説明

除湿装置

【課題】除湿ロータの再生領域を負圧状態として吸着材の脱着効率を高める一方、外部空気の侵入による除湿効率の低下防止を図るとともに、簡易な構造で作業性が良好な除湿装置を提供する。
【解決手段】給気路Sと排気路Eとに跨って、内蔵する吸着材が水分を吸着する機能を有する処理領域21と前記吸着材が水分を脱着する機能を有する再生領域22とを含む各領域に画成された除湿ロータ2が配設され、給気路Sには給気ファン3が設けられるとともに、排気路Eには排気ファン4が設けられ、前記排気ファン4の吸込側に前記除湿ロータ2を配設するとともに、この除湿ロータ2及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞する閉空間部10を形成するとともに、前記除湿ロータ2の処理領域21を通過した低露点空気の一部を前記閉空間部10内に流通させる低露点空気路Lを設けることにより、前記閉空間部10内を低露点空気で満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿ロータの外周シール部などでの空気漏れによる除湿効率の悪化を大幅に改善した除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低露点空気を製造するため、除湿ロータが流路に沿って1段(例えば露点温度が−50℃以下の処理空気を製造する場合)又は2段(例えば露点温度が−90℃以下の処理空気を製造する場合)で備えられるようにした除湿装置が知られている。このような低露点空気の製造に使用される除湿ロータは、処理領域を通過した空気の水分量を大幅に低減するため、一般空調用に用いられるものに比べて流路方向の厚みを厚く形成している。このため、低露点空気を製造する除湿装置では、除湿ロータを通過する際の圧力損失が大きくなるため、空気を流通させる給気ファン及び排気ファンの静圧容量を大きく設定する必要がある。このため、流路内とその外側との圧力差は、一般空調用の除湿装置に比べて大きくなる。
【0003】
一方、除湿ロータは、両端面外周部の外周シール部において、上述のような流路の内側と外側の圧力差によって内外にそれぞれ空気の漏れが生じ得る。すなわち、内側が外側より高い圧力の場合には内側から外側に空気の漏れが生じ、逆に内側が外側より低い圧力の場合には外側から内側に空気の漏れが生じる。特に、低露点空気を製造する除湿装置の場合、ファンによる吸込みによって流路内が負圧となっている区間では、外側の高露点空気が内側の低露点空気に混入するような漏れを防止することが除湿効率向上の観点から重要となる。
【0004】
このようなシール部におけるリーク空気量は、除湿ロータを通過する空気量に比べれば極少量であるが、低露点空気を製造する除湿装置の場合、一般空調用の除湿装置に比べてそのリーク空気が露点温度に与える影響は大きくなる。つまり、低露点空気を製造する除湿装置の場合、前述の通り、流路内外の差圧が大きくなるため、この差圧に比例してリーク空気量も多くなるとともに、処理空気が低露点であるため、少量の高露点空気が混入しても露点の上昇に与える影響が大きくなる傾向にある。したがって、低露点空気を製造する除湿装置では、特に流路内が負圧になる部分で、外部空気が流路内に混入する漏れに対して、除湿効率に与える影響を極力抑制する必要がある。
【0005】
ところで、2段の除湿ロータにより低露点空気を製造する技術としては、以下のものが開示されている。例えば下記特許文献1では、目的空間で乾燥空気を必要としないときに、供給経路の出口側へ向かう乾燥空気を供給経路の入口側に戻して稼働状態を維持するウォーミングアップ運転を行う運転方法が開示されている。また下記特許文献2では、第1ロータを尽かした空気の一部を第1ロータよりも上流側の除湿用通気路に還気する還気用通気路を設けた除湿装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3896344号公報
【特許文献2】特開2002−320817号公報
【特許文献3】特開平11−169644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の除湿装置では、前述のような空気漏れを解決することなく、除湿ロータの処理領域を通過した空気を再び除湿ロータの前段にもどすことによって、処理空気の低露点化が図られているため、除湿装置の運転効率が低下する要因となっていた。
【0007】
