説明

集積化固相親水性マトリクス回路およびマイクロ・アレイ

本発明は、集積化流体入力および出力を有する分析デバイスおよびマイクロ・アレイを目指す。デバイスは、集積化電動学的ポンピング電極(702〜705)にオーバーレイする乾燥化学試薬を含有する平面固相親水性マトリクス回路(711〜714)から構築される。親水性マトリクス回路(711〜714)は、ガス透過性電気絶縁体(715)内に囲まれる。デバイスは、マイクロ規模の生物学的分析、混合物分離および反応で用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小規模分析、混合物分離および反応用の、ガス透過性電気絶縁体内に囲まれた乾燥化学試薬を含有する平面固相親水性マトリクス回路から構築される集積化流体i/oを有する分析デバイスおよびマイクロ・アレイを目指す。
【背景技術】
【0002】
実験科学は、この10年間で、実験の速さおよび処理能力ならびに内容の複雑さ(実験当りの測定数)において大きな進歩を遂げてきた。新技術は、アッセイを遂行する速度および新化学化合物の合成速度の両方における劇的な増加をもたらした。ヒトゲノムを解明するために必要とされる大容量のシーケンス測定は、高処理能力装置の開発を余儀なくした。現代の実験分子生物学は、高処理能力および高包容能力性能両方に対する装置の開発を推進し続けている。
【0003】
高処理能力装置に対する必要性は、製薬産業の要求により後押しされている。これを駆るものは、ゲノミクスおよびプロテオミクス研究によりもたらされる薬物標的識別速度,およびコンビナトリアル・ケミストリー研究法を通しての新化学化合物の合成速度の急増である。多数の薬物標的に対する化合物ライブラリ中に含有される多数の候補薬物化合物を試験する能力が、製薬産業にとってのボトルネックであってきた。
【0004】
高包容能力装置は、単一実験で多くの各種測定を行う。例えば、DNAマイクロ・アレイおよびタンパク質チップは、それらが特定の疾患または処理により影響を受けるので、単一実験において細胞中の遺伝子またはタンパク質の全体を研究するために開発されてきた。
【0005】
それが、ゲノミクス分野における核酸シーケンス測定、単一ヌクレオチドの多形性測定または遺伝子発現実験用、プロテオミクス分野におけるタンパク質発現またはタンパク質機能研究用、または薬物発見における化合物の試験用のいずれであろうとも、常により高い処理能力およびより高い包容能力の分析装置に対する必要性があり続けている。
【0006】
潜在的な医薬品化合物を試験するための実験処理能力速度の増加が薬物発見速度の相応の改善をいまだもたらしていないことは、分子生物学者および薬物開発科学者達に明らかになってきた。科学者達が細胞処理の複雑さ:やっと最近になって1タンパク質1遺伝子モデルから推測される数よりも圧倒的に大きいプロテオームにおけるタンパク質の補体、シグナル形質導入過程におけるタンパク質および転写を制御する無数のタンパク質による遺伝子制御の統合におけるタンパク質間の相互作用の機微を明らかにし続けるので、彼らは、調節過程(および疾患状態はこれらの過程における欠陥から生じる)が複合的な信号および刺激の統合である経路に応じて決まることを発見してきた。細胞処理は、時間依存性でもあり細胞内での位置特定性でもある濃度依存シグナル反応および相互作用を利用する。現在の高処理能力実験において試験しようとする控えめな数の化合物(ほとんど無制限な量、1060の潜在的候補化合物に対して)の、特定標的タンパク質または核酸反応に向けての活性を示す(レセプター/リガンド結合相互作用を促進するかまたは阻害するか、あるいは、例えば、酵素−基質反応を促進するかまたは阻害する)ものは、一般的に、また、多くの他の反応に影響を与える。生物学的過程の機微および圧倒的な複雑さは、先行技術の高処理能力実験において用いられてきた単純化した単一因子、平衡または定常状態の生体外アッセイの限界を明らかにする。さらに詳細に複雑な生体内反応を模倣するために、生体外アッセイ反応器内の生存細胞を利用する高包容能力アッセイを含むより複雑な多パラメータ生体外アッセイフォーマットが、用いられようとしている。実験のスケールアップのための将来戦略は、規模の増大、およびそれらが高処理能力および高包容能力に拡大されるのでアッセイ性能を有意に犠牲にしないデバイスにおいて遂行される、これまで認識されなかったレベルまでの実験の包容能力の増大という両方を必要とする。これらの試みに対する製薬産業の割当予算が相応に増加しないので、現在の技術分野の技術により利用可能なものよりも一層高い処理能力および包容能力の規模のオーダーで、および低い処理能力アッセイで得られるものに対するデータの品質を犠牲にすることなしにデータポイント当りより低い費用の規模のオーダーで機能する技術が必要とされることは明らかである。
【0007】
分析装置における高処理能力または高包容能力を達成するための最も広く採用される戦略は、並行で多くの数のアッセイを行うことである。以下に検討される並行処理を通しての実験のスケールアップに対するいくつかの全く異なる技術研究法がある一方で、ほとんどすべてが二つの本質的な共通の態様を有する。第1に、並行処理法の装置は、一般に、平面固体支持体上に配置されるマイクロ反応器のアレイを含む。第2に、高処理能力に対するスケールアップの経路は小型化を通してである。溶液中または生存細胞または薬物候補化学化合物中いずれかのDNA、RNAおよびタンパク質の断片などの標的分子は、多くの場合ごく少量でのみ利用可能であり、且つそれらは高価である。試薬および試料の費用は、今日の技術における実験の支配的な費用である。従って、スケールアップするための経路としての小型化により、アッセイ当りの試薬および試料の量、および従ってアッセイ当りの費用は、また、有意に低減することができる。
【0008】
アレイ上の高処理能力並行実験に対する一つの技術的研究法は、マイクロプレート上で行われるものなどの長い間確立されてきた小規模の並行実験をスケールアップしなければならなかった。マイクロプレート上のウエル中のマイクロ反応器の平面アレイは、プレート上のウエルの数を増大させそれによってまた各ウエルの体積を減少させることにより、高処理能力までスケールアップされようとしている(最近の例として米国特許第6,229,603B1号を参照すること)。現在技術の高処理能力装置は、通常、96および384ウエルを有する標準寸法12.8cmx8.6cmのプレートを用いる。1536ウエルを有するプレートは、今、導入されようとしており、単一標準寸法プレート上9600までのウエルからなる超高処理能力装置はまた公知である。産業界はプレート当り9600ウエル以上に移りたいと希望している。今日のマイクロプレート技術における反応体積は、1マイクロリットル以上であるが、しかし、特に極めて小さな試料が利用可能であるかまたは試薬が極めて高価であるような用途用に一段と小さな反応体積を必要とするデバイスを開発するための必要性がある。
【0009】
マイクロプレート・アレイの各ウエルは、個別のマイクロ反応をサポートする。現在の技術において、マイクロリットル量の試料が化学反応を行う他の試薬と共に各ウエルに導入される。化学反応を監視するための検出器は各ウエルを精査する。蛍光分析などの光学的探知は、好ましい探索法である。この高処理能力デバイスの一般的な使用において、各種化学化合物の部分標本は、並列流体分配マニホールドにより化合物ライブラリプレートからアッセイプレート中に移される。試料および他のアッセイ試薬の移動は、マイクロピペッター、毛細管、およびポンプなどを含むロボット制御流体取扱い手段によるものである。均一系および不均一反応の両方が、平面配列のウエル中で行われる。均一系酵素―基質反応、および候補薬物化合物のそれらに対する影響は、蛍光発生基質を用いる蛍光強度の変化により監視することができる。均一系の溶液相レセプター/リガンド結合反応、および候補薬物化合物のそれらに対する影響は、最もよく知られているものが蛍光偏光である多くの蛍光系技術の内の一つにより監視することができる(例えば、核酸用蛍光偏光アッセイのための米国特許第5,641,633号および第5,756,292号)。不均一反応において、不均一結合反応は、反応物質の一つが固体表面に接着する場合に起こる。試薬または試料は、ウエルの表面上に固定することができるか、またはそれらは反応ウエル中に導入されるビーズの表面上に固定することができる(例えば、ビード固定化DNA試料上での核酸プライマー伸長反応を記載している米国特許第6,210,891B1号)。
【0010】
低レベルの集積化で、マイクロプレート反応器アレイは、数多くの試薬添加、時限反応、洗浄、およびビード分離などを有するものなどの複雑な実験フォーマットを達成することができる。しかし、これらの複雑な反応フォーマットは、マイクロ反応器ウエルに化学物質を供給するかまたはそれらから化学物質を除去する流体入力および出力デバイス(流体i/o)があまりに複雑になりすぎるので、高度な並列運転に小型化し自動化するには困難であり高価につく。結局、有意な資源は、一層容易に高度な並列運転および低反応体積に自動化できる簡単で迅速な平衡2分子均一系反応フォーマットの使用の延長線上で適用されようとしている。試薬を高密度アレイプレートに送達することにおける時間遅れのせいで、時間過渡測定は可能でない。各ウエルの多剤投与は、また、高密度で可能でなかった。その代わりに、用量反応曲線が、反応物質の各種濃度レベルでの同じ反応を操作する多ウエルから作製される。
【0011】
マイクロ・アレイ分野における研究者達は、並列実験への各種研究法を取り上げてきた。マイクロ・アレイは、非多孔質平面基板上のアレイ中に固定化される乾燥試薬からなるデバイスである。マイクロ・アレイは高包容能力アッセイを遂行する:単一の試料上での多くの不均一なレセプター/リガンド結合性並列マイクロ反応。これらのデバイスにおいて、平面支持体表面、多くの場合スライドガラス、ガラス皿またはシリコン・ウエハーは反応微細位置のアレイからなり、各位置は平面基板の表面に接着した各種化学化合物を含有する。この技術の最も普通の形態において、蛍光読取り器または走査器は、各微細位置において起こる化学反応を検出する。使用において、アレイは、分析用の試料および平面微細位置での反応用の他の化学物質を含有する浴中に浸漬される。不均一反応のみが、このタイプのデバイスにおいて行われる。ゲノミクス分野における研究者達は、その場合にデバイスが遺伝子チップまたはプリントDNAアレイとも呼ばれる、平らな表面に接着されるマイクロ・アレイ化核酸(cDNAおよびオリゴヌクレオチド)を開発してきた。一連の最近のこの話題に関する総論は、Nature Genetics Supplement,vol.21(1),January 1999に見出すことができる。各微細位置は表面に接着される塩基の特定シーケンスを有する核酸を含有する。一般的に、各微細位置の塩基配列は異なる。使用において、核酸マイクロ・アレイはアッセイしようとする多核酸(DNA、RNAまたはpDNA)を含有する試験流体にさらされる。試験流体中の多核酸は、蛍光タグなどのレポーター分子の接着によりあらかじめ標識化されていた。アレイの微細位置に接着された核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する試験流体中の多核酸間の強い結合反応がある。結合段階後、洗浄段階は微細位置から非結合多核酸を除去する。次に、蛍光走査器はマイクロ・アレイを読み取る。微細位置での結合反応はその部位で蛍光により検出される。核酸ハイブリダイゼーション・マイクロアレイは、シーケンシング実験(米国特許第5,202,231号および第5,695,940号)を行うと共に、単一ヌクレオチド多形などの特定の核酸シーケンス変異体の存在を測定する(米国特許第5,837,832号)ために用いられてきた。しかし、マイクロ・アレイの最も広い使用は、遺伝子発現の分野に存在してきた(例えば、本、「Microarray Biochip Technology」ed.Mark Schena,Eaton Publishing 2000の第7章を参照すること)。
【0012】
フォトリソグラフィのマスキング処理(米国特許第5,405,783号および第5,489,678号)およびインクジェット印刷(例えば、T.R.Hughes et al.Nature Biotechnology.vol.19,p342〜347,2001を参照すること)を用いて原位置で組み立てられるか、または外部で組み立てられ、次に、アレイ・スポッターにより平面基板に塗布されるか(例えば、米国特許第5,807,522号を参照すること)のいずれかによる、表面に接着されるオリゴヌクレオチドのアレイ(米国特許第5,445,934号、第5,744,305号および第5,700,637号)を含む核酸マイクロ・アレイのいくつかの変形がある。別の変形は、また、スポッティングにより組み立てられるcDNAアレイである。ゲノミクス研究者達は、例えば、マイクロ・アレイ上のPCR(米国特許第6,248,521号)およびマイクロ・アレイ上のプライマー伸長(米国特許第5,547,839号および第6,210,891号)を含むために核酸ハイブリダイゼーションを超えてマイクロ・アレイの範囲を拡大することを提唱してきた。
【0013】
