機器の水平分解能に依存し、精度良く微細凹凸表面を評価するためには、上述したとおりΔxおよびΔyともに5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、測定範囲XおよびYは上述したとおり、ともに200μm以上が好ましく、ともに500μm以上がより好ましい。
【0058】
このように、実際の測定では微細凹凸表面の標高を表す関数は(M+1)×(N+1)個の値を持つ離散関数h(x,y)として得られる。したがって、測定によって得られた離散関数h(x,y)と下記式(2)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数H(fx,fy)が求まり、離散関数H(fx,fy)を二乗することによってエネルギースペクトルの離散関数H2(fx,fy)が求められる。式(2)中のlは−(M+1)/2以上(M+1)/2以下の整数であり、mは−(N+1)/2以上(N+1)/2以下の整数である。また、ΔfxおよびΔfyは、それぞれx方向およびy方向の空間周波数間隔であり、式(3)および式(4)で定義される。ΔfxおよびΔfyは、標高のエネルギースペクトルの水平分解能に相当する。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
図6は、本発明の防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図の一例である。図6において標高は白と黒のグラデーションで示している。図6に示した離散関数h(x,y)は、512×512個の値を持ち、水平分解能ΔxおよびΔyは1.66μmである。
【0063】
図6に示される例のように、本発明の防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面は、ランダムに形成された凹凸からなるため、標高のエネルギースペクトルは、図7に示されるように、原点を中心に対称となる。よって、空間周波数0.01μm-1における標高のエネルギースペクトルH12、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22および空間周波数0.1μm-1における標高のエネルギースペクトルH32は、二次元関数であるエネルギースペクトルH2(fx,fy)の原点を通る断面より求めることができる。図8に、図7に示したエネルギースペクトルH2(fx,fy)のfx=0における断面を示した。図8より、空間周波数0.01μm-1における標高のエネルギースペクトルH12は4.4、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22は0.35、空間周波数0.1μm-1における標高のエネルギースペクトルH32は0.00076であることがわかり、比H12/H22は14、比H32/H22は0.0022と算出される。
【0064】
上述したように、本発明に係る防眩層において、空間周波数0.01μm-1における微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH12と、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22との比H12/H22は、3〜15の範囲内とされる。標高のエネルギースペクトルの比H12/H22が3を下回ることは、防眩層の微細凹凸表面に含まれる100μm以上の長周期の凹凸形状が少なく、25μm未満の短周期の凹凸形状が多いことを示している。そのような場合には外光の映り込みを効果的に防止することができず、十分な防眩性能が得られない。また、これに対して、標高のエネルギースペクトルの比H12/H22が15を上回ることは、微細凹凸表面に含まれる100μm以上の長周期の凹凸形状が多く、25μm未満の短周期の凹凸形状が少ないことを示している。そのような場合には、防眩性フィルムを高精細の画像表示装置に配置した際にギラツキを発生させる傾向にある。より優れた防眩性能を示しつつ、ギラツキをより効果的に抑制するためには、標高のエネルギースペクトルの比H12/H22は、3.5〜14.5の範囲内であることが好ましく、4〜14の範囲内であることがより好ましい。
【0065】
また、本発明に係る防眩層において、空間周波数0.1μm-1における微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH32と、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22との比H32/H22は、0.1以下とされ、好ましくは0.01以下とされる。比H32/H22が0.1以下であることは、微細凹凸表面に含まれる10μm未満の短周期成分が十分に低減されていることを示しており、これにより白ちゃけの発生を効果的に抑制することができる。微細凹凸表面に含まれる10μm未満の短周期成分は、防眩性に効果的に寄与しない一方、微細凹凸表面に入射した光を散乱させて白ちゃけの原因となるものである。
【0066】
本発明の防眩性フィルムは、好ましくは表面ヘイズが0.1%以上5%以下であり、全ヘイズが5%以上30%以下である。表面ヘイズが0.1%未満の場合は防眩性能が不足し、5%を超える場合は表面凹凸による光散乱が大きくなるため、透過鮮明度の低下や白ちゃけが生じるため好ましくない。また、全ヘイズが5%未満の場合は防眩性能が不足し、30%を超える場合は透過鮮明度が低下するため好ましくなく、また、場合によってはギラツキが生じるため好ましくない。
【0067】
防眩性フィルムの全ヘイズは、JIS K 7136に示される方法に準拠して測定することができる。表面ヘイズと内部ヘイズの切り分けは、全体のヘイズを測定した後、その凹凸表面にヘイズがほぼOの透明フィルムをグリセリンで貼り付けて内部ヘイズを測定し、次式により表面ヘイズを求めればよい。
表面ヘイズ(%) = 全体のヘイズ(%) − 内部ヘイズ(%)
【0068】
防眩性フィルムの凹凸表面にヘイズがほぼ0%の透明フィルムを貼り付けた状態で測定されるヘイズ値は、元の凹凸に起因する表面ヘイズがほぼ打ち消されることから、事実上内部ヘイズを表すとみてよい。ヘイズがほぼ0%の透明フィルムとしては、ヘイズが小さいものであれば特に制限されず、例えば、トリアセチルセルロースフィルムなどを使えばよい。
【0069】
本発明の防眩性フィルムは、透過鮮明度が高いものが好ましい。このとき、防眩性能が充分に満たされる範囲内で、可能な限り透過鮮明度が高いことが好ましい。透過鮮明度を高くすることにより、鮮明度の高い表示画像が得られる。透過鮮明度は、JIS K 7105に準拠した写像性測定器ICM−IDP(スガ試験機(株)製)を用いて測定される。より具体的には、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合し、ガラス側から測定光を入射させて測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
【0070】
<防眩性フィルムの製造方法>
本発明の防眩性フィルムを製造する方法には、前記塗工液を透明支持体上に塗工する塗工工程〔塗工工程〕、前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して積層体を得る乾燥工程〔乾燥工程〕、前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる硬化工程〔硬化工程〕、及び、前記硬化工程の後、塗工面からスタンパーを剥離する剥離工程〔剥離工程〕が含まれる。
【0071】
〔塗工工程〕
前記塗工液を透明支持体上に塗工する方法としては、公知の方法を適宜選択できる。具体的には、ワイヤーバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、スロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スライドコート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。なかでも、塗工時の樹脂溶液中への異物等の混入を極力防止する点から、スロットダイコート法が望ましい。
【0072】
〔乾燥工程〕
前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して、透明支持体上に塗膜(塗工面)が形成された積層体を得ることができる。この乾燥方法としては、公知の方法を採用することができる。乾燥温度は、使用する溶媒や透明支持体によって適宜選択されるが、通常20℃〜120℃の範囲である。また、乾燥炉が複数ある場合は、乾燥炉毎に温度を変えてもよい。
【0073】
〔硬化工程〕
本発明では、前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる。スタンパーとしては、たとえば、金型版、ガラス製版、ゴム製版、金型ロールが挙げられる。また、鏡面状のものや、凹凸形状を有するエンボス状のものが挙げられ、たとえば、金型版としては、エンボス版や鏡面版等が挙げられ、金型ロールとしては、エンボスロールや鏡面ロール等が挙げられる。防眩層の微細凹凸表面の形状を精度よく制御する観点から、凹凸形状を有する鋳型が好ましく、なかでも、エンボスロールが好ましい。
【0074】
前記スタンパーを押し付ける際、塗膜とスタンパーとの間に気泡が混入し、欠陥となることを防止するため、ニップロールのごとき圧着装置を用いることが好ましい。その際、ニップ圧に特に制限はないが、好ましくは0.05MPa以上、0.5MPa以下である。0.05MPa以下であると、気泡が混入しやすくなる。一方、0.5MPa以上であると、透明支持体の搬送時のわずかなずれにより透明支持体が破断したり、塗工した樹脂が端部からはみ出して工程汚染の原因となったりするため好ましくない。
【0075】
スタンパーを塗工面に押し付けながら、活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線は、塗工面側から照射してもよく、塗工面と反対側から照射してもよい。このうち、塗工面と反対側から照射するのが好ましい。活性エネルギー線として、活性エネルギー線硬化性樹脂や重合開始剤の種類に応じてγ線、X線、紫外線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、電子線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られるため、硬化性や生産性に優れるという観点から紫外線が好ましい。
【0076】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、紫外線を発生する光源であれば特に制限はない。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。なかでも、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、メタルハライドランプが好ましく利用できる。また、光源の数に制限はなく、1灯であってもよいし、2灯以上あってもよい。
【0077】
紫外線のUVA領域の照度の範囲は、好ましくは200mW/cm2〜700mW/cm2であり、より好ましくは300mW/cm2〜700mW/cm2である。200mW/cm2以下では樹脂が十分に硬化しない恐れがある。一方、700mW/cm2を越えると樹脂の十分な硬化を阻害する可能性があり、また透明支持体にダメージを与える恐れがある。また、硬化工程における紫外線のUVA領域の積算光量の範囲は、好ましくは40mJ/cm2以上であり、より好ましくは70mJ/cm2以上である。40mJ/cm2以下では防眩層が十分に硬化しない恐れがある。一方、積算光量の上限については特に制限はない。
【0078】
紫外線の照射により、透明支持体、防眩性フィルム、スタンパーが過度に加熱されて熱ダメージを受けることを防ぐため、スタンパーは冷却機構を備ることが好ましい。スタンパーとしてエンボスロールを使用する場合、冷却機構としては、例えば、エンボスロールの内部に冷却管を設け、エンボスロールの内部の冷却管と外部に設置したチラーユニットとを接続し、冷媒を循環させるような構造が挙げられる。冷却温度としては、エンボスロールの表面の温度が10℃〜70℃、好ましくは20℃〜60℃となるように設定する。10℃以下では樹脂の粘度が上昇し、特定の表面凹凸形状が転写できなくなる恐れがあり、70℃を越えると、エンボスロールの金属や透明支持体が熱ダメージにより劣化する恐れがあるため好ましくない。
【0079】
〔剥離工程〕
塗工面からスタンパーを剥離する方法としては、公知の方法を採用できるが、活性エネルギー線の照射中にフィルムがスタンパーから剥がれることを防ぐため、剥離地点にもニップロールのごとき圧着装置を設置し、硬化工程が終了するまでスタンパーに対して密着した状態を維持することが、正確に特定形状を転写する上で好ましい。
【0080】
前述した硬化工程で使用するスタンパーとして、防眩層の微細凹凸表面の形状を精度よく制御する観点から、所定のパターンを用いて作成したエンボスロールがより好ましい。そのエンボスロールについて以下に説明する。
【0081】
〔所定のパターンを用いて作成したエンボスロール〕
このエンボスロールは、0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持たないエネルギースペクトルを示すパターンを用いて作製されるものである。かかるパターンを使用することにより、エンボスロール表面に所定の空間周波数分布を持つ微細凹凸形状を形成することが可能となる。ここでいう「パターン」とは、防眩性フィルムにおける防眩層の表面凹凸形状の元となるものであり、該表面凹凸を形成するために用いられる、典型的には計算機によって作成された2階調(たとえば、白と黒とに二値化された画像データ)または3階調以上のグラデーションからなる画像データを意味するが、当該画像データへ一義的に変換可能なデータ(行列データなど)も含み得る。画像データへ一義的に変換可能なデータとしては、各画素の座標および階調のみが保存されたデータなどが挙げられる。
【0082】
エンボスロールを作成する際に使用するパターンのエネルギースペクトルは、たとえば画像データであれば、画像データを256階調のグレースケールに変換した後、画像データの階調を二次元関数g(x,y)で表し、得られた二次元関数g(x,y)をフーリエ変換して二次元関数G(fx,fy)を計算し、得られた二次元関数G(fx,fy)を二乗することによって求められる。ここで、xおよびyは、画像データ面内の直交座標を表し、fxおよびfyはそれぞれ、x方向の空間周波数およびy方向の空間周波数を表している。
【0083】
微細表面凹凸の標高のエネルギースペクトルを求める場合と同様に、パターンのエネルギースペクトルを求める場合についても、階調の二次元関数g(x,y)は離散関数として得られる場合が一般的である。その場合は、微細表面凹凸の標高のエネルギースペクトルを求める場合と同様に、離散フーリエ変換によって、エネルギースペクトルが計算される。具体的には、式(5)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数G(fx,fy)を計算し、離散関数G(fx,fy)を二乗することによってエネルギースペクトルが求められる。ここで、式(5)中のπは円周率、iは虚数単位である。また、Mはx方向の画素数であり、Nはy方向の画素数であり、lは−M/2以上M/2以下の整数であり、mは−N/2以上N/2以下の整数である。さらに、ΔfxおよびΔfyはそれぞれx方向およびy方向の空間周波数間隔であり、式(6)および式(7)で定義される。式(5)および式(6)中のΔxおよびΔyはそれぞれ、x軸方向、y軸方向における水平分解能である。なお、パターンが画像データである場合には、ΔxおよびΔyは、それぞれ1画素のx軸方向の長さおよびy軸方向の長さと等しい。すなわち、6400dpiの画像データとしてパターンを作成した場合には、Δx=Δy=4μmであり、12800dpiの画像データとしてパターンを作成した場合には、Δx=Δy=2μmである。
【0084】
【0085】
図9は、本発明の防眩性フィルムを作製するために用いることができるパターンである画像データの一部を示す図であり、階調の二次元離散関数g(x,y)で表したものである。図9に示したパターンである画像データは2mm×2mmの大きさで、12800dpiで作成した。
【0086】
図10は、図9に示した階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示した図である。図9に示されるパターンは、ドットをランダムに配置したものであるため、そのエネルギースペクトルは、図10に示されるように、原点を中心に対称となる。よって、パターンのエネルギースペクトルの極大値を示す空間周波数はエネルギースペクトルの原点を通る断面より求めることができる。図11は、図10に示したエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。これより図9に示したパターンは、空間周波数0.045μm-1に極大値を持つが、0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内には極大値を持たないことがわかる。
