説明

防眩部材およびそれを備えた画像表示装置

【課題】斜め方向からの視認性を低下させることなく、反射光の映り込みを拡散し、かつ、反射光の映り込みを低減することができる防眩部材およびこれを備えてなる画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の防眩部材1は、シート状またはフィルム状の透明基材2と、透明基材2の上に形成された表面に凹凸を有する防眩層3と、防眩層3の上に形成された防眩層3よりも屈折率の低い低屈折率層5とを備え、防眩層3の表面の凹凸は、防眩層3にその一部が露出するように埋め込まれたレンズ状粒子4により形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩部材およびそれを備えた画像表示装置に関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)に好適に用いられ、特に高視野角特性に優れたディスプレイに適用することが可能なシート状またはフィルム状の防眩部材およびそれを備えた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)においては、映像光が部分的に眩しく感じられる現象のシンチレーションを抑制し、反射光の映り込みも少ない優れた画質とするために、防眩性フィルムが用いられている。
【0003】
このような防眩性フィルムとしては、例えば、透明基材フィルム上に、光拡散層もしくはハードコート層を介して、防眩層が積層され、この防眩層が、小さい方の透光性微粒子の平均粒径が、大きい方の透光性微粒子の平均粒径の20%〜70%である二種類の透光性微粒子を透光性樹脂中に分散してなるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−004777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近のフラットパネルディスプレイは、視野角が広く、かつ、画像の視認性の低下(コントラストの低下、色相の変化)が少ないものが主流となっている。このようなフラットパネルディスプレイは、正面からだけでなく、斜め方向(視野角が大きなところ)からの視聴も可能である。
しかしながら、このような視野角が大きいフラットパネルディスプレイに、上記のような大きさの異なる透光性微粒子を透光性樹脂中に分散してなる防眩層を有する防眩性フィルムを用いた場合、フラットパネルディスプレイを斜め方向から視ると、コントラストが低下し、画像がぼやけてしまうという問題があった。
そこで、斜め方向からの視認性を高めるために、フラットパネルディスプレイに、表面が平坦な反射防止膜を適用することも検討されているが、反射防止膜は反射光を低減することができるものの、フラットパネルディスプレイに防眩性を付与することはできなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、斜め方向からの視認性を低下させることなく、反射光を拡散し、かつ、反射光の映り込みを低減することができる防眩部材およびそれを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、透明基材上にレンズ状粒子を含む防眩層を積層し、さらに低屈折率層を積層した防眩部材を作製することにより、この防眩部材を適用した画像表示装置の斜め方向からの視認性を低下させることなく、反射光を拡散し、かつ、反射光の映り込みを低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の防眩部材は、シート状またはフィルム状の透明基材と、前記透明基材の上に形成された表面に凹凸を有する防眩層と、前記防眩層の上に形成された前記防眩層よりも屈折率の低い低屈折率層とを備えた防眩部材であって、前記防眩層の表面の凹凸は、前記防眩層にその一部が露出するように埋め込まれたレンズ状粒子により形成されたことを特徴とする。
【0008】
前記防眩層の厚みは前記レンズ状粒子の平均粒径の60%以上かつ90%以下、前記防眩層を構成する樹脂に対する前記レンズ状粒子の体積比は0.3%以上かつ0.7%以下であることが好ましい。
前記レンズ状粒子の平均粒径は2μm以上かつ9μm以下であることが好ましい。
前記防眩層は平均粒径が50nm以下の無機粒子を含有することが好ましい。
【0009】
前記防眩層は、導電性無機粒子、モノマー、ポリマー、有機粒子の群から選択された1種または2種以上を含有することが好ましい。
前低屈折率層は、導電性無機粒子、モノマー、ポリマー、有機粒子の群から選択された1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩部材を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防眩部材は、シート状またはフィルム状の透明基材と、前記透明基材の上に形成された表面に凹凸を有する防眩層と、前記防眩層の上に形成された前記防眩層よりも屈折率の低い低屈折率層とを備えた防眩部材であって、前記防眩層の表面の凹凸は、前記防眩層にその一部が露出するように埋め込まれたレンズ状粒子により形成されたので、斜め方向からの視認性を低下させることなく、反射光を拡散し、蛍光灯などの外光の映り込みを低減することができる。したがって、十分な反射防止機能を維持しつつ、コントラストの低下を抑制することができる。また、本発明の防眩部材を画像表示装置に適用することにより、表示面における蛍光灯などの外光の映り込みを減少させることができ、その結果、フラットパネルディスプレイの表示面における視認性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の防眩部材およびこれを備えてなる画像表示装置の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】
