説明

障害物警告システム及び画像処理装置

【課題】 超音波センサ及び超音波センサ用のECUを用いることなく、車両に搭載された撮像装置により撮像した撮像データに基づいて障害物を認識して警告する障害物警告システム及び該障害物警告システムを構成する画像処理装置を提供する。
【解決手段】 ビデオカメラ1、2の共通する撮像領域に存在する路面上の対象物を、立体射影方式の魚眼レンズを有するビデオカメラ1、2夫々で撮像した撮像画像を、画像処理ECU3で撮像画像の湾曲部分を矯正する変換テーブルに基づいて変換し、変換後の矯正画像において、前記対象物に対応する障害物候補を夫々抽出し、抽出した障害物候補同士の形状の差異により、該対象物の高さの有無を判定し、高さの無い物は路面上の表示又は影であるとして障害物ではないと認識し、高さの有する物は障害物であると認識して警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられた複数の撮像装置により撮像した撮像データを画像処理し、障害物を認識して警告する障害物警告システム及び該障害物警告システムを構成する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年車両に搭載される情報機器の増加に伴い、車両内の省線化又は軽量化を図るため情報系車載LANの導入が行われている。特に音声データ又は画像データなどの大量の情報を扱うことができる中速又は高速情報系車載LANを搭載したものが提案されている。
【0003】
例えば、車両の周辺を監視するために、ビデオカメラ及びクリアランスソナーを取り付けたものがある。ビデオカメラはフロントグリル又はドアミラーなどに取り付けられ、ビデオカメラからの映像データを、車載LANを介して画像処理ECU(Electronic Control Unit)に取り込んで画像処理し、処理した画像データを液晶モニタに表示する。また、クリアランスソナーは車両のバンパに設けられた超音波センサと警報装置とから構成され、超音波センサからの信号を超音波センサ用のECUに取り込んで障害物の警告を行うものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の例にあっては、車両のバンパに超音波センサを設けている。超音波センサは直径が約1cmの円盤状のセンサ部がバンパ表面に露出するため、車両の外観上容易に目立ち、車両の外観設計において悪影響を及ぼすものであった。また、ビデオカメラ及びクリアランスソナーを車両に搭載した場合は、画像処理ECU及び超音波センサ用のECUの両者が必要であり車載システムの部品コストが増加するため、低コストの車載システムが望まれていた。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、視野の中央部よりも端部において撮像画像の湾曲度合いが大きい撮像装置を複数備え、撮像画像の湾曲部分を矯正するために前記撮像画像を矯正画像に変換する変換手段と、変換した各矯正画像から抽出した各障害物候補の形状の差異に基づいて障害物を認識する認識手段とを備えることにより、障害物候補の形状の差異により障害物の高さの有無を判定し、超音波センサ及び超音波センサ用のECUを用いることなく、車両周辺の障害物を認識して警告することができる障害物警告システム及び該障害物警告システムを構成する画像処理装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換する変換手段を備えることにより、車両周辺の広い範囲における障害物を認識して警告することができる障害物警告システムを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、撮像画像における画素の位置を特定する座標を矯正画像における画素の位置を特定する座標に変換する変換手段を備えることにより、矯正後の画像を得ることができる障害物警告システムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、障害物候補の画素の座標に基づいて車両から障害物までの距離を算出する算出手段を備え、算出した距離に応じて警告するように構成してあることにより、障害物との接触を回避することができる障害物警告システムを提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、各障害物候補を構成する画素が有する輝度値に関する相関値に基づいて、障害物候補の形状の差異を識別するように構成してあることにより、路面上の影又は路面表示などを障害物と誤認識することを防止することができる障害物警告システムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、撮像画像及び矯正画像の画素の位置を特定する座標を修正する修正手段を備えることにより、撮像装置の視野中心がずれた場合でも、前記ずれを補正して障害物を認識することができる障害物警告システムを提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、矯正画像の画素が有する輝度に関するポテンシャル関数を用いた動的輪郭モデルに基づいて障害物候補を抽出する抽出手段を備えることにより、車両又は障害物の動きの有無に拘わらず、障害物を認識することができる障害物警告システムを提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、魚眼レンズを有する撮像装置を備えることにより、障害物までの距離を高精度に算出することができる障害物警告システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る障害物警告システムは、車両の外界の共通する撮像領域を撮像装置で撮像して得られた撮像画像を画像処理装置で画像処理し、障害物を認識して警告する障害物警告システムにおいて、視野の中央部よりも端部において撮像画像の湾曲度合いが大きい撮像装置を複