集光ヘッド、およびストレージ装置
【課題】効率よく光強度を増加させた近接場光を生成できる集光ヘッド等を提供する。
【解決手段】集光ヘッド55は、光源ユニット1と、光源ユニット1からの光を集光する集光素子(42・43)と、集光素子(42・43)からの光の集光点に、光照射によりプラズモンを発生させる導電性散乱体2と、を含むようになっている。そして、光源ユニット1からの光は、少なくとも一部に、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群Rを含むようになっている。一方、導電性散乱体2は、光を受光する受光部に、少なくとも3回転以上の回転対称性を有している。
【解決手段】集光ヘッド55は、光源ユニット1と、光源ユニット1からの光を集光する集光素子(42・43)と、集光素子(42・43)からの光の集光点に、光照射によりプラズモンを発生させる導電性散乱体2と、を含むようになっている。そして、光源ユニット1からの光は、少なくとも一部に、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群Rを含むようになっている。一方、導電性散乱体2は、光を受光する受光部に、少なくとも3回転以上の回転対称性を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を生成できる集光ヘッド、およびそれを備えるストレージ装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)における記録密度を高める方式として、磁化の温度依存性を利用した熱アシスト磁気記録方式が種々開発されている。この記録方式は、微小な光スポットを磁気媒体に照射することで照射部分の温度を一時的に上昇させ、その温度上昇に伴う保磁力低下状態で記録を行う。そして、記録された情報は、温度上昇後の降温により元に戻った高保磁力状態によって、安定的に保存されるようになっている。
【0003】
この方式の場合、集光した光スポットのサイズは極力小さいと望ましい。そこで、回折限界の影響のない近接場光を利用することが考えられている。近接場光の生成技術(すなわち集光技術)としては、例えば、表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton;SPP)を利用した特許文献1〜3、および、局在プラズモンを利用した特許文献4が挙げられる。
【0004】
特許文献1および特許文献2の集光技術では、周期的表面形状と微小開口とを有する金属薄膜に対して、光が照射している。そのため、周期的表面形状に起因して、表面プラズモンポラリトン(SPP)が生じるとともに、微小開口を通過する近接場光が生じる。かかる場合、近接場光とSPPとによってプラズモンエンハンス効果が生じるようになる。その結果、このプラズモンエンハンス効果を利用して、光強度を増加させた近接場光が発生する(電場ベクトルの大きさを増加させた近接場光が発生する)。
【0005】
また、特許文献3の集光技術では、少なくとも2箇所の微小開口(スリット)と、これらの微小開口から成る周期的表面形状とを有する部材に対して、光が照射している。そして、特に、照射される光が、回転対称かつ放射状の電場ベクトルから成り、その上、回転対称中心から等距離で電場ベクトルの大きさを等しくしている(以下、このような光をラジアル偏波ビームと称す)。かかる場合、周期的表面形状によって生じるSPPとラジアル偏波ビームとの干渉により、強電場が生じるようになる。その結果、この強電場を利用して、光強度を増加させた近接場光が発生する。
【0006】
また、特許文献4の集光技術では、図51に示すように、導電性を有するとともに1つの頂点に向かい幅の小さくなった散乱体(導電性散乱体)102に対し、光L’が照射している。かかる場合、この散乱体102の頂点に、局在プラズモン(不図示)が生じるようになる。その結果、この局在プラズモンを利用して、光強度を増加させた近接場光が発生する。
【特許文献1】特開2004−61880号公報
【特許文献2】特開2004−213000号公報
【特許文献3】特開2005−31028号公報
【特許文献4】特開2003−114184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2の集光技術では、金属膜の微小開口を用いて近接場光を生成している。そして、この微小開口は、例えば特許文献2(段落〔0037〕等参照)に示すように、直径200nm程度である。これは、例えば赤色半導体レーザにおけるレーザ光の波長(およそ660nm;赤色波長)の数分の一程度のサイズといえる。つまり、これらの集光技術は、200nm程度のサイズの微小開口の場合には、光強度を増加させた近接場光を生成できる。しかしながら、これ以下の微小開口では、光強度を増加させた近接場光を生成しづらい{すなわち、近接場光の光強度(電場ベクトルの大きさ)を十分に増加させることができない}。
【0008】
また、この特許文献3の集光技術では、特許文献1および2の集光技術と同様に、入射光の波長である赤色波長等より数分の一程度のサイズの微小開口であれば、光強度を増加させた近接場光が生成する。しかしながら、上記同様、これ以下の微小開口では、光強度を増加させた近接場光を生成しづらい。
【0009】
その上、ラジアル偏波ビームは、上記したように、回転対称かつ放射状の電場ベクトルから成り、その上、回転対称中心から等距離での電場ベクトルの大きさを等しくしている。そのため、図52に示すように、光の伝搬方向からみると、電場ベクトルの方向(偏光方向)を示す矢印は放射状になる。しかし、このような特殊な偏光方向を有する光の生成は極めて難しい。
【0010】
ラジアル偏波ビームの生成として、例えば、旋光子105(図53参照)という光学素子を用いる方法が挙げられる。旋光子105とは、光の偏光方向を回転させるものであり、回転された偏光方向が元の偏光方向に対して90°回転している場合、その旋光子105は「旋光度0.25」の旋光子と称される。したがって、旋光度と回転角度との関係は、下記のようになる。
旋光度 − 回転角度(°)
0.00 − 0 … 図53(A)参照
0.25 − 90 … 図53(B)参照
0.50 − 180 … 図53(C)参照
0.75 − 270 … 図53(D)参照
1.00 − 360
なお、図53では、便宜上、偏光方向は一端のみに矢を付した矢印で示され、旋光子105に付された数値は旋光度を示している。また、2点鎖線は光の進行方向を示している。
【0011】
そして、ラジアル偏波ビームは、例えば図54に示すように、複数種の旋光子105を含む複合旋光子105’によって生成される(なお「」の数値は旋光度)。つまり、直線偏光の光が複数種の旋光子105を同時に通過することによって、ラジアル偏波ビームが生成する。
【0012】
すると、複合旋光子105’に照射されたときの光束LF’の幅と、複合旋光子105’の一面とが精度よく重なり合わなくてはならない。例えば図54のように、光束LF’の幅の中心LF’cと複合旋光子105’の面内中心105’cとが一致しなくてはならない。しかし、このような一致関係を成立させるのは極めて難しい。したがって、特許文献3の集光技術では、近接場光の生成の前提となるラジアル偏波ビームを容易に得ることが難しいといえる。また、複数種の旋光子105を含ませる複合旋光子105’の製造も極めて難しい。その上、この製造にかかるコストは高価でもある。
【0013】
また、特許文献4の集光技術は、局在プラズモンを用いている。そして、この局在プラズモンは伝播光ではなく、共鳴により生じる現象である。そのため、この集光技術は、入射光の波長よりも十分に小さな近接場光(入射光の波長に対して10分の1程度の近接場光)を生成できる。しかし、局在プラズモンは、P偏光の光のみによって生じる。そして、この特性のために、特許文献4の集光技術は、光強度を増加させた近接場光を効率よく生成しづらい。そこで、この理由について、図51、および図55〜図61を用いて説明する。
【0014】
図51に示すように、散乱体102に照射される光L’は、光源ユニット(半導体レーザ等)101からの光を集光素子(不図示)によって収斂したものである。そして、集光素子に入射する前の光における電場ベクトルの分布状態は、図55に示すように、光束LF’1における矢印(両端に矢を付した矢印)によって示される。ただし、この矢印は、直線偏光の光における任意の電場ベクトルの向き(偏光方向)のみを示したものである。
【0015】
なお、便宜上、散乱体102における頂点側をT側、このT側に対向する散乱体102の底辺側をB側と称する。また、散乱体102におけるT側とB側とを結ぶ方向(方向T-B)を基準に分かれる2つの側を、S1側とS2側と称する。したがって、集光素子に入射する前の光の光束LF’1は、光L’の進行方向AX’である方向AX’1からみると、図55のように示されることになる(なお、AX’は光軸でもある)。
【0016】
この図55の光束LF’1におけるS1側およびS2側は、図56に示すように、収斂されながら散乱体102に入射するときに想定される入射面191aに対し、平行な偏光になっている。したがって、集光素子に入射する前の光L’において、S1側・S2側に対応する光L’は、散乱体102に入射するときに、P偏光になっている。なお、この図56において、点線で示す矢印が収斂されながら散乱体102へ進む光の偏光方向(すなわちP偏光の偏光方向)を示している。
【0017】
一方、図55の光束LF’1におけるT側およびB側の光L’は、図57に示すように、収斂されながら散乱体102に入射するときに想定される入射面191bに対し、垂直な偏光になっている。したがって、集光素子に入射する前の光において、T側・B側に対応する光は、散乱体102に入射するときに、S偏光になっている。なお、この図57において、点線で示す矢印が収斂されながら散乱体102へ進む光の偏光方向(すなわちS偏光の偏光方向)を示している。
【0018】
すると、散乱体102に照射したときの光の光束LF’2は、光の進行方向AX’である方向AX’2からみると、図58のように示される。つまり、散乱体102に照射したときの光L’には、P偏光とS偏光とが生じるようになる。このように、P偏光とS偏光とを含む光L’では、上記したように、S偏光の光に基づいて、局在プラズモンが生じ得ない。そのため、光における一部分(S偏光)を無駄にしているといえる。したがって、特許文献4の集光技術は、光強度を増加させた近接場光を生成する効率が悪いといえる。
【0019】
本発明は、上記の種々の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、効率よく光強度を増加させた近接場光を生成できる集光ヘッド等を提供することにある。具体的には、本発明は、下記の2点を主だった目的としている。
・容易かつ安価にラジアル偏波ビームを生成する。
・生成したラジアル偏波ビームは、図59〜図61に示すように、集光素子を通過後も P偏光のみで構成される。そこで、このP偏光のみからなるラジアル偏波ビームで、効 率よく光強度を増加させた近接場光を生成する。
【0020】
なお、図59〜図61は、集光素子通過前の光束LF’1および集光素子通過後の光束LF’2の斜視図である。また、図59における矢印は、ラジアル偏波ビームにおいて、互いに直交する2方向に沿った偏光方向の一例のみを示している。そして、図60は2方向のうちの1方向に沿った偏光方向を示し、図61は残りの1方向に沿った偏光方向を示している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、光源ユニットと、光源ユニットからの射出光を集光する集光素子と、集光素子の集光点に配置され、光照射によりプラズモンを発生させる導電性散乱体と、を含む集光ヘッドになっている。
【0022】
そして、特に、光源ユニットからの射出光は、少なくとも一部に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含むようになっている。一方、導電性散乱体は、光を受光する受光部に、少なくとも3回転以上の回転対称性を有している。
【0023】
なお、さらに詳説すると、光源ユニットからの射出光は、少なくとも一部に、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含んでいる。
【0024】
かかる構成であれば、受光部が回転対称性を有するとともに、その受光部には放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含む光が照射される。そのため、回転対称性を有する受光部の電荷と、放射状に向く電場ベクトルとが、放射状に向いて振動する。その結果、放射状の先に位置する導電性散乱体の縁部に、プラズモン(局在プラズモン等)が効率よく発生する。すると、局在プラズモンによる電場増強効果によって、近接場光の光強度が増加するようになる。
【0025】
なお、導電性散乱体の形状は、3回転以上の回転対称性を有していれば特に限定されない。一例としては、導電性散乱体が板状体になっているとともに、受光部が真円状、または正三角形以上の正多角形状になっているものが挙げられる。
【0026】
また、局在プラズモンを任意の位置に発生させるべく、かかる受光部から光の進行方向に向いて伸びる柱状体になった導電性散乱体であってもよい。また、局在プラズモンを一箇所に集めるべく、受光部から光の進行方向に向いて伸びる錐状体になった導電性散乱体であってもよい。
【0027】
ただし、導電性散乱体の受光部に生じる局在プラズモンは、受光部のサイズの影響を受けやすい。すると、局在プラズモンによって光強度を高める近接場光も、受光部のサイズの影響を受けることになる。そこで、集光ヘッドとしての機能を果たすために適した受光部のサイズが存在することになる。そのサイズを規定した一例が、下記条件式(1)になっている。
【0028】
λ/1000≦LM1≦λ/10 … 条件式(1)
ただし、
LM1:受光部の最大幅長
λ :光の波長
である
【0029】
また、錐状体になった導電性散乱体の場合、局在プラズモンは、錐状体の突端に集まりやすい。そのため、錐状体の突端にも適したサイズが存在する。かかる突端のサイズと底面サイズを規定した一例が下記条件式(2)および(2)’になっている。
【0030】
λ/1000≦LM2≦λ/10 … 条件式(2)
λ/10≦LM3<λ … 条件式(2)’
ただし、
LM2:錐状体の突端に生じる曲面体が、光軸に対し垂直な面内方向において有する 最大幅長
LM3:錐状体の底面の最大幅長
λ :光の波長
である。
【0031】
なお、表面プラズモンを生じさせる導電性散乱体の形状としても、板状体になっているとともに、受光部が真円状、または正三角形以上の正多角形状になっているものが挙げられる。
【0032】
また、回転対称な周期構造によって生じる表面プラズモンは、回転対称の中心に集まりやすい。そこで、回転対称な周期構造の中心に、柱状突起片や錐状突起片等の局在プラズモンを発生させる構造体を配置することで、効率のよい局在プラズモンの発生が可能になる。また、表面プラズモンを一箇所に集めるべく、回転対称な周期構造の中心に、錐状突起片が設けられていてもよい。
【0033】
ところで、集光ヘッドにおける光源ユニットには、光を射出する光射出素子が含まれている。そして、その光射出素子は、キャリアの注入によって発光する活性層と、全反射により活性層に光を閉じ込めるクラッド層とを含むとともに、その活性層およびクラッド層の少なくとも一方に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造(フォトニック結晶)を有した2次元フォトニック結晶面発光レーザであると望ましい。
【0034】
種々有る光射出素子の中でも、2次元フォトニック結晶面発光レーザは、ラジアル偏波群を含む光を生成しやすいためである。つまり、2次元フォトニック結晶面発光レーザからの射出光が、少なくとも一部に回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含むことが多いためである。
【0035】
なお、2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、2次元周期構造(例えば正方格子または三角格子の格子構造)における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔が、活性層を伝播する光の実効的な波長の整数倍の長さと一致することで、レーザ発振が生じる(すなわち、フォトニック結晶におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振が生じる)。
【0036】
特に、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層から発光するTE発振モードの光(TE−Like偏光)の利得ピーク波長(TE発振モード光に対する利得が最大となる波長)とが一致することで生じるレーザ発振の場合、それだけで、ラジアル偏波群を含む光が生じることもある。
【0037】
例えば、少なくとも、2次元周期構造における格子構造が正方格子になっている場合、互いに直交する2種方向の電場ベクトルによる4回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群が発生する。
【0038】
さらに別例を挙げると、少なくとも、2次元周期構造における格子構造が三角格子になっている場合、方位角60°間隔で交差する3種方向の電場ベクトルによる6回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群が発生する。
【0039】
ところで、2次元フォトニック結晶面発光レーザからの光に対し、単数または複数の1/2波長板や、旋光子等の光学部材を配置するといった方策を施すことで、光源ユニットは、ラジアル偏波群を含ませた光を生成したり、ラジアル偏波群の比率(割合)を高めたりすることもできる。
【0040】
例えば、光射出素子から射出される光が、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群と、放射状でない電場ベクトル分布を構成する偏波群と、を含んでいる場合、1/2波長板の方位が放射状の電場ベクトルのいずれかの方位と一致するようにする方策が望ましい。詳細な例を挙げるならば、例えば、互いに直交する2種方向の電場ベクトルによる4回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群を含む光の場合、方策を施すことで、さらにラジアル偏波群の比率を高めることができるといえる。
【0041】
具体的な例としては、ラジアル偏波群の2種方向の一方である第1方向に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−としたときに、2次元フォトニック結晶面発光レーザからの光が、ラジアル偏波群と、第1方向に対して+45°傾斜した方向の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向の電場ベクトルとを含むようになっている場合が挙げられる。
【0042】
かかる場合、光源ユニットは、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する1/2波長板を含んでおり、その1/2波長板の方位を、ラジアル偏波群の上記2種方向におけるいずれか一方と一致させている。
【0043】
このような構成であると、1/2波長板によって、第1方向に対して+45°傾斜した方向の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向の電場ベクトルの向き(偏光方向)が放射状になりラジアル偏波群へと変化する。そのため、当初から存在するラジアル偏波群に、新たなラジアル偏波群が加わることになり、光源ユニットからの射出光内のラジアル偏波群の比率が極めて高まることになる。
【0044】
なお、1/2波長板に代えて、光源ユニットが、光射出素子から射出される光を通過させるとともに偏光方向を旋回させる旋光子を含んでおり、その旋光子が、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に旋回させる旋光度を有していてもよい。
【0045】
このような旋光子であっても、第1方向に対して+45°傾斜した方向の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向の電場ベクトルが放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0046】
また、ラジアル偏波群を全く含まない光をラジアル偏波群を含ませるような方策もある。例えば、2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルが発生している場合が挙げられる。
【0047】
かかる場合、光源ユニットは、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する第1の1/2波長板を含むようになっている。このような構成であると、第1の1/2波長板によって、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルの一部が、放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0048】
さらに、光源ユニットが、第1の1/2波長板からの光を通過させるとともに偏光方向を制御する第2の1/2波長板を含んでいると望ましい。具体的には、第1の1/2波長板の方位を第1方位、第2の1/2波長板の方位を第2方位とするとともに、第1方位に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とする場合、第2の1/2波長板が、第2方位を第1方位に対して+45°または−45°傾斜するように配されていると望ましい。
【0049】
このような構成であると、第1の1/2波長板でラジアル偏波群に変化しなかった電場ベクトルの残りが、第2の1/2波長板によって放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0050】
なお、2枚の1/2波長板に代えて、光源ユニットが、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光を通過させるとともに偏光方向を旋回させる旋光子を含んでおり、その旋光子が、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に旋回させる旋光度を有していてもよい。
【0051】
このような旋光子であっても、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルのほとんどが放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0052】
いずれにしても、フォトニック結晶と、旋光子または1つあるいは2つ以上の1/2波長板とを組み合わせることで、放射状になっていなかった電場ベクトルを放射状の電場ベクトルへと変換し、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を増すことができる。
【0053】
ところで、2次元フォトニック結晶面発光レーザは、TM発振モードでのレーザ発振も可能である。そして、かかる場合、すなわち、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、上記活性層から発光するTM発振モードの光(TM−Like偏光)の利得ピーク波長(TM発振モード光に対する利得が最大となる波長)とを一致することで生じるレーザ発振の場合、それだけで、ラジアル偏波群を含む光が生じる。
【0054】
詳説すると、TM発振モードで、少なくとも、上記の2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、ラジアル偏波群を含む光が発生する。
【0055】
かかる構成であれば、集光ヘッドの光源ユニットは、1/2波長板や旋光子等を用いることなく、ラジアル偏波群を極めて多く含む光を射出できる。
【0056】
なお、以上の集光ヘッドと、その集光ヘッドの光照射を受ける記録媒体に対し、磁気記録情報の少なくとも書き込みを行う磁気ヘッドと、を備えたストレージ装置は、上記の作用効果を奏じることにより、強い光強度をもつ近接場光によって良好に情報記録や情報読取を行うことができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、回転対称性の有る導電性散乱体(具体的には受光部)に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含む光が照射されることになる。そのため、回転対称性を有する受光部の電荷と、放射状に向く電場ベクトルとが、放射状に向いて振動し、局在プラズモンが効率よく発生する。そのため、局在プラズモンによる電場増強効果によって、近接場光の光強度が増加するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
[実施の形態1]
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以降で説明するラジアル偏波群は、便宜上、「R」と付される場合と付されない場合とがある。付されない場合は、他の図を参照するものとする。
【0059】
〈1.ストレージ装置の構成について〉
図2は、本発明のストレージ装置の一例である熱アシスト磁気記録方式を採用したHDD79の概略構成図である。この図に示すように、HDD79は、ハウジング78内に、磁気記録媒体(ディスク)80を固定しつつ回転させるスピンドルモータ69と、アクチュエータアッセンブリ59とを含んでいる。
【0060】
アクチュエータアッセンブリ59は、ピボット(旋回軸)51を介して回動可能になったアクチュエータアーム52を有している。そして、このアクチュエータアーム52の端部には、ヘッドユニット53が取り付けられている。
【0061】
このヘッドユニット53は、ディスク80に対して磁気情報の書き込みおよび読取を行う磁気ヘッド54と、磁気情報を書き込む場合にディスク80をスポット加熱する集光ヘッド55とを含んでいる。
【0062】
集光ヘッド55は、微小な光スポットをディスク80に照射することで照射部分の温度を一時的に上昇させ、ディスク80の保磁力を低下させる。一方、磁気ヘッド54は、保磁力の低下した状態のディスク80に対して、磁気情報を書き込むようになっている。すると、記録容量増加の観点から、光スポットのサイズは小さい方が好ましい。そこで、集光ヘッド55は、図1に示すような構成になっている。なお、この図1では、集光ヘッド55における光源ユニット1からの光を「L」とし、その光Lの光軸を「AX」として図示している。
【0063】
図1に示すように、集光ヘッド55は、光源ユニット1、コリメータレンズ41、対物レンズ(集光素子)42、半球形状レンズ(集光素子)43、および導電性散乱体2を含んでいる。光源ユニット1は、光L(レーザ光)を発するものであればよく、特に限定されるものではない。なお、この光源ユニット1についての詳細は後述する。
【0064】
コリメータレンズ41は、光源ユニット1からの射出光を平行光に変換するものである。対物レンズ42は、コリメータレンズ41からの平行光を半球形状レンズ43に向けて集光するものである。そして、半球形状レンズ43は、半球形状レンズ43に取り付けられた導電性散乱体2に向けて集光するものである。したがって、導電性散乱体2は、対物レンズ42および半球形状レンズ43を通過した光の集光点に位置している。
【0065】
導電性散乱体2は、集光された光を受光することによって、局在プラズモンを生じさせるものである。なお、導電性散乱体2についての詳細は後述する。
【0066】
〈2.光源ユニットについて〉
《2−1.フォトニック結晶面発光レーザについて》
本ストレージ装置に適用できる光源ユニット1は種々考えられる。そこで、適用可能な一例として、2次元フォトニック結晶を用いた半導体レーザ(2次元フォトニック結晶面発光レーザ;2-D PCL)を挙げる。なお、フォトニック結晶とは、周期的な屈折率分布をもつ構造のことである。
【0067】
フォトニック結晶面発光レーザ(光射出素子)3は、図3に示すように、2つの基板3a・3bを含むようになっている。第1基板3aは、第1電極31と、この第1電極31上に重なるように配された第1n型クラッド層32とを含んでいる。
【0068】
この第1n型クラッド層32は、例えばn型半導体材料で構成されている。そして、この第1n型クラッド層32の表面(2次元面)には、電子ビーム露光技術およびドライエッチング技術により、窪み(開孔)33が2次元の所定周期で配列されている{例えば開孔(格子点)33が正方格子状に配列されている}。すると、窪み33内部の空気とn型半導体材料との相異なる屈折率によって、2次元で周期的な屈折率分布が生じる(2次元周期構造が成立する)。したがって、第1n型クラッド層32の内部には、フォトニック結晶34が含まれることになる。
【0069】
一方、第2基板3bは、荷電粒子(キャリア)の注入によって発光する活性層35と、活性層35を挟持する第2n型クラッド層36・p型クラッド層37と、p型クラッド層37に重なるように配された第2電極38とを含んでいる。
【0070】
そして、第1基板3aの第1n型クラッド層32の表面と、第2基板3bの第2n型クラッド層36とを対向させて融着させると、2次元フォトニック結晶面発光レーザ(2-D PCL)3が完成する。このような2-D PCL3であれば、電極31・38間に電圧を印加することで、活性層35が発光し、その活性層35からの漏れ光(エバネッセント波)が、フォトニック結晶34へと到達するようになる。すると、この到達した光が、フォトニック結晶34による共振作用を受けレーザ発振に至る。このレーザ光は、フォトニック結晶により、第2基板3bのp型クラッド層37の一面に対して垂直な方向に回折され外部に取り出される。
【0071】
《2−2.フォトニック結晶による共振作用について》
ここで、フォトニック結晶34による共振作用について説明する。なお、下記説明(実施の形態1〜3)では、2次元周期構造として正方格子構造を例に挙げて説明していく。
【0072】
フォトニック結晶34は、上記したように、内部に周期的な屈折率分布を有している。そして、このような周期的な屈折率分布は、固体結晶中の原子の周期的配列と類似する。すると、結晶中を伝搬する電子の動きを表すバンド理論(例えばバンド図)を、フォトニック結晶34中を伝搬する光子に対して適用することができる。つまり、固体結晶中の電子が周期的ポテンシャルによってバンド構造を形成するのと同様に、フォトニック結晶34中における光子も、バンド構造(フォトニックバンド構造)を形成していると考えられる。
【0073】
そして、このフォトニックバンド構造におけるバンド端(例えばΓ点)と呼ばれる箇所で光が定在波になることを利用した技術がフォトニック結晶面発光レーザ3である(下記の非特許文献1〜3参照)。
【0074】
【非特許文献1】横山光, 今田昌宏, 野田進, “二次元フォトニック結晶面発光レーザ,” MATERIAL STAGE, vol.1, no.12, pp.23-29, 2002.