一方、除湿ロータに内蔵されるシリカゲル、ゼオライト、酸化アルミナ等の吸着材は、吸着した水分を脱着(再生)する際、吸着材周辺を大気圧に対して負圧にした方が脱着効率が上昇する性質であることが知られている(特許文献3段落[0025]参照)。ここで、外部からの空気漏れを防止するため、装置全体を正圧とする対策が考えられるが、これでは吸着材周辺も正圧となってしまい、前述のような負圧による脱着効率の向上が得られない。特に、低露点空気を製造する除湿装置においては、負圧による脱着効率の上昇が得られないという影響が大きく、除湿装置の除湿効率が低下するおそれがある。
【0008】
さらに、除湿ロータの外周シールとして、一般に樹脂やゴムなどからなるパッキン材やシール材が用いられているが、このようなシール材からの透湿による水分の侵入も除湿効率を低下させる一因となる。この透湿による水分の侵入は、水分濃度差(相対圧力差)と、構成部材の材質に固有の透湿係数とによって決まり、この透湿による水分の侵入量というのは非常に微量であるが、例えば露点温度が−90℃以下の低露点空気の製造過程においては、この水分量も無視し得ない。このため、低露点空気を製造する除湿装置においては、この透湿による水分の侵入を極力排除することも重要である。この対策の一つとして、構成部材の接合部を全て溶接とすることが考えられるが、装置の製造コストが嵩むことに加えて、メンテナンス等の際に溶接箇所の切断や再溶接等の作業が必要となって作業性が悪くなる。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、除湿ロータの再生領域を負圧状態として吸着材の脱着効率を高める一方、外部空気の侵入による除湿効率の低下防止を図るとともに、簡易な構造で作業性が良好な除湿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、外気を供給する給気路と空気を排気する排気路とに跨って、内蔵する吸着材が水分を吸着する機能を有する処理領域と前記吸着材が水分を脱着する機能を有する再生領域とを含む各領域に画成された除湿ロータが配設され、前記給気路には給気ファンが設けられるとともに、前記排気路には排気ファンが設けられた除湿装置であって、
前記排気ファンの吸込側に前記除湿ロータを配設するとともに、この除湿ロータ及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞する閉空間部を形成するとともに、前記除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気の一部を前記閉空間部内に流通させる低露点空気路を設けることにより、前記閉空間部内を低露点空気で満たしたことを特徴とする除湿装置が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、排気ファンの吸込側が負圧となることにより、排気ファンの上流側に配置される除湿ロータ及び流路の内部が負圧となって、除湿効率の低下が起こる問題等を解決している。すなわち、排気ファンの上流側の流路内が負圧となることにより、除湿ロータの外周シール部やダクト接続部などに生じる隙間部分から外部の空気が流路内に流入する。この外部の空気は、露点温度が高いため、再生領域で吸着材からの水分脱着(再生)が効率よく行われなかったり、この外部の空気が除湿ロータなどを介して給気路にまで侵入したりして、除湿効率の低下及び給気の露点温度上昇などの問題が生じていた。
【0012】
そこで、本発明では、排気ファンの吸込側に配設される除湿ロータ及びその前後の流路を含む範囲を囲繞する閉空間部を形成するとともに、除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気の一部を前記閉空間部内に流通させる低露点空気路を設けている。これにより、前記閉空間部内が低露点空気で満たされるため、前述のような隙間部分から流路内に侵入する空気は、閉空間部内に充満している低露点空気となる。従って、リーク空気としては、従来の露点温度が高い空気に代えて、除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気が侵入することになるため、前述のような吸着材の除湿効率の低下及び給気の露点温度上昇などの問題が解決できる。
【0013】
さらに、排気ファンの吸込側に位置する再生領域においては、排気ファンの吸込圧による負圧が維持されるため、前述の吸着材の負圧による脱着効率の上昇という性質を損なうことがない。したがって、本発明では、再生領域を負圧にして吸着材の脱着効率を上昇させるという一方で、リーク空気による除湿効率の低下を防止するという相反する課題を同時に解決することができるようになる。
