説明

防眩鏡面板並びにかかる防眩鏡面板を有するバックミラー

昼間の幻惑作用の緩和と夜間の幻惑作用の緩和との満足のいく歩み寄りをもたらす防眩鏡面板、かかる防眩鏡面板を有するバックミラー及びかかる防眩鏡面板の製造法を開示する。透明な基板(2)上に施与された酸化ニオブ(Nb25)からなる層(4)、酸化ニオブ層上に施与された窒化ケイ素(Si34)からなる色を付与する層(6)、及び鏡面層としてのクロム層(8)の組合せにより、一方では、昼間及び夜間における幻惑作用の十分な緩和が達成され、かつ鏡面板の青色の色作用は鏡面板の全面にわたって極めて均一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の防眩鏡面板、その製造法並びに請求項14記載の自動車用の防眩バックミラーに関する。
【0002】
銀からなる従来の鏡面被覆は、コーティングにもかかわらずしばしば腐食しやすく、これは視界を遮り、最終的には完全な鏡の機能停止を招く。更に、障害となる幻惑作用は夜間のみならず昼間にも回避されることが望ましく、即ち、可視光の全波長領域にわたって防眩の達成に努められる。人の眼は、周囲が明るい場合ないし陽光下において、555nmで、例えば黄緑色の色調で、最大のスペクトル感受性を有している。周囲が暗い場合ないし夜間には、前記の人の眼の最大のスペクトル感受性は青色の色調の方向へとシフトする。従って、青色スペクトル領域においてより高い反射率を有する鏡は、昼夜連続して使用する場合に特に好適である。審美的な理由からも、鏡は時として青色の色調を有することが望ましい。
【0003】
この種の鏡はEP−B−1099671から公知である。前記の公知の前面鏡は、鏡面層としてクロムを採用しているため、極めて耐腐食性が高い。付加的な層であるAl23、ZrO2、SnO2及びTiO2により、障害となる幻惑作用が低減される。この種の鏡の反射率は、単波長可視スペクトル(青色の色調)領域において、長波長可視スペクトル(赤色の色調)領域内よりも大きい。これにより、この種の鏡に関して、青色の色調が生じる。公知の青色鏡の場合、全鏡面にわたる青色の色調の均一性が問題である。
【0004】
幻惑の緩和を達成するために、人の眼に対して夜間も障害となる可視光の波長(これは主に青色の色調である)をスペクトルから排除することも公知であり、即ち、前記鏡の反射率は青色の波長領域において赤色の波長領域よりも低い。その結果、鏡は赤色に見える。更に、そのような赤色鏡は、標準光の種類Aがその最大強度を示す波長領域において −赤色領域において− 極めて多くの光を反射するため、昼間にも幻惑作用を招く。
【0005】
従って、本発明の課題は、昼間の幻惑作用の緩和と夜間の幻惑作用の緩和との満足のいく歩み寄りをもたらす防眩鏡面板、及びかかる防眩鏡面板を有する自動車用の防眩バックミラーを開示することである。
【0006】
前記課題は、請求項1ないし14の特徴により解決される。
【0007】
透明な基板上に施与された酸化ニオブ(Nb25)からなる層、酸化ニオブ層上に施与された窒化ケイ素(Si34)からなる色を付与する層、及び鏡面層としてのクロム層の組合せにより、一方では、昼間及び夜間における幻惑作用の十分な緩和が達成され、かつ鏡面板の青色の色作用は鏡面板の全面にわたって極めて均一である。
【0008】
鏡面板は、可視光の全スペクトル領域にわたって反射率の低下を示し;波長700nmでは約32%、波長400nmでは約65%である。得ようと努められる青色の色調は、確実な色再現性を有する。従って、酸化ニオブ及び窒化ケイ素の使用下に、そのクロムベースに基づき極めて良好な耐腐食性を有しかつ極めて均一な色調を有する背面青色鏡が初めて提供された。
【0009】
請求項4記載の本発明の実施態様は、得ようと努められる、昼間の幻惑作用の緩和と夜間の幻惑作用の緩和との歩み寄りに関して有利である。
【0010】
請求項5から7記載の本発明の有利な実施態様により、所望の反射率及び所望の青色の色付与が特に良好に達成される。
【0011】
請求項8記載のわずかな湾曲により、防眩鏡面板は特に自動車のバックミラーに好適である。
【0012】
ガラスは、鏡面板の個々の層の基板又は支持体として −請求項9− 特に好適であり、それというのも、ガラスは卓越した光学的及び機械的特性を有するためである。しかしながら、透明なプラスチックを基板として使用することもできる。
【0013】
請求項11記載の方法は、本発明による鏡面板の製造の有利な可能性を示す。
【0014】
他の従属請求項は、本発明の他の有利な実施態様に関する。
【0015】
本発明の更なる詳細、特徴及び利点は、以下の、図に基づく有利な実施態様の記載から明らかである。
【0016】
図1は、本発明による鏡面板の層構造の概略断面図を示し;かつ
図2は、波長の関数としての、本発明による鏡面板の反射率のグラフを示す。
【0017】
図1は、本発明による鏡面板1の例示的な実施態様の層構造を示す。ガラスからなる基板又は支持体2上に、酸化ニオブ、より厳密には五酸化ニオブNb25からなる第一の層4が施与されている。酸化ニオブ層4上に、窒化ケイ素Si34からなる第二の層6が施与されている。最終的に、窒化ケイ素層6上には、クロムからなる第三の層8が鏡面層として施与されている。鏡面層8上には、クロムからなる鏡面層8を機械的損傷から保護するために、保護塗料10が施与されている。保護塗料10は耐腐食性の保持のためには必ずしも必要ではない。参照符号12は、鏡面板1の観察者を示す。
【0018】
酸化ニオブ層4は、38nm±10nmの厚さを有し、窒化ケイ素層6は49nm±20nmの厚さを有し、かつ、クロムからなる鏡面層8は50nm±10nmの厚さを有する。個々の層4、6及び8の厚さは、40%を上回る所望の反射率 −自動車における使用のための条件− がもたらされ、かつ同時に、昼間及び夜間における十分な幻惑の解放が保証されるように選択されている。
【0019】