【非特許文献2】横山光, 野田進, “二次元フォトニック結晶レーザ,”CHEMICAL INDUSTRY, vol.53, pp.844-851, 2002.
【非特許文献3】横山光, 野田進, “二次元フォトニック結晶面発光レーザ,”赤外線学会学会誌, 第12巻, pp.17-23, 2003.
【0075】
このレーザ技術は、フォトニック結晶34に入射する光の波長(λ)のフォトニック結晶面内成分の整数倍とフォトニック結晶34の格子間隔(ピッチ)とが一致する場合に生じる共振を利用している。図4に示すように、2次元フォトニック結晶34における正方格子は、2つの代表的な方向(Γ−X方向およびΓ−M方向)において周期性を有している。そのため、例えばΓ−X方向における格子間隔を「a」とすると、一辺「a」の正方形から成る格子(基本格子E1)が面内において複数存在しているといえる(なお、白抜き矢印・網点矢印が光波を示す)。
【0076】
すると、そのフォトニック結晶面内成分が格子間隔aと一致する波長λの光波が任意のΓ−X方向に進行すると(なお、かかる場合のΓ−X方向を「0°」と称する)、この光波は一部はそのまま「0°」方向に進み続けるが、それ以外は格子点33で回折することになる。具体的には、この光波は、ブラッグ回折により、光波進行方向に対し「±90°」、および「180°」の方向に回折される。さらに、これらの回折された光(回折光)の進む先にも格子点33が存在する。そのため、これらの回折光も、進行方向に対し一部はそのまま「0°」方向に進み、一部は「±90°」、および「180°」の方向に回折する(なお、±の+は光波進行方向に対し時計回り、−は光波進行方向に対し反時計回りを意味する)。
【0077】
すると、これらの4つの光{「0°」、「±90°」、および「180°」に進行する光}は、図5に示すように、互いに結合し共振を起こすようになる。その上、これらの各方向に対し垂直な方向V(すなわち格子面に対して垂直方向V)にもブラッグ回折が生じる。そのため、共振によって得られたレーザ光は、フォトニック結晶34における格子面に対して垂直方向Vに出射するようになる(すなわち、V方向はレーザ光の進行方向)。
【0078】
なお、これまでの説明は、Γ−X方向の基本周期「a」と光の波長「λ」のフォトニック結晶面内成分が一致する場合を例に示した。しかし、これに限らず、フォトニック結晶における2次元周期構造内に存在する任意の周期と、光の波長のフォトニック結晶面内成分の整数倍とが一致する場合であれば、上述の共振現象が生じる。
【0079】
次に、フォトニック結晶34を利用した2次元的な共振現象を、より定量的に説明するために、光の分散関係を示すバンド図(フォトニックバンド図)を用いて説明する。図6は、正方格子から成る2次元フォトニック結晶34のバンド図である。このバンド図では、「a」は格子間隔(単位:[m])、「c」は光速(単位:[m/sec])を示し、縦軸は光の周波数に対して「a/c」を乗じて無次元化した規格周波数(光のエネルギー)を示している。一方、横軸は光の波数ベクトルを示している。そして、バンド図の横軸におけるΓ点、X点、M点は、ブリュアンゾーンにおける規約ゾーンの各頂点を意味している。
【0080】
なお、ブリュアンゾーンとは、実格子空間から求められる逆格子空間での波数ベクトルの基本領域である。そして、規約ゾーンは、ブリュアンゾーンにおいて同じ特性を繰り返す領域のことであり、正方格子の場合は直角三角形の領域になる。なお、上記の正方格子の実格子空間を図7(A)、実格子空間から求められる逆格子空間を図7(B)に示す。また、ブリュアンゾーンを図7(C)の網線領域、規約ゾーンは図7(C)の斜線領域に示す。
【0081】
なお、図7(A)において、格子間隔「a」の正方格子における基本並進ベクトルをa1、a2とし、直交座標の単位ベクトルをx、yとすると、a1、a2は下記のように表される。
a1=ax
a2=ay
【0082】
また、これらの基本並進ベクトルa1、a2に対する逆格子基本ベクトルb1、b2は、下記のように表される{図7(B)参照}。
b1=(2π/a)y
b2=(2π/a)x
【0083】
そして、Γ点は、光の波数ベクトルkにおけるフォトニック結晶面内の写像成分が逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて下記の式(1)を満たす値をもつ点ともいえる。
k=nb1+mb2 … 式(1)
ただし、
n、mは任意の整数
である。
【0084】
すると、「フォトニック結晶における2次元周期構造内に存在する任意の周期と、光の波長のフォトニック結晶面内成分の整数倍とが一致する状態」ということは、「フォトニックバンド構造において、波数ベクトルがΓ点の状態にある」といえる。
【0085】
以上のような、共振作用の生じる箇所は(定在波の生じる箇所は)、図6のバンド図において、光の群速度が零(「0」)になっている箇所といえる。光の群速度は∂ω/∂kで表されることから、バンド図の傾きが光の群速度を表す(なお、ωは角周波数、kは波数の大きさ)。すると、バンド図に示されるように、共振を引き起こす傾き「0」の箇所は、Γ点を含むX点、M点等のブリュアンゾーン端に複数存在することがわかる。
【0086】
上述の、Γ−X方向の周期が波長と一致する場合の共振は、Γ点での傾き「0」のバンド端(ポイントW)での共振現象を指し示している。また、ポイントWでは、図8(ポイントWの拡大図)に示すように、4つのバンド端(A〜D)があることも知られている。ただし、これらの4つのバンド端(A〜D)においては、レーザ発振に適したバンド端と不適なバンド端とが存在する(下記の非参考文献4・5参照)。
【0087】
【非特許文献4】M. Yokoyama and S. Noda, “Finite-Difference Time-Domain Simulation of Two-Dimensional Photonic Crystal Surface-Emitting Laser havinga Square-Lattice Slab Structure,” IEICE Trans. On Electron., vol.E87-C, pp.386-392, 2004.
【非特許文献5】M. Yokoyama and S. Noda, “Finite-Difference Time-Domain Simulation of Two-Dimensional Photonic Crystal Surface-Emitting Laser,” Optics Express, Vol. 13, pp.2869-2880, 2005.
【0088】
具体的には、図8に示した例の場合、共振周波数の最も低いバンド端Aと次に低いバンド端Bとは、レーザ発振に適したバンド端になっている。一方、共振周波数の最も高いバンド端Cと次に高いバンド端Dとはレーザ発振に不適なバンド端になっている。そこで、バンド端Aでの共振状態を「Aモード」、バンド端Bでの共振状態を「Bモード」とし、両モードの光発振状態における電場ベクトルの分布状態(偏光状態)を図9・図10(図9の簡略図)および図11・図12(図11の簡略図)に示す。
【0089】
なお、これらの図は、光の射出方向に対して垂直な任意断面での電場ベクトルの分布状態(任意の光束断面における電場ベクトルの分布状態)を示している。また、矢印の向きは電場ベクトルの方向(偏光方向)、矢印の長さは電場ベクトルの大きさ(光強度)を示している。
【0090】
図9・図10に示すように、Aモードでの電場ベクトルの分布状態では、電場ベクトルは光束中心(回転中心CP)を回転するような方向{すなわち、方位角方向(周方向)DC}に向いている。また、電場ベクトルの大きさは、光束中心(回転対称中心CP)から等距離において等しくなっている。したがって、Aモードでの2-D PCL3からの光は、少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心CPから等距離で等しい大きさで、かつ方位角方向DCに向いた電場ベクトルを含んでいるといえる。
【0091】
一方、図11・図12に示すBモードでの電場ベクトルでは、少なくとも一部に、互いに直交する2種の方向(1D・2D)を有する電場ベクトルが、4回転対称の電場ベクトル分布を構成している。その上、この4回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心CPから放射するような方向(すなわち、放射状)に向いている。そこで、このような回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルをラジアル偏波群Rと称する。なお、放射状の分布を示す電場ベクトルを偏波群と称してもよい。
【0092】
また、上記の2種方向の一方である第1方向(1D)に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、Bモードでの電場ベクトルでは、ラジアル偏波群Rと、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45°方向;+45D)の電場ベクトルと、第1方向(1D)に対して−45°傾斜した方向(−45°方向;-45D)の電場ベクトルとを含むといえる。なお、Bモードの光内でのラジアル偏波群Rと、+45°方向(+45D)の電場ベクトル・−45°方向(-45D)の電場ベクトルとの比率は、ラジアル偏波群Rのほうが低くなっている。
【0093】
〈3.導電性散乱体について〉
次に、導電性散乱体2について詳説する。導電性散乱体2は、光源ユニット1からの光(特にP偏光の光)の照射を受けることで、局在プラズモンを発生させるものであればよい。例えば、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)等の材料が挙げられる。
【0094】
《3−1.局在プラズモンの利用》
なお、上記のように局在プラズモンは、P偏光に起因して生じる。また、2-D PCL3におけるAモードでの光(図9・図10参照)は、対物レンズ42・半球形状レンズ43を通過後、S偏光のみの光になる。そのため、このAモードの光が導電性散乱体2に照射されても、局在プラズモンは発生しない。
【0095】
一方、Bモードの光(図11・図12)におけるラジアル偏波群Rは、対物レンズ42・半球形状レンズ43通過後、一部がP偏光の光になる。そのため、このBモードの光が導電性散乱体2に照射されると、ラジアル偏波群Rの光に起因して局在プラズモンが発生する。
【0096】
ここで、導電性散乱体2の形状{具体的には導電性散乱体2における受光部2aの形状;図13(A)参照}が、このラジアル偏波群Rの光に適するようになっていれば、効率よく局在プラズモンを発生させることができる。具体的には、導電性散乱体2の受光部2aが、2-D PCL3からの光の光軸AXに対する垂直な面内方向において、回転対称性を有していると望ましい{例えば図13(A)に示すような回転対称性を有する真円の板状(真円板)から成る導電性散乱体2が望ましい}。
【0097】
かかる構成であれば、回転対称性を有する受光部2a中の電荷と、放射状に向く電場ベクトル{ここでは回転対称性を有するととも放射状に向く電場ベクトル(すなわちラジアル偏波群Rの電場ベクトル)}とが、放射状に向いて振動する。すると、図13(B)および図13(C)[図13(B)の平面図]に示すように、放射状の先に位置する導電性散乱体2の縁部(エッジ)EGに局在プラズモンLPが発生する。そして、このような局在プラズモンLPが発生すると、局在プラズモンLPによる電場増強効果によって、近接場光の光強度が増加するようになる。
【0098】
なお、このように局在プラズモンLPによって光強度を高められた近接場光は、受光部2aと同程度サイズの集光になる。そのため、受光部2aのサイズが適切であれば、局在プラズモンLP自体が中空を有するように生じていても、実用上、中空部分を無視できる。
【0099】
ところで、Bモードの光におけるラジアル偏波群Rは4回転の回転対称性を有しているが、導電性散乱体2の回転対称性が4回転に限定されるものではない。むしろ回転対称性の数の多い導電性散乱体2ほど、効率よく局在プラズモンLPを生成できる。したがって、導電性散乱体2は、例えば図14(A)に示すように、4回転対称を有する正四角形の板状(正四角板)であってもよいし、図13(A)のような、無限の回転対称を有する真円の板状(真円板)であってもよい。
【0100】
なお、図14(B)のような3回転対称を有する正三角形の板状(正三角板)の導電性散乱体2であっても、回転対称性のない導電性散乱体に比べて、効率よく局在プラズモンLPを生成できる。要は、導電性散乱体2における受光部2aの形状が、真円、または正三角形以上の正多角形であればよい。
【0101】
その上、導電性散乱体2は、下記の条件式(1)を満たしていると望ましい。
λ/1000≦LM1≦λ/10 … 条件式(1)
ただし、
LM1:光照射される導電性散乱体2の受光部2aの最大幅長(nm)
λ :光の波長(nm)[光源ユニット1から射出される光の波長]
である。
【0102】
局在プラズモンLPによって光強度を高められた近接場光のサイズは、導電性散乱体2のサイズに比例する。そのため、導電性散乱体2のサイズが適切でない場合、近接場光によって、集光ヘッド55(ひいてはHDD79)の機能を低下させるような問題が起こり得る。このような問題を防止するための導電性散乱体2のサイズの範囲が、条件式(1)である。なお、受光部2aの最大幅長とは、例えば受光部2aが真円の場合は直径の長さであり、正四角形の場合は対角線の長さであり、正三角形の場合は一辺の長さである(すなわち、正多角形の場合では最長の対角線である)。
【0103】
この条件式(1)において上限値を上回る場合、受光部2aの長さが比較的長大になる。そのため、導電性散乱体2の縁近傍(エッジEG近傍)に形成される局在プラズモンLPが、中空を有するようになる。つまり、受光部2aの長さが長いほど、対向するエッジEG同士の間隔(エッジ間隔)も長くなってしまい、局在プラズモンLPが環状になってしまう。
【0104】
このような環状の局在プラズモンLPの場合、中空部分に起因して、近接場光にむらが生じる(均一な光強度を有する近接場光が生成されない)。すると、ディスク80に、環状の近接場光から成る光スポットが照射され、照射部分の温度が均一に上昇しないという問題が生じ得る(問題1)。
【0105】
一方、条件式(1)において下限値を下回る場合、受光部2aの長さが極めて短小化される。そのため、受光部2aに光照射を受けても局在プラズモンLP自体が発生しづらくなる。その上、受光部2aに当たらなかった光が、ディスク80にそのまま照射し、ノイズとなる問題も生じる(問題2)。
【0106】
しかしながら、条件式(1)の範囲内では上記の問題1・問題2が解消され、集光ヘッド55は、ディスク80に適した近接場光を照射することができる。
【0107】
ところで、導電性散乱体2は、受光部2aに回転対称性を有していればよいといえる。したがって、導電性散乱体2は、2-D PCL3からの光の光軸AXに対する垂直な面内方向において、回転対称性を有する受光部2aを底面とする柱状体(柱体)であってもよい。例えば、図15(A)、図15(B)、および図15(C)に示すような、円筒体(なお底面は真円板)、四角柱状体(なお底面は正四角板)、および三角柱状体(なお底面は正三角板)であってもよい。
【0108】
このような柱状体の導電性散乱体2の場合、局在プラズモンLPは、柱を伝うようになる(伝搬するようになる)。すると、設計上、半球形状レンズ43をディスク80に近づけられないようなときでも、導電性散乱体2を柱状に伸長することで、局在プラズモンLP(ひいては近接場光)をディスク80に近づけることができる。そのため、近接場光で、確実にディスク80を照射することができる。その上、ストレージ装置としての設計上の自由度も高まる。
【0109】
また、導電性散乱体2の表面に生じる局在プラズモンLPは、突起形状に集まりやすい特性を有する。すると、局在プラズモンLPを一箇所に集めてさらなる電場増強効果を図ることもできる。例えば、導電性散乱体2が、回転対称性を有する受光部2aを底面とする錐状体(錐体)であってもよい。つまり、図16(A)、図16(B)、および図16(C)等に示すような、円錐状体(なお底面は真円板)、四角錐状体(なお底面は正四角板)、および三角錐状体(なお底面は正三角板)であってもよい。
【0110】
なお、柱状体または錐状体の導電性散乱体2において、受光部2aが上記条件式(1)を満たしていれば、必然的に柱状体の端面や錐状体の突端は、受光部2aよりも大きくなり得ない。
【0111】
ところで、本来なら錐状体(錐状の導電性散乱体)2の突端は、図17の破線Fのように、鋭利な先端であると好ましい。しかしながら、錐状体2の突端を拡大して捉えると、製造技術上、その突端に曲面を有する部分(曲面体2b)が生じてしまう。そのため、錐状になった導電性散乱体2の場合、局在プラズモンLPによって光強度を高められた近接場光のサイズは、この曲面体2bのサイズ(最大幅長)に比例する。したがって、曲面体2bのサイズも適したサイズになっていることが望ましい。
【0112】
下記条件式(2)および(2)’は、その曲面体2bの適したサイズを規定する式である。
λ/1000≦LM2≦λ/10 … 条件式(2)
λ/10≦LM3≦λ … 条件式(2)’
ただし、
LM2:錐状の突端に生じる曲面体が、光軸に対し垂直な面内方向において有する最 大幅長(nm)
LM3:錐状体の底面の最大幅長
λ :光の波長(nm)
である。
【0113】
この条件式(2)を満たせば、上記したような問題1・問題2が生じない。その上、局在プラズモンLP自体は、錐状体2の突端ではなく受光部(底部)2aに生じる。すると、比較的広範囲{すなわち、条件式(2)を満たす錐状体の突端よりも広い範囲}で局在プラズモンLPが発生し、その局在プラスモンLPが錐状体の突端に集まることになる。そのため、条件式(1)を満たす導電性散乱体2よりも、条件式(2)および(2)’を満たす導電性散乱体2のほうが、効率的に近接場光の光強度を増加させることができる。
【0114】
《3−2.表面プラズモンの利用》
ところで、近接場光の光強度を増加させるために、導電性散乱体の集光点の周囲に表面ンプラズモンを励起させる周期構造を形成してもよい。
【0115】
例えば、図18に示すように、導電性散乱体2の受光部2aの周縁部に、表面プラズモン(不図示)を発生させる周期構造(例えば回転対称な周期構造)が設けられていてもよい。この構造としては、例えば半径の異なる金属環2cを同心円状に複数配することによって形成できる(ただし、回転対称な周期構造の中心は真円状の金属片になっている)。つまり、金属環2c同士の間隔がスリットstとなって、そのスリットstの有無による周期構造が形成される。
【0116】
かかる構成であれば、散乱体の周辺部に照射された光によって生じる表面プラズモンが散乱体の中心部に集まることになる。そのため、中心部(この場合、真円状の金属片)への集光効率が高まるため、局在プラズモンをさらに効率よく発生させることが可能になる。
【0117】
なお、このような周期構造を有する導電性散乱体2のサイズは、特に限定されるものではないが、例えば上記の条件式(1)を満たすようになっていれば望ましい。また、受光部2aの形状も、真円、または正三角形以上の正多角形であれば望ましい。
【0118】
〈4.ラジアル偏波群を含む光(ラジアル偏波ビーム)の生成について〉
ところで、上記したように、プラズモン(局在プラズモンLPまたは表面プラズモン)はP偏光によって生じる。そのため、2-D PCL3のBモードでの光では、集光素子(対物レンズ42・半球形状レンズ43)の通過後にP偏光になるラジアル偏波群Rのみが局在プラズモン等の発生に寄与する。そこで、このBモードやAモードの光において、ラジアル偏波群Rを増加もしくは生成させるための方策について、以下に説明する。
【0119】
《4−1.Bモードでの光に対する方策(方策1・方策2)》
Bモードの光に対しては、図19に示すように、2-D PCL3の光射出側に、1枚の1/2波長板(偏光制御素子)4を設ける方策(方策1)が挙げられる。この方策1では、特に、1/2波長板4の方位(波長板方位)が、電場ベクトルの向き(偏光方向)に対して限定されるようになっている。
【0120】
なお、波長板方位には、下記(1)〜(3)および図20に示すような特徴がある。図20では、電場ベクトルが波長板方位によって変化する過程を示している。そして、白抜き矢印が電場ベクトル、網点矢印が1/2波長板4の方位、実線矢印が電場ベクトルを直交分解した分解ベクトルを示している。また、「&」は、白抜き矢印の電場ベクトルの光が網点矢印の波長板方位を有する1/2波長板4を通過したことを意味し、「=」は、1/2波長板4通過後を意味している。
(1)図20(A)・図20(B)に示すように、電場ベクトルの向きが波長板方位と 同方向の場合、1/2波長板4は、電場ベクトルの向きを元の向きに対して逆向 きに変化させる。
(2)図20(C)・図20(D)に示すように、電場ベクトルの向きが波長板方位に 対して90°で傾いている場合、1/2波長板4は、電場ベクトルの向きを変化 させない。
(3)図20(E)〜図20(G)に示すように、電場ベクトルの向きが波長板方位に 対して45°で傾いている場合、1/2波長板4は、電場ベクトルの向きを元の 向きに対して90°変化させる。
なお、図20(E)・図20(F)での電場ベクトルの向きは、波長板方位に対して−45°傾いていると称し、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対して−90°傾いていると称する。また、図20(G)・図20(H)での電場ベクトルの向きは、波長板方位に対して+45°傾いていると称し、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対して+90°傾いていると称する。つまり、時計回りの方位角に「+」、反時計回りの方位角に「−」を付している。
【0121】
《《方策1》》
そして、方策1は、上記のような特徴を有する波長板方位を、Bモードの光におけるラジアル偏波群Rの第1方向(1D)または第2方向(2D)と一致させる。図21は、かかる方策1の一例として、波長板方位Qがラジアル偏波群Rの第2方向(2D)と一致している状態を示している{なお、網点矢印が波長板方位Q(Q1)である}。
【0122】
このような方策1が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と波長板方位Qとの関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図22は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、1/2波長板4によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0123】
なお、図23は、図21・図22の簡略図であり、図23(A)が図21、図23(B)が図22に対応している。また、この図23では、1枚の1/2波長板4を通過した後の光の電場ベクトルに「’」を付している(なお、以降の図や説明でも「’」の数は通過した1/2波長板4の枚数に相当する)。
【0124】
これらの図21〜図23に示すように、図21で波長板方位Qに対して90°傾いたラジアル偏波群Rにおける一部の電場ベクトル{第1方向(1D)に向く電場ベクトル}は、波長板方位Qの影響で変化しない(図22および図23の1D・1D’参照)。しかし、図21で波長板方位Qと一致するラジアル偏波群Rにおける他の一部の電場ベクトル{第2方向(2D)に向く電場ベクトル}は、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図22および図23の2D・2D’参照)。
【0125】
そのため、図21でのラジアル偏波群Rは、1/2波長板4を通過したとしても、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルのままである(図22および図23の1D・1D’・2D・2D’参照)。
【0126】
一方、図21で−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回りの方位角(+)で+90°傾き放射状になる{図22および図23の−45D・−45D’参照}。
【0127】
また、図21で+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回りの方位角(−)で−90°傾き放射状になる{図22および図23の+45D・+45D’参照}。
【0128】
そのため、図21の−45°方向(-45D)の電場ベクトルおよび+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、1/2波長板4を通過することによって、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになる{図22および図23(B)の−45D’・+45D’参照}。
【0129】
以上から、Bモードの光は、予め含まれているラジアル偏波群Rの偏光方向(1D・2D)の1つと合致する波長板方位Qの1/2波長板4を通過すると、+45°方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化する。その結果、Bモードの光は、1/2波長板4を通過することで、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。なお、光内の全電場ベクトル中の8割以上がラジアル偏波群Rになっている場合、その光をラジアル偏波ビームと称する。
【0130】
《《方策2》》
ところで、上記の方策1は、Bモードの光を1枚の1/2波長板4f1(4)を通過させることで、ラジアル偏波ビームを生成している。しかし、これに限定されることなく、複数の1/2波長板4でラジアル偏波ビームを生成する方策(方策2)でもよい。例えば、3枚の1/2波長板4に、Bモードの光を通過させる方策2が挙げられる。
【0131】
そこで、図24〜図28の電場ベクトル分布図を用いて、3つのステップから成る方策2を説明する。なお、図24はBモードの光、図25は1枚目の1/2波長板4f1通過後の光、図26は2枚目の1/2波長板4f2(4;便宜上、図示せず)通過後の光、図27は3枚目の1/2波長板4f3(4;便宜上、図示せず)通過後の光を示している。また、図28(A)〜図28(D)は、図24〜図27に対応する簡略図である。
【0132】
『ステップ1』
方策2は、Bモードの光が1枚目の1/2波長板4f1を通過する場合、ラジアル偏波群Rの第1方向(1D)または第2方向(2D)に対し時計回りの方位角(+)で波長板方位(第1波長板方位)を+45°傾ける(ステップ1)。図24は、かかるステップ1の一例として、第1波長板方位Q1がラジアル偏波群Rの第1方向(1D)に対して+45°傾いている状態を示している。
【0133】
このようなステップ1が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第1波長板方位Q1との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図25は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、1枚目の1/2波長板4f1によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0134】
そして、図24で第1方向(1D)の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、図25に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回りの方位角(−)で−90°傾く(図28の1D・1D’参照)。
【0135】
また、図24で第2方向(2D)の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、図25に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回りの方位角(+)で+90°傾く(図28の2D・2D’参照)。
【0136】
一方、図24で−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1に対して90°傾いているため変化しない(図25および図28の−45D・−45D’参照)。しかし、図24で+45°方向の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1と一致するために、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図25および図28の+45D・+45D’参照)。
【0137】
『ステップ2』
そして、ステップ1の完了後、方策2は、1枚目の1/2波長板4f1を通過した光を2枚目の1/2波長板4f2に通過させる(ステップ2)。具体的には、第1波長板方位Q1に対し、反時計回りの方位角(−)で−45°傾いた方位{第2波長板方位Q2(Q)}の2枚目の1/2波長板4f2に、光を通過させている。
【0138】
このようなステップ2が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第2波長板方位Q2との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図26は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、2枚目の1/2波長板4f2によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0139】
そして、図25で第2波長板方位Q2に対して90°傾いた方位角方向の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2の影響で変化しない(図26および図28の1D’・1D’’参照)。しかし、図25で第2波長板方位Q2と一致する方位角方向の電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図26および図28の2D’・2D’’参照)。
【0140】
一方、図25で−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、図26に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回り(−)方位角で−90°傾き放射状になる(図28の−45D・−45D’’参照)。
【0141】
また、図25で+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、図26に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回り(+)方位角で+90°傾き放射状になる(図28の+45D’・+45D’’参照)。