【0014】
このように、本発明では、流路の接続部などにおいて隙間部分が生じても、除湿効率の低下などの問題が起こらないため、流路の接続部分を特別に充填したり、隙間が生じないような強固な構造にしたりする必要がない汎用的な構造にできるため、メンテナンス等の作業性が良好となる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記除湿ロータが流路に沿って2段設けられるとともに、そのうち少なくとも1段の除湿ロータが前記排気ファンの吸込側に位置している請求項1記載の除湿装置が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明は、本除湿装置によって製造される給気の露点温度を−90℃以下とする場合の構成であり、除湿ロータを流路に沿って2段設けるとともに、そのうち少なくとも1段の除湿ロータを排気ファンの吸込側に位置するようにしたものである。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記閉空間部内の圧力は、閉空間部外の大気圧よりも高く設定されている請求項1,2いずれかに記載の除湿装置が提供される。
【0018】
上記請求項3では、閉空間部内の圧力は、閉空間部外の大気圧よりも高く設定されることにより、閉空間部外の高露点空気が閉空間部内に侵入するのを防止することができる。
【0019】
請求項4に係る本発明として、前記閉空間部内において、前記除湿ロータを囲繞する第2閉空間部を形成するとともに、前記第2閉空間部内に配設される除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気の一部を前記第2閉空間部内に流通させる第2低露点空気路を設けることにより、前記第2閉空間部内を低露点空気で満たした請求項1〜3いずれかに記載の除湿装置が提供される。
【0020】
上記請求項4記載の発明では、前記閉空間部内に配設される除湿ロータを囲繞する第2閉空間部を形成することによって、より高度な除湿効率の低下防止及び給気の露点温度上昇防止などが図られている。具体的には、前記第2閉空間部は、特に除湿ロータ周辺でのリーク空気による影響を防止するため、前記閉空間部より狭い範囲で除湿ロータを囲繞している。そして、前記第2閉空間部内に配設される除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気の一部を前記第2閉空間部内に流通させる第2低露点空気路を設けている。従って、除湿ロータを囲む狭い第2閉空間部内の空気を運転開始時にすばやく低露点空気で置換することが可能となり、吸着材の除湿効率の低下及び給気の露点温度上昇などの問題を運転開始直後から迅速に解決できるようになる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記低露点空気路に該低露点空気路の流量を調整する流量調整ダンパーが備えられるとともに、この流量調整ダンパーが前記閉空間部内に設けられている請求項1〜4いずれかに記載の除湿装置が提供される。
【0022】
請求項6に係る本発明として、前記低露点空気路に該低露点空気路の流量を調整する流量調整ダンパーが備えられるとともに、この流量調整ダンパーが前記閉空間部外に設けられている請求項1〜4いずれかに記載の除湿装置が提供される。
【0023】
上記請求項5,6記載の発明では、低露点空気路に設けられる流量調整ダンパーの配設位置をそれぞれ、閉空間部内とした場合、閉空間部外とした場合のものである。前者の場合には装置の構造を簡略化することができ、後者の場合には流量調整を容易化することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、除湿ロータの再生領域を負圧状態として吸着材の脱着効率を高める一方、外部空気の侵入による除湿効率の低下防止を図るとともに、簡易な構造で作業性が良好な除湿装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔第1形態例〕
(除湿装置1Aの構成)
本発明の第1形態例に係る除湿装置1Aの構成について、図1に基づいて詳述する。図1は、除湿装置1Aのシステム構成図である。
【0026】
