説明

除染装置

【課題】装置性能に優れながら装置コスト面及び省エネ面や運転コスト面で有利な除染装置を提供する。
【解決手段】吸着ロータ式除湿装置1で除湿したキャリア空気CA中で過酸化水素水Whを蒸発させて過酸化水素蒸気Shを発生させる構成において、吸着域5の通過により得られるキャリア空気CAの昇温量Δtを吸着ロータ式除湿装置1に対する制御により調整することで、キャリア空気CAの管理対象温度tiを設定目標温度timに調整する昇温制御手段15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造室や乗合車両の車内など、滅菌・消毒が必要な室空間を除染(汚染除去)する除染装置に関する。
【0002】
具体的には、搬送用のキャリア空気を除湿する除湿手段と、この除湿手段により除湿したキャリア空気中で過酸化水素水を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段とを備え、この蒸気発生手段で発生させた過酸化水素蒸気をキャリア空気とともに除染ガス路を通じ除染対象室に供給して除染対象室を除染する除染装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の除染装置としては、特許文献1に見られるように、除湿手段により除湿したキャリア空気を加熱する電気ヒータなどの加熱手段を設け、この加熱手段で加熱した除湿キャリア空気に対し蒸気発生手段において過酸化水素水を空気とともに噴出することで、過酸化水素水を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させるようにした除染装置が提案されている。………(従来例1)
【0004】
つまり、この除染装置では、除湿手段及び加熱手段によるキャリア空気の低湿化及び高温化により、蒸気発生手段での過酸化水素水の蒸発を補助するとともに、その蒸発で発生させた過酸化水素蒸気が除染ガス路において除染対象室への送給過程で凝縮するのを防止するようにしている。
【0005】
また従来、特許文献2に見られるように、除湿手段として吸着ロータ式の除湿装置を装備するとともに、この吸着ロータ式除湿装置の前後にキャリア空気を冷却するプレクーラとアフタークーラを設け、蒸気発生手段では、吸着ロータ式除湿装置での除湿に続きアフタークーラで冷却したキャリア空気に対し過酸化水素液を供給路から供給することで、過酸化水素液を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させるようにした除染装置も提案されている………(従来例2)
【0006】
つまり、この除染装置では、プレクーラ及びアフタークーラでの空気冷却により吸着ロータ式除湿装置の除湿効率を高めて、吸着ロータ式除湿装置によるキャリア空気の効率的な低湿化により、蒸気発生手段での過酸化水素液の蒸発を補助するとともに、その蒸発で発生させた過酸化水素蒸気の除染ガス路での凝縮を防止するようにしている。
【0007】
なお、過酸化水素蒸気を用いた除染には、キャリア空気とともに除染対象室に供給した過酸化水素蒸気を室内で凝縮させずに気相状態に保つ乾式除染と、キャリア空気とともに除染対象室の供給した過酸化水素蒸気を室内で凝縮させる湿式除染とがあるが、いずれの方式にしても、除染ガス路を形成するダクトや除染ガス路に介装したファンなどの腐食劣化を防止するために、また、良好かつ安定的な除染運転を行なうために、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮は防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−339829号公報
【特許文献2】特開2006−288647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来例1及び従来例2の除染装置はいずれも、過酸化水素水を加熱体に滴下させて蒸発させることで過酸化水素蒸気を発生させる除染装置に比べ、過酸化水素の熱分解に原因する過酸化水素水の浪費を回避することができる利点がある。
【0010】
しかし、従来例1の除染装置では、除湿後のキャリア空気を加熱する電気ヒータなどの専用の加熱手段を要するため、装置が大型化するとともに装置コスト及び運転コストが嵩む問題があった。
【0011】
また、この大型化に加え、除湿手段に対する制御系と加熱手段に対する制御系とが必要になることなどで、さらには、加熱手段として電気ヒータなどを用いた場合、火災対策なども必要になることで装置が複雑になり、そのことからも装置コストが嵩む問題があった。
【0012】
一方、従来例2の除染装置では、除湿後のキャリア空気をアフタークーラにより冷却することが吸着ロータ式除湿装置で除湿したキャリア空気の保有温熱を外部に廃棄することになってエネルギ浪費となり、このため省エネルギ化の面や運転コスト面で不利になる問題があった。
【0013】
この実情に鑑み、本発明の主たるの課題は、過酸化水素水から過酸化水素蒸気を発生させるのに合理的な発生形態を採ることで上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
除染装置に係る本発明の第1特徴構成は、
搬送用のキャリア空気を除湿する除湿手段と、この除湿手段により除湿したキャリア空気中で過酸化水素水を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段とを備え、
この蒸気発生手段で発生させた過酸化水素蒸気をキャリア空気とともに除染ガス路を通じ除染対象室に供給して除染対象室を除染する除染装置であって、
