説明

防護柵用支柱

【課題】各部の寸法設定が比較的容易で、容易に製造することが可能な防護柵用支柱を提供することを課題とする。
【解決手段】車道脇に構築された基礎Kに固定される台座21と、この台座21に立設された支柱本体22とを有する防護柵用支柱2であって、支柱本体22は、車道に面する前面フランジ22aと、この前面フランジ22aの後方に配置された後面フランジ22bと、前面フランジ22aと後面フランジ22bとを繋ぐウェブ22cとを備えており、後面フランジ22bに支柱本体22を局部座屈させるための湾曲凹部を有さず、後面フランジ22bの横倒れ座屈強度がウェブ22cの局部座屈による座屈強度よりも小さく、前面フランジ22aに車道側から衝突荷重が作用したときに、後面フランジ22bに横倒れ座屈が発生することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道に沿って設置される防護柵用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の防護柵は、車道からの車両の転落を防止するものであり、所定間隔で立設した複数の支柱(以下、「防護柵用支柱」という。)間に横梁を掛け渡した構造を備えている。
【0003】
防護柵の剛性・強度は、車両の転落防止という観点からすると、大きい方がよいが、必要以上に大きくすると、衝突時の衝撃により運転手や添乗員に大きなダメージを与えるおそれがあり、また、防護柵に接触又は衝突した車両が当該防護柵で跳ね返されて車道側でスピンし、二次災害を引き起こすおそれもある。
【0004】
このため、従来の防護柵は、車両が接触又は衝突してある程度以上の外力が加わったときに先ず横梁の圧潰および曲げ変形によって衝突(衝撃)エネルギーが吸収され、次いで防護柵用支柱の弾性変形および座屈等の塑性変形によって衝突エネルギーが吸収されるように構成されており、これにより運転手、添乗員の被害が最小限に抑えられるとともに、車両の車道側への跳ね返えりが防止されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の防護柵用支柱100は、図8の(a)に示すように、車道脇に構築された基礎に固定される台座101と、この台座101に立設された支柱本体102とを備えて構成されており、衝突時に支柱本体102が後側へ傾倒することで、衝突エネルギーを吸収する。支柱本体102は、図8の(b)に示すように、車道に面する前面フランジ102aと、この前面フランジ102aと略同一の幅寸法の後面フランジ102bと、前面フランジ102aと後面フランジ102bとを繋ぐウェブ102cとを備えていて、水平断面がH字状を呈している。なお、後面フランジ102bには、支柱本体102の傾倒の起点となる湾曲凹部103が形成されている。
【0006】
特許文献1においては、後面フランジ102bの湾曲凹部103に荷重が集中するため、支柱本体102の傾倒が進行すると、後面フランジ102bの湾曲凹部103が曲げ変形をするとともにウェブ102cが面外方向へ局部座屈し、さらに前面フランジ102aが曲げ変形をする。つまり、特許文献1の防護柵用支柱100においては、支柱本体102が曲げ変形をして後方に傾倒することで衝突エネルギーを吸収し、さらに、所定の衝突荷重でウェブ102cが局部座屈することで、前面フランジ102aの破断を防止するとともに、車両に加わる衝撃力の増大を防止している。
【特許文献1】特開平11−336034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の防護柵用支柱100は、前面フランジ102aおよび後面フランジ102bの曲げ変形による衝突エネルギーの吸収が適正に行われるようにウェブ102cの局部座屈強度の大きさを設定する必要があるので、設計・製作が難しいという問題がある。すなわち、特許文献1の防護柵用支柱100では、支柱本体102の傾倒が進行したときにウェブ102cが面外方向へ局部座屈するように後面フランジ102bやウェブ102cの寸法等を設定しつつ、支柱本体102の傾倒の起点となる湾曲凹部103の位置や曲率を調整する必要があるので、各部の寸法設定が難しく、さらには、設計で想定した変形モードを実現するために高い製作精度が要求される。
【0008】
