説明

防音構造物

【課題】工事の進行に伴う現場の移動に際しても、解体や再組立を簡単かつ短期間に行うとともに、遮音性を大きく向上させることができる防音構造物を提供すること。
【解決手段】内部の騒音を壁面に配設した防音パネル1により吸収するようにしたもので、複数のH形鋼2をフランジ間の凹溝3が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝3に嵌合するように防音パネル1を間隔をあけて2重に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音ハウス等の防音構造物に関し、特に、工事の進行に伴う現場の移動に際しても、解体や再組立を簡単かつ短期間に行うとともに、遮音性を大きく向上させることができる防音構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネル工事の防音対策として、シールド工での土砂搬出設備用の防音ハウス等を現場に設置することが行われ、これにより、工事騒音を低減して環境保全が図られている。
【0003】
このような防音ハウスは、現場で組み立てて設置するものであり、工事の進行に伴う現場の移動に際しては、解体や再組立を行わなければならず、面倒な作業を必要とする上、その解体・再組立のための工期を必要としている。
【0004】
また、この防音ハウスには、鉄骨の骨組みに遮音パネルを取付けた構造が一般に採用されているが、この遮音パネルは、高速道路や高速鉄道などで用いられるものであるため、トンネル工事の防音対策としては遮音性が不十分になる場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の防音構造物が有する問題点に鑑み、工事の進行に伴う現場の移動に際しても、解体や再組立を簡単かつ短期間に行うとともに、遮音性を大きく向上させることができる防音構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の防音構造物は、内部の騒音を壁面に配設した防音パネルにより吸収するようにした防音構造物において、複数のH形鋼をフランジ間の凹溝が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝に嵌合するように防音パネルを間隔をあけて2重に配設したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、H形鋼の凹溝を幅方向に仕切り、防音パネルを該仕切られた凹溝に嵌挿することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防音構造物によれば、内部の騒音を壁面に配設した防音パネルにより吸収するようにした防音構造物において、複数のH形鋼をフランジ間の凹溝が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝に嵌合するように防音パネルを間隔をあけて2重に配設することから、H形鋼により防音構造物の骨組みを組み立てるとともに、組み立てたH形鋼のフランジ間の凹溝に防音パネルを嵌合することにより、防音構造物を設置することができ、これにより、工事の進行に伴う現場の移動に際しても、防音構造物の解体や再組立を簡単かつ短期間に行うことができる。
そして、H形鋼の凹溝に防音パネルを間隔をあけて2重に配設することから、防音パネル間に形成される空間部と相俟って遮音性を大きく向上させ、大きな騒音が発生するトンネル工事をはじめとする工事現場等における防音を十分に行うことができる。
【0009】
また、H形鋼の凹溝を幅方向に仕切り、防音パネルを該仕切られた凹溝に嵌挿することにより、防音パネルの組立性を向上させるとともに、位置的な精度を高めて遮音性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の防音構造物の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図2に、本発明の防音構造物の一実施例を示す。
この防音構造物は、内部の騒音を壁面4に配設した防音パネル1により吸収するようにしたもので、複数のH形鋼2をフランジ間の凹溝3が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝3に嵌合するように防音パネル1を間隔をあけて2重に配設している。
【0012】
防音構造物は、1対の側壁4aと、該側壁4aの上部に架設される天井壁4bと、側壁4aの前後に立設される前壁4c及び後壁4dとを備えている。
これら側壁4a、天井壁4b、前壁4c及び後壁4dは、それぞれ、複数のH形鋼2をフランジ間の凹溝3が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝3に嵌合するように防音パネル1を間隔をあけて2重に配設した構造を有している。
