説明

集積パネルと流体デバイスとの接続構造

【課題】増し締めを殆ど行わなくても良好なシール性が維持できるとともに、その組付け作業性も改善される集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供する。
【解決手段】集積パネル1とバルブ2とを環状ガスケットGを用いて単一の円管状流体通路3,7シール状態で連通接続するに、第1及び第2流体給排口部1A,2Aに環状突起11,21を形成し、ガスケットGには、環状突起11,21のそれぞれに嵌合すべく流体経路Wの外径側部分に形成された一対の環状溝51,51を有するフッ素樹脂製のものに構成し、集積パネル1とバルブ2とを引寄せて、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの環状突起11,21とガスケットGの環状溝51とがそれぞれ嵌め合わされて嵌合シール部が形成される接合状態を維持する維持手段Iを装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積パネルと流体デバイスとの接続構造に係り、詳しくは、半導体製造や医療・医薬品製造、食品加工、化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる高純度液や超純水、或いは洗浄液の配管系等において今後需要が見込まれる流体用の集積パネルと、ポンプ、バルブ、アキュムレータ等の流体デバイスとをガスケットを介してシール状態で連通接続させるための接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記接続構造として、例えば、流体デバイスの一例であるバルブと、流体通路が内部形成された集積パネルとを一対の給排流路どうしを連通させて接続連結するものがあり、特許文献1や特許文献2において開示された接続構造が知られている。特許文献1で開示される接続構造は、一対の給排流路を近接させて配列し、夫々に独立したリング状のガスケットを介して複数のボルトで液密に接続連結させるものであり、特許文献2で開示される接続構造は、一対の給排流路を近接させて配列し、それら一対の給排流路に対応する一対の流路孔を有した単一のガスケットを単一の外ねじナットを用いて接続連結させるものである。
【0003】
特許文献1や2に開示されている接続構造は、いずれも多数の流体機器を流体ブロックに集積させて取付ける構造、いわゆる集積配管構造を採るものであり、これは配管系全体のコンパクト化やモジュール化が可能となる点で有用なものである。
【特許文献1】特開2001−82609号公報
【特許文献2】特開平10−169859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1や2に開示された接続構造においては、ガスケットが挟み込まれた一対のフランジ部どうしを所定の面圧に達するまでボルトを締付けることにより、有効なシール性能を出すようになる。しかしながら、ボルトの締付け力が時間と共に低下することは避けられないので、締付け力低下、即ちトルクダウンによる接続部からの漏れを防止するには定期的に増し締めを行う必要があった。ガスケットを用いてシールする場合は非常に高い締付け力が必要になるので、集積パネルや流体デバイスの流体給排口部には高い強度が必要になるとともに、その接続連結するための作業性の点でも不利なものであった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流体の配管系統における集積パネルと流体デバイスとの接続構造に工夫を凝らすことにより、増し締めを殆ど行わなくても良好なシール性が維持できるとともに、その組付け作業性も改善される集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、管状の流体通路3,4が開口する第1流体給排口部1Aを備えた集積パネル1の前記第1流体給排口部1Aと、管状の流体通路7,8が開口する第2流体給排口部2Aを備えた流体デバイス2の前記第2流体給排口部2Aとを、これら第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとの間に介在されるリング状のガスケットGによって前記流体通路3,4,7,8をシールする状態で連通接続するにあたり、
前記第1流体給排口部1A及び前記第2流体給排口部2Aには、各端面に開口する前記各流体通路3,4,7,8の外径側部分に環状突起11,21が形成され、
前記ガスケットGは、前記第1,第2流体給排口部1A,2Aの相対応する前記流体通路3,4,7,8どうしを連通すべく形成された流体経路Wと、前記第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面に形成された前記環状突起11,21のそれぞれに嵌合すべく前記流体経路Wの外径側部分に形成された一対の環状溝51,51とを有する可撓性を備えた材料から構成されており、
前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとが互いに前記ガスケットGを介して引寄せられて、前記第1流体給排口部1Aの前記環状突起11と前記ガスケットGの一端の環状溝51とが、及び前記第2流体給排口部2Aの前記環状突起21と前記ガスケットGの他端の前記環状溝51とがそれぞれ嵌め合わされて嵌合シール部10が形成された接合状態を維持する維持手段Iが装備されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面における前記環状突起11,21の内及び外径側に、前記ガスケットGにおける前記環状溝51を形成するために軸心方向に突出形成された内外の周壁端部52,53が、前記環状溝51と前記環状突起11,21との嵌合によって拡がり変形するのを抑制又は阻止する環状押え部分12,13,22,23が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記周壁端部52,53と前記環状押え部分12,13,22,23とが前記接合状態においては圧接されてシール部S2を形成するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記環状押え部分12,13,22,23は、これと前記環状突起11,21とで囲まれた谷部14,15,24,25が奥窄まり状となるように前記環状突起側の側周面が傾斜したテーパ周面12a,13a,22a,23aを有する先窄まり状の環状突起に形成されており、前記周壁端部52,53は、前記環状押え部分12,13,22,23のテーパ周面12a,13a,22a,23aに当接するテーパ周面52a,53aを有して前記谷部14,15,24,25に入り込み自在な先窄まり状の環状突起に形成されて、前記接合状態においては前記周壁端部52,53が前記谷部14,15,24,25に入り込んで前記両テーパ周面12a,13a,22a,23a,52a,53aどうしが圧接されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記集積パネル1に前記第1流体給排口部1Aが複数形成され、前記流体デバイス2に前記第2流体給排口部2Aが前記第1流体給排口部1Aの存在数に対応して複数形成されるとともに、これら複数の第1及び第2流体給排口部1A