数備え、前記画像処理装置は、撮像画像の湾曲部分を矯正するために前記撮像画像を矯正画像に変換する変換手段と、変換した各矯正画像の画素が有する輝度に基づいて障害物候補を抽出する抽出手段と、抽出した障害物候補の形状の差異に基づいて障害物を認識する認識手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る障害物警告システムは、第1発明において、前記変換手段は、撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る障害物警告システムは、第1又は第2発明において、前記変換手段は、撮像画像における画素の位置を特定する座標を矯正画像における画素の位置を特定する座標に変換するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る障害物警告システムは、第1乃至第3発明において、矯正画像における前記障害物候補の画素の座標に基づいて、車両から障害物までの距離を算出する算出手段を備え、該算出手段が算出した距離に応じて警告するように構成してあることを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る障害物警告システムは、第1乃至第4発明において、前記認識手段は、前記抽出手段が抽出した各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値を演算する演算手段と、該演算手段が演算した相関値と第1の閾値とを比較する比較手段とを有し、該比較手段の比較結果に基づいて、前記障害物候補の形状の差異を判定するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る障害物警告システムは、第5発明において、前記変換手段は、矯正画像の画素の位置を特定する座標を有し、該座標を修正する修正手段を備え、平面状の対象物を撮像した場合に、前記比較手段は、前記抽出手段が抽出した各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値と第2の閾値とを比較するように構成してあり、前記相関値が第2の閾値より小さいときは、前記修正手段は、一方の障害物候補の形状を他方の障害物候補の形状に一致させるように、前記変換手段が有する座標を修正するように構成してあることを特徴とする。
【0019】
第7発明に係る障害物警告システムは、第1乃至第6発明において、前記抽出手段は、矯正画像の画素が有する輝度に関するポテンシャル関数を用いた動的輪郭モデルに基づいて障害物候補を抽出するように構成してあることを特徴とする。
【0020】
第8発明に係る障害物警告システムは、第1乃至第7発明において、前記光学素子は、魚眼レンズを含むことを特徴とする。
【0021】
第9発明に係る画像処理装置は、取得した撮像画像を画像処理して障害物を認識する画像処理装置において、共通する撮像領域の撮像画像であって、視野の中央部よりも端部において湾曲度合いが大きい撮像画像を複数取得する取得手段と、撮像画像の湾曲部分を矯正するために前記撮像画像を矯正画像に変換する変換手段と、変換した各矯正画像の画素が有する輝度に基づいて障害物候補を抽出する抽出手段と、抽出した障害物候補の形状の差異に基づいて障害物を認識する認識手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
第1発明及び第9発明にあっては、車両の外界の撮像領域のうち、一部が共通する撮像領域を撮像し、視野の中央部よりも端部において撮像画像の湾曲度合いが大きい撮像装置を複数設置する。例えば、車両の左前方を共通に撮像し、視野中心を鉛直下方向に向けた撮像装置を車両の前部及び左側部に設置する。標準レンズを有する撮像装置で撮像した場合に比較して、視野の端部において撮像画像の湾曲が生じる撮像装置で撮像した場合は、視野の中央部から端部に近づくにつれて像高が小さくなるため、撮像装置は、視野の端部に近づくにつれて、撮像した画像の湾曲度合い(歪み)が大きくなる湾曲画像を得る。変換手段は、撮像画像の湾曲部分を矯正した矯正画像に変換する。抽出手段は、各撮像装置で撮像した撮像画像を変換した各矯正画像における輝度値の差を利用して、前記矯正画像の画素が有する輝度に基づいて、前記対象物に対応する障害物候補を夫々抽出する。
【0023】
前記変換手段は、垂直下方向に向けた撮像装置で撮像した撮像画像を、該撮像画像の湾曲部分を矯正した矯正画像に変換するため、路面上の対象物が高さを無視できる平面形状を有する場合には、前記平面形状が湾曲した撮像画像を変換した矯正画像は、前記対象物の前記平面形状の湾曲部分が矯正され、元の平面形状を表す画像となる。この場合は、前記抽出手段は、各撮像装置で撮像する共通領域にある対象物を撮像して得られた各矯正画像において、撮像装置と対象物との相対的な位置関係に基づいて、形状が近似した(形状の差異がない)障害物候補を夫々抽出する。前記認識手段は、前記抽出手段が抽出した障害物候補の形状の差異が無い場合は、前記対象物は高さを無視できるので、前記対象物は障害物ではないと認識する。
【0024】
路面上の対象物が高さを有する場合は、各撮像装置で撮像した撮像画像は、前記対象物の平面形状が湾曲したものではなく、前記対象物の立体形状を、撮像装置と対象物とで定まる方向(投影方向)から路面に投影した形状(投影形状)が湾曲したものとなる。前記対象物は高さを有し、各撮像装置の投影方向は異なるため、各撮像装置で得られた投影形状は異なる。前記変換手段は、路面上の平面形状の湾曲部分を矯正するため、路面上の平面形状ではない前記投影形状を矯正した場合は、撮像画像を変換した矯正画像は、前記対象物の元の平面形状を表す画像ではなく、撮像画像における湾曲度合いの大小に応じて前記投影形状が異なった画像となる。従って、前記抽出手段は、各矯正画像において、形状が異なる(形状の差異がある)障害物候補を抽出する。前記認識手段は、前記抽出手段が抽出した障害物候補の形状の差異がある場合は、前記対象物は高さを有するので、前記対象物は障害物であると認識する。
