説明

陰圧創傷療法に関する発泡流体灌注デバイス、システムおよび方法

患者の創傷に(例えば、創傷を被覆し、創傷の周囲の皮膚に連結される創傷ドレッシングを通して)発泡流体を送達するためのシステムおよび方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年1月22日に出願された米国仮特許出願第61/297,471号明細書の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に創傷治癒および創傷治療法に関する。より詳細には、本発明は、流体灌注(fluid−instillation)を改善するためのシステムおよび方法ならびに陰圧創傷療法(NPWT)の装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および診療から、組織部位近傍に減圧を提供すると、組織部位における新生組織の増殖が促進され、加速されることが分かった。この現象の応用は多数あるが、減圧の印加は創傷治療に特に成果があった。この治療(医学界では「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、または「真空療法」と称されることが多い)には、治癒の迅速化や肉芽組織形成の促進を含む、多くの利点がある。通常、減圧は多孔質パッドまたは他のマニホールドデバイスを通して組織に印加される。多孔質パッドは、組織に減圧を分配し、組織から吸引される流体を送流することができる気泡または気孔を含有する。多孔質パッドは、治療を促進する他の構成要素を有するドレッシングに組み込むことができる。
【0004】
典型的な灌注療法は、低い陽圧下で創傷に流体を灌注する。最大の治療効果が得られるように、灌注される流体は露出した組織表面全体に行き渡らなければならない。創傷に灌注流体を十分に充填する手法と、流体の分配を助けるための多孔質創傷充填材および陰圧の使用との組み合わせは、十分な灌注療法の達成を試みるために使用される方法である。このような方法には多くの欠点がある。例えば、創傷の表面を灌注流体で「コーティング」することができるように多量の流体がドレッシング(例えば、フォーム)に入るため、創傷に流体を充填することは、特に、高価な流体(例えば、抗生物質)を使用する場合、不経済である。
【0005】
灌注流体が安価な場合でも、多量の流体を要し、頻繁なキャニスタ交換が必要となり得るため、使用者の不満に繋がりかねない。通常、低い陽圧を使用して創腔(wound cavity)を充填するが、流体の水力学的(本質的に非圧縮性の)性質は、過充填(over filling)により急速にドレープの漏れが起こる可能性があることを意味する。ガスポケットが形成されることがあるため、フォームドレッシングと液体充填法の両方を用いても創腔内の複雑に曲がった輪郭に行き渡らせるのは困難なことがある。液体灌注時の低真空の印加(シールの維持および漏れの低減を助けるため、患者の不快感を最小限にするため、および流体の分配を助けるため)は、灌注流体がドレッシング中に十分に分配される前に除去されるおそれがあるため、問題となることがある。
【0006】
従って、少なくとも前述の理由から、改善された創傷治療システムおよび方法が所望されている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、創傷治療システム、創傷充填材、および方法の実施形態を含む。
【0008】
本創傷治療装置(例えば、陰圧創傷療法を使用する創傷治療用の)の幾つかの実施形態は、創傷の周囲の患者の皮膚に固定され、それにより創傷とドレープとの間に空間を形成するドレープと;創傷とドレープとの間の空間と流体連通し、前記空間に陰圧を印加する真空源と;創傷とドレープとの間の空間と流体連通し、創傷に発泡流体を適用する発泡流体源とを備える。幾つかの実施形態は、さらに、創傷とドレープとの間の空間内の創傷上に配置される創傷充填材を備える。幾つかの実施形態では、発泡流体源は、第1の流体と第2の流体(例えば、液体)とを混合することにより、発泡流体を生成する。幾つかの実施形態では、混合は、単一の導管内で第1の流体と第2の流体とを合わせることにより行われる。幾つかの実施形態では、混合は、創傷とドレープとの間の空間内で第1の流体と第2の流体とを合わせることにより行われる。幾つかの実施形態では、第1の流体(例えば、液体)は酸性溶液であり、第2の流体(例えば、液体)は塩基性溶液である。幾つかの実施形態では、第1の流体(例えば、液体)は、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、および安息香酸の少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、第2の流体(例えば、液体)は、重炭酸溶液(bicarbonate solution)、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、発泡流体源は、液体を機械的に撹拌することにより発泡流体を生成する。幾つかの実施形態では、発泡流体源は、液体にガスを注入することにより発泡流体を生成する。
【0009】
本創傷治療装置の幾つかの実施形態は、創傷の周囲の患者の皮膚に固定され、それにより創傷とドレープとの間に空間を形成するドレープと;創傷とドレープとの間の空間内の創傷上に配置される創傷充填材と;創傷とドレープとの間の空間と流体連通し、前記空間に陰圧を印加する真空源と;創傷の間の空間と流体連通する液体源とを備え、創傷充填材は、液体源からの液体が発泡剤と接触すると泡沫を形成するように発泡剤を含む。幾つかの実施形態では、発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含む。
【0010】
特定の例示的実施形態は、創傷を被覆し、創傷の周囲の皮膚に連結される創傷ドレッシングを通して患者の創傷に発泡流体を送達するステップを含む、創傷治療方法を含む。特定の実施形態は、第1の流体(例えば、液体)と第2の流体(例えば、液体)とを合わせて発泡流体を生成するステップを含む。特定の実施形態では、第1の流体(例えば、液体)は酸性溶液を含み、第2の流体(例えば、液体)は塩基性溶液を含む。特定の実施形態では、第1の流体(例えば、液体)と第2の流体(例えば、液体)との少なくとも一方が、発泡流体を安定化させるように構成された界面活性剤を含む。第1の流体(例えば、液体)は、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、安息香酸、生理食塩水、および乳酸加リンゲル液からなる群から選択される1種類以上の成分を含んでもよい。第2の流体(例えば、液体)は、炭酸水素ナトリウム、炭酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、リン酸二ナトリウム、および次亜塩素酸ナトリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含んでもよい。特定の実施形態では、第1の流体(例えば、液体)と第2の流体(例えば、液体)とを合わせるステップは、第1の流体源を作動させて第1の流体を送達するステップと、第2の流体源を作動させて第2の流体を送達するステップとを含む。
