説明

除湿加温装置とそれを用いた衣類乾燥機

【課題】簡単な構成で除湿水の排水異常を検知し、除湿水が溢れるのを防止する。
【解決手段】ヒートポンプ装置7の吸熱器5で空気と熱交換して生じる結露水を受けるドレンパン11と、圧縮機2と放熱器3を連結する配管6に設けた温度計測部8によって冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置10と、冷媒温度計測装置10からの温度計測情報によって圧縮機2の運転を制御する制御装置9とを備え、圧縮機2と放熱器3を連結する配管の一部をドレンパン11に近接して配置し、温度計測部8をドレンパン11の溢水線よりも重力方向側のドレンパン11内に配設したものであり、簡単な構成で除湿水の排水異常を検知し、除湿水が溢れるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置を用いた除湿加温装置と、それを用いた衣類の乾燥を行う衣類乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の除湿加温装置51は、図7〜図9に示すように、筐体52内に圧縮機53、放熱器54、吸熱器55および絞り手段56とからなるヒートポンプ装置57が設置されている。圧縮機53と放熱器54とを繋ぐ配管58に、圧縮機53から吐出する冷媒の温度を測定するための温度測定部59を設置している。吸熱器55の下方には、吸熱器55で除湿された除湿水を受けるドレンパン60が設けてあり、このドレンパン60に集められた除湿水を排水する排水口61と、除湿水を検知する水位センサー62が設けられている。
【0003】
ヒートポンプ装置57の動作は、圧縮機53で高温高圧に圧縮された冷媒が配管58を通って放熱器54に入り、送風機(図示せず)で送風された空気と熱交換して空気が加温され、冷媒は冷却されて液化する。液化した高圧冷媒は絞り手段56に入り減圧されて、低温低圧の液冷媒となり吸熱器55に入る。送風機で送風された空気と熱交換して空気は冷却除湿され、冷媒は加熱され、蒸気冷媒となって圧縮機53に戻る。
【0004】
圧縮機53の冷媒吐出温度が規定値を超えると、圧縮機53内にある潤滑油の劣化が激しくなるため、圧縮機53から吐出される冷媒の温度を温度測定部59により測定し、冷媒吐出温度が規定値以上になると圧縮機53を停止する安全対策が施されている。
【0005】
また、吸熱器55で除湿された除湿水は、重力によって吸熱器55の下方に設けたドレンパン60に滴下し、排水口61から除湿加温装置51外に排出される。ドレンパン60には、排水口61が異物によって目詰まりしたとき等、ドレンパン60に溜まる除湿水の水位の上昇を検知する水位センサー62が設けてあり、除湿水がドレンパン60から溢れるのを防止している。
【0006】
一方、空気の流れについて説明すると、送風機によって空気口63から除湿加温装置51に送り込まれた空気は、まず、吸熱器55に入って冷却され、吸熱器55の温度が空気の飽和温度以下になると吸熱器55の表面に結露し、除湿される。その後、放熱器54に入って加熱され、高温低湿の空気となって排気口64から除湿加温装置51を出る。
【0007】
近年、省エネルギの観点から、衣類乾燥機にヒータに代えて、このようなヒートポンプ装置を用いた除湿加温装置が用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、ヒートポンプ装置を用いた洗濯乾燥機において、除湿水の水位をサーミスタで検知することが考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−178289号公報
【特許文献2】特開2006−262924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、ドレンパン60の除湿水を検知するために水位センサー62を設けているため、水位センサー62を設置するためのスペースが必要で装置が大型化するとともに、構成が複雑で高価になるという課題があった。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な構成で除湿水の排水異常を検知することができる除湿加温装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の除湿加温装置は、ヒートポンプ装置の吸熱器で空気と熱交換して生じる結露水を受けるドレンパンと、圧縮機と放熱器を連結する配管に設けた温度計測部によって冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置と、前記冷媒温度計測装置からの温度計測情報によって前記圧縮機の運転を制御する制御装置とを備え、前記圧縮機と前記放熱器を連結する配管の一部を前記ドレンパンに近接して配置し、前記温度計測部を前記ドレンパンの溢水線よりも重力方向側の前記ドレンパン内に配設したものである。