【0025】
第2発明にあっては、前記変換手段は、撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換することにより、広い撮像領域を得るために撮像装置の視野中心が鉛直下方向でなく、鉛直方向に対して一定の角度を有するように撮像装置が設置されている場合であっても、撮像装置が撮像した撮像画像を鉛直下方向の画像に視点変換する。これにより、撮像装置で撮像した画像を鉛直下方向の画像に視点変換し、視点変換した画像の湾曲部分を矯正して矯正画像を得る。各矯正画像において、路面と対象物との輝度値の差を利用して、前記矯正画像の画素が有する輝度に基づいて、前記対象物に対応する障害物候補を抽出して障害物の認識をする。
【0026】
第3発明にあっては、撮像画像における画素の位置を特定する座標を矯正画像における画素の位置を特定する座標に変換することにより、撮像画像における湾曲部分を矯正して矯正画像を得る。
【0027】
第4発明にあっては、矯正画像において、障害物と認識された障害物候補の画素の座標と、車両の端部を構成する画素の座標との距離を画素数に基づいて算出する。予め定められた1画素当たりの実空間での距離により、車両の前記端部と障害物との距離を算出し、算出した距離に応じて警告をする。
【0028】
第5発明にあっては、各撮像装置により撮像して得られた矯正画像に基づいて抽出した各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値を演算する。演算した相関値と第1の閾値とを比較し、前記相関値が第1の閾値より小さい場合は、各障害物候補の形状の差異があると判定し、障害物候補は高さを有するものとして障害物であると認識する。一方、前記相関値が第1の閾値より大きい場合は、各障害物候補の形状の差異が無いと判定し、障害物候補は、路面上の影又は路面表示などの高さを有しないものとして障害物ではないと認識する。
【0029】
第6発明にあっては、変換手段は、矯正画像の画素の位置を特定する座標を有する。平面状の対象物(例えば、路面表示又は基準パターンなど)を各撮像装置により撮像した場合に、前記抽出手段は、前記対象物に対応する障害物候補を抽出する。抽出した各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値を演算し、該相関値と第2の閾値とを比較する。前記相関値が第2の閾値より小さい場合は、修正手段は、一方の障害物候補を他方の障害物候補に一致させるように、前記変換手段が有する座標を修正する。
【0030】
第7発明にあっては、矯正画像の画素が有する輝度に関するポテンシャル関数を用いた動的輪郭モデルに基づいて障害物候補を抽出する抽出手段を備える。矯正画像において、車両のエッジ部を初期値として、車両のエッジ部から離れる方向であって、かつ輝度の変化点が最大値となる輪郭に収束するようにポテンシャル関数を定め、該ポテンシャル関数が最小になるように輪郭曲線を繰り返し算出する。これにより、矯正画像における背景差分又は時間差分を用いて輪郭を求める必要がないため、車両又は障害物が停止している必要がない。
【0031】
第8発明にあっては、魚眼レンズを有する撮像装置を備えている。魚眼レンズを有する撮像装置の場合は、撮像装置の視野の中央部より端部において像高が大きくなり、撮像した画像の分解能が向上する。
【発明の効果】
【0032】
第1発明及び第9発明にあっては、複数の撮像装置が撮像した撮像画像の湾曲部分を矯正する変換手段により、撮像画像を矯正画像に変換し、障害物の有無を障害物候補の形状の差異として認識することにより、超音波センサ及び超音波センサ用のECUを用いることなく、車両周辺の障害物を認識して警告することができる。
【0033】
第2発明にあっては、撮像画像を鉛直下方向の画像に変換する変換手段を備えることにより、撮像装置の視野中心を鉛直向に対して一定の角度を有するように撮像装置を設置することができ、車両周辺の広い範囲の障害物を認識して警告することができる。
【0034】
第3発明にあっては、撮像画像の湾曲部分を矯正した矯正画像を得ることができる。
【0035】
第4発明にあっては、障害物候補の画素の座標に基づいて車両から障害物までの距離を算出する算出手段を備えることにより、車両までの距離の応じた警告をすることができ、障害物との接触を回避することができる。
【0036】
第5発明にあっては、各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値に基づいて、障害物候補の形状の差異を識別するように構成してあることにより、路面上の影又は路面表示などを障害物と誤認識することを防止することができる。
【0037】
第6発明にあっては、矯正画像の画素の座標を修正する修正手段を備え、路面上の平面上の対象物を撮像することにより、前記変換手段における矯正画像の画素の座標を修正して、撮像装置を車両に搭載した後に、車両走行時の振動により撮像装置の視野中心がずれた場合であっても、精度良く障害物を認識して警告することができる。
【0038】
第7発明にあっては、動的輪郭モデルに基づいて障害物候補を抽出する抽出手段を備えることにより、車両又は障害物の動きの有無に拘わらず、障害物を認識することができる。
【0039】
第8発明にあっては、魚眼レンズを有する撮像装置を備えることにより、車両から障害物までの距離を高精度に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る障害物警告システム10の構成を示すブロック図である。図において、1は車両のフロントグリルの中央部に設置した前方監視用のビデオカメラである。ビデオカメラ1は、立体射影方式の魚眼レンズを有し、魚眼レンズの光軸が車両前方斜め下方向になるように取り付けてある。車両の左側ドアミラーの下部には、ビデオカメラ1と同様の魚眼レンズを有し、該魚眼レンズの光軸が鉛直下方向になるように、左側監視用のビデオカメラ2が取り付けてある。