【0011】
特定の実施形態では、発泡流体を創傷ドレッシングに送達する前に、第1の流体(例えば、液体)と第2の流体(例えば、液体)とを混合継手(combiner fitting)に送達し、第1の流体と第2の流体とを合わせて発泡流体を生成する。特定の実施形態では、第1の流体(例えば、液体)と第2の流体(例えば、液体)とを創傷ドレッシングに送達し、これにより創傷ドレッシング内で第1の流体と第2の流体とが合わさり、発泡流体を生成する。
【0012】
例示的実施形態は、流体源を作動させて流体(例えば、液体)を発泡機構に送達するステップと;発泡機構を作動させて第1の流体を発泡させ、発泡流体を生成するステップとを含んでもよく、流体源を作動させるステップと発泡機構を作動させるステップとは、発泡流体を創傷ドレッシングに送達するステップの前に行われる。特定の実施形態では、発泡機構は機械的撹拌機を備える。特定の実施形態では、機械的撹拌機は1つ以上の回転要素を備える。特定の実施形態では、発泡機構はガス注入機を備えてもよい。特定の実施形態では、流体(例えば、液体)は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、および酢酸からなる群から選択される1種類以上の成分を含んでもよい。
【0013】
特定の実施形態では、創傷ドレッシングの一部に、第1の流体(例えば、液体)を発泡させるように構成された発泡剤が含浸され、発泡流体を創傷に送達するステップは、第1の流体を創傷ドレッシングに送達し、これにより第1の流体が発泡剤と反応して発泡流体を生成するステップを含む。特定の実施形態では、発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、および酢酸からなる群から選択される1種類以上の成分を含む。特定の実施形態では、第1の流体は酸性溶液を含む。特定の実施形態では、第1の流体は、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、安息香酸、および乳酸加リンゲル液からなる群から選択される1種類以上の成分を含む。
【0014】
特定の実施形態では、創傷ドレッシングは、創傷の周囲の皮膚に連結されるドレープと、ドレープと創傷との間に配置される創傷充填材とを備え、創傷充填材には発泡剤が含浸される。特定の実施形態では、発泡流体は、発泡流体の体積の10〜99パーセントを構成するガスを含む。特定の実施形態では、発泡流体は、発泡流体の体積の20〜90パーセントを構成するガスを含む。特定の実施形態では、発泡流体は、発泡流体の体積の40〜80パーセントを構成するガスを含む。さらに他の特定の実施形態では、発泡流体は、発泡流体の体積の60〜75パーセントを構成するガスを含む。
【0015】
特定の実施形態は、創傷ドレッシングを通して創傷に陰圧を印加するステップを含む。特定の実施形態では、陰圧を印加するステップは、創傷ドレッシングに連結された真空源を作動させるステップを含む。特定の実施形態では、陰圧を印加するステップは、発泡流体の送達を停止した後に行われる。特定の実施形態では、陰圧を印加するステップは、発泡流体の送達と同時に行われる。
【0016】
特定の実施形態は、真空源と;第1の流体(例えば、液体)を送達するように構成された第1の流体源と;第2の流体(例えば、液体)とを送達するように構成された第2の流体源とを備える創傷治療装置を備え、装置は、創傷ドレッシングに連結されるように構成されており、これにより第1の流体源と第2の流体源が第1の流体と第2の流体とを合わせて発泡流体を生成し、発泡流体を創傷に送達するように作動可能となる。特定の実施形態は、創傷ドレッシングが創傷を被覆するように、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成された創傷ドレッシングを備える。特定の実施形態では、創傷ドレッシングは、創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成されたドレープと、ドレープと創傷との間に配置されるように構成された創傷充填材とを備える。
【0017】
特定の実施形態は、真空源と;流体(例えば、液体)を送達するように構成された流体源と;流体源に連結され、流体を発泡させるように構成された発泡機構とを備える創傷治療装置とを含み、装置は、創傷ドレッシングに連結されるように構成されており、これにより流体源と発泡機構とが発泡流体を創傷に送達するように作動可能となる。特定の実施形態は、創傷ドレッシングが創傷を被覆するように、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成された創傷ドレッシングを備える。特定の実施形態では、創傷ドレッシングは、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成されたドレープと、ドレープと創傷との間に配置されるように構成された創傷充填材とを備える。
【0018】
特定の実施形態は、真空源と;流体(例えば、液体)を送達するように構成された流体源とを備える創傷治療装置を含み、装置は、創傷ドレッシングに連結されるように構成されており、これにより流体源が発泡流体を創傷に送達するように作動可能となる。特定の実施形態では、創傷ドレッシングは、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成されたドレープと、ドレープと創傷との間に配置されるように構成された創傷充填材とを備え、創傷充填材には発泡剤が含浸される。特定の実施形態では、創傷充填材は滅菌多孔質部材を備える。特定の実施形態では、発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含む。
【0019】
特定の実施形態は、流体(例えば、液体)を発泡させるように構成された発泡剤が含浸された滅菌多孔質部材を備える創傷充填材を含み、多孔質部材は、患者の創傷と、創傷の周囲の皮膚に連結されるドレープとの間に配置されるように構成されており、これによりドレープが創傷充填材と創傷を被覆する。
【0020】
前述および他の実施形態に関連する詳細を下記に記載する。
【0021】
以下の図面は例示の目的で示しているのであって、本発明を限定するものではない。簡潔に且つ明瞭にするため、所与の構造の全ての特徴が、その構造が記載されている全ての図に常に標示されているわけではない。同一の参照番号は、必ずしも同一の構造を表示するわけではない。むしろ、同じ参照番号は、非同一の参照番号の場合と同様に、類似の特徴または類似の機能を有する特徴を表示するのに使用される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本開示による創傷治療システムの例示的実施形態の側面図を示す。
【図2】図2は、本開示による創傷治療システムの第1の例示的実施形態の概略ブロック図を示す。
