説明

集塵用フィルタ、それを備えた集塵装置、及び、集塵用フィルタの製造方法

【課題】集塵用フィルタの再生時における塵埃の払落し効率を向上して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上の実現が可能な集塵用フィルタ、並びに、その集塵用フィルタを備えた集塵装置を実現する。
【解決手段】筒状に形成された濾布Pが、織布からなる基布層20と、当該基布層20の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成され、濾布Pの濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行い、且つ、濾布Pの濾過裏面側から濾過表面側に逆流気流Hを通過させて捕集された塵埃の払落しを行うように構成されている集塵用フィルタFにおいて、基布層20の織布を構成する経糸20aと緯糸20bとの一方及び他方が、筒状に形成された濾布Pの筒周方向Yに対して傾斜して配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状に形成された濾布が、織布からなる基布層と、当該基布層の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成され、前記濾布の濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行い、且つ、前記濾布の前記濾過裏面側から前記濾過表面側に逆流気流を通過させて、捕集された塵埃の払落しを行うように構成されている集塵用フィルタ、その集塵用フィルタを備えた集塵装置、及び、集塵用フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集塵装置における集塵用フィルタとして、濾布を筒状に形成する形式のもの(バグフィルタ)が多く利用されている。その濾布としては、織布からなる基布層の濾過表面側に不織布からなるフィルタ層を結合して、積層状態に構成したものが用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。従来、前記濾布における基布層の織布は経糸及び緯糸を織成して形成されている。一般的に、筒状に形成された集塵用フィルタは、その経糸の方向が、筒状に形成された濾布の筒軸方向に対し平行に、緯糸の方向が当該筒軸方向に対し垂直になるように配置される。
【0003】
また、集塵装置を運転し、含塵空気を集塵用フィルタにおける濾布の濾過表面側から濾過裏面側に通過させることによって塵埃は集塵用フィルタに捉えられるのであるが、集塵装置の運転によって集塵用フィルタの濾過表面側に捕集した塵埃が付着すると、集塵用フィルタがそのフィルタ層にて目詰まりを起こして圧力損失が増加する。この場合、集塵用フィルタのフィルタ層に付着した塵埃の払落しを行い、圧力損失が低い状態に戻す(以下、集塵用フィルタの再生と称する場合がある)必要がある。そこで、集塵用フィルタの濾過裏面側から濾過表面側に逆流気流を通過させることによって集塵用フィルタの再生を行う機能を備えた集塵装置が利用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−269320号公報
【特許文献2】特開2008−279405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、特許文献1の集塵用フィルタでは、基布層の織布におけるその経糸の方向は、筒状に形成された濾布の筒軸方向に対し平行に、緯糸の方向は当該筒軸方向に対し垂直になるように配置されていた。この場合、当該集塵用フィルタを振動又は伸縮させたとしても、フィルタ層の面方向(筒周方向)への変位は緯糸によって制限されるため、フィルタ層を面方向(筒周方向)に積極的に伸縮するような作用が働かなかった。すなわち、集塵用フィルタの濾過表面側(筒径方向側)へは積極的に変位可能な構成とはなっていなかった。
また、そのような集塵用フィルタを特許文献2に示すような集塵装置に適用して使用した場合、逆流気流の通過によって集塵用フィルタの濾過表面に捕集された塵埃を払落すことはできるものの、上述の如くフィルタ層を面方向に積極的に伸縮するような作用が働かないため、集塵用フィルタの内部に入り込んだ塵埃を効率よく払落すことは困難であった。
【0006】
そして、上記のような集塵装置では、集塵用フィルタの内部に入り込んだ塵埃の払落し効率を向上することができないことにより、集塵用フィルタによる平均圧力損失が徐々に大きくなり、逆流気流の圧力を増加させたり払落しの回数を増加させる必要等が生じて、省エネやフィルタ寿命の向上等を実現できないものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記従来の集塵用フィルタの問題点に鑑み、集塵用フィルタの再生時における塵埃の払落し効率を向上して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上の実現が可能な集塵用フィルタを実現すること、並びに、その集塵用フィルタを備えた集塵装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る集塵用フィルタは、筒状に形成された濾布が、織布からなる基布層と、当該基布層の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成され、前記濾布の濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行い、且つ、前記濾布の前記濾過裏面側から前記濾過表面側に逆流気流を通過させて、捕集された塵埃の払落しを行うように構成されている集塵用フィルタであって、その第1特徴構成は、前記基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方が、前記筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜して配設されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、筒状に形成された濾布が、織布からなる基布層と、当該基布層の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成されている、所謂バグフィルタにおいて、基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方が、筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜して配設されているものであるから、筒状に形成された濾布の濾過表面側(筒径方向側)への変位は、基布層の織布を構成する経糸又は緯糸のいずれによっても制限されないものとなる。