【0142】
『ステップ3』
そして、ステップ2の完了後、方策2は、2枚目の1/2波長板4f2を通過した光を3枚目の1/2波長板4f3に通過させる(ステップ3)。具体的には、第2波長板方位Q2に対し、時計回りの方位角(+)で+45°傾いた方位{第3波長板方位Q(Q3)}の3枚目の1/2波長板に、光を通過させている。
【0143】
このようなステップ3が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第3波長板方位Q3との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図27は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、3枚目の1/2波長板4f3によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0144】
そして、図26で方位角方向を向いた一部の電場ベクトルは、第3波長板方位Q3に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、図27に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回り(+)方位角で+90°傾き放射状になる(図28の1D’’・1D’’’参照)。
【0145】
また、図26で方位角方向を向いた他の一部の電場ベクトルは、第3波長板方位Q3に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、図27に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回り(−)方位角で−90°傾き放射状になる(図28の2D’’・2D’’’参照)。
【0146】
そのため、図26で方位角方向の電場ベクトルは、3枚目の1/2波長板4f3を通過することで、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)になる(図27および図28の1D’’’および2D’’’参照)。
【0147】
一方、図26で第3波長板方位Q3に対して90°傾いた電場ベクトルは、波長板方位の影響で変化しない(図27および図28の+45D’’・+45D’’’参照)。しかし、図26で第3波長板方位Q3と一致する電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図27および図28の−45D’’・−45D’’’参照)
【0148】
つまり、図26での方位角方向以外の方向の電場ベクトルは、3枚目の1/2波長板4f3を通過の有無にかかわらず、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)になったままである(図27および図28の−45D’’’・+45D’’’参照)。
【0149】
以上から、Bモードの光は、上記したような3枚の1/2波長板4(4f1〜4f3)を通過すると、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。なお、2枚目の波長板4f2通過後、光内で高比率である当初の+45°方向(+45D)および−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化している{図28(A)・図28(C)参照}。そのため、Bモードの光は、2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過することでも、当初のBモードの光よりも多くのラジアル偏波群Rを含むようになる。
【0150】
《4−2.Aモードでの光に対する方策(方策3)》
2-D PCL3からのAモードの光は、上記したように、集光素子を通過したときS偏光になる。しかし、下記の2つのステップから成る方策3を行うことによって、ラジアル偏波群Rを極めて多く含む光(ラジアル偏波ビーム)に変化させることができる。
【0151】
《《方策3》》
方策3は、Aモードの光に対し2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過させることで、ラジアル偏波ビームRを生成している。この方策3では、特に、1枚目の1/2波長板4f1の方位(第1波長板方位Q1)と2枚目の1/2波長板4f2の方位(第2波長板方位Q2)とが、互いに45°ずれるような関係になっている。なお、このようなずれ関係の例は種々想定できる。例えば、第2波長板方位Q2が第1波長板方位Q1に対し反時計回り(−)の方位角で−45°傾いた関係や、第2波長板方位Q2が第1波長板方位Q1に対し時計回り(+)の方位角で+45°傾いた関係等が挙げられる。
【0152】
また、Aモードの光における電場ベクトルの分布状態では、電場ベクトルは光束中心を基点として方位角方向DCに向いている(図9・図10参照)。したがって、1枚目の1/2波長板4f1の第1波長板方位Q1は、光軸AXに対する垂直な面内に沿っていればどの方向でもよいことになる。そこで、図29〜図36の電場ベクトルの分布図では、互いに直交するx方向・y方向を定義し、x方向と同方向の第1波長板方位Q1を図29の電場ベクトルの分布図で示し、x方向に対し反時計回り(−)の方位角で−45°傾いた第1波長板方位Q1を図33の電場ベクトルの分布図で示している。
【0153】
また、図30の電場ベクトルの分布図は、図29に示される第1波長板方位Q1を有する1枚目の1/2波長板4f1通過後の光を示し、図31は2枚目の1/2波長板4f2通過後の光を示している。また、図34の電場ベクトルの分布図は、図33に示される第1波長板方位Q1を有する1枚目の1/2波長板4f1通過後の光を示し、図35は2枚目の1/2波長板4f2通過後の光を示している。さらに、図32(A)〜図32(C)は、図29〜図31に対応する簡略図であり、さらに、図36(A)〜図36(C)は、図33〜図35に対応する簡略図である。
【0154】
『ステップ1』
方策3は、図29・図33に示すAモードの光が1枚目の1/2波長板4f1を通過する場合、第1波長板方位Q1を光軸AXに対する垂直な面内に沿った任意の方向に設定する(ステップ1)。
【0155】
このようなステップ1が行われると、方位角方向の電場ベクトルで第1波長板方位Q1と一致するものは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる。一方、方位角方向の電場ベクトルで第1波長板方位に対して90°傾いているものは、変化しない{図30・図32(B)、および、図34・図36(B)参照}。
【0156】
また、図30・図34に示すように、図29・図33において方位角方向の電場ベクトルであり、第1波長板方位Q1に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾き放射状になる{図32(B)・図36(B)参照}。
【0157】
さらに、図29・図33において方位角方向の電場ベクトルであり、第1波長板方位Q1に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾き放射状になる{図32(B)・図36(B)参照}。
【0158】
『ステップ2』
そして、ステップ1の完了後、方策3は、1枚目の1/2波長板4f1を通過した光を2枚目の1/2波長板4f2に通過させる(ステップ2)。具体的には、第1波長板方位Q1に対し、反時計回りの方位角(−)で−45°傾いた方位(第2波長板方位Q2)を有する2枚目の1/2波長板4f2に光を通過させている。
【0159】
このようなステップ2が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第2波長板方位Q2との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図31・図35は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、2枚目の1/2波長板4f2によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0160】
これらの図31・図35に示すように、図30・図34で第2波長板方位Q2に対して90°傾いた電場ベクトルは、第2波長板方位Q2の影響で変化しない。しかし、図30・図34で第2波長板方位Q2と一致する電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0161】
一方、図31・図35に示すように、図30・図34の電場ベクトルで第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾き放射状になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0162】
さらに、図30・図34の電場ベクトルで第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾き放射状になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0163】
以上から、Aモードの光は、上記したような2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過すると、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。なお、1枚目の1/2波長板4f1通過後、方位角方向の電場ベクトルの一部が、ラジアル偏波群Rが変化している{図32(B)・図36(B)のラジアル偏波群R参照}。そのため、Aモードの光は、1枚目の1/2波長板4f1を通過することでも、ラジアル偏波群Rを比較的多く含む光になっている。
【0164】
〈5.本発明における種々の特徴の一例について〉
《5−1.集光ヘッドにおける光源ユニットの特徴》
以上のように、本実施の形態の集光ヘッド55では、光源ユニット1がラジアル偏波群Rを含む光を生成するようになっている。具体的には、光源ユニット1は、キャリアの注入によって発光する活性層35と、全反射により活性層35に光を閉じ込めるクラッド層(第1n型クラッド層32・第2n型クラッド層36)とを含むとともに、活性層35およびクラッド層の少なくとも一方(例えば、第1n型クラッド層32)に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造(フォトニック結晶34)を有した半導体レーザ(2-D PCL3)を含むようになっている。
【0165】
そして、かかるような2-D PCL3では、フォトニック結晶34における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔(ピッチ)が、活性層35からの光の波長λの整数倍の長さと一致するようになっている。すなわち、2-D PCL3は、フォトニックバンド構造におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振を行っている。
【0166】
さらに詳説すると、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層35から発光するTE発振モードの光(後に詳説)における利得ピーク波長とを一致させることで、レーザ発振が生じるようになっている。
【0167】
かかるようなレーザ発振では、上記したBモードの光が生じる場合がある(図11参照)。かかるBモードでの光の場合、その光は、少なくとも一部に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群{詳説すると、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)}を含んでいる。具体的には、互いに直交する2種の方向(1D・2D)を有する電場ベクトルで、4回転対称の電場ベクトル分布を構成するラジアル偏波群Rが含まれている。
【0168】
このようなラジアル偏波群Rは、集光素子(対物レンズ42・半球形状レンズ43)を通過した後であっても、S偏光を生じ得ない。つまり、集光素子通過後のラジアル偏波群Rは、P偏光のみで構成されることになる。そのため、ラジアル偏波群Rをより多く含む光(ラジアル偏波ビーム)が、導電性散乱体2に照射すると、P偏光に起因する局在プラズモンLPが効率よく発生することになる。
【0169】
しかしながら、ラジアル偏波群Rの2種方向(1D・2D)の一方である第1方向(1D)に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、Bモードの光は、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向(-45D)の電場ベクトルとを含むことになる。このような+45°方向(+45D)の電場ベクトルの光および−45°方向(-45D)の電場ベクトルの光は、集光素子通過後にS偏光となるため、局在プラズモンLPの生成に寄与しない。
【0170】
そこで、本発明の実施の形態では、光内におけるラジアル偏波群Rの量を増加させる種々の方策を講じている。例えばBモードの光であれば、+45°方向(+45D)の電場ベクトルの光および−45°方向(-45D)の電場ベクトルの光をラジアル偏波群Rに変化させる方策である。
【0171】
かかる方策としては、1/2波長板4(4f1)を用いた方策1が挙げられる(図21〜図23参照)。つまり、光源ユニット1が、2-D PCL3と、その2-D PCL3から射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する1/2波長板4とを含むようになっている。そして、特に、その1/2波長板4の方位{波長板方位Q(Q1)}が、ラジアル偏波群Rの2種方向(1Dおよび2D)におけるいずれか一方と一致するようになっている。
【0172】
かかるような構成であれば、ラジアル偏波群Rのおける電場ベクトルは、波長板方位Qに対して一致するか90°傾いている。そのため、1/2波長板4を通過したとしても、ラジアル偏波群Rは、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルのままである。
【0173】
しかしながら、−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている一方、+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。そのため、1/2波長板4を通過したとき、−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し時計回りの方位角(+)で+90°傾く一方、+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し時計回りの方位角(−)で−90°傾く。
【0174】
すると、+45°方向(+45D)の電場ベクトルの光および−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)になる。
【0175】
以上から、Bモードの光は、予め含まれているラジアル偏波群Rの偏光方向(1D・2D)の1つと合致する波長板方位Qの1/2波長板4を通過すると、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。すると、方策1を施した光源ユニット1であれば、ラジアル偏波ビームを導電性散乱体2に照射させることが可能になる。
【0176】
また、上記した方策2を施した光源ユニット1であっても、ラジアル偏波ビームを生成できる(図25〜図28参照)。また、方策2におけるステップ1およびステップ2を経たBモードの光では、光内で高比率になっている当初の+45°方向(+45D)および−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化する{図28(A)・図28(C)参照}。そのため、Bモードの光は、2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過することでも、当初のBモードの光よりも多くのラジアル偏波群Rを含むようになる。つまり、方策2でのステップ1・ステップ2を経たBモードの光であっても、十分にラジアル偏波群Rを含む光といえる。
【0177】
なお、方策2のステップ1およびステップ2を行う光源ユニット1は、2-D PCL3と、2-D PCL3からのBモードの光を通過させるとともに偏光方向を制御する重なり合った2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)とを含むようになっている。そして、特に、1枚目の1/2波長板4f1の方位(第1波長板方位Q1)が、ラジアル偏波群Rの2種方向(1D・2D)のいずれか一方に対し、時計回り(+)の方位角で+45°傾斜している。その上、2枚目の1/2波長板4f2の方位(第2波長板方位Q2)が、第1波長板方位Q1に対し、反時計回りの方位角(−)で−45°傾斜している。
【0178】
ところで、2-D PCL3のレーザ発振では、上記したAモードの光も生じ得る(図9参照)。すると、Aモードの光に対し方策を施すことで、ラジアル偏波群Rを含むようにできれば望ましい。そこで、本実施の形態は、2-D PCL3のAモードの光を2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)に通過させる上記の方策3を施すようになっている(図29〜図36参照)。
【0179】
ただし、この方策3では、1枚目の1/2波長板4f1を通過したAモードの光でも、ラジアル偏波群Rが生じる。つまり、方策3でのステップ1を経たAモードの光であっても、十分にラジアル偏波群Rを含む光といえる。
【0180】
なお、Aモードの光は、光内の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさで、かつ方位角方向に向いた電場ベクトルを含むようになっている(図29・図33参照)。すると、方位角方向ゆえに、1枚目の1/2波長板4f1の方位(第1波長板方位Q1)は、Aモードの光の光軸AXに対する垂直な面内に沿っていればどの方向でもよいことになる。そのため、方策3のステップ1を行う光源ユニット1は、2-D PCL3と、2-D PCL3からのAモードの光を通過させるとともに偏光方向を制御する1枚の1/2波長板4f1とを含むようになっていればよい。
【0181】
かかるような構成であれば、方位角方向の電場ベクトルにおいて、主に、(1)第1波長板方位Q1と一致する電場ベクトル、(2)第1波長板方位Q1に対し90°傾いている電場ベクトル、(3)第1波長板方位Q1に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾く電場ベクトル、(4)第1波長板方位Q1に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾く電場ベクトル、が存在することになる{図32(A)・図36(A)参照}。
【0182】
そのため、(1)の電場ベクトルはその電場ベクトルの方向に対して逆方向になる一方、(2)の電場ベクトルはその電場ベクトルの方向に対して無変化である(これらを変化(1)・変化(2)と称す)。また、(3)の電場ベクトルはその電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾く一方、(4)の電場ベクトルはその電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾く(これらを変化(3)・変化(4)と称す)。
【0183】
すると、変化(3)・変化(4)は、電場ベクトルの向きを放射状にすることになる。そのため、Aモードの光は、1枚目の1/2波長板4f1を通過することでも、変化(3)・変化(4)によってラジアル偏波群Rを比較的多く含む光になる{図32(B)・図36(B)参照}。
【0184】
そして、方策3は、ステップ1によって部分的にラジアル偏波群Rを含むようになった光に対し、ステップ2を施すことで、さらに一層のラジアル偏波群Rを含ませるようにしている。そのため、光源ユニット1は、第1の1/2波長板4f1に重なるように配される第2の1/2波長板4f2を含むようになっている。そして、特に、第1波長板方位Q1に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、第2の1/2波長板4f2は、その方位(第2波長板方位Q2)を第1波長板方位Q1に対して+45°または−45°傾斜するように配されている。
【0185】
かかるような構成であれば、変化(3)・変化(4)によって生じたラジアル偏波群Rは、第2波長板方位Q2に対し90°傾いた電場ベクトルと第2波長板方位Q2に対し一致する電場ベクトルとを有する{図32(B)・図36(B)参照}。そのため、第2波長板方位Q2に対し90°傾いた電場ベクトルは第2波長板方位Q2の影響で変化せず、第2波長板方位Q2と一致する電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる。すると、変化(3)・変化(4)によって生じたラジアル偏波群Rは、ラジアル偏波群Rの要件を満たしたままの状態を維持する{図32(C)・図36(C)参照}。
【0186】
一方、変化(1)・変化(2)後の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾くものと、第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾くものとを有する{図32(B)・図36(B)参照}。そのため、第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いた電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾き放射状になる。一方、第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いた電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾き放射状になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0187】
よって、Aモードの光は、上記したような2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過することで、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。
【0188】
《5−2.集光ヘッドにおける導電性散乱体の特徴》
一方、本実施の形態の集光ヘッド55では、導電性散乱体2が、2-D PCL3からの光を受光する受光部2aに、少なくとも3回転以上の回転対称性を有している。例えば、導電性散乱体2が板状体になっており、受光部2aが真円状、または正三角形以上の正多角形状になっている。
【0189】
このような構成であれば、2-D PCL3からのラジアル偏波群Rを含む光(すなわちラジアル偏波群Rの電場ベクトル)と、回転対称性を有する受光部2a中の電荷とが、放射状に向いて振動する。その結果、効率よく、導電性散乱体2の端部に局在プラズモンLPが生じるようになる。
【0190】
また、導電性散乱体2は、受光部2aから光の進行方向に向けて伸びる柱状体になっていてもよいし、導電性散乱体2は、受光部2aから光の進行方向に向けて伸びる錐状体になっていてもよい。
【0191】
ただし、導電性散乱体2が、板状、柱状、または錐状のいずれであっても、上記の条件式(1)を満たしていることが望ましい。この条件式(1)を満たしていれば、上記の問題1・問題2を引き起こすことなく、近接場光を適切なサイズで生成できるからである。
【0192】
また、錐状の導電性散乱体2の場合、上記条件式(2)および(2)’を満たすことが望ましい。条件式(2)および(2)’を満たしていれば、局在プラズモン自体は、錐状体2の突端よりも大きな受光部2aに生じるので、比較的広範囲の面積を有する受光部2aにて生じた局在プラズモンLPが錐状体の突端に集まることになる。そのため、効率的に近接場光の光強度を増加させることができる。
【0193】
また、導電性散乱体2の受光部2aの周縁部には、例えば回転対称の周期構造が設けられていてもよい。つまり、SPPを生じさせるような周期構造が形成されていてもよい。そして、このような周期構造を有する導電性散乱体2では、回転対称の周期構造の中心に、柱状突起片2eが設けられていてもよいし、回転対称の周期構造の中心に、錐状突起片2fが設けられていてもよい。
【0194】
柱状突起片2eがある場合、導電性散乱体2に生じたSPPは、柱状突起片2eを伝って伝搬する。これにより、柱状突起片2eの先端部の周辺には局在プラズモンが発生する。そのため、柱状突起片2eがディスク80に近い位置に配されていれば、SPPによって光強度の増した近接場光が、微小なスポットのままディスク80に照射することになる。つまり、導電性散乱体2の受光部2a自体をディスク80に近づけることなく、柱状突起片2eを近づけることのみで、近接場光を確実にディスク80に照射することができる。
【0195】
一方、錐状突起片2fがある場合、導電性散乱体2に生じたSPPは、錐状突起片2fに集光する。すると、錐状突起片2fの先端部には局在プラズモンが発生する。そのため、集中することによって一層強大化したLPによって、近接場光が効率よく光強度を増加するようになる。
【0196】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0197】
実施の形態1では、光源ユニット1は、光にラジアル偏波群Rをより多く含ませるために、1/2波長板4を用いた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、旋光子を使用する光源ユニット1であってもよい(なお、旋光子を使用する方策を方策4と称する)。
【0198】
《《方策4》》
旋光子は、光の電場ベクトルの向き(偏光方向)を回転させるものである。図37は、かかるような旋光子5によって電場ベクトルが変化する過程を示している。なお、「&」は、白抜き矢印の電場ベクトルの光が旋光度0.25または0.75の旋光子5を通過したことを意味し、「=」は、旋光子5通過後を意味している。また、旋光子を用いる場合は、1/2波長板を用いる場合と異なり、光の電場ベクトルがどちらに向いてもその向きを90°回転させる。
【0199】
この図37(A)・図37(B)に示すように、旋光度が0.25または0.75の場合、回転前後の電場ベクトルの向きが90°回転(直角回転)する。すると、図9および図11に示すようなAモードの光およびBモードの光が、旋光度0.25/0.75の旋光子5を通過すると、図38および図39のような電場ベクトルの分布状態になる。
【0200】
つまり、Aモードの光の場合、図9・図10で方位角方向に向いた電場ベクトルは90°回転し放射状になる(図38参照)。そのため、Aモードの光は、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)を極めて多く含むようになる。つまり、ラジアル偏波ビームになる。
【0201】
一方、Bモードの光の場合、図11・図12で−45°方向(-45D)および+45°方向(+45D)の電場ベクトルは90°回転し放射状になる。すなわち、ラジアル偏波群Rになる(図39参照)。しかしながら、図11・図12で2種方向(1D・2D)の電場ベクトルは90°回転し方位角方向に向く(図39参照)。すると、Bモードの光は、当初のBモードの光よりもラジアル偏波群Rの比率を高くしている。そのため、十分にラジアル偏波群Rを含む光になる。
【0202】
なお、このような旋光子5を用いてラジアル偏波群Rを増加させる場合、1種類の旋光度のみを有する旋光子5が、2-D PCL3からの光を通過させるように配されていればよい。つまり、従来のような複数種類の旋光度を有する旋光子(複合旋光子)を用いる必要はない。そのため、複合旋光子でラジアル偏波群R等を生成する場合に必要とされる位置合わせ(光束中心と複合旋光子の面内中心との合致)は不要といえる。
【0203】
また、旋光子5が用いられると、光内で高比率である当初の+45°方向(+45D)および−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化している(図11・図39参照)。そのため、旋光子5通過後のBモードの光は、当初のBモードの光よりも多くのラジアル偏波群Rを含むようになる。
【0204】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1・2で用いた部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0205】
実施の形態1・2では、2-D PCL3から射出する光が、1/2波長板4または旋光子5を通過することで、ラジアル偏波群Rを増加させるようになっていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2-D PCL3から射出される光自体がラジアル偏波群Rを含むようにしてもよい。
【0206】
具体的には、2-D PCL3におけるTM発振モードを利用する。通常、半導体レーザでは、TE発振モード(TEモード)とTM発振モード(TMモード)とが存在する。したがって、2-D PCL3でも、図40に示すように、活性層35の層面に対し平行な電界Eおよび垂直な磁界Hを有するTE発振モード{図40(A)参照}と、活性層35の層面に対し平行な磁界Hおよび垂直な電界Eを有するTM発振モード{図40(B)参照}とが存在する。
【0207】
そして、このようなTE発振モード・TM発振モードでの利得(GAIN)と発振波長(nm)との関係(活性層での利得の周波数特性)は、図41のようになっている場合が多い。これは、通常、TE発振モードの光が、TM発振モードの光よりも高い利得を有することを意味する。そのため、2-D PCL3は、通常、TE発振モードで光が射出するようになっている(なお、上記説明での2-D PCL3からの光は、TE発振モードでの光に基づいている)。
【0208】
しかし、2-D PCL3は、2次元周期構造を有するフォトニック結晶34を含んでいる。そのため、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔(ピッチ)と、活性層35から発光するTM発振モードの光の利得ピーク波長{λ(TM)}とを一致させれば、2-D PCL3は、容易にTM発振モードの光(TM−Like偏光)を射出できる。
【0209】