,2Aが互いに同一の平面上においてそれぞれが前記ガスケットGを介して連通接続自在に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記ガスケットGの断面形状が、前記第1及び第2流体給排口部1A,2Aの軸心P方向に沿う中心線Z、及び、その中心線Zに直交する中心線Xの双方に関して線対称となる略H型形状を呈するものに構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記維持手段Iは、前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとを引寄せて前記接合状態を得るための引寄せ機能を発揮するものに構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記維持手段Iが、前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとの少なくともいずれか一方の端部に形成された外向きフランジ9Bと、この外向きフランジ9Bに形成される貫通孔9aと、この貫通孔9aを通して前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとのいずれか他方に設けられたナット部67に螺着されるボルト66とを有して構成されており、
前記ボルト66を前記ナット部67に螺着させて締付けることにより前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとが互いに前記ガスケットGを介して引寄せられるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項7に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記維持手段Iが、前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aのいずれか一方の外周部に形成された雄ネジ部1nに螺合自在な雌ネジ部81nを備えた筒状ナット81と、前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aのいずれか他方の端部に形成された外向きフランジ9Bに前記第1,2流体給排口部1A,2Aの軸心P方向で干渉するよう前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aのいずれか他方の端部に外嵌された割型リング82とから成り、
前記筒状ナット81の一端部には、前記外向きフランジ9Bの通過は許容し、かつ、前記割型リング82とは前記軸心P方向で干渉する開口部83aを有する内向きフランジ83が形成されており、
前記筒状ナット81の前記雄ネジ部1nへの締付け操作によって、前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとが互いに前記ガスケットGを介して引寄せられるように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項1〜9の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記ガスケットGがフッ素樹脂によって形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項1〜10の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記第1及び第2流体給排口部1A,2Aがフッ素樹脂によって形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、第1、2流体給排口部にそれぞれに形成された環状突起と、ガスケットの一端面及び他端面にそれぞれ形成された環状溝とが、軸線方向の相対移動によって互いに嵌り合って嵌合シール部を形成するので、これら両者が多少軸線方向にずれ動くことがあっても環状突起と環状溝との嵌合状態が維持され、第1,2流体給給排口部間からの液漏れを阻止する優れたシール性を発揮し続けることが可能になる。例えば、半導体製造設備における洗浄装置の配管系統にこのような接続構造を用いれば、良好なシール性を確保し得ながら装置の占有面積を減少できてコスト上有利であるとともに、大流路が確保されることによって循環流量を多くし、薬液の高純度化を高めて歩留まり向上に寄与できるという効果を奏することが可能である。
【0018】
そして、維持手段によって、両流体給排口部どうしが互いにガスケットを介して引寄せられた接合状態を維持できるので、集積パネルと流体デバイスとが液漏れなく良好なシール性を確保し得る状態を長期に亘って維持可能となり、信頼性に優れる集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる。その結果、増し締めを殆ど行わなくても良好なシール性が維持できるとともに、その組付け作業性も改善される集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる。
【0019】
ところで、凹に凸を挿入しての嵌合構造においては、例えこれら両者が互いに同じ材質のものであっても、凸側の部材は殆ど変化(圧縮変形)せず、凹側の部材が拡がり変形する傾向のあることが一般に知られている。そこで、本請求項1においては、流体デバイスに凸である環状突起を、かつ、ガスケットに凹である環状溝を形成する構成としてあるので、クリープや経時変化によって変形するのは、流体デバイスに比べて小さな部品であるガスケット側であって流体デバイス側は殆ど変形しないから、ガスケットを交換することで長期に亘って良好なシール性能を維持し得る利点が廉価に実現できる効果もある。
【0020】
請求項2の発明によれば次のような作用効果がある。前述したように、凹凸嵌合においては凹側が広がり変形し易い傾向があるから、それは即ち本発明においては環状溝を形成するためにガスケットに形成される内外の周壁端部が拡がり変形することを意味している。そこで、その周壁端部の拡がり変形を抑制又は阻止する環状押え部分を第1及び第2流体給排口部に形成してあるから、周壁端部の拡がり変形が解消又は軽減されて環状突起と環状溝とが強い圧接力でもって嵌合でき、これら両者の嵌合による優れたシール機能を所期どおりに発揮させることができる。しかも、環状押え部分が存在することによって周壁端部の剛性不足を補うことができるので、これらが存在しない場合に比べてガスケットの周壁端部の厚みを薄くすることが可能であるから、ガスケットの幅寸法を小さくして流体通路の全体径のコンパクト化、つまりは集積パネルと流体デバイスとの接続構造としてのコンパクト化が図れるという利点もある。
【0021】