【0010】
つまり、上述のように集塵用フィルタに付着した塵埃の払落し(以下、集塵用フィルタの再生と称する場合がある)を行う場合には、濾布の濾過裏面側から濾過表面側に逆流気流を通過させて、前記集塵用フィルタの濾過表面に付着した塵埃を払落すのであるが、このとき濾布は、濾布の濾過裏面側から濾過表面側に通過する逆流気流によって濾過表面側に変位し、また、逆流気流を停止することによって当初の位置に復元される。この場合において、濾布の基布層における経糸と緯糸との一方又は他方が筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜していない状態であれば、濾布の濾過表面側への変位はその筒周方向の糸によって制限される。従って、濾布の基布層における経糸と緯糸との交差角度は変化しないものとなる。
【0011】
これに対して、上記特徴構成によれば、基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方が、筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜して配設されているものであるから、フィルタ層の面方向(筒周方向)への変位は経糸と緯糸との一方又は他方のいずれによっても制限されず、結果的にフィルタ濾布の濾過表面側(筒径方向側)への変位が制限されない(すなわち、ある程度の変位が許容される)状態となる。この場合、濾布の濾過表面側への変位に伴って濾布の基布層における経糸と緯糸との交差角度は比較的大きく変化可能となる。
この経糸と緯糸との交差角度の変化により、基布層の少なくとも濾過表面側に結合されている不織布からなるフィルタ層の面方向の伸縮は、大きく発生することとなる。そして、フィルタ層は微細繊維が絡み合って形成される不織布により構成されているので、フィルタ層の面方向の伸縮は該微細繊維同士の隙間の形状を全面に亘って変化させることとなる。従って、フィルタ層に捕集された塵埃は、凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕され、不織布からなるフィルタ層から容易に離脱可能となる。
よって、塵埃の払落し効率を向上して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上を実現できる集塵用フィルタが得られるものとなった。
【0012】
本発明に係る集塵用フィルタの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記経糸と緯糸との一方が前記筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、経糸と緯糸との一方が筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内であるから、筒状に形成された濾布がその濾過表面側(筒径方向側)に変位することに対して、経糸と緯糸との一方による変位の制限は少ないものとなる。
つまり、経糸と緯糸との一方が筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜する傾斜角度が45度であれば、筒状に形成された濾布の濾過表面側(筒径方向側)への変位が最も発生し易いのであるが、この角度から偏差した範囲において、経糸と緯糸との一方が筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内であれば、筒状に形成された濾布の濾過表面側への変位をより確実に起こさせることができるものとなる。濾布の濾過表面側(筒径方向側)への変位は、基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化に的確に寄与するものとなり、上述の如く不織布からなるフィルタ層の面方向の伸縮を発生させ、フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕されるので、不織布からなるフィルタ層から容易に離脱可能となる。
【0014】
本発明に係る集塵用フィルタの第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記経糸と緯糸との他方が、前記筒状に形成された濾布の筒軸方向に配設されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、経糸と緯糸との他方が、筒状に形成された濾布の筒軸方向に配設されているから、集塵用フィルタにかかる当該濾布の筒軸方向への力(引張り力)に対して、伸縮が少なく安定した状態とすることができる。
【0016】
本発明に係る集塵用フィルタの第4特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記経糸と緯糸との他方が、前記筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜して配設されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、経糸と緯糸との他方が、筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜して配設されているものであるから、筒状に形成された濾布の濾過表面側(筒径方向側)への変位により、当該筒状に形成された濾布はその筒軸方向への伸縮も可能となる。従って、濾布の濾過表面側(筒径方向側)への変位は、基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化に的確に寄与するものとなる。そして、基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化は、上述の如く不織布からなるフィルタ層の面方向の伸縮を発生させ、フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕され、不織布からなるフィルタ層から容易に離脱可能となる。
【0018】