層4、6及び8の施与はスパッタリングにより行われる。このために、Leybold Optics社製のインラインスパッタリング装置が使用される。前記装置において、基板2及び個々のターゲットは、種々の層に対して垂直に並んで配置されている。種々のターゲットが連続して定位置に配置されているのに対して、基板はターゲットに沿って直線的に移動される。酸化ニオブ層4のために、酸化ニオブからなるターゲットが使用され、かつクロムからなる鏡面層8のために、クロムからなるターゲットが使用される。窒化ケイ素層6のために、純粋なケイ素からなるターゲットが使用される。ケイ素は、局所的に窒素を含有する雰囲気中で、以下の反応式
3Si+2N2→Si34
に従って反応して窒化ケイ素に変換され、その後、酸化ニオブ層4上に堆積する。
【0020】
図2は、波長の関数としての、図1による鏡面板の反射率のグラフを示す。曲線Aは、鏡に入射した光の波長(nm)の関数としての、鏡の反射率(%)を示す。前記のスペクトル反射率は、400nm〜700nmの範囲内で、最大63%と最小48%との間で変動する。曲線Bは、標準反射板のスペクトル反射を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による鏡面板の層構造の概略断面図を示す図。
【図2】波長の関数としての、本発明による鏡面板の反射率のグラフを示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 鏡面板、 2 ガラス基板、 4 酸化ニオブからなる第一の層、 6 窒化ケイ素からなる第二の層、 8 クロムからなる第三の層、鏡面層、 10 保護塗料、 12 観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車のバックミラー用の防眩鏡面板において、
鏡面板(1)の前面を形成する前面と背面とを有する透明な基板(2)、
基板(2)の背面上に施与された、酸化ニオブからなる第一の層(4)
第一の層(4)上に施与された、窒化ケイ素からなる第二の層(6)、及び
第二の層(6)上に施与された、クロムからなる第三の層(8)ないし鏡面層(8)
を有することを特徴とする防眩鏡面板。
【請求項2】
第一、第二及び/又は第三の層(4、6、8)が、スパッタリングされた層である、請求項1記載の防眩鏡面板。
【請求項3】
第一及び第二の層(4、6)の厚さが、単波長可視スペクトル領域内での鏡面板(1)の反射率が長波長可視スペクトル領域内よりも大きくなるように選択されている、請求項1又は2記載の防眩鏡面板。
【請求項4】
第一、第二及び第三の層(4、6、8)の層厚が、鏡面板(1)の全反射率が43%〜53%、有利に48%〜52%、有利に49%〜51%の範囲内となるように選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項5】
酸化ニオブからなる第一の層(4)の厚さが38nm±10nmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項6】
窒化ケイ素からなる第二の層(6)の厚さが49nm±20nmである、請求項1から5までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項7】
クロムからなる鏡面層(8)の厚さが50nm±10nmである、請求項1から6までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項8】
基板(2)がわずかに湾曲している、請求項1から7までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項9】
基板(2)がガラスからなる、請求項1から8までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項10】
クロムからなる鏡面層(8)上に、保護塗料からなる第四の層(10)が施与されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の防眩鏡面板。
【請求項11】
以下の方法工程:
− 基板(2)をインラインスパッタリング装置で準備する工程、
− 酸化ニオブからなる第一の層(4)を、基板(2)の背面上に酸化ニオブターゲットからスパッタリングする工程、
− 窒化ケイ素からなる第二の層(6)を、第一の層(4)上にケイ素ターゲットから窒素の添加下にスパッタリングする工程、及び
− クロムからなる鏡面層(8)を、第二の層(6)上にクロムターゲットからスパッタリングする工程
を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の防眩鏡面板の製造法。
【請求項12】
保護塗料からなる第四の層(10)を鏡面層(8)上に施与する方法工程を特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
基板(2)を定置ターゲットに沿って導く、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか1項記載の鏡面板(1)を有する自動車用の防眩バックミラー。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−506788(P2010−506788A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532785(P2009−532785)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061037
【国際公開番号】WO2008/046830
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509111250)メクラ ラング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】Mekra Lang GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Schuckertstr. 8−20, D−90765 Fuerth, Germany
【出願人】(309032935)ライボルト オプティクス ドレスデン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】