【図3】図3は、本開示による創傷治療システムの第2の例示的実施形態の概略ブロック図を示す。
【図4】図4は、本開示による創傷治療システムの第3の例示的実施形態の概略ブロック図を示す。
【図5】図5は、本開示による創傷治療システムの第4の例示的実施形態の概略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「連結された」という用語は、接続されていることと定義されるが、それは必ずしも直接的であるとは限らず、また必ずしも機械的であるとは限らない;「連結された」2つのものは、互いに一体になっていてもよい。「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、特記しない限り、1つ以上と定義される。「実質的に」、「ほぼ」および「約」という用語は、当業者に理解されるように、必ずしも完全とは限らないが概ね明記されている通りであると定義される。
【0024】
「備える(comprise)」(および、「備える(comprises)」および「備える(comprising)」などの備えるの任意の形態)、「有する(have)」(および、「有する(has)」および「有する(having)」などの有するの任意の形態)、「含む(include)」(および、「含む(includes)」および「含む(including)」などの含むの任意の形態)ならびに「含有する(contain)」(および、「含有する(contains)」および「含有する(containing)」などの含有するの任意の形態)という用語は、オープンエンドの連結動詞である。そのため、1つ以上のステップを「備える」、「有する」、「含む」、または「含有する」創傷治療方法は、それらの1つ以上のステップを具備するが、それらの1つ以上のステップだけを具備することに限定されない。同様に、1つ以上の要素を「備える」、「有する」、「含む」、または「含有する」創傷治療システムは、それらの1つ以上の要素を具備するが、それらの要素だけを具備することに限定されない。
【0025】
さらに、特定の方式で構成されるデバイス、装置または構造は、少なくともそのように構成されるが、明記された方式以外の方式で構成されてもよい。
【0026】
ここで図面、より詳細には図1を参照すると、本創傷治療システム10の1つの一実施形態が示されている。図示されている実施形態では、システム10は、創傷治療装置14と創傷ドレッシング18とを備える。図示されている実施形態では、装置14は、導管22により創傷ドレッシング18に連結される。図示するように、ドレッシング18は、患者30の創傷26に連結されるように構成されている(および、連結された状態で示されている)。より詳細には、図示されている実施形態では、ドレッシング18は、創傷インサート34とドレープ38とを備える。図示するように、ドレープ38が創傷インサート34と創傷26を被覆し、ドレープ38と創傷26(例えば、創傷面42)との間にチャンバ50を形成するように、創傷インサート34は創傷26上に(例えば、創傷面42上にまたは創傷面42に隣接して)配置されるように構成されている(および、配置された状態で示されている)、および/または、ドレープ38は創傷26に隣接する患者の皮膚46に連結されるように構成されている(および、連結された状態で示されている)。
【0027】
装置14は、例えば、創傷ドレッシング18に(例えば、導管22を介して)陰圧を印加するように作動可能となる(および/または作動する)ように構成された真空源と、創傷ドレッシング18に(例えば、導管22を介して)流体(例えば、薬液、抗菌液、および/または洗浄液などの灌注流体)を送達するように作動可能となる(および/または作動する)ように構成された流体源とを備えてもよい。システム10を、例えば、米国特許第7,611,500号明細書(この開示はその内容全体が本明細書に援用される)を含む従来技術に記載のものに類似の様々な構成および/または方法のいずれかで実行するおよび/または作動させるおよび/または患者30に連結することができる。さらに、KCI USA,Inc.(San Antonio,Texas,U.S.A.)および/またはその子会社を通しておよび/またはそれらから、後述のようなV.A.C.(登録商標)およびSensaTRAC(登録商標)製品ラインのものなどの様々な創傷療法システムおよび構成要素が市販されている。
【0028】
導管22は、1本のシングルルーメン導管(例えば、真空源および/または流体源と装置14との間で切り替えられる)を備えてもよく、または、例えば、創傷ドレッシング18への流体の送達および/または陰圧の印加を個々におよび/または同時に行うことができるように、複数のシングルルーメン導管もしくは1本のマルチルーメン導管を備えてもよい。さらに、導管22は、例えば、陰圧の印加および/または流体送達用の第1のルーメンと、ドレープ38と表面42との間の圧力または陰圧を検知するために(1つ以上の)圧力センサに連結される他の少なくとも1つのルーメンとを備えてもよい。幾つかの実施形態では、導管22は、複数のルーメン(例えば、陰圧の印加および/または流体送達用の中心ルーメンと、中心ルーメンに隣接してまたはその周囲に配置される1つ以上の周囲ルーメンとを有し、ドレープ38と表面42との間の(例えば、空間50内の)圧力または陰圧を検知するために圧力センサに周囲ルーメンを連結することができるようになっている単一の導管におけるようなものを備えてもよい。ルーメンは、中心ルーメンと、中心ルーメンの周囲に放射状に配置された他のルーメンとを有するように配置されても、または他の適した配置に配置されてもよい。ルーメンは、また、別々の導管内に設けられてもよい。図示されている実施形態では、システム10は、さらに、導管22に連結されるように構成された(および、連結された状態で示されている)創傷ドレッシング接続パッド54を備える。適した接続パッド54の一例は、KCIから市販されている「V.A.C. T.R.A.C.(登録商標)パッド」である。適したドレープ38の一例には、KCIから市販されている「V.A.C.(登録商標)ドレープ」が挙げられる。接続パッド54の別の例は、上記で援用された米国特許出願第11/702,822号明細書に開示されている。
【0029】
適したドレープ38の一例には、KCI USA,Inc.(およびその関連会社)(San Antonio,Texas,U.S.A.)から市販されている「V.A.C.(登録商標)ドレープ」が挙げられる。
【0030】
典型的な連続気泡フォーム創傷充填材では、一般に流体の吸い上げまたは分配が効果的に行われない。様々な治療効果が得られるように流体(例えば、防腐剤および抗生物質)を創傷に灌注する場合、効果的に吸い上げる創傷充填材が望ましい。このようなフォームの気孔サイズを小さくすることにより(ならびに、親水性コーティングを組み込む、または本質的に親水性のフォームを使用することにより)、吸上能力を改善してもよいが、気孔が小さくなると、創傷流体によって運ばれる薬剤および粒子状物質による閉塞が増加するリスクを招くおそれがある。フォーム中の空隙(例えば、穴または流路)を使用すると、気孔閉塞によるマニホールディング(manifolding)不良の影響を軽減することを助けることができるが、現行の方法では、フォーム中に形成され得る空隙の長さが制限される。