本発明に係る集塵用フィルタの第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、前記経糸と緯糸との他方が前記筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内である点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、経糸と緯糸との他方が筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内であるから、筒状に形成された濾布の濾過表面側への変位は、基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化に一層的確に寄与するものとなる。つまり、経糸と緯糸との他方が筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が45度であれば、筒状に形成された濾布の筒軸方向への伸縮が最も発生し易いのであるが、この角度から偏差した範囲において、経糸と緯糸との他方が筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内であれば、筒状に形成された濾布の濾過表面側への変位、又は、筒状に形成された濾布はその筒軸方向への伸縮をより確実に起こさせることができるものとなる。基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化は、上述の如く不織布からなるフィルタ層の面方向の伸縮を発生させ、フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕されるので、不織布からなるフィルタ層から容易に離脱可能となる。
【0020】
本発明に係る集塵用フィルタの第6特徴構成は、上記第1〜第5のいずれかの特徴構成に加えて、前記筒状に形成された濾布が円筒状である点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、筒状に形成された濾布が円筒状であることにより、集塵用フィルタの濾過表面側への変位は、円筒の側周面を構成する濾布を均等に変位させることとなる。そして、例えば角筒状に形成した場合のようにその角部にてその変位に対する抗力を受けることがないので、円筒状の径方向への変位は経糸と緯糸との交差角度の変化に良好に変換されることとなる。そして、基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化は、上述の如く不織布からなるフィルタ層の面方向の伸縮を発生させるので、フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕され、不織布からなるフィルタ層から容易に離脱可能となる。
【0022】
本発明に係る集塵用フィルタの第7特徴構成は、上記第1〜第6のいずれかの特徴構成に加えて、前記基布層は、帯状に織られた織布を螺旋状に巻いて筒状に形成し、縫合して形成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、基布層は、帯状に織られた織布を螺旋状に巻いて筒状形成し縫合して構成されているので、基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び経糸と緯糸との他方が、筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜するように構成される集塵用フィルタを、帯状の織布を極力裁断することなく、且つ、帯状に織られた織布の長手方向の端部の一端側と他端側とを縫合することで、容易に製作することができる。加えて、このように構成することで、集塵用フィルタを製作するに当たって、帯状に織られた織布において利用できない部分は、その帯状の両端部の三角形部分のみとなる。
説明を加えると、帯状の織布の経糸は通常その帯状の長手方向と平行に構成されるものであるから、帯状に織られた織布を螺旋状に巻いて、その長手方向の端部の一端側と他端側とを縫合すれば、筒状に形成された濾布における基布層を構成する経糸と緯糸との一方及び他方は、該筒状に形成された濾布の筒周方向に対して、確実に傾斜することとなる。
尚、例えば矩形の織布を斜めに切り取れば経糸又は緯糸が各辺に対して傾斜する矩形の織布を得ることができるが、この場合は、元の織布の各隅部分を利用しないこととなり、歩留まりが良くないものとなる。
従って、製造が容易であり、且つ織布を歩留まりよく使用できる集塵用フィルタが得られるものとなった。
【0024】
上記目的を達成するための本発明に係る集塵装置の第1特徴構成は、上記第1〜第7特徴構成のいずれかを備えた集塵用フィルタが、空気が通流可能に形成された支持体に支持させて配設し、当該集塵用フィルタにおける濾布の濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行ない、塵埃の払落し時には、当該集塵用フィルタにおける濾布の濾過裏面側から濾過表面側に逆流気流を通過させて、捕集された塵埃の払落しを行う点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、集塵用フィルタを空気が通流可能に形成された支持体にて支持されるものであるから、当該集塵用フィルタにおける濾過時及び塵埃の払落し時の双方共に、集塵用フィルタを的確に保形しつつ含塵空気又は逆流気流を通過させることができるものとなる。
また、濾布の濾過表面に捕集された塵埃の払い落し時には、当該集塵用フィルタにおける濾布の濾過裏面側から濾過表面側に逆流気流を通過させて前記濾布を前記濾過表面側に変位させるものであるが、上記第1〜第7特徴構成を備えた集塵用フィルタを支持体に支持させて用いていることによって、塵埃の払落し時に良好な再生を実現して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネ、及び、を実現できる集塵装置が得られるものとなった。
【0026】