第1形態例に係る除湿装置1Aでは、外気OAを供給する給気路Sと、空気を排気する排気路Eと、除湿ロータ2に低温空気を供給するパージ給気路Pが形成され、これら給気路S、排気路E及びパージ給気路Pに跨って、吸着材(デシカント)を内蔵し、前記吸着材が流通空気の水分吸着(除湿)を行う処理領域21と、前記吸着材が流通空気へ水分脱着(再生)を行う再生領域22と、前記吸着材を冷却するパージ領域23とに画成された回転式の除湿ロータ2が1段配置されている。また、前記給気路Sには、除湿ロータ2の前段に給気ファン3が配設されるとともに、前記排気路Eには、除湿ロータ2の後段に排気ファン4が配設されている。すなわち、前記排気ファン4の吸込側に除湿ロータ2が配設されるようになっている。
【0027】
本発明では特に、前記除湿装置1Aには、前記排気ファン4の吸込側に除湿ロータ2を配設するとともに、この除湿ロータ2及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞する閉空間部10が形成されている。そして、除湿ロータ2の処理領域21を通過した低露点空気の一部を前記閉空間部10内に流通させる低露点空気路Lを設けることにより、前記閉空間部10内を低露点空気で満たしている。
【0028】
前記閉空間部10は、具体的には周囲が板状体の外板で囲まれた閉空間とされ、この外板には、前記給気路S、排気路E、パージ給気路Pが貫通するダクト貫通部11〜13がそれぞれ形成されている。
【0029】
前記ダクト貫通部11〜13には、各流路のダクトと閉空間部10の外板との間に隙間が生じないようにシール材等を充填して、空気の漏れ防止を図ることができる。ここで、閉空間部10内の圧力を、閉空間部10外の大気圧よりも高く設定することにより、前記シール等を施さなくても、閉空間部10外の高露点空気が閉空間部10内に侵入するのを防止できるため好ましい。しかし、この場合でも閉空間部10内の空気が漏れ出ることにより除湿装置の運転効率が若干低下するおそれがあるため、ダクト貫通部の加工精度を調整することによって前記隙間が微小となるようにする。また、この隙間にシール材等を充填する場合であっても、前記隙間をできる限り小さくして、シール材等の使用量を低減することが好ましい。
【0030】
また、前記閉空間部10を形成する外板として、材料自体に透湿性を有さない金属板を使用することが好ましい。一方、閉空間部10内に設置される各機器の調整及びメンテナンス等を考慮して、閉空間部10を形成する外板の一部が着脱容易な構造とすることが望ましい。さらに、外板同士の継ぎ目部分には、シール材やパッキン材を使用して、気密性を確保することが望ましい。
【0031】
前記給気路Sは、導入された外気OAを前記吸着材などによって空気処理し、給気SAとして室内に供給する流路である。前記排気路Eは、前記給気路Sで吸着材によって処理された空気の一部を取り込んで、この空気によって前記吸着材を再生した後、排気EAとして排出する流路である。前記パージ給気路Pは、給気路Sに備えられる冷却装置5によって冷却された低温空気の一部をパージ領域23に供給した後、排気路Eの加熱装置6の前段に送り込む流路である。
【0032】
前記除湿ロータ2は、図2に示されるように、回転ドラム状に形成されたケーシングの両側面に網目状、ハニカム状、スリット状などの通気構造が備えられ、前記ケーシングの内部には、水分の吸脱着性能に優れた従来より公知のシリカゲル、ゼオライト、酸化アルミナなどの吸着材が内蔵されている。各流路S、Eの空気は、ケーシングの前記通気構造を通って除湿ロータ2の内部を通過でき、その際に内蔵する吸着材の水分の吸着・脱着の作用によって湿度調整が行われている。この除湿ロータ2は、ケーシングの両側面の中心部に流路方向に沿って設けられた回転軸によって回転自在に支持され、前記ケーシングを所定の回転速度で回転させることにより、吸着材の吸着・脱着の作用が連続的に切り替わるようになっている。
【0033】
前記除湿ロータ2は、少なくとも、前記給気路Sに介在し、内蔵する吸着材が空気中の水分を吸着して、通過する空気を除湿する機能を有する処理領域21と、前記排気路Eに介在し、内蔵する吸着材が吸着した水分を脱着して、通過する空気を加湿する機能を有する再生領域22とに画成されている。また、前記除湿ロータ2には、再生領域22から処理領域21に移行する前に、低温の空気を通過させて内蔵する吸着材を冷却するパージ領域23が画成されるようにすることが望ましい。前記パージ領域23は、再生領域22で加熱された吸着材が高温のまま処理領域21に導入されると、吸着材の除湿効果が低下する場合があるので、処理領域21に移行する前の吸着材を冷却することを目的として設けられるものである。