なお、TM発振モードであっても、TE発振モード同様に、フォトニックバンド構造のΓ点で4つのバンド端が存在する。その上、これらのバンド端においても、発振に適した2つのバンド端と、発振に不向きな2つのバンド端とが存在する。この場合、レーザ発振に適したバンド端は、共振周波数の最も低いバンド端と最も高いバンド端になる。そこで、TM発振モードの場合、上記の共振周波数の最も低いバンド端を「バンド端AA」と称し、最も高いバンド端を「バンド端BB」と称する。さらに、これらのバンド端AAでの共振状態を「AAモード」、バンド端BBでの共振状態を「BBモード」とし、両モードの光における電場ベクトルの分布状態を図42および図43に示す。
【0210】
図42に示すように、AAモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群Rになったラジアル偏波ビームになっている。
【0211】
一方、図43に示すように、BBモードでの電場ベクトルの分布状態では、少なくとも一部に、互いに直交する2種の方向(11D・22D)を有する電場ベクトルが、4回転対称の電場ベクトル分布を構成している。その上、この4回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心から放射するような方向に向いている(つまり、比較的ラジアル偏波群Rを多く含む光になっている)。
【0212】
すると、2-D PCL3における活性層35から発光する光が、活性層35の層面に対し平行な磁界Hと、活性層35の層面に対し垂直な電界Eとを有するTM発振モードの光であれば、容易にラジアル偏波群Rを多く含む光(例えばラジアル偏波ビーム)を得ることができる。そのため、2-D PCL3からの光を通過させることで偏光方向を制御または旋回させる偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)は不要になる。
【0213】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4について説明する。なお、実施の形態1〜3で用いた部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0214】
実施形態1〜3の説明では、フォトニック結晶34における2次元周期構造として正方格子構造を例に挙げていた。しかし、本発明ではこれに限定されるものではない。例えば、2次元周期構造が、三角格子であってもよい。
【0215】
2次元周期構造が三角格子の場合であっても、正方格子の場合と同様に、フォトニック結晶34における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔が、活性層35からの光の波長の整数倍の長さと一致するようになっている。すなわち、2次元周期構造が三角格子の場合であっても、2-D PCL3は、フォトニックバンド構造におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振を行っている。
【0216】
さらに詳説すると、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層35から発光するTE発振モードの光の利得ピーク波長{λ(TE)}とを一致させることで、レーザ発振が生じるようにしてもよい(図41参照)。また、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層35から発光するTM発振モードの光の利得ピーク波長{λ(TM)}とを一致させることで、レーザ発振が生じるようにしてもよい(図41参照)。
【0217】
《1.三角格子の2次元周期構造の2-D PCLでのTE発振モード》
そこで、まず、TE発振モードの場合について説明する。図44のバンド図に示すように、TE発振モードの場合、6つのバンド端が存在する{1.実線(αモード)、2.破線、3.一点鎖線、4.極太実線(βモード)、5.点線、6.二点鎖線}。そして、この6つのバンド端において、共振周波数の最も低いバンド端αと、4番目に低いバンド端βとが、レーザ発振に適したバンド端になっている。一方、残りのバンド端はレーザ発振に不適なバンド端になっている。そこで、バンド端αでの共振状態を「αモード」、バンド端βでの共振状態を「βモード」とし、両モードの光における電場ベクトルの分布状態(偏光状態)を図45および図46に示す。
【0218】
図45に示すように、αモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで方位角60°間隔で交差する3種方向(1d・2d・3d)を有する電場ベクトルが、6回転対称の電場ベクトル分布を構成している。その上、この6回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心から放射するような方向(すなわち、放射状)に向いている。つまり、αモードの光は、ラジアル偏波群Rを多く含むラジアル偏波ビームになっている。そのため、αモードの光の場合、光を通過させることで偏光方向を制御または旋回させる偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)は不要になる。
【0219】
一方、図46に示すように、βモードでの電場ベクトルの分布状態では、電場ベクトルは光束中心(回転中心)を回転するような方向{すなわち、方位角方向(周方向)}に向いている。また、電場ベクトルの大きさは、光束中心(回転対称中心)から等距離において等しくなっている。したがって、βモードでの2-D PCL3からの光は、光内の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさで、かつ方位角方向DCに向いた電場ベクトルを含んでいるといえる。すると、βモードの光は、Aモードの光と類似した電場ベクトル分布といえる(図46・図9参照)。
【0220】
そのため、βモードの光に対して、Aモードの光に施した方策3を行えば、ラジアル偏波群を含む光が生成することになる。また、実施の形態2で説明したように、旋光度0.25または0.75の旋光子5を用いてもよい(方策4を施せばよい)。つまり、βモードの光が、旋光度0.25/0.75の旋光子5を通過するようにすれば、図46で方位角方向に向いた電場ベクトルは90°回転し放射状になり、図47に示すように、ラジアル偏波ビームになる。
【0221】
《2.三角格子の2次元周期構造の2-D PCLでのTM発振モード》
一方、TM発振モードの場合、TE発振モード同様に、フォトニックバンド構造のΓ点で6つのバンド端が存在する。その上、これらのバンド端においても、レーザ発振に適したバンド端は、共振周波数の最も低いバンド端と、4番目に低いバンド端とが、レーザ発振に適したバンド端になっている。そこで、TM発振モードの場合、上記の共振周波数の最も低いバンド端を「バンド端αα」と称し、4番目に低いバンド端を「バンド端ββ」と称する。さらに、これらのバンド端ααでの共振状態を「ααモード」、バンド端ββでの共振状態を「ββモード」とし、両モードの光における電場ベクトルの分布状態を図48および図49に示す。
【0222】
図48に示すように、ααモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで方位角60°間隔で交差する3種方向(1dd・2dd・3dd)を有する電場ベクトルが、6回転対称の電場ベクトル分布Rを構成している。その上、この6回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心から放射するような方向(すなわち、放射状)に向いている。つまり、ααモードの光は、ラジアル偏波群Rを多く含むラジアル偏波ビームになっている。
【0223】
一方、図49に示すように、ββモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群Rになったラジアル偏波ビームになっている。
【0224】
すると、2-D PCL3における活性層35から発光する光がTM発振モードの光であれば、フォトニック結晶34の2次元周期構造が、正方格子または三角格子のいずれであっても、容易にラジアル偏波ビームを得ることができる。そのため、TM発振モードの場合、偏光方向を制御または旋回させる偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)は不要になる。
【0225】
[実施形態1〜4における光源ユニットについて]
以上のような実施形態1〜4における光源ユニット1の関係を、簡略に説明すると、図50のようになる。この図50において、カッコ書きの中に示される「○」、「△」、「×」は、下記のような意味になっている。
「○」:ラジアル偏波ビーム
「△」:少なくとも一部にラジアル偏波群を含む光
「×」:放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含まない光
なお、「○」または「△」であれば、本実施の形態の集光ヘッド55において、使用可能な光といえる。
【0226】
図50に示されるように、ラジアル偏波群Rを多く含むようできる光源ユニット1は、容易かつ安価にラジアル偏波ビームを生成できる装置ともいえる。したがって、光源ユニット1として発明を把握することもできる。
【0227】
例えば、キャリアの注入によって発光する活性層35と、発光した光の到達するクラッド層(36・32)とを含むとともに、そのクラッド層32に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造を有した2-D PCL3と、2-D PCL3からの光の偏光を制御する偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)とを含む光源ユニット1が一つの発明ともいえる。
【0228】
そして、この光源ユニット1において、2-D PCL3が、互いに直交する2種方向(1Dおよび2D)の電場ベクトルによる4回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群Rを含む光を射出しているとする。すると、ラジアル偏波群Rの2種方向(1D・2D)の一方である第1方向(1D)に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−と規定できる。
【0229】
そして、2-D PCL3からの光が、ラジアル偏波群と、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルとを含むようになっている場合、光源ユニット1では、1/2波長板Qの方位が、ラジアル偏波群Rの2種方向(1Dまたは2D)におけるいずれか一方と一致するようになっている。
【0230】
つまり、Bモードの光に対して、方策1を施せるようになった光源ユニット1も発明として把握することもできる。
【0231】
また、上記同様に、2-D PCL3の光が、ラジアル偏波群Rと、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルとを含むようになっている場合、旋光子5が、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に旋回させる旋光度を有している光源ユニット1であってもよい。つまり、Bモードの光に対して、方策4を施せるようになった光源ユニット1も発明として把握できる。
【0232】
また、2-D PCL3から射出される光の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルが発生している場合、光源ユニット1は、第1の1/2波長板4f1を含むことで、ラジアル偏波群Rを生成できる。すなわち、図50のAモード・βモードの光に対して、方策3のステップ1を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0233】
その上、このような光源ユニット1は、さらに、第1の1/2波長板4f1からの光を通過させるとともに偏光方向を制御する第2の1/2波長板4f2を含むことで、ラジアル偏波群Rを生成するようになっている。特に、第1の1/2波長板4f2の方位を第1波長板方位Q1、第2の1/2波長板4f2の方位を第2波長板方位Q2とするとともに、第1波長板方位Q1に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、第2の1/2波長板4f2は、第2波長板方位Q2を第1波長板方位Q1に対して+45°または−45°傾斜するように配されている。すなわち、図50のAモード・βモードの光に対して、ステップ1・ステップ2から成る方策3を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0234】
また、上記同様に、2-D PCL3から射出される光の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルが発生している場合、光源ユニット1は、旋光子5を含むことで、ラジアル偏波群を生成するようになっている。特に、その旋光子5は、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に変化させる旋光度を有するようになっている。すなわち、図50のAモード・βモードの光に対して、方策4を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0235】
また、2-D PCL3は、フォトニックバンド構造におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振を行っている。そして、2-D PCL3がTM発振モードになっている場合、少なくとも、フォトニック結晶の2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、2-D PCL3の光に、ラジアル偏波群Rが発生するようになっている。すなわち、図50のAAモード、BBモード、ααモード、ββモードの光に対して、方策4を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0236】
一方、2-D PCL3がTE発振モードになっている場合、少なくとも、フォトニック結晶の2次元周期構造における格子構造が三角格子になっていることで、方位角60°間隔で交差する3種方向の電場ベクトルによる6回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群Rが発生しているときは、何らの方策を施す必要はない(図50のαモード参照)。
【0237】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0238】
例えば、光源ユニットにおける光射出素子は、2次元フォトニック結晶結晶面発光レーザに限定されるものではない。ラジアル偏波ビームを生成できる光射出素子(ひいては光源ユニット)であれば、特に限定されない。なぜなら、回転対称性を有する導電性散乱体に照射される光が放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含む光、特に、ラジアル偏波ビームであれば、本発明の目的である効率よく光強度を増加させた近接場光を生成できる集光ヘッドが完成するからである。
【0239】
また、フォトニック結晶における2次元周期構造を形成する開孔としては、円柱状の開孔を例に挙げて説明してきたが、これに限定されるものではない。要は、2-D PCLとしての機能を果たすフォトニック結晶になっていればよい。
【0240】
また、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光の波長も特に限定されるものではない。例えば、405nm、660nm、785nmのような波長であってもよい。
【0241】
また、導電性散乱体が板状体の場合、特に厚みの長さは限定されない。例えば、20nm等であってもよい。要は、近接場光を適切なサイズで生成できる導電性散乱体であればよい。
【0242】
また、SPPを生じさせる導電性散乱体の受光部周縁の回転対称構造において、設けられた回転対称の周期構造は、無限の回転対称性を有するものに限定されない。例えば、3回転以上の回転対称性を有する周期構造であってもよい。また、かかる導電性散乱体(具体的には受光部)の形状が、例えば正四角形であっても、周期構造の回転対称性は4回転対称に限定されるものではない。つまり、導電性散乱体の形状に生じる回転対称性と、受光部周縁の周期構造の回転対称性とは無関係であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本発明の集光ヘッドの概略構成図である。
【図2】本発明のストレージ装置の一例であるHDDの概略構成図である。
【図3】2次元フォトニック結晶面発光レーザの概略構成図である。
【図4】フォトニック結晶の2次元周期構造の平面図である。
【図5】フォトニック結晶内の光が射出する状態を説明した説明図である。
【図6】正方格子から成る2次元フォトニック結晶のバンド図である。
【図7】(A)は正方格子の実格子空間を示す平面図であり、(B)は実格子空間から求められる逆格子空間を示す平面図であり、(C)はブリュアンゾーンおよび規約ゾーンを示す平面図である。
【図8】図6のW部分の拡大図である。
【図9】Aモードでの光の電場ベクトル分布図である。
【図10】図9の簡略図である。
【図11】Bモードでの光の電場ベクトル分布図である。
【図12】図11の簡略図である。
【図13】(A)は真円状の板状導電性散乱体の斜視図であり、(B)は(A)の導電性散乱体に局在プラズモンが発生している状態を示す斜視図であり、(C)は(B)の平面図である。
【図14】(A)は正四角形状の板状導電性散乱体の斜視図であり、(B)は正三角形状の板状導電性散乱体の斜視図である。
【図15】(A)は円柱状の導電性散乱体の斜視図であり、(B)は正四角柱状の導電性散乱体の斜視図であり、(C)は正三角柱状の導電性散乱体の斜視図である。
【図16】(A)は円錐状の導電性散乱体の斜視図であり、(B)は正四角錐状の導電性散乱体の斜視図であり、(C)は正三角錐状の導電性散乱体の斜視図である。
【図17】錐体状の導電性散乱体の突端を拡大した平面図である。
【図18】表面プラズモンを発生させる導電性散乱体の斜視図であり、(A)は真円状の導電性散乱体、(B)は柱状突起片を有する導電性散乱体、(C)は錐状突起片を有する導電性散乱体を示している。
【図19】光源ユニットの概略構成図である。
【図20】電場ベクトルが波長板方位によって変化する過程を示す説明図であり、(A)・(B)は電場ベクトルの向きが波長板方位と同方向の場合を示し、(C)・(D)は電場ベクトルの向きが波長板方位に対して90°で傾いている場合を示し、(E)〜(G)は電場ベクトルの向きが波長板方位に対して45°で傾いている場合を示している。
【図21】Bモードの光に対する方策1において、1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図22】Bモードの光に対する方策1において、1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図23】(A)は図21の簡略図であり、(B)は図22の簡略図である。
【図24】Bモードの光に対する方策2において、1枚目の1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図25】Bモードの光に対する方策2において、1枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図26】Bモードの光に対する方策2において、2枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図27】Bモードの光に対する方策2において、3枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図28】(A)〜(D)は図24〜図27の簡略図である。
【図29】Aモードの光に対する方策3において、1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図30】Aモードの光に対する方策3において、1枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図31】Aモードの光に対する方策3において、2枚目の1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図32】(A)〜(C)は図29〜図31の簡略図である。
【図33】図29の他の一例を示す電場ベクトル分布図である。
【図34】図30の他の一例を示す電場ベクトル分布図である。
【図35】図31の他の一例を示す電場ベクトル分布図である。
【図36】(A)〜(C)は図33〜図35の簡略図である。
【図37】旋光子によって電場ベクトルが変化する過程を示す説明図であり、(A)は旋光度0.25を有する旋光子の場合、(B)は旋光度0.75を有する旋光子の場合を示している。
【図38】Aモードの光に対する方策4において、旋光子通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図39】Bモードの光に対する方策4において、旋光子通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図40】2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、生じる電界と磁界とを示す斜視図であり、(A)はTE発振モードの場合、(B)はTM発振モードの場合を示している。
【図41】活性層での利得の周波数特性図である。
【図42】AAモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図43】BBモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図44】三角格子から成る2次元フォトニック結晶のバンド図であり、Γ点の一部分の拡大図である。
【図45】αモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図46】βモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図47】βモードの光に対する方策4において、旋光子通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図48】ααモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図49】ββモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図50】実施形態1〜4における光源ユニットの関係を、簡略に説明した説明図である。
【図51】局在プラズモンを発生させる散乱体を用いた従来の近接場光発生装置の斜視図である。
【図52】ラジアル偏波ビームの平面図である。
【図53】旋光子によって電場ベクトルが変化する過程を示す説明図であり、(A)は旋光度0.00を有する旋光子の場合、(B)は旋光度0.25を有する旋光子の場合、(C)は旋光度0.50を有する旋光子の場合、(D)は旋光度0.75を有する旋光子の場合を示している。
【図54】複合旋光子の概略斜視図である。
【図55】集光素子に入射する前の光の電場ベクトル分布図である。
【図56】P偏光の生じる理由を示す説明図である。
【図57】S偏光の生じる理由を示す説明図である。
【図58】P偏光とS偏光とが混在した電場ベクトル分布図である。
【図59】ラジアル偏波ビームが集光素子を通過したときに、P偏光しか生じない理由を示す説明図である。
【図60】図59に示される2方向のうちの1方向に沿った偏光方向を示した説明図である。
【図61】図59に示される2方向のうちの残りの1方向に沿った偏光方向を示した説明図である。
【符号の説明】
【0244】
1 光源ユニット
2 導電性散乱体
2a 受光部
2b 錐状体の突端に生じる曲面体
2c 金属環(導電性散乱体)
2e 柱状突起片(導電性散乱体)
2f 錐状突起片(導電性散乱体)
3 2次元フォトニック結晶面発光レーザ(光射出素子)
4 1/2波長板(偏光制御素子)
4f1 1枚目の1/2波長板
4f2 2枚目の1/2波長板
4f3 3枚目の1/2波長板
5 旋光子(偏光制御素子)
32 第1n型クラッド層(クラッド層)
33 開孔(格子)
34 フォトニック結晶
35 活性層
36 第2n型クラッド層(クラッド層)
37 p型クラッド層
41 コリメータレンズ
42 対物レンズ(集光素子)
43 半球形状レンズ(集光素子)
53 ヘッドユニット
54 磁気ヘッド
55 集光ヘッド
79 HDD(ストレージ装置)
80 ディスク(記録媒体)
L 光
R ラジアル偏波群
V 光の進行方向
AX 光軸
Γ Γ点
1D ラジアル偏波群において、直交する電場ベクトルの2種方向のうちの一方 向(第1方向)
2D ラジアル偏波群において、直交する電場ベクトルの2種方向のうちの残り の一方向(第2方向)
+45D 第1方向に対して+45°傾斜した方向
−45D 第1方向に対して−45°傾斜した方向
1d ラジアル偏波群において、方位角60°間隔で交差する電場ベクトルの3 種方向のうちの一方向
2d ラジアル偏波群において、方位角60°間隔で交差する電場ベクトルの3 種方向のうちの残りの2つのうちの一方向
3d ラジアル偏波群において、方位角60°間隔で交差する電場ベクトルの3 種方向のうちの残りの一方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を生成できる集光ヘッド、およびそれを備えるストレージ装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)における記録密度を高める方式として、磁化の温度依存性を利用した熱アシスト磁気記録方式が種々開発されている。この記録方式は、微小な光スポットを磁気媒体に照射することで照射部分の温度を一時的に上昇させ、その温度上昇に伴う保磁力低下状態で記録を行う。そして、記録された情報は、温度上昇後の降温により元に戻った高保磁力状態によって、安定的に保存されるようになっている。
【0003】
この方式の場合、集光した光スポットのサイズは極力小さいと望ましい。そこで、回折限界の影響のない近接場光を利用することが考えられている。近接場光の生成技術(すなわち集光技術)としては、例えば、表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton;SPP)を利用した特許文献1〜3、および、局在プラズモンを利用した特許文献4が挙げられる。
【0004】
特許文献1および特許文献2の集光技術では、周期的表面形状と微小開口とを有する金属薄膜に対して、光が照射している。そのため、周期的表面形状に起因して、表面プラズモンポラリトン(SPP)が生じるとともに、微小開口を通過する近接場光が生じる。かかる場合、近接場光とSPPとによってプラズモンエンハンス効果が生じるようになる。その結果、このプラズモンエンハンス効果を利用して、光強度を増加させた近接場光が発生する(電場ベクトルの大きさを増加させた近接場光が発生する)。
【0005】
また、特許文献3の集光技術では、少なくとも2箇所の微小開口(スリット)と、これらの微小開口から成る周期的表面形状とを有する部材に対して、光が照射している。そして、特に、照射される光が、回転対称かつ放射状の電場ベクトルから成り、その上、回転対称中心から等距離で電場ベクトルの大きさを等しくしている(以下、このような光をラジアル偏波ビームと称す)。かかる場合、周期的表面形状によって生じるSPPとラジアル偏波ビームとの干渉により、強電場が生じるようになる。その結果、この強電場を利用して、光強度を増加させた近接場光が発生する。
【0006】
また、特許文献4の集光技術では、図51に示すように、導電性を有するとともに1つの頂点に向かい幅の小さくなった散乱体(導電性散乱体)102に対し、光L’が照射している。かかる場合、この散乱体102の頂点に、局在プラズモン(不図示)が生じるようになる。その結果、この局在プラズモンを利用して、光強度を増加させた近接場光が発生する。
【特許文献1】特開2004−61880号公報
【特許文献2】特開2004−213000号公報
【特許文献3】特開2005−31028号公報
【特許文献4】特開2003−114184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2の集光技術では、金属膜の微小開口を用いて近接場光を生成している。そして、この微小開口は、例えば特許文献2(段落〔0037〕等参照)に示すように、直径200nm程度である。これは、例えば赤色半導体レーザにおけるレーザ光の波長(およそ660nm;赤色波長)の数分の一程度のサイズといえる。つまり、これらの集光技術は、200nm程度のサイズの微小開口の場合には、光強度を増加させた近接場光を生成できる。しかしながら、これ以下の微小開口では、光強度を増加させた近接場光を生成しづらい{すなわち、近接場光の光強度(電場ベクトルの大きさ)を十分に増加させることができない}。
【0008】
また、この特許文献3の集光技術では、特許文献1および2の集光技術と同様に、入射光の波長である赤色波長等より数分の一程度のサイズの微小開口であれば、光強度を増加させた近接場光が生成する。しかしながら、上記同様、これ以下の微小開口では、光強度を増加させた近接場光を生成しづらい。
【0009】
その上、ラジアル偏波ビームは、上記したように、回転対称かつ放射状の電場ベクトルから成り、その上、回転対称中心から等距離での電場ベクトルの大きさを等しくしている。そのため、図52に示すように、光の伝搬方向からみると、電場ベクトルの方向(偏光方向)を示す矢印は放射状になる。しかし、このような特殊な偏光方向を有する光の生成は極めて難しい。
【0010】
ラジアル偏波ビームの生成として、例えば、旋光子105(図53参照)という光学素子を用いる方法が挙げられる。旋光子105とは、光の偏光方向を回転させるものであり、回転された偏光方向が元の偏光方向に対して90°回転している場合、その旋光子105は「旋光度0.25」の旋光子と称される。したがって、旋光度と回転角度との関係は、下記のようになる。
旋光度 − 回転角度(°)
0.00 − 0 … 図53(A)参照
0.25 − 90 … 図53(B)参照
0.50 − 180 … 図53(C)参照
0.75 − 270 … 図53(D)参照
1.00 − 360
なお、図53では、便宜上、偏光方向は一端のみに矢を付した矢印で示され、旋光子105に付された数値は旋光度を示している。また、2点鎖線は光の進行方向を示している。
【0011】