前記除湿手段として、吸着材を保持する通気性の吸着ロータを回転させて吸着ロータの各部を除湿対象キャリア空気の通風域である吸着域と高温再生気体の通風域である脱着域とに繰り返して交互に位置させる吸着ロータ式除湿装置を装備し、
前記蒸気発生手段の出口におけるキャリア空気の温度、又は、前記蒸気発生手段の入口におけるキャリア空気の温度を管理対象温度として、
前記吸着域の通過に伴い昇温するキャリア空気の昇温量を前記吸着ロータ式除湿装置に対する制御により調整することで、前記管理対象温度を設定目標温度に調整する昇温制御手段を設けてある点にある。
【0015】
つまり、吸着ロータ式除湿装置の吸着域を通過させて吸着材による水分吸着で除湿したキャリア空気は、その水分吸着に伴い発生する吸着熱で昇温するとともに、熱容量のある吸着ロータが回転することによる高温脱着域から吸着域への熱移動(換言すれば、吸着ロータを介した高温再生気体と除湿対象キャリア空気との熱交換)によっても昇温し、その昇温量は大きなものになる。
【0016】
また、吸着域の通過で得られるキャリア空気の除湿量と昇温量は、装置特性によって決まる一定の相関の下で吸着ロータ式除湿装置に対する制御により調整することができ、さらに、吸着ロータの熱容量の設定などによって初期設定的に調整することもできる。
【0017】
従って、この初期設定的な調整に加え、上記の如く吸着ロータ式除湿装置に対する制御により吸着域通過で得られるキャリア空気の昇温量を調整することで、管理対象温度(蒸気発生手段の出口又は入口におけるキャリア空気温度)を設定目標温度に調整することができる。
【0018】
そして、この調整において設定目標温度として適当な温度を設定しておけば、吸着ロータ式除湿装置の吸着域通過によるキャリア空気の除湿と昇温(即ち、低湿化と高温化)により、除湿後のキャリア空気の保有温熱を有効に利用する形態で、蒸気発生手段での過酸化水素水の蒸発を補助することができ、また、その蒸発で発生させた過酸化水素蒸気の除染ガス路での凝縮も防止することができる。
【0019】
即ち、上記構成によれば、このように吸着域の通過に伴うキャリア空気の昇温を過酸化水素水の蒸発補助と除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮防止に利用することで、除湿後のキャリア空気を加熱する電気ヒータなどの専用加熱手段を不要にする(ないし、装備するにしても小型化なもので済ませる)ことができ、これにより、前述した従来例1の除染装置に比べ装置を小型化及び簡素化することができて装置コストを安価にすることができるとともに、省エネルギ化の面や運転コスト面での有利にすることができる。
【0020】
また、吸着域通過で得られるキャリア空気の昇温量を調整するだけであって、除湿後のキャリア空気をアフタークーラなどにより冷却するものではないことから、アフタークーラなどによる除湿後キャリア空気の冷却で生じるエネルギ浪費も回避することができ、これにより、前述した従来例2の除染装置に比べても省エネルギ化の面及び運転コスト面で有利にすることができる。
【0021】
そしてまた、上記の如く基本的には吸着域通過に伴うキャリア空気の除湿と昇温により蒸気発生手段での過酸化水素水の蒸発を補助するから、従来例1や従来例2の除染装置と同様、過酸化水素水を加熱体に滴下させて蒸発させることで過酸化水素蒸気を発生させる除染装置に比べ、過酸化水素の熱分解に原因する過酸化水素水の浪費も回避することができるが、場合によっては、上記構成の実施において過酸化水素水を加熱体に滴下させて蒸発させる方式の蒸気発生手段を採用してもよい。
【0022】
なお、吸着域通過で得られるキャリア空気の除湿量と昇温量とには上記の如く一定の相関があることから、蒸気発生手段の出口又は入口におけるキャリア空気の温度を管理対象温度として、吸着域通過で得られるキャリア空気の昇温量の調整により管理対象温度を設定目標温度に調整することは、蒸気発生手段の出口又は入口におけるキャリア空気の温湿度を上記相関の下で目標温湿度に調整することに相当する。
【0023】
本発明の第2特徴構成は第1特徴構成の実施において、
前記昇温制御手段は、前記吸着ロータの回転速度の調整により前記昇温量を調整して前記管理対象温度を設定目標温度に調整する構成にしてある点にある。
【0024】
つまり、吸着ロータ式除湿装置に対する各種制御のうち、吸着域通過で得られるキャリア空気の昇温量の調整に用いることができる制御としては、吸着ロータの回転速度調整、脱着域に供給する高温再生気体の温度調整や風量調整、脱着域から排出される再生気体のうち脱着域に再循環させる循環再生気体の風量調整、あるいはまた、吸着域を通過した除湿キャリア空気のうち吸着域に再循環させる循環キャリア空気の風量調整など、種々の制御が考えられる。
【0025】
しかし、上記の如く吸着ロータの回転速度の調整により昇温量を調整するのであれば(図2参照)、吸着ロータ回転用のモータに対するインバータ制御などのごく簡単な制御でキャリア空気の昇温量を自在に調整することができ、この点で、装置の簡素化や装置コストの低減を一層促進することができる。
【0026】
本発明の第3特徴構成は第1又は第2特徴構成の実施において、
前記除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じるか否かを前記除染ガス路におけるキャリア空気の空気状態に基づき所定の判定モデルを用いて判定する判定手段を設けてある点にある。
【0027】
つまり、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮を検出するには、いわゆる凝縮センサを除染ガス路に装備することが考えられる。
【0028】