【0031】
本開示の例示的実施形態は、親水性を示すように構成されている連続気泡フォーム(網状になっていてもよい)を備える創傷インサート34を使用してもよい。NPWTシステムおよび方法に従来使用されている疎水性フォームとは対照的に、創傷インサート34が親水性であるため、創傷インサートを通る流体(例えば、灌注流体、体液、および滲出物などの液体)の移動が改善され、そのため、創傷インサート34の周囲での流体の移動またはドレープ38と皮膚46との界面に隣接した流体の移動ではなく、創傷インサート34を通る流体の移動が促進される。
【0032】
従来の疎水性創傷インサートを用いた場合、流体は、通常、流体がフォームとできるだけ接触しないような、且つ流体がフォームからはじかれ、フォームと、ドレープ38と皮膚46との界面との間に圧力を発生させ得るような経路で移動する。このようにして、疎水性創傷インサートを用いた場合、ドレープ38が創傷26の周囲の皮膚46から引き離されることがある。このようにして、従来の疎水性創傷インサートを用いた場合、流体はほとんど保持されないか、またはフォーム自体を通して移送されない。流体が疎水性創傷インサートから外側に移動し得るため、流体はドレープと創傷に隣接する皮膚との界面に陽圧を発生させるおそれがある。このため膨張効果が生じ、それによりドレープと隣接する皮膚との界面に応力が加わり、ドレープを皮膚に連結するのに一般的に使用される接着剤の破壊が起こるおそれがある。
【0033】
しかし、親水性創傷インサート34を用いた場合、流体は創傷インサート34を通って移動し(例えば、創傷インサート34全体に均一に分散し)、このようにしてチャンバ50内の、およびドレープ38と皮膚46との界面の陽圧を低下させることができる。このようなものとして、親水性創傷インサート34を用いた場合、流体は、通常、さほど急速にドレープ38と皮膚46との界面に溜まらず、そのため、ドレープ38を皮膚46に連結する接着剤などの完全性が比較的長時間維持され、ドレープ38と46との接着の耐久性を向上させることができる。このようにして、ドレープ38と創傷インサート34とを備える創傷ドレッシング18は、通常、比較的耐久性が高い、および/または比較的破壊されにくい。
【0034】
図1の例示的実施形態に示されているように、創傷ドレッシング18は、患者(例えば、30)の創傷26(例えば、創傷面42)上に配置されるように構成された創傷インサート34であって、親水性を示すように構成された連続気泡フォーム(網状になっていてもよい)を備える創傷インサート34と;ドレープ38が創傷インサート34と創傷26とを被覆してドレープと創傷との間にチャンバ50を形成するように、創傷に隣接する患者の皮膚46に連結されるように構成されたドレープ38とを備える。創傷インサート34は、創傷インサート34が親水性を示すことを可能にする任意の適した材料および/または材料の組み合わせを含んでもよい。例えば、幾つかの実施形態では、創傷インサート34は、親水性コーティング(例えば、疎水性フォームが親水性を示すようになるように構成されたコーティング)でコーティングされている連続気泡疎水性フォーム(網状になっていてもよい)を備える。幾つかの実施形態では、親水性コーティングは、ポリビニルアルコール(PVOH)、可塑剤(例えば、クエン酸トリエチルなど)、親水性ポリウレタン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、および/または、コーティングされた疎水性フォームが親水性を示すようになるように構成された他の任意の適したコーティングを含む。
【0035】
図2を参照すると、本創傷治療方法の実施形態をさらによく理解することができる。図2は、システム10の一実施形態の概略ブロック図を示す。図示されている実施形態では、創傷ドレッシング18は装置14に連結され、装置14は、導管208によりキャニスタ204(例えば、創傷ドレッシング18からの滲出物などを受け入れるように構成されている)に連結される真空源200(例えば、真空ポンプなど)を備える。図示されている実施形態では、装置14は、さらに、導管220および/またはT継手224により導管208に連結される第1の圧力トランスデューサ216と、導管232によりキャニスタ204および/または創傷ドレッシング18に連結される第2の圧力トランスデューサ228とを有する圧力センサ212を備える。圧力センサ212は、創傷ドレッシング18内、および/または創傷ドレッシング18、圧力センサ212および/または真空源200に連結された様々なルーメン(例えば、導管内の)のいずれかの中の陰圧を検知するように構成されている。
【0036】
図示されている実施形態では、装置14は、さらに、導管232に連結される圧力解放弁236を備える。さらに、図示されている実施形態では、キャニスタ204および真空源200は、導管240により創傷ドレッシング18に連結される。図示されている実施形態では、キャニスタ204は、液体または固体粒子が導管208に入ることを防止するため、キャニスタ204の出口またはその近傍にフィルタ244を備えてもよい。フィルタ244は、例えば、水性および/または油性液体がフィルタの表面でビーズ状になるように疎水性および/または親油性の細菌フィルタを含んでもよい。装置14は、通常、作動中、真空源200が、フィルタ244での圧力損失がさほど大きくないフィルタ244を通して十分な気流を供給するように(例えば、圧力損失が、真空源200から創傷ドレッシング18からの陰圧の印加に実質的に干渉しないように)構成されている。
【0037】
図示されている実施形態では、装置14は、さらに、例えば、T継手または他の適した継手256などにより導管240に連結される導管252により、創傷ドレッシング18に連結される流体源248を備える。幾つかの実施形態では、創傷ドレッシング18と真空源200との、または創傷ドレッシング18と流体源248との連通を選択的に可能にすることができるように、T継手256は切替弁などを備えてもよい。幾つかの実施形態では、装置14は真空源200と流体源248の一方しか備えない。流体源248だけを備える装置14の実施形態では、キャニスタ204および/または圧力センサ212も省くことができる。図示されているものなどの様々な実施形態では、導管232および/または導管240および/または導管252は結合されてもよい、および/または、図1を参照して前述されているような、単一のマルチルーメン導管に含まれてもよい。
【0038】
図2に示すものなどの様々な実施形態で、装置14は、キャニスタ内の液体がフィルタ244を閉塞するレベルに達するとすぐに、導管208内に非常に大きい陰圧(または負圧)が発生し、トランスデューサ216によって検知されるように構成されてもよい。トランスデューサ216は、このような圧力変化をキャニスタが一杯であると解釈し、これを、キャニスタ204を空にするおよび/または交換する必要があるという可視および/または可聴警報でのメッセージにより合図する、および/または、真空源200を自動的に遮断するまたは動作不能にする回路に接続されてもよい。