そして、ラジアル偏波ビームは、例えば図54に示すように、複数種の旋光子105を含む複合旋光子105’によって生成される(なお「」の数値は旋光度)。つまり、直線偏光の光が複数種の旋光子105を同時に通過することによって、ラジアル偏波ビームが生成する。
【0012】
すると、複合旋光子105’に照射されたときの光束LF’の幅と、複合旋光子105’の一面とが精度よく重なり合わなくてはならない。例えば図54のように、光束LF’の幅の中心LF’cと複合旋光子105’の面内中心105’cとが一致しなくてはならない。しかし、このような一致関係を成立させるのは極めて難しい。したがって、特許文献3の集光技術では、近接場光の生成の前提となるラジアル偏波ビームを容易に得ることが難しいといえる。また、複数種の旋光子105を含ませる複合旋光子105’の製造も極めて難しい。その上、この製造にかかるコストは高価でもある。
【0013】
また、特許文献4の集光技術は、局在プラズモンを用いている。そして、この局在プラズモンは伝播光ではなく、共鳴により生じる現象である。そのため、この集光技術は、入射光の波長よりも十分に小さな近接場光(入射光の波長に対して10分の1程度の近接場光)を生成できる。しかし、局在プラズモンは、P偏光の光のみによって生じる。そして、この特性のために、特許文献4の集光技術は、光強度を増加させた近接場光を効率よく生成しづらい。そこで、この理由について、図51、および図55〜図61を用いて説明する。
【0014】
図51に示すように、散乱体102に照射される光L’は、光源ユニット(半導体レーザ等)101からの光を集光素子(不図示)によって収斂したものである。そして、集光素子に入射する前の光における電場ベクトルの分布状態は、図55に示すように、光束LF’1における矢印(両端に矢を付した矢印)によって示される。ただし、この矢印は、直線偏光の光における任意の電場ベクトルの向き(偏光方向)のみを示したものである。
【0015】
なお、便宜上、散乱体102における頂点側をT側、このT側に対向する散乱体102の底辺側をB側と称する。また、散乱体102におけるT側とB側とを結ぶ方向(方向T-B)を基準に分かれる2つの側を、S1側とS2側と称する。したがって、集光素子に入射する前の光の光束LF’1は、光L’の進行方向AX’である方向AX’1からみると、図55のように示されることになる(なお、AX’は光軸でもある)。
【0016】
この図55の光束LF’1におけるS1側およびS2側は、図56に示すように、収斂されながら散乱体102に入射するときに想定される入射面191aに対し、平行な偏光になっている。したがって、集光素子に入射する前の光L’において、S1側・S2側に対応する光L’は、散乱体102に入射するときに、P偏光になっている。なお、この図56において、点線で示す矢印が収斂されながら散乱体102へ進む光の偏光方向(すなわちP偏光の偏光方向)を示している。
【0017】
一方、図55の光束LF’1におけるT側およびB側の光L’は、図57に示すように、収斂されながら散乱体102に入射するときに想定される入射面191bに対し、垂直な偏光になっている。したがって、集光素子に入射する前の光において、T側・B側に対応する光は、散乱体102に入射するときに、S偏光になっている。なお、この図57において、点線で示す矢印が収斂されながら散乱体102へ進む光の偏光方向(すなわちS偏光の偏光方向)を示している。
【0018】
すると、散乱体102に照射したときの光の光束LF’2は、光の進行方向AX’である方向AX’2からみると、図58のように示される。つまり、散乱体102に照射したときの光L’には、P偏光とS偏光とが生じるようになる。このように、P偏光とS偏光とを含む光L’では、上記したように、S偏光の光に基づいて、局在プラズモンが生じ得ない。そのため、光における一部分(S偏光)を無駄にしているといえる。したがって、特許文献4の集光技術は、光強度を増加させた近接場光を生成する効率が悪いといえる。
【0019】
本発明は、上記の種々の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、効率よく光強度を増加させた近接場光を生成できる集光ヘッド等を提供することにある。具体的には、本発明は、下記の2点を主だった目的としている。
・容易かつ安価にラジアル偏波ビームを生成する。
・生成したラジアル偏波ビームは、図59〜図61に示すように、集光素子を通過後も P偏光のみで構成される。そこで、このP偏光のみからなるラジアル偏波ビームで、効 率よく光強度を増加させた近接場光を生成する。
【0020】
なお、図59〜図61は、集光素子通過前の光束LF’1および集光素子通過後の光束LF’2の斜視図である。また、図59における矢印は、ラジアル偏波ビームにおいて、互いに直交する2方向に沿った偏光方向の一例のみを示している。そして、図60は2方向のうちの1方向に沿った偏光方向を示し、図61は残りの1方向に沿った偏光方向を示している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、光源ユニットと、光源ユニットからの射出光を集光する集光素子と、集光素子の集光点に配置され、光照射によりプラズモンを発生させる導電性散乱体と、を含む集光ヘッドになっている。
【0022】
そして、特に、光源ユニットからの射出光は、少なくとも一部に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含むようになっている。一方、導電性散乱体は、光を受光する受光部に、少なくとも3回転以上の回転対称性を有している。
【0023】
なお、さらに詳説すると、光源ユニットからの射出光は、少なくとも一部に、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含んでいる。
【0024】
かかる構成であれば、受光部が回転対称性を有するとともに、その受光部には放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含む光が照射される。そのため、回転対称性を有する受光部の電荷と、放射状に向く電場ベクトルとが、放射状に向いて振動する。その結果、放射状の先に位置する導電性散乱体の縁部に、プラズモン(局在プラズモン等)が効率よく発生する。すると、局在プラズモンによる電場増強効果によって、近接場光の光強度が増加するようになる。
【0025】
なお、導電性散乱体の形状は、3回転以上の回転対称性を有していれば特に限定されない。一例としては、導電性散乱体が板状体になっているとともに、受光部が真円状、または正三角形以上の正多角形状になっているものが挙げられる。
【0026】
また、局在プラズモンを任意の位置に発生させるべく、かかる受光部から光の進行方向に向いて伸びる柱状体になった導電性散乱体であってもよい。また、局在プラズモンを一箇所に集めるべく、受光部から光の進行方向に向いて伸びる錐状体になった導電性散乱体であってもよい。
【0027】
ただし、導電性散乱体の受光部に生じる局在プラズモンは、受光部のサイズの影響を受けやすい。すると、局在プラズモンによって光強度を高める近接場光も、受光部のサイズの影響を受けることになる。そこで、集光ヘッドとしての機能を果たすために適した受光部のサイズが存在することになる。そのサイズを規定した一例が、下記条件式(1)になっている。
【0028】
λ/1000≦LM1≦λ/10 … 条件式(1)
ただし、
LM1:受光部の最大幅長
λ :光の波長
である
【0029】
また、錐状体になった導電性散乱体の場合、局在プラズモンは、錐状体の突端に集まりやすい。そのため、錐状体の突端にも適したサイズが存在する。かかる突端のサイズと底面サイズを規定した一例が下記条件式(2)および(2)’になっている。
【0030】
λ/1000≦LM2≦λ/10 … 条件式(2)
λ/10≦LM3<λ … 条件式(2)’
ただし、
LM2:錐状体の突端に生じる曲面体が、光軸に対し垂直な面内方向において有する 最大幅長
LM3:錐状体の底面の最大幅長
λ :光の波長
である。
【0031】
なお、表面プラズモンを生じさせる導電性散乱体の形状としても、板状体になっているとともに、受光部が真円状、または正三角形以上の正多角形状になっているものが挙げられる。
【0032】
また、回転対称な周期構造によって生じる表面プラズモンは、回転対称の中心に集まりやすい。そこで、回転対称な周期構造の中心に、柱状突起片や錐状突起片等の局在プラズモンを発生させる構造体を配置することで、効率のよい局在プラズモンの発生が可能になる。また、表面プラズモンを一箇所に集めるべく、回転対称な周期構造の中心に、錐状突起片が設けられていてもよい。
【0033】
ところで、集光ヘッドにおける光源ユニットには、光を射出する光射出素子が含まれている。そして、その光射出素子は、キャリアの注入によって発光する活性層と、全反射により活性層に光を閉じ込めるクラッド層とを含むとともに、その活性層およびクラッド層の少なくとも一方に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造(フォトニック結晶)を有した2次元フォトニック結晶面発光レーザであると望ましい。
【0034】
種々有る光射出素子の中でも、2次元フォトニック結晶面発光レーザは、ラジアル偏波群を含む光を生成しやすいためである。つまり、2次元フォトニック結晶面発光レーザからの射出光が、少なくとも一部に回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含むことが多いためである。
【0035】
なお、2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、2次元周期構造(例えば正方格子または三角格子の格子構造)における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔が、活性層を伝播する光の実効的な波長の整数倍の長さと一致することで、レーザ発振が生じる(すなわち、フォトニック結晶におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振が生じる)。
【0036】
特に、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層から発光するTE発振モードの光(TE−Like偏光)の利得ピーク波長(TE発振モード光に対する利得が最大となる波長)とが一致することで生じるレーザ発振の場合、それだけで、ラジアル偏波群を含む光が生じることもある。
【0037】
例えば、少なくとも、2次元周期構造における格子構造が正方格子になっている場合、互いに直交する2種方向の電場ベクトルによる4回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群が発生する。
【0038】
さらに別例を挙げると、少なくとも、2次元周期構造における格子構造が三角格子になっている場合、方位角60°間隔で交差する3種方向の電場ベクトルによる6回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群が発生する。
【0039】
ところで、2次元フォトニック結晶面発光レーザからの光に対し、単数または複数の1/2波長板や、旋光子等の光学部材を配置するといった方策を施すことで、光源ユニットは、ラジアル偏波群を含ませた光を生成したり、ラジアル偏波群の比率(割合)を高めたりすることもできる。
【0040】
例えば、光射出素子から射出される光が、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群と、放射状でない電場ベクトル分布を構成する偏波群と、を含んでいる場合、1/2波長板の方位が放射状の電場ベクトルのいずれかの方位と一致するようにする方策が望ましい。詳細な例を挙げるならば、例えば、互いに直交する2種方向の電場ベクトルによる4回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群を含む光の場合、方策を施すことで、さらにラジアル偏波群の比率を高めることができるといえる。
【0041】
具体的な例としては、ラジアル偏波群の2種方向の一方である第1方向に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−としたときに、2次元フォトニック結晶面発光レーザからの光が、ラジアル偏波群と、第1方向に対して+45°傾斜した方向の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向の電場ベクトルとを含むようになっている場合が挙げられる。
【0042】
かかる場合、光源ユニットは、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する1/2波長板を含んでおり、その1/2波長板の方位を、ラジアル偏波群の上記2種方向におけるいずれか一方と一致させている。
【0043】
このような構成であると、1/2波長板によって、第1方向に対して+45°傾斜した方向の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向の電場ベクトルの向き(偏光方向)が放射状になりラジアル偏波群へと変化する。そのため、当初から存在するラジアル偏波群に、新たなラジアル偏波群が加わることになり、光源ユニットからの射出光内のラジアル偏波群の比率が極めて高まることになる。
【0044】
なお、1/2波長板に代えて、光源ユニットが、光射出素子から射出される光を通過させるとともに偏光方向を旋回させる旋光子を含んでおり、その旋光子が、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に旋回させる旋光度を有していてもよい。
【0045】
このような旋光子であっても、第1方向に対して+45°傾斜した方向の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向の電場ベクトルが放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0046】
また、ラジアル偏波群を全く含まない光をラジアル偏波群を含ませるような方策もある。例えば、2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルが発生している場合が挙げられる。
【0047】
かかる場合、光源ユニットは、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する第1の1/2波長板を含むようになっている。このような構成であると、第1の1/2波長板によって、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルの一部が、放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0048】
さらに、光源ユニットが、第1の1/2波長板からの光を通過させるとともに偏光方向を制御する第2の1/2波長板を含んでいると望ましい。具体的には、第1の1/2波長板の方位を第1方位、第2の1/2波長板の方位を第2方位とするとともに、第1方位に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とする場合、第2の1/2波長板が、第2方位を第1方位に対して+45°または−45°傾斜するように配されていると望ましい。
【0049】
このような構成であると、第1の1/2波長板でラジアル偏波群に変化しなかった電場ベクトルの残りが、第2の1/2波長板によって放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0050】
なお、2枚の1/2波長板に代えて、光源ユニットが、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光を通過させるとともに偏光方向を旋回させる旋光子を含んでおり、その旋光子が、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に旋回させる旋光度を有していてもよい。
【0051】
このような旋光子であっても、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルのほとんどが放射状になり、ラジアル偏波群へと変化するためである。
【0052】
いずれにしても、フォトニック結晶と、旋光子または1つあるいは2つ以上の1/2波長板とを組み合わせることで、放射状になっていなかった電場ベクトルを放射状の電場ベクトルへと変換し、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を増すことができる。
【0053】
ところで、2次元フォトニック結晶面発光レーザは、TM発振モードでのレーザ発振も可能である。そして、かかる場合、すなわち、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、上記活性層から発光するTM発振モードの光(TM−Like偏光)の利得ピーク波長(TM発振モード光に対する利得が最大となる波長)とを一致することで生じるレーザ発振の場合、それだけで、ラジアル偏波群を含む光が生じる。
【0054】
詳説すると、TM発振モードで、少なくとも、上記の2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、ラジアル偏波群を含む光が発生する。
【0055】
かかる構成であれば、集光ヘッドの光源ユニットは、1/2波長板や旋光子等を用いることなく、ラジアル偏波群を極めて多く含む光を射出できる。
【0056】
なお、以上の集光ヘッドと、その集光ヘッドの光照射を受ける記録媒体に対し、磁気記録情報の少なくとも書き込みを行う磁気ヘッドと、を備えたストレージ装置は、上記の作用効果を奏じることにより、強い光強度をもつ近接場光によって良好に情報記録や情報読取を行うことができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、回転対称性の有る導電性散乱体(具体的には受光部)に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含む光が照射されることになる。そのため、回転対称性を有する受光部の電荷と、放射状に向く電場ベクトルとが、放射状に向いて振動し、局在プラズモンが効率よく発生する。そのため、局在プラズモンによる電場増強効果によって、近接場光の光強度が増加するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
[実施の形態1]
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以降で説明するラジアル偏波群は、便宜上、「R」と付される場合と付されない場合とがある。付されない場合は、他の図を参照するものとする。
【0059】
〈1.ストレージ装置の構成について〉
図2は、本発明のストレージ装置の一例である熱アシスト磁気記録方式を採用したHDD79の概略構成図である。この図に示すように、HDD79は、ハウジング78内に、磁気記録媒体(ディスク)80を固定しつつ回転させるスピンドルモータ69と、アクチュエータアッセンブリ59とを含んでいる。
【0060】
アクチュエータアッセンブリ59は、ピボット(旋回軸)51を介して回動可能になったアクチュエータアーム52を有している。そして、このアクチュエータアーム52の端部には、ヘッドユニット53が取り付けられている。
【0061】
このヘッドユニット53は、ディスク80に対して磁気情報の書き込みおよび読取を行う磁気ヘッド54と、磁気情報を書き込む場合にディスク80をスポット加熱する集光ヘッド55とを含んでいる。
【0062】
集光ヘッド55は、微小な光スポットをディスク80に照射することで照射部分の温度を一時的に上昇させ、ディスク80の保磁力を低下させる。一方、磁気ヘッド54は、保磁力の低下した状態のディスク80に対して、磁気情報を書き込むようになっている。すると、記録容量増加の観点から、光スポットのサイズは小さい方が好ましい。そこで、集光ヘッド55は、図1に示すような構成になっている。なお、この図1では、集光ヘッド55における光源ユニット1からの光を「L」とし、その光Lの光軸を「AX」として図示している。
【0063】
図1に示すように、集光ヘッド55は、光源ユニット1、コリメータレンズ41、対物レンズ(集光素子)42、半球形状レンズ(集光素子)43、および導電性散乱体2を含んでいる。光源ユニット1は、光L(レーザ光)を発するものであればよく、特に限定されるものではない。なお、この光源ユニット1についての詳細は後述する。
【0064】
コリメータレンズ41は、光源ユニット1からの射出光を平行光に変換するものである。対物レンズ42は、コリメータレンズ41からの平行光を半球形状レンズ43に向けて集光するものである。そして、半球形状レンズ43は、半球形状レンズ43に取り付けられた導電性散乱体2に向けて集光するものである。したがって、導電性散乱体2は、対物レンズ42および半球形状レンズ43を通過した光の集光点に位置している。
【0065】
導電性散乱体2は、集光された光を受光することによって、局在プラズモンを生じさせるものである。なお、導電性散乱体2についての詳細は後述する。
【0066】
〈2.光源ユニットについて〉
《2−1.フォトニック結晶面発光レーザについて》
本ストレージ装置に適用できる光源ユニット1は種々考えられる。そこで、適用可能な一例として、2次元フォトニック結晶を用いた半導体レーザ(2次元フォトニック結晶面発光レーザ;2-D PCL)を挙げる。なお、フォトニック結晶とは、周期的な屈折率分布をもつ構造のことである。
【0067】
フォトニック結晶面発光レーザ(光射出素子)3は、図3に示すように、2つの基板3a・3bを含むようになっている。第1基板3aは、第1電極31と、この第1電極31上に重なるように配された第1n型クラッド層32とを含んでいる。
【0068】
この第1n型クラッド層32は、例えばn型半導体材料で構成されている。そして、この第1n型クラッド層32の表面(2次元面)には、電子ビーム露光技術およびドライエッチング技術により、窪み(開孔)33が2次元の所定周期で配列されている{例えば開孔(格子点)33が正方格子状に配列されている}。すると、窪み33内部の空気とn型半導体材料との相異なる屈折率によって、2次元で周期的な屈折率分布が生じる(2次元周期構造が成立する)。したがって、第1n型クラッド層32の内部には、フォトニック結晶34が含まれることになる。
【0069】
一方、第2基板3bは、荷電粒子(キャリア)の注入によって発光する活性層35と、活性層35を挟持する第2n型クラッド層36・p型クラッド層37と、p型クラッド層37に重なるように配された第2電極38とを含んでいる。
【0070】
そして、第1基板3aの第1n型クラッド層32の表面と、第2基板3bの第2n型クラッド層36とを対向させて融着させると、2次元フォトニック結晶面発光レーザ(2-D PCL)3が完成する。このような2-D PCL3であれば、電極31・38間に電圧を印加することで、活性層35が発光し、その活性層35からの漏れ光(エバネッセント波)が、フォトニック結晶34へと到達するようになる。すると、この到達した光が、フォトニック結晶34による共振作用を受けレーザ発振に至る。このレーザ光は、フォトニック結晶により、第2基板3bのp型クラッド層37の一面に対して垂直な方向に回折され外部に取り出される。
【0071】
《2−2.フォトニック結晶による共振作用について》
ここで、フォトニック結晶34による共振作用について説明する。なお、下記説明(実施の形態1〜3)では、2次元周期構造として正方格子構造を例に挙げて説明していく。
【0072】
フォトニック結晶34は、上記したように、内部に周期的な屈折率分布を有している。そして、このような周期的な屈折率分布は、固体結晶中の原子の周期的配列と類似する。すると、結晶中を伝搬する電子の動きを表すバンド理論(例えばバンド図)を、フォトニック結晶34中を伝搬する光子に対して適用することができる。つまり、固体結晶中の電子が周期的ポテンシャルによってバンド構造を形成するのと同様に、フォトニック結晶34中における光子も、バンド構造(フォトニックバンド構造)を形成していると考えられる。
【0073】
そして、このフォトニックバンド構造におけるバンド端(例えばΓ点)と呼ばれる箇所で光が定在波になることを利用した技術がフォトニック結晶面発光レーザ3である(下記の非特許文献1〜3参照)。
【0074】
【非特許文献1】横山光, 今田昌宏, 野田進, “二次元フォトニック結晶面発光レーザ,” MATERIAL STAGE, vol.1, no.12, pp.23-29, 2002.
【非特許文献2】横山光, 野田進, “二次元フォトニック結晶レーザ,”CHEMICAL INDUSTRY, vol.53, pp.844-851, 2002.
【非特許文献3】横山光, 野田進, “二次元フォトニック結晶面発光レーザ,”赤外線学会学会誌, 第12巻, pp.17-23, 2003.
【0075】
このレーザ技術は、フォトニック結晶34に入射する光の波長(λ)のフォトニック結晶面内成分の整数倍とフォトニック結晶34の格子間隔(ピッチ)とが一致する場合に生じる共振を利用している。図4に示すように、2次元フォトニック結晶34における正方格子は、2つの代表的な方向(Γ−X方向およびΓ−M方向)において周期性を有している。そのため、例えばΓ−X方向における格子間隔を「a」とすると、一辺「a」の正方形から成る格子(基本格子E1)が面内において複数存在しているといえる(なお、白抜き矢印・網点矢印が光波を示す)。
【0076】
すると、そのフォトニック結晶面内成分が格子間隔aと一致する波長λの光波が任意のΓ−X方向に進行すると(なお、かかる場合のΓ−X方向を「0°」と称する)、この光波は一部はそのまま「0°」方向に進み続けるが、それ以外は格子点33で回折することになる。具体的には、この光波は、ブラッグ回折により、光波進行方向に対し「±90°」、および「180°」の方向に回折される。さらに、これらの回折された光(回折光)の進む先にも格子点33が存在する。そのため、これらの回折光も、進行方向に対し一部はそのまま「0°」方向に進み、一部は「±90°」、および「180°」の方向に回折する(なお、±の+は光波進行方向に対し時計回り、−は光波進行方向に対し反時計回りを意味する)。
【0077】
すると、これらの4つの光{「0°」、「±90°」、および「180°」に進行する光}は、図5に示すように、互いに結合し共振を起こすようになる。その上、これらの各方向に対し垂直な方向V(すなわち格子面に対して垂直方向V)にもブラッグ回折が生じる。そのため、共振によって得られたレーザ光は、フォトニック結晶34における格子面に対して垂直方向Vに出射するようになる(すなわち、V方向はレーザ光の進行方向)。
【0078】
なお、これまでの説明は、Γ−X方向の基本周期「a」と光の波長「λ」のフォトニック結晶面内成分が一致する場合を例に示した。しかし、これに限らず、フォトニック結晶における2次元周期構造内に存在する任意の周期と、光の波長のフォトニック結晶面内成分の整数倍とが一致する場合であれば、上述の共振現象が生じる。
【0079】
次に、フォトニック結晶34を利用した2次元的な共振現象を、より定量的に説明するために、光の分散関係を示すバンド図(フォトニックバンド図)を用いて説明する。図6は、正方格子から成る2次元フォトニック結晶34のバンド図である。このバンド図では、「a」は格子間隔(単位:[m])、「c」は光速(単位:[m/sec])を示し、縦軸は光の周波数に対して「a/c」を乗じて無次元化した規格周波数(光のエネルギー)を示している。一方、横軸は光の波数ベクトルを示している。そして、バンド図の横軸におけるΓ点、X点、M点は、ブリュアンゾーンにおける規約ゾーンの各頂点を意味している。
【0080】
なお、ブリュアンゾーンとは、実格子空間から求められる逆格子空間での波数ベクトルの基本領域である。そして、規約ゾーンは、ブリュアンゾーンにおいて同じ特性を繰り返す領域のことであり、正方格子の場合は直角三角形の領域になる。なお、上記の正方格子の実格子空間を図7(A)、実格子空間から求められる逆格子空間を図7(B)に示す。また、ブリュアンゾーンを図7(C)の網線領域、規約ゾーンは図7(C)の斜線領域に示す。
【0081】
なお、図7(A)において、格子間隔「a」の正方格子における基本並進ベクトルをa1、a2とし、直交座標の単位ベクトルをx、yとすると、a1、a2は下記のように表される。
a1=ax
a2=ay
【0082】
また、これらの基本並進ベクトルa1、a2に対する逆格子基本ベクトルb1、b2は、下記のように表される{図7(B)参照}。
b1=(2π/a)y
b2=(2π/a)x
【0083】
そして、Γ点は、光の波数ベクトルkにおけるフォトニック結晶面内の写像成分が逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて下記の式(1)を満たす値をもつ点ともいえる。
k=nb1+mb2 … 式(1)
ただし、
n、mは任意の整数
である。
【0084】
すると、「フォトニック結晶における2次元周期構造内に存在する任意の周期と、光の波長のフォトニック結晶面内成分の整数倍とが一致する状態」ということは、「フォトニックバンド構造において、波数ベクトルがΓ点の状態にある」といえる。
【0085】
以上のような、共振作用の生じる箇所は(定在波の生じる箇所は)、図6のバンド図において、光の群速度が零(「0」)になっている箇所といえる。光の群速度は∂ω/∂kで表されることから、バンド図の傾きが光の群速度を表す(なお、ωは角周波数、kは波数の大きさ)。すると、バンド図に示されるように、共振を引き起こす傾き「0」の箇所は、Γ点を含むX点、M点等のブリュアンゾーン端に複数存在することがわかる。
【0086】
上述の、Γ−X方向の周期が波長と一致する場合の共振は、Γ点での傾き「0」のバンド端(ポイントW)での共振現象を指し示している。また、ポイントWでは、図8(ポイントWの拡大図)に示すように、4つのバンド端(A〜D)があることも知られている。ただし、これらの4つのバンド端(A〜D)においては、レーザ発振に適したバンド端と不適なバンド端とが存在する(下記の非参考文献4・5参照)。
【0087】
【非特許文献4】M. Yokoyama and S. Noda, “Finite-Difference Time-Domain Simulation of Two-Dimensional Photonic Crystal Surface-Emitting Laser havinga Square-Lattice Slab Structure,” IEICE Trans. On Electron., vol.E87-C, pp.386-392, 2004.