【0087】
防眩性フィルムを作製するためのパターンのエネルギースペクトルが0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持つ場合には、得られる防眩フィルムの微細凹凸表面が上記した特定の空間周波数分布を示さなくなるため、ギラツキの解消と十分な防眩性を兼備することができない。
【0088】
次に、前記エンボスロールの製造方法について説明する。このエンボスロールは、上述したパターンを用いた所定の表面形状が得られる方法であれば、特に制限されないが、微細凹凸表面を精度よく、かつ、再現性よく製造するために、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜形成工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2めっき工程とを基本的に含むことが好ましい。図12は、金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図12には、各工程での金型の断面を模式的に示している。以下、図12を参照しながら、上記各工程について詳細に説明する。
【0089】
〔1〕第1めっき工程
本工程では、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
【0090】
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよく、したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行なっても無電解めっきで行なってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0091】
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどに鑑み、500μm程度までとすることが好ましい。
【0092】
金型用基材を構成する金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性を考慮すると、軽量なアルミニウムを用いることが好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0093】
また、金型用基材の形状は、円柱状または円筒状のロールであるのが好ましい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
【0094】
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。図12(a)には、平板状の金型用基材7が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(当該工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面8を有するようにされた状態を模式的に示している。
【0095】
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。また、切削工具を用いて鏡面切削することによって、金型用基材表面7を鏡面としてもよい。その際の切削工具の材質や形状などは特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。
【0096】
研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性がある。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストなどを考慮して適宜決定される。
【0097】
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続く感光性樹脂膜形成工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した金型用基材7の研磨された表面8に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図12(b)には、金型用基材7の研磨された表面8に感光性樹脂膜9が形成された状態を模式的に示している。
【0098】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、たとえば、分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0099】
これらの感光性樹脂を金型用基材7の研磨された表面8に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
【0100】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
【0101】
〔4〕露光工程
続く露光工程では、上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜9上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、たとえば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)等を用いることができる。
【0102】
金型の表面凹凸形状、ひいては防眩層の表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、上記パターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましく、具体的には、コンピュータ上でパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することが好ましい。レーザ描画を行なうに際しては印刷版作成用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
【0103】
図12(c)には、感光性樹脂膜9にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域11は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域11が現像液によって溶解され、露光されていない領域10のみ基材表面上に残り、図12(d)に示すようなマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域11は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域10が現像液によって溶解され、露光された領域11のみ基材表面上に残り、図12(e)に示すようなマスクとなる。
【0104】
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域10は現像液によって溶解され、露光された領域11のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域11のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域10が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0105】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液;および、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
【0106】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0107】
図12(e)には、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図12(c)において露光されていない領域10が現像液によって溶解され、露光された領域11のみ基材表面上に残りマスク12となる。図12(d)には、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図12(c)において露光された領域11が現像液によって溶解され、露光されていない領域10のみ基材表面上に残りマスク12となる。
【0108】
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングし、研磨されためっき面に凹凸を形成する。図13は、金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図13(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い箇所13の金型用基材7がエッチングされる状態を模式的に示している。マスク12の下部の金型用基材7は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い箇所13からのエッチングが進行する。よって、マスク12とマスクの無い箇所13との境界付近では、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされる。このようなマスク12とマスクの無い箇所13との境界付近において、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされることをサイドエッチングと呼ぶ。
【0109】
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0110】
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは2〜10μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製した防眩フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じる虞がある。傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む微細凹凸表面を有する防眩フィルムを得るためには、第1エッチング工程におけるエッチング量は、2〜8μmであることがより好ましい。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
【0111】
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができる。剥離液のpH、温度、濃度および浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0112】
図13(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク12として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク12を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状15が金型用基材表面に形成されている。
【0113】
〔8〕第2めっき工程
続いて、形成された凹凸面へクロムめっきを施すことによって、さらに表面の凹凸形状を鈍らせる。図13(c)には、第1エッチング工程のエッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15にクロムめっき層16を形成することにより、第1の表面凹凸形状15よりも凹凸が鈍った表面(クロムめっきの表面17)が形成されている状態が示されている。
【0114】
クロムめっきとしては、ロールの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用することが好ましい。このようなクロムめっきとしては特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行なわれ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0115】
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、防眩フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0116】
また、めっき後の表面研磨も好ましくない。すなわち、第2のめっき工程後に表面を研磨する工程を設けることなく、クロムめっきが施された凹凸面を、そのまま基材フィルム上の樹脂層表面に転写される金型の凹凸面として用いることが好ましい。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
【0117】
このように、微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなる上に、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0118】
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下する上に、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0119】
また、本発明の防眩フィルムを作製するための金型の製造方法においては、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程の後に、第1エッチング工程によって形成された凹凸面を、さらにエッチング処理により鈍らせる第2エッチング工程を実施することも出来る。すなわち、第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状15を、さらにエッチング処理によって鈍らせる。
この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。図14には、第2エッチング処理によって、金型用基材7の第1の表面凹凸形状15が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状18が形成された状態が示されている。
【0120】
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内とすることが好ましく、また、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む微細凹凸表面を有する防眩フィルムを得るために、4〜20μmの範囲内とすることがより好ましい。第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
【0121】
<防眩性偏光板、画像表示装置>
本発明の防眩性フィルムは、優れた防眩性を示し、良好なコントラストを発現しながら、「白ちゃけ」および「ギラツキ」の発生による視認性の低下を効果的に防止できるため、画像表示装置に装着したときに視認性に優れたものとなる。また、本発明の防眩性フィルムは、防眩層に微粒子を含有させているものの、該防眩層への気泡の発生を防止しており、安定した品質のものとなっている。
【0122】
くわえて、本発明の防眩性フィルムは、防眩性偏光板や画像表示装置の部材として好適に使用しうる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩性フィルムを偏光板に適用することができる。すなわち、偏光板は一般に、ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された形態のものが多いが、その一方の保護フィルムを本発明の防眩性フィルムで構成する。偏光フィルムと、本発明の防眩性フィルムとを、その防眩性フィルムの基材フィルム側で貼り合わせることにより、防眩性偏光板とすることができる。この場合、偏光フィルムの他方の面は、何も積層されていない状態でもよいし、保護フィルムまたは他の光学フィルムが積層されていてもよいし、また液晶セルに貼合するための粘着剤層が積層されていてもよい。また、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板の当該保護フィルム上に、本発明の防眩性フィルムをその基材フィルム側で貼合して、防眩性偏光板とすることもできる。さらに、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板において、当該保護フィルムとして上記基材フィルムを偏光フィルムに貼合した後、この基材フィルム上に防眩層を形成することにより、防眩性偏光板とすることもできる。
【0123】
また、前記防眩性偏光板をさらに画像表示装置の部材として使用しうる。この場合、画像表示装置は、該防眩性偏光板と画像表示素子とを備えるものであり、前記防眩性偏光板が、防眩層を外側にして前記画像表示素子の視認側に配置される。
【実施例】
【0124】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0125】
〔1〕防眩性フィルムの表面形状の測定
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて、防眩性フィルムの表面形状を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は10倍とした。水平分解能ΔxおよびΔyはともに1.66μmであり、測定面積は850μm×850μmであった。