【0041】
ビデオカメラ1及び2は、情報系LAN7に接続してある。情報系LAN7は、車載画像処理装置である画像処理ECU3が接続してあり、ゲートウェイ5を介してボディ系LAN8に接続してある。画像処理ECU3には、操作部及び警報装置を有し車両の運転席に設置された表示装置4が接続してある。また、ボディ系LAN8には、車速センサ6が接続してある。
【0042】
情報系LAN7は、高速シリアルバスインタフェースであるIEEE1394の通信規格に準拠した通信線であり、ビデオカメラ1及び2により撮像した撮像データは、非圧縮で又はDV(Digital Video)圧縮のようなリアルタイム性の高い圧縮形式で圧縮されて伝送される。
【0043】
図2はビデオカメラ1及び2の撮像範囲を示す説明図である。図に示すように、前方監視用のビデオカメラ1は、車両の前端部に沿って左右方向に延びた直線を直径とする半円形状の撮像範囲11を有する。また、左側監視用のビデオカメラ2は、車両の左側面に沿って前後方向に延びた直線を直径とする半円形状の撮像範囲21を有する。ビデオカメラ1、2の共通する撮像領域S0は、撮像範囲11と撮像範囲21とが重なる矩形状の領域であり、車両の左前方に存在する。
【0044】
図3は画像処理ECU3の構成を示すブロック図である。図において31は通信インタフェース部である。通信インタフェース部31は、ビデオカメラ1及び2により撮像された撮像データを、情報系LAN7を介して受信し、画像処理ASIC32(Application Specific Integrated Circuit)に出力する。
【0045】
画像処理ASIC32は、ビデオカメラ1及び2が撮像した撮像データ夫々を、1フレーム単位でフレームメモリ33の撮像データ領域33aに格納する。画像処理ASIC32は、変換テーブル用メモリ34に記憶された変換テーブル34a、34bを読み出し、フレームメモリ33の撮像データ領域33aに格納したビデオカメラ1、2の撮像データ夫々を矯正後データに変換し、矯正後データ夫々をフレームメモリ33の矯正後データ領域33bに格納する。
【0046】
図4は変換テーブル34a、34bの概念図である。変換テーブル34aは、撮像データで表される撮像画像の各画素を入力画素とし、変換後の矯正後データで表される矯正画像の各画素を出力画素として、どの入力画素(x,y)をどの出力画素(x′,y′)にマッピングするかを示し、画像の走査順に、各画素について所定数(例えば、32ビット)のビットデータが割り当てられている。前記ビットデータは、フラグ、入力選択、入力番号、及び画素の座標値に区分してあり、フラグは、入力画素を出力画素にマッピングするか否かを定めている。入力選択は、いずれの撮像装置の撮像画像をマッピングするかを定めており、例えば、「1」の場合は変換テーブル34aがビデオカメラ1用のものであり、「2」の場合は変換テーブル34aがビデオカメラ2用であることを示す。すなわち、ビデオカメラ1、2で撮像した撮像データ夫々を変換する変換テーブル34aを変換テーブル用メモリ34に記憶してある。入力番号は、出力画素にマッピングする入力画素の走査順の番号を示す。画素の座標値は、入力画素を出力画素にマッピングする場合の画素の座標を示す。
【0047】
変換テーブル34bは、ビデオカメラ1が撮像した撮像データで表される撮像画像の各画素を入力画素とし、鉛直下方向に撮像した画像に変換した後の画像の各画素を出力画素として、どの入力画素(X,Y)をどの出力画素(x,y)にマッピングするかを示し、変換テーブル34aと同様の構成を有する。変換テーブル34bは、変換テーブル34aと同様に「入力選択」のビットデータを有することにより、車両後部にビデオカメラ1と同様に後方監視用のビデオカメラを設置した場合でも、夫々のビデオカメラで撮像した撮像データを視点変換することが可能になる。
【0048】
変換テーブル34bは、変換後の画素の水平座標をx、変換後の画素の垂直座標をy、変換元の画素の水平座標をX、変換元の画素の垂直座標をYとすると、数1に基づいた対応付けにより、入力画素を出力画素にマッピングするように構成してある。
【0049】
【数1】

【0050】
ここで、Hは車両の接地面からビデオカメラ1までの距離、Fはビデオカメラ1の焦点距離、αは車両の接地面に対するビデオカメラ1の撮像方向(光軸方向)の角度である。
【0051】
変換テーブル34bにより、ビデオカメラ1で撮像された撮像画像を鉛直下方向に撮像した撮像画像に変換し、次に変換テーブル34aにより、変換後の撮像画像の湾曲部分を矯正して、矯正画像に変換する。また、同様に、変換テーブル34aにより、ビデオカメラ2で撮像された撮像画像を矯正画像に変換する。
【0052】
図5はビデオカメラ1により撮像した撮像画像の湾曲部分を矯正する例を示す説明図であり、図6はビデオカメラ2により撮像した撮像画像の湾曲部分を矯正する例を示す説明図である。図はビデオカメラ1及び2により路面上に配置された等間隔の直線マークを撮像した例である。図に示すように、立体射影方式の魚眼レンズを有するビデオカメラ1、2において、魚眼レンズの焦点距離をf、魚眼レンズの光軸に対する入射角をθとすると、像高yは、y=2ftan(θ/2)で表される。標準レンズに比較して、入射角θが増加するに伴って像高yは小さいため、ビデオカメラ1、2で撮像した画像1a、2aでは、画像の中心から離れるにつれて直線の間隔は徐々に狭くなる。ビデオカメラ1、2により撮像した撮像データを変換テーブル34a、34bにより矯正後データに変換した後の矯正画像1b、2bでは、等間隔の直線が表示されるように、出力画素の座標(x1′,y1′)、(x2′,y2′)夫々を入力画素の座標(x1,y1)、(x2,y2)夫々からマッピングするように変換テーブル34a、34bを作成してある。
【0053】