請求項3の発明によれば、接合状態においては、第1及び第2流体給排口部の環状突起と、各ガスケットの一端面又は他端面の環状溝との圧接によるシール部が形成されるので、それによってよりシール性に富む嵌合シール部が構成され、優れたシール性能を持つ集積パネルと流体デバイスとの接続構造とすることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、接合状態においては、第1及び第2流体給排口部の環状突起と、各ガスケットの一端面又は他端面の環状溝との嵌合部分の内径側及び外径側に、第1及び第2流体給排口部のテーパ周面とガスケットのテーパ周面とが圧接される構成が存在しており、それらテーパ周面どうしの当接により、接続構造部分のコンパクト化(請求項2)とシール性能向上(請求項3)との双方の効果を得ることができる。加えて、テーパ周面どうしを当接させる構造であるから、集積パネルや流体デバイスとガスケットとを強く押し付けるに従って圧接力が増し、上記コンパクト化及びシール性能向上の効果をより強化できるという利点がある。また、それによってテーパ周面どうしの間における液溜りの生じない接続構造とすることが可能である。
【0023】
請求項5の発明によれば、集積パネルと流体デバイスとの接続構造の複数が互いに同一平面上において構築されているので、同一平面上にない場合に比べて、部品加工が少なくて済むとか組付操作が行いやすい等の点で有利なものとなる。また、各接続構造における構成部品(第1流体給排口部やガスケット等)の共通化や、一体化(給排用の各第1流体給排口部を、一対の流体通路を一つのブロックに形成することで一体化する等)が可能となり、合理化を図ることができる利点もある。
【0024】
請求項6の発明によれば、ガスケットが上下左右に線対称となる断面が略H型のものに形成されるので、例えば非対称形状のものに比べてガスケットやこれと嵌合される部分である第1、第2流体給排口部の設計、製作が容易化されるとともに、集積パネルや流体デバイスに嵌合される場合のバランス(強度バランス、組付けバランス)に優れたものにできる。
【0025】
請求項7の発明によれば、維持手段は第1流体給排口部と第2流体給排口部との接合状態を維持するだけでなく、第1流体給排口部と第2流体給排口部とを引寄せて接合状態を得るための引寄せ機能も発揮できるので、他に引寄せ手段を用意する必要が無くなり、全体としての組付け手間の省略化やコストダウンが可能となる利点がある。
【0026】
請求項8の発明によれば、両流体給排口部の少なくとも一方に孔付きの外向きフランジを形成すれば、その孔を通すボルトと、相手方の流体給排口部に設けられるナット部とを設けるだけの簡単な手段で両流体給排口部どうしの引寄せ及び維持が行えるようになる。つまり、構造簡単で廉価な引寄せ機能付き維持手段としながら種々の利点を有する集積パネルと流体デバイスとの接続構造を得ることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、第1,2流体給排口部のいずれか一方の端部に形成された外向きフランジに割型リングを介して係合されている筒状ナットを、もう一方の第1,2流体給排口部の雄ネジに螺進させるだけの簡単な操作により、第1,2流体給排口部の環状突起とガスケットの環状溝とを嵌合させて集積パネルと流体デバイスとをシール状態で連通接続することができるとともに、筒状ナットの螺進を止めるだけで、その接続状態を維持することができる便利で扱い易い引寄せ機能付き維持手段が、コンパクトで場所を取らない合理的なものとして得られる。
【0028】
また、筒状ナットは第1流体給排口部又は第2流体給排口部の端部に外嵌装着及び離脱が自在であり、外嵌装着状態では外向きフランジ及び割型リングの双方に軸方向で干渉するから、筒状ナットによる第1,2流体給排口部どうしの直接接続を可能にしながら、割型リング及び筒状ナットを第1又は第2流体給排口部に後付け装着することが自在である。従って、筒状ナットと割型リング程度の少ない部品数で済む経済的、合理的なものとしながら、第1又は第2流体デバイスの製造時に筒状ナットを流体給排口部に外嵌装着させておく、という難しい製造手段を採ることなく、筒状ナットを用いて集積パネルと流体デバイスとの接続操作が簡単で便利に行える。
【0029】
請求項10や11の発明によれば、ガスケットや両流体給排口部が耐薬品性及び耐熱性に優れた特性を有するフッ素系樹脂で形成されているので、流体が薬液であるとか化学液体であっても、或いは高温流体であっても管継手構造部分が変形して漏れ易くなることがなく、良好なシール性が維持できるようになる。尚、フッ素系樹脂は、水素原子の一個以上をフッ素で置換したエチレンおよびその誘導体の重合によって得られる樹脂状物質であり、高温にも安定で、撥水性に優れる。また摩擦係数が小さく、耐薬品性もきわめて高く、電気絶縁性も高い点で好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明による集積パネルと流体デバイスとの接続構造の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図3は実施例1による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を示し、図4,5はそれぞれ実施例2,3による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を示し、図6〜図12は維持手段の別構造を示し、図6は第1別構造、図7,8は第2別構造、図9,10は第3別構造、図11は第4別構造、図12は第5別構造である。
【0031】
〔実施例1〕
実施例1による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図1、図2に示す。この集積パネルと流体デバイスとの接続構造は、一対の円管状の流体通路3,4が内部形成された集積パネル1と、これの上面1aにリング状のガスケットGを介して搭載されるバルブ(開閉バルブ、ストップバルブ等)2とに跨って構成された縦向きの軸心Pを共有する単流路型のものである。つまり、給排用として一対の接続構造が互いに同一のものとして構成されている。
【0032】
集積パネル1は、図1、図2に示すように、PFAやPTFE等のフッ素樹脂製のパネル材(又はブロック材)5の内部に、パネル上面1aに開口する上下向きの縦通路3a,4aと横向きの横通路3b,4bとから成る一対の円管状の供給側流体通路3,4が形成されたものである。この集積パネル1における給排流体通路3,4が開口する部分を第1流体給排口部1Aと称するものとし、この第1流体給排口部1Aにおいては、円管状の縦通路3a,4aのそれぞれが軸心Pを有する通路に形成されている。また、第1流体給排口部1Aには、その上端面に開口する各流体通路3,4の外径側部分のそれぞれには、軸心Pを中心とする環状で、かつ、上方に突出した内外の環状突起21を有する下第1シール端部t21及び下第2シール端部t22が形成されている。
【0033】
バルブ(流体デバイスの一例)2は、図1、図2に示すように、PFAやPTFE等のフッ素樹脂製で上下方向視形状が円形のバルブケース6を有しており、そのバルブケース6の下端部は、底面6aから下方突出する状態で縦向きに配された円管状の供給側流体通路7と、この供給側流体通路7の横側方に離れて開口する状態で縦向きに配された円管状の排出側流体通路8とを有した第2流体給排口部2Aに形成されている。つまり、この第2流体給排口部2Aにおいては、円管状の供給側流体通路7,8のそれぞれが軸心Pを有する通路に形成されている。つまり、バルブケース6下端には、一対のボルト挿通孔9aを有するPFAやPTFE又はその他の材料によるフッ素樹脂製の取付フランジ9の一対が下方突出形成されており、流体通路7,8を有する管部9Aとフランジ部(外向きフランジ)9Bとで各取付フランジ9が形成されている。供給側の取付フランジ9が、下方突出する環状突起11を有する上第1シール端部t11に形成され、排出側の取付フランジ9が、上方突出する環状突起11を有する上第2シール端部t12に形成されている。