しかし、凝縮センサによる凝縮検出では、凝縮センサの装備箇所において実際に発生した凝縮しか検出することができず、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮を未然に防止するための手段としては不十分である。
【0029】
これに対し、上記構成によれば、除染ガス路におけるキャリア空気の空気状態に基づき除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じるか否かを判定するから、その判定により、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮の有無を実際の凝縮が未だ生じていない段階でシミュレート的にないしは直前予測的に認知することができる。
【0030】
従って、この判定結果に基づき昇温制御手段の調整目標である設定目標温度を変更するなど、除染運転の運転条件を適宜変更するようにすれば、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮を一層確実に防止することができる。
【0031】
本発明の第4特徴構成は第3特徴構成の実施において、
前記昇温制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づいて前記設定目標温度を決定する構成にしてある点にある。
【0032】
つまり、前述の如く判定手段の判定結果に基づき昇温制御手段の調整目標である設定目標温度を変更することで、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮を一層確実に防止することができる。
【0033】
従って、上記の如く判定手段の判定結果に基づき昇温制御手段が設定目標温度を自動的に決定する構成にして、その決定形態として、除染ガス路で過酸化水素蒸気の凝縮が生じると判定されたときに設定目標温度を凝縮防止側に変更するようにしておけば、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮をさらに確実に防止することができる。
【0034】
本発明の第5特徴構成は第3又は第4特徴構成の実施において、
前記判定手段は、
前記除染ガス路におけるキャリア空気の温度,湿度,過酸化水素濃度に基づいて、その状態での前記除染ガス路におけるキャリア空気の過酸化水素蒸気圧(PT・y1)及び水蒸気圧(PT・y2)を求めるとともに、
前記除染ガス路におけるキャリア空気の温度で過酸化水素成分のみが存在するときの飽和過酸化水素蒸気圧(P01)、及び、前記除染ガス路におけるキャリア空気の温度で水成分のみが存在するときの飽和水蒸気圧(P02)を求める条件設定ステップと、
この条件設定ステップで求めた各蒸気圧(PT・y1),(PT・y2)と各飽和蒸気圧(P01),(P02)を代入する次の(式1),(式2)において、
PT・y1=P01・x1・γ1 ………(式1)
PT・y2=P02・x2・γ2 ………(式2)
次の(式3)の条件の下で、
x1+x2=1 ………(式3)
かつ、過酸化水素成分についての液相モル分率x1と活量係数γ1との相関関係、及び、水成分についての液相モル分率x2と活量係数γ2との相関関係に従い、
過酸化水素成分の液相モル分率x1を0〜1まで逐次変化させるとともに、その変化に応じ過酸化水素成分の活量係数γ1、水成分の液相モル分率x2、水成分の活量係数γ2を逐次変化させて(式1),(式2)を演算する演算ステップと、
この演算ステップにおいて、
(式1),(式2)が共に成立する解有りの状態が存在したとき、前記除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じると判定し、
(式1),(式2)が共に成立する解有り状態が存在しなかったとき、前記除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じないと判定する判定ステップとを実行する構成にしてある点にある。
【0035】
つまり、気液平衡状態を表す上記(式1),(式2)〈参照:http://www.joryu.jp/index.htm 「気液平衡とは」〉が共に成立することは、その成立時の条件である除染ガス路におけるキャリア空気の温度,湿度,過酸化水素濃度において、成立した(式1),(式2)で表される気液平衡状態(即ち、図4に示す如く気相と液相とが室内に存在する状態)が生じることを意味する。
【0036】
このことから、上記の如く、演算ステップで過酸化水素成分についての液相モル分率x1と活量係数γ1、及び、水成分についての液相モル分率x2と活量係数γ2の夫々を仮定的に逐次変化させて(式1)、(式2)を演算し、この演算ステップにおいて(式1),(式2)が共に成立する解有りの状態が存在したとき、除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮(即ち、液相)が生じると判定することができ、また、(式1),(式2)が共に成立する解有りの状態が存在しなかったとき、除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮(液相)が生じないと判定することができる。
【0037】
即ち、この判定方式であれば、条件値(入力値)としての除染ガス路におけるキャリア空気の温度,湿度,過酸化水素濃度を特定するだけで、除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じるか否かを精度良くかつ安定的に判定することができる。
【0038】
従って、この判定結果に基づき前述の如く昇温制御手段の調整目標である設定目標温度を変更するなど、除染運転の運転条件を適宜変更することで、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮をさらに確実に防止することができる。