【0126】
(標高のエネルギースペクトルの比H12/H22およびH32/H22)
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて得られた測定データから、防眩性フィルムの微細凹凸表面の標高を二次元関数h(x,y)として求め、得られた二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数H(fx,fy)を求めた。二次元関数H(fx,fy)を二乗してエネルギースペクトルの二次元関数H2(fx,fy)を計算し、fx=0の断面曲線であるH2(0,fy)より、空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH12および空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22を求め、エネルギースペクトルの比H12/H22を計算した。また、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH32を求め、エネルギースペクトルの比H32/H22についても計算した。
【0127】
(微細凹凸表面の傾斜角度)
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて得られた測定データをもとに、発明を実施するための形態の内容で前述したアルゴリズムに基づいて計算し、凹凸面の傾斜角度のヒストグラムを作成し、そこから傾斜角度毎の分布を求め、傾斜角度が5°以下である面の割合を計算した。
【0128】
(防眩層における微粒子の突出程度(埋没状態)の評価)
防眩層が微粒子を含有しないこと以外は同様にして作製された防眩性フィルムを比較対象とし、微細凹凸表面の空間周波数分布および凹凸面の傾斜角度のヒストグラムが当該比較対象と同じである場合、すなわち、標高のエネルギースペクトルの二次元関数H(fx,fy)のfx=0の断面曲線であるH2(0,fy)および傾斜角度のヒストグラムが当該比較対象と略重なる場合、微粒子を含有する防眩フィルムの凹凸表面形状は、微粒子によって影響を受けていないといえることから、微粒子は防眩層表面から突出しておらず(防眩層中に埋没しており)、凹凸表面は、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物によって形成された表面のみからなると判断した。下記表1において、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物によって形成された表面のみからなる場合を○と示し、そうでない場合を×と示した。
【0129】
(防眩層への気泡混入の観察)
実施例及び比較例で得られた防眩性フィルムを、1mm×1mmの範囲を光学顕微鏡で拡大しながら、測定箇所を3点観察する。10μm以上の気泡が5個以上観察された場合は×と示し、5個未満の場合を○と示した。
【0130】
〔2〕防眩性フィルムの光学特性の測定
(ヘイズ)
防眩性フィルムのヘイズは、JIS K 7136に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠したヘイズメータ「HM−150型」(村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズを測定した。防眩性フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。
【0131】
〔3〕防眩性フィルムの防眩性能の評価
(映り込み目視評価)
防眩性フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無を目視で評価した。映り込み、白ちゃけおよび質感は、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
【0132】
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
【0133】
(ギラツキの評価)
ギラツキは、以下の方法で評価した。まず、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターンが形成され、そのクロム遮光パターンの形成されていない部分が開口部となっているユニットセルを用意した。なお、このユニットセルの寸法は254μm×84μm(縦×横)であるため、開口部の寸法は244μm×74μm(縦×横)となる。次いで、当該ユニットセルを縦横に多数並べて、フォトマスクを形成した。
次に、クロム遮光パターンが表面側になるように前記フォトマスクを面光源の上に置いた。さらに、防眩層が表面側になるように防眩性フィルムをガラス板に粘着剤で貼ったサンプルを、防眩層が表面側になるように前記フォトマスクの上に置いた。
なお、下から、面光源、フォトマスク、ガラス板、防眩性フィルムの順で置かれた状態になっている。
【0134】
この状態で、サンプルから約30cm離れた位置で目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。
【0135】
〔4〕防眩性フィルム製造用のパターンの評価
作成したパターンデータを256階調のグレースケールの画像データとし、階調を二次元の離散関数g(x,y)で表した。離散関数g(x,y)の水平分解能ΔxおよびΔyはともに2μmとした。得られた二次元関数g(x,y)を離散フーリエ変換して、二次元関数G(fx,fy)を求めた。二次元関数G(fx,fy)を二乗してエネルギースペクトルの二次元関数G2(fx,fy)を計算し、fx=0の断面曲線であるG2(0,fy)より、空間周波数が0μm-1より大きく、かつ、絶対値が最も小さい空間周波数での極大値を求めた。
【0136】
〔5〕塗工液の沈降度測定
微粒子が分散している塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置し、該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を観測した。その値をxとし、下記式(A)から沈降度Sを算出した。
S=100−x/30×100 (A)
【0137】
〔6〕塗工液による塗工装置汚染性評価
塗工装置(スロットダイコーター)内部で微粒子が沈降した場合、スロットダイコーターの吐出部であるスロットに、内部で蓄積した微粒子が詰まるため、防眩性フィルムに連続したスジムラ等のムラが発生する。従って、このスジムラの有無とスロットダイコーターのマニフォールド部の粒子が沈殿している様を観察し、スジムラが無く、マニフォールド部に粒子の沈殿が無い場合を○、スジムラがある場合もしくはマニフォールド部に粒子の沈殿が確認された場合を×した。
【0138】
<実施例1>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図9に示される画像データからなるパターンの複数を連続して繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像した。レーザー光による露光、および現像は「Laser Stream FX」((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行なった。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。図9に示されるパターンから計算されるエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面は、図11に示されるとおりである。図9に示されるパターンは、空間周波数0.045μm-1にエネルギースペクトルの極大値を示す。
【0139】
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は7μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は18μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行ない、金型Aを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0140】
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60重量%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化型樹脂組成物を入手した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60重量部、
多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物) 40重量部、
レベリング剤(メガファックF−477(DIC社製、フッ素系レベリング剤)) 0.5重量部
重合開始剤(ルシリンTPO”(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)) 5重量部
【0141】
この紫外線硬化型樹脂組成物に、平均粒子径が6.5μmで屈折率が1.49のメタクリル酸メチル重合体樹脂ビーズ(微粒子)を、紫外線硬化型樹脂100重量部(当該紫外線硬化型樹脂の硬化により形成されるバインダ樹脂も実質的に100重量部となる)あたり20重量部添加した後、固形分(樹脂ビーズを含む)の濃度が40重量%となるように酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤を添加して塗工液を調製した。
【0142】
透明支持体である厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの凹凸面に、紫外線硬化型樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、フュージョン社製の“Vバルブ”ランプ(最大発光波長420nm)を光源として、積算光量550mJ/cm2で紫外線を照射した(第一照射)。その後、ニッケル平板から硬化塗膜を剥がし、その硬化塗膜側から、フュージョン社製の“Dバルブ”ランプ(最大発光波長380nm)を光源として、積算光量850mJ/cm2で2回連続して紫外線を照射した(第二照射)。こうして、表面にハードコート層とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩性フィルムAを作製した。
【0143】
<実施例2>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルとしたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムBを作製した。
【0144】
<実施例3>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとしたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムCを作製した。
【0145】
<比較例1>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤を酢酸エチルとし、さらに、屈折率が1.49のメタクリル酸メチル重合体樹脂ビーズ(微粒子)の平均粒子径を、6.5μmから7.3μmとした以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムDを作製した。
【0146】
<比較例2>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルとし、さらに、平均粒子径が6.5μmで屈折率が1.49のメタクリル酸メチル重合体樹脂ビーズを、平均粒子径が3.5μmで屈折率が1.59のメタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズとした以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムEを作製した。
【0147】
得られた防眩フィルムの表面形状および光学特性の評価結果を表1および表2に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【符号の説明】
【0150】
1 防眩性フィルム
101 防眩層
102 活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物
103 微粒子
104 透明支持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸表面を有する防眩層が、透明支持体上に形成されている防眩性フィルム及びその製法に関する。また、それら防眩性フィルムを用いた防眩性偏光板や、画像表示装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話などにおいては、一般に、画像表示装置の表面に防眩性フィルムが配置される。
【0003】
このような防眩性フィルムとしては、透明支持体上に、特に鋳型を用いることなく、微粒子を含有した塗工液を塗工した後、乾燥、硬化して防眩層を形成したもの(特許文献1〜2)や、微粒子を含有した塗工液を塗工した後、乾燥し、次いで賦型フィルムで凹凸形状を転写しながら硬化して防眩層を形成したもの(特許文献3)が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−18706号公報
【特許文献2】特開平10−20103号公報
【特許文献3】特開2007−256962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防眩性フィルムには、防眩性が求められる他、画像表示装置の表面に配置した際に画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状とが干渉し、結果として輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」の発生を抑制することなどが要望されている。しかしながら、前述した公知の防眩性フィルムは、それらの点で必ずしも十分なものとはいえなかった。また、特許文献3に記載された防眩性フィルムのように、透明支持体上に、微粒子を含有した塗工液を塗工した後、乾燥し、次いで賦型フィルムで凹凸形状を転写しながら硬化する場合において、使用する塗工液によっては得られる防眩性フィルムに気泡が生じたり、塗工液を供給するダイなどに微粒子が蓄積し、これが製品や製造装置を汚染したりする問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つは、以下の構成を備えるものである。
微細凹凸表面を有する防眩層が、透明支持体上に形成されている防眩性フィルムであって、
前記微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものであり、
前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより形成されるものであり、且つ、
下記式(A)で示される前記塗工液における微粒子の沈降度Sが、1以上76以下であることを特徴とする防眩性フィルム。
S=100−x/30×100 (A)
〔式中、xは、微粒子が分散している前記塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置して観測される該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を表し、Sは、前記塗工液の沈降度を表す。〕
【0007】
また、本発明の1つは、前記防眩性フィルムを製造する方法であって、
前記塗工液を透明支持体上に塗工する塗工工程、
前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して積層体を得る乾燥工程、
前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる硬化工程、及び、
前記硬化工程の後、塗工面から鋳型を剥離する剥離工程
を含む防眩性フィルムの製造方法を提供するものである。
【0008】
くわえて、本発明は、前記防眩性フィルムの防眩層と反対側の面に偏光フィルムが貼合されている防眩性偏光板を提供するものであり、さらに、前記防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、前記防眩性偏光板が、防眩層を外側にして前記画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた防眩性を示しながら、「ギラツキ」の発生による視認性の低下を防止し、さらに気泡の発生を防止した防眩性フィルムを、安定した品質で製造して提供することができる。また、本発明の防眩性フィルムは、防眩性偏光板や画像表示装置の部材として好適に使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の防眩性フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の防眩性フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。