本発明に係る集塵装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記濾布の前記濾過表面側から前記濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行いながら、前記逆流気流としての高圧空気を間欠的に噴射して捕集された塵埃の払落しを行う点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、濾布の濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行いながら、逆流気流としての高圧空気を間欠的に噴射して捕集された塵埃の払落しを行う、所謂パルスジェット式の集塵装置であるから、集塵用フィルタにおける濾布は、高圧空気によって濾過表面側へ大きく変位するものとなり、該濾布の基布層の経糸と緯糸との交差角度を大きく変化させることとなる。さらに、逆流気流が間欠的に噴射されることにより、上述のような濾布の濾過表面側への変位は間欠的に繰り返されることとなる。
従って、濾布の基布層の経糸と緯糸との交差角度の大きな変化による集塵用フィルタのフィルタ層の面方向への確実な伸縮が間欠的に繰り返されるものとなり、同フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕されるので、塵埃の払落し時にさらに良好な再生を実現して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上を実現できるものとなった。
【0028】
本発明に係る集塵装置の第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記集塵用フィルタに対し、筒状に形成された濾布の筒軸方向に張力を付与する張力付与手段を備えている点にある。
【0029】
上記特徴構成によれば、集塵用フィルタに対し、筒状に形成された濾布の筒軸方向に張力を付与する張力付与手段を備えるものであるから、濾布の濾過表面に捕集された塵埃の払い落し時において集塵用フィルタにおける濾布の濾過裏面側から濾過表面側に通過させる逆流気流によって濾布がその濾過表面側に変位する場合に、張力付与手段が安定した復元力を付与するものとなる。
【0030】
説明を加えると、例えば、経糸と緯糸とが筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜する状態に配置されている場合には、この張力付与手段によって与えられる張力は、その筒軸方向に沿って濾布を引き伸ばす、すなわち、該濾布の筒軸方向と経糸とのなす角が小さくなる方向に働く。また、濾布の濾過表面側への変位は、該濾布の筒軸方向と経糸とのなす角を大きくする方向に働くものとなるので、張力付与手段による張力と濾布の濾過表面側への変位による力とが均衡するように適度な張力を付与してやると、濾布の濾過表面側への変位の後均衡状態に戻るまでの間、濾布の濾過表面側への変位は振動しながら減衰していくこととなる。従って、濾布の濾過表面側への変位に伴う該濾布の基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化も同様に振動することとなり、同フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕される。従って、塵埃の払落し時にさらに良好な再生を実現して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上の実現が可能な集塵用フィルタを実現することができるものとなった。
【0031】
また、例えば、経糸と緯糸との一方又は他方が筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して平行である場合には、上述のような振動は起こり難いものの、張力付与手段によって与えられる張力が濾布の濾過表面側への変位に対する抗力となるため、濾布は濾過表面側への変位の後敏速に元の状態に戻ろうとする。このため、該濾布の基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化も同様に敏速に起こることとなり、同フィルタ層に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕されるとともに、前記敏速な基布層の経糸と緯糸との交差角度の変化によって弾き出されるように作用する。従って、塵埃の払落し時にさらに良好な再生を実現して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上の実現が可能な集塵用フィルタを実現することができるものとなった。
【0032】
上記目的を達成するための本発明に係る集塵用フィルタの製造方法は、織布からなる基布層と、当該基布層の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成した濾布を筒状に形成してなる集塵用フィルタの製造方法であって、
その特徴構成は、前記基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方を、前記筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜させて当該濾布を筒状に形成する点にある。
【0033】
上記特徴構成によれば、基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方を、筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜させて当該濾布を筒状に形成するものであるから、上記第1特徴構成を備えた集塵用フィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の集塵装置の全体構成図
【図2】支持体に集塵用フィルタを覆設する構造を表す縦断面図
【図3】集塵用フィルタの濾布の構造を表す断面図
【図4】濾布の基布層を表す平面図
【図5】支持体に覆設される濾布の状態変化を表す図
【図6】支持体に覆設される濾布の状態変化を表す図
【図7】支持体に覆設される濾布の状態変化を表す図
【図8】実施形態に係る集塵用フィルタを筒状に形成するための方法を表す図
【図9】別の実施形態に係る集塵用フィルタを筒状に形成するための方法を表す図
【図10】別の実施形態に係る集塵用フィルタを筒状に形成するための方法を表す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
(集塵装置の構成)
図1及び図2に基づいて、本発明の集塵装置について説明する。
本発明の集塵装置は、図1に示すように、筐体2の内部を区画壁3によって含塵空気導入室4(ダーティ側とも称する)と浄化空気室5(クリーン側とも称する)とに区画して形成されている。
【0036】