【0039】
なお、この判定方式は、条件である除染ガス路におけるキャリア空気の温度,湿度,過酸化水素濃度を仮定や演算などにより種々変化させた場合の判定結果に基づいて、実際の除染運転で採用する前記設定目標温度などの運転条件を決定するシミュレート的な使用形態、あるいは、実際の除染運転において除染ガス路におけるキャリア空気の測定温度,測定湿度,測定過酸化水素濃度を条件とした判定結果に基づいて、前記設定目標温度などの除染運転の運転条件をリアルタイムで調整する運転オペレート的な使用形態など、上記効果を期待できる使用形態であれば、どのような使用形態で使用してもよい。
【0040】
また、過酸化水素成分についての液相モル分率x1と活量係数γ1との相関関係Lh、及び、水成分についての液相モル分率x2と活量係数γ2との相関関係Lwについては、各種文献に示されている既存のデータ(図6参照)を利用すればよい。
【0041】
そしてまた、演算ステップにおいて過酸化水素成分の液相モル分率x1を0〜1まで逐次変化させるとともに、その変化に応じ過酸化水素成分の活量係数γ1、水成分の液相モル分率x2、水成分の活量係数γ2を逐次変化させて(式1),(式2)を演算するには、それと実質的に同じ演算として(式3)の条件の下で水成分の液相モル分率x2を0〜1まで逐次変化させるとともに、その変化に応じ水成分の活量係数γ2、過酸化水素水成分の液相モル分率x1、過酸化水素成分の活量係数γ1を逐次変化させて(式1),(式2)を演算するようにしてもよい。
【0042】
本発明の第6特徴構成は第1〜第5特徴構成のいずれかの実施において、
前記蒸気発生手段は、過酸化水素水を空気とともにキャリア空気中に噴出して蒸発させる構成にしてある点にある。
【0043】
つまり、吸着ロータ式除湿装置の吸着域を通過させた後のキャリア空気中で過酸化水素水を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段としては、過酸化水素水を空気とともにキャリア空気中に噴出するものや、過酸化水素水を含浸材に含浸させた状態でキャリア空気と接触させるもの、あるいは、過酸化水素水をキャリア空気に対して散水するものなど、種々の方式のものが考えられる。
【0044】
しかし、上記の如く過酸化水素水を空気とともにキャリア空気中に噴出して蒸発させる2流体噴出方式の蒸気発生手段にすれば、噴出した過酸化水素水をそれとともに噴出した空気により効果的に微細化することができて、その微細化により過酸化水素水のキャリア空気中での蒸発を他方式に比べ一層効果的に促進することができ、また特に、熱分解よる過酸化水素のロスも効果的に回避した状態で蒸発させることができ、その分、キャリア空気の必要除湿量や必要昇温量(必要加熱量)を低減して運転コスト面や省エネルギ化の面で一層有利にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】除染装置の構成図
【図2】吸着域出口における空気の温湿度とロータ回転速度との関係を示すグラフ
【図3】除染運転における各工程の流れを示す工程図
【図4】液相の存在状態を示す模式図
【図5】凝縮判定の流れを示すフローチャート
【図6】液相モル濃度と活量係数との相関を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は除染装置を示し、1は吸着ロータ式の除湿装置であり、搬送用のキャリア空気CAとして導入路2を通じ導入する搬送用の外気をこの除湿装置1により除湿する。
【0047】
この除湿装置1は、シリカゲル等の吸着材aを保持する通気性の吸着ロータ3を備えており、この吸着ロータ3をモータ4によりロータ中心軸芯q周りで回転させることで、その回転方向における吸着ロータ3の各部を、除湿対象キャリア空気CA(搬送用外気)の通風域である吸着域5と高温再生気体HGの通風域である脱着域6とに繰り返して交互に位置させる構造にしてある。
【0048】
そして、吸着域5では、除湿対象キャリア空気CA中の水分を域内ロータ部分の吸着材aにより吸着することで除湿対象キャリア空気CAを除湿し、一方、脱着域6では、吸着域5において吸着材aが吸着した水分を高温再生気体HGによる吸着材加熱により域内ロータ部分の吸着材aから高温再生気体HGに脱着させて吸着材aを再生する。
【0049】
7は脱着域6に供給する高温再生気体HG(例えば、高温水蒸気やヒータで加熱した空気あるいはバーナの高温燃焼ガスなど)を生成する再生気体生成装置である。
【0050】
8は液タンク10から給液路11を通じて供給される所要流量の過酸化水素水Wh(例えば30〜35重量%の過酸化水素水)を中継路9により導かれる吸着域通過後の除湿キャリア空気CA中で蒸発させて過酸化水素蒸気Shを発生させる蒸気発生器であり、具体的には、この蒸気発生器8では2流体噴出装置8Aにより過酸化水素水Whを圧縮空気PAとともにキャリア空気CA中に噴出することで、噴出した過酸化水素水Whを微細化して効率的に蒸発させるようにしてある。
【0051】
12は蒸気発生器8で過酸化水素蒸気Shを含む状態になったキャリア空気CAを除染対象室13に導く除染ガス路であり、この除染ガス路12を通じてキャリア空気CAによる搬送により過酸化水素蒸気Shを除染対象室13に送給することで除染対象室13を除染する。
【0052】
除染対象室13の除染には、除染対象室13において過酸化水素蒸気Shを凝縮させず気相のままで室内に存在させる乾式除染と、除染対象13において過酸化水素蒸気Shを凝縮させる湿式除染とがあり、除染対象室13の用途や必要除染度などに応じて乾式除染を実施するか湿式除染を実施するかを選択する。