このような観点から、本発明は、各部の寸法設定が比較的容易で、容易に製造することが可能な防護柵用支柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために創案された本発明は、車道脇に構築された基礎に固定される台座と、当該台座に立設された支柱本体とを有する防護柵用支柱であって、前記支柱本体は、前記車道に面する前面フランジと、前記前面フランジの後方に配置された後面フランジと、前記前面フランジと前記後面フランジとを繋ぐウェブとを備えており、前記後面フランジに前記支柱本体を局部座屈させるための湾曲凹部を有さず、前記後面フランジの横倒れ座屈強度が前記ウェブの局部座屈による座屈強度よりも小さく、前記前面フランジに前記車道側から衝突荷重が作用したときに、前記後面フランジに横倒れ座屈が発生することを特徴とする。
【0010】
この防護柵用支柱は、支柱本体が後方に傾倒することで衝突エネルギーを吸収し、さらに、所定の衝突荷重で後面フランジに横倒れ座屈が発生することで、前面フランジの破断を防止するとともに、車両に加わる衝撃力の増大を防止する。この防護柵用支柱によれば、後面フランジに湾曲凹部を形成する必要がないので、前面フランジ、後面フランジおよびウェブの幅寸法や厚さ寸法の設定が容易になる。また、この防護柵用支柱によれば、後面フランジに湾曲凹部を形成しない分だけ支柱本体の形状が単純になるので、製造も容易になる。
【0011】
本発明においては、前記後面フランジを、前記前面フランジよりも幅狭に形成するとよい。このようにすると、前面フランジに衝突荷重が作用したときに、より確実に、後面フランジに横倒れ座屈を発生させることが可能となる。また、後面フランジが前面フランジに比べて細く、前側(車道側)斜め方向からの投影面積が小さくなることから、車道側から観たときに、防護柵用支柱の後方に広がる風景を遮り難くなる。すなわち、本発明に係る防護柵用支柱は、車道側からの透視性が優れており、景観に調和し易い。
【0012】
本発明においては、前記後面フランジ単体の前記前面フランジに直角な図心軸回りにおける断面二次モーメントを、前記支柱本体の前記前面フランジに平行な図心軸回りにおける断面二次モーメントの0.05%〜5%にすることが望ましい。このようにすると、後面フランジの横倒れ座屈が、より一層確実に発生するようになる。
【0013】
本発明に係る防護柵用支柱は、前記後面フランジの後面と前記台座の上面とを繋ぐ補強リブを備えるものであってもよい。このようにすると、後面フランジが前後方向に座屈し難くなるので、後面フランジの左右方向への横倒れ座屈をより一層確実に実現することが可能となる。また、台座と支柱本体との境界部への荷重集中を防止することが可能となるので、当該境界部での破断などを防止することが可能となる。その一方で、支柱本体の上下方向の中間部にて座屈が確実に起こるので、衝突エネルギーを有効に吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る防護柵用支柱は、各部の寸法設定が比較的容易であり、容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る防護柵用支柱2を備えた車両用防護柵Gを示す斜視図である。この図に示すように、車両用防護柵Gは、車道Rに沿って設置される三条の横架材1,1,1と、この横架材1,1,…を支持する複数の防護柵用支柱2,2,…と、を備えている。なお、各部材において、車道Rに臨む面を「前面」とし、その反対側の面を「後面」とする。
【0016】
三条の横架材1,1,1は、互いに平行に配置されている。なお、本実施形態においては、三条の横架材1,1,1を備える車両用防護柵Gを例示するが、横架材1の条数を限定する趣旨ではない。
【0017】
横架材1は、長手方向に連設された複数の中空梁材11,11,…と、隣り合う中空梁材11,11の境界部分の内部に配置された連結部材12とを備えて構成されている。
【0018】
中空梁材11は、円筒状を呈する形材であり、隣り合う防護柵用支柱2,2の間隔と同じ長さに切断されている。連結部材12は、隣り合う中空梁材11,11の境界部分を跨ぐように配置される。なお、本実施形態においては、中空梁材11の外形が円形である場合を例示したが(図3の(b)参照)、これに限定されることはなく、例えば、楕円形、砲弾形、矩形などであっても差し支えない。
【0019】