【非特許文献5】M. Yokoyama and S. Noda, “Finite-Difference Time-Domain Simulation of Two-Dimensional Photonic Crystal Surface-Emitting Laser,” Optics Express, Vol. 13, pp.2869-2880, 2005.
【0088】
具体的には、図8に示した例の場合、共振周波数の最も低いバンド端Aと次に低いバンド端Bとは、レーザ発振に適したバンド端になっている。一方、共振周波数の最も高いバンド端Cと次に高いバンド端Dとはレーザ発振に不適なバンド端になっている。そこで、バンド端Aでの共振状態を「Aモード」、バンド端Bでの共振状態を「Bモード」とし、両モードの光発振状態における電場ベクトルの分布状態(偏光状態)を図9・図10(図9の簡略図)および図11・図12(図11の簡略図)に示す。
【0089】
なお、これらの図は、光の射出方向に対して垂直な任意断面での電場ベクトルの分布状態(任意の光束断面における電場ベクトルの分布状態)を示している。また、矢印の向きは電場ベクトルの方向(偏光方向)、矢印の長さは電場ベクトルの大きさ(光強度)を示している。
【0090】
図9・図10に示すように、Aモードでの電場ベクトルの分布状態では、電場ベクトルは光束中心(回転中心CP)を回転するような方向{すなわち、方位角方向(周方向)DC}に向いている。また、電場ベクトルの大きさは、光束中心(回転対称中心CP)から等距離において等しくなっている。したがって、Aモードでの2-D PCL3からの光は、少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心CPから等距離で等しい大きさで、かつ方位角方向DCに向いた電場ベクトルを含んでいるといえる。
【0091】
一方、図11・図12に示すBモードでの電場ベクトルでは、少なくとも一部に、互いに直交する2種の方向(1D・2D)を有する電場ベクトルが、4回転対称の電場ベクトル分布を構成している。その上、この4回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心CPから放射するような方向(すなわち、放射状)に向いている。そこで、このような回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルをラジアル偏波群Rと称する。なお、放射状の分布を示す電場ベクトルを偏波群と称してもよい。
【0092】
また、上記の2種方向の一方である第1方向(1D)に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、Bモードでの電場ベクトルでは、ラジアル偏波群Rと、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45°方向;+45D)の電場ベクトルと、第1方向(1D)に対して−45°傾斜した方向(−45°方向;-45D)の電場ベクトルとを含むといえる。なお、Bモードの光内でのラジアル偏波群Rと、+45°方向(+45D)の電場ベクトル・−45°方向(-45D)の電場ベクトルとの比率は、ラジアル偏波群Rのほうが低くなっている。
【0093】
〈3.導電性散乱体について〉
次に、導電性散乱体2について詳説する。導電性散乱体2は、光源ユニット1からの光(特にP偏光の光)の照射を受けることで、局在プラズモンを発生させるものであればよい。例えば、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)等の材料が挙げられる。
【0094】
《3−1.局在プラズモンの利用》
なお、上記のように局在プラズモンは、P偏光に起因して生じる。また、2-D PCL3におけるAモードでの光(図9・図10参照)は、対物レンズ42・半球形状レンズ43を通過後、S偏光のみの光になる。そのため、このAモードの光が導電性散乱体2に照射されても、局在プラズモンは発生しない。
【0095】
一方、Bモードの光(図11・図12)におけるラジアル偏波群Rは、対物レンズ42・半球形状レンズ43通過後、一部がP偏光の光になる。そのため、このBモードの光が導電性散乱体2に照射されると、ラジアル偏波群Rの光に起因して局在プラズモンが発生する。
【0096】
ここで、導電性散乱体2の形状{具体的には導電性散乱体2における受光部2aの形状;図13(A)参照}が、このラジアル偏波群Rの光に適するようになっていれば、効率よく局在プラズモンを発生させることができる。具体的には、導電性散乱体2の受光部2aが、2-D PCL3からの光の光軸AXに対する垂直な面内方向において、回転対称性を有していると望ましい{例えば図13(A)に示すような回転対称性を有する真円の板状(真円板)から成る導電性散乱体2が望ましい}。
【0097】
かかる構成であれば、回転対称性を有する受光部2a中の電荷と、放射状に向く電場ベクトル{ここでは回転対称性を有するととも放射状に向く電場ベクトル(すなわちラジアル偏波群Rの電場ベクトル)}とが、放射状に向いて振動する。すると、図13(B)および図13(C)[図13(B)の平面図]に示すように、放射状の先に位置する導電性散乱体2の縁部(エッジ)EGに局在プラズモンLPが発生する。そして、このような局在プラズモンLPが発生すると、局在プラズモンLPによる電場増強効果によって、近接場光の光強度が増加するようになる。
【0098】
なお、このように局在プラズモンLPによって光強度を高められた近接場光は、受光部2aと同程度サイズの集光になる。そのため、受光部2aのサイズが適切であれば、局在プラズモンLP自体が中空を有するように生じていても、実用上、中空部分を無視できる。
【0099】
ところで、Bモードの光におけるラジアル偏波群Rは4回転の回転対称性を有しているが、導電性散乱体2の回転対称性が4回転に限定されるものではない。むしろ回転対称性の数の多い導電性散乱体2ほど、効率よく局在プラズモンLPを生成できる。したがって、導電性散乱体2は、例えば図14(A)に示すように、4回転対称を有する正四角形の板状(正四角板)であってもよいし、図13(A)のような、無限の回転対称を有する真円の板状(真円板)であってもよい。
【0100】
なお、図14(B)のような3回転対称を有する正三角形の板状(正三角板)の導電性散乱体2であっても、回転対称性のない導電性散乱体に比べて、効率よく局在プラズモンLPを生成できる。要は、導電性散乱体2における受光部2aの形状が、真円、または正三角形以上の正多角形であればよい。
【0101】
その上、導電性散乱体2は、下記の条件式(1)を満たしていると望ましい。
λ/1000≦LM1≦λ/10 … 条件式(1)
ただし、
LM1:光照射される導電性散乱体2の受光部2aの最大幅長(nm)
λ :光の波長(nm)[光源ユニット1から射出される光の波長]
である。
【0102】
局在プラズモンLPによって光強度を高められた近接場光のサイズは、導電性散乱体2のサイズに比例する。そのため、導電性散乱体2のサイズが適切でない場合、近接場光によって、集光ヘッド55(ひいてはHDD79)の機能を低下させるような問題が起こり得る。このような問題を防止するための導電性散乱体2のサイズの範囲が、条件式(1)である。なお、受光部2aの最大幅長とは、例えば受光部2aが真円の場合は直径の長さであり、正四角形の場合は対角線の長さであり、正三角形の場合は一辺の長さである(すなわち、正多角形の場合では最長の対角線である)。
【0103】
この条件式(1)において上限値を上回る場合、受光部2aの長さが比較的長大になる。そのため、導電性散乱体2の縁近傍(エッジEG近傍)に形成される局在プラズモンLPが、中空を有するようになる。つまり、受光部2aの長さが長いほど、対向するエッジEG同士の間隔(エッジ間隔)も長くなってしまい、局在プラズモンLPが環状になってしまう。
【0104】
このような環状の局在プラズモンLPの場合、中空部分に起因して、近接場光にむらが生じる(均一な光強度を有する近接場光が生成されない)。すると、ディスク80に、環状の近接場光から成る光スポットが照射され、照射部分の温度が均一に上昇しないという問題が生じ得る(問題1)。
【0105】
一方、条件式(1)において下限値を下回る場合、受光部2aの長さが極めて短小化される。そのため、受光部2aに光照射を受けても局在プラズモンLP自体が発生しづらくなる。その上、受光部2aに当たらなかった光が、ディスク80にそのまま照射し、ノイズとなる問題も生じる(問題2)。
【0106】
しかしながら、条件式(1)の範囲内では上記の問題1・問題2が解消され、集光ヘッド55は、ディスク80に適した近接場光を照射することができる。
【0107】
ところで、導電性散乱体2は、受光部2aに回転対称性を有していればよいといえる。したがって、導電性散乱体2は、2-D PCL3からの光の光軸AXに対する垂直な面内方向において、回転対称性を有する受光部2aを底面とする柱状体(柱体)であってもよい。例えば、図15(A)、図15(B)、および図15(C)に示すような、円筒体(なお底面は真円板)、四角柱状体(なお底面は正四角板)、および三角柱状体(なお底面は正三角板)であってもよい。
【0108】
このような柱状体の導電性散乱体2の場合、局在プラズモンLPは、柱を伝うようになる(伝搬するようになる)。すると、設計上、半球形状レンズ43をディスク80に近づけられないようなときでも、導電性散乱体2を柱状に伸長することで、局在プラズモンLP(ひいては近接場光)をディスク80に近づけることができる。そのため、近接場光で、確実にディスク80を照射することができる。その上、ストレージ装置としての設計上の自由度も高まる。
【0109】
また、導電性散乱体2の表面に生じる局在プラズモンLPは、突起形状に集まりやすい特性を有する。すると、局在プラズモンLPを一箇所に集めてさらなる電場増強効果を図ることもできる。例えば、導電性散乱体2が、回転対称性を有する受光部2aを底面とする錐状体(錐体)であってもよい。つまり、図16(A)、図16(B)、および図16(C)等に示すような、円錐状体(なお底面は真円板)、四角錐状体(なお底面は正四角板)、および三角錐状体(なお底面は正三角板)であってもよい。
【0110】
なお、柱状体または錐状体の導電性散乱体2において、受光部2aが上記条件式(1)を満たしていれば、必然的に柱状体の端面や錐状体の突端は、受光部2aよりも大きくなり得ない。
【0111】
ところで、本来なら錐状体(錐状の導電性散乱体)2の突端は、図17の破線Fのように、鋭利な先端であると好ましい。しかしながら、錐状体2の突端を拡大して捉えると、製造技術上、その突端に曲面を有する部分(曲面体2b)が生じてしまう。そのため、錐状になった導電性散乱体2の場合、局在プラズモンLPによって光強度を高められた近接場光のサイズは、この曲面体2bのサイズ(最大幅長)に比例する。したがって、曲面体2bのサイズも適したサイズになっていることが望ましい。
【0112】
下記条件式(2)および(2)’は、その曲面体2bの適したサイズを規定する式である。
λ/1000≦LM2≦λ/10 … 条件式(2)
λ/10≦LM3≦λ … 条件式(2)’
ただし、
LM2:錐状の突端に生じる曲面体が、光軸に対し垂直な面内方向において有する最 大幅長(nm)
LM3:錐状体の底面の最大幅長
λ :光の波長(nm)
である。
【0113】
この条件式(2)を満たせば、上記したような問題1・問題2が生じない。その上、局在プラズモンLP自体は、錐状体2の突端ではなく受光部(底部)2aに生じる。すると、比較的広範囲{すなわち、条件式(2)を満たす錐状体の突端よりも広い範囲}で局在プラズモンLPが発生し、その局在プラスモンLPが錐状体の突端に集まることになる。そのため、条件式(1)を満たす導電性散乱体2よりも、条件式(2)および(2)’を満たす導電性散乱体2のほうが、効率的に近接場光の光強度を増加させることができる。
【0114】
《3−2.表面プラズモンの利用》
ところで、近接場光の光強度を増加させるために、導電性散乱体の集光点の周囲に表面ンプラズモンを励起させる周期構造を形成してもよい。
【0115】
例えば、図18に示すように、導電性散乱体2の受光部2aの周縁部に、表面プラズモン(不図示)を発生させる周期構造(例えば回転対称な周期構造)が設けられていてもよい。この構造としては、例えば半径の異なる金属環2cを同心円状に複数配することによって形成できる(ただし、回転対称な周期構造の中心は真円状の金属片になっている)。つまり、金属環2c同士の間隔がスリットstとなって、そのスリットstの有無による周期構造が形成される。
【0116】
かかる構成であれば、散乱体の周辺部に照射された光によって生じる表面プラズモンが散乱体の中心部に集まることになる。そのため、中心部(この場合、真円状の金属片)への集光効率が高まるため、局在プラズモンをさらに効率よく発生させることが可能になる。
【0117】
なお、このような周期構造を有する導電性散乱体2のサイズは、特に限定されるものではないが、例えば上記の条件式(1)を満たすようになっていれば望ましい。また、受光部2aの形状も、真円、または正三角形以上の正多角形であれば望ましい。
【0118】
〈4.ラジアル偏波群を含む光(ラジアル偏波ビーム)の生成について〉
ところで、上記したように、プラズモン(局在プラズモンLPまたは表面プラズモン)はP偏光によって生じる。そのため、2-D PCL3のBモードでの光では、集光素子(対物レンズ42・半球形状レンズ43)の通過後にP偏光になるラジアル偏波群Rのみが局在プラズモン等の発生に寄与する。そこで、このBモードやAモードの光において、ラジアル偏波群Rを増加もしくは生成させるための方策について、以下に説明する。
【0119】
《4−1.Bモードでの光に対する方策(方策1・方策2)》
Bモードの光に対しては、図19に示すように、2-D PCL3の光射出側に、1枚の1/2波長板(偏光制御素子)4を設ける方策(方策1)が挙げられる。この方策1では、特に、1/2波長板4の方位(波長板方位)が、電場ベクトルの向き(偏光方向)に対して限定されるようになっている。
【0120】
なお、波長板方位には、下記(1)〜(3)および図20に示すような特徴がある。図20では、電場ベクトルが波長板方位によって変化する過程を示している。そして、白抜き矢印が電場ベクトル、網点矢印が1/2波長板4の方位、実線矢印が電場ベクトルを直交分解した分解ベクトルを示している。また、「&」は、白抜き矢印の電場ベクトルの光が網点矢印の波長板方位を有する1/2波長板4を通過したことを意味し、「=」は、1/2波長板4通過後を意味している。
(1)図20(A)・図20(B)に示すように、電場ベクトルの向きが波長板方位と 同方向の場合、1/2波長板4は、電場ベクトルの向きを元の向きに対して逆向 きに変化させる。
(2)図20(C)・図20(D)に示すように、電場ベクトルの向きが波長板方位に 対して90°で傾いている場合、1/2波長板4は、電場ベクトルの向きを変化 させない。
(3)図20(E)〜図20(G)に示すように、電場ベクトルの向きが波長板方位に 対して45°で傾いている場合、1/2波長板4は、電場ベクトルの向きを元の 向きに対して90°変化させる。
なお、図20(E)・図20(F)での電場ベクトルの向きは、波長板方位に対して−45°傾いていると称し、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対して−90°傾いていると称する。また、図20(G)・図20(H)での電場ベクトルの向きは、波長板方位に対して+45°傾いていると称し、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対して+90°傾いていると称する。つまり、時計回りの方位角に「+」、反時計回りの方位角に「−」を付している。
【0121】
《《方策1》》
そして、方策1は、上記のような特徴を有する波長板方位を、Bモードの光におけるラジアル偏波群Rの第1方向(1D)または第2方向(2D)と一致させる。図21は、かかる方策1の一例として、波長板方位Qがラジアル偏波群Rの第2方向(2D)と一致している状態を示している{なお、網点矢印が波長板方位Q(Q1)である}。
【0122】
このような方策1が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と波長板方位Qとの関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図22は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、1/2波長板4によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0123】
なお、図23は、図21・図22の簡略図であり、図23(A)が図21、図23(B)が図22に対応している。また、この図23では、1枚の1/2波長板4を通過した後の光の電場ベクトルに「’」を付している(なお、以降の図や説明でも「’」の数は通過した1/2波長板4の枚数に相当する)。
【0124】
これらの図21〜図23に示すように、図21で波長板方位Qに対して90°傾いたラジアル偏波群Rにおける一部の電場ベクトル{第1方向(1D)に向く電場ベクトル}は、波長板方位Qの影響で変化しない(図22および図23の1D・1D’参照)。しかし、図21で波長板方位Qと一致するラジアル偏波群Rにおける他の一部の電場ベクトル{第2方向(2D)に向く電場ベクトル}は、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図22および図23の2D・2D’参照)。
【0125】
そのため、図21でのラジアル偏波群Rは、1/2波長板4を通過したとしても、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルのままである(図22および図23の1D・1D’・2D・2D’参照)。
【0126】
一方、図21で−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回りの方位角(+)で+90°傾き放射状になる{図22および図23の−45D・−45D’参照}。
【0127】
また、図21で+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回りの方位角(−)で−90°傾き放射状になる{図22および図23の+45D・+45D’参照}。
【0128】
そのため、図21の−45°方向(-45D)の電場ベクトルおよび+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、1/2波長板4を通過することによって、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになる{図22および図23(B)の−45D’・+45D’参照}。
【0129】
以上から、Bモードの光は、予め含まれているラジアル偏波群Rの偏光方向(1D・2D)の1つと合致する波長板方位Qの1/2波長板4を通過すると、+45°方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化する。その結果、Bモードの光は、1/2波長板4を通過することで、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。なお、光内の全電場ベクトル中の8割以上がラジアル偏波群Rになっている場合、その光をラジアル偏波ビームと称する。
【0130】
《《方策2》》
ところで、上記の方策1は、Bモードの光を1枚の1/2波長板4f1(4)を通過させることで、ラジアル偏波ビームを生成している。しかし、これに限定されることなく、複数の1/2波長板4でラジアル偏波ビームを生成する方策(方策2)でもよい。例えば、3枚の1/2波長板4に、Bモードの光を通過させる方策2が挙げられる。
【0131】
そこで、図24〜図28の電場ベクトル分布図を用いて、3つのステップから成る方策2を説明する。なお、図24はBモードの光、図25は1枚目の1/2波長板4f1通過後の光、図26は2枚目の1/2波長板4f2(4;便宜上、図示せず)通過後の光、図27は3枚目の1/2波長板4f3(4;便宜上、図示せず)通過後の光を示している。また、図28(A)〜図28(D)は、図24〜図27に対応する簡略図である。
【0132】
『ステップ1』
方策2は、Bモードの光が1枚目の1/2波長板4f1を通過する場合、ラジアル偏波群Rの第1方向(1D)または第2方向(2D)に対し時計回りの方位角(+)で波長板方位(第1波長板方位)を+45°傾ける(ステップ1)。図24は、かかるステップ1の一例として、第1波長板方位Q1がラジアル偏波群Rの第1方向(1D)に対して+45°傾いている状態を示している。
【0133】
このようなステップ1が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第1波長板方位Q1との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図25は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、1枚目の1/2波長板4f1によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0134】
そして、図24で第1方向(1D)の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、図25に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回りの方位角(−)で−90°傾く(図28の1D・1D’参照)。
【0135】
また、図24で第2方向(2D)の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、図25に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回りの方位角(+)で+90°傾く(図28の2D・2D’参照)。
【0136】
一方、図24で−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1に対して90°傾いているため変化しない(図25および図28の−45D・−45D’参照)。しかし、図24で+45°方向の電場ベクトルは、第1波長板方位Q1と一致するために、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図25および図28の+45D・+45D’参照)。
【0137】
『ステップ2』
そして、ステップ1の完了後、方策2は、1枚目の1/2波長板4f1を通過した光を2枚目の1/2波長板4f2に通過させる(ステップ2)。具体的には、第1波長板方位Q1に対し、反時計回りの方位角(−)で−45°傾いた方位{第2波長板方位Q2(Q)}の2枚目の1/2波長板4f2に、光を通過させている。
【0138】
このようなステップ2が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第2波長板方位Q2との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図26は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、2枚目の1/2波長板4f2によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0139】
そして、図25で第2波長板方位Q2に対して90°傾いた方位角方向の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2の影響で変化しない(図26および図28の1D’・1D’’参照)。しかし、図25で第2波長板方位Q2と一致する方位角方向の電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図26および図28の2D’・2D’’参照)。
【0140】
一方、図25で−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、図26に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回り(−)方位角で−90°傾き放射状になる(図28の−45D・−45D’’参照)。
【0141】
また、図25で+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、図26に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回り(+)方位角で+90°傾き放射状になる(図28の+45D’・+45D’’参照)。
【0142】
『ステップ3』
そして、ステップ2の完了後、方策2は、2枚目の1/2波長板4f2を通過した光を3枚目の1/2波長板4f3に通過させる(ステップ3)。具体的には、第2波長板方位Q2に対し、時計回りの方位角(+)で+45°傾いた方位{第3波長板方位Q(Q3)}の3枚目の1/2波長板に、光を通過させている。
【0143】
このようなステップ3が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第3波長板方位Q3との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図27は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、3枚目の1/2波長板4f3によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0144】
そして、図26で方位角方向を向いた一部の電場ベクトルは、第3波長板方位Q3に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている。したがって、図27に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し時計回り(+)方位角で+90°傾き放射状になる(図28の1D’’・1D’’’参照)。
【0145】
また、図26で方位角方向を向いた他の一部の電場ベクトルは、第3波長板方位Q3に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。したがって、図27に示すように、変化後の電場ベクトルの向きは、変化前の電場ベクトルに対し反時計回り(−)方位角で−90°傾き放射状になる(図28の2D’’・2D’’’参照)。
【0146】
そのため、図26で方位角方向の電場ベクトルは、3枚目の1/2波長板4f3を通過することで、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)になる(図27および図28の1D’’’および2D’’’参照)。
【0147】
一方、図26で第3波長板方位Q3に対して90°傾いた電場ベクトルは、波長板方位の影響で変化しない(図27および図28の+45D’’・+45D’’’参照)。しかし、図26で第3波長板方位Q3と一致する電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる(図27および図28の−45D’’・−45D’’’参照)
【0148】
つまり、図26での方位角方向以外の方向の電場ベクトルは、3枚目の1/2波長板4f3を通過の有無にかかわらず、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)になったままである(図27および図28の−45D’’’・+45D’’’参照)。
【0149】
以上から、Bモードの光は、上記したような3枚の1/2波長板4(4f1〜4f3)を通過すると、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。なお、2枚目の波長板4f2通過後、光内で高比率である当初の+45°方向(+45D)および−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化している{図28(A)・図28(C)参照}。そのため、Bモードの光は、2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過することでも、当初のBモードの光よりも多くのラジアル偏波群Rを含むようになる。
【0150】
《4−2.Aモードでの光に対する方策(方策3)》
2-D PCL3からのAモードの光は、上記したように、集光素子を通過したときS偏光になる。しかし、下記の2つのステップから成る方策3を行うことによって、ラジアル偏波群Rを極めて多く含む光(ラジアル偏波ビーム)に変化させることができる。
【0151】
《《方策3》》
方策3は、Aモードの光に対し2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過させることで、ラジアル偏波ビームRを生成している。この方策3では、特に、1枚目の1/2波長板4f1の方位(第1波長板方位Q1)と2枚目の1/2波長板4f2の方位(第2波長板方位Q2)とが、互いに45°ずれるような関係になっている。なお、このようなずれ関係の例は種々想定できる。例えば、第2波長板方位Q2が第1波長板方位Q1に対し反時計回り(−)の方位角で−45°傾いた関係や、第2波長板方位Q2が第1波長板方位Q1に対し時計回り(+)の方位角で+45°傾いた関係等が挙げられる。
【0152】
また、Aモードの光における電場ベクトルの分布状態では、電場ベクトルは光束中心を基点として方位角方向DCに向いている(図9・図10参照)。したがって、1枚目の1/2波長板4f1の第1波長板方位Q1は、光軸AXに対する垂直な面内に沿っていればどの方向でもよいことになる。そこで、図29〜図36の電場ベクトルの分布図では、互いに直交するx方向・y方向を定義し、x方向と同方向の第1波長板方位Q1を図29の電場ベクトルの分布図で示し、x方向に対し反時計回り(−)の方位角で−45°傾いた第1波長板方位Q1を図33の電場ベクトルの分布図で示している。
【0153】
また、図30の電場ベクトルの分布図は、図29に示される第1波長板方位Q1を有する1枚目の1/2波長板4f1通過後の光を示し、図31は2枚目の1/2波長板4f2通過後の光を示している。また、図34の電場ベクトルの分布図は、図33に示される第1波長板方位Q1を有する1枚目の1/2波長板4f1通過後の光を示し、図35は2枚目の1/2波長板4f2通過後の光を示している。さらに、図32(A)〜図32(C)は、図29〜図31に対応する簡略図であり、さらに、図36(A)〜図36(C)は、図33〜図35に対応する簡略図である。
【0154】
『ステップ1』
方策3は、図29・図33に示すAモードの光が1枚目の1/2波長板4f1を通過する場合、第1波長板方位Q1を光軸AXに対する垂直な面内に沿った任意の方向に設定する(ステップ1)。
【0155】
このようなステップ1が行われると、方位角方向の電場ベクトルで第1波長板方位Q1と一致するものは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる。一方、方位角方向の電場ベクトルで第1波長板方位に対して90°傾いているものは、変化しない{図30・図32(B)、および、図34・図36(B)参照}。
【0156】