【0013】
これによって、排水不良等により結露水がドレンパン内に溜まり、冷媒温度計測装置の温度計測部が結露水と接触すると結露水の温度が冷媒の温度よりも大幅に低く、計測温度が急速に低下するため、専用の水位センサーを設けることなく、排水異常を検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の除湿加温装置は、簡単な構成で除湿水の排水異常を検知し、除湿水が溢れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における除湿加温装置の上面図
【図2】同除湿加温装置のブロック図
【図3】同図1のB−B断面図
【図4】同除湿加温装置の動作を示すタイムチャート
【図5】本発明の実施の形態2における除湿加温装置の動作を示すタイムチャート
【図6】本発明の実施の形態3における除湿加温装置を備えた衣類乾燥機の要部断面図
【図7】従来の除湿加温装置の上面図
【図8】同除湿加温装置の側面図
【図9】同図4のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、圧縮機、放熱器、絞り手段、および吸熱器を冷媒が循環する配管により連結したヒートポンプ装置と、空気流入口から前記吸熱器および前記放熱器を通って空気流出口へ流れる風回路と、前記吸熱器で空気と熱交換して生じる結露水を受けるドレンパンと、前記圧縮機と前記放熱器を連結する配管に設けた温度計測部によって冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置と、前記冷媒温度計測装置からの温度計測情報によって前記圧縮機の運転を制御する制御装置とを備え、前記圧縮機と前記放熱器を連結する配管の一部を前記ドレンパンに近接して配置し、前記温度計測部を前記ドレンパンの溢水線よりも重力方向側の前記ドレンパン内に配設したことにより、排水不良等により結露水がドレンパン内に溜まり、冷媒温度計測装置の温度計測部が結露水と接触すると、結露水の温度が冷媒の温度よりも大幅に低く、計測温度が急速に低下するため、水位センサーを設けることなく、簡単な構成で排水異常を検知することができ、除湿水が溢れるのを防止することができる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御装置は、冷媒温度計測装置により計測した温度の急激な低下があると、圧縮機の運転を停止するようにしたことにより、除湿水が増加することなく溢水を防止することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1の発明の制御装置は、冷媒温度計測装置により計測した温度の急激な低下があると、圧縮機の運転回転数を所定時間低下させ、計測温度が再び上昇しなければ、前記圧縮機の運転を停止するようにしたことにより、完全な排水不良でない場合、圧縮機の運転回転数を低下させることにより、結露量を減少させて運転することで、継続して除湿することができる。また、運転回転数を所定時間低下させても、計測温度が上昇しなければ、完全な排水不良と判断し、溢水を防止することができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の除湿加温装置を搭載した衣類乾燥機であり、水位センサーを設けることなく、簡単な構成で排水異常を検知することができる衣類乾燥機を提供することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における除湿加温装置の上面図、図2は、同除湿加温装置のブロック図、図3は、図1のB−B断面図、図4は、同除湿加温装置の動作を示すタイムチャートである。
【0022】
図1〜図4において、筐体1内に圧縮機2、放熱器3、絞り手段4および吸熱器5と、これらを冷媒が循環する配管6で繋いだヒートポンプ装置7が設置されている。圧縮機2と放熱器3とを繋ぐ配管6に、圧縮機2から吐出する冷媒の温度を測定する温度測定部8を設けてあり、この温度測定部8で測定した冷媒の温度は、圧縮機2の動作を制御する制御装置9の冷媒温度計測装置10に入力される。
【0023】
吸熱器5の下方には、吸熱器5で除湿された除湿水を受けるドレンパン11が設けてあり、このドレンパン11に集められた除湿水を排水する排水口12を設けている。配管6は、圧縮機2と放熱器3とを繋ぐ部分の一部をドレンパン11内の底部に近接配置し、サーミスタ等で構成した温度測定部8は、ドレンパン11から除湿水が溢れないように設定された溢水線Wより重力方向下側に、少なくともその一部または全部が位置するように配管6に取り付けられている。