防護柵用支柱2は、図2に示すように、車道R脇に構築された鉄筋コンクリート製の基礎Kに固定される台座21と、この台座21に立設された支柱本体22と、台座21と支柱本体22とに溶接により接合される補強リブ23と、を有する。なお、基礎Kには、複数のナットN1が埋設されている。
【0020】
台座21は、上面視矩形を呈する鋼板からなり、基礎Kに埋設されたナットN1に対応する位置に挿通孔21aが形成されている。挿通孔21aには、ナットN1に螺合するボルトB1が挿通される。なお、台座21は、矩形を呈するものに限定されることはなく、図示は省略するが、多角形や円形等を呈するものであっても差し支えない。また、一般的なコンクリートに埋め込まれたアンカーや鋼桁のスタッドボルトに台座21を固定しても勿論差し支えない。
【0021】
支柱本体22は、車道Rに面する前面フランジ22aと、この前面フランジ22aの後方に配置された後面フランジ22bと、前面フランジ22aと後面フランジ22bとを繋ぐウェブ22cとを備えており、さらに本実施形態においては、前面フランジ22aの上端から後面フランジ22bの上端にかけて配置された上段取付部材22dと、前面フランジ22aの中央部の前面に配置された中段取付部材22eおよび下段取付部材22fと、を備えている。
【0022】
前面フランジ22aは、鋼板からなり、図3の(a)に示すように、正面視略台形を呈していて、上に向かうにしたがって幅が狭くなっている。なお、前面フランジ22aの高さ方向の中央部には、左右一対のボルト挿通孔221,221が上下二段に形成されている。ボルト挿通孔221には、中段の横架材1を固定するための固定ボルトB3(図3の(b)参照)又は下段の横架材1を固定するための固定ボルトB4(図3の(b)参照)が挿通される。前面フランジ22aは、図3の(b)に示すように、台座21の前端縁から起立していて、溶接により台座21に固着されている。なお、前面フランジ22aの肉厚は、下端から上端まで一定である。また、図3の(c)および(d)に示すように、前面フランジ22aの下端部における幅寸法は、台座21の前端における幅寸法と等しくなっている。
【0023】
後面フランジ22bは、鋼板からなり、図3の(c)に示すように、帯板状を呈している。後面フランジ22bは、前面フランジ22aよりも幅狭に形成されている。後面フランジ22bの幅寸法は、前面フランジ22aの下端部の幅寸法の1/2以下が望ましく、より好適には、1/3以下が望ましい。後面フランジ22bの幅寸法および肉厚は、前面フランジ22aに直角な図心軸b(図4の(b)参照)回りにおける後面フランジ22b単体の断面二次モーメントが前面フランジ22aに平行な図心軸a(図4の(b)参照)回りにおける支柱本体22全体の断面二次モーメントの0.05%〜5%になるように設定するとよいが、より望ましくは、0.7%〜1.0%になるように設定するとよい。なお、本実施形態では、後面フランジ22aの幅寸法および肉厚は、下端から上端まで一定である。また、本実施形態では、後面フランジ22aの断面形状を矩形としたが、これに限定されることはなく、矩形以外の多角形を呈するものであってもよく、円形や楕円形を呈するものであっても差し支えない。本実施形態では、後面フランジ22bは、図3の(b)に示すように、その全体が前方に傾斜している。後面フランジ22bは、本実施形態では、ウェブ22cの下端部から上端部に亘って配置されていて、溶接によりウェブ22cの後端縁に固着されている。また、図3の(d)に示すように、後面フランジ22bの中心C2は、前面フランジ22aの中心C1を含む鉛直面V上に位置している。
【0024】
ウェブ22cは、鋼板からなり、図3の(b)に示すように、台座21の上面から起立していて、溶接により台座21に固着されている。ウェブ22cは、図3の(d)に示すように、前面フランジ22aの中心C1と後面フランジ22bの中心C2とを含む鉛直面V上に位置していて、溶接により前面フランジ22aの後面と後面フランジ22bの前面とに固着されている。
【0025】