【0034】
前記除湿ロータ2の両端面には、図2に示されるように、除湿ロータ2の外部と内部を区分するため、外周縁に沿って外周シール28が設けられるとともに、各流路S、E、Pを区分するため、半径方向に沿って仕切シール29、29…が設けられている。
【0035】
前記給気路Sの除湿ロータ2の前段には、流通空気を冷却する冷却装置5が配置され、前記排気路Eの除湿ロータ2の前段には、流通空気を加熱する加熱装置6が配置されている。
【0036】
前記冷却装置5は、一般的な空調用熱源装置によって冷却された一般的な空気冷却コイルである。前記熱源装置として、圧縮式、吸収式などの冷凍機、ターボ冷凍機、吸収冷凍機又はスクリュー冷凍機や、あるいはヒートポンプ、熱交換器又は蓄熱槽などの冷熱源を利用した冷却装置を使用することができる。
【0037】
前記加熱装置6は、一般的な、電気ヒータなどの加熱器や温水コイル、蒸気コイル、冷媒コイル又は電熱コイルなどの空気加熱コイルなどを使用することができる。
【0038】
前記低露点空気路Lは、除湿ロータ2の処理領域21を通過した空気の一部を閉空間部10内に流通させた後、閉空間部10外に排出する流路である。低露点空気路Lの吹出し側は、処理領域21の後段であって閉空間部10内に配置される給気路S内の低露点空気の一部を導入するダクトが分岐して設けられるとともに、その端部に、低露点空気を閉空間部10内に吹き出す吹出口が設けられている。低露点空気路Lの排気側は、閉空間部10を形成する外板に、低露点空気路Lの排気側ダクトが接続するダクト貫通部15を設け、閉空間部10内に充満する低露点空気を排出するダクトを、前記ダクト貫通部15に接続した構造とされている。
【0039】
各流路S、E、P、Lには、流通する空気の流量を調整するとともに、流路内の気圧を調整するためのダンパが備えられている。すなわち、給気路Sには、導入路近傍及び室内への給気路近傍にそれぞれ、ダンパD1、D2が設けられ、排気路Eには、給気路Sからの導入路近傍及び外部への排気路近傍にそれぞれ、ダンパD3、D4が設けられている。さらに、パージ給気路Pの導入路近傍にはダンパD5が設けられ、低露点空気路Lの吹出し側及び排気側にはそれぞれ、ダンパD6、D7が設けられている。
【0040】
本形態例では、前記低露点空気路Lに備えられる流量調整ダンパーD6は、閉空間部10内に設けられている。このため、低露点空気路Lの吹出し側の流路構成を簡略化することができる。
【0041】
閉空間部10内の圧力を、閉空間部10外の圧力よりも高く設定することによって、閉空間部10外の高露点空気を閉空間部10内に侵入するのを防止するには、低露点空気路Lのダクト貫通部15の出口近傍に取り付けた圧力計7によって閉空間部10内の圧力を監視しながら、風量調整用ダンパーD6、D7を適宜調整することにより行うことができる。
【0042】
上述の構成によって、本除湿装置1Aでは以下の効果が発揮されるようになる。すなわち、前記閉空間部10を形成するとともに、前記除湿ロータ2の処理領域21を通過した低露点空気の一部を前記閉空間部10内に流通させる低露点空気路Lを設けることによって、除湿ロータ2の外周シール28などの隙間部分から流路内に侵入するリーク空気としては、従来の高露点空気に代えて、低露点空気となるため、吸着材の除湿効率の低下や給気Sの露点温度上昇などの問題が解決できる。
【0043】
さらに、排気ファン4の吸込側に前記除湿ロータ2を配設しているため、再生領域22において排気ファン4の吸込圧による負圧が維持され、吸着材の負圧による脱着効率の上昇という性質が損なわれることがなくなる。このように、本除湿装置1Aでは、再生領域22を負圧にして吸着材の脱着効率を上昇させるという一方で、リーク空気による除湿効率の低下を防止するという相反する課題が同時に解決できる。
【0044】
(除湿装置1Aの運転状態)
次に、上記第1形態例に係る除湿装置1Aの運転状態について詳述する。
除湿装置1Aでは、給気路Sを通って除湿ロータ2の処理領域21を通過した低露点空気の一部を給気SAとして室内に供給するとともに、他の一部を排気路Eに供給する定常運転が行われている。具体的には、ダンパD2を開いて給気SAを室内に供給するとともに、ダンパD3、D5の開度を調整して排気路Eに供給する空気量を制御しながら定常運転を行う。前記排気路Eに供給する空気量は、給気路Sに配置した温湿度測定器及び風量測定器(図示せず)の測定値から算出した外気の水分量から処理領域21で吸着された水分量に見合うだけの空気量に制御される。また、再生領域22での吸着材の再生(水分の脱着)が適切に行われるように、加熱装置6による再生空気の加熱温度、除湿ロータ2の回転数なども制御しながら定常運転が行われる。