【0024】
ヒートポンプ装置7の基本的な動作は従来と同様であり、説明は簡略におこなう。圧縮機2で高温高圧に圧縮された冷媒は、配管6を通り温度測定部8が取り付けられている部分を通って放熱器3に入る。放熱器3で送風機(図示せず)で送風された空気と熱交換して空気が加温され、冷媒は冷却されて液化する。液化した高圧冷媒は絞り手段4に入り、減圧されて低温低圧の液冷媒となり吸熱器5に入る。吸熱器5で送風機によって送風された空気と熱交換して空気は冷却除湿され、冷媒は加熱されて蒸気冷媒となり圧縮機2に戻る。
【0025】
圧縮機2の冷媒吐出温度が規定値を超えると、圧縮機2内にある潤滑油の劣化が激しくなるため、圧縮機2から吐出される冷媒温度を温度測定部8により測定し、冷媒吐出温度が規定値以上になると制御装置9によって圧縮機2の動作を停止するようにしている。
【0026】
一方、除湿加温装置によって除湿加温される空気の流れを説明すると、図示しない送風
機によって筐体1に設けた空気流入口13から除湿加温装置に送り込まれた空気は、まず、吸熱器5に入って冷却され、吸熱器5の温度が空気の飽和温度以下になると吸熱器5の表面に結露し、除湿される。その後、放熱器3に入って加熱され、高温低湿の空気となって空気流出口14から除湿加温装置を出る風回路15が構成されている。
【0027】
ヒートポンプ装置7の動作により、吸熱器5で結露した除湿水はドレンパン11に落下し、集められて最下部にある排水口12から筺体1外に排出される。送風機で送風される空気にリント等の異物が含まれていると、吸熱器5で結露した除湿水に付着しドレンパン11に溜まる。
【0028】
排水口12が異物等によって目詰まりする等の排水不良が起きた場合、除湿水はドレンパン11に溜まる。ヒートポンプ装置7の動作により吸熱器5で結露した除湿水で水位が上昇し、やがて溢水線Wを超えるとドレンパン11から除湿水が溢れて水漏れが生じる。ドレンパン11内の水位が上昇すると、溢水線Wを超える前に温度測定部8が結露水と接触する。
【0029】
このとき、圧縮機2から吐出された冷媒は高温であるため、結露水と接触することにより、温度測定部8の測定温度が大幅に低下することとなり、排水ができていないことを検知することができる。そして、圧縮機2と放熱器3とを繋ぐ配管6の一部をドレンパン11内の底部に近接配置しているので、ドレンパン11内の水位が上昇すると、その底部に配設された配管6の一部が結露水と接触し、温度測定部8とともに配管6の一部を冷却して温度低下を明確に測定することができる。
【0030】
したがって、図4に示すように、温度測定部8がドレンパン11に溜まった結露水と接触して測定温度が設定値以下になると、圧縮機2の運転を制御する制御装置9により圧縮機2の動作を停止して水漏れを防止することができ、ドレンパン11に水位センサーを設けることなく、排水異常を検知することができる。
【0031】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における除湿加温装置の動作を示すタイムチャートである。本実施の形態の特徴は、圧縮機2をインバーター等の回転数を可変できる構成とし、制御装置9は、冷媒温度計測装置10により計測した温度の急激な低下があると、圧縮機2の運転回転数を所定時間t低下させ、計測温度が再び上昇しなければ、圧縮機2の運転を停止するようにしたことである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の符号を付して詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0032】
上記の構成により、完全な排水不良でない場合、圧縮機2の運転回転数を低下させることにより、結露量を減少させて運転することで、継続して除湿することができる。また、運転回転数を低下させて所定時間t動作させた場合でも、計測温度が上昇しなければ、完全な排水不良と判断し、圧縮機2の運転を停止して溢水を防止することができる。
【0033】
(実施の形態3)
図6は、本発明の除湿加温装置を備えた衣類乾燥機の要部断面図である。除湿加温装置の構成は、実施の形態1のものと同じであり、同一の符号を付して詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0034】
