集光レンズの入射防止膜形成方法
【課題】必要なセンサ感度域への影響を低減することのできる、低コストで、小型の集光レンズを提供する。
【解決手段】外部からの入射光を二次元センサ2上に集光するための視野角θを有する集光レンズ1であって、複数のレンズL1〜L7と、これらレンズのうちのレンズ面S3に設けられた、二次元センサ2の感度波長範囲外の光を反射する入射防止膜とを有する。レンズ面S3は、該レンズ面内の複数の入射点における入射角を平均した平均入射角の、視野角θの範囲内で得られる最大値が、視野角θの半角よりも小さなレンズ面である。
【解決手段】外部からの入射光を二次元センサ2上に集光するための視野角θを有する集光レンズ1であって、複数のレンズL1〜L7と、これらレンズのうちのレンズ面S3に設けられた、二次元センサ2の感度波長範囲外の光を反射する入射防止膜とを有する。レンズ面S3は、該レンズ面内の複数の入射点における入射角を平均した平均入射角の、視野角θの範囲内で得られる最大値が、視野角θの半角よりも小さなレンズ面である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入射した光を受光器上に集光する集光レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
集光レンズは、例えばCCDを用いた撮像装置や平行光線(例えばレーザ光線)の入射角度を測定する測定装置の光学系の一部として用いられている。
【0003】
撮像装置に用いられている光学系としては、図8に示すような、入射光が集光レンズ100によって二次元センサ101上に集光される系において、平行平板に例えばZrO2とSiO2の組合せによる複数の誘電体層(多層)をコーティングした反射面板102を集光レンズ100の入射側前面に挿入したものがある。誘電体層は入射防止膜(反射膜)であり、この入射防止膜により不要な波長帯の光が反射される。センサ感度波長範囲(センサの応答感度を示す波長範囲)の光は、入射防止膜をそのまま透過して二次元センサ101に入射する。反射率99.9%を得るために必要な入射防止膜の層数は、通常、30層以上である。
【0004】
上記の光学系の他、図9に示すような、集光レンズ100の内部に、コリメートレンズ201と拡散レンズ202からなる変換光学系200を設け、この変換光学系200内の、コリメートレンズ201と拡散レンズ202の間に反射面板102を配置したものもある。この光学系においては、入射光は変換光学系200で一次的に平行光に変換されて反射面板102に入射し、反射面板102にて不要な波長帯の光が反射される。
【0005】
平行光線の入射角度を測定する装置に用いられる光学系としては、図10に示すような、入射光を集光レンズ100によって一次元センサ300上に集光するものがある。測定装置では、この光学系を複数用いる。具体的には、図11に示すように、図10に示したものと同様な構成で、視野角θを有する光学系301〜305を、検出範囲に対して一定の角度おきに配置する。この測定系の検出分解能は視野角θで決まる。
【0006】
以上の図8から図10に示した光学系および図11に示した測定装置は、その出典を明記していないが、いずれも一般に良く知られた公知技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した撮像装置や入射角度測定装置の光学系においては、入射角度に応じた分光反射率の変化を考慮して、集光レンズのレンズ面に積極的に入射防止膜を形成した例はこれまでになく、その開発が課題として挙げられていた。
【0008】
また、上記の課題の他、以下のような問題点もあった。
【0009】
(1)撮像装置の光学系の問題点:
(1−a)図8に示した光学系:
集光レンズ100の視野角がθである場合、反射面板102には、入射角0°〜θ/2の範囲で光が入射する。この場合は、入射角0°に近い角度で入射する光束(視野中心部の光束)に対する分光反射率と、入射角θ/2に近い角度で入射する光束(周辺視野部の光束)に対する分光反射率とが異なる。図12に、視野角θを40°とした場合の、入射角0°で入射する光束(視野中心部)に対する分光反射率と入射角20°で入射する光束(周辺視野部)に対する分光反射率を示す。
【0010】
図12から分かるように、周辺視野部における分光反射率は、視野中心部における分光反射率に比べて短波長側へ大きくシフトする。通常、入射防止膜は、視野中心部を基準にして設計されているため、視野中心部と周辺視野部の間の分光反射率のシフト量が大きくなると、必要なセンサ感度域に少なからず影響を及ぼすことになる。具体的には、図12に示した例において、視野中心部では波長が約910nm以下の光を透過するが、周辺視野部では波長が約890nm以下の光しか透過せず、波長が約890nm〜910nmの光(必要な光)が入射防止膜によって反射されてしまう。
【0011】
上記の問題に加えて、反射面板102を設ける分、光学系が大きくなってしまうという問題もある。
【0012】
(1−b)図9に示した光学系:
集光レンズ100に入射した光はコリメートレンズ201で一次的に平行光に変換されて反射面板102に入射するので、反射面板102への光入射角は視野角に関係なく一定となり、上述した必要なセンサ感度域へ影響は生じない。しかし、この場合は、コリメートレンズ201および拡散レンズ202が必要となる分、光学系が大型化なものになるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、必要なセンサ感度域への影響を低減することのできる、低コストで、小型の集光レンズを実現可能な入射防止膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、外部からの入射光を受光器上に集光するための所定の視野角を有する、複数のレンズからなる集光レンズの入射防止膜形成方法であって、前記複数のレンズの各レンズ面のそれぞれについて、前記集光レンズの光軸に対する入射光束の角度を前記所定の視野角の範囲内で段階的に変化させ、それぞれの角度における、当該レンズ面内の複数の入射点におけるレンズ法線に対する入射角を平均した平均入射角を算出し、前記各レンズ面のうちの、それぞれの角度について算出した前記平均入射角の最大値が前記所定の視野角の半角よりも小さなレンズ面に、前記受光器の感度波長範囲外の光を反射する入射防止膜を形成する、ことを特徴とする。