【0045】
(第1形態例の変形例)
上記第1形態例に係る除湿装置1Aの変形例1A’について、図3に基づいて詳述する。本変形例では、上記第1形態例と比べて低露点空気路L’の構成が異なっている。すなわち、上記第1形態例1Aと同様に、前記低露点空気路L’に、該低露点空気路L’の流量を調整する流量調整ダンパーD6が備えられており、本変形例では、この流量調整ダンパーD6が閉空間部10外に設けられるようになっている。具体的には、閉空間部10を形成する外板にダクト貫通部16、17を設けるとともに、低露点空気路L’が、このダクト貫通部16から一度閉空間部10の外を通って、ダクト貫通部17から再び閉空間部10内に戻る流路構成とされている。そして、閉空間部10の外を通る部分に流量調整ダンパーD6が設けられている。これにより、流量調整ダンパーD6の流量調整が容易に行えるようになり、閉空間部10内への通風量及び圧力の調整が容易となる。
【0046】
〔第2形態例〕
本発明の第2形態例に係る除湿装置1Bについて、図4に基づいて詳述する。
第2形態例に係る除湿装置1Bでは、除湿ロータが流路に沿って2段設けられるとともに、いずれの除湿ロータ2a、2bも排気ファン4の吸込側に位置している点で上記第1形態例と異なっている。除湿ロータを2段設けたことにより、各除湿ロータ2a、2bに対応する各機器も同様に2段設けられ、図4中、第1段目の除湿ロータ2aに対応する機器として各符号に小文字の「a」が付されており、第2段目の除湿ロータ2bに対応する機器として各符号に小文字の「b」が付されている。
【0047】
本除湿装置1Bでは、排気ファン4の吸込側に2段の除湿ロータ2a、2bが配設されるとともに、この除湿ロータ2a、2b及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞する閉空間部10が形成されている。
【0048】
この除湿装置1Bでは、除湿ロータが2段2a、2b設けられているため、前記除湿装置1Aより低い露点温度(例えば露点温度−70℃〜−90℃以下)の給気SAを製造するのに好適である。
【0049】
流路構成について具体的に説明すると、先ず給気路Sでは、給気路Sの入口近傍に設けられた給気ファン3によって外気が給気路Sに導入され、この外気OAが冷却装置5aによって冷却された後、1段目の除湿ロータ2aの処理領域21aに導入され、吸着材により除湿される。この処理領域21aを通過した空気は、必要に応じて設置される冷却装置5bで再び冷却された後、2段目の除湿ロータ2bの処理領域21bに導入される。この2段目の処理領域21bを通過した空気は、露点温度が−60℃〜−90℃程度の低露点空気となり、給気SAとして送風される。
【0050】
一方、排気路Eでは、排気路Eの出口近傍に設けられる排気ファン4の吸込力によって、2段目の処理領域21bを通過した空気の一部が排気路Eに導入され、パージ流路Pbの空気と混合されて、加熱装置6bによって加熱された後、2段目の除湿ロータ2bの再生領域22bに導入され、吸着材に吸着された水分を脱着する。この再生領域22bを通過した空気は、パージ流路Paの空気と混合されて、加熱装置6aによって加熱された後、1段目の除湿ロータ2aの再生領域22aに導入され、吸着材に吸着された水分を脱着する。しかる後、排気ファン4を通って排気EAとして外部へ排出される。
【0051】
前記低露点空気路Lでは、1段目の除湿ロータ2aの処理領域21aを通過した空気の一部が、閉空間部10内を流通した後、閉空間部10の外部に排出される。
【0052】
(第2形態例の変形例)
上記第2形態例に係る除湿装置1Bの変形例1B’では、図5に示されるように、上記第2形態例と比べて低露点空気路L’の構成が異なっている。すなわち、上記第1形態例の変形例1A’と同様に、前記低露点空気路L’に、該低露点空気路L’の流量を調整する流量調整ダンパーD6が備えられており、この流量調整ダンパーD6を閉空間部10外に設けるようにしている。
【0053】
〔第3形態例〕
本発明の第3形態例に係る除湿装置1Cについて、図6に基づいて詳述する。