【0053】
なお、乾式除染及び湿式除染のいずれにしても除染ガス路12を形成するダクトや除染ガス路12における付属物の腐食劣化などを防止するため除染ガス路12では過酸化水素蒸気Shを凝縮させないようにする。
【0054】
14は除染ガス路12におけるキャリア空気CAの温度ti,湿度xi,過酸化水素濃度diを測定するガス路用測定器であり、15は除染運転を司る除染制御器である。
【0055】
この除染制御器15は、吸着域5の通過に伴い吸着熱の発生及び吸着ロータ3の回転による高温再生気体HGとの熱交換でキャリア空気CAが昇温することに対して、その昇温量Δtを吸着ロータ式除湿装置1の制御により調整する昇温制御手段としての機能を備えさせてある。
【0056】
具体的には、この除染制御器15は、除染ガス路12におけるキャリア空気CAの温度ti(即ち、蒸気発生器8の出口におけるキャリア空気CAの温度)を管理対象温度とし、除染運転の実施中において、ガス路用測定器14により測定されるキャリア空気CAの温度tiに基づき吸着ロータ3の回転速度rvをロータ回転用モータ4に対するインバータ制御により調整することで、吸着域5の通過で得られるキャリア空気CAの昇温量Δtを調整し、この昇温量Δtの調整により管理対象温度tiを設定目標温度timに調整する。
【0057】
そして、この設定目標温度timとしては、蒸気発生器8で所要量の過酸化水素水Whを効率的に蒸発させて除染対象室13を所要の除染状態にするのに必要な量の過酸化水素蒸気Shを効率良く安定的に発生させることができ、かつ、その過酸化水素蒸気Shが除染ガス路12において凝縮するのを防止できる温度を予め設定してある。
【0058】
また、除染運転の実施中においても、除染制御器15は判定手段として、ガス路用測定器14の測定情報に基づき除染ガス路12において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを逐次判定し、その判定において凝縮が生じるとの判定結果が得られた場合には、除染制御器15は同様の判定において凝縮が生じないとの判定結果が得られる温度まで設定目標温度tim(即ち、除染ガス路12におけるキャリア空気CAの目標温度)を凝縮防止側である高温側に変更調整する。
【0059】
つまり、この除染制御器15は、吸着域5の通過で得られるキャリア空気CAの昇温量Δtを図2に示す如き除湿量Δxとの相関の下で吸着ロータ3の回転速度調整により調整して、その昇温量Δtの調整により管理対象温度tiを上記の如き設定目標温度timに調整することで、吸着域5の通過に伴うキャリア空気CAの除湿(低湿化)と昇温(高温化)をもって蒸気発生器8での過酸化水素水Whの蒸発を促進するとともに、除染ガス路12での過酸化水素蒸気Shの凝縮を防止する。
【0060】
次に、除染運転の実施形態について説明すると、図3に示すように、除染運転は除染制御器15が自動的に切り換え実施する準備工程と立上工程と除染工程と終了工程とからなり、除染制御器15は、準備工程では除染対象室13に対する通常空調運転を終了した後、蒸気発生器8において過酸化水素蒸気Shを未だ発生させない状態で、吸着ロータ式除湿装置1により調整(除湿及び昇温)した調整キャリア空気CAのみを除染ガス路12を通じて除染対象室13に供給する。
【0061】
即ち、この調整キャリア空気CAの供給により、乾式除染の場合では除染対象室13を乾式除染に適した温湿度状態に、また、湿式除染の場合では除染対象室13を湿式除染に適した温湿度状態に予め調整するとともに、乾式除染又は湿式除染のいずれの場合にも除染ガス路12を過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じ難い温湿度状態に予め調整する。
【0062】
なお、この準備工程において必要であれば、除染制御器15はキャリア空気CAの供給に伴いヒータ16の運転下で除染対象室13における室内空気RAを循環路17を通じて循環させる。また、循環路17を通じて室内空気RAを循環させる場合には、除染ガス路12からのキャリア空気CAの供給風量に相当する風量の室内空気RAを排気路19から排出する(これについては立上工程及び除染工程についても同様)。
【0063】
除染制御器15は、準備工程に続く立上工程では、蒸気発生器8において大量の過酸化水素蒸気Shを発生させて、その過酸化水素蒸気Shを調整キャリア空気CAとともに除染対象室13に供給し、これにより、除染対象室13の過酸化水素濃度drを乾式除染用又は湿式除染用の目標濃度drmまで早期に高める。
【0064】
立上工程に続く除染工程では、対象室用測定器18により測定される除染対象室13の過酸化水素濃度drに基づき過酸化水素水Whの供給量を調整して蒸気発生器8での過酸化水素蒸気Shの発生量を調整し、この発生量の調整により除染対象室13の過酸化水素濃度drを立上工程で高めた目標濃度drmに所定除染時間Tにわたって保持する。
【0065】
所定除染時間Tとしては、目標濃度drmの下で菌が完全に死滅するのに必要な時間を実験等により求め、その必要時間にある程度の安全率を見込んだ時間を予め設定してある。
【0066】
立上工程及びそれに続く除染工程において除染制御器15は、前述の如く吸着ロータ3の回転速度調整によるキャリア空気昇温量Δtの調整により管理対象温度tiを設定目標温度timに調整し、また、凝縮有無の判定に基づき設定目標温度timを必要に応じて変更調整し、これにより、蒸気発生器8での過酸化水素水Whの蒸発を促進するとともに除染ガス路12での過酸化水素蒸気Shの凝縮を防止する状態を保つ。
【0067】