【0015】
上記の本発明によれば、以下のような作用を奏する。
【0016】
視野中心部と周辺視野部の間における分光反射率のシフト量を小さくすることで、必要なセンサ感度域への影響を低減することが可能である。入射防止膜を形成した面における平均入射角の最大値が小さいほど、分光反射率のシフト量は小さくなるが、従来のものでは、入射防止膜を形成した反射面板における平均入射角の最大値は視野角θとなる。これに対して、本発明の場合は、入射防止膜を形成した所定のレンズ面における平均入射角の最大値は、視野角θより小さい。よって、分光反射率のシフト量は、従来のものより小さくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分光反射率のシフト量を小さくすることができるので、従来のものと比べて、必要なセンサ感度域への影響を低減することができる。また、反射面板を用いる必要がない分だけ、低コスト化および小型化を図ることができる。さらに、入射防止膜の層数は従来に比べて少なくなるので、さらに低コスト化を図ることができる。
【0018】
また、特別な部材を追加する必要もないので、低コストで小型の集光レンズを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態である集光レンズの概略構成を示す。この集光レンズ1は、外部からの入射光を二次元センサ2に集光するものであって、複数のレンズL1〜L6からなる。集光レンズ1は、図2に示すように、所定の視野角θを有し、所定の鮮鋭度を持つ最大像面が二次元センサ2の受光面の大きさと一致するように配置されている。
【0021】
レンズL1〜L6は、入射側からL1,L2,...,L6の順番で配置されている。本実施形態では、レンズL1〜L6のそれぞれのレンズ面について、視野角θの範囲内で集光レンズ1に入射する光の、レンズ面内の各入射点における入射角を平均した平均入射角を調べ、その平均入射角のピーク値が最も小さいレンズ面に対して入射防止膜(または、反射膜ともいう。)をコーティングするようになっている。入射防止膜は、二次元センサ2の感度波長帯の光を透過し、それ以外の不要な波長帯の光を反射するような分光特性を有するものであれば、どのような構造のものであってもよい。例えば、入射防止膜は、ZrO2とSiO2の組合せによる複数の誘電体層(多層)をコーティングしたものであってもよく、また、良く知られた単層構造のものであってもよい。
【0022】
以下、レンズL1のレンズ面S1、S2、レンズL2のレンズ面S3、S4、レンズL3のレンズ面S5、S6を例に挙げて、これらレンズ面S1〜S6の平均入射角について説明する。なお、レンズは、レンズ中心から上下左右に対象な形状であるので、ここでは、説明を簡潔にするために、視野角θの半角(θ/2)の範囲で入射する光束についての平均入射角を説明する。
【0023】
図3に、視野角θ(40°)の半角(20°)の範囲で集光レンズ1に入射する光束についての、レンズ面S1〜S6における平均入射角を示す。横軸は、集光レンズ1に入射する光束の入射角度、すなわち図1の光学系における、集光レンズ1に入射する光束の光軸Aに対する角度であって、0°〜20°の範囲で変化させてある。縦軸は、レンズ面の平均入射角である。実線がレンズ面S1、破線(大)がレンズ面S2、一点鎖線がレンズ面S3、二点鎖線に「×」印を付与したものがレンズ面S4、実線に「*」印を付与したものがレンズ面S5、破線(小)がレンズ面S6にそれぞれ対応する。
【0024】
レンズ面の平均入射角とは、レンズ面内における各入射点(入射点の数および位置は適宜設定可能である。)における入射角の平均である。例えば、集光レンズ1への入射角度が0°の入射光束に対する、レンズ面S1における平均入射角は、レンズ面S1の面内の予め決められた複数の入射点における入射角を計算により求め、その求めた各入射点の入射角を平均することで求めることができる。各入射点の入射角の計算には、既存のレンズ設計用のコンピュータ装置を用いる。
【0025】
図3に示したレンズ面S1〜S6の平均入射角のグラフを比較すると、レンズ面S3のグラフのピーク値が他のレンズ面のグラフのピーク値より低くなっていることが分かる。すなわち、レンズ面S3は、視野角θが40°の集光レンズ1において、集光レンズ1に入射する光束の入射角度を視野角θ(40°)の範囲内で変化させた場合の、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面である。このようなレンズ面S3では、視野角θ(40°)の範囲内で集光レンズ1に入射した光束は、他のレンズ面に入射する場合に比べて、より平行光状態に近い形で入射することになる。
【0026】
入射防止膜をコーティングするレンズ面は、集光レンズ1に入射した光束がより平行光状態に近い形で入射するものほど、従来の課題で説明したような入射防止膜における分光反射率のシフト量を小さくすることができる。すなわち、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面に入射防止膜を形成することで、分光反射率のシフト量を最小限に抑えることができる。
【0027】
本実施形態の集光レンズ1では、レンズ面S3に入射防止膜を形成することで、分光反射率特性のシフト量を最小限に抑えている。図4に、レンズ面S3に反射防止膜(例えば、YAGレーザー入射防止膜)を設けた場合の分光反射率のシフトの様子を示す。レンズ面S3に入射する光束の入射角度は0°〜15°であり、入射角度15°における分光反射率(周辺視野部の分光反射率)は、入射角度0°における分光反射率(視野中心部の分光反射率)に対して短波長側へ若干シフトした状態になっている。この場合の分光反射率のシフト量は、図12に示した、反射面板を用いた場合の分光反射率のシフト量に比べて格段に少ない。よって、分光反射率のシフトに伴って生じるセンサ感度波長帯における透過率の減少を低減することができる。
【0028】