【図3】微細凹凸表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。
【図4】防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の傾斜角度分布のヒストグラムの一例を示すグラフである。
【図5】標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。
【図6】本発明の防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図である。
【図7】図6に示した二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して得られた標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示したものである。
【図8】図7に示したエネルギースペクトルH2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。
【図9】本発明の防眩性フィルムを作製するために用いることができるパターンである画像データの一部を示す図である。
【図10】図9に示した階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示した図である。
【図11】図10に示したエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。
【図12】本発明の防眩性フィルムの製造に好ましく用いられる金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図13】本発明の防眩性フィルムの製造に好ましく用いられる金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図14】第1エッチング工程によって形成された凹凸面が第2エッチング工程によって鈍る状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<防眩性フィルム>
図1は、本発明の防眩性フィルムの一例を模式的に示す断面図である。本発明の防眩性フィルムは、図1に示される例のように、透明支持体104と、透明支持体104上に積層された防眩層101とを備える。防眩層101は、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物102と、微粒子103を含有する。防眩層101における透明支持体104とは反対側の表面は、微細な凹凸表面からなる。以下、本発明の防眩性フィルムについてより詳細に説明する。
【0012】
透明支持体は、実質的に光学的に透明なフィルムである限り特に制限されず、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。透明支持体の厚みは特に制限されないが、通常、10〜250μmであり、好ましくは20〜125μmである。
【0013】
防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いで凹凸形状を有する鋳型の該凹凸面を押し付けながら硬化処理することにより、形成される。ここでいう活性エネルギー線硬化型樹脂とは、活性エネルギー線の照射により重合、硬化する樹脂であり、たとえば、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。活性エネルギー線硬化性樹脂は市販品であってもよく、多くの場合は、活性エネルギー線硬化性樹脂に、重合開始剤や、その他必要に応じて添加された界面活性剤等の添加剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として市販されている。
【0014】
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、たとえば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0015】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
【0016】
これらから、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応によって得ることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
【0018】
また、ポリエステル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0019】
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中で、硬化物(被膜)の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体、アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体及びビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、厚膜化したとき可撓性(可とう性:柔軟性を示す性質)が良い点からウレタンアクリレート化合物を使用することが好ましい。また、これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0020】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、スチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、フマル酸ジt−ブチル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、N−イソプロピルアクリルアミド等を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独または2種類以上を混合して用いられる。
【0021】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、防眩層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーとしては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、及び、エポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマー等である。
【0022】
また、その他の重合性オリゴマーとしては、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、例えば、多価アルコールとして1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
【0023】
さらに、その他の重合性オリゴマーの例としては、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものとが挙げられる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものが挙げられる。
【0024】
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテル、及び、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルのそれぞれ水酸基において、イソシアネート類と反応させて得られる化合物が挙げられる。水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/またはその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で挙げられたものである。水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド及び/またはε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、多価アルコールとしては、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものである。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで挙げられたものである。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0025】
これらの重合性オリゴマー化合物はそれぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。なお、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、前記単官能(メタ)アクリレート系化合物、及び、重合性オリゴマーも、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0026】
前記塗工液は、重合開始剤を含有するのが好ましい。ここでいう重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラtert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。
【0027】
重合開始剤は色素増感剤と組み合わせて用いてもよい。色素増感剤としては、たとえば、キサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンなどが挙げられる。重合開始剤と色素増感剤との組み合わせとしては、たとえば、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB/日本油脂(株)製)とキサンテンとの組み合わせ、BTTBとチオキサンテンとの組み合わせ、BTTBとクマリンとの組み合わせ、BTTBとケトクマリンとの組み合わせなどが挙げられる。
【0028】
微粒子は、有機微粒子、無機微粒子のいずれも使用できる。有機微粒子としては、たとえば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂等の高分子化合物からなる微粒子が挙げられ、架橋された高分子であってもよい。また、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエン等から選ばれる2種以上のモノマーが共重合されてなる共重合体を使用することもできる。無機微粒子としては、たとえば、シリカ、シリコーン、酸化チタン等からなる微粒子や、ガラスビーズが挙げられる。また、これらを単独で使用してもよく、2種類以上を使用してもよい。本発明では、防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子が、有機微粒子であることが好ましい。
【0029】
微粒子の形状については適宜選択しうるが、防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子は、球状であることが好ましい。また、防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子の平均粒子径は、6μm以上15μm以下であるのが好ましく、6μm以上10μm以下であるのがより好ましい。当該平均粒子径が6μmを下回る場合には、微粒子による広角側の散乱光強度が上昇し、画像表示装置に適用したときに透過鮮明度を低下させる傾向にあり好ましくない。また、当該平均粒子径が15μmを上回る場合には、微粒子によるレンズ効果が顕著となり、画像表示装置に適用したときにギラツキを増加させる傾向にあり好ましくない。
【0030】
防眩層に含有させる微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子と、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物との屈折率差が、0.005以上0.16以下であるのが好ましく、0.02以上0.05以下であることがより好ましい。屈折率差が0.16を上回る場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物と微粒子の界面における反射率が増大し、結果として後方散乱が上昇し、全光線透過率が低下する傾向にある。全光線透過率の低下は、防眩性フィルムのヘイズを増大させ、画像表示装置に適用したときのコントラストの低下を生じさせるので好ましくない。屈折率差が0.005を下回る場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物と微粒子の界面における光屈折の効果がほとんど得られず、結果として目的とする防眩性能を得ることができないので好ましくない。
【0031】
微粒子を構成する材料は、上述した屈折率差を満たすものであるのが好ましい。防眩層を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物の屈折率は、通常、1.50程度であるため、微粒子の屈折率は、1.40〜1.65程度のものから、防眩性フィルムの設計に合わせて適宜選択することができる。かかる好適な微粒子の例を以下に掲げる。
メラミンビーズ(屈折率1.60)、
ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、
メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、
ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、
ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、
ポリスチレンビーズ(屈折率1.60)、
ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、
シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.43)など。
【0032】
前記塗工液における微粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し10重量部以上100重量部以下であるのが好ましく、15重量部以上70重量部以下であるのがより好ましい。10重量部未満である場合には、微粒子による防眩性能が不十分であるので好ましくない。また、100重量部を超える場合には、微粒子による透過鮮明度の低下が顕著であるので好ましくない。
【0033】
希釈溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後は、上記溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明における防眩層を形成するための塗工液は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶媒を含有するものであり、かつ、下記式(A)で示される前記塗工液の沈降度Sが、1以上76以下であることを特徴とする。
【0035】
S=100−x/30×100 (A)
【0036】
〔式中、xは、微粒子が分散している前記塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置して観測される該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を表し、Sは、前記塗工液の沈降度を表す。〕
【0037】
ここで沈降度Sは、前述したとおり、微粒子が分散している所定量の塗工液を所定時間放置して、微粒子の沈降度合いを評価した指標であり、沈降度Sが低い値を示すほど、微粒子が速く沈降することを意味し、沈降度Sが高い値を示すほど、微粒子が遅く沈降することを意味するものである。本発明では、沈降度Sは、10以上40以下が好ましい。沈降度Sが1を下回ると、塗工液を供給するダイなどに微粒子が蓄積し、これが原因となって製品や製造装置の汚染を引き起こしてしまう。一方、沈降度Sが76を上回ると、形成される防眩層に気泡が生じてしまう。
【0038】
沈降度Sを制御するには、主に塗工液の粘度、微粒子の平均粒子径、微粒子の密度を調整すればよい。微粒子の平均粒子径や、微粒子の密度は、防眩性フィルムに所望の光学特性を付与する点から決定されることが多いため、沈降度Sを制御する手段として、塗工液の粘度を調整することが好ましい。塗工液の粘度を調整するには、希釈溶剤の量、種類を調整することが好ましい。塗工液の粘度を低くするには、希釈溶剤の量を多く、また粘度の低い希釈溶媒を使用すればよく、塗工液の粘度を高くするには、希釈溶剤の量を少なく、また粘度の高い希釈溶媒を使用すればよい。
【0039】
塗工液は、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を含有するのが好ましい。レベリング剤を含有する塗工液を使用すると、耐汚染性、耐擦傷性を付与することを可能とする。レベリング剤は、耐熱性が要求されるフィルム状光透過性基材(例えばトリアセチルセルロース)に好ましくは利用される。