含塵空気導入室4は下部にテーパ状の落下塵埃受け部4bを備え、そのテーパ状の底部に落下塵埃排出口4cが設けられている。また、含塵空気導入室4の側部には、含塵空気Aを含塵空気導入室4に導入する含塵空気導入口4aが設けられている。
【0037】
浄化空気室5には吸引装置7を備えた浄化空気吸引管6が接続されている。また、浄化空気室5の側壁を貫通する状態で、一端側を閉塞し他端側に高圧空気供給手段Bとしての圧縮空気タンクが接続された高圧空気導入管8が備えられている。尚、前記圧縮空気タンクには、高圧空気を供給するコンプレッサが接続されている。高圧空気導入管8の高圧空気供給手段B側には、高圧空気導入管8内への高圧空気の供給、停止を切換えるバルブ11が備えられている。
【0038】
高圧空気導入管8は、前記複数の開口部3aの夫々の上部に対応する位置に、高圧空気噴出ノズル9を備えている。そして、バルブ11の開閉操作によって、高圧空気噴出ノズル9の夫々に逆流気流Hとしての高圧空気を送る状態と送らない状態とに切換えることができる。尚、このバルブ11には図示しない制御装置が接続されており、図示しない圧力検出部によって、含塵空気導入室4内の気体圧力と浄化空気室5内の気体圧力との差が設定値以上となった場合、すなわち、集塵用フィルタFに塵埃が付着して平均圧力損失が大きくなったときに、バルブ11を一時的に開状態として高圧空気噴出ノズル9の夫々に高圧空気をパルス状に噴出するように構成されている。
【0039】
次に、各集塵用フィルタFの構成、及び、開口部3aに集塵用フィルタFを取付ける構成について説明を加える。
【0040】
(濾布の構成)
図3に示すように、集塵用フィルタFを構成する濾布Pは、織布からなる基布層20と、当該基布層20の濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層21aと、当該基布層20の濾過裏面側に結合された不織布からなるフィルタ層21bとを積層して構成され、この濾布Pを、上部が開口した袋状に形成して、集塵用フィルタFが構成されている。
【0041】
基布層20は、図4(a)に示すように、自然状態において、経糸20a及び緯糸20bが直交し、且つ目の詰まっていない、帯状に織られた織布にて構成されている。そして、基布層20とフィルタ層21a及び21bとがニードルパンチにより交絡結合されている。尚、基布層20とフィルタ層21a及び21bとの結合については、交絡結合のほか熱融着による結合等、各種の結合方法が採用可能である。また、フィルタ層21aと21bとのうち、基布層20の濾過表面側のフィルタ層21aのみを備えるように構成することもできる。以下、フィルタ層21aと21bとを纏めてフィルタ層21と記載することがあるが、このように記載したときは、フィルタ層21aのみを備える構成、又はフィルタ層21aと21bとの両方を備える構成の一方又は両方を示すこととする。
【0042】
円筒状の集塵用フィルタFを製造するに当たり、フィルタ層21を結合した基布層20は、図8(a)及び図8(b)に示すように、経糸20a及び緯糸20bが直交する状態に織られた帯状の織布を、その織布の各辺に対し傾斜する状態となる矩形に切り取り、その対辺n、mを縫合する状態で筒状に形成されている。
このように構成することによって、基布層20の織布を構成する経糸20aと緯糸20bとの一方及び他方が、筒状に形成された濾布Pの筒周方向Yに対して傾斜して配設される(以下、バイアスすると表現することもある)ものとなる。
【0043】
ここで、筒状に形成された集塵用フィルタFの基布層20における経糸20aと緯糸20bとの一方が筒状に形成された濾布の筒周方向Yに対して傾斜する傾斜角度(図4(b)における角度α)は、30度〜60度の範囲内となるように構成されている。
つまり、傾斜角度α(図4(b)においては45度に構成されている)が30度〜60度の範囲内であることによって、筒状に形成された濾布Pがその濾過表面側(筒径方向側)に変位することに対して、経糸20aと緯糸20bとの一方による変位の制限は少ないものとなり、その変位が基布層20の経糸20aと緯糸20bとの交差角度の変化に的確に寄与するものとなる。そして、基布層20の経糸20aと緯糸20bとの交差角度の変化は、上述の如く不織布からなるフィルタ層21の面方向(筒周方向Y)の伸縮を発生させ、フィルタ層21に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕され、不織布からなるフィルタ層21から容易に離脱可能となる。
【0044】
さらに、経糸20aと緯糸20bとの他方が、筒状に形成された濾布Pの筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度(図4(b)における角度β)は、30度〜60度の範囲内となるように構成されている。
つまり、経糸20aと緯糸20bとの他方が筒状に形成された濾布Pの筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が図4(b)で示すように45度であれば、筒状に形成された濾布Pの筒軸方向への伸縮が最も発生し易いのであるが、この角度から偏差した範囲において、経糸20aと緯糸20bとの他方が筒状に形成された濾布Pの筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内であれば、筒状に形成された濾布Pの濾過表面側への変位、又は、筒状に形成された濾布の筒軸方向への伸縮をより確実に起こさせることができるものとなる。
従って、その筒軸方向への伸縮が基布層20の経糸20aと緯糸20bとの交差角度の変化に的確に寄与し、基布層20の経糸20aと緯糸20bとの交差角度の変化は、上述の如く不織布からなるフィルタ層21の面方向(筒周方向Y)の伸縮を発生させるので、フィルタ層21に捕集された塵埃は凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕され、不織布からなるフィルタ層21から容易に離脱可能となる。
ここで、基布層20の経糸20aと緯糸20bとの交差角度は、60度から120度の範囲となるように構成されている。
【0045】
(集塵用フィルタ、及びその取付け構成)
次に、集塵用フィルタFを、集塵装置1に取付ける取付け構成について説明する。