また、レンズ面S3の平均入射角の最大値は約15°であることから、このレンズ面S3に入射防止膜をコーティングする場合は、約0°〜15°の範囲での入射角を想定して入射防止膜の設計を行えば良いことになる。一方、前述の図8で示したような反射面板を用いるものにおいては、集光レンズの視野角が40°である場合、平均入射角の最大値は20°になる(図3中の長一点鎖線で示したグラフを参照)。この場合は、約0°〜20°の範囲での入射角を想定して入射防止膜の設計を行う必要がある。入射防止膜の設計では、想定する入射角の範囲が小さいほど、より設計が簡単なものとなる。この点からも、本実施形態の集光レンズは、従来の反射面板を用いるものに比べて有利なものになっている。
【0029】
さらに、入射防止膜を形成するレンズ面を、集光レンズ1に入射した光束がより平行光状態に近い形で入射するレンズ面としたことで、分光反射率のシフト量を低減するだけでなく、入射防止膜の層数も低減することが可能である。一般に、入射光束の平行光状態が悪いものほど、想定する入射角の範囲が大きくなり、入射防止膜の層数も多くなる。図4に示した例において、レンズ面S3にコーティングした反射防止膜の、反射率99.9%を達成させるために必要な層数は28であり、従来の反射面板にコーティングした反射防止膜の層数(30層)に比べて2層分少なくなっている。
【0030】
以上説明した本実施形態の集光レンズは、本発明の一例であり、その構成は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、図1に示した例では、集光レンズ1はレンズL1〜L6からなるが、レンズの構成および枚数はこれに限定されるものではない。
【0031】
また、レンズL1〜L3のレンズ面S1〜S6のうちから入射防止膜をコーティングするレンズ面S3を選択したが、実際は、レンズL1〜L6の全体において入射防止膜を形成するレンズ面を選択する。
【0032】
さらに、本実施形態では、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面に入射防止膜をコーティングするようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。基本的には、平均入射角の最大値が集光レンズ1の視野角の半角より小さいレンズ面であれば、どのレンズ面に入射防止膜をコーティングしても、従来の反射面板に入射防止膜をコーティングした場合と比べて、分光反射率のシフト量や入射防止膜の層数の低減および設計の簡略化を図ることができる。ただし、分光反射率のシフト量は、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面に入射防止膜をコーティングした場合に最も小さくなる。
【0033】
(参考例)
本実施形態の集光レンズは、外部から入射する平行光線(例えばレーザ光)の入射角度を測定する装置に適用される集光レンズであって、入射防止膜が設けられるレンズ面が異なる以外は、図1に示したものと同じものである。第1の実施形態の集光レンズは、撮像装置などに用いられるものであって、分光反射率のシフト量を低減するように構成されているが、本実施形態の集光レンズは、逆に、分光反射率のシフト量を大きくするような構成になっている。以下に、その具体的な構成を説明する。
【0034】
本実施形態では、図3に示したレンズ面S1〜S6の平均入射角のグラフにおいて、平均入射角の最大値が最も大きいレンズ面S5に入射防止膜をコーティングしている。この構成によれば、図5に示すように、中心視野部と周辺視野部における分光反射率が大きく異なる。周辺視野部の分光反射率は、中心視野部の分光反射率に比べて短波長側へ大きくシフトしている。この場合の分光反射率のシフト量は、図4および図12に示した例における分光反射率のシフト量に比べて格段に大きい。
【0035】
図6に、本実施形態の集光レンズを用いた平行光線の入射角度を測定する装置の概略構成を示す。この測定装置は、測定対象である投光器14からの平行光線(例えばレーザ光線)の入射角度を測定するものであって、集光レンズ11と一次元センサ12からなる光学系10を回転台13上に配置したものである。
【0036】
集光レンズ11は、視野角θを有し、図5に示したような、分光反射率のシフト量が大きな構成になっている。具体的には、集光レンズ11は、図3に示した平均入射角を有するレンズ面S1〜S6のうちのレンズ面S5に入射防止膜をコーティングしたものである。入射防止膜は、一次元センサ12の感度波長帯の光を透過し、それ以外の不要な波長帯の光を反射するような分光特性を有しており、分光反射率のシフトを生じる範囲に投光器14からの平行光線の波長を含むように構成されている。回転台13は、時計回り方向あるいは反時計回り方向に回転することができ、投光器14からの平行光線の光学系10への入射角度を視野角θの範囲にわたって変化させることができる。
【0037】
次に、上記の測定装置の動作原理について説明する。
【0038】
図7に、光学系10への入射角度を視野角θの範囲にわたって変化させた場合の一次元センサ12の出力を示す。この例では、集光レンズ11の光軸に平行に入射する状態の入射角度を0°(視野中心)とし、その状態を基準にして入射角度を−θ/2〜θ/2の範囲で変化させている。
【0039】
入射防止膜の分光反射率は、投光器14からの平行光線の入射角度に応じて、図5に示した周辺視野部の分光反射率から中心視野部の分光反射率の範囲でシフトする。例えば、入射角度が−θ/2の状態から測定を開始し、回転台13を反時計回り方向に一定の速度で回転させ、入射角度がθ/2の状態になった時点で測定を終了する場合は、入射防止膜の分光反射率は、平行光線の入射角度に応じて以下のようにシフトする。
【0040】
測定開始時点では、入射する平行光線に対する入射防止膜の分光反射率は、周辺視野部の分光反射率となる。回転台13が回転して入射角度が0°に近づいていくと、入射する平行光線に対する入射防止膜の分光反射率は、周辺視野部の分光反射率の状態から除々に長波長側へシフトしていき、最終的に中心視野部の分光反射率となる。入射角度が0°になった状態からさらに回転台13が回転して入射角度がθ/2に近づいていくと、入射する平行光線に対する入射防止膜の分光反射率は、視野中心部の分光反射率の状態から除々に短波長側へシフトしていき、最終的に周辺視野部の分光反射率となる。
【0041】