【0039】
装置14は、また、陰圧(または負圧)を(例えば、連続的に、間欠的に、および/または定期的に)創傷部位に印加するように、および/またはリリーフ弁236で創傷部位の圧力を迅速に大気圧にすることができるように構成されてもよい。従って、装置14が、例えば、10分間隔で圧力を解放するようにプログラムされている場合、この間隔でリリーフ弁236は規定の時間、開放し、創傷部位の圧力を等しくした後、閉鎖して陰圧を回復することができる。創傷部位に一定の陰圧を印加する場合、弁236は大気へのまたは大気からの漏れを防止するために閉鎖したままとなることが分かるであろう。この状態では、ポンプ200を連続的に運転するおよび/または作動させることなく、時々または定期的に運転するおよび/または作動させるだけで創傷部位に陰圧を維持し、所望のレベルの陰圧(即ち、大気圧未満の所望の圧力)を維持し、それをトランスデューサ216で検知することが可能である。これにより電力が節約され、機器がその電池による電力供給で長時間作動することが可能となる。
【0040】
特定の実施形態では、創傷ドレッシングに提供される流体は、発泡流体を含んでもよい。ここで図3を参照すると、創傷治療システム310の概略図は、導管322により連結される創傷ドレッシング318と創傷治療装置314とを備える。前述の実施形態と同様に、装置314は、創傷ドレッシング318に間欠的な陰圧(または負圧)を印加するように構成された真空源を備えてもよい。この例示的実施形態では、第1の流体を含む第1の流体源348と、第2の流体を含む第2の流体源349とは、導管340、341、342および連結部材または混合継手346により創傷ドレッシング318に連結される。例示的実施形態では、第1の流体源348と第2の流体源349とからの第1の流体と第2の流体とは、混合されると発泡流体を生成するように構成される。関連する例示的実施形態では、第1の流体源348と第2の流体源349とからの第1の流体と第2の流体とは、創傷ドレッシング318に別々に送達されて、創傷ドレッシング318内で混合され、発泡流体を生成する。特定の実施形態では、第1の流体源348は、酸性溶液である第1の流体を含んでもよく、第2の流体源349は、塩基性溶液である第2の流体を含んでもよい。
【0041】
特定の例示的実施形態では、第1の流体源348は、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、および/または安息香酸を含んでもよい。第2の流体源349は、例示的実施形態では、塩基性溶液または重炭酸溶液を含んでもよい。第2の流体源349からの第2の流体の非限定例としては、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、および炭酸が挙げられる。特定の例示的実施形態では、第1の流体および/または第2の流体は、発泡流体を安定化させるように構成された界面活性剤を含んでもよい。例示的実施形態では、発泡流体は、発泡流体の体積の10〜99パーセント(例えば、20〜90パーセント、および/または40〜80パーセント)を構成するガスを含む。例えば、幾つかの実施形態では、発泡流体は液体だけを含む流体よりも液体の含有量がかなり少ないが、創傷を清浄にする、創傷の清拭を行う、および/または創傷を消毒するのに有効となるのに十分な液体を依然として含有するように、発泡流体は発泡流体の体積の60〜75パーセントを構成するガスを含む。
【0042】
創傷治療システム310の作動中、第1の流体源348と第2の流体源349を作動させて、それぞれ第1の流体と第2の流体を送達することができ、これらの流体は導管342に引き込まれ、一緒に混合されて発泡流体を生成し、発泡流体は創傷ドレッシング318に入る。特定の例示的実施形態では、創傷ドレッシング318は、過剰なガスを逃がすことができるように(例えば、リリーフ弁236を開放することにより、またはドレープ38に一方向弁を設けることにより)通気されてもよい。
【0043】
発泡灌注流体を送達すると、創傷および創傷ドレッシング318を充填するのに必要な流体の量が減少することにより、創傷中におけるその被覆率(coverage)を増大することができる。特定の実施形態では、創傷ドレッシング318は、特定の領域に発泡流体を分配するために分配流路を備えてもよい。発泡灌注流体はガスで効果的に希釈されるが、泡沫が創傷面で崩壊する時、特に、界面活性剤を使用する場合、結果として効率的な被覆率が得られる。
【0044】
特定の実施形態では、発泡流体の使用により、液体灌注の頻度および/または持続時間に関してさらに融通性を提供することができる。例えば、より頻繁な流体灌注、またはさらには連続的な灌注を使用し、(非発泡液体を使用する方法と比較して)灌注流体の総量を増加することなく創傷面に泡沫の連続波を提供することができる。
【0045】
特定の実施形態では、泡沫は自己支持しており、陰圧を印加すると急速に崩壊する。他の実施形態では、泡沫は、泡沫を崩壊させることなく陰圧を印加することにより創傷ドレッシングの中に泡沫を吸い込むのに少なくとも十分な時間、陰圧を印加しても実質的に安定である(崩壊しにくい)。泡沫の圧縮性のため、ドレッシングに過度の圧力をかけることなく創傷に僅かに過充填することができ、それにより漏れの発生を低減することができる。灌注時の真空の印加、泡沫の圧縮性、および/または適した界面活性剤の使用により、複雑に曲がった創腔に発泡流体を(非発泡流体と比較して)より効果的に充填することができる。多量の発泡流体を使用して創傷に灌注してもよいが、発泡流体をキャニスタに回収し(および、創傷中でまたは創傷から吸引する時に崩壊しなかった場合、崩壊させ)、それにより使用する液体(例えば、廃棄しなければならない液体)の量を減少させることができる。
【0046】
他の実施形態では、機械的装置で発泡灌注流体を生成してもよい。ここで図4を参照すると、創傷治療システム410は、導管422により連結される創傷ドレッシング418と創傷治療装置414を備える。前述の実施形態と同様に、装置414は、創傷ドレッシング418に間欠的陰圧(または負圧)を印加するように構成された真空源を備えてもよい。この例示的実施形態では、第1の流体を含む第1の流体源448は、導管442により創傷ドレッシング418に連結される。図示されている例示的実施形態では、発泡機構449(例えば、機械的撹拌機)を使用して、第1の流体(例えば、液体)から発泡流体を生成し、それを前述のように創傷ドレッシング418に灌注することができる。特定の例示的実施形態では、発泡機構449は、第1の流体と接触すると泡沫を発生させる1つ以上の回転要素を備えてもよい。特定の例示的実施形態では、発泡機構449は、作動中に第1の流体と接触するパドルまたは他のシャフト延長部を有するシャフトを回転させるように構成された電気モーターを備えてもよい。
【0047】