その成功に責任を負ってきたマイクロ・アレイの一つの態様は、極めて小さい試料および試薬を用いて、単一バッチ処理における高包容能力(多くの各種レセプター/リガンド結合実験:核酸ハイブリダイゼーションまたはタンパク質結合)を遂行する能力である。例えば、核酸ハイブリダイゼーションにおいて、約1ミリリットルの試料中に浸漬されるスライドガラス上に20,000反応部位を有するマイクロ・アレイを用いて、ピコモル量の接着オリゴヌクレオチドを含有する100マイクロメートル径のスポット上で起こる各ハイブリダイゼーションの反応体積は、ほぼ約50ナノリットル程度である。マイクロ・アレイの成功の別の態様は、手順の固有の単純さである。しかし、核酸ハイブリダイゼーション熱力学および反応動力学がシーケンス依存であり、その結果、単一の実験条件に対して、正のシーケンス適合がある二つの部位で起こるハイブリダイゼーションの量が全く異なることが可能であろうことは周知のことである。このおよびまたは他の理由により、現在技術の単純なハイブリダイゼーション・マイクロ・アレイは定量的デバイスではない。差次的または比較ハイブリダイゼーション法は、この限定に照らして開発されてきた(例えば、本、「Microarray Biochip Technology」ed.Mark Schena,Eaton Publishing 2000の第7章を参照すること)。一般的な差次的遺伝子発現実験において、cDNAの二つの試料はアレイ上に共ハイブリダイゼーション化される。検討対象細胞から抽出されるRNAから調製されるcDNAは、蛍光色素シアニン3(またはシアニン5)により標識化される。対照細胞から抽出されるRNAから調製されるcDNAは、シアニン5(またはシアニン3)により標識化される。シアニン3およびシアニン5蛍光の二つの異なる波長で測定されるハイブリダイゼーションの相対的な量は、対照に対する検討対象細胞における特定遺伝子発現のレベルを示す。ハイブリダイゼーションを制御し、おそらくよりよい計量をもたらすために用いられる方法は、ハイブリダイゼーション部位の下ですぐに電極にかけられる電圧を介してのハイブリダイゼーションの厳しさの条件の部位特定制御をクレームして、部位特定電子アドレス指定を有するマイクロ・アレイが教示される米国特許第5,632,957号、第5,653,939号および第6,017,696号に記載されている。現在のDNAマイクロ・アレイ技術による別の問題は、低濃度を測定する困難性である。遺伝子発現実験において、低存在度(細胞当り1以下の転写)を有するmRNAsは、特に少数の細胞のみから集められるRNAを用いる場合容易に測定することができない。しかし、低存在度mRNAsから翻訳される低濃度情報伝達タンパク質は、多くの場合、研究するには最も興味のあるものである。タイラマイドシグナル増幅を用いる酵素増幅技術は、遺伝子発現アレイに適合されてきて、検出限界を10〜50倍改善してきた(例えば、Microarray Biochip Technology ed.Mark Schenaの第10章におけるアドラー(Adler)らを参照すること)。
【0014】
核酸アレイと同じ設計原理を用いるタンパク質アレイは、臨床診断用途用に開示されてきた(米国特許第5,432,099号)。さらに最近では、タンパク質マイクロ・アレイが、高処理能力分子生物学用途におけるタンパク質−タンパク質相互作用を研究するために開発されてきている(MacBeath et al.Science,289(5485),pp1760〜1763,2000)。
【0015】
自由分子としてアッセイされ、複合体を形成しないDNAマイクロ・アレイ実験における核酸と違って、細胞抽出物試料中のタンパク質はただ単一で個別の分子として存在するのではなく、むしろ、それらは、多くの場合、多くの多分子タンパク質複合体中に結合される。細胞タンパク質結合の場合に、結合反応の反応動力学および熱力学は、タンパク質およびその結合相手に独特のものである。結合定数(K)は広い範囲で(106<K<1013L/モル)変動する。アレイ表面上に分子を捕捉するためのタンパク質の結合定数も、また、広く変動する。互いに複合体を形成するか、またはアレイ中の分子を捕捉する(自由および複合体化両方のタンパク質が捕捉される)かいずれかの細胞タンパク質の結合定数は、反応環境:温度、pH、イオン強度、親水性対脂肪親和性環境、特定イオンおよび溶解酸素の濃度、および共同因子などに応じて決まる。また、自由および複合体化タンパク質の相対量は濃度に応じて決まり、従って、実験において用いられる細胞抽出物の希釈量により強く影響を受ける。
【0016】
核酸アレイにおけるように、タンパク質チップにおいて、細胞抽出物の試料中に浸漬される平面基板上に配列される多くの各種タイプの捕捉分子がある。特定の捕捉位置で、捕捉分子は、試料中の他のタンパク質に対して良好な特殊性を有する単一の特定タンパク質分子タイプ(それをAと呼ぶ)を捕捉するように設計されてきた(106中の1部が多くの場合特殊性に対する基準である)。タンパク質分子Aは、Aを含有する多分子複合体(タンパク質Bを含む他のタンパク質を含有する)と共にその部位で捕捉される。従って、タンパク質Bを含むA捕捉部位で捕捉される多くの非Aタンパク質がある。特定的にタンパク質Bを捕捉するように設計された捕捉部位では、一部のタンパク質Aを含む自由BおよびB複合体がある。従って、その結合相手に対する単一捕捉部位の特殊性は失われる。こうしたデバイスは、シグナルの種々の成分が包含されるすべての結合定数の最初からの知識により逆重畳することができない場合には、無用なものとなってしまう。大きな多成分アレイにとって、これは実用的でない。
【0017】
従って、試料の単一バッチ中に浸漬された単一のタンパク質アレイが、定量的なデータを運ぶとは期待すべきでない。のみならず、生体内相互作用の正確なモデルである可能性の高いこの生体外実験フォーマットからのデータも、また、しかりである。
【0018】
従って、現在技術の高包容能力核酸およびタンパク質マイクロ・アレイの一般的な限界は、それらが簡単な2分子の不均一結合反応フォーマットしか行うことができないことである。
【0019】
平面アレイにおける並列実験に対するなお別の探索方法は、実験室チップ開発者達によって取り上げられてきた。この技術のマイクロ反応器は、平面ガラス基板(米国特許第5,180,480号)またはポリマー基板(米国特許第5,750,015号)の表面からの材料のエッチングまたはレーザーアブレーションにより形成される微小溝および窪みを含む。形成された溝および窪みを有する平面基板は、絶縁カバー組立品により蓋をされる。蓋をされた溝および窪みは、今、技術上総称してマイクロ流体法として公知の毛細管および室を形成する。室の上の蓋に開口部がある場合、それは試料および試薬導入用のウエルとなる。水性の試料および試薬は、マイクロプレート技術におけるのとほぼ同じやり方で流体取扱いマニホールドを用いてウエル中に分配される。次に、分配された流体はデバイスの空の毛細管を満たす。先行技術の多くのマイクロ流体法において、ポンピングは、その場合、次に、電極マニホールドがウエル中の水溶液と接触させられて毛細管を通してウエルから流体を動電学的に押し出すための動力を提供する動電学的推進力による。マイクロ流体アレイにおいて、アレイの各微細位置は、溝およびウエルからなるマイクロ流体反応器を構成する。現在の技術において、実験室チップアレイにおける並列処理のレベルはマイクロプレート技術に比べて低いが、しかし、この技術は、また、高処理能力が連続および並列運転の組合せにより得ることができるように、自動化高速連続実験にうまく順応する。現在の技術において、商業的実験室チップの試料体積は、実験当り約0.1マイクロリットルである。実験室チップの開発者達は、候補薬物化合物の高処理能力選別(米国特許第6,150,180号)、高分子分離(米国特許第4,908,112号)、核酸分離(例えば、Woolley et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.91,pp11348〜11352,1994)、ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第6,235,471B1号)およびジデオキシ連鎖停止によるサンガー・シーケンシング、およびキャピラリー電気泳動によるサイジング(米国特許第5,661,028号)を含む、彼らのマイクロ流体デバイスの多くの各種可能性を開示してきた。米国特許第6,103,479号には、各種の細胞結合性部位を有する微細位置のアレイおよびエッチングされた窪みおよび溝を有するマイクロ流体平面基板と結合する平らな表面上の結合細胞が開示されている。
【0020】
複雑な流体取扱い可能性がエッチングされた溝構造内で実証されてきたが、この技術分野の実験室チップデバイスは、まだ、チップ上の実験室ガラス器具だけである。動電学的ポンピングを用いる従来型の実験室チップデバイスは、容易には、オンボード試薬を組み込むアッセイ・フォーマットに適合させることはできず、外部源からの化学物質および試薬の供給は、それが複雑な反応フォーマットを供給するマイクロプレートデバイスにおいて存在する通りに、重要な問題として残ったままである。従って、ここでもまた、多成分複合体反応フォーマットを小さな体積に規模を縮小するための能力および高度に並列化した運転は、実験室チップへの流体i/oを提供する能力により限定される。高処理能力選別機器の一人の開発者は、マイクロプレートからの小容量流体部分標本をサンプリングするために実験室チップデバイスを適合させてきた。このデバイスにおいて、実験室チップは、連続的なやり方で、電子ピペッターを用いてマイクロプレートのウエルから反応用試料のサブ・マイクロリットル量を得る(米国特許第5,942,443号および第6,235,471号)。実験室チップおよび集積化電子ピペッターはマイクロプレートをまたぎ順番に各ウエルをサンプリングする。高処理能力を達成するために、試料は連続反応フォーマットにおいて実験室チップ中を迅速に動きまわる。しかし、この探索法は、各アッセイが迅速に動きまわることができる場合それが高処理能力に対してのみ評価されるので、限定される。
【0021】
並列実験に対するなお別の探索法は、固相反応フォーマットとして公知の方法の収集である。これらの方法において、反応は多孔質またはゼラチン質材料の平面スラブ上で行われる。この技術分野のデバイスは多孔質基板上の核酸アレイを含むと共に、これまでのブロッティング技術、並列電気泳動分離用の多車線のゲル・スラブにおいて用いられるものなどのゲルは、固相反応として分類することができ(例えば、米国特許第5,993,634号)、アレイは、連続フォーマット高処理能力選別技術における試薬含浸平面ゲル・スラブ上に置くことができる(米国特許第5,976,813号)。連続フォーマット探索法において、試料は、反応試薬を含有する1以上の他の平面スラブと積層される平面多孔質スラブ上に置かれる。アッセイ時、試料および試薬はスラブ間の拡散により混ぜられる。この探索法を用いて、連続フォーマットデバイスは、他のアレイ技術の流体i/oの複雑さを避ける。しかし、それらが平面スラブに沿って拡散する場合、隣接微細位置の反応化学物質間の混合を避けるため、個々の反応微細位置が十分にうまく分離されていなければならないので、スポット分離は比較的大きい(数ミリメートル)。試料体積は大きく、1〜10マイクロリットル範囲にある。試薬体積は、試薬含有スラブが大きな未使用内部スポット領域を含有するので一段と大きい。
【0022】
要約すると、先行技術の高処理能力マイクロ反応器アレイは、いくつかのやり方のうちの一つに限定される。マイクロプレート・ウエル、現在の技術状態ではなお高い並列1536ウエルプレートは、まだ、試料および試薬の比較的大きなマイクロリットル体積を必要とする。従って、アッセイ当りの費用はなお一段と高過ぎる。これらのデバイスは、単一段階2分子均一系反応を行うために有効であり、一層の並列運転および幾分低めの体積にさらに拡張することができるが、しかし、それらはマイクロ・アレイ上で達成可能なマイクロ反応器密度またはナノリットル反応体積を容易には達成しない。さらに、1または多試料部分標本および/または多試薬の時限送達、洗浄段階または精製および分離段階を必要とするものなどの多成分反応フォーマットは、マイクロプレート技術におけるスケールアップ用にはあまりにも複雑すぎる。サブ・マイクロリットル反応体積上で運転する実験室チップデバイスは、同様に、流体i/oの複雑さのせいで高度の並列運転にスケールアップするための能力において限定される。連続反応フォーマットにおいて運転する実験室チップデバイスは、容易には不均一結合アッセイに適合可能でなく、それらは短い反応時間によりアッセイに対して限定される。連続フォーマットのゲル・スラブ反応器は、マイクロリットル試料体積を用いる。現在技術のマイクロ・アレイのみが、高度な並列運転を示し、数十ナノリットル反応体積に小型化されてきた。しかし、それらはそれらの有用性の範囲内に限定され、一般に、1段階のみの不均一結合反応を行う。現在技術のマイクロ・アレイは、並列反応がアレイのすべての微細位置に対して同一条件下で単一バッチ実験として運転されるので、さらに限定される。さらに、現在技術のマイクロ・アレイは、タンパク質発現研究に極めて適するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、ナノリットル反応体積を有する高密度アレイにおける複雑な反応フォーマットを提供する技術に対する必要性がある。これを達成するための経路として、簡単で費用効率的な流体i/oによる小型化、高並列反応可能性を提供する技術に対する必要性がある。先行技術での問題を簡単に述べると、サブナノリットル量の溶液中に溶解したサブピコモル量の化学物質をリアルタイムでアレイの微細位置に導入することが、可能ではなかったということである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
先行技術に固有の上述の問題に対応することは、今、本発明の目的である。詳細には、本発明は、リアルタイムでアッセイ反応を行うために、サブナノリットル量の反応化学物質の一部またはすべてを提供し、水をアッセイ時に乾燥試薬中に組み込み、次に、化学物質の一部またはすべてを微細位置に流体的に輸送する原理に基づく。
【0025】
この目的は、今、電気絶縁基板;溶質の動電学的輸送用基板上の親水性マトリクス通路(マトリクス通路は、親水性マトリクス通路に沿って電位を生成するための電極対の一つとのそれぞれの電気接触用の一対の離れた接触位置を有する);基板上に支持しようとする動力を供給するための外部回路に接続するための接触端および親水性マトリクスとの電気接触用のマトリクス端を有する電極対の少なくとも一つ;初期に乾燥しており、マトリクスの水吸収率を増大させるための湿潤剤を含むマトリクス;絶縁体と基板間のマトリクスを密閉するための親水性マトリクスを囲む絶縁体(絶縁体は水蒸気透過性である);および絶縁体を通しての水性溶質通過用のマトリクス上の絶縁体中のオリフィスを含む、水性溶質の輸送用の囲まれた親水性マトリクスデバイスにおいて達成される。
【0026】
好ましい実施形態において、一対の電極の両方を基板上に支持し、それぞれが動力を供給するための外部回路に接続するための接触端、および親水性マトリクスとの電気接触用のマトリクス端を有する。