【0040】
また、塗工液には、前述した成分の他に、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、帯電防止剤、防汚剤などを添加してもよい。
【0041】
図1に示すように、本発明の防眩性フィルムの防眩層101は微細な凹凸表面を有するものであり、その微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものである。このような所定の傾斜角度分布を有することにより、優れた防眩性能を示しつつ、白ちゃけを効果的に防止する上で一層有効となる。傾斜角度が5°以下である面の割合が95%を下回ると、凹凸表面の傾斜角度が急峻になって、周囲からの光を集光し、表示面が全体的に白くなる白ちゃけが発生しやすくなる。このような集光効果を抑制し、白ちゃけを防止するためには、微細凹凸表面の傾斜角度が5°以下である面の割合が高ければ高いほどよく、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
【0042】
また、本発明の防眩層は、所定の塗工液を透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより、形成されるものである。このようにスタンパーで押し付けながら硬化処理しているため、図1に示すように、微粒子103は、防眩層101中に分散され、かつ、防眩層101の表面から突出していない状態となっている。そして、微粒子103が防眩層101の表面から突出していないことにより、たとえば、微粒子の形状の振れに伴う微細凹凸表面形状の振れといった該表面形状へ影響することが排除でき、その結果、該表面形状を高精度で制御することが可能となる。
【0043】
図2は、本発明の防眩性フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。図2に示されるように、本発明の防眩性フィルム1は、微細な凹凸2から構成される微細凹凸表面を有する防眩層を備える。ここで、本発明でいう「微細凹凸表面の傾斜角度」とは、図2を参照して、防眩性フィルム1表面の任意の点Pにおいて、防眩性フィルムの主法線方向5に対する、そこでの凹凸を加味した局所的な法線6のなす角度(表面傾斜角度)ψを意味する。微細凹凸表面の傾斜角度については、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。
【0044】
ここで、図3は、微細凹凸表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。
具体的な傾斜角度の決定方法を説明すると、図3に示すように、点線で示される仮想的な平面FGHI上の着目点Aを決定し、そこを通るx軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点BおよびDを、また点Aを通るy軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点CおよびEをとり、これらの点B,C,D,Eに対応する防眩性フィルム面上の点Q,R,S,Tを決定する。なお図3では、防眩性フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、防眩性フィルム厚み方向の座標をzで表示している。平面FGHIは、y軸上の点Cを通るx軸に平行な直線、および同じくy軸上の点Eを通るx軸に平行な直線と、x軸上の点Bを通るy軸に平行な直線、および同じくx軸上の点Dを通るy軸に平行な直線とのそれぞれの交点F,G,H,Iによって形成される面である。また図3では、平面FGHIに対して、実際の防眩性フィルム面の位置が上方にくるように描かれているが、着目点Aのとる位置によって当然ながら、実際の防眩性フィルム面の位置が平面FGHIの上方にくることもあるし、下方にくることもある。
【0045】
傾斜角度は、着目点Aに対応する実際の防眩性フィルム面上の点Pと、その近傍にとられた4点B,C,D,Eに対応する実際の防眩性フィルム面上の点Q,R,S,Tの合計5点により張られるポリゴン4平面、すなわち、四つの三角形PQR,PRS,PST,PTQの各法線ベクトル6a,6b,6c,6dを平均して得られる平均法線ベクトル(平均法線ベクトルは、図2に示される凹凸を加味した局所的な法線6と同義である)の極角を、測定された表面形状の三次元情報から求めることにより得ることができる。各測定点について傾斜角度を求めた後、ヒストグラムが計算される。
【0046】
図4は、防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の傾斜角度分布のヒストグラムの一例を示すグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸は傾斜角度であって、0.5°刻みで分割してある。たとえば、一番左の縦棒は、傾斜角度が0〜0.5°の範囲にある集合の分布を示し、以下、右へ行くにつれて角度が0.5°ずつ大きくなっている。図4では、横軸の2目盛毎に値の下限値を表示しており、たとえば、横軸で「1」とある部分は、傾斜角度が1〜1.5°の範囲にある集合の分布を示す。また、縦軸は傾斜角度の分布を表し、合計すれば1(100%)になる値である。この例では、傾斜角度が5°以下である面の割合は略100%である。
【0047】
また、防眩層の微細凹凸表面が「微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトル」を用いて規定される特定の空間周波数分布を有するのが好ましい。すなわち、防眩層における微細凹凸表面の標高の空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH12と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H12/H22が3〜15の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH32と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H32/H22が0.1以下であるのが好ましい。このような数値範囲となる防眩性フィルムは、優れた防眩性能を示し、かつ、白ちゃけによる視認性の低下を防止することができるとともに、高精細の画像表示装置に適用した場合においても、ギラツキを発生せずに高いコントラストを発現するものとなる。
【0048】
くわえて、前述したとおり、防眩層の表面から微粒子が突出していないことにより、微粒子による防眩層の微細凹凸表面への影響は排除しうるため、前記所定の空間周波数分布を精度よく制御することができ、その結果、優れた光学特性を有する本発明の防眩性フィルムを再現性よく得ることができる。また、本発明の防眩性フィルムは、その防眩層に微粒子を含有するため、微粒子を含有しない防眩性フィルムと比較して、防眩性能をより効果的に発現することができる。従来、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物と異なる屈折率を有する微粒子を防眩層に分散させた防眩性フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物との界面における光の散乱によって、透過鮮明度の低下が過剰となる問題があったが、本発明の防眩性フィルムによれば、透過鮮明度の過剰な低下を生じさせることなく、微粒子による防眩性の効果が得られる。
【0049】
防眩層が有する微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルについて説明する。図2に示されるように、本発明の防眩性フィルム1は、微細な凹凸2から構成される微細凹凸表面を有する防眩層を備える。ここで、本発明でいう「微細凹凸表面の標高」とは、防眩性フィルム1表面の任意の点Pにおける、微細凹凸表面の最低点の高さにおいて当該高さを有する仮想的な平面(標高は基準として0μm)からの防眩フィルムの主法線方向5(上記仮想的な平面における法線方向)における直線距離を意味する。図2に示すように、防眩フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示した際には、微細凹凸表面の標高は座標(x,y)の二次元関数h(x,y)で表すことができる。図2には、防眩フィルム全体の面を投影面3で表示している。
【0050】
微細凹凸表面の標高は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。測定機に要求される水平分解能は、少なくとも5μm以下、好ましくは2μm以下であり、また垂直分解能は、少なくとも0.1μm以下、好ましくは0.01μm以下である。この測定に好適な非接触三次元表面形状・粗さ測定機としては、New View 5000シリーズ(Zygo Corporation社製、日本ではザイゴ(株)から入手可能)、三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)などを挙げることができる。測定面積は、標高のエネルギースペクトルの分解能が0.01μm-1以下である必要があるため、少なくとも200μm×200μm以上とするのが好ましく、より好ましくは、500μm×500μm以上である。
【0051】
次に、二次元関数h(x,y)より標高のエネルギースペクトルを求める方法について説明する。まず、二次元関数h(x,y)より、下記式(1)で定義される二次元フーリエ変換によって二次元関数H(fx,fy)を求める。
【0052】
【0053】
ここで、fxおよびfyは、それぞれx方向およびy方向の空間周波数であり、長さの逆数の次元を持つ。また、式(1)中のπは円周率、iは虚数単位である。得られた二次元関数H(fx,fy)を二乗することによって、標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を求めることができる。このエネルギースペクトルH2(fx,fy)は、防眩層の微細凹凸表面の空間周波数分布を表している。
【0054】
以下、防眩層の微細凹凸表面のエネルギースペクトルを求める方法をさらに具体的に説明する。上記の共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡などによって実際に測定される表面形状の三次元情報は、一般的に離散的な値、すなわち、多数の測定点に対応する標高として得られる。図5は、標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。図5に示すように、防眩性フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、防眩性フィルムの投影面3上にx軸方向にΔx毎に分割した線およびy軸方向にΔy毎に分割した線を破線で示すと、実際の測定では微細凹凸表面の標高は、防眩性フィルムの投影面3上の各破線の交点毎の離散的な標高値として得られる。
【0055】
得られる標高値の数は、測定範囲とΔxおよびΔyによって決まり、図5に示すようにx軸方向の測定範囲をX=MΔxとし、y軸方向の測定範囲をY=NΔyとすると、得られる標高値の数は(M+1)×(N+1)個である。
【0056】
図5に示すように、防眩性フィルムの投影面3上の着目点Aの座標を(jΔx,kΔy)(ここで、jは0以上M以下であり、kは0以上N以下である。)とすると、着目点Aに対応する防眩性フィルム表面上の点Pの標高は、h(jΔx,kΔy)と表すことができる。
【0057】
ここで、測定間隔ΔxおよびΔyは、測定機器の水平分解能に依存し、精度良く微細凹凸表面を評価するためには、上述したとおりΔxおよびΔyともに5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、測定範囲XおよびYは上述したとおり、ともに200μm以上が好ましく、ともに500μm以上がより好ましい。
【0058】
このように、実際の測定では微細凹凸表面の標高を表す関数は(M+1)×(N+1)個の値を持つ離散関数h(x,y)として得られる。したがって、測定によって得られた離散関数h(x,y)と下記式(2)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数H(fx,fy)が求まり、離散関数H(fx,fy)を二乗することによってエネルギースペクトルの離散関数H2(fx,fy)が求められる。式(2)中のlは−(M+1)/2以上(M+1)/2以下の整数であり、mは−(N+1)/2以上(N+1)/2以下の整数である。また、ΔfxおよびΔfyは、それぞれx方向およびy方向の空間周波数間隔であり、式(3)および式(4)で定義される。ΔfxおよびΔfyは、標高のエネルギースペクトルの水平分解能に相当する。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
図6は、本発明の防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図の一例である。図6において標高は白と黒のグラデーションで示している。図6に示した離散関数h(x,y)は、512×512個の値を持ち、水平分解能ΔxおよびΔyは1.66μmである。
【0063】
図6に示される例のように、本発明の防眩性フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面は、ランダムに形成された凹凸からなるため、標高のエネルギースペクトルは、図7に示されるように、原点を中心に対称となる。よって、空間周波数0.01μm-1における標高のエネルギースペクトルH12、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22および空間周波数0.1μm-1における標高のエネルギースペクトルH32は、二次元関数であるエネルギースペクトルH2(fx,fy)の原点を通る断面より求めることができる。図8に、図7に示したエネルギースペクトルH2(fx,fy)のfx=0における断面を示した。図8より、空間周波数0.01μm-1における標高のエネルギースペクトルH12は4.4、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22は0.35、空間周波数0.1μm-1における標高のエネルギースペクトルH32は0.00076であることがわかり、比H12/H22は14、比H32/H22は0.0022と算出される。
【0064】
上述したように、本発明に係る防眩層において、空間周波数0.01μm-1における微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH12と、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22との比H12/H22は、3〜15の範囲内とされる。標高のエネルギースペクトルの比H12/H22が3を下回ることは、防眩層の微細凹凸表面に含まれる100μm以上の長周期の凹凸形状が少なく、25μm未満の短周期の凹凸形状が多いことを示している。そのような場合には外光の映り込みを効果的に防止することができず、十分な防眩性能が得られない。また、これに対して、標高のエネルギースペクトルの比H12/H22が15を上回ることは、微細凹凸表面に含まれる100μm以上の長周期の凹凸形状が多く、25μm未満の短周期の凹凸形状が少ないことを示している。そのような場合には、防眩性フィルムを高精細の画像表示装置に配置した際にギラツキを発生させる傾向にある。より優れた防眩性能を示しつつ、ギラツキをより効果的に抑制するためには、標高のエネルギースペクトルの比H12/H22は、3.5〜14.5の範囲内であることが好ましく、4〜14の範囲内であることがより好ましい。
【0065】
また、本発明に係る防眩層において、空間周波数0.1μm-1における微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH32と、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH22との比H32/H22は、0.1以下とされ、好ましくは0.01以下とされる。比H32/H22が0.1以下であることは、微細凹凸表面に含まれる10μm未満の短周期成分が十分に低減されていることを示しており、これにより白ちゃけの発生を効果的に抑制することができる。微細凹凸表面に含まれる10μm未満の短周期成分は、防眩性に効果的に寄与しない一方、微細凹凸表面に入射した光を散乱させて白ちゃけの原因となるものである。
【0066】
本発明の防眩性フィルムは、好ましくは表面ヘイズが0.1%以上5%以下であり、全ヘイズが5%以上30%以下である。表面ヘイズが0.1%未満の場合は防眩性能が不足し、5%を超える場合は表面凹凸による光散乱が大きくなるため、透過鮮明度の低下や白ちゃけが生じるため好ましくない。また、全ヘイズが5%未満の場合は防眩性能が不足し、30%を超える場合は透過鮮明度が低下するため好ましくなく、また、場合によってはギラツキが生じるため好ましくない。
【0067】