さらに他の実施形態では、発泡灌注流体は異なる発泡機構により生成されてもよい。ここで図5を参照すると、創傷治療システム510は、導管522により連結される創傷ドレッシング518と創傷治療装置514を備える。前述の実施形態と同様に、装置514は、創傷ドレッシング518に間欠的陰圧(または負圧)を印加するように構成された真空源を備えてもよい。この例示的実施形態では、第1の流体を含む第1の流体源548は、導管542により創傷ドレッシング518に連結される。図示されている例示的実施形態では、発泡機構549(例えば、ガス注入機)を使用して、第1の流体(例えば、液体)中にガスを注入して発泡流体を生成し、それを前述のように創傷ドレッシング518に灌注することができる。特定の例示的実施形態では、発泡機構549は、圧縮空気のリザーバと、圧縮空気を第1の流体の中に噴出するように構成されたノズルを備えてもよい。
【0048】
さらに他の実施形態は、発泡灌注流体を生成するための異なる方法またはシステムを備えてもよい。例えば、反応性液体または機械的に発生する泡沫の代わりに、特定の実施形態は、創傷に送達されて、温度上昇時に泡沫を発生し得る低沸点液体、エマルション、または分散体を使用してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、低沸点液体を別の液体(例えば、水、生理食塩水など)に添加し、沸騰時に、低沸点液体が他の液体を発泡させるようにしてもよい。特定の例示的実施形態では、低沸点液体の沸騰を引き起こすのに十分な温度の上昇は患者の体温によりもたらすことができる。他の例示的実施形態では、温度の上昇は外部ヒーターによりもたらされてもよい。
【0049】
特定の例示的実施形態では、創傷ドレッシングは、ガスを発生させる所与の灌注液体に対して触媒の役割を果たすことができる、および/または発泡液体を生成することができる。例えば、特定の金属は過酸化物および過酸化水素類と接触すると、酸素を放出する。類似の方法を使用して、例えば、二酸化炭素などの他のガスを放出してもよい。特定の実施形態では、創傷ドレッシングは、希酸に暴露されるとガス(例えば、二酸化炭素)を放出する発泡剤を含んでもよく、またはそのような発泡剤でコーティングされてもよい。特定の実施形態では、発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸を含んでもよい。
【0050】
特定の実施形態では、創傷ドレッシングは、創傷の周囲の皮膚に連結されるドレープと、ドレープと創傷との間に配置される創傷充填材とを備え、創傷充填材に発泡剤が含浸されてもよい。
【0051】
特定の実施形態では、発生したガスは、創傷消毒剤(例えば、抗生物質または防腐剤)であってもよい。特定の例示的実施形態では、研磨粒子をフォームに添加して、擦り取る(scouring)効果を付与し、創傷の清拭を助けてもよい。
【0052】
特定の例示的実施形態は、NPWT下で肉芽形成がほとんどまたは全く起こらない独立気泡フォームを、例えば、単独でまたは連続気泡フォームと組み合わせて使用する。金属構成要素(例えば、ボルト、プレートなど)を使用し、且つ肉芽形成が望ましくない場合、この低肉芽形成効果または非肉芽形成効果を創傷で使用してもよい。これは、それらにフォームを貼付することにより肉芽形成過程から金属構成要素を保護することができ、そのため、例えば、独立気泡フォームは、貼付される独立気泡フォームの周囲の流体(例えば、発泡流体)をこのような金属構成要素の周囲の創傷に送出する。例示的実施形態では、フォームはフィルムまたはゲルを使用する典型的な方法よりも効率的にこれらの金属構造を被覆することができる。
【0053】
例示的実施形態は、前述のシステムを使用する創傷治療方法も含む。特定の例示的実施形態では、発泡流体を生成し(例えば、前述の方法またはシステムの1つ以上により)、創傷の周囲の皮膚に連結されている創傷ドレッシングを通して患者の創傷に送達する。
【0054】
本明細書に記載のデバイス、システム、および方法の様々な例示的実施形態は、開示されている特定の形態に限定されるものではない。むしろ、それらは、特許請求の範囲に入る全ての変更形態、均等物、および代替形態を含むものとする。
【0055】
ミーンズ−プラス−ファンクションまたはステップ−プラス−ファンクションの限定がそれぞれ「〜の手段」または「〜のステップ」の語句を使用する特定の請求項に明示的に記載されない限り、請求項はこのような限定を含むことを意図しておらず、またそのように解釈されるべきではない。
【0056】
前述の利益および利点は、一実施形態に関することもあれば、幾つかの実施形態に関することもあることが分かるであろう。さらに、特記しない限り、「1つの(an)」ものを指す場合、それは、それらのものの1つ以上を指すことが分かるであろう。
【0057】
本明細書に記載の方法のステップは、適宜、任意の適した順番で行われても、または同時に行われてもよい。
【0058】
適宜、前述の実施例のいずれかの態様を、記載されている他の実施例のいずれかの態様と組み合わせて、同等のまたは異なる特性を有し、同じまたは異なる問題に対処する他の実施例を構成することもできる。
【0059】
好ましい実施形態の上記の説明は、例示として記載しているに過ぎず、当業者により様々な変更が行われ得ることが分かるであろう。上記明細書、実施例、およびデータは、例示的実施形態の構造および使用について完全に説明する。様々な実施形態をある程度詳細に、または1つ以上の個々の実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、開示される実施形態に多くの変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷の周囲の患者の皮膚に固定され、それにより前記創傷とドレープとの間に空間を形成するドレープと;
前記創傷と前記ドレープとの間の前記空間と流体連通し、前記空間に陰圧を印加する真空源と;
前記創傷と前記ドレープとの間の前記空間と流体連通し、前記創傷に発泡流体を適用する発泡流体源と;
を備えることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷治療装置において、前記創傷と前記ドレープとの間の前記空間内の前記創傷上に配置される創傷充填材をさらに備えることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の創傷治療装置において、前記発泡流体源が、第1の流体と第2の流体とを混合することにより前記発泡流体を生成することを特徴とする創傷治療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の創傷治療装置において、前記混合が、単一の導管内で前記第1の流体と前記第2の流体とを合わせることにより行われることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項5】