【0034】
一対のガスケットGは互いに同一のものであり、その構造を供給側のガスケットGを例に挙げて説明する。さて、ガスケットGは、供給側の上下の流体給排口部1A,2Aの相対応する流体通路である縦通路3a及び供給側流体通路7どうしを連通すべく形成された管状の流体経路W1と、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面に形成された上第1シール端部t11の環状突起11と上第2シール端部t12の環状突起21のそれぞれに嵌合すべく流体経路W1の外径側部分に形成された上下一対の環状溝51,51とを有するPFAやPTFE等のフッ素樹脂製のものに構成されている。
【0035】
つまり、ガスケットGの断面形状は、上下一対の環状溝51,51と、これら環状溝51,51を形成するための内周壁54及び外周壁55とを有するとともに、上下の環状溝51,51は深さ及び幅が同一となる上下対称であり、かつ、内及び外周壁54,55も左右対称であって、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの軸心P方向に沿う縦中心Z、及び、その縦中心線Zに直交する横中心線Xの双方に関して線対称(ほぼ線対称でも良い)となる略H状の形状に形成されている。内周壁54の上下端部は、内周面54aである流体経路W1の上下端部が先拡がり状に外向き傾斜するテーパ内周面52a,52aに形成されるとともに、外周壁55の上下端部も、その外周面55aの上下端部が内向き傾斜するテーパ外周面53a,53aに形成されている。
【0036】
集積パネル1の第1流体給排口部1Aの下第1シール端部t21の環状突起21及びバルブ2の第2流体給排口部2Aの上第1シール端部t11における環状突起11の内及び外径側に、ガスケットGにおける環状溝51を形成するために軸心P方向に突出形成された内外の周壁端部52a,53aが、環状溝51と環状突起11,21との嵌合によって拡がり変形するのを阻止する環状押え突起(環状押え部分の一例)12,13,22,23が形成されている。
【0037】
上記環状押え突起に関する構造を、ガスケットGと上第1シール端部t11とについて説明する。内外の環状押え突起12,13は対称のものであり、これらと環状突起11とで囲まれた谷部14,15が奥窄まり状(上窄まり状)となるように環状突起側の側周面が傾斜したテーパ外周面12a及びテーパ内周面13aを有する先窄まり状の環状突起に形成されている。つまり、上第1シール端部t11は、環状突起11とその内外の両側に形成される環状押え突起12,13及び谷部14,15の総称である。
【0038】
ガスケットGの内外の周壁54,55の上端部は、環状押え突起12,13のテーパ外周面12aとテーパ内周面13aのそれぞれに当接するテーパ内周面52aとテーパ外周面53aを有して14,15に入り込み自在な先窄まり状の環状シール突起(周壁端部の一例)52,53を有し、接合状態(図1参照)においては、内外の周壁54,55の上端部である環状シール突起52,53が対応する谷部14,15に入り込み、上第1シール端部t11のテーパ外周面12aとガスケットGのテーパ内周面52aとが圧接され、かつ、上第1シール端部t11のテーパ内周面13aとガスケットGのテーパ外周面53aとが圧接されるように構成されている。
【0039】
つまり、ガスケットGの上端部には、環状溝51とその内外の環状シール突起52,53とで上シール部g11が形成され、同様に下端部には下シール部g12が形成されている。上シール部g11は上第1シール端部t11と嵌合して嵌合シール部10を形成し、下シール部g12は下第2シール端部t21と嵌合して嵌合シール部10を形成する。
【0040】
嵌合シール部10の嵌合構造を、上第1シール端部t11とガスケットGの上シール部g11について詳細に説明すると、図2、図3に示すように、内外の谷部14,15どうし、及び内外の環状シール突起52,53どうしは互いに対称であって、内外の谷部14,15全体の挟角α°と内外の環状シール突起52,53全体の向い角β°との間には、α°<β°という関係が設定されており、好ましくはα°+(20〜40°)=β°という関係に設定すると良い。この構成により、上第1シール端部t11の上環状突起11と環状溝51とが嵌り合った接合状態(後述)では、上内環状押え突起12と上内環状シール突起52とは、それらのテーパ外周面12aとテーパ内周面52aとが最内径側部分で圧接される状態となり(図3の仮想線を参照)、流体通路W1を通る流体がこれら外内のテーパ周面12a,52aどうしの間に入り込むのことをも阻止する二次シール部S2として機能する利点が得られる。
【0041】
そして、上環状突起11の幅d1と上環状溝51の幅d2との間には、d1>d2という関係が設定されており、好ましくはd1×(0.6〜0.8)=d2という関係に設定すると良い。そして、上環状突起11の突出長さh1と上環状溝51の深さh2との間にはh1<h2という関係が設定されている。これらの構成により、上環状突起11と上環状溝51とが、詳しくは、上環状突起11の内外の両側周面と相対応する上環状溝51の内外の側周面とが強く圧接され、流体の漏れを阻止する優れたシール性能を発揮する一次シール部S1が形成されるとともに、上内環状押え突起12のテーパ外周面12aと上内環状シール突起52のテーパ内周面52aとが必ず当接することになり、前述した二次シール部S2が良好に形成される利点がある。
【0042】
また、内側の環状押え突起12の先端、及び環状シール突起52,53の先端はピン角とならないようにカットされた形状、即ち、傾斜カット面12b、並びにカット面52b,53bに形成されている。これらの構成により、上内環状押え突起12の先端が流体通路W1側に若干広がり変形したとしても、もともとカットされた形状であることから、流体通路W1途中に大きく開いた断面三角形状の凹みができるだけとなり、その凹みに存在する流体が容易に流れ出すようになって実質的に液溜りが生じないようになる。加えて、その凹みの開き角度、即ち、傾斜カット面12bとテーパ内周面52aとの挟角は十分に大きく、表面張力による液溜りのおそれも回避される。また、環状突起11先端の内角及び外角は面取り加工された形状11aとしてあるので、幅の狭い環状溝51への圧入移動をかじり等の不都合なく円滑に行えるものとなっている。
【0043】
外側の環状押え突起13は、環状押え突起13のテーパ内周面13aに続く状態で、バルブケース6の下端部を形成するための下端内周部9bが存在しており、内側の環状押え突起12とは全体としての形状は異なる。そして、下第1シール端部t21に関しても、環状押え突起23のテーパ内周面23aに続く状態で、パネル材5の上端部を形成するための上端内周部5bが存在しており、やはり、内側の環状押え突起22とは全体としての形状が異なる。これら上及び下端内周部5b,9bは、ガスケットGの上及び下シール部g11,g12を上及び下第1シール端部t11,t21に嵌め合わす際のガイドとして機能するとともに、テーパ内周面13a,23aと共にガスケットGの外周壁55の拡がり変形を阻止する機能も発揮可能である。
【0044】