【0027】
別の好ましい実施形態において、基板は一対の対面表面を有し、マトリクス通路は基板表面の一つの上に支持され、一対の電極の少なくとも一つは他の基板表面上に支持され、基板は反対側基板表面上の電極とのマトリクスの電気接触を提供するために成形され構築される。
【0028】
なお別の好ましい実施形態において、基板は、反対側基板表面上の電極との接触位置の一つでのマトリクスの物理的および電気的接触用の通路を含む。
【0029】
さらに好ましい実施形態において、水性溶質の輸送用の本発明による親水性マトリクスデバイスは、絶縁基板、基板上に支持される一対の電極、動力を供給するための外部回路に接続するための接触端、および親水性マトリクスとの電気接触用のマトリクス端を有するそれぞれの電極、溶質の動電学的輸送用の基板上の親水性マトリクス通路(マトリクス通路は、電極のそれぞれのマトリクス端との電気接触用の一対の接触位置を有する)、基板と絶縁体間のマトリクスを密閉するための親水性マトリクスを囲む絶縁体、およびマトリクス中へのまたはそれからの水性溶質通過用のマトリクス上の絶縁体中のオリフィスを含む。
【0030】
マトリクスは、好ましくは、初期、それが実質的に非導電性である乾燥および不活性状態にあるが、水の組込みにより湿った導電性状態に移行する。水はオリフィスを通しての毛細管作用または絶縁体中の別個の濡れ開口部により、および/または絶縁体を通しての輸送により組み込むことができる。
【0031】
マトリクスの湿潤化または濡れは、好ましくは、マトリクス中の湿潤剤の包摂により改善される。この開示の目的のため、用語湿潤剤は、水中に溶解する場合、溶液の粘度が純水よりも有意により高くない濃度で純水よりも有意により少ない水蒸気圧を有する水溶液を形成する中性分子を指す。湿潤剤は、好ましくは、低分子量分子である。本発明によるデバイスでの使用に適用できる湿潤剤の例には、尿素、アラニン、オルシニン、プラリーヌ、リジン、グリシン、ポリオールおよび砂糖、蔗糖、グルコース、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、乳糖、マルトース、ラクツロース、グリセロール、プロピレン・グリコール、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸が挙げられる。
【0032】
接触位置でのマトリクスと電極間の電気接触は、好ましくは、接触位置での電極とマトリクス材料間の直接の物理的接触によるか、または、マトリクスと電極が接触位置で離れている場合、永久的に存在するかまたはマトリクスの濡れの際に生成することが可能である中間的な導電性物質を経由する場合かのいずれかにより達成される。
【0033】
一つの態様において、本発明は集積化流体i/oおよび集積化乾燥化学試薬を有するデバイスを提供する。デバイスは、好ましくは、微細位置または微細位置のアレイからなり、各微細位置は、一般的に、集積化乾燥化学物質を含有する集積化流体システムi/oを有する。
【0034】
本明細書の目的のため、用語微細位置は、基板に接着される化学物質を含む基板上の規定された位置を指す。用語マイクロ・アレイは、高包容能力アッセイ、すなわち、多くの並列マイクロ反応(一つの予備微細位置)を行うためのこうした微細位置のアレイを含む。
【0035】
デバイスは、好ましくは、また、少なくとも一つのマイクロ反応器を含む。本発明によるマイクロ反応器は、化学反応が中で起こることができる部位である。集積化流体i/oは、好ましくは、集積化リザーバからの集積化化学試薬をマイクロ反応器へまたはそれらからポンプ注入するように構築される。本発明による集積化化学試薬を有するマイクロ反応器は、試料に加えて、アッセイ用に必要とされる化学試薬が外部の非集積化位置から先行技術マイクロ反応器に供給されなければならない先行技術の複雑な流体i/oを避ける。従って、本発明によるデバイスは、複雑な流体i/oデバイスを用いる先行技術デバイスの費用および複雑さが法外であろう用途、および非集積化試薬を有する先行技術デバイスの性能が不適切である用途に対する並列マイクロ反応器技術の使用を拡大する。
【0036】
一つの好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、ピコリットルからナノリットルほども小さい量の試料および試薬(ピコモルまたはフェムトモルの乾燥反応物質)を用いる、表面平方センチメートル当り10,000以下の密度での高並列、高処理能力実験を可能とする。
【0037】
別の好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、リアルタイムで個々の反応部位への化学物質輸送用の集積化流体i/oの計器制御(フィードバック制御を含めて)を有するアレイを提供し、部位特定の反応条件を可能とする。
【0038】
本発明のデバイスは、高並列のやり方での複合フォーマットを含む広範囲の各種実験フォーマットを遂行することができる。これらには、均一系および不均一両方のアッセイ、多試薬反応フォーマット、時限試薬導入および時間過渡アッセイ用のデータ獲得を必要とする反応フォーマット、容量反応曲線または滴定用の多種多様な単一成分添加が含まれる。本発明のデバイスは、水性媒体内に含有されるビーズ上の水性媒体を用いる生化学アッセイ、または微細位置内に含有される生体細胞を用いるアッセイを行うことができる。
【0039】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、絶縁体層内に囲まれる乾燥化学試薬を含有する平面固相親水性マトリクスから構築される集積化流体i/o構成回路に接続されるマイクロ反応器およびマイクロ反応器アレイを提供する。囲まれた親水性マトリクスを用いて実行される流体i/oを有するマイクロ反応器は、微小規模分析、混合物分離および反応で用いるように意図される。本明細書において開示されるものに関連するデバイスおよび製造方法は、同時係属出願S.N第09/871,821号「Integrated Electro−kinetic Devices and Methods of Manufacture」に開示されている。
【0040】
なお別の実施形態において、本発明は、各反応器がまた少なくとも一つの集積化乾燥化学物質を含有する集積化流体i/oを有する、マイクロ反応器およびマイクロ反応器アレイを提供する。
【0041】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、すぐ近くに近接させ一方を他方に合わせて並べる場合にマイクロ反応器のアレイを形成する、個別の基板上の少なくとも二つのアレイを含むデバイスを提供する。
【0042】
囲まれた親水性マトリクス回路による流体I/O
本発明による集積化流体i/o態様は、好ましくは、囲まれた親水性マトリクス回路を用いて実施される。それぞれの囲まれた親水性マトリクス回路は、好ましくは、本質的に乾燥した固相実体として製造される成形された親水性マトリクス構造を含む。一つの実施形態において、この親水性マトリクスの領域は、好ましくは、乾燥化学物質を含有する。
【0043】
本開示の目的のため、乾燥状態の運用上の定義は、この状態において、固相親水性マトリクス中の非固定化化学物質(すなわち、固定化固体支持体に化学的に結合されていないもの)は、実質的に、輸送可能でなく、互いに反応することもできないということである。乾燥親水性マトリクス内の乾燥試薬は、従って、製造後および保存の間位置的におよび化学的に安定である。
【0044】
親水性マトリクスは、好ましくは、中性分子および荷電化学種両方に対して実質的に非導電性である周囲の絶縁性媒体により囲まれる。本開示の目的のため、絶縁性媒体の実質的に非導電の特性は、また、運用上の定義を有する。絶縁性媒体は、好ましくは、回路内に含有される化学物質を閉じ込め、外部相中に存在する有害な汚染物質を回路から除く。また、絶縁性媒体は、動電学的輸送の目的のために親水性マトリクスにかけられるあらゆる電圧が短絡しないように、電流量に対して十分に耐性がなければならない。
【0045】
一つの好ましい実施形態において、囲む絶縁性媒体は、しかし、使用点でまたはその前に乾燥マトリクス中への水の組込みを可能とするために、少なくとも部分的に水蒸気透過性である。
【0046】
別の好ましい実施形態において、親水性マトリクスは多孔質であると共に、絶縁体中のオリフィスからの毛細管流動により水組込みが可能である。水組込みは、親水性マトリクスを操作上不活性な乾燥状態から水和した活性状態に転化する。その活性状態において、親水性マトリクスは囲まれた回路内の位置から位置への化学物質の輸送を可能とすると共に、囲まれた回路内に含有される化学物質間の反応を可能とする。活性親水性マトリクスを通しての化学種輸送は、少なくとも一つの活性ポンピング手段、好ましくは動電学的なものによる。
【0047】
動電学的輸送には、電気泳動および電気浸透輸送の両方が挙げられ、後者の場合、親水性マトリクスそれ自体の少なくとも一部またはその囲い込む壁は、固定表面電荷およびゼータ電位を含む。囲まれた親水性マトリクス回路を通しての動電学的輸送のため、動電学的輸送用の動力伝達を可能とするために、二つの離れた位置で囲まれた親水性マトリクスに接触する少なくとも二つの集積化電極が用いられる。各親水性マトリクス回路は、化学種を囲まれた親水性マトリクス回路中にまたはそれから外に輸送することを可能とするために、囲む絶縁性媒体を通しての少なくとも一つのオリフィスを有する。
【0048】
本発明による好ましい囲まれた親水性マトリクス回路は、回路要素を含む。これらの回路要素は、領域および通路を含む。領域は、好ましくは、化学物質を含有し、通路は領域を接続すると共に領域間の化学物質の輸送を可能とする。通路に沿っての電圧差は、二つの集積化された離れた電極により供給される場合、通路を通して化学種の動電学的輸送の動力を供給する。一つの実施形態による典型的な回路は、化学物質が中で保存されるリザーバ領域、化学物質が混合される領域、化学物質がポンプで送り込まれる領域、化学反応用の領域、化学物質が分離される領域および化学物質が検出されるかまたはそれらの化学濃度が測定される領域を含む。水透過性の周囲の絶縁体の少なくとも一部を通して水を組み込むと、その領域および通路を有する囲まれた親水性マトリクス回路は、運転上活性となり、上に説明された回路の機能のすべてを可能とする。
【0049】
好ましい実施形態において、マイクロ反応器またはマイクロ反応器アレイおよび囲まれた親水性マトリクス回路により供給される集積化流体i/oは、実質的に平面である。
【0050】
別の好ましい実施形態において、デバイスは微細加工により製造される。
【0051】
別の好ましい実施形態において、デバイスは単位使用の使い捨てである。
【0052】
別の好ましい実施形態において、デバイスは固相乾燥試薬デバイスとして製造される。
【0053】
別の好ましい実施形態において、囲まれた親水性マトリクス回路を通しての化学種の輸送は、動電学的であり、集積化電極により動力が供給される。
【0054】
マイクロ反応器、集積化流体I/Oおよび他の流体の構成
本発明は、また、マイクロ反応器および流体i/oの種々の構成を提供する。以下に記載されるこれらの構成において、囲まれた親水性マトリクス回路は、一般に、1以上のマイクロ反応部位に集積化流体i/oを提供する。すなわち、囲まれた親水性マトリクス回路は、i)マイクロ反応部位に化学物質を供給し、および/またはii)マイクロ反応部位から化学物質を引き出すことができる。化学物質は、マイクロ反応部位から引き出すことができると共に、囲まれた回路内に含有される排水領域に移動するか、または囲まれた回路を通して別のマイクロ反応部位での次のさらなる反応のため別の位置に移動することができる。化学物質は、マイクロ反応部位から回路内の位置にまたは成分分離および分析用のデバイスの別の隣接回路に引き出すことができる。
【0055】
マイクロ反応器またはマイクロ反応器アレイおよび集積化流体i/oのいくつかの構成は、本発明の枠組み内と考えられる。一つの構成において、微細位置または微細位置アレイは、それぞれ、少なくとも一つのマイクロ反応器を含有する。囲まれた親水性マトリクス回路により提供される集積化流体i/oは、アレイ内の多くのマイクロ反応器にまたは全体としてアレイに試薬を供給する。使用において、こうした流体i/oは、好ましくは、全体の試料バッチ上で共通に行われる反応に対して化学物質を供給する。この構成の集積化流体i/oは全体としてアレイへのおよびそれからの0.1〜100台のマイクロリットル体積の化学物質を供給するかまたは除去することができるので、それは本明細書において集積化マイクロ流体i/oと呼ばれる。例えば、こうした集積化マイクロ流体i/oは、好ましくは、集積化試薬を供給して概して試料上の分析前反応を行う。分析前反応には、細胞溶解または増幅および標識化反応を含むことができる。
【0056】
本発明による別の構成において、微細位置または各微細位置が少なくとも一つのマイクロ反応器および集積化流体i/oを含有する微細位置のアレイがある。各微細位置において、集積化流体i/oは、微細位置内の個々の関連マイクロ反応器に試薬を供給する囲まれた親水性マトリクス回路により提供される。この構成の流体i/oはナノリットル以下の体積におけるアレイの個々のマイクロ反応器に化学物質を供給するかまたはそれから化学物質を除去するので、それは本明細書においてナノ流体i/oと呼ばれる。本発明のなお別の構成において、集積化マイクロ流体およびナノ流体i/oの両方が中で一緒に用いられるマイクロ反応器またはマイクロ反応器アレイがある。
【0057】
本発明は、また、本発明による囲まれた親水性マトリクス回路を用いて実施される集積化マイクロ流体および/またはナノ流体i/oが中で公知技術の従来型の流体要素と組み合わされる、マイクロ反応器またはマイクロ反応器アレイを考慮する。従って、本発明の枠組み内で、集積化マイクロ流体またはナノ流体i/oを有するマイクロ反応器またはマイクロ反応器アレイは、マイクロプレートデバイスのマイクロウエル中に、またはマイクロ流体実験室チップの溝中に組み合わせることができる。
【0058】
本発明によるマイクロ反応器および流体i/oのなおさらなる構成は、囲まれた親水性マトリクス回路および従来型の流体要素への接続の他の様式を用いて実施される。