支柱本体22は、最大支持力を超えたときに後面フランジ22bが左右方向(横架材1の長手方向)に座屈(横倒れ座屈)を始めるように設計する。支柱本体22に車道R側から衝突荷重P(図4の(a)参照)が作用すると、図4の(b)に示すように、支柱本体22の図心軸aよりも前側(前面フランジ22a側)が引張となり、後側(後面フランジ22b側)が圧縮となるので、後面フランジ22bの左右方向への横倒れ座屈強度を、ウェブ22cの局部座屈による座屈強度よりも小さくしておけば、後面フランジ22bの横倒れ座屈強度が支柱本体22の最大支持力になる。なお、支柱本体22の奥行寸法Wは、設計衝突荷重を模擬した設計水平荷重を支柱本体22の上端部に静的に作用させた際に発生する曲げモーメントに絶え得る曲げ強度となるように設定する。
【0026】
図2に示す上段取付部材22dは、上段の横架材1(図1参照)を保持する部材であり、本実施形態では、前面フランジ22aおよびウェブ22cに溶接により固着されている。上段取付部材22dの車道R側の面には、上段の横架材1の外周面に沿う円筒面状の取付座が形成されている。上段取付部材22dには、左右二箇所にボルト挿通孔222,222が形成されている。ボルト挿通孔222には、上段の横架材1を固定するための固定ボルトB2が挿通される。
【0027】
中段取付部材22eは、中段の横架材1(図1参照)と前面フランジ22aとの間に介設されるものであり、その車道R側の面には、中段の横架材1の外周面に沿う円筒面状の取付座が形成されている。中段取付部材22eには、左右二箇所にボルト挿通孔223,223が形成されている。ボルト挿通孔223には、中段の横架材1を固定するための固定ボルトB3が挿通される。
【0028】
下段取付部材22fは、下段の横架材1と前面フランジ22aとの間に介設されるものであるが、その主要な構成は中段取付部材22eと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0029】
補強リブ23は、図3の(b)に示すように、側面視三角形状を呈する板材からなり、台座21の上面と支柱本体22の後面フランジ22bの後面とに溶接により固着されている。補強リブ23は、図3の(c)に示すように、前面フランジ22aの中心C1と後面フランジ22bの中心C2とを含む鉛直面V上に位置している。すなわち、補強リブ23は、ウェブ22cを含む鉛直面上に配置されている。なお、補強リブ23の形状は、図示のものに限定されることはなく、例えば、矩形、台形、多角形、扇形を呈するものであっても差し支えない。
【0030】
このように構成された防護柵用支柱2を基礎Kの上面に設置するには、図2に示すように、台座21の四隅にある挿通孔21a,21a,…が基礎Kに埋設したナットN1、N1,…の直上に位置するように台座21を基礎Kの上面に載置し、その後、台座21の挿通孔21aにボルトB1を挿通し、その軸部をナットN1に螺合すればよい。
【0031】
また、図3の(b)に示すように、防護柵用支柱2に上段の横架材1を固定するには、中空梁材11,11の境界部分(すなわち、連結部材12が配置されている部分)を支柱本体22の上段取付部材22dに当接させ、その後、上段取付部材22dのボルト挿通孔222,222(図2参照)と中空梁材11のボルト挿通孔(図示略)とにボルトB2の軸部を挿通するとともに、その先端部を連結部材12に形成された雌ねじ孔(図示略)に螺合すればよい。
【0032】
また、防護柵用支柱2に中段の横架材1を固定するには、中空梁材11,11の境界部分(すなわち、連結部材12が配置されている部分)を支柱本体22の前側に位置させるとともに、中空梁材11と支柱本体22との間に中段取付部材22eを介設し、その後、支柱本体22のボルト挿通孔221と、中段取付部材22eのボルト挿通孔223(図2参照)と中空梁材11のボルト挿通孔(図示略)とにボルトB3の軸部を挿通するとともに、その先端部を連結部材12の雌ねじ孔(図示略)に螺合すればよい。防護柵用支柱2に下段の横架材1を固定する場合も同様である。
【0033】
以上説明した防護柵用支柱2は、図5の(a)に示すように、支柱本体22が後方に傾倒することで衝突エネルギーを吸収し、さらに、図5の(b)に示すように、所定の衝突荷重で後面フランジ22bに横倒れ座屈が発生することで、前面フランジ22aの破断を防止するとともに、車両に加わる衝撃力の増大を防止する。この防護柵用支柱2によれば、後面フランジ22cに湾曲凹部(図7の(a)に示す湾曲凹部103参照)を形成する必要がないので、前面フランジ22a、後面フランジ22bおよびウェブ22cの幅寸法や厚さ寸法の設定が容易になる。また、この防護柵用支柱2によれば、後面フランジ22cに湾曲凹部を形成しない分だけ支柱本体22の形状が単純になるので、製造も容易になる。