防眩性フィルムの全ヘイズは、JIS K 7136に示される方法に準拠して測定することができる。表面ヘイズと内部ヘイズの切り分けは、全体のヘイズを測定した後、その凹凸表面にヘイズがほぼOの透明フィルムをグリセリンで貼り付けて内部ヘイズを測定し、次式により表面ヘイズを求めればよい。
表面ヘイズ(%) = 全体のヘイズ(%) − 内部ヘイズ(%)
【0068】
防眩性フィルムの凹凸表面にヘイズがほぼ0%の透明フィルムを貼り付けた状態で測定されるヘイズ値は、元の凹凸に起因する表面ヘイズがほぼ打ち消されることから、事実上内部ヘイズを表すとみてよい。ヘイズがほぼ0%の透明フィルムとしては、ヘイズが小さいものであれば特に制限されず、例えば、トリアセチルセルロースフィルムなどを使えばよい。
【0069】
本発明の防眩性フィルムは、透過鮮明度が高いものが好ましい。このとき、防眩性能が充分に満たされる範囲内で、可能な限り透過鮮明度が高いことが好ましい。透過鮮明度を高くすることにより、鮮明度の高い表示画像が得られる。透過鮮明度は、JIS K 7105に準拠した写像性測定器ICM−IDP(スガ試験機(株)製)を用いて測定される。より具体的には、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合し、ガラス側から測定光を入射させて測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
【0070】
<防眩性フィルムの製造方法>
本発明の防眩性フィルムを製造する方法には、前記塗工液を透明支持体上に塗工する塗工工程〔塗工工程〕、前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して積層体を得る乾燥工程〔乾燥工程〕、前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる硬化工程〔硬化工程〕、及び、前記硬化工程の後、塗工面からスタンパーを剥離する剥離工程〔剥離工程〕が含まれる。
【0071】
〔塗工工程〕
前記塗工液を透明支持体上に塗工する方法としては、公知の方法を適宜選択できる。具体的には、ワイヤーバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、スロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スライドコート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。なかでも、塗工時の樹脂溶液中への異物等の混入を極力防止する点から、スロットダイコート法が望ましい。
【0072】
〔乾燥工程〕
前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して、透明支持体上に塗膜(塗工面)が形成された積層体を得ることができる。この乾燥方法としては、公知の方法を採用することができる。乾燥温度は、使用する溶媒や透明支持体によって適宜選択されるが、通常20℃〜120℃の範囲である。また、乾燥炉が複数ある場合は、乾燥炉毎に温度を変えてもよい。
【0073】
〔硬化工程〕
本発明では、前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる。スタンパーとしては、たとえば、金型版、ガラス製版、ゴム製版、金型ロールが挙げられる。また、鏡面状のものや、凹凸形状を有するエンボス状のものが挙げられ、たとえば、金型版としては、エンボス版や鏡面版等が挙げられ、金型ロールとしては、エンボスロールや鏡面ロール等が挙げられる。防眩層の微細凹凸表面の形状を精度よく制御する観点から、凹凸形状を有する鋳型が好ましく、なかでも、エンボスロールが好ましい。
【0074】
前記スタンパーを押し付ける際、塗膜とスタンパーとの間に気泡が混入し、欠陥となることを防止するため、ニップロールのごとき圧着装置を用いることが好ましい。その際、ニップ圧に特に制限はないが、好ましくは0.05MPa以上、0.5MPa以下である。0.05MPa以下であると、気泡が混入しやすくなる。一方、0.5MPa以上であると、透明支持体の搬送時のわずかなずれにより透明支持体が破断したり、塗工した樹脂が端部からはみ出して工程汚染の原因となったりするため好ましくない。
【0075】
スタンパーを塗工面に押し付けながら、活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線は、塗工面側から照射してもよく、塗工面と反対側から照射してもよい。このうち、塗工面と反対側から照射するのが好ましい。活性エネルギー線として、活性エネルギー線硬化性樹脂や重合開始剤の種類に応じてγ線、X線、紫外線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、電子線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られるため、硬化性や生産性に優れるという観点から紫外線が好ましい。
【0076】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、紫外線を発生する光源であれば特に制限はない。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。なかでも、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、メタルハライドランプが好ましく利用できる。また、光源の数に制限はなく、1灯であってもよいし、2灯以上あってもよい。
【0077】
紫外線のUVA領域の照度の範囲は、好ましくは200mW/cm2〜700mW/cm2であり、より好ましくは300mW/cm2〜700mW/cm2である。200mW/cm2以下では樹脂が十分に硬化しない恐れがある。一方、700mW/cm2を越えると樹脂の十分な硬化を阻害する可能性があり、また透明支持体にダメージを与える恐れがある。また、硬化工程における紫外線のUVA領域の積算光量の範囲は、好ましくは40mJ/cm2以上であり、より好ましくは70mJ/cm2以上である。40mJ/cm2以下では防眩層が十分に硬化しない恐れがある。一方、積算光量の上限については特に制限はない。
【0078】
紫外線の照射により、透明支持体、防眩性フィルム、スタンパーが過度に加熱されて熱ダメージを受けることを防ぐため、スタンパーは冷却機構を備ることが好ましい。スタンパーとしてエンボスロールを使用する場合、冷却機構としては、例えば、エンボスロールの内部に冷却管を設け、エンボスロールの内部の冷却管と外部に設置したチラーユニットとを接続し、冷媒を循環させるような構造が挙げられる。冷却温度としては、エンボスロールの表面の温度が10℃〜70℃、好ましくは20℃〜60℃となるように設定する。10℃以下では樹脂の粘度が上昇し、特定の表面凹凸形状が転写できなくなる恐れがあり、70℃を越えると、エンボスロールの金属や透明支持体が熱ダメージにより劣化する恐れがあるため好ましくない。
【0079】
〔剥離工程〕
塗工面からスタンパーを剥離する方法としては、公知の方法を採用できるが、活性エネルギー線の照射中にフィルムがスタンパーから剥がれることを防ぐため、剥離地点にもニップロールのごとき圧着装置を設置し、硬化工程が終了するまでスタンパーに対して密着した状態を維持することが、正確に特定形状を転写する上で好ましい。
【0080】
前述した硬化工程で使用するスタンパーとして、防眩層の微細凹凸表面の形状を精度よく制御する観点から、所定のパターンを用いて作成したエンボスロールがより好ましい。そのエンボスロールについて以下に説明する。
【0081】
〔所定のパターンを用いて作成したエンボスロール〕
このエンボスロールは、0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持たないエネルギースペクトルを示すパターンを用いて作製されるものである。かかるパターンを使用することにより、エンボスロール表面に所定の空間周波数分布を持つ微細凹凸形状を形成することが可能となる。ここでいう「パターン」とは、防眩性フィルムにおける防眩層の表面凹凸形状の元となるものであり、該表面凹凸を形成するために用いられる、典型的には計算機によって作成された2階調(たとえば、白と黒とに二値化された画像データ)または3階調以上のグラデーションからなる画像データを意味するが、当該画像データへ一義的に変換可能なデータ(行列データなど)も含み得る。画像データへ一義的に変換可能なデータとしては、各画素の座標および階調のみが保存されたデータなどが挙げられる。
【0082】
エンボスロールを作成する際に使用するパターンのエネルギースペクトルは、たとえば画像データであれば、画像データを256階調のグレースケールに変換した後、画像データの階調を二次元関数g(x,y)で表し、得られた二次元関数g(x,y)をフーリエ変換して二次元関数G(fx,fy)を計算し、得られた二次元関数G(fx,fy)を二乗することによって求められる。ここで、xおよびyは、画像データ面内の直交座標を表し、fxおよびfyはそれぞれ、x方向の空間周波数およびy方向の空間周波数を表している。
【0083】
微細表面凹凸の標高のエネルギースペクトルを求める場合と同様に、パターンのエネルギースペクトルを求める場合についても、階調の二次元関数g(x,y)は離散関数として得られる場合が一般的である。その場合は、微細表面凹凸の標高のエネルギースペクトルを求める場合と同様に、離散フーリエ変換によって、エネルギースペクトルが計算される。具体的には、式(5)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数G(fx,fy)を計算し、離散関数G(fx,fy)を二乗することによってエネルギースペクトルが求められる。ここで、式(5)中のπは円周率、iは虚数単位である。また、Mはx方向の画素数であり、Nはy方向の画素数であり、lは−M/2以上M/2以下の整数であり、mは−N/2以上N/2以下の整数である。さらに、ΔfxおよびΔfyはそれぞれx方向およびy方向の空間周波数間隔であり、式(6)および式(7)で定義される。式(5)および式(6)中のΔxおよびΔyはそれぞれ、x軸方向、y軸方向における水平分解能である。なお、パターンが画像データである場合には、ΔxおよびΔyは、それぞれ1画素のx軸方向の長さおよびy軸方向の長さと等しい。すなわち、6400dpiの画像データとしてパターンを作成した場合には、Δx=Δy=4μmであり、12800dpiの画像データとしてパターンを作成した場合には、Δx=Δy=2μmである。
【0084】
【0085】
図9は、本発明の防眩性フィルムを作製するために用いることができるパターンである画像データの一部を示す図であり、階調の二次元離散関数g(x,y)で表したものである。図9に示したパターンである画像データは2mm×2mmの大きさで、12800dpiで作成した。
【0086】
図10は、図9に示した階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示した図である。図9に示されるパターンは、ドットをランダムに配置したものであるため、そのエネルギースペクトルは、図10に示されるように、原点を中心に対称となる。よって、パターンのエネルギースペクトルの極大値を示す空間周波数はエネルギースペクトルの原点を通る断面より求めることができる。図11は、図10に示したエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。これより図9に示したパターンは、空間周波数0.045μm-1に極大値を持つが、0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内には極大値を持たないことがわかる。
【0087】
防眩性フィルムを作製するためのパターンのエネルギースペクトルが0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持つ場合には、得られる防眩フィルムの微細凹凸表面が上記した特定の空間周波数分布を示さなくなるため、ギラツキの解消と十分な防眩性を兼備することができない。
【0088】
次に、前記エンボスロールの製造方法について説明する。このエンボスロールは、上述したパターンを用いた所定の表面形状が得られる方法であれば、特に制限されないが、微細凹凸表面を精度よく、かつ、再現性よく製造するために、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜形成工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2めっき工程とを基本的に含むことが好ましい。図12は、金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図12には、各工程での金型の断面を模式的に示している。以下、図12を参照しながら、上記各工程について詳細に説明する。
【0089】
〔1〕第1めっき工程
本工程では、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
【0090】
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよく、したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行なっても無電解めっきで行なってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0091】
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどに鑑み、500μm程度までとすることが好ましい。
【0092】
金型用基材を構成する金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性を考慮すると、軽量なアルミニウムを用いることが好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0093】
また、金型用基材の形状は、円柱状または円筒状のロールであるのが好ましい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
【0094】
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。図12(a)には、平板状の金型用基材7が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(当該工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面8を有するようにされた状態を模式的に示している。
【0095】
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。また、切削工具を用いて鏡面切削することによって、金型用基材表面7を鏡面としてもよい。その際の切削工具の材質や形状などは特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。
【0096】
研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性がある。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストなどを考慮して適宜決定される。
【0097】
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続く感光性樹脂膜形成工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した金型用基材7の研磨された表面8に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図12(b)には、金型用基材7の研磨された表面8に感光性樹脂膜9が形成された状態を模式的に示している。
【0098】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、たとえば、分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0099】
これらの感光性樹脂を金型用基材7の研磨された表面8に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
【0100】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
【0101】
〔4〕露光工程
続く露光工程では、上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜9上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、たとえば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)等を用いることができる。
【0102】