図7は障害物の矯正画像の画素を示す説明図である。矯正画像は、ビデオカメラ1、2により撮像した撮像データを変換テーブル34a、34bにより変換した変換後の矯正画像1b、2bの共通領域Sにおける画素からなる。図7において、x′は矯正画像の水平方向の水平画素であり、y′は矯正画像の垂直方向の垂直画素である。矯正画像は、左上を原点(0,0)として水平方向に640画素、垂直方向に480画素を有する。
【0054】
ビデオカメラ1、2で撮像する撮像領域の共通領域に存在する対象物を、ビデオカメラ1で撮像した撮像画像の画素(x1,y1)を矯正画像の画素(x1′,y1′)にマッピングし、また、ビデオカメラ2で撮像した撮像画像の画素(x2,y2)を矯正画像の画素(x2′,y2′)にマッピングする。ビデオカメラ1、2で撮像された両画像の変換後の座標系が一致するように、矯正画像の各画素(x1′,y1′)、(x2′,y2′)夫々は、同じ座標(x′,y′)に変換してある。これにより、ビデオカメラ1、2で撮像した撮像画像を、同じ座標に変換する。例えば、ビデオカメラ1で撮像した撮像画像の座標(0,0)の画素(入力番号「1」)は、変換後の矯正画像の座標(0,0)にマッピングされ、ビデオカメラ2で撮像した撮像画像の座標(0,0)の画素(入力番号「1」)は、変換後の矯正画像の座標(0,0)にマッピングされる。矯正画像の他の画素も、同様にビデオカメラ1、2により撮像された撮像画像の他の画素からマッピングされる。なお、撮像された撮像画像の湾曲度合いが大きすぎる場合には、入力画素が出力画素にマッピングされない場合もある。
【0055】
また、画像処理ASIC32は、変換テーブル34a、34bに基づいて変換された1フレーム分の矯正後データに対して、路面がアスファルトであるような場合に見られるランダムな輝度のばらつきを除去し、タイルのような規則性のあるテクスチャなどの輝度成分を除去するためのフィルタリング処理を行う。また、矯正後データ夫々の輝度を平均化して、ビデオカメラ1、2で撮像した画像の輝度分布が揃うように矯正後データの輝度補正を行う。
【0056】
また、画像処理ASIC32は、フレームメモリ33の矯正後データ領域33bから読み出した矯正後データに基づいて、障害物候補の抽出処理を行う。抽出処理には、動的輪郭モデルに基づいたアルゴリズムを用いる。
【0057】
例えば、輪郭線パターンを表す曲線は、パラメータ表現をv(s)とするとき、数2で示すエネルギ(ポテンシャル)Eを最小にするように、v(s)の位置と形状を変化させる。
【0058】
【数2】

【0059】
ここで、Eint(v(s))は内部エネルギと呼ばれる項であり、輪郭の1次差分及び2次差分に関するエネルギの和である。1次差分は輪郭を軟らかくさせるエネルギであり、2次差分は輪郭を硬くさせるエネルギである。また、Eimage(v(s))は画像エネルギと呼ばれる項であり、輪郭を障害物候補のエッジに引き寄せるエネルギであり、矯正後データが有する画素の輝度濃度の1次差分である。
【0060】
矯正後データにおいて、車両のエッジ部の曲線をパラメータ表現v(s)の初期値として、v(s)で表される曲線を膨張、収縮させることによりエネルギEを最小とする輪郭を抽出して、障害物候補を抽出する。
【0061】
また、画像処理ASIC32は、ビデオカメラ1の撮像画像を変換した矯正画像において抽出された障害物候補Pの形状と、ビデオカメラ2の撮像画像を変換した矯正画像において抽出された障害物候補Qの形状とを比較する。すなわち、画像処理ASIC32は、障害物候補P及び障害物候補Qを含む矩形状の画像領域を切り出し、障害物候補P及び障害物候補Qが有する輝度値の間において相関値を演算する。相関値の算出は、数3で表される式に基づいて行われる。なお、相関値の算出前に、切り出した矩形状の画像領域における障害物候補P及び障害物候補Qと、それ以外の領域とを2値化しておくことも可能である。
【0062】
【数3】

【0063】
ここで、Nは障害物候補P、Qを含む矩形状の画像領域における総画素数、kは零からN−1までの整数、Pkは障害物候補Pを含む矩形状の画像領域におけるk番目の画素の輝度値、Qkは障害物候補Qを含む矩形状の画像領域におけるk番目の画素の輝度値、及びRは相関値を表す。
【0064】
画像処理ASIC32は、ROM38に記憶された閾値TH1を読み出し、演算した相関値Rと閾値TH1とを比較する。相関値Rが閾値TH1よりも小さい場合には、障害物候補P及び障害物候補Qの形状に差異があり、障害物候補P、Qに対応する対象物は高さを有するものと判定し、障害物であると認識し、認識結果をマイクロコンピュータ36へ出力する。一方、相関値Rが閾値TH1よりも大きい場合には、障害物候補P及び障害物候補Qの形状に差異が無く、障害物候補P、Qに対応する対象物は路面上の路面表示又は影などの高さを有しないものと判定し、障害物ではないと認識し、認識結果をマイクロコンピュータ36へ出力する。
【0065】
また、画像処理ASIC32は、障害物であると認識された障害物候補P、Qの共通する輪郭部分を特徴点として、特徴点の座標を算出する。障害物候補P、Qの共通する輪郭部分は、障害物における路面の位置に対応する。特徴点の座標と矯正画像における車両の左前部の画素の座標との座標差を算出し、予め設定された1画素当たりの距離を示す係数を積算して、車両左前部から障害部までの距離を算出し、算出した結果をマイクロコンピュータ36へ出力する。
【0066】
フレームメモリ33は、SRAM、SDRAMなどの高速アクセスが可能なRAMである。変換テーブル用メモリ34は、FEEPROM、EEPROMなどの繰り返し書き換え可能なROMである。
【0067】
マイクロコンピュータ36は、ROM38内に記憶されているプログラムをRAM37に読み出して、該プログラムに基づいて画像処理ASIC32が行う画像処理全般の制御処理を行う。マイクロコンピュータ36は、通信インタフェース部31を介して入力された車速センサ6からの速度情報と、画像処理ASIC32から入力された障害物までの距離とに基づいて、障害物に対する危険度を判定し、判定結果を表示装置インタフェース部35を介して表示装置4へ出力する。例えば、車両と障害物までの距離が短くなるにつれて警告装置の警告音を大きくし、又は警告音の間隔を短くする。また、車両の速度の大小に応じて警告音の大小を変える。これにより、障害物との接触を回避することができる。