第3形態例に係る除湿装置1Cでは、上記第2形態例に係る除湿装置1Bと比較して、除湿ロータが流路に沿って2段設けられるとともに、そのうち2段目の除湿ロータ2bが前記排気ファン4の吸込側に位置し、この除湿ロータ2b及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞する閉空間部10を形成している点で異なっている。
【0054】
具体的には、排気ファン4は、1段目の除湿ロータ2aと2段目の除湿ロータ2bとの間の排気路Eに配置されている。このとき閉空間部10は、前記排気ファン4、前記排気ファン4の吸込側に配設される2段目の除湿ロータ2b及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞するように形成する。このように閉空間部10が排気ファン4を含めて排気ファン4の吸込側を完全に囲繞しているため、排気ファン4と吸込側ダクトとの接続部分に隙間が生じても外部空気が侵入せず、排気路Eの後段に配設される1段目の除湿ロータ2aにおける除湿効率の低下も防止することができる。
【0055】
前記低露点空気路Lは、1段目の除湿ロータ2aの処理領域21aを通過した給気路Sの空気の一部を、閉空間部10内に供給する流路とされている。図示例では、閉空間部10の外側の給気路Sから低露点空気路Lが設けられるようにしているため、閉空間部10を形成する外板には、低露点空気路Lのダクトが貫通するダクト貫通部18が形成されている。
【0056】
〔第4形態例〕
本発明の第4形態例に係る除湿装置1Dについて、図7に基づいて詳述する。
第4形態例に係る除湿装置1Dでは、上記第1形態例に係る除湿装置1Aと比較して、閉空間部10内において、前記除湿ロータ2を囲繞する第2閉空間部30を形成するとともに、この第2閉空間部30内に配設される除湿ロータ2の処理領域21を通過した低露点空気の一部を前記第2閉空間部30内に流通させる第2低露点空気路L2を設けることにより、前記第2閉空間部30内が低露点空気で満たされている点で異なっている。
【0057】
この第2閉空間部30は、詳細には図8に示されるように、除湿ロータ2とこれに接続するダクトの接続部分とを、金属板などのケーシング体によって外部と隙間が生じないように囲繞された閉空間領域である。図示例では、断面略正方形のケーシング体31内には、中心部をロータシャフト24及び軸受25で支持された除湿ロータが回転自在に配置されるとともに、この除湿ロータを回転駆動する駆動モータ26及び該駆動モータ26のプーリーと除湿ロータ2の外周とに巻回され、前記駆動モータ26の駆動力を除湿ロータ2に伝達する駆動チェーン27が配置されている。また、第2閉空間部30を形成するケーシング体31には、側面の下部に前記第2低露点空気路L2の給気側の配管が接続する接続口32が設けられるとともに、その対角位置である反対側面の上部に前記第2低露点空気路L2の排気側の配管が接続する接続口33が設けられている。また、前記第2低露点空気路L2の給気側の配管には風量調整バルブV1が設けられるとともに、排気側の配管には風量調整バルブV2が設けられている。さらに、図7に示されるように、閉空間部10を形成する外板には、第2閉空間部30を通過した空気を前記閉空間部10の外側に排気するための配管が接続する配管貫通部19が形成されている。
【0058】
前記第2低露点空気路L2では、第2閉空間部30が比較的狭い空間であるため、比較的少ない風量で足り、流路を形成する配管としては小径のステンレス鋼管などを用いることができる。また、前記風量調整バルブV1、V2としては、配管用ステンレス製バルブなどを用いることができる。
【0059】
このように本第4形態例では、最も空気漏れが生じやすい除湿ロータ2の周辺を囲繞する第2閉空間部30を設けているため、除湿ロータ2を囲む狭い第2閉空間部30内の空気を運転開始時にすばやく低露点空気で置換することが可能となり、吸着材の除湿効率の低下及び給気Sの露点温度上昇などの問題を運転開始直後から迅速に解決できるようになる。
【0060】
(第4形態例の変形例)
上記第4形態例の変形例1D’は、図9に示されるように、上記第1形態例の変形例1A’と同様に、前記低露点空気路L’に、該低露点空気路L’の流量を調整する流量調整ダンパーD6が備えられており、この流量調整ダンパーD6を閉空間部10外に設けるようにしたものである。
【0061】
〔第5形態例〕
本発明の第5形態例に係る除湿装置1Eは、図10に示されるように、上記第2形態例に係る除湿装置1Bの閉空間部10内に配設される各除湿ロータ2a、2bに対して、上記第4形態例に係る除湿装置1Dと同様にして第2閉空間部30a、30bを設けるようにしたものである。
【0062】