図2に示すように、集塵用フィルタFは、支持体Cに覆設させ支持される状態で開口部3aに取付けられるように構成されている。支持体Cは、直線棒状の支持バー51と、該支持バー51の長手方向に離間する状態で備える平面視円形の支持リング52とを溶接して、空気が通流可能な円筒形の籠状に形成される。尚、該支持体Cの一方側の端部には、区画壁3に設けられた開口部3aの径よりも大径のフランジ部3fが設けられ、このフランジ部3fが該開口部3aの周縁部分に載置支持される。また、区画壁3における開口部3aの周縁部には、内径側に突出する凸部を備えた圧接保持部3bが含塵空気導入室4側に筒状に垂設されている。集塵用フィルタFの取付け状態において、支持体Cのフランジ部3fの直下方には、拡径方向に付勢するように嵌めこまれたスナップリング3sが備えられ、該スナップリング3sが拡径して濾布Pをスナップリング3sと圧接保持部3bの凸部とで挟み込む状態で、内側から押さえつけることとなる。このようにして、集塵用フィルタF及び支持体Cは、開口部3aに一体に固定される状態となる。
【0046】
集塵用フィルタFを前記支持体Cに覆設するに当たり、有底筒状に形成された集塵用フィルタFの底部には、支持リング52と略同径の円板状に形成された保形用底板53が備えられる。この保形用底板53は、支持体Cとは独立した部材であり、有底筒状に構成された集塵用フィルタFの底部によって載置支持される。さらに、この保形用底板53に載置する状態で、錘体54が設けられるため、図2に示すように、保形用底板53は重さにより集塵用フィルタFの底部を押し下げ、支持体Cの最下段の支持リング52aとは離間する状態となる。このとき、集塵用フィルタFの周壁面には、筒状の筒軸方向Xに張力が発生する。すなわち、錘体54が集塵用フィルタFに対し、筒軸方向Xに張力を付与する張力付与手段となる。
【0047】
(集塵装置の運転)
次に、図5〜図7に基づいて、上記のように構成される集塵用フィルタFを備えた集塵装置1の運転について説明する。
図5(a)は、集塵装置1の運転を停止している状態(運転停止状態と称する)における、集塵用フィルタFの状態を表している。図5(b)は、運転停止状態における基布層20の経糸20a及び緯糸20bの状態を表す模式図である。この図においては、経糸20aと緯糸20bとは略直交しているが、実際は濾布Pの自重等により若干前記筒状に形成される濾布Pの筒軸方向に引き伸ばされ、経糸20aと前記筒状に形成される濾布Pの筒軸方向Xとがなす角βは、やや小さくなる状態となっている。
【0048】
図6(a)は、集塵装置1を運転して濾過を行っている状態(濾過運転状態と称する)である。濾過運転状態においては、濾布Pの濾過表面側から濾過裏面側に向けて含塵空気Aを通過させて濾布Pの濾過表面に塵埃を捕集する。このとき濾布Pは、図6(a)に示すように、濾過裏面側(支持体Cの内方側)に変位している。そして、図6(b)に示すように、経糸20a同士の間の距離が小さくなって、経糸20a前記筒状に形成される濾布Pの筒軸方向Xとがなす角βは、やや小さくなる状態となっている。
集塵装置1の運転停止状態、及び、濾過運転状態においては、図5(a)及び図6(a)に示すように、支持体Cにおける最下層の支持リング52aと、保形用底板53との間には、錘体54の質量による濾布Pの伸びによって若干の隙間が形成されている。
【0049】
図7(a)は、集塵装置1の運転状態における、濾布Pの濾過表面に付着した塵埃の払落しを行っている状態(払落し状態と称する)である。払落し状態においては、濾布Pの濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気Aを通過させて濾過を行いながら、逆流気流Hとしての高圧空気を一時的に噴射して捕集された塵埃の払落しを行う(所謂パルスジェット方式)ように構成されている。
すなわち、集塵用フィルタFの筒内方から筒外方に向かう逆流気流Hとしての高圧の空気流が、集塵用フィルタFの筒状に形成された濾布Pを、その濾過表面側(つまり径が大きくなる側)に向かって大きく変位させることによって、図7(b)に示すように、経糸20aと筒状に形成された濾布Pの筒軸方向Xとがなす角度βが大きくなる。そして、筒状に形成された濾布Pが筒軸方向Xに縮む状態となって、保形用底板53が支持体Cにおける最下層の支持リング52aに接するまで上昇移動する。
【0050】
また、高圧空気は例えば一定時間間隔で繰り返し噴出するため、集塵用フィルタFの濾布は濾過表面側に変位する状態と元の状態とを繰り返すこととなり、それによって前記角度α及びβも間欠的に変化し、さらにフィルタ層21の面方向の伸縮をも間欠的に生じることとなるため、フィルタ層21に捕集された塵埃は、凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕されることになる。
【0051】
尚、上記の構成において、集塵用フィルタFの濾布Pの濾過表面側への変位は、集塵用フィルタFの筒状の筒軸方向Xにおける収縮方向の力に変換される。従って、前述の錘体54による筒状の筒軸方向Xに向けた張力を、集塵用フィルタFの外方への膨張による収縮方向の力とバランスさせることによって、濾布Pの濾過表面側への変位と筒軸方向Xへの伸縮とが良好に振動状態で現れ、経糸20aと緯糸20bとの交差角度の変化が振動状態で現れることとなり、フィルタ層21に捕集された塵埃は、凝集が一層抑制されつつ適度に分散及び解砕されることになる。
【0052】
(検証実験の結果)
以下、表1に基づいて、本発明の効果を検証するために行った実験の結果を説明する。
この実験は、含塵空気の空気流量及びその中に含まれる塵埃の総量が、略一定となる条件の下で実施した。
実施例1及び2は、基布20における経糸20a及び緯糸20bを濾布Pの筒軸方向Xに対して傾斜して配置した場合、すなわち、バイアスのある基布20にて構成した集塵用フィルタFを使用した場合であり、実施例1はそのうち、錘体54により張力を付与しなかった場合、実施例2は、錘体54により張力を付与した場合である。
また、比較例1及び2は、基布20における経糸20a及び緯糸20bが濾布Pの筒周方向Y及び筒軸方向Xである(つまり正格子状の)従来の集塵用フィルタを使用した場合であり、比較例1は、そのうち、錘体により張力を付与しなかった場合、比較例2は錘体により張力を付与した場合である。
【0053】
上記実施例1及び2、並びに、比較例1及び2の夫々の場合において、払落し直前の圧力損失ΔPmax、及び、払落し直後の圧力損失ΔPmin(共に単位はパスカル)を計測した。それらの計測結果、及び、それらの数値より計算した払落し前後の圧力損失比を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