なお、図6に仮想線で示すように、ガスケットGの外周壁55に横突出するリング状の脱着フランジ1fを一体形成しておけば、第1又は第2流体給排口部1A,2AからガスケットGを抜出す際に、工具や手指でフランジ1fを引張る等して外し易くすることができるという利点がある。この場合、脱着フランジ1fの厚みは、接合状態における第1及び第2流体給排口部1A,2Aどうしの間隙よりも小さい値とする。
【0045】
嵌合シール部10についてさらに詳述する。図2、図3に示すように、環状押え突起12,13のテーパ周面12a,13aの開き角(谷部14,15の開き角)Dは50〜70度の範囲の値(50°≦D°≦70°)に設定されるとともに、環状シール突起(周壁端部)52,53のテーパ周面52a,53aの尖り角Eは60〜80度の範囲の値(60°≦D°≦80°)に設定されている。そして、開き角Dと尖り角Eとには、開き角Dに10〜20度を加えたものが尖り角Eとなる[D°+(10〜20°)=E°]ように設定されている。より好ましい値としては、開き角Dが69〜71度(D°=70±1°)、尖り角Eが79〜81度(E°=80±1°)、及び尖り角Eは開き角D+9〜11度(E°−D°=10±1°)に設定すると良い。
【0046】
また、環状押え突起12の傾斜カット面12bのカット角Dsは49〜51度(Ds°=50°±1°)に設定されており、周壁端部52,53の先端カット面52b,53bの迎え角Esは124〜126度(Es°=125°±1°)に設定されている。このような角度設定により、テーパ外周面12aとテーパ内周面52aとは環状の線接触状態で当接されるようになり、シールリップ効果が二次シール部S2において発揮されるようになる。また、テーパ内周面13aとテーパ外周面53aとの間にも、それらの外径側端部においてシール作用が生じる。尚、図示は省略するが、下端内周部9bが存在しない場合(集積パネルや流体デバイスにおけるガスケットGとの嵌合部の断面形状が左右対称である場合)は、外側の環状押え突起13にも傾斜カット面12bと同様な傾斜カット面が形成され、前記シールリップ効果が生じる。
【0047】
つまり、前記第1流体給排口部1Aと前記第2流体給排口部2Aとが互いに引寄せられる方向である引寄せ方向に対する前記環状シール突起(周壁端部)52,53のテーパ周面52a,53a(テーパ内周面52a、テーパ外周面53a)の尖り角Eが、前記引寄せ方向に対する前記環状押え突起12,13における環状突起11側のテーパ周面12a,13a(テーパ外周面12a、テーパ内周面13a)の開き角Dに10〜20度、好ましくは10度又はほぼ10度加えた値に設定されている。そして、前記尖り角Eが60〜80度、好ましくは80度又はほぼ80度に設定されている。
【0048】
このように尖り角E及び開き角Dを90度に近い鈍角的な値に設定する構成とすれば、環状押え突起12,13は、その径方向幅に比べて引寄せ方向(軸方向)の突出量が小さくなって相対的に強度、剛性が向上することとなり、環状シール突起52,53の拡がりを規制しながらも、自身(環状押え突起12,13)が径方向へ拡がり変形するおそれをより効果的に抑制することができる利点がある。そして、環状シール突起52,53の谷部14,15への刺さり込みによってテーパ周面52a,53aが環状押え突起12,13を径方向に押し広げる分力を小さくでき、この点からも環状押え突起12,13の径方向への拡がり変形を抑制することができる。
【0049】
次に、維持手段Iについて説明する。維持手段Iは、図2、図3に示すように、集積パネル1の第1流体給排口部1Aとバルブ2の第2流体給排口部2Aとが互いにガスケットGを介して引寄せるとともに、その引寄せ作用によって、第1流体給排口部1Aの上第1シール端部t11と、ガスケットGの上シール部g11とが、及び第2流体給排口部2Aの下第1シール端部t21と、ガスケットGの下シール部g12とがそれぞれ嵌め合わされて各嵌合シール部10が形成される接合状態を維持するものに構成されている。即ち、第2流体給排雄口部2Aの環状突起11とガスケットGの上側の環状溝51とが、及び第1流体給排雄口部1Aの環状突起21とガスケットGの下側の環状溝51とがそれぞれ嵌め合わされる。
【0050】
維持手段Iの具体構造は、第2流体給排口部2Aのフランジ部9Bのボルト挿通孔9aに挿通される一対のボルト66と、一対のボルト挿通孔9a,9aに対応して第1流体給排口部1Aに(パネル材5に)形成されたナット部67,67とで構成されており、ボルト66をナット部67に螺着させての締め付け操作により、バルブ2を集積パネル1に引寄せ、かつ、その引寄せ状態を維持することができる引寄せ機能付の維持手段Iに構成されている。また、経時変化やクリープ等が生じて各嵌合シール部10の圧接力が低下した場合には、ボルト66を増し締めすることで対処することができ、良好なシール性能を維持することが可能である。
【0051】
〔実施例2〕
実施例2による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図4に示す。これは、流体デバイスの一例であるフィルタ2と集積パネル1とを接続連結させる構造であり、接続構造自体は図1〜3に示す実施例1によるものと同じである。従って、同じ箇所には同じ符号を付すものとし、その説明は割愛する。
【0052】
フィルタ2は、本体ケース2Kと下部ケース2Bと濾過体2Cとから成り、下部ケース2Bには供給側の流体通路7と排出側の流体通路8、及びこれら流体通路7,8を有する状態で横に張り出し形成される一対の取付フランジ9,9が形成されている。これら取付フランジ9,9と集積パネル1とがガスケットGを介して接続連結される。
【0053】
〔実施例3〕
実施例3による集積パネルと流体デバイスとの接続構造は、図5に示すように、集積パネル1と流体デバイスの一例であるレギュレータ2との接続構造である。レギュレータ2は、上部ケース、中間ケース、及び下部ケースから成るケーシング2Cを有し、上部ケースと中間ケースとの間で外周部が挟持されるベローズ(図示省略)、中間ケースと下部ケースとの間で外周部が挟持される弁体(図示省略)、下部ケースに収容される戻しバネ(図示省略)等から構成されている。
【0054】
ケーシング2Cには横側方に張り出し形成される一対の取付フランジ9,9が一体的に装備されており、これら取付フランジ9,9を用いてレギュレータ2が集積パネル1の上面1aにガスケットGを介して接続連結される。このガスケットGを介しての取付フランジ9と集積パネル1の上面1aとの接続構造は、図1〜図3に示す実施例1によるものと同じであり、その詳細説明は割愛する。
【0055】
〔実施例4〕
実施例4による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図6,7に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第1別構造の維持手段Iについて説明する。なお、図6,7においては、図1〜3に示す実施例1のものと対応する箇所には対応する符号を付してある。第1別構造による維持手段Iは、図6及び図7に示すように、集積パネル1の上面に形成された平面視で円形を呈する突起状の第1流体給排口部1Aの外周部に雄ネジ1nを形成し、その雄ネジ1nに螺合自在な雌ネジ81nを備えた筒状ナット81と、バルブ2のバルブケース6の下端部に形成された外向きフランジ9に、環状の流体通路7の軸心P方向で干渉する二つ割り、または三つ割り以上の割型リング82とから構成されている。第1流体給排口部1Aの雄ネジ1nに雌ネジ81nを螺着させての筒状ナット81の締付け操作により、両流体給排口部1A,2Aを互いにガスケットGを介して接近する方向に引寄せ可能に、かつ、引寄せ状態を維持可能な引寄せ機能付きの維持手段Iに構成されている。