請求項3に記載の創傷治療装置において、前記混合が、前記創傷と前記ドレープとの間の前記空間内で前記第1の流体と前記第2の流体とを合わせることにより行われることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の創傷治療装置において、前記第1の流体が酸性溶液であり、前記第2の流体が塩基性溶液であることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の創傷治療装置において、前記第1の流体が、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、および安息香酸の少なくとも1つを含むことを特徴とする創傷治療装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の創傷治療装置において、前記第2の流体が、重炭酸溶液、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする創傷治療装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の創傷治療装置において、前記発泡流体源が、液体を機械的に撹拌することにより前記発泡流体を生成することを特徴とする創傷治療装置。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の創傷治療装置において、前記発泡流体源が、液体中にガスを注入することにより前記発泡流体を生成することを特徴とする創傷治療装置。
【請求項11】
創傷の周囲の患者の皮膚に固定され、それにより前記創傷とドレープとの間に空間を形成するドレープと;
前記創傷と前記ドレープとの間の前記空間内の前記創傷上に配置される創傷充填材と;
前記創傷と前記ドレープとの間の前記空間と流体連通し、前記空間に陰圧を印加する真空源と;
前記創傷の間の前記空間と流体連通する液体源と;
を備える創傷治療装置であって、
前記創傷充填材は、前記液体源からの液体が前記発泡剤と接触すると泡沫を形成するように発泡剤を含むことを特徴とする創傷治療装置。
【請求項12】
請求項11に記載の創傷治療装置において、前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする創傷治療装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の創傷治療装置において、前記装置が陰圧創傷療法を使用する創傷治療用であることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項14】
流体を発泡させるように構成された発泡剤が含浸される多孔質部材;
を備える創傷充填材であって、
前記多孔質部材は、患者の創傷と、前記創傷の周囲の皮膚に連結されるドレープとの間に配置されるように構成されており、これにより前記ドレープが前記創傷充填材と前記創傷とを被覆することを特徴とする創傷充填材。
【請求項15】
請求項13に記載の創傷充填材において、前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする創傷充填材。
【請求項16】
真空源と;
第1の流体を送達するように構成された第1の流体源と;
第2の流体を送達するように構成された第2の流体源と;
を備える創傷治療装置であって、
前記装置は、創傷ドレッシングに連結されるように構成されており、これにより前記第1の流体源と前記第2の流体源とが前記第1の流体と前記第2の流体とを合わせて発泡流体を生成し、前記発泡流体を創傷に送達するように作動可能となることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、
創傷ドレッシングが創傷を被覆するように、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成された創傷ドレッシング、
をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、前記創傷ドレッシングが、患者の創傷の周囲の前記皮膚に連結されるように構成されたドレープと、前記ドレープと前記創傷との間に配置されるように構成された創傷充填材とを備えることを特徴とする装置。
【請求項19】
真空源と;
流体を送達するように構成された流体源と;
前記流体源に連結され、前記流体を発泡させるように構成された発泡機構と;
を備える創傷治療装置であって、
前記装置は、創傷ドレッシングに連結されるように構成されており、これにより前記流体源と発泡機構とが前記発泡流体を創傷に送達するように作動可能となることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、
前記創傷ドレッシングが前記創傷を被覆するように、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成された創傷ドレッシング;
をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、前記創傷ドレッシングは、患者の創傷の周囲の前記皮膚に連結されるように構成されたドレープと、前記ドレープと前記創傷との間に配置されるように構成された創傷充填材とを備えることを特徴とする装置。
【請求項22】
真空源と;
流体を送達するように構成された流体源と;
を備える創傷治療装置であって、
装置は、創傷ドレッシングに連結されるように構成されており、これにより前記流体源が発泡流体を創傷に送達するように作動可能となることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置において、
前記創傷ドレッシングが前記創傷を被覆するように、患者の創傷の周囲の皮膚に連結されるように構成された創傷ドレッシング;
をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、前記創傷ドレッシングが、患者の創傷の周囲の前記皮膚に連結されるように構成されたドレープと、前記ドレープと前記創傷との間に配置されるように構成された創傷充填材とを備え、前記創傷充填材に前記発泡剤が含浸されることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置において、前記創傷充填材が多孔質部材を備えることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置において、前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする装置。
【請求項27】
創傷を被覆し、創傷の周囲の皮膚に連結される創傷ドレッシングを通して患者の前記創傷に発泡流体を送達するステップ;
を含むことを特徴とする創傷治療方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