上記表1より、払落し直後の圧力損失は、実施例1及び2が比較例1及び2に比して有意に低下していることが分かる。また、錘体54により張力を付与した実施例2の場合は、張力を付与していない実施例1の場合よりも明らかに払落し直後の圧力損失が低い数値となっている。そして、払落し前後の圧力損失比は、実施例1及び2、すなわち、バイアスのある基布20にて構成した集塵用フィルタFを使用した場合には略同じ数値を示し、比較例1及び2、すなわちバイアスのない基布20にて構成した集塵用フィルタFを使用した場合には、払落し前後の圧力損失比はバイアスのある基布20にて構成した集塵用フィルタFを使用した場合よりも大きいものとなっている。
【0056】
このことより、バイアスなしの場合においては、バイアスありの場合に較べて塵埃の払落しが十分でなく、集塵用フィルタにおける払落し効率を向上することができないことが示された。従って、基布20における経糸20a及び緯糸20bを濾布Pの筒軸方向Xに対して傾斜して配置するという本発明を実施することで、集塵用フィルタFにおける塵埃の払落し時に良好な再生を実現することができるものとなることが分かった。
【0057】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ)上記の実施形態においては、本発明の集塵用フィルタFを、含塵空気Aの導入を継続した状態で逆流気流Hとしての高圧空気を間欠的に噴射して集塵用フィルタFに捕集された塵埃の払落しを行う、所謂パルスジェット方式の集塵装置に適用したが、他の方式の集塵装置に適用することも可能である。例えば、含塵空気Aの導入を停止し、浄化空気室5側を含塵空気導入室4側よりも相対的に若干高圧にして、継続的に空気流を逆流(集塵用フィルタFの濾過裏面側から濾過表面側へ通過)させることで捕集された塵埃の払い落しを行う、所謂逆洗方式の集塵装置に適用することも可能である。
【0058】
このように構成する場合、直線棒状の支持バー51と支持リング52とによって構成する籠状の支持体C、及び錘体54を設けないものとできる。つまり、集塵用フィルタFは有底筒状に形成するとともに、図示しないが、区画壁の開口部に対して該集塵用フィルタFが上向きに立設されるように構成する。又、有底筒状の底部の保形用底板は上向きに付勢するスプリングによって吊り下げ状態となっている。そして、保形のために円環状に形成された保形リングを筒状の集塵用フィルタFに、その筒軸方向に離間して取り付ける。つまり、保形リングが支持体Cとなり、スプリングが張力付与手段となる。
【0059】
そして、このように構成する場合には、濾過時の含塵空気Aの方向と濾布Pの濾過表面に付着した塵埃の払落し時における逆流気流Hは、上記実施形態の場合と逆向きとなる。すなわち、濾過時の含塵空気Aは、筒状の集塵用フィルタFの筒内方から筒外方に向けて通過し、塵埃の払い落とし時における逆流気流Hは、筒状の集塵用フィルタFの筒外方から筒内方に向けて通過するものとなる。
【0060】
(ロ)上記の実施形態においては、区画壁3は図2に示すように集塵用フィルタFを取付けるための開口部3aを複数備え、この開口部3aの夫々に対して集塵用フィルタFが取付けられる。図1では、8つの集塵用フィルタFが取付けられているが、集塵用フィルタFの数は集塵装置1の規模に応じて任意に変更可能であり、また、図1のように取付けられた集塵用フィルタFの列を複数列備えるように構成してもよい。
【0061】
(ハ)上記の実施形態においては、支持体Cは支持リング52を3個備え、6本の支持バー51をその支持リング52に離間して固定するように図示されているが、この支持リング52の個数又は支持バー51の本数については、空気流を妨げない範囲において任意である。又、支持バー51と支持リング52とを固定する方法については、上述のような溶接以外にも、ネジ止め等、必要な強度を確保できる固定方法であれば任意に選択可能であり、その素材についても所要の強度が確保できる限りにおいて任意に選択可能である。
【0062】
(ニ)上記の実施形態においては、含塵空気導入室4内の気体圧力と浄化空気室5内の気体圧力との差が設定値以上となった場合にバルブ11を開状態として高圧空気噴出ノズル9の夫々に逆流気流Hとしての高圧空気を送るように構成したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、高圧空気噴出ノズル9の夫々に高圧空気を送る時間間隔を設定しておき、一定時間間隔毎に高圧空気噴出ノズル9の夫々に高圧空気を送るように構成してもよい。また、制御手段を備えずに手動にてバルブ11を操作するように構成してもよい。尚、このバルブ11は、前記高圧空気の供給、停止の切換の形態に合わせて、電磁弁や手動式開閉弁等、各種のバルブが適用可能である。
【0063】
(ホ)上記の実施形態においては、濾布Pを円筒状に形成して集塵用フィルタFを構成したが、円筒形に限定されるものではなく、例えば断面が三角形以上である多角形筒状や楕円形状等に構成されていてもよい。又、1つ或いはそれ以上の角部の内角が180度以上であるような断面形状、例えば星型や多数のひだ部を備える形状であってもよい。
【0064】
(ヘ)上記の実施形態においては、基布層20の織布における経糸20a及び緯糸20bの夫々が筒状に形成された濾布Pの筒軸方向Xに対して傾斜し、錘体54の重さにより保形用底板53が集塵用フィルタFの底部を押し下げて支持体Cの最下段の支持リング52aと離間する状態となるように構成したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、図10(a)及び図10(b)に示すように経糸20aが筒状に形成された濾布Pの筒軸方向に配設され、緯糸20bが筒状に形成された濾布Pの筒周方向Yに傾斜して配設される、つまり、経糸と緯糸との他方が、筒状に形成された濾布の筒軸方向に配設されるように構成してもよい。このように構成することで、集塵用フィルタFにかかる濾布Pの筒軸方向への力、特に鉛直下方向きの引張り力に対して、伸縮がなく安定した状態とすることができる。
【0065】
尚、そのような濾布Pは、図10(a)及び図10(b)に示すように、経糸20aが帯状の織布の長手方向と平行に配置され、緯糸20bがその帯状の織布の長手方向に直交する方向に対して傾斜している織布を図示する切断線にて所望の長さに切り取り、さらに同図m及びnにて示す両辺部を縫合することで製造することができる。このように構成すれば、織布を余すことなく利用でき、歩留まりを向上することができる。