上記の回転に伴う分光反射率のシフト動作によれば、入射角度が−θ/2およびθ/2に近い周辺視野部においては、図5に示した周辺視野部の分光反射率に従って、投光器14からの平行光線は入射防止膜で反射される。よって、周辺視野部における一次元センサ12の出力は0になる。一方、入射角度が0°に近い視野中心部においては、図5に示した視野中心部の分光反射率に従って、投光器14からの平行光線は入射防止膜を透過して1次元センサ12に入射する。よって、視野中心部における1次元センサ12の出力は1になる。こうして得られる1次元センサ12の出力波形は、図7に示したような出力波形となる。
【0042】
投光器14からの平行光線の入射角度を算出する場合は、まず、図7の出力波形において、入射角度が視野中心(入射角度0°)となるタイミングを取得し、そのタイミングにおける回転台13の回転角度を求める。そして、その求めた回転位置と予め決められた基準位置との角度関係に基づいて、投光器14からの平行光線の入射角度を算出する。
【0043】
上記の入射角度の算出には、既存のコンピュータ装置を用いることができる。具体的には、回転台13の基準位置からの回転角度と一次元センサ12の出力とをコンピュータ装置に供給するようにし、コンピュータ装置にて、予め用意したプログラムにより上記のような入射角度の算出を行う。
【0044】
上述した測定装置の検出分解能は、図7に示した出力波形の幅Aで決まる。分光透過率のシフト量を大きくし、かつ、視野中心部の分光反射率の立ち上がり(透過領域から反射領域に遷移する境界)を測定対象である平行光線の波長に近づけることで、出力波形の幅Aをより狭くすることができ、より高い検出分解能を実現することができる。
【0045】
なお、図9に示した集光レンズ100を用いた場合は、視野中心部と周辺視野部の間で分光反射率はさほどシフトしないため、図7に示したような出力波形は得られず、入射角度が−θ/2になった時点で立ち上がり、入射角度がθ/2になった時点で立ち下がるような出力波形となる。この場合の検出分解能は、視野角θであり、図11に示した従来の入射角度測定装置と同じである。
【0046】
以上説明した本実施形態の集光レンズは、本発明の参考例である。本参考例において、例えば、集光レンズの構成および枚数はこれに限定されるものではない。
【0047】
また、視野角の範囲内での平均入射角の最大値が最も大きなレンズ面に入射防止膜をコーティングするようにしたが、本発明の集光レンズはこれに限定されるものではない。基本的には、平均入射角の最大値が視野角の半角より大きなレンズ面であれば、どのレンズ面に入射防止膜をコーティングしても、従来のものより高い検出分解能を実現することができる。
【0048】
図6に示した測定装置およびその測定手法は、分光反射率の違いを利用して測定対象である平行光線の入射角度を測定する、という従来になかった新規な測定手法を提供するものである。上述の説明では、第2の実施形態の集光レンズを用いた例を挙げて動作説明をしているが、本測定装置および測定手法に適用される集光レンズはこれに限定されるものではなく、入射角度に応じて分光反射率がシフトする集光レンズであればどのようなものを用いてもよい。
【0049】
また、測定対象である平行光線の波長が不明な場合でも、その平行光線の波長が図5に示した分光反射率のシフト範囲に含まれている場合は、平行光線の入射角度を検出することでその波長も特定することができる。具体的には、図7に示した出力波形の立ち上がりまたは立ち下りの入射角度における分光反射率を求め、その求めた分光反射率の立ち上がり(透過領域から反射領域へ遷移する境界)の波長を測定対象である平行光線の波長とする。
【0050】
上記のようにして波長の特定を行う場合は、1つの集光レンズにおける分光反射率のシフト範囲の大きさには限界があるので、ある測定範囲をカバーする複数の分光反射率のシフト範囲を設定し、その設定した分光反射率のシフト範囲に対応する集光レンズをそれぞれ作製することが望ましい。この場合は、集光レンズを入れ替えることで、測定範囲全体にわたって波長の特定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態である集光レンズの構成を説明するための図である。
【図2】図1に示す集光レンズの視野角を示す模式図である。
【図3】図1に示す集光レンズのレンズ面S1〜S6における平均入射角と入射角度の関係を示す特性図である。
【図4】図1に示す集光レンズの視野中心部と周辺視野部における分光反射率を示す特性図である。
【図5】本発明の参考例である集光レンズの視野中心部と周辺視野部における分光反射率を示す特性図である。
【図6】本発明の参考例である入射角度測定装置の一構成例を示す図である。
【図7】図6に示す入射角度測定装置の一次元センサの出力波形の一例を示す図である。
【図8】入射防止膜を備える光学系の一例を示す図である。
【図9】入射防止膜を備える光学系の一例を示す図である。
【図10】平行光線の入射角度を測定する装置に用いられる光学系の一例を示す図である。
【図11】図10に示す光学系を備える入射角度測定装置の概略構成を説明するための図である。
【図12】図8に示す光学系の反射面板の視野中心部と周辺視野部における分光反射率を示す特性図である。
【符号の説明】
【0052】
1、11、100 集光レンズ
2、101 二次元センサ
10、301〜305 光学系
12、300 一次元センサ
13 回転台
14 投光器
102 反射面板
200 変換光学系
201 コリメートレンズ
202 拡散レンズ
L1〜L7 レンズ
S1〜S6 レンズ面
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入射した光を受光器上に集光する集光レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
集光レンズは、例えばCCDを用いた撮像装置や平行光線(例えばレーザ光線)の入射角度を測定する測定装置の光学系の一部として用いられている。
【0003】
撮像装置に用いられている光学系としては、図8に示すような、入射光が集光レンズ100によって二次元センサ101上に集光される系において、平行平板に例えばZrO2とSiO2の組合せによる複数の誘電体層(多層)をコーティングした反射面板102を集光レンズ100の入射側前面に挿入したものがある。誘電体層は入射防止膜(反射膜)であり、この入射防止膜により不要な波長帯の光が反射される。センサ感度波長範囲(センサの応答感度を示す波長範囲)の光は、入射防止膜をそのまま透過して二次元センサ101に入射する。反射率99.9%を得るために必要な入射防止膜の層数は、通常、30層以上である。