【0059】
一つの好ましい構成において、平面基板は、マイクロ反応器および囲まれた親水性マトリクス回路を含む微細位置の一つまたはアレイを有して用いられる。囲まれた親水性マトリクス回路は、マイクロ反応部位への通路に沿っての輸送のための化学物質を有する少なくとも一つのリザーバを含有する。回路を隣接マイクロ反応器に接続する囲まれた親水性マトリクス回路の絶縁体を通してのオリフィスがある。マイクロ反応器は、試料流体が外部供給源からその中に導入されるウエルである。ウエルは、囲まれた親水性マトリクス回路と同じ平面基板上に微細加工するか、または平面マイクロプレートの従来型ウエルにそっくりな(底なしを除いて)個別の平面要素として形成することができる。次に、ウエルは基板上に並べられ、各ウエルをアレイの囲まれた親水性マトリクス回路と結合して組立てられる。最終デバイスは、各ウエルの基部上の囲まれた親水性マトリクス回路からなる集積化流体i/o要素があることを除いて、従来型マイクロプレートに似ている。試料流体は、それが従来型マイクロプレート技術にあるように、分配ノズルから各ウエル中に導入されるか、またはウエルプレート中に形成される溝に沿って導入されウエルに接続される。次に、少なくとも一つの他の反応物質は、同時に、囲まれた親水性マトリクス回路を支持する平面基板が透明である場合上部からのまたは基部を通しての光学的走査により反応を監視しながら、計器制御下ウエル基部上の囲まれた親水性マトリクス回路から各ウエル中にポンプ注入される。
【0060】
本発明による別の好ましい構成において、平面基板が囲まれた親水性マトリクス流体i/o回路に隣接するマイクロ反応部位からなる微細位置と共に用いられる。囲まれた親水性マトリクス回路は、マイクロ反応部位への通路に沿っての輸送用の化学物質を有する少なくとも一つのリザーバを含有する。マイクロ反応部位は、試料または試薬がその上に外部供給源から(公知技術のマイクロプリンティングまたは分配デバイスから)流体的に分配される固相支持体要素を含む。反応部位は、分配溶液がその中に吸収される多孔質固相要素、または材料がその上に分配される非多孔質表面からなることができる。この実施形態において、分配化学物質を有するマイクロ反応部位は、囲まれた親水性マトリクス回路と同じ基板上に微細加工される。個々の微細位置において起こる反応は、前の実施形態におけるようにウエル壁によるか、または当該技術分野では公知の疎水性バリアによるかのいずれかによって分離される。
【0061】
本発明による別の好ましい構成において、第1および第2平面基板は、互いに並列に離して置かれ、個々の微細位置は互いにガスケット化される。第1平面基板は、囲まれた親水性マトリクス流体i/o回路に隣接するマイクロ反応部位を含む微細位置を有する。囲まれた親水性マトリクス回路は、マイクロ反応部位への通路に沿っての輸送用の化学物質を有する少なくとも一つのリザーバを含有する。第2平面基板は、各微細位置で形成される粉末薬品を有し、第1基板上のアレイと同じステップ・アンド・リピート式次元を有する微細位置のアレイからなる。粉末薬品のアレイは、試験が行われる時それらが水溶液中に溶解する試験用の候補薬物化合物であることが可能であるか、または、それらはレセプター、リガンド、レセプター・リガンド複合体またはレポーターを有するレセプター・リガンド複合体などの溶解しない基板に接着される化学物質のアレイであることができる。第1および第2基板はすぐ近くに近づけられ、各基板上の微細位置が互いに向かい合って1列に並ぶように、並べられる。水溶液は極めて近接している二つのプレートの間を流れる。次に、二つのプレートの二つの表面を、プレートを近接させて離し各微細位置周りの壁を形成するガスケット要素と接触させる。水性流体は、それによって、それぞれ個々の微細位置に対して一つの個別の割当部分中に分割される。完成デバイスは、カバープレートがまた化学物質を有する微細位置のアレイを支持することおよびウエルの基部が囲まれた親水性マトリクス回路のアレイからなることを除いて、カバープレートを有する満たされたウエルのマイクロプレート・アレイに似ている。どのプレートでも上部または底部プレートを構成することができることは、この配置から明らかである。少なくとも一つのプレートは、好ましくは、各微細位置内の反応の光学的測定のため透明である。このツインプレート構成の他の変形において、囲まれた親水性マトリクス回路を有する微細位置のアレイは両方のプレート上に見出される。なお他の可能な変形において、粉末薬品のアレイは、両方のプレート上に提供されるか、または囲まれた親水性マトリクス回路および粉末薬品アレイ両方のアレイが両方のプレート上に提供される。二つのプレートサンドイッチの調製後、少なくとも一つの他の反応物質を、同時に光学的手段により反応を監視しながら、計器制御下で、各微細位置内の少なくとも一つの囲まれた親水性マトリクス回路から各ウエル中にポンプ注入する。
【0062】
別の構成において、オリフィスが、それを溝に接続するために囲まれた親水性マトリクス回路の絶縁体を通して提供される。好ましくは、溝は囲まれた親水性マトリクス回路と同じ平面基板上に微細加工されるか、または、次に平面の囲まれた親水性マトリクス回路に組み立てられる別の平面絶縁要素におけるエッチングまたは切除により形成される従来型のマイクロ流体溝である。完成デバイスは、カバープレートが、今、また囲まれた親水性マトリクス回路を有する微細位置を含有することを除いて、溝および上部カバープレートを有する基板からなる従来型の実験室チップに似ている。
【0063】
1列に並んだ一対の平面基板があるような本発明の実施形態において、プレーナ形半導体ウエハーをプレーナマスクプレートと並べるための従来型のフォトリソグラフィにおいて用いられる装置に類似している配置および組立てデバイスが、好ましくは、用いられる。
【0064】
各種アッセイ・フォーマットと関連する流体I/O構成
本発明によるデバイスの一つの用途において、囲まれた親水性マトリクス流体i/o回路は、化学物質を隣接マイクロ反応器中に流体的にポンプ注入するために用いられる。こうした用途において、囲まれた親水性マトリクス回路は、マイクロ反応器に供給しようとする化学物質を含有する親水性マトリクスのリザーバ領域に接続する通路を含み、通路は、回路のとり囲む絶縁体中のオリフィスを通してマイクロ反応器に流体的に接続される流出領域を有する。少なくとも一つの動電学的ポンピング手段は、化学物質を、囲まれた通路に沿って囲まれたリザーバ領域からマイクロ反応器に輸送するために提供される。この実施形態の一つの変形において、通路は、通路に沿っての拡散のせいでマイクロ反応器に入る化学物質の量がマイクロ反応器への化学物質の有効ポンピング前の時間帯の間最小であるように、十分に長くあるように寸法化される。別の変形において、空隙は、マイクロ反応器への化学物質の拡散的輸送を防止するために、マイクロ反応器に接続するリザーバと流出領域間の通路中に提供される。従って、材料は、通路に沿っての流体の対流流れにより流体的に輸送されねばならないし、流体はそれが有効にポンプ注入される場合空隙を横切る。集積化動電学的ポンピング電極は、空隙上流の囲まれた親水性マトリクス回路中に位置する。例えば、一つの電極はリザーバ領域中に、別のものは空隙のすぐ上流の通路中に位置付けられる。別の変形において、リザーバは、囲まれた親水性マトリクス回路の組立ての間化学物質のプリント積層を可能とするために円形に寸法化される。なお別の変形において、流体を通路に沿って輸送するための動力を供給するために、ポンプリザーバおよび間をとった集積化電極を有する輸送通路がある。通路は、さらに、ポンプ注入しようとする化学物質を含有する第2試薬リザーバに流体的に接続される。試薬リザーバは、ポンプリザーバおよび通路およびその集積化電極の下流にある。試薬リザーバは、囲む絶縁体中の流出オリフィスを通してマイクロ反応器に、流体的に接続される。
【0065】
本発明によるデバイスの別の用途において、囲まれた親水性マトリクス流体i/o回路は、化学物質を隣接微細位置から回路中に引き出すために用いられる。この実施形態の一つの構成において、マイクロ反応器および隣接する囲まれた親水性マトリクス流体i/o回路からなる微細位置を有する平面基板は、化学物質が回路に入り、親水性マトリクス通路に沿ってまた囲まれる別のマイクロ反応部位に動くことを可能とするために、囲まれた親水性マトリクス回路の絶縁体中のオリフィスを通して化学物質の供給源に接続される。別の実施例は、マイクロ反応器から、囲まれた親水性マトリクス回路内に含有される隣接する分離デバイス中への化学物質の引き出しである。こうしたデバイスは、例えば、隣接マイクロ反応器中で起こるリガンド結合反応における非結合成分からの結合成分の電気泳動的分離において用いることができる。その構成において、囲まれた親水性マトリクス回路および隣接マイクロ反応器からなる微細位置を有する平面基板は、また、化学物質が回路に入り、また囲まれる分離通路に沿って動くことを可能とするために、囲まれた親水性マトリクス回路の絶縁体中のオリフィスを通して化学物質と共に供給される。マイクロ反応器中の標識化反応物質がこのように囲まれた親水性マトリクス回路の分離デバイス中に引き出される場合、それらは電気泳動的に分離され測定される。従来型電気泳動分離の技術分野において公知であるように、測定は、囲まれた親水性マトリクス回路の分離通路内の特定位置を探知し、好ましくは、標識が比色性、蛍光性または発光性である場合に光学的手段を用いることによって見出される。
【0066】
アッセイ・フォーマットの要求事項によりマイクロ反応器周りの流体i/oの多くの他の可能な配置は、本発明の枠組み内と考えられる。例えば、一つの用途において、マイクロ反応器に、いくつかの異なる独立にポンプ注入される流体の入力リザーバからのいくつかの試薬が供給されると共に、流体は、マイクロ反応器から出て分離デバイスおよび排水室を含む他の位置にポンプ注入される。アッセイ・フォーマットは、それが均一系かまたは不均一か;2分子かまたは多分子か;定常状態か、平衡か、または過渡測定か;単一因子かまたは多因子実験設計かのいずれかによって分類することができる。この実施形態において、マイクロ反応器および隣接の囲まれた親水性マトリクス回路は、それによって回路構成がマイクロ反応器中で運転しようとするアッセイタイプの流体i/o要求事項に応じて決まる微細位置アレイの各微細位置内に提供される。集積化流体i/oを有するバイオアッセイの特定の創意に富んだ構成は、以下に列挙される。
【0067】
不均一結合アッセイおよび組合せ法
高処理能力分子生物学および候補薬物化合物の高処理能力試験において特別の興味がある不均一レセプター/リガンド結合反応は、核酸を含むものおよびタンパク質を含むものである。
【0068】
本発明によるデバイスを用いる好ましい不均一マイクロ反応アレイにおいて、各微細位置は、マイクロ反応器が囲まれた親水性マトリクスナノ流体i/o回路に隣接するかまたはその内に含有されるかのいずれかである、1以上のレセプター・リガンド不均一結合反応を行うための固定化捕捉分子を有するマイクロ反応器を含む。囲まれた親水性マトリクス回路は、1以上の化学物質を含有する少なくとも一つのリザーバ領域、および化学物質がそれに沿ってリザーバから反応器に積極的にポンプ注入することができる少なくとも一つの通路を含む。以下のアッセイ反応成分:リガンド、試験用の薬物化合物、レポーター分子または酵素レポーター用の基質の一部またはすべてをポンプ注入することは可能である。特定例は以下に記載される。
【0069】
当該技術分野で公知の一般的な不均一2分子レセプター/リガンド結合アッセイにおいて、レセプター/リガンド対の一つ、例えば、レセプターは、固体表面に接着される。対の他方、この場合リガンドは、溶液中にある。接着レセプター(捕捉部位)を有する固体表面がリガンド(標的)を含有する溶液中に漬けられる場合、結合反応はレセプターとリガンド間で起こり、今表面に接着するレセプター/リガンド複合体を形成する。レポーター分子は、遺伝子発現実験において一般的であるようにレセプター/リガンド結合段階の前か、または当該技術分野で公知の1または2段階サンドイッチ免疫学的検定におけるようにレセプター/リガンド結合反応の間または後のいずれかでリガンドに接着される。比色性、蛍光性、発光性および電気化学性標識化分子は、すべて、いわゆる直接標識化技術での使用において当該技術分野において周知である。また当該技術分野において公知であるものに、酵素レポーターシステムの使用がある。この場合において、酵素はリガンドに接着され、レセプター/リガンド複合体の存在は、基質の酵素的転換の検出により伝達される。通常、生成分子は検出される。検出可能な生成物を生成する発色性、蛍光発生性、発光性および起電性基質は、当該技術分野において周知である。不均一結合フォーマットにおいて、結合レポーターの接近から非結合レポーター分子を分離することは必要である。レセプター/リガンド複合体の濃度を示す結合レポーター分子の濃度は、次に、吸光度、蛍光、発光によるかまたは電気化学的に検出される。
【0070】