図1は、本発明の防眩部材の一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の防眩部材1は、シート状またはフィルム状の透明基材2と、透明基材2の上に形成された表面に凹凸を有する防眩層3と、防眩層3の上に形成された防眩層3よりも屈折率の低い低屈折率層5と、防眩層3に埋め込まれたレンズ状粒子4とから概略構成されている。
また、この防眩部材1では、防眩層3の表面の凹凸が、防眩層3にその一部が露出するように埋め込まれたレンズ状粒子4により形成されている。
【0014】
透明基材2としては、十分な機械的強度および物理的強度を有する透明樹脂フィルムまたは透明樹脂シートが用いられる。
このような透明樹脂フィルムまたは透明樹脂シートの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリアクリレートなどのアクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)などが挙げられる。
特に、長期の安定性、信頼性を考慮すると、フィルムの強度があり、光学用途として広く用いられているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適である。
【0015】
透明基材2の厚みは特に限定はされないが、通常、38μm〜188μm程度の厚みから適宜選択される。
厚みが上記範囲内の透明基材2を用いれば、フラットパネルディスプレイの表示面に貼着した際に、皺が発生し難く、必要以上に伸びることがなく、破断などの不具合が生じることもない。
【0016】
防眩層3を形成する樹脂としては、光透過性であれば、特に限定はされないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などが用いられる。これらの樹脂の中でも、紫外線硬化型樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などが挙げられる。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
電子線硬化型樹脂としては、例えば、アクリルウレタン樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられる。
【0017】
防眩層3の厚みは、防眩層3に含まれるレンズ状粒子4の平均粒径よりも薄いことが好ましく、具体的には、防眩層3の厚みはレンズ状粒子4の平均粒径の60%以上かつ90%以下であることが好ましく、70%以上かつ80%以下であることがより好ましい。
防眩層3の厚みがレンズ状粒子4の平均粒径の60%未満では、防眩層3の厚みが薄過ぎて、その強度が不足する。一方、防眩層3の厚みがレンズ状粒子4の平均粒径の90%を超えると、防眩層3の厚みが厚くなりすぎて、防眩層3をなす紫外線硬化型樹脂が硬化する際の収縮により、透明基材2がカールしたり、防眩層3に亀裂が生じる。
【0018】
また、防眩層3を形成する紫外線硬化型樹脂に対するレンズ状粒子4の体積比は0.3%以上かつ0.7%以下であることが好ましく、0.4%以上かつ0.6%以下であることがより好ましい。
防眩層3を形成する紫外線硬化型樹脂に対するレンズ状粒子4の体積比が0.3%未満では、防眩層3の厚みが薄過ぎて、その強度が不足する。一方、防眩層3を形成する紫外線硬化型樹脂に対するレンズ状粒子4の体積比が0.7%を超えると、防眩層3の厚みが厚くなりすぎて、防眩層3をなす紫外線硬化型樹脂が硬化する際の収縮により、透明基材2がカールしたり、防眩層3に亀裂が生じる。
【0019】
レンズ状粒子4としては、凸レンズ状で光を透過することが出来るものであれば特に限定されないが、シリカ粒子、アクリル樹脂ビーズなどが用いられる。これらの中でも、防眩層3を形成する紫外線硬化型樹脂との屈折率差が小さいアクリル樹脂ビーズが好適である。
このレンズ状粒子4の平均粒径は2μm以上かつ9μm以下であることが好ましく、3μm以上かつ5μm以下であるこがより好ましい。
レンズ状粒子4の平均粒径が2μm未満では、レンズ状粒子4を保持する防眩層3の厚みが薄過ぎて、その強度が不足する。一方、レンズ状粒子4の平均粒径が9μmを超えると、レンズ状粒子4を保持する防眩層3の厚みが厚くなりすぎて、防眩層3をなす紫外線硬化型樹脂が硬化する際の収縮により、透明基材2がカールしたり、防眩層3に亀裂が生じる。
【0020】
また、レンズ状粒子4のアスペクト比(レンズ状粒子4の厚みに対する、レンズ状粒子4の平均粒径の比)は、1.2以上かつ2.0以下であることが好ましい。
レンズ状粒子4のアスペクト比が1.2未満では、斜め方向からの視認性が悪化する。一方、レンズ状粒子4のアスペクト比が2.0を超えると、粒子が重なって白化してしまう。
【0021】
また、防眩層3は、平均粒径が50nm以下の無機粒子6を含有することが好ましい。
この無機粒子6としては、光透過性のものであれば特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムなどが挙げられる。
これらの無機粒子6の中でも、特に、透明性が高く、紫外線硬化型樹脂との屈折率差が小さいシリカが好適である。
【0022】
さらに、防眩層3には、帯電防止性を付与するために、各種添加剤が含まれていてもよい。