【0004】
上記の光学系の他、図9に示すような、集光レンズ100の内部に、コリメートレンズ201と拡散レンズ202からなる変換光学系200を設け、この変換光学系200内の、コリメートレンズ201と拡散レンズ202の間に反射面板102を配置したものもある。この光学系においては、入射光は変換光学系200で一次的に平行光に変換されて反射面板102に入射し、反射面板102にて不要な波長帯の光が反射される。
【0005】
平行光線の入射角度を測定する装置に用いられる光学系としては、図10に示すような、入射光を集光レンズ100によって一次元センサ300上に集光するものがある。測定装置では、この光学系を複数用いる。具体的には、図11に示すように、図10に示したものと同様な構成で、視野角θを有する光学系301〜305を、検出範囲に対して一定の角度おきに配置する。この測定系の検出分解能は視野角θで決まる。
【0006】
以上の図8から図10に示した光学系および図11に示した測定装置は、その出典を明記していないが、いずれも一般に良く知られた公知技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した撮像装置や入射角度測定装置の光学系においては、入射角度に応じた分光反射率の変化を考慮して、集光レンズのレンズ面に積極的に入射防止膜を形成した例はこれまでになく、その開発が課題として挙げられていた。
【0008】
また、上記の課題の他、以下のような問題点もあった。
【0009】
(1)撮像装置の光学系の問題点:
(1−a)図8に示した光学系:
集光レンズ100の視野角がθである場合、反射面板102には、入射角0°〜θ/2の範囲で光が入射する。この場合は、入射角0°に近い角度で入射する光束(視野中心部の光束)に対する分光反射率と、入射角θ/2に近い角度で入射する光束(周辺視野部の光束)に対する分光反射率とが異なる。図12に、視野角θを40°とした場合の、入射角0°で入射する光束(視野中心部)に対する分光反射率と入射角20°で入射する光束(周辺視野部)に対する分光反射率を示す。
【0010】
図12から分かるように、周辺視野部における分光反射率は、視野中心部における分光反射率に比べて短波長側へ大きくシフトする。通常、入射防止膜は、視野中心部を基準にして設計されているため、視野中心部と周辺視野部の間の分光反射率のシフト量が大きくなると、必要なセンサ感度域に少なからず影響を及ぼすことになる。具体的には、図12に示した例において、視野中心部では波長が約910nm以下の光を透過するが、周辺視野部では波長が約890nm以下の光しか透過せず、波長が約890nm〜910nmの光(必要な光)が入射防止膜によって反射されてしまう。
【0011】
上記の問題に加えて、反射面板102を設ける分、光学系が大きくなってしまうという問題もある。
【0012】
(1−b)図9に示した光学系:
集光レンズ100に入射した光はコリメートレンズ201で一次的に平行光に変換されて反射面板102に入射するので、反射面板102への光入射角は視野角に関係なく一定となり、上述した必要なセンサ感度域へ影響は生じない。しかし、この場合は、コリメートレンズ201および拡散レンズ202が必要となる分、光学系が大型化なものになるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、必要なセンサ感度域への影響を低減することのできる、低コストで、小型の集光レンズを実現可能な入射防止膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、外部からの入射光を受光器上に集光するための所定の視野角を有する、複数のレンズからなる集光レンズの入射防止膜形成方法であって、前記複数のレンズの各レンズ面のそれぞれについて、前記集光レンズの光軸に対する入射光束の角度を前記所定の視野角の範囲内で段階的に変化させ、それぞれの角度における、当該レンズ面内の複数の入射点におけるレンズ法線に対する入射角を平均した平均入射角を算出し、前記各レンズ面のうちの、それぞれの角度について算出した前記平均入射角の最大値が前記所定の視野角の半角よりも小さなレンズ面に、前記受光器の感度波長範囲外の光を反射する入射防止膜を形成する、ことを特徴とする。
【0015】
上記の本発明によれば、以下のような作用を奏する。
【0016】
視野中心部と周辺視野部の間における分光反射率のシフト量を小さくすることで、必要なセンサ感度域への影響を低減することが可能である。入射防止膜を形成した面における平均入射角の最大値が小さいほど、分光反射率のシフト量は小さくなるが、従来のものでは、入射防止膜を形成した反射面板における平均入射角の最大値は視野角θとなる。これに対して、本発明の場合は、入射防止膜を形成した所定のレンズ面における平均入射角の最大値は、視野角θより小さい。よって、分光反射率のシフト量は、従来のものより小さくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分光反射率のシフト量を小さくすることができるので、従来のものと比べて、必要なセンサ感度域への影響を低減することができる。また、反射面板を用いる必要がない分だけ、低コスト化および小型化を図ることができる。さらに、入射防止膜の層数は従来に比べて少なくなるので、さらに低コスト化を図ることができる。
【0018】
また、特別な部材を追加する必要もないので、低コストで小型の集光レンズを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態である集光レンズの概略構成を示す。この集光レンズ1は、外部からの入射光を二次元センサ2に集光するものであって、複数のレンズL1〜L6からなる。集光レンズ1は、図2に示すように、所定の視野角θを有し、所定の鮮鋭度を持つ最大像面が二次元センサ2の受光面の大きさと一致するように配置されている。
【0021】