【0056】
筒状ナット81のバルブ2側(上側)に形成される内向きフランジ83の開口部83aは、外向きフランジ9の通過を許容するに足りる最小限の内径寸法に設定されている。割型リング82の外径は、筒状ナット81に入り込み自在となるよう雌ネジ81nの内径よりも僅かに小さい寸法に設定され、かつ、内径は、バルブ2の円形の第2流体給排口部2Aの外径部に外嵌自在となる最小限の寸法に設定されている。この場合、割型リング82を装備するには、第2流体給排口部2Aにおける外向きフランジ9を除いた径の細い部分の軸方向長さが、筒状ナット81の軸方向長さと割型リング82の厚さとの和を上回る値とすることが必要である。具体的には、図7(b)に示すように、バルブケース6の付根部6tに当接させた状態の筒状ナット81と外向きフランジ9との間の長さd3が、割型リング82の厚さd4よりも大きいこと(d3>d4)が条件となる。
【0057】
また、筒状ナット81における雌ネジ81nの内奥端部と内向きフランジ83との間に、割型リング82に軸方向に摺動自在で、かつ、割型リング82の幅寸法をカバーする軸心P方向長さを有する内周面部81mが軸心Pと同心にフラットな内周面に形成されている。すなわち、筒状ナット81の雌ネジ81nと内向きフランジ83との間における内径部81aが供給側流体通路7と同心にフラットな内周面に形成され、かつ、その内周面部81mの内径が断面矩形に形成された割型リング82の外径よりも極僅かに大きくした嵌め合い公差状態に寸法設定される一方、第2流体給排口部2Aの外径部が供給側流体通路7と同心にフラットな外周面に形成され、かつ,その外径部の外径と、割型リング82の内径とがほぼ同一径に形成される。これにより、筒状ナット81を螺進させた際に割型リング82が傾いて抉るような状態になったり、外向きフランジ9に筒状ナット81の螺進による軸心P方向の押圧力がうまく伝わらなかったりする、という不都合が生じることが防止され、有効に外向きフランジ9を押して、第1、第2流体給排口部1A,2Aを互いに接近する方向に良好に引寄せることができるようにされている。
【0058】
第1別構造の維持手段Iを用いて両流体給排口部1A,2Aどうしを接続連結する操作手順は次のようである。先ず、図7(a)に示すように、外向きフランジ9をやり過ごして筒状ナット81をバルブ2の第2流体給排口部2Aの外周に嵌装し、その最内奥側まで(付根部6tに当接するまで)移動させる。次いで、図7(b)に示すように、割型リング82を、外向きフランジ9と筒状ナット81の先端との間を通して第2流体給排口部2Aに外嵌装備させる。このとき又はその前にガスケットGをいずれかの流体給排口部1A,2Aの端面に環状突起11,21,31,41と環状溝51,61との仮嵌合を介して装着させておいてもよい。次いで、ガスケットGを介して第1流体給排口部1Aを第2流体給排口部2Aにあてがい、その状態で筒状ナット81をスライド移動させてから締付け操作[図7(c)参照]することにより、図6に示す接続状態が得られる。なお、図7においては、上下に積層される集積パネル1とバルブ2とを、図面記載都合により横倒し状態で描いてある。
【0059】
〔実施例5〕
実施例5による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図8,9に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第2別構造の維持手段Iについて説明する。なお、図8,9においては、図1〜3に示す実施例1のものと対応する箇所には対応する符号を付してある。第2別構造の維持手段Iは、第1及び第2流体給排口部1A,2Aをその端面側ほど径が大きくなるように拡径して成る第1及び第2裁頭円錐台状端部1D,2Dと、第1裁頭円錐台状端部1Dのテーパ外周面1dに当接する第1テーパ内周面84a、及び、第2裁頭円錐台状端部2Dのテーパ外周面2dに当接する第2テーパ内周面84bとによって断面が略く字状を呈する内周面を有する一対の半割円弧部材84,84で成る割型押えリング85と、半割円弧部材84,84どうしを引寄せるボルト86及び一方の半割円弧部材84に形成されたナット87とを有して構成されている。
【0060】
接合状態における第1裁頭円錐台状端部1Dと第2裁頭円錐台状端部2Dとに跨らせて一対の半割円弧部材84を被せた状態において、他方の半割円弧部材84の挿通孔に84hに通されたボルト86及びナット87の締め付けにより、一端が蝶番状に支点Qで枢支されている半割円弧部材84,84どうしが引寄せられることによるテーパ面どうしの当接による力によって、各流体給排口部1A,2Aどうしが互いに引寄せられる。割型押えリング85は、フッ素樹脂材から形成されのが好ましいが、アルミ合金等のそれ以外の材料から成るものでも良い。
【0061】
第2別構造の維持手段Iを用いて両流体給排口部1A,2Aどうしを接続連結する操作手順は次のようである。まず、図9(a)に示すように、第1,第2流体給排口部1A,2AをガスケットGを介して軽く接続連結させる予備連結操作を行う。次に、図9(b)に示すように、その予備連結された第1及び第2裁頭円錐台状端部1D,2Dに割型押えリング85を被せてボルト86による締め付け操作を行う。このボルト86の締め付けにより、ガスケットGが各流体給排口部1A,2Aに深く嵌り込み、図9(c)に示すように、集積パネル1とバルブ2との接続連結状態が得られる。
【0062】
〔実施例6〕
実施例6による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図10に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第3別構造の維持手段Iについて説明する。なお、図10においては、図1〜3に示す実施例1のものと対応する箇所には対応する符号を付してある。第3別構造の維持手段Iは、集積パネル1の上面に、外周部に雄ネジ1nを有する状態で形成された平面視で円形を呈する突起状の第1流体給排口部1Aと、第2流体給排口部2Aにおいて外周部に雄ネジ9nを有する状態でバルブケース6の下端部に形成されたフランジ部9と、これら両雄ネジ1n,9nに螺着自在な雌ネジ91n,92nを有する第1及び第2リングナット91,92と、これらリングナット91,92の外周溝91m、92mに嵌着可能な断面形状が略コ字状の係合リング93とから構成されている。
【0063】
両リングナット91,92及び係合リング93は、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂製であり、ある程度の可撓性を有している。そこで第3別構造の維持手段Iを用いて両流体給排口部1A,2Aどうしを接続連結する手順は、予め各リングナット91,92に係合リング93を係着して一体化された第1及び第2リングナット91,92を形成しておき、その一体化された第1,2リングナット91,92を、ガスケットGを介して互いに引寄せられて組付状態とされている第1及び第2流体給排口部1A,2Aに螺装し、集積パネルと流体デバイスとの接続構造を形成する、という具合になる。勿論、この場合は各雄ネジ1n,9nが互いに同一のネジであることが条件であり、螺装後に各リングナット91,92を回してより強く締付けたり、或いは後に増し締めすることが行える。