また、図30・図34に示すように、図29・図33において方位角方向の電場ベクトルであり、第1波長板方位Q1に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾き放射状になる{図32(B)・図36(B)参照}。
【0157】
さらに、図29・図33において方位角方向の電場ベクトルであり、第1波長板方位Q1に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾き放射状になる{図32(B)・図36(B)参照}。
【0158】
『ステップ2』
そして、ステップ1の完了後、方策3は、1枚目の1/2波長板4f1を通過した光を2枚目の1/2波長板4f2に通過させる(ステップ2)。具体的には、第1波長板方位Q1に対し、反時計回りの方位角(−)で−45°傾いた方位(第2波長板方位Q2)を有する2枚目の1/2波長板4f2に光を通過させている。
【0159】
このようなステップ2が行われると、光における電場ベクトルの向き(偏光方向)と第2波長板方位Q2との関係で、偏光方向を変化させた電場ベクトルが現れる。図31・図35は、かかるような電場ベクトルの分布状態、すわなち、2枚目の1/2波長板4f2によって変化した後の電場ベクトルの分布状態を示している。
【0160】
これらの図31・図35に示すように、図30・図34で第2波長板方位Q2に対して90°傾いた電場ベクトルは、第2波長板方位Q2の影響で変化しない。しかし、図30・図34で第2波長板方位Q2と一致する電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0161】
一方、図31・図35に示すように、図30・図34の電場ベクトルで第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾き放射状になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0162】
さらに、図30・図34の電場ベクトルで第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いているものは、その電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾き放射状になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0163】
以上から、Aモードの光は、上記したような2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過すると、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。なお、1枚目の1/2波長板4f1通過後、方位角方向の電場ベクトルの一部が、ラジアル偏波群Rが変化している{図32(B)・図36(B)のラジアル偏波群R参照}。そのため、Aモードの光は、1枚目の1/2波長板4f1を通過することでも、ラジアル偏波群Rを比較的多く含む光になっている。
【0164】
〈5.本発明における種々の特徴の一例について〉
《5−1.集光ヘッドにおける光源ユニットの特徴》
以上のように、本実施の形態の集光ヘッド55では、光源ユニット1がラジアル偏波群Rを含む光を生成するようになっている。具体的には、光源ユニット1は、キャリアの注入によって発光する活性層35と、全反射により活性層35に光を閉じ込めるクラッド層(第1n型クラッド層32・第2n型クラッド層36)とを含むとともに、活性層35およびクラッド層の少なくとも一方(例えば、第1n型クラッド層32)に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造(フォトニック結晶34)を有した半導体レーザ(2-D PCL3)を含むようになっている。
【0165】
そして、かかるような2-D PCL3では、フォトニック結晶34における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔(ピッチ)が、活性層35からの光の波長λの整数倍の長さと一致するようになっている。すなわち、2-D PCL3は、フォトニックバンド構造におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振を行っている。
【0166】
さらに詳説すると、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層35から発光するTE発振モードの光(後に詳説)における利得ピーク波長とを一致させることで、レーザ発振が生じるようになっている。
【0167】
かかるようなレーザ発振では、上記したBモードの光が生じる場合がある(図11参照)。かかるBモードでの光の場合、その光は、少なくとも一部に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群{詳説すると、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)}を含んでいる。具体的には、互いに直交する2種の方向(1D・2D)を有する電場ベクトルで、4回転対称の電場ベクトル分布を構成するラジアル偏波群Rが含まれている。
【0168】
このようなラジアル偏波群Rは、集光素子(対物レンズ42・半球形状レンズ43)を通過した後であっても、S偏光を生じ得ない。つまり、集光素子通過後のラジアル偏波群Rは、P偏光のみで構成されることになる。そのため、ラジアル偏波群Rをより多く含む光(ラジアル偏波ビーム)が、導電性散乱体2に照射すると、P偏光に起因する局在プラズモンLPが効率よく発生することになる。
【0169】
しかしながら、ラジアル偏波群Rの2種方向(1D・2D)の一方である第1方向(1D)に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、Bモードの光は、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向(-45D)の電場ベクトルとを含むことになる。このような+45°方向(+45D)の電場ベクトルの光および−45°方向(-45D)の電場ベクトルの光は、集光素子通過後にS偏光となるため、局在プラズモンLPの生成に寄与しない。
【0170】
そこで、本発明の実施の形態では、光内におけるラジアル偏波群Rの量を増加させる種々の方策を講じている。例えばBモードの光であれば、+45°方向(+45D)の電場ベクトルの光および−45°方向(-45D)の電場ベクトルの光をラジアル偏波群Rに変化させる方策である。
【0171】
かかる方策としては、1/2波長板4(4f1)を用いた方策1が挙げられる(図21〜図23参照)。つまり、光源ユニット1が、2-D PCL3と、その2-D PCL3から射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する1/2波長板4とを含むようになっている。そして、特に、その1/2波長板4の方位{波長板方位Q(Q1)}が、ラジアル偏波群Rの2種方向(1Dおよび2D)におけるいずれか一方と一致するようになっている。
【0172】
かかるような構成であれば、ラジアル偏波群Rのおける電場ベクトルは、波長板方位Qに対して一致するか90°傾いている。そのため、1/2波長板4を通過したとしても、ラジアル偏波群Rは、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルのままである。
【0173】
しかしながら、−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いている一方、+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、波長板方位Qに対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いている。そのため、1/2波長板4を通過したとき、−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し時計回りの方位角(+)で+90°傾く一方、+45°方向(+45D)の電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し時計回りの方位角(−)で−90°傾く。
【0174】
すると、+45°方向(+45D)の電場ベクトルの光および−45°方向(-45D)の電場ベクトルは、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)になる。
【0175】
以上から、Bモードの光は、予め含まれているラジアル偏波群Rの偏光方向(1D・2D)の1つと合致する波長板方位Qの1/2波長板4を通過すると、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。すると、方策1を施した光源ユニット1であれば、ラジアル偏波ビームを導電性散乱体2に照射させることが可能になる。
【0176】
また、上記した方策2を施した光源ユニット1であっても、ラジアル偏波ビームを生成できる(図25〜図28参照)。また、方策2におけるステップ1およびステップ2を経たBモードの光では、光内で高比率になっている当初の+45°方向(+45D)および−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化する{図28(A)・図28(C)参照}。そのため、Bモードの光は、2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過することでも、当初のBモードの光よりも多くのラジアル偏波群Rを含むようになる。つまり、方策2でのステップ1・ステップ2を経たBモードの光であっても、十分にラジアル偏波群Rを含む光といえる。
【0177】
なお、方策2のステップ1およびステップ2を行う光源ユニット1は、2-D PCL3と、2-D PCL3からのBモードの光を通過させるとともに偏光方向を制御する重なり合った2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)とを含むようになっている。そして、特に、1枚目の1/2波長板4f1の方位(第1波長板方位Q1)が、ラジアル偏波群Rの2種方向(1D・2D)のいずれか一方に対し、時計回り(+)の方位角で+45°傾斜している。その上、2枚目の1/2波長板4f2の方位(第2波長板方位Q2)が、第1波長板方位Q1に対し、反時計回りの方位角(−)で−45°傾斜している。
【0178】
ところで、2-D PCL3のレーザ発振では、上記したAモードの光も生じ得る(図9参照)。すると、Aモードの光に対し方策を施すことで、ラジアル偏波群Rを含むようにできれば望ましい。そこで、本実施の形態は、2-D PCL3のAモードの光を2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)に通過させる上記の方策3を施すようになっている(図29〜図36参照)。
【0179】
ただし、この方策3では、1枚目の1/2波長板4f1を通過したAモードの光でも、ラジアル偏波群Rが生じる。つまり、方策3でのステップ1を経たAモードの光であっても、十分にラジアル偏波群Rを含む光といえる。
【0180】
なお、Aモードの光は、光内の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさで、かつ方位角方向に向いた電場ベクトルを含むようになっている(図29・図33参照)。すると、方位角方向ゆえに、1枚目の1/2波長板4f1の方位(第1波長板方位Q1)は、Aモードの光の光軸AXに対する垂直な面内に沿っていればどの方向でもよいことになる。そのため、方策3のステップ1を行う光源ユニット1は、2-D PCL3と、2-D PCL3からのAモードの光を通過させるとともに偏光方向を制御する1枚の1/2波長板4f1とを含むようになっていればよい。
【0181】
かかるような構成であれば、方位角方向の電場ベクトルにおいて、主に、(1)第1波長板方位Q1と一致する電場ベクトル、(2)第1波長板方位Q1に対し90°傾いている電場ベクトル、(3)第1波長板方位Q1に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾く電場ベクトル、(4)第1波長板方位Q1に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾く電場ベクトル、が存在することになる{図32(A)・図36(A)参照}。
【0182】
そのため、(1)の電場ベクトルはその電場ベクトルの方向に対して逆方向になる一方、(2)の電場ベクトルはその電場ベクトルの方向に対して無変化である(これらを変化(1)・変化(2)と称す)。また、(3)の電場ベクトルはその電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾く一方、(4)の電場ベクトルはその電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾く(これらを変化(3)・変化(4)と称す)。
【0183】
すると、変化(3)・変化(4)は、電場ベクトルの向きを放射状にすることになる。そのため、Aモードの光は、1枚目の1/2波長板4f1を通過することでも、変化(3)・変化(4)によってラジアル偏波群Rを比較的多く含む光になる{図32(B)・図36(B)参照}。
【0184】
そして、方策3は、ステップ1によって部分的にラジアル偏波群Rを含むようになった光に対し、ステップ2を施すことで、さらに一層のラジアル偏波群Rを含ませるようにしている。そのため、光源ユニット1は、第1の1/2波長板4f1に重なるように配される第2の1/2波長板4f2を含むようになっている。そして、特に、第1波長板方位Q1に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、第2の1/2波長板4f2は、その方位(第2波長板方位Q2)を第1波長板方位Q1に対して+45°または−45°傾斜するように配されている。
【0185】
かかるような構成であれば、変化(3)・変化(4)によって生じたラジアル偏波群Rは、第2波長板方位Q2に対し90°傾いた電場ベクトルと第2波長板方位Q2に対し一致する電場ベクトルとを有する{図32(B)・図36(B)参照}。そのため、第2波長板方位Q2に対し90°傾いた電場ベクトルは第2波長板方位Q2の影響で変化せず、第2波長板方位Q2と一致する電場ベクトルは、その電場ベクトルの方向に対して逆方向になる。すると、変化(3)・変化(4)によって生じたラジアル偏波群Rは、ラジアル偏波群Rの要件を満たしたままの状態を維持する{図32(C)・図36(C)参照}。
【0186】
一方、変化(1)・変化(2)後の電場ベクトルは、第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾くものと、第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾くものとを有する{図32(B)・図36(B)参照}。そのため、第2波長板方位Q2に対し反時計回りの方位角(−)で−45°傾いた電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し反時計回り(−)で−90°傾き放射状になる。一方、第2波長板方位Q2に対し時計回りの方位角(+)で+45°傾いた電場ベクトルは、その電場ベクトルに対し時計回り(+)で+90°傾き放射状になる{図32(C)・図36(C)参照}。
【0187】
よって、Aモードの光は、上記したような2枚の1/2波長板4(4f1・4f2)を通過することで、ほとんどがラジアル偏波群Rになった光(ラジアル偏波ビーム)となる。
【0188】
《5−2.集光ヘッドにおける導電性散乱体の特徴》
一方、本実施の形態の集光ヘッド55では、導電性散乱体2が、2-D PCL3からの光を受光する受光部2aに、少なくとも3回転以上の回転対称性を有している。例えば、導電性散乱体2が板状体になっており、受光部2aが真円状、または正三角形以上の正多角形状になっている。
【0189】
このような構成であれば、2-D PCL3からのラジアル偏波群Rを含む光(すなわちラジアル偏波群Rの電場ベクトル)と、回転対称性を有する受光部2a中の電荷とが、放射状に向いて振動する。その結果、効率よく、導電性散乱体2の端部に局在プラズモンLPが生じるようになる。
【0190】
また、導電性散乱体2は、受光部2aから光の進行方向に向けて伸びる柱状体になっていてもよいし、導電性散乱体2は、受光部2aから光の進行方向に向けて伸びる錐状体になっていてもよい。
【0191】
ただし、導電性散乱体2が、板状、柱状、または錐状のいずれであっても、上記の条件式(1)を満たしていることが望ましい。この条件式(1)を満たしていれば、上記の問題1・問題2を引き起こすことなく、近接場光を適切なサイズで生成できるからである。
【0192】
また、錐状の導電性散乱体2の場合、上記条件式(2)および(2)’を満たすことが望ましい。条件式(2)および(2)’を満たしていれば、局在プラズモン自体は、錐状体2の突端よりも大きな受光部2aに生じるので、比較的広範囲の面積を有する受光部2aにて生じた局在プラズモンLPが錐状体の突端に集まることになる。そのため、効率的に近接場光の光強度を増加させることができる。
【0193】
また、導電性散乱体2の受光部2aの周縁部には、例えば回転対称の周期構造が設けられていてもよい。つまり、SPPを生じさせるような周期構造が形成されていてもよい。そして、このような周期構造を有する導電性散乱体2では、回転対称の周期構造の中心に、柱状突起片2eが設けられていてもよいし、回転対称の周期構造の中心に、錐状突起片2fが設けられていてもよい。
【0194】
柱状突起片2eがある場合、導電性散乱体2に生じたSPPは、柱状突起片2eを伝って伝搬する。これにより、柱状突起片2eの先端部の周辺には局在プラズモンが発生する。そのため、柱状突起片2eがディスク80に近い位置に配されていれば、SPPによって光強度の増した近接場光が、微小なスポットのままディスク80に照射することになる。つまり、導電性散乱体2の受光部2a自体をディスク80に近づけることなく、柱状突起片2eを近づけることのみで、近接場光を確実にディスク80に照射することができる。
【0195】
一方、錐状突起片2fがある場合、導電性散乱体2に生じたSPPは、錐状突起片2fに集光する。すると、錐状突起片2fの先端部には局在プラズモンが発生する。そのため、集中することによって一層強大化したLPによって、近接場光が効率よく光強度を増加するようになる。
【0196】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0197】
実施の形態1では、光源ユニット1は、光にラジアル偏波群Rをより多く含ませるために、1/2波長板4を用いた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、旋光子を使用する光源ユニット1であってもよい(なお、旋光子を使用する方策を方策4と称する)。
【0198】
《《方策4》》
旋光子は、光の電場ベクトルの向き(偏光方向)を回転させるものである。図37は、かかるような旋光子5によって電場ベクトルが変化する過程を示している。なお、「&」は、白抜き矢印の電場ベクトルの光が旋光度0.25または0.75の旋光子5を通過したことを意味し、「=」は、旋光子5通過後を意味している。また、旋光子を用いる場合は、1/2波長板を用いる場合と異なり、光の電場ベクトルがどちらに向いてもその向きを90°回転させる。
【0199】
この図37(A)・図37(B)に示すように、旋光度が0.25または0.75の場合、回転前後の電場ベクトルの向きが90°回転(直角回転)する。すると、図9および図11に示すようなAモードの光およびBモードの光が、旋光度0.25/0.75の旋光子5を通過すると、図38および図39のような電場ベクトルの分布状態になる。
【0200】
つまり、Aモードの光の場合、図9・図10で方位角方向に向いた電場ベクトルは90°回転し放射状になる(図38参照)。そのため、Aモードの光は、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトル(ラジアル偏波群R)を極めて多く含むようになる。つまり、ラジアル偏波ビームになる。
【0201】
一方、Bモードの光の場合、図11・図12で−45°方向(-45D)および+45°方向(+45D)の電場ベクトルは90°回転し放射状になる。すなわち、ラジアル偏波群Rになる(図39参照)。しかしながら、図11・図12で2種方向(1D・2D)の電場ベクトルは90°回転し方位角方向に向く(図39参照)。すると、Bモードの光は、当初のBモードの光よりもラジアル偏波群Rの比率を高くしている。そのため、十分にラジアル偏波群Rを含む光になる。
【0202】
なお、このような旋光子5を用いてラジアル偏波群Rを増加させる場合、1種類の旋光度のみを有する旋光子5が、2-D PCL3からの光を通過させるように配されていればよい。つまり、従来のような複数種類の旋光度を有する旋光子(複合旋光子)を用いる必要はない。そのため、複合旋光子でラジアル偏波群R等を生成する場合に必要とされる位置合わせ(光束中心と複合旋光子の面内中心との合致)は不要といえる。
【0203】
また、旋光子5が用いられると、光内で高比率である当初の+45°方向(+45D)および−45°方向(-45D)の電場ベクトルがラジアル偏波群Rに変化している(図11・図39参照)。そのため、旋光子5通過後のBモードの光は、当初のBモードの光よりも多くのラジアル偏波群Rを含むようになる。
【0204】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1・2で用いた部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0205】
実施の形態1・2では、2-D PCL3から射出する光が、1/2波長板4または旋光子5を通過することで、ラジアル偏波群Rを増加させるようになっていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2-D PCL3から射出される光自体がラジアル偏波群Rを含むようにしてもよい。
【0206】
具体的には、2-D PCL3におけるTM発振モードを利用する。通常、半導体レーザでは、TE発振モード(TEモード)とTM発振モード(TMモード)とが存在する。したがって、2-D PCL3でも、図40に示すように、活性層35の層面に対し平行な電界Eおよび垂直な磁界Hを有するTE発振モード{図40(A)参照}と、活性層35の層面に対し平行な磁界Hおよび垂直な電界Eを有するTM発振モード{図40(B)参照}とが存在する。
【0207】
そして、このようなTE発振モード・TM発振モードでの利得(GAIN)と発振波長(nm)との関係(活性層での利得の周波数特性)は、図41のようになっている場合が多い。これは、通常、TE発振モードの光が、TM発振モードの光よりも高い利得を有することを意味する。そのため、2-D PCL3は、通常、TE発振モードで光が射出するようになっている(なお、上記説明での2-D PCL3からの光は、TE発振モードでの光に基づいている)。
【0208】
しかし、2-D PCL3は、2次元周期構造を有するフォトニック結晶34を含んでいる。そのため、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔(ピッチ)と、活性層35から発光するTM発振モードの光の利得ピーク波長{λ(TM)}とを一致させれば、2-D PCL3は、容易にTM発振モードの光(TM−Like偏光)を射出できる。
【0209】
なお、TM発振モードであっても、TE発振モード同様に、フォトニックバンド構造のΓ点で4つのバンド端が存在する。その上、これらのバンド端においても、発振に適した2つのバンド端と、発振に不向きな2つのバンド端とが存在する。この場合、レーザ発振に適したバンド端は、共振周波数の最も低いバンド端と最も高いバンド端になる。そこで、TM発振モードの場合、上記の共振周波数の最も低いバンド端を「バンド端AA」と称し、最も高いバンド端を「バンド端BB」と称する。さらに、これらのバンド端AAでの共振状態を「AAモード」、バンド端BBでの共振状態を「BBモード」とし、両モードの光における電場ベクトルの分布状態を図42および図43に示す。
【0210】
図42に示すように、AAモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群Rになったラジアル偏波ビームになっている。
【0211】
一方、図43に示すように、BBモードでの電場ベクトルの分布状態では、少なくとも一部に、互いに直交する2種の方向(11D・22D)を有する電場ベクトルが、4回転対称の電場ベクトル分布を構成している。その上、この4回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心から放射するような方向に向いている(つまり、比較的ラジアル偏波群Rを多く含む光になっている)。
【0212】
すると、2-D PCL3における活性層35から発光する光が、活性層35の層面に対し平行な磁界Hと、活性層35の層面に対し垂直な電界Eとを有するTM発振モードの光であれば、容易にラジアル偏波群Rを多く含む光(例えばラジアル偏波ビーム)を得ることができる。そのため、2-D PCL3からの光を通過させることで偏光方向を制御または旋回させる偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)は不要になる。
【0213】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4について説明する。なお、実施の形態1〜3で用いた部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0214】
実施形態1〜3の説明では、フォトニック結晶34における2次元周期構造として正方格子構造を例に挙げていた。しかし、本発明ではこれに限定されるものではない。例えば、2次元周期構造が、三角格子であってもよい。
【0215】
2次元周期構造が三角格子の場合であっても、正方格子の場合と同様に、フォトニック結晶34における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔が、活性層35からの光の波長の整数倍の長さと一致するようになっている。すなわち、2次元周期構造が三角格子の場合であっても、2-D PCL3は、フォトニックバンド構造におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振を行っている。
【0216】
さらに詳説すると、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層35から発光するTE発振モードの光の利得ピーク波長{λ(TE)}とを一致させることで、レーザ発振が生じるようにしてもよい(図41参照)。また、2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔と、活性層35から発光するTM発振モードの光の利得ピーク波長{λ(TM)}とを一致させることで、レーザ発振が生じるようにしてもよい(図41参照)。
【0217】
《1.三角格子の2次元周期構造の2-D PCLでのTE発振モード》
そこで、まず、TE発振モードの場合について説明する。図44のバンド図に示すように、TE発振モードの場合、6つのバンド端が存在する{1.実線(αモード)、2.破線、3.一点鎖線、4.極太実線(βモード)、5.点線、6.二点鎖線}。そして、この6つのバンド端において、共振周波数の最も低いバンド端αと、4番目に低いバンド端βとが、レーザ発振に適したバンド端になっている。一方、残りのバンド端はレーザ発振に不適なバンド端になっている。そこで、バンド端αでの共振状態を「αモード」、バンド端βでの共振状態を「βモード」とし、両モードの光における電場ベクトルの分布状態(偏光状態)を図45および図46に示す。
【0218】
図45に示すように、αモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで方位角60°間隔で交差する3種方向(1d・2d・3d)を有する電場ベクトルが、6回転対称の電場ベクトル分布を構成している。その上、この6回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心から放射するような方向(すなわち、放射状)に向いている。つまり、αモードの光は、ラジアル偏波群Rを多く含むラジアル偏波ビームになっている。そのため、αモードの光の場合、光を通過させることで偏光方向を制御または旋回させる偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)は不要になる。
【0219】
一方、図46に示すように、βモードでの電場ベクトルの分布状態では、電場ベクトルは光束中心(回転中心)を回転するような方向{すなわち、方位角方向(周方向)}に向いている。また、電場ベクトルの大きさは、光束中心(回転対称中心)から等距離において等しくなっている。したがって、βモードでの2-D PCL3からの光は、光内の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、その回転対称の中心から等距離で等しい大きさで、かつ方位角方向DCに向いた電場ベクトルを含んでいるといえる。すると、βモードの光は、Aモードの光と類似した電場ベクトル分布といえる(図46・図9参照)。
【0220】
そのため、βモードの光に対して、Aモードの光に施した方策3を行えば、ラジアル偏波群を含む光が生成することになる。また、実施の形態2で説明したように、旋光度0.25または0.75の旋光子5を用いてもよい(方策4を施せばよい)。つまり、βモードの光が、旋光度0.25/0.75の旋光子5を通過するようにすれば、図46で方位角方向に向いた電場ベクトルは90°回転し放射状になり、図47に示すように、ラジアル偏波ビームになる。
【0221】
《2.三角格子の2次元周期構造の2-D PCLでのTM発振モード》
一方、TM発振モードの場合、TE発振モード同様に、フォトニックバンド構造のΓ点で6つのバンド端が存在する。その上、これらのバンド端においても、レーザ発振に適したバンド端は、共振周波数の最も低いバンド端と、4番目に低いバンド端とが、レーザ発振に適したバンド端になっている。そこで、TM発振モードの場合、上記の共振周波数の最も低いバンド端を「バンド端αα」と称し、4番目に低いバンド端を「バンド端ββ」と称する。さらに、これらのバンド端ααでの共振状態を「ααモード」、バンド端ββでの共振状態を「ββモード」とし、両モードの光における電場ベクトルの分布状態を図48および図49に示す。
【0222】
図48に示すように、ααモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで方位角60°間隔で交差する3種方向(1dd・2dd・3dd)を有する電場ベクトルが、6回転対称の電場ベクトル分布Rを構成している。その上、この6回転対称の電場ベクトルは、回転対称中心から放射するような方向(すなわち、放射状)に向いている。つまり、ααモードの光は、ラジアル偏波群Rを多く含むラジアル偏波ビームになっている。