レンズL1〜L6は、入射側からL1,L2,...,L6の順番で配置されている。本実施形態では、レンズL1〜L6のそれぞれのレンズ面について、視野角θの範囲内で集光レンズ1に入射する光の、レンズ面内の各入射点における入射角を平均した平均入射角を調べ、その平均入射角のピーク値が最も小さいレンズ面に対して入射防止膜(または、反射膜ともいう。)をコーティングするようになっている。入射防止膜は、二次元センサ2の感度波長帯の光を透過し、それ以外の不要な波長帯の光を反射するような分光特性を有するものであれば、どのような構造のものであってもよい。例えば、入射防止膜は、ZrO2とSiO2の組合せによる複数の誘電体層(多層)をコーティングしたものであってもよく、また、良く知られた単層構造のものであってもよい。
【0022】
以下、レンズL1のレンズ面S1、S2、レンズL2のレンズ面S3、S4、レンズL3のレンズ面S5、S6を例に挙げて、これらレンズ面S1〜S6の平均入射角について説明する。なお、レンズは、レンズ中心から上下左右に対象な形状であるので、ここでは、説明を簡潔にするために、視野角θの半角(θ/2)の範囲で入射する光束についての平均入射角を説明する。
【0023】
図3に、視野角θ(40°)の半角(20°)の範囲で集光レンズ1に入射する光束についての、レンズ面S1〜S6における平均入射角を示す。横軸は、集光レンズ1に入射する光束の入射角度、すなわち図1の光学系における、集光レンズ1に入射する光束の光軸Aに対する角度であって、0°〜20°の範囲で変化させてある。縦軸は、レンズ面の平均入射角である。実線がレンズ面S1、破線(大)がレンズ面S2、一点鎖線がレンズ面S3、二点鎖線に「×」印を付与したものがレンズ面S4、実線に「*」印を付与したものがレンズ面S5、破線(小)がレンズ面S6にそれぞれ対応する。
【0024】
レンズ面の平均入射角とは、レンズ面内における各入射点(入射点の数および位置は適宜設定可能である。)における入射角の平均である。例えば、集光レンズ1への入射角度が0°の入射光束に対する、レンズ面S1における平均入射角は、レンズ面S1の面内の予め決められた複数の入射点における入射角を計算により求め、その求めた各入射点の入射角を平均することで求めることができる。各入射点の入射角の計算には、既存のレンズ設計用のコンピュータ装置を用いる。
【0025】
図3に示したレンズ面S1〜S6の平均入射角のグラフを比較すると、レンズ面S3のグラフのピーク値が他のレンズ面のグラフのピーク値より低くなっていることが分かる。すなわち、レンズ面S3は、視野角θが40°の集光レンズ1において、集光レンズ1に入射する光束の入射角度を視野角θ(40°)の範囲内で変化させた場合の、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面である。このようなレンズ面S3では、視野角θ(40°)の範囲内で集光レンズ1に入射した光束は、他のレンズ面に入射する場合に比べて、より平行光状態に近い形で入射することになる。
【0026】
入射防止膜をコーティングするレンズ面は、集光レンズ1に入射した光束がより平行光状態に近い形で入射するものほど、従来の課題で説明したような入射防止膜における分光反射率のシフト量を小さくすることができる。すなわち、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面に入射防止膜を形成することで、分光反射率のシフト量を最小限に抑えることができる。
【0027】
本実施形態の集光レンズ1では、レンズ面S3に入射防止膜を形成することで、分光反射率特性のシフト量を最小限に抑えている。図4に、レンズ面S3に反射防止膜(例えば、YAGレーザー入射防止膜)を設けた場合の分光反射率のシフトの様子を示す。レンズ面S3に入射する光束の入射角度は0°〜15°であり、入射角度15°における分光反射率(周辺視野部の分光反射率)は、入射角度0°における分光反射率(視野中心部の分光反射率)に対して短波長側へ若干シフトした状態になっている。この場合の分光反射率のシフト量は、図12に示した、反射面板を用いた場合の分光反射率のシフト量に比べて格段に少ない。よって、分光反射率のシフトに伴って生じるセンサ感度波長帯における透過率の減少を低減することができる。
【0028】
また、レンズ面S3の平均入射角の最大値は約15°であることから、このレンズ面S3に入射防止膜をコーティングする場合は、約0°〜15°の範囲での入射角を想定して入射防止膜の設計を行えば良いことになる。一方、前述の図8で示したような反射面板を用いるものにおいては、集光レンズの視野角が40°である場合、平均入射角の最大値は20°になる(図3中の長一点鎖線で示したグラフを参照)。この場合は、約0°〜20°の範囲での入射角を想定して入射防止膜の設計を行う必要がある。入射防止膜の設計では、想定する入射角の範囲が小さいほど、より設計が簡単なものとなる。この点からも、本実施形態の集光レンズは、従来の反射面板を用いるものに比べて有利なものになっている。
【0029】
さらに、入射防止膜を形成するレンズ面を、集光レンズ1に入射した光束がより平行光状態に近い形で入射するレンズ面としたことで、分光反射率のシフト量を低減するだけでなく、入射防止膜の層数も低減することが可能である。一般に、入射光束の平行光状態が悪いものほど、想定する入射角の範囲が大きくなり、入射防止膜の層数も多くなる。図4に示した例において、レンズ面S3にコーティングした反射防止膜の、反射率99.9%を達成させるために必要な層数は28であり、従来の反射面板にコーティングした反射防止膜の層数(30層)に比べて2層分少なくなっている。
【0030】
以上説明した本実施形態の集光レンズは、本発明の一例であり、その構成は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、図1に示した例では、集光レンズ1はレンズL1〜L6からなるが、レンズの構成および枚数はこれに限定されるものではない。
【0031】
また、レンズL1〜L3のレンズ面S1〜S6のうちから入射防止膜をコーティングするレンズ面S3を選択したが、実際は、レンズL1〜L6の全体において入射防止膜を形成するレンズ面を選択する。
【0032】