【0068】
次に障害物警告システム10の動作について説明する。図8は障害物警告システム10の処理手順を示すフローチャートである。まず、座標変換処理(S100)について説明する。運転者が、表示装置4に備えられた操作部を操作してビデオカメラ1、2の動作スイッチをオンにすると、画像処理ASIC32は、ビデオカメラ1、2により撮像された撮像データを、1フレーム単位にフレームメモリ33の撮像データ領域33aに格納する。画像処理ASIC32は、予め設定してある変換テーブル34a、34bを変換テーブル用メモリ34から読み出し、フレームメモリ33の撮像データ領域33aに格納した撮像データを矯正後データに変化し、変換後の矯正後データを1フレーム単位にフレームメモリ33の矯正後データ領域33bに格納する。これにより、ビデオカメラ1により撮像した撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換するとともに、撮像画像を矯正画像に変換し、ビデオカメラ2により撮像した撮像画像を矯正画像に変換する。
【0069】
次に障害物候補抽出処理(S200)について説明する。画像処理ASIC32は、フレームメモリ33の矯正後データ領域33bに格納した、ビデオカメラ1、2夫々に対応する1フレーム単位の矯正後データを読み出す。画像処理ASIC32は、動的輪郭モデルに基づいたアルゴリズムにより、1フレーム単位の各矯正後データが有する画素の輝度値の変化点が大きい箇所に収束するような輪郭曲線を求め、ビデオカメラ1、2夫々で撮像した画像に対応する障害物候補P、Qを抽出する。なお、1フレーム単位の矯正後データ夫々において、複数の障害物候補P1、P2、…、Q1、Q2、…が抽出された場合には、共通する輪郭部分を有する障害物候補P1、P2、…、Q1、Q2、…ごとにグルーピングする。
【0070】
次に障害物抽出処理(S300)について説明する。画像処理ASIC32は、ビデオカメラ1の撮像画像を変換した矯正画像において抽出された障害物候補Pの形状と、ビデオカメラ2の撮像画像を変換した矯正画像において抽出された障害物候補Qの形状とを比較する。障害物候補Pと障害物候補Qとの形状の差異が小さい場合は、障害物候補P、Qに対応する対象物は、高さを有しない路面上の路面表示又は影であるとして、障害物ではないと認識する。一方、障害物候補Pと障害物候補Qとの形状の差異が大きい場合は、障害物候補P、Qに対応する対象物は、高さを有すると判定し、障害物であると認識する。
【0071】
図9は路面上の円形マークを撮像した例を示す説明図である。車両の左前方に適径で高さを無視できる円形マークを配置する。画面1aはビデオカメラ1により撮像した撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換した後の撮像画像を示す。図に示すように、円形マークは、ビデオカメラ1と円形マークとで定まる方向に円形マークが縮径したように撮像される。一方、画面2aは同じ円形マークをビデオカメラ2により撮像した撮像画像を示す。円形マークは、ビデオカメラ2と円形マークとで定まる方向に円形マークが縮径したように撮像される。
【0072】
共通領域Sの画面は、ビデオカメラ1、2により撮像された撮像画像の湾曲部分を矯正する変換テーブル34aにより変換した後の矯正画像を示す。変換テーブル34aは、路面上のマークをビデオカメラ1、2で撮像して得られた撮像画像の湾曲部分を矯正して、前記マークが有する元の形状を表す画像に変換するものである。矯正後の円形マークP1、Q1夫々は、元の形状が再現され、円形マークP1、Q1の形状の差異は少ない。これにより、障害物候補P、Qの形状が近似する場合は、障害物候補P、Qに対応する対象物の高さは無視でき、障害物ではないと判定することができる。
【0073】
図10は路面上の円柱形状物体を撮像した例を示す説明図である。車両の左前方に適径、適高の円柱形状物体を配置する。画面1aはビデオカメラ1により撮像した撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換した後の撮像画像を示す。図に示すように、円柱形状物体は、ビデオカメラ1と円柱形状物体とで定まる方向から、前記円柱形状物体を路面に投影した形状(投影形状)として撮像される。一方、画面2aは同じ円柱形状物体をビデオカメラ2により撮像した撮像画像を示す。円柱形状物体は、ビデオカメラ2と円柱形状物体とで定まる方向から、前記円柱形状物体を路面に投影した形状(投影形状)として撮像される。前記円柱形状物体は高さを有し、ビデオカメラ1、2の投影方向は異なるため、ビデオカメラ1、2で得られた投影形状は異なる。
【0074】
共通領域Sの画面は、ビデオカメラ1、2により撮像された撮像画像の湾曲部分を矯正する変換テーブル34aにより変換した後の矯正画像を示す。変換テーブル34aは、ビデオカメラ1、2で得られた投影形状を路面上の平面形状として矯正するため、撮像画像を変換した矯正画像は、湾曲度合いの大小に応じて前記投影形状の大きさが異なった画像となる。このため、ビデオカメラ1、2に対応する矯正画像における対象物P2、Q2夫々の形状の差異は大きい。これにより、障害物候補P、Qの形状が相違する場合は、障害物候補P、Qに対応する対象物は高さを有し、障害物であると判定することができる。
【0075】
次に距離算出処理(S400)について説明する。画像処理ASIC32は、障害物であると認識された障害物候補P、Qの共通する輪郭部分を特徴点として、特徴点の座標を算出する。特徴点の座標と矯正画像における車両の左前部の画素の座標との座標差を算出し、1画素当たりの距離を示す係数を積算して、車両左前部から障害部までの距離を算出する。画像処理ECU3は、認識した障害物までの距離と、車速センサ6で検出した車両の速度とに応じて、障害物との接触を回避すべく警告を行う。