所定除染時間Tが経過すると除染工程から終了工程に移り、この終了工程では除染制御器15は、過酸化水素水Whの供給を停止して蒸気発生器8での過酸化水素蒸気Shの発生を終了した状態で、吸着ロータ式除湿装置1により調整した調整キャリア空気CAのみを除染対象室13に供給するとともに、過酸化水素蒸気Shを含む除染対象室13の室内空気RAを排気路19を通じ外部に排出し、これにより、除染対象室13における過酸化水素濃度drを人間に害のない限界濃度(例えば1ppm)まで低下させ、除染対象室13を除染実施前の状態に戻す。
【0068】
次に、凝縮有無の判定についてさらに説明すると、除染制御器15は判定手段として、除染運転の計画段階では除染運転(特に立上工程及び除染工程)をシミュレートし、そのシミュレート運転上で、除染対象室13の温度tr,湿度xr,過酸化水素濃度drに基づき、除染対象室13において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを仮想除染状態の経時変化に対応させるように微小時間ΔTごとに判定するとともに、除染ガス路12におけるキャリア空気CAの温度ti,湿度xi,過酸化水素濃度diに基づき、除染ガス路12において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを同じく微小時間ΔTごとに判定する。
【0069】
また同様に、シミュレート運転上で、除染対象室13における室内物体20(室壁なども含む)の表面温度tsと除染対象室13の湿度xr,過酸化水素濃度drに基づき、室内物体20の表面や表面近傍で過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを微小時間ΔTごとに判定する。
【0070】
そして、これらシミュレート運転上での微小時間ΔTごとの判定結果に基づき、除染制御器15は管理対象温度ti(除染ガス路12におけるキャリア空気CAの温度)について、乾式除染の場合では立上工程及び除染工程の全期間を通じて除染ガス路12、除染対象室13、室内物体20の表面及び表面近傍の全ての箇所で過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じない温度を選定し、また、湿式除染の場合では立上工程及び除染工程の全期間を通じて除染ガス路12では過酸化水素蒸気Shの凝縮がなく、除染対象室13と室内物体20の表面及び表面近傍では過酸化水素蒸気Shの凝縮が所要程度に生じる温度tiを選定し、この選定温度tiをオペレータの承認の上で設定目標温度timの初期値として自動的に設定(決定)する。
【0071】
また、除染制御器15は同じく判定手段として、実際の除染運転(特に立上工程及び除染工程)に併行して、対象室用測定器18により測定される除染対象室13の温度tr湿度xr,過酸化水素濃度drに基づき、除染対象室13において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを逐次判定するとともに、前述の如くガス路用測定器14により測定される除染ガス路12におけるキャリア空気CAの温度ti,湿度xi,過酸化水素濃度diに基づき、除染ガス路12において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを逐次判定する。
【0072】
また同じく、実際の除染運転に併行して、除染対象室13における室内物体20の表面温度ts(測定値又は予測値)と対象室用測定器18により測定される除染対象室13の湿度xr,過酸化水素濃度drに基づき、室内物体20の表面や表面近傍で過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かを逐次判定する。
【0073】
そして、これら実際の除湿運転に併行した逐次判定において、除染制御器15は、乾式除染の場合、除染ガス路12、除染対象室13、室内物体20の表面及び表面近傍のいずれかの箇所において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じると判定すると、同様の判定において除染ガス路12、除染対象室13、室内物体20の表面及び表面近傍の全ての箇所について凝縮が生じないとの判定結果が得られるまで設定目標温度timを高温側(即ち、凝縮防止側)に変更調整する。
【0074】
また、湿式除染の場合では、除染ガス路12、除染対象室13、室内物体20の表面及び表面近傍の全ての箇所において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じると判定すると、同様の判定において除染ガス路12では過酸化水素蒸気Shの凝縮がなく、除染対象室13と室内物体20の表面及び表面近傍では過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるとの判定結果が得られるまで設定目標温度timを高温側(即ち、凝縮防止側)に変更調整する。
【0075】
なお、除染制御器15は上記の如く凝縮有無の判定結果に基づき設定目標温度timを変更調整(決定)するが、凝縮有無の判定結果に基づき設定目標温度timとキャリア空気CAの風量Qとの両方を所定の重み配分状態で変更調整するといった調整形態や、凝縮有無の判定結果に基づき設定目標温度timを優先的に変更調整し、そして、設定目標温度timの変更調整だけでは所望の判定結果が得られずもはや対応できない状態になったときにキャリア空気CAの風量Qを調整するといった調整形態などを採用してもよい。
【0076】
上記の如き凝縮有無の判定に用いる判定モデルについては、気液平衡状態を表す式の演算により凝縮の有無を判定する判定モデルMを用いており、具体的には、この判定モデルMでは凝縮有無の判定を次のように行なう(図4,図5参照)。
【0077】