第1の流体と第2の流体とを合わせて前記発泡流体を生成するステップ、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記第1の流体が酸性溶液を含み、前記第2の流体が塩基性溶液を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記第1の流体と前記第2の流体との少なくとも一方が、前記発泡流体を安定化させるように構成された界面活性剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28〜30のいずれか1項に記載の方法において、前記第1の流体が、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、および安息香酸からなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27〜31のいずれか1項に記載の方法において、前記第2の流体が、炭酸水素ナトリウム、炭酸、およびクエン酸カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項27〜32のいずれか1項に記載の方法において、前記第1の流体と前記第2の流体とを合わせるステップが、第1の流体源を作動させて前記第1の流体を送達するステップと、第2の流体源を作動させて前記第2の流体を送達するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記発泡流体を前記創傷ドレッシングに送達する前に、前記第1の流体と前記第2の流体とを混合継手に送達し、前記第1の流体と前記第2の流体とを合わせて前記発泡流体を生成することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記第1の流体と前記第2の流体とを前記創傷ドレッシングに送達し、これにより前記創傷ドレッシング内で前記第1の流体と前記第2の流体とが合わさり、前記発泡流体を生成することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項27〜35のいずれか1項に記載の方法において、
流体源を作動させて流体を発泡機構に送達するステップと;
発泡機構を作動させて前記第1の流体を発泡させ、前記発泡流体を生成するステップと;
をさらに含み、
前記流体源を作動させるステップと前記発泡機構を作動させるステップとが、前記発泡流体を前記創傷ドレッシングに送達するステップの前に行われることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記発泡機構が機械的撹拌機を備えることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記機械的撹拌機が1つ以上の回転要素を備えることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法において、前記発泡機構がガス注入機を備えることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法において、前記流体が、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、酢酸および生理食塩水からなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項27に記載の方法において、前記創傷ドレッシングの一部に、第1の流体を発泡させるように構成された発泡剤が含浸され、発泡流体を創傷に送達するステップは、第1の流体を前記創傷ドレッシングに送達し、これにより前記第1の流体が前記発泡剤と反応して前記発泡流体を生成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法において、前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、炭酸、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項41または42に記載の方法において、前記第1の流体が酸性溶液を含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、前記第1の流体が、クエン酸、酢酸、次亜塩素酸、アスコルビン酸、安息香酸、および乳酸加リンゲル液からなる群から選択される1種類以上の成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項41〜44のいずれか1項に記載の方法において、前記創傷ドレッシングが、前記創傷の周囲の前記皮膚に連結されるドレープと、前記ドレープと創傷との間に配置される創傷充填材とを備え、前記創傷充填材に前記発泡剤が含浸されることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項27〜44のいずれか1項に記載の方法において、前記発泡流体が、前記発泡流体の体積の10〜99パーセントを構成するガスを含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法において、前記発泡流体が、前記発泡流体の体積の20〜90パーセントを構成するガスを含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法において、前記発泡流体が、前記発泡流体の体積の40〜80パーセントを構成するガスを含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法において、前記発泡流体が、前記発泡流体の体積の60〜75パーセントを構成するガスを含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項27〜49のいずれか1項に記載の方法において、
前記創傷ドレッシングを通して前記創傷に陰圧を印加するステップ;
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、陰圧を印加するステップが、前記創傷ドレッシングに連結された真空源を作動させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50または51に記載の方法において、陰圧を印加するステップが、前記発泡流体の送達を停止した後に行われることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法において、陰圧を印加するステップが、前記発泡流体の送達と同時に行われることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517839(P2013−517839A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550089(P2012−550089)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2011/021727
【国際公開番号】WO2011/091045
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(505167473)ケーシーアイ ライセンシング インク (19)
【Fターム(参考)】