金型の表面凹凸形状、ひいては防眩層の表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、上記パターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましく、具体的には、コンピュータ上でパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することが好ましい。レーザ描画を行なうに際しては印刷版作成用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
【0103】
図12(c)には、感光性樹脂膜9にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域11は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域11が現像液によって溶解され、露光されていない領域10のみ基材表面上に残り、図12(d)に示すようなマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域11は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域10が現像液によって溶解され、露光された領域11のみ基材表面上に残り、図12(e)に示すようなマスクとなる。
【0104】
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域10は現像液によって溶解され、露光された領域11のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域11のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域10が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0105】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液;および、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
【0106】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0107】
図12(e)には、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図12(c)において露光されていない領域10が現像液によって溶解され、露光された領域11のみ基材表面上に残りマスク12となる。図12(d)には、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図12(c)において露光された領域11が現像液によって溶解され、露光されていない領域10のみ基材表面上に残りマスク12となる。
【0108】
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングし、研磨されためっき面に凹凸を形成する。図13は、金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図13(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い箇所13の金型用基材7がエッチングされる状態を模式的に示している。マスク12の下部の金型用基材7は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い箇所13からのエッチングが進行する。よって、マスク12とマスクの無い箇所13との境界付近では、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされる。このようなマスク12とマスクの無い箇所13との境界付近において、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされることをサイドエッチングと呼ぶ。
【0109】
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0110】
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは2〜10μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製した防眩フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じる虞がある。傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む微細凹凸表面を有する防眩フィルムを得るためには、第1エッチング工程におけるエッチング量は、2〜8μmであることがより好ましい。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
【0111】
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができる。剥離液のpH、温度、濃度および浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0112】
図13(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク12として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク12を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状15が金型用基材表面に形成されている。
【0113】
〔8〕第2めっき工程
続いて、形成された凹凸面へクロムめっきを施すことによって、さらに表面の凹凸形状を鈍らせる。図13(c)には、第1エッチング工程のエッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15にクロムめっき層16を形成することにより、第1の表面凹凸形状15よりも凹凸が鈍った表面(クロムめっきの表面17)が形成されている状態が示されている。
【0114】
クロムめっきとしては、ロールの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用することが好ましい。このようなクロムめっきとしては特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行なわれ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0115】
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、防眩フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0116】
また、めっき後の表面研磨も好ましくない。すなわち、第2のめっき工程後に表面を研磨する工程を設けることなく、クロムめっきが施された凹凸面を、そのまま基材フィルム上の樹脂層表面に転写される金型の凹凸面として用いることが好ましい。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
【0117】
このように、微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなる上に、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0118】
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下する上に、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0119】
また、本発明の防眩フィルムを作製するための金型の製造方法においては、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程の後に、第1エッチング工程によって形成された凹凸面を、さらにエッチング処理により鈍らせる第2エッチング工程を実施することも出来る。すなわち、第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状15を、さらにエッチング処理によって鈍らせる。
この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。図14には、第2エッチング処理によって、金型用基材7の第1の表面凹凸形状15が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状18が形成された状態が示されている。
【0120】
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内とすることが好ましく、また、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む微細凹凸表面を有する防眩フィルムを得るために、4〜20μmの範囲内とすることがより好ましい。第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
【0121】
<防眩性偏光板、画像表示装置>
本発明の防眩性フィルムは、優れた防眩性を示し、良好なコントラストを発現しながら、「白ちゃけ」および「ギラツキ」の発生による視認性の低下を効果的に防止できるため、画像表示装置に装着したときに視認性に優れたものとなる。また、本発明の防眩性フィルムは、防眩層に微粒子を含有させているものの、該防眩層への気泡の発生を防止しており、安定した品質のものとなっている。
【0122】
くわえて、本発明の防眩性フィルムは、防眩性偏光板や画像表示装置の部材として好適に使用しうる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩性フィルムを偏光板に適用することができる。すなわち、偏光板は一般に、ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された形態のものが多いが、その一方の保護フィルムを本発明の防眩性フィルムで構成する。偏光フィルムと、本発明の防眩性フィルムとを、その防眩性フィルムの基材フィルム側で貼り合わせることにより、防眩性偏光板とすることができる。この場合、偏光フィルムの他方の面は、何も積層されていない状態でもよいし、保護フィルムまたは他の光学フィルムが積層されていてもよいし、また液晶セルに貼合するための粘着剤層が積層されていてもよい。また、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板の当該保護フィルム上に、本発明の防眩性フィルムをその基材フィルム側で貼合して、防眩性偏光板とすることもできる。さらに、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板において、当該保護フィルムとして上記基材フィルムを偏光フィルムに貼合した後、この基材フィルム上に防眩層を形成することにより、防眩性偏光板とすることもできる。
【0123】
また、前記防眩性偏光板をさらに画像表示装置の部材として使用しうる。この場合、画像表示装置は、該防眩性偏光板と画像表示素子とを備えるものであり、前記防眩性偏光板が、防眩層を外側にして前記画像表示素子の視認側に配置される。
【実施例】
【0124】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0125】
〔1〕防眩性フィルムの表面形状の測定
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて、防眩性フィルムの表面形状を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は10倍とした。水平分解能ΔxおよびΔyはともに1.66μmであり、測定面積は850μm×850μmであった。
【0126】
(標高のエネルギースペクトルの比H12/H22およびH32/H22)
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて得られた測定データから、防眩性フィルムの微細凹凸表面の標高を二次元関数h(x,y)として求め、得られた二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数H(fx,fy)を求めた。二次元関数H(fx,fy)を二乗してエネルギースペクトルの二次元関数H2(fx,fy)を計算し、fx=0の断面曲線であるH2(0,fy)より、空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH12および空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22を求め、エネルギースペクトルの比H12/H22を計算した。また、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH32を求め、エネルギースペクトルの比H32/H22についても計算した。
【0127】
(微細凹凸表面の傾斜角度)
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて得られた測定データをもとに、発明を実施するための形態の内容で前述したアルゴリズムに基づいて計算し、凹凸面の傾斜角度のヒストグラムを作成し、そこから傾斜角度毎の分布を求め、傾斜角度が5°以下である面の割合を計算した。
【0128】
(防眩層における微粒子の突出程度(埋没状態)の評価)
防眩層が微粒子を含有しないこと以外は同様にして作製された防眩性フィルムを比較対象とし、微細凹凸表面の空間周波数分布および凹凸面の傾斜角度のヒストグラムが当該比較対象と同じである場合、すなわち、標高のエネルギースペクトルの二次元関数H(fx,fy)のfx=0の断面曲線であるH2(0,fy)および傾斜角度のヒストグラムが当該比較対象と略重なる場合、微粒子を含有する防眩フィルムの凹凸表面形状は、微粒子によって影響を受けていないといえることから、微粒子は防眩層表面から突出しておらず(防眩層中に埋没しており)、凹凸表面は、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物によって形成された表面のみからなると判断した。下記表1において、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物によって形成された表面のみからなる場合を○と示し、そうでない場合を×と示した。
【0129】
(防眩層への気泡混入の観察)
実施例及び比較例で得られた防眩性フィルムを、1mm×1mmの範囲を光学顕微鏡で拡大しながら、測定箇所を3点観察する。10μm以上の気泡が5個以上観察された場合は×と示し、5個未満の場合を○と示した。
【0130】
〔2〕防眩性フィルムの光学特性の測定
(ヘイズ)
防眩性フィルムのヘイズは、JIS K 7136に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠したヘイズメータ「HM−150型」(村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズを測定した。防眩性フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。
【0131】
〔3〕防眩性フィルムの防眩性能の評価
(映り込み目視評価)
防眩性フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無を目視で評価した。映り込み、白ちゃけおよび質感は、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
【0132】
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
【0133】
(ギラツキの評価)
ギラツキは、以下の方法で評価した。まず、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターンが形成され、そのクロム遮光パターンの形成されていない部分が開口部となっているユニットセルを用意した。なお、このユニットセルの寸法は254μm×84μm(縦×横)であるため、開口部の寸法は244μm×74μm(縦×横)となる。次いで、当該ユニットセルを縦横に多数並べて、フォトマスクを形成した。
次に、クロム遮光パターンが表面側になるように前記フォトマスクを面光源の上に置いた。さらに、防眩層が表面側になるように防眩性フィルムをガラス板に粘着剤で貼ったサンプルを、防眩層が表面側になるように前記フォトマスクの上に置いた。
なお、下から、面光源、フォトマスク、ガラス板、防眩性フィルムの順で置かれた状態になっている。
【0134】
この状態で、サンプルから約30cm離れた位置で目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。
【0135】
〔4〕防眩性フィルム製造用のパターンの評価