このような添加剤としては、導電性無機粒子、モノマー、ポリマー、有機粒子の群から選択された1種または2種以上が用いられる。
導電性無機粒子としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫(ATO)、錫添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化亜鉛(AZO)などが挙げられる。
【0023】
モノマーとしては、例えば、2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアルミニウムクロリド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0024】
ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、4級アンモニウムを含むポリマーなどの導電性ポリマーが挙げられる。
有機粒子としては、例えば、前記導電性ポリマーを粒子化したもの、金属を被覆したポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0025】
低屈折率層5としては、防眩層3よりも屈折率が低く、光透過性であれば、特に限定されないが、平均屈折率が1.35以上かつ1.45以下であり、フッ素を含有し、防眩層3に接合するバインダーとしての機能を有する樹脂からなるものが好ましい。
このような低屈折率層5を形成する樹脂としては、例えば、ポリシロキサン、オルガノシロキサン、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0026】
また、低屈折率層5には、防眩層3と同様に、帯電防止性を付与するために、各種添加剤が含まれていてもよい。
このような添加剤としては、上記の導電性無機粒子、モノマー、ポリマー、有機粒子の群から選択された1種または2種以上が用いられる。
【0027】
この防眩部材は、次のようにして作製することができる。
まず、レンズ状粒子、上記の光透過性の樹脂、無機粒子、および、その他の添加剤を有機溶媒に溶解・分散させ、防眩層形成用塗料を調製する。
有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエチレングリコールのモノエーテル類(セロソルブ類);ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが好適に用いられる。
【0028】
次いで、透明基材2上に防眩層形成用塗料を、ワイヤーバー法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法などにより塗布して塗膜を形成し、その後、この塗膜を加熱するか、あるいは、この塗膜に紫外線または電子線を照射し、この塗膜を硬化させ、防眩層3を形成する。
【0029】
次いで、低屈折率層形成用の樹脂、および、その他の添加剤を有機溶媒に溶解・分散させ、低屈折率層形成用塗料を調製する。
次いで、防眩層3およびレンズ状粒子4上に低屈折率層形成用塗料を、ワイヤーバー法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法などにより塗布して塗膜を形成し、その後、この塗膜を加熱するか、あるいは、この塗膜に紫外線または電子線を照射し、この塗膜を硬化させ、低屈折率層5を形成する。
【0030】
この実施形態の防眩部材1は、シート状またはフィルム状の透明基材2と、透明基材2の上に形成された表面に凹凸を有する防眩層3と、防眩層3の上に形成された防眩層3よりも屈折率の低い低屈折率層5とを備え、防眩層3の表面の凹凸は、防眩層3にその一部が露出するように埋め込まれたレンズ状粒子4により形成されているので、斜め方向からの視認性を劣化することなく、反射光を拡散し、蛍光灯などの外光の映り込みを低減することができる。したがって、十分な反射防止機能を維持しつつ、コントラストの低下を抑制することができる。
【0031】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩部材を備えてなる装置である。
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩部材がプラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイの表示面に貼着されているので、表示面における蛍光灯などの外光の映り込みを減少させることができ、その結果、フラットパネルディスプレイの表示面における視認性を向上させることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例1〜3および比較例1〜6により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
「実施例1」
紫外線硬化型樹脂としてビスコート♯300(大阪有機社製)30重量%、光開始剤としてイルガキュア184(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3重量%、レンズ状粒子として平均粒径4μm、アスペクト比1.6の凸レンズ状アクリル粒子(商品名:LXX419Z、積水化学品工業社製)0.1重量%、分散剤としてメチルエチルケトン(MEK)分散コロイダルシリカ(商品名:MEK−ST、日産化学社製)3重量%、溶媒としてシクロヘキサノン19重量%とトルエン44.9重量%を、高速ミキサーを用いて混合・分散し、防眩層形成用塗料を調製した。