【0034】
本実施形態においては、後面フランジ22bを、前面フランジ22aよりも幅狭に形成したので、前面フランジ22aに衝突荷重が作用したときに、より確実に、後面フランジ22bに横倒れ座屈を発生させることが可能となる。また、後面フランジ22bが前面フランジ22aに比べて細く、前側斜め方向からの投影面積が小さくなることから、車道R側から斜め前方を観たときに、防護柵用支柱2の後側に広がる風景を遮り難くなる。すなわち、防護柵用支柱2は、車道R側からの透視性が優れており、景観に調和し易い。
【0035】
また、本実施形態においては、後面フランジ22b単体の図心軸b回りの断面二次モーメントを、支柱本体22の図心軸a回りの断面二次モーメントの0.05%〜5%としたので、後面フランジ22bの横倒れ座屈が、より一層確実に発生するようになる。
【0036】
さらに本実施形態に係る防護柵用支柱2は、後面フランジ22bの後面と台座21の上面とを繋ぐ補強リブ23を備えているので、後面フランジ22bが前後方向(弱軸方向)に座屈し難くい。したがって、後面フランジ22bの左右方向への横倒れ座屈をより一層確実に実現することが可能となる。また、台座21と支柱本体22との境界部への荷重集中を防止することが可能となるので、当該境界部での破断などを防止することが可能となる。その一方で、支柱本体22の上下方向の中間部にて座屈が確実に起こるので、衝突エネルギーを有効に吸収することが可能となる。
【0037】
本実施形態では、鋼板を溶接により接合することで防護柵用支柱2を構成したが、これに限定されることはない。車両防護柵としてステンレス鋼板あるいはアルミニウム合金板などを溶接により接合して防護柵用支柱2を構成しても差し支えない。また、防護柵用支柱2を鋳鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの鋳造品とし、台座21、支柱本体22、補強リブ23などを一体に成形してもよい。なお、防護柵用支柱2を鋳造品とした場合には、後面フランジ22bの幅寸法および肉厚は、図心軸b(図4の(b)参照)回りにおける後面フランジ22b単体の断面二次モーメントが図心軸a回りにおける支柱本体22の断面二次モーメントの0.08%〜0.2%になるように設定するとよい。
【0038】
なお、本実施形態においては、後面フランジ22bの幅寸法を下端から上端まで不変としたが、これに限定されることはなく、図6に示す後面フランジ22b’の幅寸法のように、下に向かうに従って漸減させてもよいし、図示は省略するが、下に向かうに従って漸増させてもよい。また、図示は省略するが、後面フランジの高さ方向の中間部(横倒れ座屈をさせたい部分)における幅寸法を減少させてもよい。すなわち、後面フランジの高さ方向の中間部を括れさせてもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、後面フランジ22bの肉厚を下端から上端まで不変としたが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、下に向かうに従って漸減させてもよいし、下に向かうに従って漸増させてもよい。また、図示は省略するが、後面フランジの高さ方向の中間部(横倒れ座屈をさせたい部分)における肉厚を減少させてもよい。
【実施例】
【0040】
前記した実施形態に係る防護柵用支柱2について、支柱本体22(溶接により製造したもの)の上端部に衝突荷重を模擬した水平荷重を静的に作用させたときの荷重と変位量との関係を図7に示す。
防護柵用支柱2を構成する各要素(台座21、支柱本体22および補強リブ23)の材質は、SS400である。支柱本体22の高さは750mmであり、前面フランジ22aの下端における幅寸法は140mm、上端における幅寸法は93mm、肉厚は9mmである。また、後面フランジ22bの幅寸法は38mm、肉厚は9mmであり、ウェブ22cの肉厚は6mmである。また、補強リブ23の肉厚は12mmである。
【0041】