作成したパターンデータを256階調のグレースケールの画像データとし、階調を二次元の離散関数g(x,y)で表した。離散関数g(x,y)の水平分解能ΔxおよびΔyはともに2μmとした。得られた二次元関数g(x,y)を離散フーリエ変換して、二次元関数G(fx,fy)を求めた。二次元関数G(fx,fy)を二乗してエネルギースペクトルの二次元関数G2(fx,fy)を計算し、fx=0の断面曲線であるG2(0,fy)より、空間周波数が0μm-1より大きく、かつ、絶対値が最も小さい空間周波数での極大値を求めた。
【0136】
〔5〕塗工液の沈降度測定
微粒子が分散している塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置し、該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を観測した。その値をxとし、下記式(A)から沈降度Sを算出した。
S=100−x/30×100 (A)
【0137】
〔6〕塗工液による塗工装置汚染性評価
塗工装置(スロットダイコーター)内部で微粒子が沈降した場合、スロットダイコーターの吐出部であるスロットに、内部で蓄積した微粒子が詰まるため、防眩性フィルムに連続したスジムラ等のムラが発生する。従って、このスジムラの有無とスロットダイコーターのマニフォールド部の粒子が沈殿している様を観察し、スジムラが無く、マニフォールド部に粒子の沈殿が無い場合を○、スジムラがある場合もしくはマニフォールド部に粒子の沈殿が確認された場合を×した。
【0138】
<実施例1>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図9に示される画像データからなるパターンの複数を連続して繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像した。レーザー光による露光、および現像は「Laser Stream FX」((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行なった。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。図9に示されるパターンから計算されるエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面は、図11に示されるとおりである。図9に示されるパターンは、空間周波数0.045μm-1にエネルギースペクトルの極大値を示す。
【0139】
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は7μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は18μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行ない、金型Aを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0140】
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60重量%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化型樹脂組成物を入手した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60重量部、
多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物) 40重量部、
レベリング剤(メガファックF−477(DIC社製、フッ素系レベリング剤)) 0.5重量部
重合開始剤(ルシリンTPO”(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)) 5重量部
【0141】
この紫外線硬化型樹脂組成物に、平均粒子径が6.5μmで屈折率が1.49のメタクリル酸メチル重合体樹脂ビーズ(微粒子)を、紫外線硬化型樹脂100重量部(当該紫外線硬化型樹脂の硬化により形成されるバインダ樹脂も実質的に100重量部となる)あたり20重量部添加した後、固形分(樹脂ビーズを含む)の濃度が40重量%となるように酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤を添加して塗工液を調製した。
【0142】
透明支持体である厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの凹凸面に、紫外線硬化型樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、フュージョン社製の“Vバルブ”ランプ(最大発光波長420nm)を光源として、積算光量550mJ/cm2で紫外線を照射した(第一照射)。その後、ニッケル平板から硬化塗膜を剥がし、その硬化塗膜側から、フュージョン社製の“Dバルブ”ランプ(最大発光波長380nm)を光源として、積算光量850mJ/cm2で2回連続して紫外線を照射した(第二照射)。こうして、表面にハードコート層とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩性フィルムAを作製した。
【0143】
<実施例2>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルとしたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムBを作製した。
【0144】
<実施例3>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとしたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムCを作製した。
【0145】
<比較例1>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤を酢酸エチルとし、さらに、屈折率が1.49のメタクリル酸メチル重合体樹脂ビーズ(微粒子)の平均粒子径を、6.5μmから7.3μmとした以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムDを作製した。
【0146】
<比較例2>
酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの5/5溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルとし、さらに、平均粒子径が6.5μmで屈折率が1.49のメタクリル酸メチル重合体樹脂ビーズを、平均粒子径が3.5μmで屈折率が1.59のメタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズとした以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムEを作製した。
【0147】
得られた防眩フィルムの表面形状および光学特性の評価結果を表1および表2に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【符号の説明】
【0150】
1 防眩性フィルム
101 防眩層
102 活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物
103 微粒子
104 透明支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸表面を有する防眩層が、透明支持体上に形成されている防眩性フィルムであって、
前記微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものであり、
前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより形成されるものであり、且つ、
下記式(A)で示される前記塗工液の沈降度Sが、1以上76以下であることを特徴とする防眩性フィルム。
S=100−x/30×100 (A)
〔式中、xは、微粒子が分散している前記塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置して観測される該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を表し、Sは、前記塗工液の沈降度を表す。〕
【請求項2】
前記微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子が、有機微粒子である請求項1に記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
前記微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子の平均粒子径が、6μm以上15μm以下である請求項1又は2に記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
前記微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物との屈折率差が、0.005以上0.16以下である請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項5】
前記塗工液における微粒子の含有量が、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して10重量部以上100重量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項6】
表面ヘイズが0.1%以上5%以下であり、全ヘイズが5%以上30%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項7】
前記防眩層における微細凹凸表面の標高の空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH12と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H12/H22が3〜15の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH32と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H32/H22が0.1以下である請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防眩性フィルムを製造する方法であって、
前記塗工液を透明支持体上に塗工する塗工工程、
前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して積層体を得る乾燥工程、
前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる硬化工程、及び、
前記硬化工程の後、塗工面からスタンパーを剥離する剥離工程
を含む防眩性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記スタンパーが凹凸形状を有する鋳型であり、前記硬化工程において、積層体の塗工面に、凹凸形状を有する鋳型の該凹凸面を押し付けながら硬化する請求項8に記載の防眩性フィルムの製造方法。
【請求項10】
凹凸形状を有する鋳型が、エンボスロールである請求項9に記載の防眩性フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の防眩性フィルムの防眩層と反対側の面に偏光フィルムが貼合している防眩性偏光板。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の方法により製造された防眩性フィルムの防眩層と反対側の面に偏光フィルムが貼合している防眩性偏光板。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、
前記防眩性偏光板が、防眩層を外側にして前記画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置。
【請求項1】
微細凹凸表面を有する防眩層が、透明支持体上に形成されている防眩性フィルムであって、
前記微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含むものであり、
前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、微粒子及び希釈溶剤を含有する塗工液を前記透明支持体上に塗工した後、乾燥し、次いでスタンパーを押し付けながら硬化処理することにより形成されるものであり、且つ、
下記式(A)で示される前記塗工液の沈降度Sが、1以上76以下であることを特徴とする防眩性フィルム。
S=100−x/30×100 (A)
〔式中、xは、微粒子が分散している前記塗工液30mlを100mlのメスシリンダーに入れた後、6時間放置して観測される該塗工液の透明上澄み層と懸濁層との界面の目盛り(ml)を表し、Sは、前記塗工液の沈降度を表す。〕
【請求項2】
前記微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子が、有機微粒子である請求項1に記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
前記微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子の平均粒子径が、6μm以上15μm以下である請求項1又は2に記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
前記微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物との屈折率差が、0.005以上0.16以下である請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項5】
前記塗工液における微粒子の含有量が、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して10重量部以上100重量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項6】
表面ヘイズが0.1%以上5%以下であり、全ヘイズが5%以上30%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項7】
前記防眩層における微細凹凸表面の標高の空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH12と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H12/H22が3〜15の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH32と、空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH22の比H32/H22が0.1以下である請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防眩性フィルムを製造する方法であって、
前記塗工液を透明支持体上に塗工する塗工工程、
前記塗工工程において塗工された塗工液を乾燥して積層体を得る乾燥工程、
前記乾燥工程で得られる積層体の塗工面に、スタンパーを押し付けながら活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる硬化工程、及び、
前記硬化工程の後、塗工面からスタンパーを剥離する剥離工程
を含む防眩性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記スタンパーが凹凸形状を有する鋳型であり、前記硬化工程において、積層体の塗工面に、凹凸形状を有する鋳型の該凹凸面を押し付けながら硬化する請求項8に記載の防眩性フィルムの製造方法。
【請求項10】
凹凸形状を有する鋳型が、エンボスロールである請求項9に記載の防眩性フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の防眩性フィルムの防眩層と反対側の面に偏光フィルムが貼合している防眩性偏光板。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の方法により製造された防眩性フィルムの防眩層と反対側の面に偏光フィルムが貼合している防眩性偏光板。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、
前記防眩性偏光板が、防眩層を外側にして前記画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−248289(P2011−248289A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124222(P2010−124222)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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