さらに、本実施形態では、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面に入射防止膜をコーティングするようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。基本的には、平均入射角の最大値が集光レンズ1の視野角の半角より小さいレンズ面であれば、どのレンズ面に入射防止膜をコーティングしても、従来の反射面板に入射防止膜をコーティングした場合と比べて、分光反射率のシフト量や入射防止膜の層数の低減および設計の簡略化を図ることができる。ただし、分光反射率のシフト量は、平均入射角の最大値が最も小さいレンズ面に入射防止膜をコーティングした場合に最も小さくなる。
【0033】
(参考例)
本実施形態の集光レンズは、外部から入射する平行光線(例えばレーザ光)の入射角度を測定する装置に適用される集光レンズであって、入射防止膜が設けられるレンズ面が異なる以外は、図1に示したものと同じものである。第1の実施形態の集光レンズは、撮像装置などに用いられるものであって、分光反射率のシフト量を低減するように構成されているが、本実施形態の集光レンズは、逆に、分光反射率のシフト量を大きくするような構成になっている。以下に、その具体的な構成を説明する。
【0034】
本実施形態では、図3に示したレンズ面S1〜S6の平均入射角のグラフにおいて、平均入射角の最大値が最も大きいレンズ面S5に入射防止膜をコーティングしている。この構成によれば、図5に示すように、中心視野部と周辺視野部における分光反射率が大きく異なる。周辺視野部の分光反射率は、中心視野部の分光反射率に比べて短波長側へ大きくシフトしている。この場合の分光反射率のシフト量は、図4および図12に示した例における分光反射率のシフト量に比べて格段に大きい。
【0035】
図6に、本実施形態の集光レンズを用いた平行光線の入射角度を測定する装置の概略構成を示す。この測定装置は、測定対象である投光器14からの平行光線(例えばレーザ光線)の入射角度を測定するものであって、集光レンズ11と一次元センサ12からなる光学系10を回転台13上に配置したものである。
【0036】
集光レンズ11は、視野角θを有し、図5に示したような、分光反射率のシフト量が大きな構成になっている。具体的には、集光レンズ11は、図3に示した平均入射角を有するレンズ面S1〜S6のうちのレンズ面S5に入射防止膜をコーティングしたものである。入射防止膜は、一次元センサ12の感度波長帯の光を透過し、それ以外の不要な波長帯の光を反射するような分光特性を有しており、分光反射率のシフトを生じる範囲に投光器14からの平行光線の波長を含むように構成されている。回転台13は、時計回り方向あるいは反時計回り方向に回転することができ、投光器14からの平行光線の光学系10への入射角度を視野角θの範囲にわたって変化させることができる。
【0037】
次に、上記の測定装置の動作原理について説明する。
【0038】
図7に、光学系10への入射角度を視野角θの範囲にわたって変化させた場合の一次元センサ12の出力を示す。この例では、集光レンズ11の光軸に平行に入射する状態の入射角度を0°(視野中心)とし、その状態を基準にして入射角度を−θ/2〜θ/2の範囲で変化させている。
【0039】
入射防止膜の分光反射率は、投光器14からの平行光線の入射角度に応じて、図5に示した周辺視野部の分光反射率から中心視野部の分光反射率の範囲でシフトする。例えば、入射角度が−θ/2の状態から測定を開始し、回転台13を反時計回り方向に一定の速度で回転させ、入射角度がθ/2の状態になった時点で測定を終了する場合は、入射防止膜の分光反射率は、平行光線の入射角度に応じて以下のようにシフトする。
【0040】
測定開始時点では、入射する平行光線に対する入射防止膜の分光反射率は、周辺視野部の分光反射率となる。回転台13が回転して入射角度が0°に近づいていくと、入射する平行光線に対する入射防止膜の分光反射率は、周辺視野部の分光反射率の状態から除々に長波長側へシフトしていき、最終的に中心視野部の分光反射率となる。入射角度が0°になった状態からさらに回転台13が回転して入射角度がθ/2に近づいていくと、入射する平行光線に対する入射防止膜の分光反射率は、視野中心部の分光反射率の状態から除々に短波長側へシフトしていき、最終的に周辺視野部の分光反射率となる。
【0041】
上記の回転に伴う分光反射率のシフト動作によれば、入射角度が−θ/2およびθ/2に近い周辺視野部においては、図5に示した周辺視野部の分光反射率に従って、投光器14からの平行光線は入射防止膜で反射される。よって、周辺視野部における一次元センサ12の出力は0になる。一方、入射角度が0°に近い視野中心部においては、図5に示した視野中心部の分光反射率に従って、投光器14からの平行光線は入射防止膜を透過して1次元センサ12に入射する。よって、視野中心部における1次元センサ12の出力は1になる。こうして得られる1次元センサ12の出力波形は、図7に示したような出力波形となる。
【0042】
投光器14からの平行光線の入射角度を算出する場合は、まず、図7の出力波形において、入射角度が視野中心(入射角度0°)となるタイミングを取得し、そのタイミングにおける回転台13の回転角度を求める。そして、その求めた回転位置と予め決められた基準位置との角度関係に基づいて、投光器14からの平行光線の入射角度を算出する。
【0043】
上記の入射角度の算出には、既存のコンピュータ装置を用いることができる。具体的には、回転台13の基準位置からの回転角度と一次元センサ12の出力とをコンピュータ装置に供給するようにし、コンピュータ装置にて、予め用意したプログラムにより上記のような入射角度の算出を行う。
【0044】
上述した測定装置の検出分解能は、図7に示した出力波形の幅Aで決まる。分光透過率のシフト量を大きくし、かつ、視野中心部の分光反射率の立ち上がり(透過領域から反射領域に遷移する境界)を測定対象である平行光線の波長に近づけることで、出力波形の幅Aをより狭くすることができ、より高い検出分解能を実現することができる。
【0045】
なお、図9に示した集光レンズ100を用いた場合は、視野中心部と周辺視野部の間で分光反射率はさほどシフトしないため、図7に示したような出力波形は得られず、入射角度が−θ/2になった時点で立ち上がり、入射角度がθ/2になった時点で立ち下がるような出力波形となる。この場合の検出分解能は、視野角θであり、図11に示した従来の入射角度測定装置と同じである。
【0046】