図7に示すように、31.6kNで後面フランジ22bに横倒れ座屈が発生したが、支柱本体22の上端部の変位量が30cmに達するまで急激な荷重の落ち込みはなかった。支柱本体22の上端部の変位が30cmに達して時点での荷重が25kN程度であることから、防護柵用支柱2が車両の接触・衝突時の衝突荷重に十分耐え得る特性を備えていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る防護柵用支柱を備える車両用防護柵の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る防護柵用支柱の分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る防護柵用支柱を示す図であって、(a)は前面図、(b)は側面図、(c)は後面図、(d)は(a)のX1−X1線断面図である。
【図4】衝突荷重を模擬した水平荷重を作用させた際に後面フランジに発生する圧縮力を説明するための側面図、(b)は支柱本体の設計方法を説明するための断面図である。
【図5】(a)および(b)は、後面フランジに横倒れ座屈が発生した状況を示す斜視図である。
【図6】本実施形態に係る防護柵用支柱の変形例を示す後面図である。
【図7】防護柵用支柱の上端部に衝突荷重を模擬した水平荷重を静的に作用させたときの荷重と変位量との関係を示すグラフである。
【図8】従来の防護柵用支柱を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のX2−X2線断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 横架材
2 防護柵用支柱
21 台座
22 支柱本体
22a 前面フランジ
22b 後面フランジ
22c ウェブ
23 補強リブ
a,b 図心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道脇に構築された基礎に固定される台座と、
当該台座に立設された支柱本体とを有する防護柵用支柱であって、
前記支柱本体は、前記車道に面する前面フランジと、前記前面フランジの後方に配置された後面フランジと、前記前面フランジと前記後面フランジとを繋ぐウェブとを備えており、前記後面フランジに前記支柱本体を局部座屈させるための湾曲凹部を有さず、
前記後面フランジの横倒れ座屈強度が前記ウェブの局部座屈による座屈強度よりも小さく、前記前面フランジに前記車道側から衝突荷重が作用したときに、前記後面フランジに横倒れ座屈が発生することを特徴とする防護柵用支柱。
【請求項2】
前記後面フランジが、前記前面フランジよりも幅狭に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項3】
前記後面フランジ単体の前記前面フランジに直角な図心軸回りにおける断面二次モーメントが、前記支柱本体の前記前面フランジに平行な図心軸回りにおける断面二次モーメントの0.05%〜5%の範囲にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防護柵用支柱。
【請求項4】
前記後面フランジの後面と前記台座の上面とを繋ぐ補強リブをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の防護柵用支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−270556(P2007−270556A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99003(P2006−99003)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年10月8日に全国高欄協会により発行された刊行物「鋼製・ダクタイル鋳鉄製橋梁用ビーム型防護柵 MODESTモデスト」にて発表
【出願人】(599150665)エフエムレーリング株式会社 (7)
【出願人】(399031171)大阪高級鋳造鉄工株式会社 (1)
【出願人】(591037694)川口金属工業株式会社 (36)
【出願人】(505075754)株式会社クリモトテクノス (8)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(500538715)株式会社住軽日軽エンジニアリング (58)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】