【0076】
画像処理ASIC32は、上述の処理を1フレーム単位の撮像データに対して行った後は、次のフレーム単位の撮像データに対して、同様の処理を繰り返す。
【0077】
図11は路面表示を撮像して変換テーブル34aを修正する例を示す説明図である。車両の左前方の路面上に表示された「4」(対象物)という数字を、ビデオカメラ1、2により撮像する。画像処理ASIC32は、ビデオカメラ1の撮像画像を変換した矯正画像において抽出された数字「4」で表される障害物候補1Sの形状と、ビデオカメラ2の撮像画像を変換した矯正画像において抽出された数字「4」で表される障害物候補2Sの形状とを比較する。すなわち、画像処理ASIC32は、障害物候補1S及び2Sが有する輝度値の間において相関値を演算する。相関値の算出は、数3で表される式に基づいて行われる。
【0078】
画像処理ASIC32は、ROM38に記憶された閾値TH2を読み出し、演算した相関値Rと閾値TH2とを比較する。閾値TH2は、路面上の平面形状の対象物を撮像した場合に、該対象物に対応する障害物候補間の前記相関値と同程度の値を予め設定しておく。相関値Rが閾値TH2よりも小さい場合には、ビデオカメラ1、2の視野中心が初期に設定された状態からずれていると判定し、数字「4」で表される障害物候補1Sの形状及び2Sの形状の特徴点を抽出する。特徴点としては、例えば、輪郭又は直線などを構成する画素である。抽出した特徴点同士を一致させるべく、変換後の座標を平行移動又は回転移動するように変換テーブル34aを修正する。例えば、変換テーブル34aの各画素のビットデータのうち、各入力番号に対応する画素の座標を修正する。
【0079】
修正した変換テーブル34aを用いて、ビデオカメラ1、2により撮像した撮像データを変換し、抽出した数字「4」で表される障害物候補1S及び2Sが有する輝度値の間で相関値を算出し、算出した相関値と閾値TH2とを比較し、相関値が閾値TH2よりも大きくなるまで、変換テーブル34aの修正処理を繰り返す。これにより、ビデオカメラ1、2を車両に搭載した後に、ビデオカメラ1、2の視野中心がずれた場合でも、変換テーブル34aを修正することにより、障害物の認識を正確に行うことができる。なお、変換テーブル34aを修正するために用いる路面上のマークは路面表示に限られず、例えば、複数の円形マークを表示した基準パターンを表示するプレートであってもよい。
【0080】
上述の通り、本発明にあっては、路面上の対象物の高さの有無を、ビデオカメラ1、2夫々で撮像した撮像画像を、変換テーブル34a、34bに基づいて変換した矯正画像における対象物の形状の差異により判定し、高さが無い物は路面上の表示又は影であるとして障害物ではないと認識し、高さを有する物は障害物であると認識して警告する。これにより、超音波センサ及び超音波センサ用のECUを使用せずに障害物の警告をすることができる。
【0081】
また、変換テーブル34bは、ビデオカメラ1により撮像した撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換するように構成してある。これにより、ビデオカメラ1を鉛直下方向に対して一定の角度をなした前方方向に向けて取り付けることができ、ビデオカメラ1で撮像できる撮像範囲が広くなる。
【0082】
また、本発明にあっては、動的輪郭モデルに基づくアルゴリズムにより障害物候補の抽出を行うことにより、車両又は障害物が動いている場合であっても、障害物の輪郭を抽出することができる。
【0083】
また、本発明にあっては、変換テーブル34aを修正する修正手段を備えている。これにより、車両の走行時の振動によりビデオカメラ1、2の光軸がずれた場合であっても、変換テーブル34aを修正して、正確に障害物を認識し、警告することができる。
【0084】
また、本発明にあっては、立体射影方式の魚眼レンズを用いる。等距離射影方式の魚眼レンズの場合には、魚眼レンズの焦点距離をf、魚眼レンズの光軸に対する入射角をθとすると、像高yは、y=fθで表される。一方、立体射影方式の魚眼レンズの場合は、魚眼レンズの焦点距離をf、魚眼レンズの光軸に対する入射角をθとすると、像高yは、y=2ftan(θ/2)で表される。これにより、立体射影方式の魚眼レンズは、等距離射影方式の魚眼レンズに比較して、入射角が大きい場合の像高が大きくなり、撮像した画像の分解能が向上し、より広い範囲において高精度に障害物までの距離を算出することが可能になる。
【0085】
上述の実施の形態においては、ビデオカメラ1、2を車両のフロントグリル中央部及び車両の左側ドアミラー下部に取り付ける構成であったが、これに限らず、車両の後部及び右側部に取り付けることにより、車両の四隅における障害物を認識することができる。
【0086】
上述の実施の形態においては、ビデオカメラ1、2を車両のフロントグリル中央部及び車両のドアミラー下部に取り付ける構成であったが、これに限らず、光軸の異なる2つの光学素子を有し、該光学素子が撮像した撮像データを取り出す2つの撮像素子を備えた一体型のビデオカメラを車両の左前部に設ける構成でもよい。
【0087】
上述の実施の形態においては、ビデオカメラ1、2は魚眼レンズを有する構成であったが、これに限らず、超広角レンズを用いる構成でよい。なお、この場合には、レンズに合わせて変換テーブル34a、34bを作成しておくことは言うまでもない。
【0088】
上述の実施の形態においては、撮像画像の湾曲部分を矯正するために変換テーブル34a、34bを用いる構成であったが、これに限らず、撮像画像の画素を矯正画像の画素に変換する変換式に基づいて、演算して変換する構成であってもよい。
【0089】
上述の実施の形態においては、ビデオカメラ1、2と画像処理ECU3との接続は、IEEE1394に準拠した車載LAN通信線を介して行われたが、これに限らず、NTSCに準拠した通信方式であってもよい。
【0090】