不均一アッセイにおける本発明によるデバイスの簡単で有利な使用は、おそらく、酵素増幅を用いることにより少量の検体に対して敏感である高密度レセプター結合性マイクロ・アレイを提供することである。直接標識化技術において、検出された実体は、アレイの微細位置からの検出されたシグナルがその微細位置での複合体の濃度を測定するように、化学的にレセプター・リガンド複合体に接着される。しかし、前に注記したように、直接標識化技術を用いる先行技術マイクロ・アレイは、それらがセル当り低発生量にあるかまたは少量のセルがあるいずれかの場合に、少量の検体に対して敏感でない。検出の限界は、酵素で標識することにより有意に改善することができる。各酵素分子は秒当り数百または数千の基質分子を転換し、酵素・リガンド・レセプター複合体当りの秒当り数百または数千の検出可能な分子を与える。しかし、酵素反応は溶液中で起こるので、所定の微細位置で起こる酵素反応の生成物は、その微細位置で酵素・リガンド・レセプター複合体の接近を保たなければならない、さもなければ、検出体は隣の微細位置に向けて動き、アレイ微細位置間のシグナル・クロストークのせいで、アレイを無益にしてしまう。この理由により、こうした反応体系は、各微細位置がウエル壁によってその隣接物から分離された反応溶液を含有する反応ウエルであるより低い密度のマイクロプレート・フォーマットにおいてのみ可能であって、反応溶液が繋がっている高密度マイクロ・アレイフォーマットにおいてではない(酵素反応産物が反応微細位置の近くで固体表面に接着してしまうチラミド・シグナル増幅体系における場合を除く。しかし、やはり分解能の損失があり、増幅度は10〜50倍のみである。)。高密度マイクロ・アレイを用いて望ましい結果を達成するために、酵素増幅段階の前に各反応微細位置を単離し、次に、基質をそれぞれ各微細位置に塗布することにより酵素増幅を行わなければならない。これは以下のような本発明のデバイスの一つの実施形態により達成することができる。この実施形態において、平面基板は微細位置のアレイを有し、それぞれは、レセプター・リガンド結合部位を有するマイクロ反応器、および回路をマイクロ反応器に接続する絶縁体中のオリフィスを有する隣接の囲まれた親水性マトリクス回路を含む。囲まれた親水性マトリクス回路内に、酵素基質分子を含む少なくとも一つのリザーバ領域が提供される。酵素基質分子は、それらが回路内の通路に沿って輸送可能であるように、マトリクスまたは平面支持体に化学的に結合しない。少なくとも一つの通路は、少なくとも一つのリザーバ領域をマイクロ反応器に接続し、少なくとも一つのポンピング手段は、酵素基質分子を少なくとも一つのリザーバ領域からマイクロ反応器に輸送するために提供される。
【0071】
この特定実施形態の使用において、捕捉部位を含む微細位置のアレイは、試験溶液にさらされる。レセプター・リガンド複合体は、各微細位置で形成される。この実験の一つの変形において、試料溶液中の標的分子は、最初に、それらがレセプター・リガンド・酵素複合体形成用の捕捉アレイに対して提供される前に、当該技術分野において公知の技術を用いて酵素で標識化される。別の変形において、標的分子は、当該技術分野において公知の技術を用いてビオチン分子で標識化されると共に、ビオチン標識化標的は、次に、レセプター・リガンド・ビオチン複合体形成用の捕捉アレイに提供される。次に、アレイは、レセプター・リガンド・ビオチン・ストレプトアビジン酵素複合体形成用のストレプトアビジンに連結した酵素を含有する溶液にかぶせられる。第2プレートは、好ましくは捕捉アレイプレート上で第2プレートを間にはさむことにより、互いから個々の微細位置を単離するために捕捉アレイプレートと結合する。各微細位置は、今、水溶液、捕捉複合体を有する捕捉表面および隣接する囲まれた親水性マトリクス回路で埋められたマイクロ反応器を含有する。今それぞれ個々の微細位置でポンプを作動させることにより、酵素基質は、各微細位置を走査することにより酵素反応の程度を同時に検出しながら、囲まれた親水性マトリクス回路からマイクロ反応器中に注入される。実験を行うのに3方法がある。一つにおいて、捕捉アレイは第1平面基板上にあり、囲まれた親水性マトリクス回路は第2上にある。捕捉複合体は第1プレート上に形成され、次に、二つのプレートは並べられ接触して酵素反応用の個々の反応微細位置を形成する。第2のやり方において、捕捉アレイおよび囲まれた親水性マトリクス回路アレイは、同じプレート上にある。捕捉複合体は、次に第2のブランクカバープレートと結合して酵素反応用のそれぞれ個別の微細位置を形成するこのプレート上に形成される。第3のやり方において、捕捉アレイおよび囲まれた親水性マトリクス回路アレイは、同じプレートの各微細位置でのそれぞれ一つのアレイ要素上にある。微細位置は、反応溶液をそれぞれ個々の微細位置上に含まれる個々の反応溶液部分中に分割する疎水性表面により分離される。次に、酵素基質は、囲まれた親水性マトリクス回路から各微細位置での反応溶液中にポンプ注入される。デバイスは、高感度遺伝子発現DNAチップおよびタンパク質チップ両方を得るために用いることができる。出発材料の供給が限定される場合、遺伝子発現またはタンパク質発現の用途に本発明のデバイスを用いることは、有利である。本発明のデバイスは、特に、核酸増幅体系が利用可能でない場合、高感度タンパク質チップに対して有用である。
【0072】
本発明のデバイスの別の有利な使用は、高密度アレイに適合される化学発光標識化リガンド・レセプターのアッセイフォーマットに存する。技術上公知のシグナル発生方法の中で、化学発光法は低発生量化学物質のバイオアッセイ用に好ましい方法である。詳細には、発光起源の検出による酵素増幅リガンド・レセプターアッセイは、技術上最も感度の高いアッセイ法と実証されてきた。酵素増幅の上の例にあるように、化学発光光発生反応が、また、溶液中で起こる。所定の微細位置で起こる反応の産物は、その微細位置でのリガンド・レセプター複合体の近くに保持されねばならない、さもなければ、発光性検出物は隣接微細位置に向けて動き、アレイ微細位置間のシグナル・クロストークのせいでアレイを無益にしてしまう。この理由により、こうした検出体系は、各微細位置がウエル壁によってその隣接物から分離される反応溶液を含有する反応ウエルである場合により低い密度のマイクロプレート・フォーマットにおいて可能であったが、しかし、反応溶液が繋がっている高密度マイクロ・アレイ・フォーマットにおいては達成されてこなかった。この問題は、今、それぞれがレセプター・リガンド結合部位を有するマイクロ反応器を含む微細位置のアレイが、絶縁体中のオリフィスを通して、隣接する囲まれた親水性マトリクス回路に接続される化学発光アッセイを目指す本発明のデバイスの一つの実施形態において対応される。それぞれの囲まれた親水性マトリクス回路内の少なくとも一つのリザーバ領域は、1以上の化学発光アッセイ試薬を含有する。これらの試薬は、それらが回路内の通路に沿って輸送可能であるように、マトリクスまたは平面支持体に対して化学的に接着されない。少なくとも一つのリザーバ領域をマイクロ反応器に接続する少なくとも一つの通路、および化学発光アッセイ試薬を少なくとも一つのリザーバ領域からマイクロ反応器へ輸送するための少なくとも一つのポンピング手段がある。試薬は、以下の1以上であることが可能である:発光起源の酵素基質(アッセイが酵素増幅される場合)または化学発光法による前駆体、化学発光アッセイの技術分野において一般的に用いられる化学発光開始剤または触媒。それらをリザーバ領域からポンピングすることにより原位置で化学発光アッセイ試薬を添加する能力は、非集積化流体i/oデバイスによるデバイスにおいては容易に実施できないフラッシュタイプの化学発光アッセイを可能とする。
【0073】
それは、また、背景の光レベル(集積化流体デバイスからの試薬添加直前の)を、試薬添加の直後のシグナル光レベルから差し引くことができるので、低レベル検出をも可能とする。
【0074】
本発明によるデバイスの別の有利な用途は、多分子複合体を吟味することである。この用途において、不均一結合反応は、固定化捕捉分子、アッセイしようとする試料からの標的分子およびレポーター分子間の3分子サンドイッチを形成する。この実施形態のデバイスには、レセプター・リガンドマイクロ反応部位を有する微細位置のアレイが含まれる。各マイクロ反応部位は、アッセイしようとする標的分子を含有する水溶液と接触させられる。水溶液中の標的分子は、アレイ中の各マイクロ反応器に接着されるそれぞれの捕捉分子に結合する。そのポンプが外部計器制御下で作動する、囲まれた親水性マトリクス回路内の集積化電動学的ポンプは、各微細位置で提供される。ポンプはレポーター分子をマイクロ反応器に送達する。レポーター分子は、存在する場合、接着した標的分子に結合する。洗浄段階は、非結合レポーター分子を除去する。各マイクロ反応器位置で標識の存在を測定することからなる検出段階は、アッセイを完了させる。
【0075】
本発明のデバイスを用いる3分子サンドイッチ複合体による不均一結合アッセイのいくつかのフォーマットは考慮される。一つの好ましいフォーマットにおいて、各微細位置での各マイクロ反応部位は、同一の捕捉部位を含有し、親水性マトリクス回路内の各レポーターリザーバ領域は、異なるレポーター分子を含有する。アレイの同一のマイクロ反応器は、それぞれ、特定組成を有する標的分子を捕捉する1以上の接着捕捉分子を含有する。代わりの用途において、同一のマイクロ反応部位のアレイは非特定捕捉部位を含む。M行およびN列を含有するアレイに対して、レポーター分子のMNの各種組成物および1捕捉部位組成物(特定のまたは非特定の)を含有するMN要素がある。従って、MN個の異なる、捕捉分子、標的分子およびレポーター分子の3分子サンドイッチがある。
【0076】
別の好ましいフォーマットにおいて、レポーターリザーバ領域は、第1パス中の行により印刷されるM個のレポーター、次に、第2パス中の列によるN個があるように、二重に印刷することができる。従って、この組合せ印刷フォーマットにより得られるM+Nの異なる独自の個々の化学組成物のためのMN二つのレポーターの組合せがある。このフォーマットの一つの変形において、すべてのレポーターは同じ蛍光標識により標識化される。別の変形において、二つのレポーターの一つだけが標識化される。別のフォーマットにおいて、各レポーターリザーバ領域は、それぞれがそれ自身の独特な蛍光波長を持つ異なる標識を有する1以上のレポーターを含有する。
【0077】
上記の3分子サンドイッチタイプアレイのなお別の好ましいフォーマットにおいて、各微細位置での各マイクロ反応部位は、異なる捕捉分子を含有し、各リザーバ領域は同じレポーター分子を含有する。M行およびN列を含有するアレイに対して、MN個の異なる捕捉分子組成物および1個のレポーター分子を含有するMN個要素がある。従って、捕捉分子、標的分子およびレポーター分子のMN個の異なる3モルサンドイッチがある。
【0078】
なおさらに好ましいフォーマットにおいて、異なる微細位置での各マイクロ反応部位は異なる捕捉分子を含有し、リザーバ領域は異なるレポーター分子を含有する。例えば、M行およびN列を含有するアレイは、M個の異なる捕捉分子組成物、各行要素上の同じ組成物、およびN個の異なるレポーター分子組成物、各列要素上の同じ組成物を有することができる。MN要素は、M個の異なる捕捉分子およびN個の異なるレポーター分子を含有する。従って、捕捉分子、標的分子およびレポータープローブ分子のMN個の異なる3分子サンドイッチがある。しかし、組み合わされる組成的に異なる捕捉またはレポーター分子はM+N個だけである。この組合せフォーマットにおいて、MN個の異なる標的分子は、たったのM+N個の試薬により識別することができる。例えば、1000個の異なる捕捉分子および1000個の異なるレポーターを有するチップは、1,000,000個の異なる標的分子組成物を識別することができる。
【0079】
多くの他の位置特定組合せフォーマットが、標的分子がまた標識化されるもの、および多波長標識システムが追加の多重送信能力を提供して組み込まれるものを含む本発明のデバイスにより可能であることは、また、本発明の枠組み内と見込まれる。
【0080】
集積化ナノ流体i/oを有するマイクロ反応器アレイを用いる不均一反応の別の例において、組込み標識化を有するタンパク質結合反応器または核酸ハイブリダイゼーション反応器のアレイおよび酵素増幅試薬が用いられる。
【0081】
均一系アッセイ
本発明のデバイスを用いて行われる均一系反応の代表的な例は、薬物試験用の酵素アッセイである。候補薬物化合物は、それらが特定の酵素反応の反応速度の変化を引き起こす場合、潜在的に興味あるものである。こうしたアッセイはフォーマット化されて発色性、蛍光発生または発光性基質:酵素反応の際に蛍光性または発光性となる酵素用の合成基質の使用により光学的に検出可能な反応速度を与えることができる。その速度が光学的手段により測定される酵素反応をフォーマット化するためのこのおよび多くの他の体系は、技術上公知である。この均一アッセイを遂行するために必要とされる本発明のデバイスの微細位置および親水性マトリクス回路の特定の構築および設定は、本発明のデバイスの各種実施形態の上記検討から明らかである。
【0082】
複雑な反応フォーマット
本発明によりアレイ上で行うことができる複雑な反応フォーマットの代表的な例は、ピロシーケンシング反応フォーマットである。この方法において、4個のヌクレオチド塩基が、DNAテンプレート上の伸長DNA鎖を含有する反応器に順序どおりに添加される。技術上公知(米国特許第6,210,891号)のように、塩基を組み込むと無機ピロリン酸塩の放出がある。この技術は、技術上公知であり、以下の反応シーケンスに基づく酵素発光性無機ピロリン酸塩(PPi)検出アッセイ(Nyren and Lundin,Anal.Chem.151,504〜509,1985)を用いる。
【化1】

【0083】
それに対して多時限試薬添加をなすことができる反応器を必要とする上記例の複雑なアッセイは、マイクロフォーマットまたはアレイにおいて容易には実施されない。しかし、こうした複雑なフォーマットは、本発明の集積化流体i/oデバイスを用いて実施する場合実行可能となる。それぞれが異なる塩基を含有する4個の集積化流体注入器中に含有されるヌクレオチド塩基を順序どおりにマイクロ反応器中に注入することは、今、可能となる。塩基の組込みは、生物発光反応が第5の集積化流体入力からのルシフェリンの注入により誘発される場合ATPスルフリラーゼおよびルシフェラーゼを含有するアッセイ混合物中に検出できるPPiを放出する。
【0084】
別の複雑な反応フォーマットは、特別に敏感な酵素増幅生物発光アッセイの系列である。この系列の方法は、次に技術上公知の生物発光反応を通して光出力に転換される生物発光基質の酵素的産生を用いる(J.Bioluminescence and Chemiluminescence,4,119〜128,1989を参照すること)。この方法の一つの重要な例は、ルシフェリン・リン酸塩の、次にルシフェラーゼおよびATPの存在下で生物発光するルシフェリンへのアルカリホスファターゼ触媒化変換を用いる。反応シーケンスは以下である。
【化2】

【0085】
この方法において、アッセイしようとするアルカリホスファターゼは、ルシフェリン・リン酸塩、ATPおよびルシフェラーゼを含有するアッセイ混合物に添加される。この1段階アッセイフォーマットにおいて、アルカリホスファターゼの量は、光産生速度またはグロー強度に比例する。アルカリホスファターゼは、前述のように不均一結合アッセイにおける標識としてリガンド結合性複合体中に組み込むことが可能である。