【0066】
また、経糸20a及び緯糸20bを筒軸方向Xに対し傾斜させる場合に、濾布Pの自重等による筒軸方向Xへの伸長を抑制するために、濾布Pの底部を吊り下げ支持するための吊下糸を、経糸20a、緯糸20bとは別に配置しても構わない。
【0067】
(ト)上記の実施形態においては、円筒状の集塵用フィルタFを形成するに当たり、基布層20として、経糸20a及び緯糸20bが直交する状態に織られた帯状の織布を、その織布の各辺に対し傾斜する状態となる矩形に切り取り、その対辺を縫合する状態で構成した。しかしながら、そのような形態に限定されるものではない。例えば、基布層20は、図9(a)及び図9(b)に示すように、前記のように経糸20a及び緯糸20bが直交する状態に織られた帯状の織布を螺旋状に巻いて筒状に形成し、辺m、nを縫合して形成しても良い。なお、この場合においても、経糸20a及び緯糸20bが直交しない状態に織られた織布を使用して、経糸と緯糸との一方及び他方が、前記筒状に形成された濾布の筒周方向Yに対して傾斜するように螺旋形成することも可能である。
【0068】
(チ)上述の構成においては、保形用底板53に錘体54を載置して、集塵用フィルタFに対し、筒状の筒軸方向Xに張力を付与する構成としたが、錘体54を備えない構成とすることも可能である。この場合においても、基布層20の織布を構成する経糸20aと緯糸20bとの一方及び他方が、筒状に形成された濾布Pの筒周方向Yに対して傾斜していることによって、濾布Pの濾過表面側への変位は発生し、経糸20aと緯糸20bとの交差角度の変化が起こることとなるので、フィルタ層21に捕集された塵埃が、凝集が抑制されつつ適度に分散及び解砕される効果は現れるものとなる。
【0069】
(リ)図8、図9、及び図10においては、基布層20の経糸20a及び緯糸20bと筒状に形成された濾布Pの筒軸方向Xとの関係を表すためにフィルタ層21を結合せずに基布層20のみを縫合している状態を図示しているが、基布層20の縫合は、フィルタ層21の結合前であっても後であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、集塵用フィルタの再生時における塵埃の払落し効率を向上して、集塵用フィルタの平均圧力損失の低減による省エネやフィルタ寿命の向上の実現が可能な集塵用フィルタを実現すること、並びに、その集塵用フィルタを備えた集塵装置を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 集塵装置
P 濾布
F 集塵用フィルタ
20 基布層
20a 経糸
20b 緯糸
21 フィルタ層
A 含塵空気
H 逆流気流
X 濾布の筒軸方向
Y 濾布の筒周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された濾布が、織布からなる基布層と、当該基布層の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成され、
前記濾布の濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行い、且つ、前記濾布の前記濾過裏面側から前記濾過表面側に逆流気流を通過させて、捕集された塵埃の払落しを行うように構成されている集塵用フィルタであって、
前記基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方が、前記筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜して配設されている集塵用フィルタ。
【請求項2】
前記経糸と緯糸との一方が前記筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内である請求項1記載の集塵用フィルタ。
【請求項3】
前記経糸と緯糸との他方が、前記筒状に形成された濾布の筒軸方向に配設されている請求項1又は2記載の集塵用フィルタ。
【請求項4】
前記経糸と緯糸との他方が、前記筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜して配設されている請求項1又は2記載の集塵用フィルタ。
【請求項5】
前記経糸と緯糸との他方が前記筒状に形成された濾布の筒軸方向に対して傾斜する傾斜角度が30度〜60度の範囲内である請求項4記載の集塵用フィルタ。
【請求項6】
前記筒状に形成された濾布が円筒状である請求項1〜5のいずれか1項に記載の集塵用フィルタ。
【請求項7】
前記基布層は、帯状に織られた織布を螺旋状に巻いて筒状に形成し、縫合して形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の集塵用フィルタ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の集塵用フィルタを、空気が通流可能に形成された支持体に支持させて配設し、
当該集塵用フィルタにおける濾布の濾過表面側から濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行ない、塵埃の払落し時には、当該集塵用フィルタにおける濾布の濾過裏面側から濾過表面側に逆流気流を通過させて、捕集された塵埃の払落しを行う集塵装置。
【請求項9】
前記濾布の前記濾過表面側から前記濾過裏面側に含塵空気を通過させて濾過を行いながら、前記逆流気流としての高圧空気を間欠的に噴射して捕集された塵埃の払落しを行う請求項8記載の集塵装置。
【請求項10】
前記集塵用フィルタに対し、筒状に形成された濾布の筒軸方向に張力を付与する張力付与手段を備えた請求項8又は9記載の集塵装置。
【請求項11】
織布からなる基布層と、当該基布層の少なくとも濾過表面側に結合された不織布からなるフィルタ層とを積層して構成した濾布を筒状に形成してなる集塵用フィルタの製造方法であって、
前記基布層の織布を構成する経糸と緯糸との一方及び他方を、前記筒状に形成された濾布の筒周方向に対して傾斜させて当該濾布を筒状に形成する集塵用フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−98266(P2011−98266A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253294(P2009−253294)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】