上述の実施の形態においては、障害物候補の抽出処理は、動的輪郭モデルに基づいて行う構成であったが、これに限らず、Hough変換、エッジ抽出などのアルゴリズムを用いる構成でもよい。
【0091】
上述の実施の形態においては、障害物の抽出処理は、障害物候補が有する画素の輝度値に関する相関値を算出する構成であったが、これに限らず、障害物候補の輪郭形状同士を比較してパターン認識することにより、形状の差異を判定する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る障害物警告システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ビデオカメラの撮像範囲を示す説明図である。
【図3】画像処理ECUの構成を示すブロック図である。
【図4】変換テーブルの概念図である。
【図5】ビデオカメラにより撮像した撮像画像の湾曲部分を矯正する例を示す説明図である。
【図6】ビデオカメラにより撮像した撮像画像の湾曲部分を矯正する例を示す説明図である。
【図7】障害物の矯正画像の画素を示す説明図である。
【図8】障害物警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】路面上の円形マークを撮像した例を示す説明図である。
【図10】路面上の円柱形状物体を撮像した例を示す説明図である。
【図11】路面表示を撮像して変換テーブルを修正する例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
1、2 ビデオカメラ
3 画像処理ECU
4 表示装置
6 車速センサ
7 情報系LAN
31 通信インタフェース部
32 画像処理ASIC
33 フレームメモリ
34 変換テーブル用メモリ
34a、34b 変換テーブル
35 表示装置インタフェース部
36 マイクロコンピュータ
37 RAM
38 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外界の共通する撮像領域を撮像装置で撮像して得られた撮像画像を画像処理装置で画像処理し、障害物を認識して警告する障害物警告システムにおいて、
視野の中央部よりも端部において撮像画像の湾曲度合いが大きい撮像装置を複数備え、
前記画像処理装置は、
撮像画像の湾曲部分を矯正するために前記撮像画像を矯正画像に変換する変換手段と、
変換した各矯正画像の画素が有する輝度に基づいて障害物候補を抽出する抽出手段と、
抽出した障害物候補の形状の差異に基づいて障害物を認識する認識手段と
を備えたことを特徴とする障害物警告システム。
【請求項2】
前記変換手段は、撮像画像を鉛直下方向に撮像した画像に変換するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載された障害物警告システム。
【請求項3】
前記変換手段は、撮像画像における画素の位置を特定する座標を矯正画像における画素の位置を特定する座標に変換するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された障害物警告システム。
【請求項4】
矯正画像における前記障害物候補の画素の座標に基づいて、車両から障害物までの距離を算出する算出手段を備え、
該算出手段が算出した距離に応じて警告するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された障害物警告システム。
【請求項5】
前記認識手段は、
前記抽出手段が抽出した各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値を演算する演算手段と、
該演算手段が演算した相関値と第1の閾値とを比較する比較手段と
を有し、
該比較手段の比較結果に基づいて、前記障害物候補の形状の差異を判定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された障害物警告システム。
【請求項6】
前記変換手段は、矯正画像の画素の位置を特定する座標を有し、
該座標を修正する修正手段を備え、
平面状の対象物を撮像した場合に、前記比較手段は、前記抽出手段が抽出した各障害物候補の画素が有する輝度値に関する相関値と第2の閾値とを比較するように構成してあり、
前記相関値が第2の閾値より小さいときは、前記修正手段は、一方の障害物候補の形状を他方の障害物候補の形状に一致させるように、前記変換手段が有する座標を修正するように構成してあることを特徴とする請求項5に記載された障害物警告システム。
【請求項7】
前記抽出手段は、矯正画像の画素が有する輝度に関するポテンシャル関数を用いた動的輪郭モデルに基づいて障害物候補を抽出するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された障害物警告システム。
【請求項8】
前記光学素子は、魚眼レンズを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された障害物警告システム。
【請求項9】
取得した撮像画像を画像処理して障害物を認識する画像処理装置において、
共通する撮像領域の撮像画像であって、視野の中央部よりも端部において湾曲度合いが大きい撮像画像を複数取得する取得手段と、
撮像画像の湾曲部分を矯正するために前記撮像画像を矯正画像に変換する変換手段と、
変換した各矯正画像の画素が有する輝度に基づいて障害物候補を抽出する抽出手段と、
抽出した障害物候補の形状の差異に基づいて障害物を認識する認識手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−50451(P2006−50451A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231471(P2004−231471)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】