本実施の形態の衣類乾燥機は、洗濯機能を備えた洗濯乾燥機であり、洗濯、すすぎ、脱水に続いて乾燥までおこなうことができる。洗濯乾燥機の筐体21内に洗濯水を溜める水槽22が弾性支持され、この水槽22内にドラム23が回転可能に配設されている。ドラム23は、洗濯槽、脱水槽、乾燥槽として機能する。ドラム23の前面側には、衣類等の
洗濯物をドラム23内に出し入れする開口部24が設けてあり、扉25によって開閉することができる。
【0035】
ドラム23は、水槽22の背面側に取り付けたモータ26によって正逆回転駆動され、洗濯およびすすぎ時は、投入された洗濯物の量に応じて設定された所定量の洗濯水を給水し、ドラム23内の洗濯物を撹拌し、ドラム23内で落下するたたき洗いの作用が洗濯物に及ぶ速度で、所定時間回転動作する。脱水時は、洗濯物に遠心力が作用しドラム23の内周側面に張り付く高速で回転動作し、洗濯物から脱水された洗濯水は水槽22から筐体21外へ排出される。
【0036】
さらに、乾燥時は、脱水時に張り付いた洗濯物をほぐす動作に続いて、ドラム23内で洗濯物を撹拌する動作をおこなう。このとき、除湿加温装置で除湿加温された乾燥用空気がドラム23内に導入される。除湿加温装置の空気流出口14から出た乾いた高温の乾燥用空気は、送風機29によって水槽22の背面側の上部に設けた導入口27から水槽22内に導入される。
【0037】
ドラム23の内周側面には多数の孔(図示せず)が設けてあり、この孔から水槽22内に導入された乾燥用空気がドラム23内に入り、ドラム23内で撹拌されている洗濯物と接触する。洗濯物から水分を奪って多湿となった乾燥用空気は、ドラム23の周側面に設けた多数の孔から出て水槽22内に入り、水槽22の前面側の上部に設けた導出口28から空気流入口13を通り、除湿加温装置の風回路15を流れる。
【0038】
空気流入口13から除湿加温装置に送り込まれた空気は、吸熱器5で冷却除湿された後、放熱器3に入って加熱され、高温低湿の空気となって空気流出口14から導入口27へ導かれる。このように、除湿加温装置で除湿加温された乾燥用空気は、矢印イのように、導入口27からドラム23内に入り、導出口28から除湿加温装置に戻る循環風路30を循環し、ドラム23内の洗濯物の乾燥を進行させる。
【0039】
本実施の形態では、洗濯機能を備えた洗濯乾燥機について説明したが、洗濯機能がなく、衣類の乾燥のみをおこなう衣類乾燥機でも同様である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる除湿加温装置および衣類乾燥機は、簡単な構成で除湿水の排水異常を検知し、除湿水が溢れるのを防止することができるので、除湿加温装置および衣類乾燥機として有用である。
【符号の説明】
【0041】
2 圧縮機
3 放熱器
4 絞り手段
5 吸熱器
6 配管
7 ヒートポンプ装置
8 温度計測部
9 制御装置
10 冷媒温度計測装置
11 ドレンパン
15 風回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、放熱器、絞り手段、および吸熱器を冷媒が循環する配管により連結したヒートポンプ装置と、空気流入口から前記吸熱器および前記放熱器を通って空気流出口へ流れる風回路と、前記吸熱器で空気と熱交換して生じる結露水を受けるドレンパンと、前記圧縮機と前記放熱器を連結する配管に設けた温度計測部によって冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置と、前記冷媒温度計測装置からの温度計測情報によって前記圧縮機の運転を制御する制御装置とを備え、前記圧縮機と前記放熱器を連結する配管の一部を前記ドレンパンに近接して配置し、前記温度計測部を前記ドレンパンの溢水線よりも重力方向側の前記ドレンパン内に配設した除湿加温装置。
【請求項2】
制御装置は、冷媒温度計測装置により計測した温度の急激な低下があると、圧縮機の運転を停止するようにした請求項1記載の除湿加温装置。
【請求項3】
制御装置は、冷媒温度計測装置により計測した温度の急激な低下があると、圧縮機の運転回転数を所定時間低下させ、計測温度が再び上昇しなければ、前記圧縮機の運転を停止するようにした請求項1記載の除湿加温装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載した除湿加温装置を搭載した衣類乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−245212(P2011−245212A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123980(P2010−123980)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】