なお、前壁4c及び後壁4dには、車両用扉41が設置されるとともに、後壁4dには別に人用扉42が設置されている。
【0013】
防音パネル1は、高速道路などに設置される遮音壁に用いられるもので、鋼板、アルミニウム板等の金属板や樹脂部材等からなる中空断面を有する矩形状のケース11と、ケース11の吸音側の面に切り起こされた複数のルーバー12と、ケース11内に収容された吸音材13とを有している。
ルーバー12は、ケース11内に音を導く開口であり、このルーバー12から入る音は、ケース11内に収容されたグラスウール等の吸音材13によって吸収される。
防音パネル1は、その幅方向に隣接するもの同士が嵌合する端部形状を備え、H形鋼2の凹溝3には、これらの防音パネル1がその幅方向に積層するように多数配設される。
【0014】
H形鋼2は、各壁面4において、防音パネル1の幅で配設した複数のH形鋼2を、外枠となるH形鋼2又はその他の鋼材によりボルト等で連結し一体化されている。
H形鋼2の凹溝3は、仕切部材5によって溝の幅方向に仕切られており、内外2重となる防音パネル1は、この仕切られた凹溝3にそれぞれ吸音側が内向きになるように嵌挿されている。
図3に、本実施例のように、防音パネル1を間隔をあけて2重に配設したものと、比較例として、防音パネル1を1重に配設したものとの音響透過損失の比較を示す。
図中、A1は防音パネル1を180mmの間隔をあけて2重に配設した本実施例の防音構造物、A2は防音パネル1を30mmの間隔をあけて2重に配設した本実施例の防音構造物、Bは防音パネル1を1重に配設した比較例の防音構造物をそれぞれ示している。
【0015】
かくして、本実施例の防音構造物は、内部の騒音を壁面に配設した防音パネル1により吸収するようにした防音構造物において、複数のH形鋼2をフランジ間の凹溝3が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝3に嵌合するように防音パネル1を間隔をあけて2重に配設することから、H形鋼2により防音構造物の骨組みを組み立てるとともに、組み立てたH形鋼2のフランジ間の凹溝3に防音パネル1を嵌合することにより、防音構造物を設置することができ、これにより、工事の進行に伴う現場の移動に際しても、防音構造物の解体や再組立を簡単かつ短期間に行うことができる。
そして、H形鋼2の凹溝3に防音パネル1を間隔をあけて2重に配設することから、防音パネル1間に形成される空間部と相俟って遮音性を大きく向上させ、大きな騒音が発生するトンネル工事をはじめとする工事現場等における防音を十分に行うことができる。
【0016】
また、H形鋼2の凹溝3を幅方向に仕切り、防音パネル1を該仕切られた凹溝3に嵌挿することにより、防音パネル1の組立性を向上させるとともに、位置的な精度を高めて遮音性をさらに向上させることができる。
【0017】
以上、本発明の防音構造物について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上、本発明の防音構造物は、工事の進行に伴う現場の移動に際しても、解体や再組立を簡単かつ短期間に行うとともに、遮音性を大きく向上させるという特性を有していることから、例えば、トンネル工事用の防音ハウスの用途に好適に用いることができるほか、大きな騒音が発生する工事現場等における防音の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の防音構造物の一実施例を示し、(a)はその側面図、(b)は同平面図、(c)は同背面図、(d)は同正面図である。
【図2】同防音構造物を示し、(a)はH形鋼と防音パネルを示す横断面図、(b)は同縦断面図、(c)は防音パネルの斜視図である。
【図3】同防音構造物と比較例の音響透過損失を示すグラフである。
【符号の説明】
【0020】
1 防音パネル
11 ケース
12 ルーバー
13 吸音材
2 H形鋼
3 凹溝
4 壁面
5 仕切部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の騒音を壁面に配設した防音パネルにより吸収するようにした防音構造物において、複数のH形鋼をフランジ間の凹溝が対向するように所定間隔で配設するとともに、該凹溝に嵌合するように防音パネルを間隔をあけて2重に配設したことを特徴とする防音構造物。
【請求項2】
H形鋼の凹溝を幅方向に仕切り、防音パネルを該仕切られた凹溝に嵌挿したことを特徴とする請求項1記載の防音構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−208519(P2008−208519A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43257(P2007−43257)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(507060952)有限会社メガテック (1)
【Fターム(参考)】