〔Step1〕先ず、条件設定ステップとして、判定対象箇所の温度t、湿度x,過酸化水素濃度d(即ち、除染ガス路12についての判定では除染ガス路12におけるキャリア空気CAの温度ti,湿度xi,過酸化水素濃度di、除染対象室13についての判定では除染対象室13の温度tr,湿度xr,過酸化水素濃度dr、室内物体20の表面及び表面近傍についての判定では室内物体20の表面温度tsと除染対象室13の湿度xr,過酸化水素濃度dr)に基づいて、その状態での判定対象箇所における過酸化水素蒸気圧(PT・y1)及び水蒸気圧(PT・y2)を求めるとともに、
除染対象箇所における温度tで過酸化水素成分のみが存在するときの飽和過酸化水素蒸気圧(P01)、及び、除染対象箇所における温度tで水成分のみが存在するときの飽和水蒸気圧(P02)を求める。
【0078】
〔Step2〕次に、演算ステップとして、上記条件設定ステップで求めた各蒸気圧(PT・y1),(PT・y2)と各飽和蒸気圧(P01),(P02)を代入する次の(式1),(式2)において、
PT・y1=P01・x1・γ1 ………(式1)
PT・y2=P02・x2・γ2 ………(式2)
次の(式3)の条件の下で、
x1+x2=1 ………(式3)
かつ、図6に示す如き過酸化水素成分についての液相モル分率x1と活量係数γ1との相関関係Lh、及び、水成分についての液相モル分率x2と活量係数γ2との相関関係Lwに従い、
過酸化水素成分の液相モル分率x1を0〜1まで逐次変化させるとともに、その変化に応じ過酸化水素成分の活量係数γ1、水成分の液相モル分率x2、水成分の活量係数γ2を逐次変化させて(式1),(式2)を演算する。
なお、PTは全圧を意味し、y1,y2は過酸化水素蒸気Sh及び水蒸気の気相モル分率を意味する。
【0079】
〔Step3〕そして、判定ステップとして、上記演算ステップにおいて(式1),(式2)が共に成立する解有りの状態が存在したとき、判定対象箇所において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じると判定し、
一方、上記演算ステップにおいて(式1),(式2)が共に成立する解有り状態が存在しなかったとき、判定対象箇所において過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じないと判定する。
【0080】
〔Step4〕また、この判定ステップにおいて判定対象箇所で過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じると判定した場合には、上記演算ステップにおいて(式1),(式2)が共に成立したときの(式1),(式2)に対する代入値及び予め入力してあるデータ値などを用いて、凝縮後における判定対象箇所の過酸化水素濃度d,凝縮液の過酸化水素濃度、凝縮液量、凝縮液の液膜厚さなどを演算して記録する。
【0081】
〔別実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を列記する。
【0082】
前述の実施形態では、蒸気発生手段8の出口におけるキャリア空気CAの温度ti(即ち、過酸化水素蒸気Shの発生があった後のキャリア空気CAの温度)を管理対象温度として、吸着域5通過に伴うキャリア空気CAの昇温量ΔTを吸着ロータ式除湿装置1に対する制御により調整することで、管理対象温度tiを設定目標温度timに調整する例を示したが、これに代え、蒸気発生手段8の入口における除湿キャリア空気CAの温度ti′を管理対象温度とし、この管理対象温度ti′が設定目標温度tm′になるように、図中破線で示した中継路用測定器21による測定温度ti′に基づき吸着ロータ式除湿装置1を制御して吸着域5通過に伴うキャリア空気CAの昇温量ΔTを調整するようにしてもよい。
【0083】
なお、この場合の設定目標温度tim′としては、その設定目標温度tim′の除湿キャリア空気CA中において所要量の過酸化水素水Whが効率的に蒸発するとともに、その蒸発で発生させた過酸化水素蒸気Shが除染ガス路12において凝縮しない温度を設定しておくようにする。
【0084】
吸着域5を通過した除湿キャリア空気CA中で過酸化水素水Whを蒸発させて過酸化水素蒸気Shを発生させる蒸気発生手段8には、過酸化水素水Whとともに空気PAをキャリア空気CA中に噴出する方式ものに限らず、過酸化水素水Whを含浸材に含浸させた状態で除湿キャリア空気CAに接触させる方式のものや、過酸化水素水Whをキャリア空気CAに対して散水する方式のものなどを採用してもよく、また場合によっては、過酸化水素水Whを加熱体に滴下させることで過酸化水素水Whをキャリア空気CA中で蒸発させる方式のものを採用してもよい。
【0085】
前述の実施形態では、吸着ロータ式除湿装置1における吸着ロータ3の回転速度rvを調整制御することで吸着域5の通過に伴うキャリア空気CAの昇温量Δtを調整する例を示したが、これに限らず、脱着域6に供給する高温再生気体HGの温度調整や風量調整、あるいは、脱着域6から排出される再生気体HGのうち脱着域6に再循環させる循環再生気体の風量調整、あるいはまた、吸着域5を通過した除湿キャリア空気CAのうち吸着域5に再循環させる循環キャリア空気の風量調整、さらにまた、それらの組み合せなどにより吸着域5の通過に伴うキャリア空気CAの昇温量Δtを調整するようにしてよい。
【0086】
吸着ロータ式除湿装置1で除湿したキャリア空気CAを蒸気発生手段8に導く中継路9に補助加熱装置を装備し、吸着域5の通過で得られるキャリア空気CAの昇温だけでは不十分な場合に、この補助加熱装置によりキャリア空気CAをさらに加熱昇温するようにしてもよい。
【0087】