【0223】
一方、図49に示すように、ββモードでの電場ベクトルの分布状態では、ほとんどで回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群Rになったラジアル偏波ビームになっている。
【0224】
すると、2-D PCL3における活性層35から発光する光がTM発振モードの光であれば、フォトニック結晶34の2次元周期構造が、正方格子または三角格子のいずれであっても、容易にラジアル偏波ビームを得ることができる。そのため、TM発振モードの場合、偏光方向を制御または旋回させる偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)は不要になる。
【0225】
[実施形態1〜4における光源ユニットについて]
以上のような実施形態1〜4における光源ユニット1の関係を、簡略に説明すると、図50のようになる。この図50において、カッコ書きの中に示される「○」、「△」、「×」は、下記のような意味になっている。
「○」:ラジアル偏波ビーム
「△」:少なくとも一部にラジアル偏波群を含む光
「×」:放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含まない光
なお、「○」または「△」であれば、本実施の形態の集光ヘッド55において、使用可能な光といえる。
【0226】
図50に示されるように、ラジアル偏波群Rを多く含むようできる光源ユニット1は、容易かつ安価にラジアル偏波ビームを生成できる装置ともいえる。したがって、光源ユニット1として発明を把握することもできる。
【0227】
例えば、キャリアの注入によって発光する活性層35と、発光した光の到達するクラッド層(36・32)とを含むとともに、そのクラッド層32に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造を有した2-D PCL3と、2-D PCL3からの光の偏光を制御する偏光制御素子(1/2波長板4または旋光子5)とを含む光源ユニット1が一つの発明ともいえる。
【0228】
そして、この光源ユニット1において、2-D PCL3が、互いに直交する2種方向(1Dおよび2D)の電場ベクトルによる4回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群Rを含む光を射出しているとする。すると、ラジアル偏波群Rの2種方向(1D・2D)の一方である第1方向(1D)に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−と規定できる。
【0229】
そして、2-D PCL3からの光が、ラジアル偏波群と、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルとを含むようになっている場合、光源ユニット1では、1/2波長板Qの方位が、ラジアル偏波群Rの2種方向(1Dまたは2D)におけるいずれか一方と一致するようになっている。
【0230】
つまり、Bモードの光に対して、方策1を施せるようになった光源ユニット1も発明として把握することもできる。
【0231】
また、上記同様に、2-D PCL3の光が、ラジアル偏波群Rと、第1方向(1D)に対して+45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルおよび−45°傾斜した方向(+45D)の電場ベクトルとを含むようになっている場合、旋光子5が、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に旋回させる旋光度を有している光源ユニット1であってもよい。つまり、Bモードの光に対して、方策4を施せるようになった光源ユニット1も発明として把握できる。
【0232】
また、2-D PCL3から射出される光の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルが発生している場合、光源ユニット1は、第1の1/2波長板4f1を含むことで、ラジアル偏波群Rを生成できる。すなわち、図50のAモード・βモードの光に対して、方策3のステップ1を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0233】
その上、このような光源ユニット1は、さらに、第1の1/2波長板4f1からの光を通過させるとともに偏光方向を制御する第2の1/2波長板4f2を含むことで、ラジアル偏波群Rを生成するようになっている。特に、第1の1/2波長板4f2の方位を第1波長板方位Q1、第2の1/2波長板4f2の方位を第2波長板方位Q2とするとともに、第1波長板方位Q1に対し、時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、第2の1/2波長板4f2は、第2波長板方位Q2を第1波長板方位Q1に対して+45°または−45°傾斜するように配されている。すなわち、図50のAモード・βモードの光に対して、ステップ1・ステップ2から成る方策3を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0234】
また、上記同様に、2-D PCL3から射出される光の少なくとも一部に、回転対称の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさでかつ方位角方向に向いた電場ベクトルが発生している場合、光源ユニット1は、旋光子5を含むことで、ラジアル偏波群を生成するようになっている。特に、その旋光子5は、旋光子通過前の光における電場ベクトルの偏光方向を直角に変化させる旋光度を有するようになっている。すなわち、図50のAモード・βモードの光に対して、方策4を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0235】
また、2-D PCL3は、フォトニックバンド構造におけるΓ点のバンド端に生じる共振作用によって、レーザ発振を行っている。そして、2-D PCL3がTM発振モードになっている場合、少なくとも、フォトニック結晶の2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、2-D PCL3の光に、ラジアル偏波群Rが発生するようになっている。すなわち、図50のAAモード、BBモード、ααモード、ββモードの光に対して、方策4を施せる光源ユニット1も発明として把握できる。
【0236】
一方、2-D PCL3がTE発振モードになっている場合、少なくとも、フォトニック結晶の2次元周期構造における格子構造が三角格子になっていることで、方位角60°間隔で交差する3種方向の電場ベクトルによる6回転対称の電場ベクトル分布を有したラジアル偏波群Rが発生しているときは、何らの方策を施す必要はない(図50のαモード参照)。
【0237】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0238】
例えば、光源ユニットにおける光射出素子は、2次元フォトニック結晶結晶面発光レーザに限定されるものではない。ラジアル偏波ビームを生成できる光射出素子(ひいては光源ユニット)であれば、特に限定されない。なぜなら、回転対称性を有する導電性散乱体に照射される光が放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含む光、特に、ラジアル偏波ビームであれば、本発明の目的である効率よく光強度を増加させた近接場光を生成できる集光ヘッドが完成するからである。
【0239】
また、フォトニック結晶における2次元周期構造を形成する開孔としては、円柱状の開孔を例に挙げて説明してきたが、これに限定されるものではない。要は、2-D PCLとしての機能を果たすフォトニック結晶になっていればよい。
【0240】
また、2次元フォトニック結晶面発光レーザから射出される光の波長も特に限定されるものではない。例えば、405nm、660nm、785nmのような波長であってもよい。
【0241】
また、導電性散乱体が板状体の場合、特に厚みの長さは限定されない。例えば、20nm等であってもよい。要は、近接場光を適切なサイズで生成できる導電性散乱体であればよい。
【0242】
また、SPPを生じさせる導電性散乱体の受光部周縁の回転対称構造において、設けられた回転対称の周期構造は、無限の回転対称性を有するものに限定されない。例えば、3回転以上の回転対称性を有する周期構造であってもよい。また、かかる導電性散乱体(具体的には受光部)の形状が、例えば正四角形であっても、周期構造の回転対称性は4回転対称に限定されるものではない。つまり、導電性散乱体の形状に生じる回転対称性と、受光部周縁の周期構造の回転対称性とは無関係であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本発明の集光ヘッドの概略構成図である。
【図2】本発明のストレージ装置の一例であるHDDの概略構成図である。
【図3】2次元フォトニック結晶面発光レーザの概略構成図である。
【図4】フォトニック結晶の2次元周期構造の平面図である。
【図5】フォトニック結晶内の光が射出する状態を説明した説明図である。
【図6】正方格子から成る2次元フォトニック結晶のバンド図である。
【図7】(A)は正方格子の実格子空間を示す平面図であり、(B)は実格子空間から求められる逆格子空間を示す平面図であり、(C)はブリュアンゾーンおよび規約ゾーンを示す平面図である。
【図8】図6のW部分の拡大図である。
【図9】Aモードでの光の電場ベクトル分布図である。
【図10】図9の簡略図である。
【図11】Bモードでの光の電場ベクトル分布図である。
【図12】図11の簡略図である。
【図13】(A)は真円状の板状導電性散乱体の斜視図であり、(B)は(A)の導電性散乱体に局在プラズモンが発生している状態を示す斜視図であり、(C)は(B)の平面図である。
【図14】(A)は正四角形状の板状導電性散乱体の斜視図であり、(B)は正三角形状の板状導電性散乱体の斜視図である。
【図15】(A)は円柱状の導電性散乱体の斜視図であり、(B)は正四角柱状の導電性散乱体の斜視図であり、(C)は正三角柱状の導電性散乱体の斜視図である。
【図16】(A)は円錐状の導電性散乱体の斜視図であり、(B)は正四角錐状の導電性散乱体の斜視図であり、(C)は正三角錐状の導電性散乱体の斜視図である。
【図17】錐体状の導電性散乱体の突端を拡大した平面図である。
【図18】表面プラズモンを発生させる導電性散乱体の斜視図であり、(A)は真円状の導電性散乱体、(B)は柱状突起片を有する導電性散乱体、(C)は錐状突起片を有する導電性散乱体を示している。
【図19】光源ユニットの概略構成図である。
【図20】電場ベクトルが波長板方位によって変化する過程を示す説明図であり、(A)・(B)は電場ベクトルの向きが波長板方位と同方向の場合を示し、(C)・(D)は電場ベクトルの向きが波長板方位に対して90°で傾いている場合を示し、(E)〜(G)は電場ベクトルの向きが波長板方位に対して45°で傾いている場合を示している。
【図21】Bモードの光に対する方策1において、1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図22】Bモードの光に対する方策1において、1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図23】(A)は図21の簡略図であり、(B)は図22の簡略図である。
【図24】Bモードの光に対する方策2において、1枚目の1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図25】Bモードの光に対する方策2において、1枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図26】Bモードの光に対する方策2において、2枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図27】Bモードの光に対する方策2において、3枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図28】(A)〜(D)は図24〜図27の簡略図である。
【図29】Aモードの光に対する方策3において、1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図30】Aモードの光に対する方策3において、1枚目の1/2波長板通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図31】Aモードの光に対する方策3において、2枚目の1/2波長板通過前の光の電場ベクトル分布図である。
【図32】(A)〜(C)は図29〜図31の簡略図である。
【図33】図29の他の一例を示す電場ベクトル分布図である。
【図34】図30の他の一例を示す電場ベクトル分布図である。
【図35】図31の他の一例を示す電場ベクトル分布図である。
【図36】(A)〜(C)は図33〜図35の簡略図である。
【図37】旋光子によって電場ベクトルが変化する過程を示す説明図であり、(A)は旋光度0.25を有する旋光子の場合、(B)は旋光度0.75を有する旋光子の場合を示している。
【図38】Aモードの光に対する方策4において、旋光子通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図39】Bモードの光に対する方策4において、旋光子通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図40】2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、生じる電界と磁界とを示す斜視図であり、(A)はTE発振モードの場合、(B)はTM発振モードの場合を示している。
【図41】活性層での利得の周波数特性図である。
【図42】AAモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図43】BBモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図44】三角格子から成る2次元フォトニック結晶のバンド図であり、Γ点の一部分の拡大図である。
【図45】αモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図46】βモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図47】βモードの光に対する方策4において、旋光子通過後の光の電場ベクトル分布図である。
【図48】ααモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図49】ββモードの光における電場ベクトル分布図である。
【図50】実施形態1〜4における光源ユニットの関係を、簡略に説明した説明図である。
【図51】局在プラズモンを発生させる散乱体を用いた従来の近接場光発生装置の斜視図である。
【図52】ラジアル偏波ビームの平面図である。
【図53】旋光子によって電場ベクトルが変化する過程を示す説明図であり、(A)は旋光度0.00を有する旋光子の場合、(B)は旋光度0.25を有する旋光子の場合、(C)は旋光度0.50を有する旋光子の場合、(D)は旋光度0.75を有する旋光子の場合を示している。
【図54】複合旋光子の概略斜視図である。
【図55】集光素子に入射する前の光の電場ベクトル分布図である。
【図56】P偏光の生じる理由を示す説明図である。
【図57】S偏光の生じる理由を示す説明図である。
【図58】P偏光とS偏光とが混在した電場ベクトル分布図である。
【図59】ラジアル偏波ビームが集光素子を通過したときに、P偏光しか生じない理由を示す説明図である。
【図60】図59に示される2方向のうちの1方向に沿った偏光方向を示した説明図である。
【図61】図59に示される2方向のうちの残りの1方向に沿った偏光方向を示した説明図である。
【符号の説明】
【0244】
1 光源ユニット
2 導電性散乱体
2a 受光部
2b 錐状体の突端に生じる曲面体
2c 金属環(導電性散乱体)
2e 柱状突起片(導電性散乱体)
2f 錐状突起片(導電性散乱体)
3 2次元フォトニック結晶面発光レーザ(光射出素子)
4 1/2波長板(偏光制御素子)
4f1 1枚目の1/2波長板
4f2 2枚目の1/2波長板
4f3 3枚目の1/2波長板
5 旋光子(偏光制御素子)
32 第1n型クラッド層(クラッド層)
33 開孔(格子)
34 フォトニック結晶
35 活性層
36 第2n型クラッド層(クラッド層)
37 p型クラッド層
41 コリメータレンズ
42 対物レンズ(集光素子)
43 半球形状レンズ(集光素子)
53 ヘッドユニット
54 磁気ヘッド
55 集光ヘッド
79 HDD(ストレージ装置)
80 ディスク(記録媒体)
L 光
R ラジアル偏波群
V 光の進行方向
AX 光軸
Γ Γ点
1D ラジアル偏波群において、直交する電場ベクトルの2種方向のうちの一方 向(第1方向)
2D ラジアル偏波群において、直交する電場ベクトルの2種方向のうちの残り の一方向(第2方向)
+45D 第1方向に対して+45°傾斜した方向
−45D 第1方向に対して−45°傾斜した方向
1d ラジアル偏波群において、方位角60°間隔で交差する電場ベクトルの3 種方向のうちの一方向
2d ラジアル偏波群において、方位角60°間隔で交差する電場ベクトルの3 種方向のうちの残りの2つのうちの一方向
3d ラジアル偏波群において、方位角60°間隔で交差する電場ベクトルの3 種方向のうちの残りの一方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ユニットと、
上記光源ユニットからの射出光を集光する集光素子と、
上記集光素子の集光点に配置され、光照射により局在プラズモンを発生させる導電性散乱体と、
を含み、
上記光源ユニットからの射出光は、
少なくとも一部に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含んでおり、
上記導電性散乱体は、
上記集光素子からの光を受光する受光部に、少なくとも3回転以上の回転対称性を有していることを特徴とする集光ヘッド。
【請求項2】
上記光源ユニットからの射出光は、
少なくとも一部に、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の集光ヘッド。
【請求項3】
上記導電性散乱体が板状体になっているとともに、上記受光部が真円状、または正三角形以上の正多角形状になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の集光ヘッド。
【請求項4】
上記受光部には、回転対称な周期構造が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項5】
上記導電性散乱体は、上記受光部から上記光の進行方向に向いて伸びる柱状体になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項6】
下記の条件式(1)を満たしていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記載の集光ヘッド;
λ/1000≦LM1≦λ/10 … 条件式(1)
ただし、
LM1:上記受光部の最大幅長
λ :光の波長
である。
【請求項7】
上記導電性散乱体は、上記受光部から上記光の進行方向に向いて伸びる錐状体になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項8】
下記条件式(2)および(2)’を満たしていることを特徴とする請求項7に記載の集光ヘッド;
λ/1000≦LM2≦λ/10 … 条件式(2)
λ/10≦LM3≦λ … 条件式(2)’
ただし、
LM2:錐状体の突端に生じる曲面体が、光軸に対し垂直な面内方向において有する 最大幅長
LM3:錐状体の底面の最大幅長
λ :光の波長
である。
【請求項9】
上記光源ユニットには、光を射出する光射出素子が含まれており、
その光射出素子は、
キャリアの注入によって発光する活性層と、全反射により上記活性層に光を閉じ込めるクラッド層とを含むとともに、上記の活性層およびクラッド層の少なくとも一方に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造を有した2次元フォトニック結晶面発光レーザであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項10】
上記2次元フォトニック結晶面発光レーザからの射出光が、少なくとも一部に回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含むことを特徴とする請求項9に記載の集光ヘッド。
【請求項11】
上記の2次元周期構造における格子構造が正方格子であることを特徴とする請求項9または10に記載の集光ヘッド。
【請求項12】
上記の2次元周期構造における格子構造が三角格子であることを特徴とする請求項9または10に記載の集光ヘッド。
【請求項13】
上記の2次元周期構造における複数の周期のうち少なくとも1つの周期間隔は、上記活性層を伝播する光の実効的な波長の整数倍の長さと一致していることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項14】
上記活性層を伝播する光の実効的な波長が、上記活性層のTE発振モード光に対する利得が最大となる波長に一致していることを特徴とする請求項13に記載の集光ヘッド。
【請求項15】
上記光源ユニットは、上記光射出素子から射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する1/2波長板を含んでいることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項16】
上記光射出素子から射出される光は、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群と、放射状でない電場ベクトル分布を構成する偏波群と、を含んでおり、
上記1/2波長板の方位が上記放射状の電場ベクトルのいずれかの方位と一致するように、上記1/2波長板が配置されていることを特徴とする請求項15に記載の集光ヘッド。
【請求項17】
上記1/2波長板を複数枚重ねて用いることを特徴とする請求項15または16に記載の集光ヘッド。
【請求項18】
上記1/2波長板には、第1の1/2波長板と第2の1/2波長板とが含まれており、
上記第1の1/2波長板の方位を第1方位、上記第2の1/2波長板の方位を第2方位とし、第1方位に対し時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、
第2の1/2波長板は、第2方位を第1方位に対して+45°または−45°傾斜するように配されていることを特徴とする請求項17に記載の集光ヘッド
【請求項19】
上記光源ユニットは、上記光射出素子から射出される光を通過させるとともに偏光方向を旋回させる旋光子を含んでいることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項20】
上記光射出素子から射出される光は、円周状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含んでおり、上記旋光子は、上記電場ベクトルを放射状の電場ベクトルに旋回させる旋光度を有していることを特徴とする請求項19に記載の集光ヘッド。
【請求項21】
上記の2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔が、上記活性層から発光するTM発振モード光に対する利得が最大となる波長と一致していることを特徴とする請求項9または10に記載の集光ヘッド。
【請求項22】
少なくとも、上記の2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、上記ラジアル偏波群が発生していることを特徴とする請求項21に記載の集光ヘッド。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の集光ヘッドと、
上記集光ヘッドの光照射を受ける記録媒体に対し、磁気記録情報の少なくとも書き込みを行う磁気ヘッドと、
を備えたことを特徴とするストレージ装置。
【請求項1】
光源ユニットと、
上記光源ユニットからの射出光を集光する集光素子と、
上記集光素子の集光点に配置され、光照射により局在プラズモンを発生させる導電性散乱体と、
を含み、
上記光源ユニットからの射出光は、
少なくとも一部に、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含んでおり、
上記導電性散乱体は、
上記集光素子からの光を受光する受光部に、少なくとも3回転以上の回転対称性を有していることを特徴とする集光ヘッド。
【請求項2】
上記光源ユニットからの射出光は、
少なくとも一部に、回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の集光ヘッド。
【請求項3】
上記導電性散乱体が板状体になっているとともに、上記受光部が真円状、または正三角形以上の正多角形状になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の集光ヘッド。
【請求項4】
上記受光部には、回転対称な周期構造が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項5】
上記導電性散乱体は、上記受光部から上記光の進行方向に向いて伸びる柱状体になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項6】
下記の条件式(1)を満たしていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記載の集光ヘッド;
λ/1000≦LM1≦λ/10 … 条件式(1)
ただし、
LM1:上記受光部の最大幅長
λ :光の波長
である。
【請求項7】
上記導電性散乱体は、上記受光部から上記光の進行方向に向いて伸びる錐状体になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項8】
下記条件式(2)および(2)’を満たしていることを特徴とする請求項7に記載の集光ヘッド;
λ/1000≦LM2≦λ/10 … 条件式(2)
λ/10≦LM3≦λ … 条件式(2)’
ただし、
LM2:錐状体の突端に生じる曲面体が、光軸に対し垂直な面内方向において有する 最大幅長
LM3:錐状体の底面の最大幅長
λ :光の波長
である。
【請求項9】
上記光源ユニットには、光を射出する光射出素子が含まれており、
その光射出素子は、
キャリアの注入によって発光する活性層と、全反射により上記活性層に光を閉じ込めるクラッド層とを含むとともに、上記の活性層およびクラッド層の少なくとも一方に、屈折率の異なる2種材料から成る2次元周期構造を有した2次元フォトニック結晶面発光レーザであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項10】
上記2次元フォトニック結晶面発光レーザからの射出光が、少なくとも一部に回転対称かつ放射状の電場ベクトル分布を構成するとともに、回転対称の中心から等距離で等しい大きさの電場ベクトルになったラジアル偏波群を含むことを特徴とする請求項9に記載の集光ヘッド。
【請求項11】
上記の2次元周期構造における格子構造が正方格子であることを特徴とする請求項9または10に記載の集光ヘッド。
【請求項12】
上記の2次元周期構造における格子構造が三角格子であることを特徴とする請求項9または10に記載の集光ヘッド。
【請求項13】
上記の2次元周期構造における複数の周期のうち少なくとも1つの周期間隔は、上記活性層を伝播する光の実効的な波長の整数倍の長さと一致していることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項14】
上記活性層を伝播する光の実効的な波長が、上記活性層のTE発振モード光に対する利得が最大となる波長に一致していることを特徴とする請求項13に記載の集光ヘッド。
【請求項15】
上記光源ユニットは、上記光射出素子から射出される光を通過させるとともに偏光方向を制御する1/2波長板を含んでいることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項16】
上記光射出素子から射出される光は、放射状の電場ベクトル分布を構成する偏波群と、放射状でない電場ベクトル分布を構成する偏波群と、を含んでおり、
上記1/2波長板の方位が上記放射状の電場ベクトルのいずれかの方位と一致するように、上記1/2波長板が配置されていることを特徴とする請求項15に記載の集光ヘッド。
【請求項17】
上記1/2波長板を複数枚重ねて用いることを特徴とする請求項15または16に記載の集光ヘッド。
【請求項18】
上記1/2波長板には、第1の1/2波長板と第2の1/2波長板とが含まれており、
上記第1の1/2波長板の方位を第1方位、上記第2の1/2波長板の方位を第2方位とし、第1方位に対し時計回りの方位角を+、反時計回りの方位角を−とすると、
第2の1/2波長板は、第2方位を第1方位に対して+45°または−45°傾斜するように配されていることを特徴とする請求項17に記載の集光ヘッド
【請求項19】
上記光源ユニットは、上記光射出素子から射出される光を通過させるとともに偏光方向を旋回させる旋光子を含んでいることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の集光ヘッド。
【請求項20】
上記光射出素子から射出される光は、円周状の電場ベクトル分布を構成する偏波群を含んでおり、上記旋光子は、上記電場ベクトルを放射状の電場ベクトルに旋回させる旋光度を有していることを特徴とする請求項19に記載の集光ヘッド。
【請求項21】
上記の2次元周期構造における複数の周期の少なくとも1つの周期間隔が、上記活性層から発光するTM発振モード光に対する利得が最大となる波長と一致していることを特徴とする請求項9または10に記載の集光ヘッド。
【請求項22】
少なくとも、上記の2次元周期構造における格子構造が正方格子または三角格子になっていることで、上記ラジアル偏波群が発生していることを特徴とする請求項21に記載の集光ヘッド。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の集光ヘッドと、
上記集光ヘッドの光照射を受ける記録媒体に対し、磁気記録情報の少なくとも書き込みを行う磁気ヘッドと、
を備えたことを特徴とするストレージ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【公開番号】特開2007−141338(P2007−141338A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332895(P2005−332895)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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