次いで、厚み100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製)上に、乾燥膜厚が3μmになるように、防眩層形成用塗料を塗布し、60℃にて3分間乾燥した後、紫外線を300mJ照射して硬化させ、防眩層を形成した。
その後、この防眩層の上に、乾燥膜厚が100nmになるように、低屈折率層形成用塗料としてLP−LC−01(住友大阪セメント社製)を塗布し、120℃にて1分間乾燥させて低屈折率層を形成し、実施例1の防眩性部材を作製した。
【0034】
「実施例2」
紫外線硬化型樹脂としてビスコート♯300(大阪有機社製)30重量%、光開始剤としてイルガキュア184(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3重量%、レンズ状粒子として平均粒径4μm、アスペクト比1.6の凸レンズ状アクリル粒子(商品名:LXX419Z、積水化学品工業社製)0.2重量%、分散剤としてメチルエチルケトン(MEK)分散コロイダルシリカ(商品名:MEK−ST、日産化学社製)3重量%、溶媒としてシクロヘキサノン19重量%とトルエン44.8重量%を用いて、防眩層形成用塗料を調製した以外は実施例1と同様にして、実施例2の防眩部材を作製した。
【0035】
「実施例3」
紫外線硬化型樹脂としてビスコート♯300(大阪有機社製)30重量%、光開始剤としてイルガキュア184(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3重量%、レンズ状粒子として平均粒径4μm、アスペクト比1.6の凸レンズ状アクリル粒子(商品名:LXX419Z、積水化学品工業社製)3重量%、溶媒としてシクロヘキサノン19重量%とトルエン45重量%を用いて、防眩層形成用塗料を調製した以外は実施例1と同様にして、実施例3の防眩部材を作製した。
【0036】
「比較例1」
紫外線硬化型樹脂としてビスコート♯300(大阪有機社製)30重量%、光開始剤としてイルガキュア184(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3重量%、レンズ状粒子として平均粒径5μm、真球形のレンズ状アクリル粒子(商品名:LB30X−5、積水化学品工業社製)0.1重量%、分散剤としてメチルエチルケトン(MEK)分散コロイダルシリカ(商品名:MEK−ST、日産化学社製)3重量%、溶媒としてシクロヘキサノン19重量%とトルエン44.9重量%を用いて、防眩層形成用塗料を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例1の防眩部材を作製した。
【0037】
「比較例2」
実施例1と同様の防眩層形成用塗料を調製し、上記の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥膜厚が4.5μmになるように、この防眩層形成用塗料を塗布した以外は実施例1と同様にして、比較例2の防眩部材を作製した。
【0038】
「比較例3」
実施例1と同様の防眩層形成用塗料を調製し、上記の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥膜厚が1.5μmになるように、この防眩層形成用塗料を塗布した以外は実施例1と同様にして、比較例3の防眩部材を作製した。
【0039】
「比較例4」
紫外線硬化型樹脂としてビスコート♯300(大阪有機社製)30重量%、光開始剤としてイルガキュア184(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3重量%、レンズ状粒子として平均粒径4μm、アスペクト比1.6の凸レンズ状アクリル粒子(商品名:LXX419Z、積水化学品工業社製)0.03重量%、分散剤としてメチルエチルケトン(MEK)分散コロイダルシリカ(商品名:MEK−ST、日産化学社製)3重量%、溶媒としてシクロヘキサノン19重量%とトルエン44.97重量%を用いて、防眩層形成用塗料を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例4の防眩部材を作製した。
【0040】
「比較例5」
紫外線硬化型樹脂としてビスコート♯300(大阪有機社製)30重量%、光開始剤としてイルガキュア184(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3重量%、レンズ状粒子として平均粒径4μm、アスペクト比1.6の凸レンズ状アクリル粒子(商品名:LXX419Z、積水化学品工業社製)0.3重量%、分散剤としてメチルエチルケトン(MEK)分散コロイダルシリカ(商品名:MEK−ST、日産化学社製)3重量%、溶媒としてシクロヘキサノン19重量%とトルエン44.7重量%を用いて、防眩層形成用塗料を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例5の防眩部材を作製した。
【0041】
「比較例6」
実施例1と同様の防眩層形成用塗料を調製し、上記の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥膜厚が3μmになるように、この防眩層形成用塗料を塗布して防眩層を形成し、この防眩層の上に低屈折率層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例6の防眩部材を作製した。
【0042】
「評価」
以上により得られた実施例1〜3および比較例1〜6それぞれの防眩部材の防眩性、斜め方向からの視認性、耐摩耗性の各評価項目について、以下の方法を用いて評価した。