【0064】
また、次のような組付け手順も可能である。即ち、それぞれのリングナット91,92を対応する雄ネジ1n,9nに螺装した状態で、両流体給排口部1A,2AをガスケットGを介して引寄せ、ガスケットGが圧接されてのシール状態で接続する引寄せ工程を行う。この引寄せ工程は、維持手段Iとは別の専用の引寄せ手段を用いて行う。それから、各雄ネジ1n,9nのそれぞれに互いに隣接する状態で螺装されている第1及び第2リングナット91,92の外周溝91m,92mに、係合リング93を強制的に拡径変形することで入れ込むことにより、集積パネルと流体デバイスとの接続構造が形成される。つまり、係合リング93は無理嵌めによって両リングナット91,92に係着される。
【0065】
この構成による維持手段Iは文字通り、第1及び第2流体給排口部1A,2AのガスケットGを介してのシール接続状態を維持する機能だけを有するものである。しかしながら、各リングナット91,92と係合リング93とは相対回動可能であるから、これらリングナット91,92は共に単独での回動移動が可能であり、経時変化やクリープ等によってシール圧接力が低下した場合には、いずれか若しくは双方のリングナット91,92を強制的に回動操作して、増し締め操作を行うことは可能である。
【0066】
〔実施例7〕
実施例7による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図11に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第4別構造の維持手段Iについて説明する。第4別構造の維持手段Iは、図11に示すように、集積パネル1の上面に、外周部に雄ネジ1nを有する状態で形成された平面視で円形を呈する突起状の第1流体給排口部1Aと、第2流体給排口部2Aにおいて外周部に雄ネジ9nを有する状態でバルブケース6の下端部に形成されたフランジ部9と、これら両雄ネジ1n,9nに螺着自在な雌ネジ101nを有する筒状ナット101とから構成されている。
【0067】
筒状ナット101は、先端側の雌ネジ101nと基端側の内向きフランジ102との間に、雄ネジ1n,9nよりも大径の抉り内周部101aが形成されており、内向きフランジ102は、軸心P方向においてフランジ部9に干渉する内径寸法に形成されている。図11に示す組付け状態では、流体デバイス2の雄ネジ9nは抉り内周部101aに収容されており、集積パネル1の雄ネジ1nと雌ネジ101nとのみが螺合した状態であり、これによって、第1及び第2流体給排口部1A,2Aどうしが互いに引寄せられた状態を維持している。
【0068】
組付けるには、まず、筒状ナット101の雌ネジ101nを流体デバイス2のフランジ部9の雄ネジ9nに螺合させて締め込み、雄ネジ9nをやり過ごして抉り内周部101aに回転自在に収容する状態にしておき、その状態でガスケットGを介して集積パネル1の雄ネジ1nに雌ネジ101nを螺合させて締付ける。すると、筒状ナット101はフランジ部9の雄ネジ9nとは相対的に空回りするので、集積パネル1のみが締め付けによって螺進し、その結果、集積パネル1と流体デバイス2とが引寄せられ、ガスケットGによって流体通路3,7がシール状態で連通接続される引寄せ状態が維持されるのであり、引寄せ機能付の維持手段Iに構成されている。
【0069】
〔実施例8〕
実施例8による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図12に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第5別構造の維持手段Iについて説明する。第5別構造の維持手段Iは、図6に示す第1別構造の維持手段Iと、図11に示す第4別構造の維持手段Iとの折衷案的な構成のものであって、図12に示すように、集積パネル1の上面に、外周部に雄ネジ1nを有する状態で形成された平面視で円形を呈する突起状の第1流体給排口部1Aと、第2流体給排口部2Aにおいて外周部に雄ネジ9nを有する状態でバルブケース6の下端部に形成されたフランジ部9と、これら両雄ネジ1n,9nに螺着自在な雌ネジ111nを有する筒状ナット111と、割型リング112とから構成されている。
【0070】
筒状ナット111は、先端側の雌ネジ111nと基端側の内向きフランジ113との間に、雄ネジ1n,9nよりも大径の抉り内周部111aが形成されており、内向きフランジ113は、軸心P方向においてフランジ部9に干渉しない程度の内径部113aを有するものに形成されている。割型リング112は、円形のリングが三個以上に分断されたような(例:120度弱の扇型部材の3個から成る)ものであり、内向きフランジ113や雌ネジ111nをやり過ごして外部から抉り内周部111aに入れ込むこと、並びに抉り内周部111aにおいてリング状の形に組むことが自在である。また、割型リング112を、スナップリングのように径方向にある程度撓むことで抉り内周部111aに入れ込める可撓性を有した単一のC字状体から構成することも可能である。
【0071】
この第5別構造による維持手段Iを用いた組付けは次のようである。即ち、上述した要領によって予め割型リング112を抉り内周部111aに入れ込んだ状態としておき、それ以後の工程は、前述した第4別構造の維持手段Iの場合と同じである。従って、これ以上の組付け手順の説明は割愛する。
【0072】
〔その他の実施例〕
本発明における「流体デバイス」とは、バルブ、ポンプ、アキュムレータ、流体貯留容器、熱交換器、レギュレータ、圧力計、流量計、ヒーター、フランジ配管等の、要は集積パネル以外の流体関係のものの総称と定義する。さらに、引寄せ機能付維持手段としては、ターンバックル式(例:図10に示す構造において、いずれかの雄ネジ1n,9nを逆ネジとして、これら両雄ネジ1n,9nに跨るターンバックルナットを螺装する構造)のものも可能である。また、環状押え突起13,23については、環状押え壁部13,23に読み代えるものとし、これら環状押え突起12,22と環状押え壁部13,23とを総称して「環状押え部分」と定義するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】集積パネルとバルブとの接続構造を示す断面図(実施例1)
【図2】図1の接続構造に用いるガスケットと流体給排口部の要部の断面図
【図3】ガスケットと流体デバイスとの嵌合構造の詳細を示す要部の拡大断面図
【図4】集積パネルとベローズ式バルブとの接続構造を示す断面図(実施例2)
【図5】集積パネルとフィルタとの接続構造を示す断面図(実施例3)
【図6】引寄せ機能付き維持手段の第1別構造を示す要部の断面図(実施例4)
【図7】図6の維持手段を有する接続構造の接続手順を示す説明図
【図8】引寄せ機能付き維持手段の第2別構造を示す要部の断面図(実施例5)
【図9】図8の維持手段を有する接続構造の接続手順を示す説明図
【図10】引寄せ機能付き維持手段の第3別構造を示す要部の断面図(実施例6)
【図11】引寄せ機能付き維持手段の第4別構造を示す要部の断面図(実施例7)