以上説明した本実施形態の集光レンズは、本発明の参考例である。本参考例において、例えば、集光レンズの構成および枚数はこれに限定されるものではない。
【0047】
また、視野角の範囲内での平均入射角の最大値が最も大きなレンズ面に入射防止膜をコーティングするようにしたが、本発明の集光レンズはこれに限定されるものではない。基本的には、平均入射角の最大値が視野角の半角より大きなレンズ面であれば、どのレンズ面に入射防止膜をコーティングしても、従来のものより高い検出分解能を実現することができる。
【0048】
図6に示した測定装置およびその測定手法は、分光反射率の違いを利用して測定対象である平行光線の入射角度を測定する、という従来になかった新規な測定手法を提供するものである。上述の説明では、第2の実施形態の集光レンズを用いた例を挙げて動作説明をしているが、本測定装置および測定手法に適用される集光レンズはこれに限定されるものではなく、入射角度に応じて分光反射率がシフトする集光レンズであればどのようなものを用いてもよい。
【0049】
また、測定対象である平行光線の波長が不明な場合でも、その平行光線の波長が図5に示した分光反射率のシフト範囲に含まれている場合は、平行光線の入射角度を検出することでその波長も特定することができる。具体的には、図7に示した出力波形の立ち上がりまたは立ち下りの入射角度における分光反射率を求め、その求めた分光反射率の立ち上がり(透過領域から反射領域へ遷移する境界)の波長を測定対象である平行光線の波長とする。
【0050】
上記のようにして波長の特定を行う場合は、1つの集光レンズにおける分光反射率のシフト範囲の大きさには限界があるので、ある測定範囲をカバーする複数の分光反射率のシフト範囲を設定し、その設定した分光反射率のシフト範囲に対応する集光レンズをそれぞれ作製することが望ましい。この場合は、集光レンズを入れ替えることで、測定範囲全体にわたって波長の特定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態である集光レンズの構成を説明するための図である。
【図2】図1に示す集光レンズの視野角を示す模式図である。
【図3】図1に示す集光レンズのレンズ面S1〜S6における平均入射角と入射角度の関係を示す特性図である。
【図4】図1に示す集光レンズの視野中心部と周辺視野部における分光反射率を示す特性図である。
【図5】本発明の参考例である集光レンズの視野中心部と周辺視野部における分光反射率を示す特性図である。
【図6】本発明の参考例である入射角度測定装置の一構成例を示す図である。
【図7】図6に示す入射角度測定装置の一次元センサの出力波形の一例を示す図である。
【図8】入射防止膜を備える光学系の一例を示す図である。
【図9】入射防止膜を備える光学系の一例を示す図である。
【図10】平行光線の入射角度を測定する装置に用いられる光学系の一例を示す図である。
【図11】図10に示す光学系を備える入射角度測定装置の概略構成を説明するための図である。
【図12】図8に示す光学系の反射面板の視野中心部と周辺視野部における分光反射率を示す特性図である。
【符号の説明】
【0052】
1、11、100 集光レンズ
2、101 二次元センサ
10、301〜305 光学系
12、300 一次元センサ
13 回転台
14 投光器
102 反射面板
200 変換光学系
201 コリメートレンズ
202 拡散レンズ
L1〜L7 レンズ
S1〜S6 レンズ面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの入射光を受光器上に集光するための所定の視野角を有する、複数のレンズからなる集光レンズの入射防止膜形成方法であって、
前記複数のレンズの各レンズ面のそれぞれについて、前記集光レンズの光軸に対する入射光束の角度を前記所定の視野角の範囲内で段階的に変化させ、それぞれの角度における、当該レンズ面内の複数の入射点におけるレンズ法線に対する入射角を平均した平均入射角を算出し、
前記各レンズ面のうちの、それぞれの角度について算出した前記平均入射角の最大値が前記所定の視野角の半角よりも小さなレンズ面に、前記受光器の感度波長範囲外の光を反射する入射防止膜を形成する、集光レンズの入射防止膜形成方法。
【請求項2】
前記各レンズ面のうちの、それぞれの角度について算出した前記平均入射角の最大値が最も小さなレンズ面に前記入射防止膜を形成する、請求項1に記載の集光レンズの入射防止膜形成方法。
【請求項1】
外部からの入射光を受光器上に集光するための所定の視野角を有する、複数のレンズからなる集光レンズの入射防止膜形成方法であって、
前記複数のレンズの各レンズ面のそれぞれについて、前記集光レンズの光軸に対する入射光束の角度を前記所定の視野角の範囲内で段階的に変化させ、それぞれの角度における、当該レンズ面内の複数の入射点におけるレンズ法線に対する入射角を平均した平均入射角を算出し、
前記各レンズ面のうちの、それぞれの角度について算出した前記平均入射角の最大値が前記所定の視野角の半角よりも小さなレンズ面に、前記受光器の感度波長範囲外の光を反射する入射防止膜を形成する、集光レンズの入射防止膜形成方法。
【請求項2】
前記各レンズ面のうちの、それぞれの角度について算出した前記平均入射角の最大値が最も小さなレンズ面に前記入射防止膜を形成する、請求項1に記載の集光レンズの入射防止膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−279750(P2007−279750A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106164(P2007−106164)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【分割の表示】特願2003−43996(P2003−43996)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【分割の表示】特願2003−43996(P2003−43996)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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