(第5形態例の変形例)
上記第5形態例の変形例1E’は、図11に示されるように、上記第1形態例の変形例1A’と同様に、前記低露点空気路L’に、該低露点空気路L’の流量を調整する流量調整ダンパーD6が備えられており、この流量調整ダンパーD6を閉空間部10外に設けるようにしたものである。
【0063】
〔第6形態例〕
本発明の第6形態例に係る除湿装置1Fは、図12に示されるように、上記第3形態例に係る除湿装置1Cの閉空間部10内に配設される除湿ロータ2bに対して、上記第4形態例に係る除湿装置1Dと同様にして第2閉空間部30bを設けるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1形態例に係る除湿装置1Aのシステム構成図である。
【図2】除湿ロータ2の斜視図である。
【図3】第1形態例の変形例に係る除湿装置1A’のシステム構成図である。
【図4】第2形態例に係る除湿装置1Bのシステム構成図である。
【図5】第2形態例の変形例に係る除湿装置1B’のシステム構成図である。
【図6】第3形態例に係る除湿装置1Cのシステム構成図である。
【図7】第4形態例に係る除湿装置1Dのシステム構成図である。
【図8】第2閉空間部30を示す、(A)は正面断面図、(B)は側面図である。
【図9】第4形態例の変形例に係る除湿装置1D’のシステム構成図である。
【図10】第5形態例に係る除湿装置1Eのシステム構成図である。
【図11】第5形態例の変形例に係る除湿装置1E’のシステム構成図である。
【図12】第6形態例に係る除湿装置1Fのシステム構成図である。
【符号の説明】
【0065】
1A〜1F…除湿装置、2…除湿ロータ、3…給気ファン、4…排気ファン、5…冷却装置、6…加熱装置、10…閉空間部、21…処理領域、22…再生領域、23…パージ領域、30…第2閉空間部、S…給気路、E…排気路、P…パージ給気路、L…低露点空気路、L2…第2低露点空気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を供給する給気路と空気を排気する排気路とに跨って、内蔵する吸着材が水分を吸着する機能を有する処理領域と前記吸着材が水分を脱着する機能を有する再生領域とを含む各領域に画成された除湿ロータが配設され、前記給気路には給気ファンが設けられるとともに、前記排気路には排気ファンが設けられた除湿装置であって、
前記排気ファンの吸込側に前記除湿ロータを配設するとともに、この除湿ロータ及びその前後の流路を含む範囲を一体的に囲繞する閉空間部を形成するとともに、前記除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気の一部を前記閉空間部内に流通させる低露点空気路を設けることにより、前記閉空間部内を低露点空気で満たしたことを特徴とする除湿装置。
【請求項2】
前記除湿ロータが流路に沿って2段設けられるとともに、そのうち少なくとも1段の除湿ロータが前記排気ファンの吸込側に位置している請求項1記載の除湿装置。
【請求項3】
前記閉空間部内の圧力は、閉空間部外の大気圧よりも高く設定されている請求項1,2いずれかに記載の除湿装置。
【請求項4】
前記閉空間部内において、前記除湿ロータを囲繞する第2閉空間部を形成するとともに、前記第2閉空間部内に配設される除湿ロータの処理領域を通過した低露点空気の一部を前記第2閉空間部内に流通させる第2低露点空気路を設けることにより、前記第2閉空間部内を低露点空気で満たした請求項1〜3いずれかに記載の除湿装置。
【請求項5】
前記低露点空気路に該低露点空気路の流量を調整する流量調整ダンパーが備えられるとともに、この流量調整ダンパーが前記閉空間部内に設けられている請求項1〜4いずれかに記載の除湿装置。
【請求項6】
前記低露点空気路に該低露点空気路の流量を調整する流量調整ダンパーが備えられるとともに、この流量調整ダンパーが前記閉空間部外に設けられている請求項1〜4いずれかに記載の除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−148997(P2010−148997A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326779(P2008−326779)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)
【出願人】(599073490)株式会社アースクリーン東北 (25)
【Fターム(参考)】