【0086】
このアッセイの2段階の変形は、潜在的になお一層敏感である。本発明によるデバイスを用いて実行される2段階法において、アッセイしようとするアルカリホスファターゼは、アレイの1以上の微細位置で1以上のマイクロ反応器中にある。微細位置でのアルカリホスファターゼ酵素は溶液中にあるか、または、それが不均一結合アッセイのリガンド結合性複合体中に含有される標識であるかのいずれかである。第1段階において、ルシフェリン・リン酸塩は、本発明の流体i/oデバイスにより原位置で添加される。インキュベーション時間帯後、第2段階において、生物発光反応は、本発明の集積化流体i/oデバイスを用いるアッセイ混合物へのATPまたはルシフェラーゼのいずれかまたは両方の原位置添加により誘発される。低濃度のアルカリホスファターゼで、1段階法は、光検出器中の背景ノイズから識別することが可能でない連続的な低レベルの光グローを与える。しかし、2段階法は、第2段階における反応混合物へのATPまたはルシフェラーゼまたは両方の添加によりそれが誘発されて後、ルシフェリンが生物発光反応において消耗される場合、次により短い時間帯にわたる一段と高い光強度が続く、インキュベーション時間の間のアルカリホスファターゼ触媒化第1反応段階において形成されるルシフェリン濃度の蓄積を可能とする。2段階法の追加の複雑さ、および迅速な注入技術に対する要求事項は、単一アッセイフォーマットにおいてさえこの方法の通常的な使用を禁止してきたが、既存技術のマイクロアレイ上で行うにはあまりにも複雑すぎる。しかし、このアッセイは、本発明の流体i/oデバイスを用いる実施に特に適している。
【0087】
部位特定アッセイ
本発明によるデバイスの別の好ましい実施形態において、各微細位置は、集積化ナノ流体i/oを提供する隣接の囲まれた親水性マトリクス回路を有するマイクロ反応器を含む。この実施形態において、集積化ナノ流体i/oは位置特定反応条件を達成するために用いることができる。マイクロ反応部位中に導入される1以上の化学物質の濃度は、アッセイ手順の間計器により制御することができる。これは、今、用量反応滴定、および濃度段階変更後の迅速な過渡測定、ならびに他の化学物質の部位特定制御を可能とする。多ポンプアレイの制御は、電動学的ポンプ電極アレイのパッシブ・マトリクスアドレス指定を通しての、公知技術の平面ディスプレイデバイスのマトリクスアドレス指定に類似するやり方にある。各微細位置での反応条件の制御の一つの好ましい方法は、フィードバック制御を用いる。こうした体系において、各微細位置でのマイクロ反応器は、試薬または試料溶液を囲まれたリザーバから反応器へ供給する1以上の独立にポンプ注入される流体入力を提供する囲まれた親水性マトリクス回路に接続される。各独立にポンプ注入されるリザーバは、制御されたやり方および標識化分子においてマイクロ反応器に供給するために必要な化学物質を含有する。マイクロ反応器中の特定標識化分子の濃度は、標識を含む隣接リザーバからマイクロ反応器中にポンプ注入される材料の量を示す。測定プローブは、マイクロ反応器中の反応化学物質および標識の濃度を探知する。標識の濃度は、標識を含有するリザーバからのポンプを制御するためにフィードバックされる。好ましい実施形態において、マイクロ反応器アレイは、アッセイ反応が蛍光または発光シグナルを生成する場合がそうであろうように、光学的に走査される。この場合において、ポンプ制御性標識化分子は、また、それがアッセイ用に用いられるのと同じ光学的走査システムにより測定することができるように発光性である。各試薬リザーバは、各標識がアッセイ反応に含まれる発光分子により出される波長とはまた異なるそれ自身の異なる波長で発光するそれ自身の発光標識を含有する。
【0088】
高感度細胞アッセイ
本発明によるデバイスの一つの好ましい実施形態において、各微細位置は、マイクロ反応器が1または少数の細胞または細胞溶解物を含有する隣接の集積化流体i/oを有するマイクロ反応器を含む。集積化流体i/oは、反応微小体積への、(細胞から押し出される細胞成分または化学物質の単一細胞反応または高感度アッセイ研究用の反応微小体積への)原位置での制御された試薬の添加を可能とする。
【0089】
本発明の集積化流体i/oによる使用のための一つの特に適する細胞アッセイは、その例がルシフェラーゼ・レポーター遺伝子アッセイである技術上公知のレポーター遺伝子アッセイである(例えば、J.Bioluminescence and Chemiluminescence,8,267〜291,1993を参照すること)。それをレポーター遺伝子のコーディング領域に結合することにより、遺伝子発現を制御するその能力用の単離DNAシーケンスを試験することは可能である。このアッセイにおいて、発現したルシフェラーゼ酵素の量は、ルシフェリンのATPとの反応の酵素の化学発光触媒作用を用いてアッセイされる。特定DNAシーケンスによる制御に対して調査される一つのまたは多くの細胞または細胞溶解物は、微細位置でマイクロ反応器中に導入される。細胞は、調査中のDNAシーケンスによる制御に影響を与えることができる特定試験物質にさらされる。試験物質は、好ましくは、本発明の流体i/oデバイスにより原位置でマイクロ反応器に提供される。ルシフェラーゼレポーター遺伝子は、検討中のDNAシーケンスがその発現を誘発する場合に発現する。ルシフェラーゼのアッセイは、本発明の集積化流体i/oデバイスからのルシフェリン、ATPまたは両方のマイクロ反応器への添加により、原位置で開始される。
【0090】
本発明の好ましい実施形態は、さらに詳細には以下に、および添付の図面を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
最も一般的な構築において、本発明の好ましい親水性マトリクスデバイスまたは水性溶質の輸送は、絶縁性基板100(図1を参照すること)、基板100上の電極対103、104、溶質の電動学的輸送用の基板100上の親水性マトリクス通路116、絶縁体118と基板100間のマトリクスを囲み、密閉する水蒸気透過性絶縁体118、および絶縁体を通してマトリクスへのまたはそれからの水性溶質の通過(図2中の覆われていない末端204を参照すること)用のマトリクスの真上の絶縁体中のオリフィス(示されていない)を含む。各電極103、104は、動力を供給するための外部回路への接続用の接触端108、109およびマトリクスとの電気接触用のマトリクス端112、113を有する。マトリクス端112、113は、電気接続を達成するためにマトリクス116と直接の物理的接触にあるか、またはマトリクスから離れるがマトリクスの濡れ後マトリクス116との電気接触の達成のためそこに十分近接して置くことができる。導電性物質は、また、それらの間の電気接触の達成のためマトリクス116と電極103、104間に提供することができる。マトリクス116は初期に乾燥しており、マトリクスの水吸収率を増大させるために湿潤剤を含む。マトリクスの濡れは、絶縁体118を通過する水蒸気を有する水にデバイスをさらすことにより達成される。乾燥状態では、マトリクス116は不活性および非導電性である。マトリクスは、絶縁体118を通しての水蒸気輸送により、それを湿った(濡れた)状態に移行させることによって電気導電性が与えられる。絶縁体118中のオリフィスは、また、毛細管現象によりマトリクス116の濡れ用に用いることができ、絶縁体118の蒸気透過性は水回収の際のマトリクスにおける圧力蓄積を防止する。マトリクス116は、そこを通しての溶質の電気浸透輸送用の固定電荷を有することができる。マトリクス116は、また、そこを通して電動学的にポンプ注入しようとする試薬を含有することができる。好ましくは、試薬は、マトリクス116が乾燥状態にあってその状態で試薬が実質的に位置的にも化学的にも安定である乾燥状態にある。マトリクス116は、好ましくは、電解質塩を含み、湿潤剤は、好ましくは、中性分子である。
【0092】
上述の実施形態における電極およびマトリクスの両方は基板の同じ表面上に支持されるが、一つまたは両方の電極が、基板を横切るマトリクスと電極間の電気接触が確保されている限り、基板の対面上に支持することができることはこの時点で強調されなければならない。これは、接触点での基板を通しての通路など、またはマトリクスと電極間の中間の導電性物質により達成することができる。さらに、上述の実施形態における両方の電極は基板上に支持されるが、本発明は一つだけの電極が基板上に支持され、一方でマトリクス通路に沿っての電位生成用に必要とされる第2電極がデバイスに対して外部にあるデバイスを包含する。その状況において、第2電極との電気接触は、中間導電性物質を通して達成することができる。例えば、第2電極はデバイスの使用の間マトリクスとの接触に入ってくる電気導電性流体中に位置付けすることができる。
【0093】
いかに本発明の流体i/o技術が実行されるかをよりよく理解するために、我々は、我々が本発明により作製してきた多くの囲まれた親水性マトリクスデバイスの特定例を以下に挙げる。
【0094】
我々は、薄膜微細加工技術において、また薄膜および厚膜を組み合わせた技術において親水性マトリクスデバイスおよび回路を組み立ててきた。
【0095】
薄膜の囲まれた親水性マトリクスデバイス
我々は、種々の成分材料およびそれらの輸送特性の試験で用いる、薄膜技術での図1に示すデバイスを組み立てた。これらの薄膜の囲まれた親水性マトリクスデバイスは、標準4インチ径の研磨シリコン・ウエハー上に組み立てられた。
【0096】
シリコン基板100を最初に酸化して、1マイクロメートルの絶縁性二酸化ケイ素層101を与えた。チタン(0.015マイクロメートル厚さ)および金(0.2マイクロメートル厚さ)の膜を電子ビーム蒸着し、リソグラフ的にパターン化して、4金属要素を形成した:外側金属要素102、105および内側金属要素103および104。各金属要素は、外部回路への接続用の接触パッドとの一つの末端および親水性マトリクスへの接触用の他の末端を有する。金属要素を絶縁層106により被覆し、接触パッド開口部107、108、109、110および電極開口部111、112、113、114をリソグラフ的に形成した。二つの絶縁性材料および方法を用いてきた。第1に、絶縁層106は市販されているネガ型レジストポリマー(SC−100アーチ・ケミカル(Arch Chemical Co.))であった。このレジストポリマーは、UVリソグラフィによりネガ型レジストとしてパターン化され現像されるスピンコート化ポリイソプレンであった。第2に、我々は、HFエッチング液およびネガ型レジストマスクを用いるサブトラクティブ・エッチング法によりパターン化されるCVD二酸化ケイ素を用いた。
【0097】
次に、薄膜親水性マトリクスをスピンコーティングにより成膜し、次に、二つの技術の内一つを用いてパターン化した。第1は、マトリクスが光架橋性であるように配合される場合、直接光形成による。この方法において、親水性マトリクスをスピンコートし、光マスクを通してUVにさらし、現像した。第2は、ネガ型フォトレジストマスクおよび酸素プラズマ中の親水性マトリクスのドライエッチングを用いるサブトラクティブ・ドライエッチング法による。この後者の方法において、スピンコート化親水性マトリクスを、次に光形成され現像されるネガ型フォトレジストにより被覆した。酸素プラズマによって、フォトレジストマスクにより保護されない親水性マトリクス膜を除去し、またパターン化親水性マトリクス層を残してフォトレジストマスクを除去した。この方法において、親水性マトリクスは、プラズマ・エッチング法において灰残物を形成しない成分により配合されなければならない。
【0098】
二つのタイプの親水性マトリクス材料を用いてきた。第1に、我々はナノ多孔質(孔径は1〜100nmで変動する)の親水性ポリマーマトリクス、主としてポリビニルアルコールを用いた。これらの膜を、直接光形成(光感受性スチルバゾリウム官能化ポリビニルアルコールを用いて)ならびにネガ型レジストおよびサブトラクティブ・ドライエッチング法の両方によりパターン化してきた。第2に、我々は、マイクロ多孔質(孔径は50〜5000nm間で変動する)のセルロース・アセテート膜を用いた。一般的な方法において、これらの膜を、混合溶媒溶液(アセトン90%/水10%中の9%セルロース・アセテート)から1500rpmでスピン成膜した。スピン処理の間に、孔を位相反転法により乾燥膜の本体中に造りだす。膜は、また、多孔質でない1〜2ミクロン厚さの外側の皮を有する。この方法の一般的な膜は、約600ナノメートル径を持つ約70%のバルク気孔率を有した。これらの膜を、ネガ型レジストサブトラクティブ・ドライエッチング法を用いてパターン化した。この方法において、ネガ型レジスト(2.5マイクロメートル厚さ)をセルロース・アセテート上に成膜し、光パターン化した。次に、パターンをドライエッチングによりセルロース・アセテート中に移した。このドライエッチング法を、酸素プラズマ(60sccm酸素流量、150ワット)を用いてプラズマ反応器中で行った。エッチング速度は約1マイクロメートル/分であった。この方法において、酸素プラズマは、ネガ型レジストならびに光形成ネガ型レジストキャップ層によって保護されない領域中のセルロース・アセテート、およびその真下の上部約3ミクロンのセルロース・アセテートを除去する。最終のエッチングされたセルロース・アセテート要素は、約7マイクロメートル厚さである。
【0099】
形成された親水性マトリクスは、輸送通路116(図1A中、幅W、長さL)によって接続される二つのリザーバ領域115および117(図1A中、幅X、長さY)を有した。外側の電極102および105は、穴111および114を通してリザーバ115および117に接触し、内側の電極103および104は、穴112および113を通して両端で通路116と接触する。
【0100】
最終的に、絶縁性でガス透過性の膜材料118を溶液からスピンコートした。こうして、親水性マトリクスは絶縁体118により完全に囲まれてしまう。我々が用いたガス透過性絶縁体材料は、ポリイソプレンなどの他の透過性の低い材料も調査されたが、主として、高度にガス透過性であるポリ−ジメチル・シロキサンポリマー(PDMS)およびポリイミドとポリ−ジメチル・シロキサンのコポリマー(PI−PDMS)の系列からであった。一般的な方法において、我々は、8マイクロメートル厚さのPI−PDMS膜(ゲレスト(Gelest Inc.)から)を、2000rpmでのトリクロロエチレンにおける固形物20%溶液からのスピンコーティングにより調製し、3マイクロメートル厚さの膜を、1500rpmでの10%溶液からのスピンコーティングにより調製した。