【0043】
(1)防眩性
以下のような方法を用いて、防眩部材の防眩性を評価した。
厚み25μmの粘着剤により厚み2mmのソーダガラス基板の表面に防眩部材を貼付し、ソーダガラス基板の裏面に黒色マジックインキを塗布して、この裏面を黒色に着色した後、蛍光灯の下にて、防眩部材への蛍光灯の映り込みを目視により観察し、評価した。
蛍光灯の輪郭を確認出来ないものを「○」、蛍光灯の輪郭がぼやけているものの、その輪郭を確認できるものを「△」、蛍光灯の輪郭をはっきりと確認出来るものを「×」とした。
これらの評価結果を表1に示す。
【0044】
(2)斜め方向からの視認性
以下のような方法を用いて、防眩部材の斜め方向からの視認性を評価した。
バックライト上に、図2に示すような幅0.5mm、ピッチ0.5mmのラダーパターンを設け、このラダーパターンと1mmの間隔をおいて、厚み25μmの粘着剤により厚み1mmのソーダガラス基板の表面に貼付した防眩部材を配置し、この防眩部材の表面に垂直な方向に対して斜め70°の方向から、この防眩部材を目視により観察し、評価した。
ラダーパターンを確認出来るものを「○」、ラダーパターンを確認出来ないものを「×」とした。
これらの評価の結果を表1に示す。
【0045】
(3)耐摩耗性
以下のような方法を用いて、防眩部材の耐摩耗性を評価した。
ラビングテスター(大平理化社製)を用いて、#0000のスチールウールに、2.5N/cmの荷重を負荷しながら、防眩部材の表面(低屈折率層)上を30回往復させ、その後、防眩部材の表面を目視により観察し、評価した。
防眩部材の表面にできた傷が10本以下のものを「○」、防眩部材の表面にできた傷が10本以上、かつ、低屈折率層が剥離していないものを「△」、低屈折率層が完全に剥離したものを「×」とした。
これらの評価の結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果から、実施例1〜3の防眩部材は、防眩性および斜め方向からの視認性に優れていることが分かった。
一方、比較例1〜6の防眩部材は、防眩性または斜め方向からの視認性のいずれか一方に優れているものの、優れた防眩性および斜め方向からの視認性を両立できないことが分かった。
また、実施例1および2の防眩部材は、防眩層に無機粒子を含むので耐摩耗性に優れるが、実施例3の防眩部材は防眩層に無機粒子を含まないので、耐摩耗性試験において低屈折率層が剥がれ落ち、耐摩耗性に劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の防眩部材は、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)はもちろんのこと、その他の自発光型の表示装置の画像表示部の表示面へも適用可能であり、その工業的価値は極めて大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の防眩部材の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】防眩部材の斜め方向からの視認性を評価する際に用いられるラダーパターンを示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 防眩部材
2 透明基材
3 防眩層
4 凸状レンズ粒子
5 低屈折率層
6 無機粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状またはフィルム状の透明基材と、前記透明基材の上に形成され表面に凹凸を有する防眩層と、前記防眩層の上に形成され前記防眩層よりも屈折率の低い低屈折率層とを備えた防眩部材であって、
前記防眩層の表面の凹凸は、前記防眩層にその一部が露出するように埋め込まれたレンズ状粒子により形成されたことを特徴とする防眩部材。
【請求項2】
前記防眩層の厚みは前記レンズ状粒子の平均粒径の60%以上かつ90%以下、前記防眩層を構成する樹脂に対する前記レンズ状粒子の体積比は0.3%以上かつ0.7%以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩部材。
【請求項3】
前記レンズ状粒子の平均粒径は2μm以上かつ9μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩部材。
【請求項4】
前記防眩層は平均粒径が50nm以下の無機粒子を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の防眩部材。
【請求項5】
前記防眩層は、導電性無機粒子、モノマー、ポリマー、有機粒子の群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防眩部材。
【請求項6】
前記低屈折率層は、導電性無機粒子、モノマー、ポリマー、有機粒子の群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の防眩部材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の防眩部材を備えてなることを特徴とする画像表示装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−129509(P2008−129509A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317032(P2006−317032)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】