過酸化水素蒸気Shの凝縮が生じるか否かの判定に用いる判定モデルMは、前述の(式1),(式2)を用いる判定モデルに限られるものではなく、場合によっては判定方式の異なる他の判定モデルを採用してもよい。
【0088】
除染対象室13は医薬品の製造室や乗合車両の車内など、除染が必要な室空間であればどのような使用目的の室空間であってもよい。
【0089】
また、本発明による除染装置を可搬式にして、異なる除染対象室を随時に除染できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明による除染装置は各種使用目的の室空間の除染に用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
CA キャリア空気
1 除湿手段,吸着ロータ式除湿装置
Wh 過酸化水素水
8 蒸気発生手段
Sh 過酸化水素蒸気
12 除染ガス路
13 除染対象室
a 吸着材
3 吸着ロータ
5 吸着域
HG 高温再生気体
6 脱着域
ti 管理対象温度
Δt 昇温量
tim 設定目標温度
15 昇温制御手段,判定手段
rv 回転速度
M 判定モデル
ti,xi,di キャリア空気の温度,湿度,過酸化水素濃度
PT・y1 過酸化水素蒸気圧
PT・y2 水蒸気圧
P01 飽和過酸化水素蒸気圧
P02 飽和水蒸気圧
x1,γ1 過酸化水素成分の液相モル分率,活量係数
x2,γ2 水成分の液相モル分率,活量係数
PA 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用のキャリア空気を除湿する除湿手段と、この除湿手段により除湿したキャリア空気中で過酸化水素水を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段とを備え、
この蒸気発生手段で発生させた過酸化水素蒸気をキャリア空気とともに除染ガス路を通じ除染対象室に供給して除染対象室を除染する除染装置であって、
前記除湿手段として、吸着材を保持する通気性の吸着ロータを回転させて吸着ロータの各部を除湿対象キャリア空気の通風域である吸着域と高温再生気体の通風域である脱着域とに繰り返して交互に位置させる吸着ロータ式除湿装置を装備し、
前記蒸気発生手段の出口におけるキャリア空気の温度、又は、前記蒸気発生手段の入口におけるキャリア空気の温度を管理対象温度として、
前記吸着域の通過に伴い昇温するキャリア空気の昇温量を前記吸着ロータ式除湿装置に対する制御により調整することで、前記管理対象温度を設定目標温度に調整する昇温制御手段を設けてある除染装置。
【請求項2】
前記昇温制御手段は、前記吸着ロータの回転速度の調整により前記昇温量を調整して前記管理対象温度を設定目標温度に調整する構成にしてある請求項1記載の除染装置。
【請求項3】
前記除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じるか否かを前記除染ガス路におけるキャリア空気の空気状態に基づき所定の判定モデルを用いて判定する判定手段を設けてある請求項1又は2記載の除染装置。
【請求項4】
前記昇温制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づいて前記設定目標温度を決定する構成にしてある請求項3記載の除染装置。
【請求項5】
前記判定手段は、
前記除染ガス路におけるキャリア空気の温度,湿度,過酸化水素濃度に基づいて、その状態での前記除染ガス路におけるキャリア空気の過酸化水素蒸気圧(PT・y1)及び水蒸気圧(PT・y2)を求めるとともに、
前記除染ガス路におけるキャリア空気の温度で過酸化水素成分のみが存在するときの飽和過酸化水素蒸気圧(P01)、及び、前記除染ガス路におけるキャリア空気の温度で水成分のみが存在するときの飽和水蒸気圧(P02)を求める条件設定ステップと、
この条件設定ステップで求めた各蒸気圧(PT・y1),(PT・y2)と各飽和蒸気圧(P01),(P02)を代入する次の(式1),(式2)において、
PT・y1=P01・x1・γ1 ………(式1)
PT・y2=P02・x2・γ2 ………(式2)
次の(式3)の条件の下で、
x1+x2=1 ………(式3)
かつ、過酸化水素成分についての液相モル分率x1と活量係数γ1との相関関係、及び、水成分についての液相モル分率x2と活量係数γ2との相関関係に従い、
過酸化水素成分の液相モル分率x1を0〜1まで逐次変化させるとともに、その変化に応じ過酸化水素成分の活量係数γ1、水成分の液相モル分率x2、水成分の活量係数γ2を逐次変化させて(式1),(式2)を演算する演算ステップと、
この演算ステップにおいて、
(式1),(式2)が共に成立する解有りの状態が存在したとき、前記除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じると判定し、
(式1),(式2)が共に成立する解有り状態が存在しなかったとき、前記除染ガス路において過酸化水素蒸気の凝縮が生じないと判定する判定ステップとを実行する構成にしてある請求項3又は4記載の除染装置。
【請求項6】
前記蒸気発生手段は、過酸化水素水を空気とともにキャリア空気中に噴出して蒸発させる構成にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の除染装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−34780(P2012−34780A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176601(P2010−176601)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】