【0101】
使用において、親水性マトリクスを囲むガス透過性絶縁体の上に位置付けられるデバイスの領域を、水中に浸漬した。電気接触領域は水中に浸漬しなかった。ガス透過性絶縁体118を通してのその蒸気としての水蒸気輸送は、親水性マトリクス中に組み込まれる。ガス透過性層を通して探知することにより電気接触パッドに対して接触がなされた。
【0102】
薄膜および薄/厚膜組合せ親水性マトリクスデバイス
我々は、薄膜または薄および厚膜組合せ技術において図2に示されるデバイスを組み立てた。図2は集積化トップ・サイド電極を有する囲まれた親水性マトリクスデバイスの一つの変形である。このデバイスにおいて、4個の離れた金電極215、216、217および218を有する平面絶縁性シリコン基板200がある。我々は金を有する酸化ケイ素基板(図1のデバイス用の手法のとおりに成膜され光処理された)を用いた。末端204および205を有する親水性マトリクス輸送通路202を、末端204を電極217上にしてそれと接触させ、末端205を電極218上にしてそれと接触させて、4個の離れた電極に接触するように位置付けた。
【0103】
我々は、厚および薄膜親水性マトリクス通路材料の両方を調査してきた。厚膜要素は型抜きされた親水性マトリクス通路を含んだ。この要素は、シート(一般的に100〜150マイクロメートル厚さ)からダイスタンプされることにより形成され、狭い(500マイクロメートル)と共に長さ寸法(一般的に約1cm)を有してサイズ化され、電動学的デバイスの輸送通路を形成した。薄膜親水性マトリクス通路は、前述の方法を用いるスピンコート化および光パターン化セルロース・アセテートを含んだ。
【0104】
囲むガス透過性絶縁体に、その長さに沿って親水性マトリクス輸送通路を被覆した。親水性マトリクス濡れを研究するために用いられるデバイスの一つの変形版において、ガス透過性絶縁体を親水性マトリクスの末端204および205を越えて延ばした。この変形版においては、親水性マトリクスを完全に囲んだ。前に濡れた親水性マトリクスの輸送特性を研究するために用いたデバイスの別な変形版において、ガス透過性絶縁体を、末端204および205だけを覆わずに残して親水性マトリクス通路202に沿って延ばした。
【0105】
我々は、厚膜および薄膜両方のガス透過性絶縁体膜を調査してきた。ガス透過性絶縁体は、親水性マトリクス通路上に組み立てられる25マイクロメートル厚さの型抜きされたPDMS要素(アドヒーシブズ・リサーチ(Adhesives Research))か、またはステンシル法を用いてトリクロロエチレン20%溶液からの薄膜として塗布される10マイクロメートル未満厚さの溶液成形PI−PDMS層かのいずれかであった。
【0106】
平面基板および囲まれた親水性マトリクスデバイスを、平面基板とポリカーボネートの同一平面上のスラブ207間に挟まれるエラストマーガスケット206により規定される3個のくぼみ208、209および210を含むマイクロ流体セル中に組み立てた。
【0107】
以下に記載される水吸収実験において、流体配管242を通して水性流体を室209中に注入し、囲むガス透過性膜203を通しての蒸気輸送により初期乾燥の親水性マトリクス通路202中に水を組み込んだ。濡らす間通路のトランスコンダクタンスを監視するために、電流を駆動するため輸送通路202中の電極215および216の間に電圧をかけることができ、その場合に電極217および218を電位計に接続して通路を横切る電圧を測定することができる。あるいは、電極217および218は電流を供給することができ、215および216は電圧プローブとして用いることができる。
【0108】
濡れたデバイス上での輸送測定において、室208中にポンプ注入しようとする供給源化学物質を含有する水溶液を注入することにより、通路202への流体接触を行った。注入はシリンジ250から流体配管240を通して行った。202への流体接触は、位置204で起こった。一部の実験において、水性流体を、また、流出室210中に注入し、202への流体接触は位置205で起こった。通路215および216中の電極対は、今、室208中の供給源リザーバから電圧プローブとして用いられる電極217および218を有する流出室210へ流体を電動学的にポンプ移送するための動力を供給するために用いることができるか、または電極217および218は電動学的流れに動力を与えることができ、215および216はプローブとして用いられる。
【0109】
我々は、囲まれた親水性マトリクスデバイスの使用、およびいかに本発明を最善に実行するかをさらに教示するそれらの性能の特定例を以下に挙げる。
【0110】
初期乾燥の囲まれた親水性マトリクスデバイスによる水吸収
図1構成の薄膜デバイスおよび図2構成の薄/厚膜組合せデバイスの両方を組み立ててきて、それらの水吸収特性を調査した。我々は、図1の配置図により薄膜親水性マトリクスデバイスを組み立てた。それらは酸化物被覆シリコン基板上にポリ−イソプレン絶縁化金電極を含んだ。我々は、2種類の親水性マトリクスを有するデバイスを組み立てた。一つは、前述のように組み立てたドライエッチング化、7マイクロメートル厚さのマイクロ多孔質セルロース・アセテート層を含むマイクロ多孔質マトリクスであった。他は、ナノ多孔質ポリビニルアルコールであった。通路次元は、W=60マイクロメートルおよびL=500マイクロメートルであった。リザーバは、X=1.2mm掛けるY=2.4mmであった。リザーバパッド上に溶解試薬を微細分配することにより、試薬をリザーバ中に導入した。10マイクロメートル厚さのPI−PDMS膜であるガス透過性絶縁体を、親水性マトリクス上にトリクロロエチレン10%溶液からのスピンコーティングにより塗布した。
【0111】
我々は、囲まれた親水性マトリクス中への水の組込みを特徴づけるために溝導電性対時間を測定した。これを、輸送通路を通しての一つのリザーバから他への電流を駆動するために、外側の電極に電圧をかけることにより達成した。内側の電極を電位計、電圧計に接続し、輸送通路を横切るiR電圧降下を探知した(技術上公知の標準4点プローブ構成)。別の外部電極を、時折、水中に浸漬して、囲むガス透過性絶縁体を通しての漏洩電流を確認した。期待したように、デバイスの囲まれた親水性マトリクス通路内の電動学的流れを駆動するために用いられる通常の運転電圧(0〜100V)で、囲むガス透過性絶縁体を通しての漏洩電流は全くなかった。
【0112】
水中へのデバイスの初期浸漬で、通路の導電度は小さかった(一般的に10-10〜10-12オーム-1)。水がガス透過性絶縁体を通しての蒸気透過により親水性マトリクス中に組み込まれるので、導電度は増大し、最終的にマトリクスが十分に濡れた場合に一定となった(一般的に10-6〜10-8オーム-1の範囲)。我々は、水摂取率が、吸湿性塩、ソルビトールおよびグリセロールなどの低分子量ポリオールまたは尿素またはアラニンなどの他の小さな中性分子などの湿潤剤の、初期乾燥親水性マトリクス層中への組込みにより増大することを見出した。この開示において、我々は、湿潤剤を、その特性がそれが水蒸気をそれ自身に引き付けることであるあらゆる薬剤を意味すると定義する。保湿剤および乾燥剤などの技術上の他の用語は類似の意味を有する。上記次元のデバイス用の水摂取時間は、添加剤なしでセルロース・アセテートマトリクスに対して60分を越えたが、しかし、20質量%のソルビトールが親水性マトリクスに添加される場合は5分であった。
【0113】
初期乾燥マイクロ多孔質セルロース・アセテート親水性マトリクス中への水蒸気透過性絶縁体を通しての水摂取は、層寸法の感知できるほどの変化を全く引き起こさなかった。我々は、初期に白色不透明のセルロース・アセテートが水摂取で半透明となるので、外見の変化を見るだけであった。初期乾燥マイクロ多孔質セルロース・アセテートは、その体積の約70%の空気量を含む。水が導入されるので、内部空気は加圧されるかまたはそれは囲むガス透過性絶縁体を通して透過により逃げるかのいずれかである。セルロース・アセテートは寸法安定性のままである。感知できるほどの空気を含有する多孔質の低密度材料を含み、濡らす間寸法安定性である親水性マトリクスは、本発明における使用に好ましい材料である。見本のセルロース・アセテートは、しかし、本発明のデバイスにおいてうまく用いることができたこのタイプの多くの材料の内の一つである。他の例には、混合溶媒から成型される場合位相反転により寸法安定性の多孔質材料として製造されるセルロース・ナイトレートおよびシリカ・ゾル−ゲル、不均一マトリクスが次に蒸発により除去される他の包含材料により成膜されるテンプレーティング技術により多孔質を与えられる材料、およびミクロスフェアの懸濁液を成型することにより製造される多孔質材料などが挙げられる。
【0114】
ナノ多孔質PVA中への水摂取は、マトリクスの有意な膨潤に付随して起こった。初期乾燥マトリクスは高密度であり、閉塞空気をほとんど含まない。水摂取は、一部のケースにおいて5倍までの体積の有意な膨潤を引き起こす。これらの観察は、ゲルタイプマトリクスの周知の膨潤挙動と合致する。見本のポリビニルアルコールなどの膨潤性ゲルの多くの例は技術上公知であり、類似の挙動を有する。これらの他の例には、アガロース、ポリアクリルアミドおよびポリヒドロキシエチル・メタクリレートが挙げられるがそれらに限定されない。
【0115】
膨潤性ゲルマトリクスを用いる本発明の囲まれた親水性マトリクスデバイスは、それが、囲むガス透過性絶縁体が、また、親水性マトリクスが濡れると行う体積増大に適応するためにそれが延びることができるように、伸縮性であることを必要とするので、より好ましくない。膨潤性ゲルを用いる場合、我々は、絶対的な膨潤量を限定するために薄い親水性マトリクス層を用いることは好ましいことを見出してきた。我々は、5マイクロメートル未満の厚さ、なおさらによくは1マイクロメートルにある乾燥膜を選ぶ。
【0116】
我々は、図2の配置図(ガス透過性絶縁体が図1のデバイスにおけるようにこうして完全に囲まれる完全親水性マトリクス上に延ばされた図2に対する修正と共に)により作製される薄/厚膜組合せおよび薄膜の親水性マトリクスデバイスに関するさらなる水吸収研究を行った。基板は、光パターン化金電極を有する酸化ケイ素であった。厚膜デバイスのため、親水性マトリクス輸送通路は、150マイクロメートル厚さおよび500マイクロメートル幅掛ける1.1cm長さの型抜きしたマイクロ多孔質要素であった。通路要素をセルロース・ナイトレート/セルロース・アセテート(CA/CN)ディスク(MF−ミリポア(Millipore))から切り取った。通路要素を、湿潤剤および2mMのリン酸緩衝液塩を含有する溶液中につけて、次に乾燥した。薄膜デバイスのため、親水性マトリクス輸送通路は、湿潤剤およびpH7での2mMのリン酸アンモニウム緩衝液により含浸されたアセトン/水混合溶媒から成型されるセルロース・アセテートの光パターン化7マイクロメートル厚さの層であった。含浸段階を、セルロース・アセテート層が光形成ネガ型レジストにより蓋をかぶせられた後に行い、次に、軽くドライエッチングをしてセルロース・アセテートの緻密な皮膜層を除去し、その結果、含浸剤の孔中への輸送を可能とした。最終段階は、前述のようなセルロース・アセテートおよびレジストキャップのドライエッチングであった。このようにセルロース・アセテートを含浸するために用いられるすべての化学物質は、灰分を全く残さないドライエッチング性でなければならない。上述の中性湿潤剤(尿素、ソルビトール、アラニン・グリセロール)はすべて残留物なしのドライエッチング性である。ドライエッチング工程の前に添加される他の添加剤も、また、残留物なしのエッチング性でなければならない。従って、我々は、これらが酸素プラズマ処理において灰分残留物を残すので、金属イオン塩、金属イオン界面活性剤および金属イオン緩衝液を避けてきた。我々は、それらの代わりに、アンモニウム塩が一般的に残留物なしでエッチングを行うのでそれらを用いてきた。
【0117】
親水性マトリクスを、型抜きされた要素として組み立てられた25マイクロメートル厚さPDMS層か、またはステンシルを通して溶液から成型された薄いPI−PDMSかのいずれかにより囲った。ガス透過性絶縁体要素を基板、電極および通路上に位置づけ、完全に親水性マトリクスを囲った。デバイスをマイクロ流体フロー・セル中に組み立て、水をセルの中心室209中に導入した。親水性マトリクス通路は、囲むガス透過性絶縁体を通して蒸気輸送により水を吸収した。導電率対時間を、電極215および216間に脈動電圧+/−5Vをかけ、伝導電流を測定することにより測定した。
【0118】
上述のデバイスの乾燥親水性マトリクス202は、流体セルの室209中の外部水溶液の飽和水蒸気圧よりも低い初期内部水蒸気圧を有する。囲まれた親水性マトリクスによる水摂取のための駆動力は、この水蒸気圧差である。親水性マトリクス中への水流量は、ガス透過性絶縁体の透過度掛けるその間の差圧により決定される。差圧対時間は、内部水蒸気圧対時間により決定される。これは、順番に、親水性マトリクス中に吸収された水の量対時間、および湿潤剤および塩をまた含むことが可能であろう親水性マトリクス材料の水蒸気吸収等温線によって決定される。等温線は水蒸気圧に対する吸収された水の量に関係する。技術上公知のように、溶解化学物質の水溶液の水蒸気圧は、次には溶解化学物質のモル分率に応じて決まる溶液中の水の活動度に依存する。濃縮溶液における場合水と強く相互作用する一部の化学物質は、純水の水蒸気圧と比べて有意に水蒸気圧を低下させる。水蒸気圧と溶解化学物質の濃度間関係は周知であり、水溶液の特性に関して多くの本で表にされている(例えば、Electrolyte Solutions by Robinson R.A.and Stokes R.H.,Butterworths Publications Ltd.,1959を参照すること)。これらのデータは、本発明の囲まれた親水性マトリクス中への水摂取率を予測するために我々が用いてきたモデル用の基礎を形成する。100%濡れでの、親水性マトリクスの水性区画室中の添加湿潤剤の最終濃度は、最初に乾燥マトリクス中に搭載された全体乾燥量によって決まる。添加剤がソーク処理により組み込まれる場合、搭載しようとする量は元のソーク溶液の濃度によって決まる。