【図12】引寄せ機能付き維持手段の第5別構造を示す要部の断面図(実施例8)
【符号の説明】
【0074】
1 集積パネル
1A 第1流体給排口部
1n 雄ネジ部
2 流体デバイス
2A 第2流体給排口部
3,4 集積パネルの流体通路
7,8 流体デバイスの流体通路
9a 貫通孔
9B 外向きフランジ
10 嵌合シール部
11,21 環状突起
12,13,22,23 環状押え部分
12a,13a,22a,23a テーパ周面
14,15,24,25 谷部
51 環状溝
52,53 周壁端部
52a,53a テーパ周面
66 ボルト
67 ナット部
81 筒状ナット
81n 雌ネジ部
82 割型リング
83 内向きフランジ
83a 開口部
G ガスケット
I 維持手段
P 軸心
S2 シール部
W 流体経路
X 中心線に直交する中心線
Z 軸心方向に沿う中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の流体通路が開口する第1流体給排口部を備えた集積パネルの前記第1流体給排口部と、管状の流体通路が開口する第2流体給排口部を備えた流体デバイスの前記第2流体給排口部とを、これら第1流体給排口部と第2流体給排口部との間に介在されるリング状のガスケットによって前記流体通路をシールする状態で連通接続するにあたり、
前記第1流体給排口部及び前記第2流体給排口部には、各端面に開口する前記各流体通路の外径側部分に環状突起が形成され、
前記ガスケットは、前記第1,第2流体給排口部の相対応する前記流体通路どうしを連通すべく形成された流体経路と、前記第1及び第2流体給排口部の端面に形成された前記環状突起のそれぞれに嵌合すべく前記流体経路の外径側部分に形成された一対の環状溝とを有する可撓性を備えた材料から構成されており、
前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とが互いに前記ガスケットを介して引寄せられて、前記第1流体給排口部の前記環状突起と前記ガスケットの一端の環状溝とが、及び前記第2流体給排口部の前記環状突起と前記ガスケットの他端の前記環状溝とがそれぞれ嵌め合わされて嵌合シール部が形成された接合状態を維持する維持手段が装備されている集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項2】
前記第1及び第2流体給排口部の端面における前記環状突起の内及び外径側に、前記ガスケットにおける前記環状溝を形成するために軸心方向に突出形成された内外の周壁端部が、前記環状溝と前記環状突起との嵌合によって拡がり変形するのを抑制又は阻止する環状押え部分が形成されている請求項1に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項3】
前記周壁端部と前記環状押え部分とが前記接合状態においては圧接されてシール部を形成するように構成されている請求項2に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項4】
前記環状押え部分は、これと前記環状突起とで囲まれた谷部が奥窄まり状となるように前記環状突起側の側周面が傾斜したテーパ周面を有する先窄まり状の環状突起に形成されており、前記周壁端部は、前記環状押え部分のテーパ周面に当接するテーパ周面を有して前記谷部に入り込み自在な先窄まり状の環状突起に形成されて、前記接合状態においては前記周壁端部が前記谷部に入り込んで前記両テーパ周面どうしが圧接されるように構成されている請求項3に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項5】
前記集積パネルに前記第1流体給排口部が複数形成され、前記流体デバイスに前記第2流体給排口部が前記第1流体給排口部の存在数に対応して複数形成されるとともに、これら複数の第1及び第2流体給排口部が互いに同一の平面上においてそれぞれが前記ガスケットを介して連通接続自在に構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項6】
前記ガスケットの断面形状が、前記第1及び第2流体給排口部の軸心方向に沿う中心線、及び、その中心線に直交する中心線の双方に関して線対称となる略H型形状を呈するものに構成されている請求項1〜5の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項7】
前記維持手段は、前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とを引寄せて前記接合状態を得るための引寄せ機能を発揮するものに構成されている請求項1〜6の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項8】
前記維持手段が、前記第1流体給排口部と第2流体給排口部との少なくともいずれか一方の端部に形成された外向きフランジと、この外向きフランジに形成される貫通孔と、この貫通孔を通して前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とのいずれか他方に設けられたナット部に螺着されるボルトとを有して構成されており、
前記ボルトを前記ナット部に螺着させて締付けることにより前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とが互いに前記ガスケットを介して引寄せられるように構成されている請求項7に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項9】
前記維持手段が、前記第1流体給排口部と第2流体給排口部のいずれか一方の外周部に形成された雄ネジ部に螺合自在な雌ネジ部を備えた筒状ナットと、前記第1流体給排口部と第2流体給排口部のいずれか他方の端部に形成された外向きフランジに前記第1,2流体給排口部の軸心方向で干渉するよう前記第1流体給排口部と第2流体給排口部のいずれか他方の端部に外嵌された割型リングとから成り、
前記筒状ナットの一端部には、前記外向きフランジの通過は許容し、かつ、前記割型リングとは前記軸心方向で干渉する開口部を有する内向きフランジが形成されており、
前記筒状ナットの前記雄ネジ部への締付け操作によって、前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とが互いに前記ガスケットを介して引寄せられるように構成されている請求項7に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項10】
前記ガスケットがフッ素樹脂によって形成されている請求項1〜9の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項11】
前記第1及び第2流体給排口部がフッ素樹脂によって形成されている請求項1〜10の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−308051(P2006−308051A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134237(P2005−134237)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】