【0119】
表1に、我々は、親水性マトリクスの厚さおよびガス透過性膜の厚さの各種組合せ、および各種量の湿潤剤による種々のデバイス用の濡れデータを要約した。
【0120】
【表1】

【0121】
我々は、重量測定(濡れ前後のデバイスの重量差)および導電率変化により水摂取を測定してきた。我々は、濡れが完了する時間、t(100%)、ならびに50%の水組込みを達成する時間、t(50%)(50%重量変化または50%導電率変化)を表にした。我々は、また、我々が以下に述べる水吸収動力学のモデルから計算した濡れ時間を表にした。
【0122】
実験データおよびモデルは、水を親水性マトリクス中に組み込むための時間が湿潤剤搭載量の増大につれて減少することを示す。しかし、あまりにも大きすぎる搭載は、濡れた親水性マトリクスの電動学的機能を危うくする。電解質塩が湿潤剤として用いられる場合、有用な短い濡れ時間(<3600秒)に合致する塩の最終濃度は大きい(>100mM)。電解質を支持する大きなイオン強度(I)は、技術上公知であるように、I-0.5で拡大縮小する率での電動学的移動性を抑制する。また、電動学的輸送通路を通しての高電気伝導性は、ジュール加熱を引き起こすことが可能であり、また、電極の分極化を有意に増大させ、電極でのガス発生の危険にさらす。従って、電解質塩は湿潤剤として好ましくない。中性湿潤添加剤は、電動学的媒体の最終粘度を増大させる。しかし、迅速な濡れ時間と合致するレベルでの多くの中性添加剤の搭載量は、輸送媒体の粘度を有意に増大させないし、電動学的移動性をも減少させない。例えば、2Mでのソルビトール、8Mでの尿素、4Mでのグリセロールはすべて迅速な濡れを与え、粘度1を有する水性媒体に対して電動学的流量を2未満に減少させる。しかし、濃縮尿素溶液は、技術上公知のように、タンパク質および核酸を変性させる。従って、尿素は、タンパク質または核酸のポンピングが非変性化条件下で必要とされる場合の用途においては避けることが好ましい。
【0123】
我々は、水を組み込むために取られる時間が、ガス透過性絶縁体の厚さおよび親水性マトリクスの厚さの生成に直接関連していることを見出した。水摂取の速度は、囲むガス透過性膜の水蒸気透過度と共に増大する。実験の濡れ時間は、水蒸気.cm(バリア厚さ)秒-1cm-2(面積)cmHg-1(差圧)の約5x10-6cm3のPDMSの公表水蒸気透過度を用いる我々の水吸収モデルと合致する。水吸収モデルは、厚さdumHMマイクロメートルおよびPHM最終水部分体積(気孔率)の親水性マトリクス、および以下の式により湿潤剤Mモル/L水の最終モル濃度を含有する厚さdumGPIマイクロメートルの囲むガス透過性絶縁体を含む囲まれた親水性マトリクスデバイスの温度T℃での100%濡れまでの時間(t、秒)を予測する。
【化3】

式中、AおよびBは特定の湿潤剤およびガス透過性絶縁体に依存する定数である。PDMSを含むガス透過性絶縁体に対して、我々は、定数AおよびBに対する表中の値を得る。
【0124】
【表2】

【0125】
PI−PDMSコポリマー膜に対して、水蒸気透過度は、PDMSの約半分であり、濡れ時間は従って約2倍長い。表2に示される中性湿潤剤は類似の挙動を有する。一般的な気孔率(75%)の親水性マトリクス中2Mの最終モル濃度でのこれらの中性湿潤剤に対して、PDMSを通して濡れるまでの時間は、25Cで約10dumHMumGPI秒および50Cで3dumHMumGPI秒である。各種厚さを有する2M中性湿潤剤を有するデバイス用の近似の濡れ時間は、以下の表3に示される。
【0126】
【表3】

【0127】
要約すると、本発明の薄膜(d<10マイクロメートル)の囲まれた親水性マトリクスデバイスおよび回路は、原位置で迅速に濡らすことができる。厚膜デバイスは、一般的に、使用前に濡らさなければならず、多くの場合、高温の濡れ温度を必要とする。従って、我々は、50マイクロメートル厚さ未満の親水性マトリクスおよび10マイクロメートル厚さ未満のガス透過性絶縁体を有するデバイスを組み立てることを選択する。
【0128】
濡れた囲まれた親水性マトリクス輸送通路における電動学的輸送
我々は、濡れ後の親水性マトリクス材料の輸送特性を研究するために図2の構成を用いた。候補の親水性マトリクス材料を、平面基板上の輸送通路中に組み立て、表4中に並べられる方策により処理し、次に、さらに加工して図2に示されるような平面基板上に囲まれる親水性マトリクスデバイスを形成した。
【0129】
平面デバイスを、最初の平面基板の水中への浸漬次のマイクロ流体セル中への組立てによるか、または最初のマイクロ流体セル中への組立てそして次の水性流体をフローセルのすべての室中に導入することによる濡れによるかのいずれかで濡らした。我々は、ガス透過性膜を通しての水の組込み、およびまた親水性マトリクス通路のさらされた末端からの毛細管流動の両方により濡れを観察した。デバイスは、また、1:親水性マトリクスがセルロース・ナイトレートまたはセルロース・ナイトレート/アセテート混合物などの表面濡れ特性を有するマイクロ多孔質材料であり、および2:流体が最初に一つまたは両方の二つの外側の室に導入されその結果その末端での囲む絶縁体を通してのオリフィスで囲まれた親水性マトリクスに接触する場合に、毛細管流動により濡れる。流体がすべての三つの室中に導入される場合、同時に、親水性マトリクスの濡れは、囲む絶縁体を通しての水の透過、および囲む絶縁体を通してのオリフィスを通しての毛細管流動の両方により起こる。1:材料が毛細管流動をできないか、または2:最初に囲まれた親水性マトリクスと漬けられた流体を分離する空隙があり、囲む絶縁体中のオリフィス上でのマトリクスと漬けられた流体間の最初の接触が全くない場合、本発明の囲まれた親水性マトリクスデバイスのそれらの実施形態において、次に、濡れ用の唯一の通路は、囲む絶縁体を通しての透過によるものである。ただ一つのオリフィスを有する囲まれた親水性マトリクスデバイスの毛細管流動による完全な濡れ(以下に記載される注入器デバイスにおいて説明されるものなどの)は、初期の乾燥マイクロ多孔質親水性マトリクス中に含有される空気用の排出通路を必要とする。こうした排出は、囲むガス透過性絶縁体を通しての空気入替えの透過により起こる。囲む絶縁体がガス透過性でない場合、毛細管流動による水摂取量は、水が入ってくる時に内部空気が加圧され、どこにも逃げる所がないので、限定される。
【0130】
図2に示される濡れたデバイスに関する電動学的輸送実験において、我々は、最初に、供給源室208中にポンプ注入しようとする電解質を導入し、次に、いくつかの方法の内の一つで輸送通路を横切る電圧をかける。一つの実験において、我々は、供給源室中の電極217に動力を供給し、電極218を流出室209中に接地した。別の実験において、我々は、電極217に動力を供給し、電極216を流出末端に近い輸送通路中に設置した。我々は、流動を可視化するために多くの各種技術を用いた。一つの実験において、我々は、流出室を空にしてスタートし、次に、動力を供給源室電極217に提供し、通路電極216を設置し、流出室中に現れる水性流体を観察した。この実験において、我々は、ポンプ注入流体の電気浸透流動を定量化することができる。他の実験において、我々は、供給源室に染料を添加し、電動学的ポンピングの間輸送通路に沿ってのその通過流量を可視的に観察した。染料分子が投入されるので、このタイプの実験は、我々が正味の組み合わさった電気浸透および電気泳動輸送を定量化することを可能とした。第3タイプの実験において、我々は、それが完全に輸送通路を満たすまで、供給源室から第1導電率を有する第1電解質のポンピングをスタートすると共に、我々は輸送通路の導電率を測定した。次に、我々は、異なる導電率を有する第2電解質を供給源室中に導入し、輸送通路の導電率が輸送通路中の電気浸透流動により第1電解質を置き換える第2電解質としての新しい導電率を達成する時間を測定した。これらの実験において、我々は、電気浸透流量を定量化することができた。導電率過渡法の詳細な説明は、Ren et al.in Journal of Colloid and Interface Science,250,238〜242,2002により与えられる。染料可視化および導電率過渡実験を組み合わせることは、電気浸透および電気泳動の同時測定を可能とした。我々は、実験データを表4にまとめた。
【0131】
【表4】

【0132】
この表において、我々は、負供給極に関する輸送の方向を示す。有効電動学的移動度μeffは、電気泳動μepおよび電気浸透μeo移動度の和である。正(負)の移動度は、陰イオン(陽イオン)の電気泳動、または固定化された正(負)の表面電荷および負(正)の空間電荷により造りだされる電気浸透のせいで、負供給極からの(向けての)流出を示す。
【0133】
実験1
我々は、表4のデバイス番号1を評価した。2mMリン酸緩衝液の水溶液を室208中に、水を中央室209に導入し、流出室210は最初空であった。大きな電極217(これは供給源室208に近接して親水性マトリクス通路に接触した)と500マイクロメートルx500マイクロメートル寸法の接点を有する輸送路において親水性マトリクスに接触する電極216間に、電圧をかけた。かけた電圧は、通路に沿っての電解質の電動学的流動を駆動するための動力を提供した。電極215および218は電位計に接続されて通路に沿っての各位置での電圧を探知した。給与電圧が216で0Vに対して217上で+10Vである(輸送通路にわたる電圧降下は6Vであった)場合、電極316の分極は1.5V、電極317の分極は0.5V、電流は2マイクロ−アンペアであった。満杯の供給源室208から当初空であった流出室210への通路に沿って流体流れがあった。空の流出室210に集められる流体量対時間を、形成水滴の径対時間を監視することにより容量分析で推定した。我々は、このポンプに対して6Vで秒当り0.1マイクロリットルと推定した。これは、正の供給源電極から離れて流出室に至る約1x10-4cm2/Vsの推定電気浸透移動度をもたらした。
【0134】
親水性マトリクス通路が、供給源室中の動力用電極217と輸送通路中の216間の電動学的ポンピング領域、および動力用電極216と流体がそこを通して抵抗を持って流動するがしかし給与電圧は全くない流出室210間の領域を含むことには、注意を払うこと。マイクロ流体の専門用語において、これは負荷と呼ばれるであろう。この配置は、流出室がポンプ動力供給源に電気的に接続される必要はなく、従って、それは、本明細書において記載される一つとして構成される多数の独立に動力供給されるポンプにより供給することができるので、有利である。また、ポンプ注入しようとする材料を含有するリザーバ上流の囲まれた親水性マトリクスポンプを接続することは、今、可能である。この配置において、囲まれた親水性マトリクス輸送通路に流体的に接続されるポンプ電解質を含有する供給源リザーバを含むポンピング領域がある。供給源リザーバまたは供給源リザーバに近接する通路中の第1ポンピング電極および輸送通路中の第2ポンピング電極がある。通路は、さらに、第2ポンピング電極を越えてポンプ注入しようとする化学種を含有する囲まれた親水性マトリクス第2リザーバに流体的に接続される。第2リザーバは、流出室に流体的に接続される。この構成におけるデバイスの使用において、第2リザーバ中の材料は、第1リザーバから第2リザーバを通して流出室に至る通路に沿って電気浸透的に推進される流体によって押し上げられる。電気浸透型ポンプおよびその動力用電極は、従って、ポンプ下流のフィールドフリー領域中に存在するポンピング用材料から離される。
【0135】
小電極216が気泡放出なしで供給できる最大電流がある。気泡放出はポンプの安定運転にとって有害である。500マイクロメートルx500マイクロメートルの通路電極216を伴う500マイクロメートル幅x150マイクロメートル厚さ輸送通路を有するデバイスに対して、観測された2マイクロ−アンペアは、電極が水を水素ガスに陰極的に還元する前に対応することができる溶解酸素のカソード還元のせいで、216でのほぼ最大電流を示す。輸送通路中に位置付けられる小電極により運転するデバイスに対して、最大ポンプ動力は、従って、酸素還元により限定されるポンプの最大電流により決定される。より高い動力運転に対して、支持電解質の濃度はより低くすることができるか(伝導電流を減少させるため)、または中性溶解酸化剤(これは電極216でカソード的に還元することができる)は、親水性マトリクスに添加することができる。正の固定電荷および正のゼータ電位を有する親水性マトリクスポンプに対して、ポンピング電圧は上述の逆である。この場合に、小通路電極216はアノードである。親水性マトリクスに添加される酸化還元性材料がない場合、限界ポンプ電流は気泡形成なしでの酸素放出最大流量により提供されるものである。再度、約2マイクロアンペアの電流は気泡放出が起こる前に供給することができる。より高い動力運転に対して、支持電解質の濃度は低くすることができるか、または中性溶解還元剤(これは電極216でアノード的に酸化することができる)は、親水性マトリクスに添加することができる。
【0136】
乾燥親水性マトリクスの濡れを可能とする囲むガス透過性絶縁体がまた、酸素に対しても透過性であることは、酸素還元(放出)によりカソード(アノード)として機能する輸送通路中の小電極を有する上述のデバイスにとって有利である。我々は、囲むガス透過性絶縁体層を通して酸素の側面透過がある場合、層が酸素に対して透過性でない場合に起こるであろうよりも、電極に至るまたはそこからの酸素の有意により大きい拡散流束が生じることを計算してきた。従って、こうしたデバイスは、別の方法で可能であるであろうよりも、気泡放出前により大きなポンプ電流を支援することができる。
【0137】
電極の寸法が小型化されるので、ますます多くの電気化学電流が電極周辺への酸化還元分子の側面拡散により供給されることは、微小電極技術分野において周知のことである。このように、本発明のデバイスが小型化されるので、電流を送達する電極の効率も、また、向上する。ガス透過性層を通しての酸素の側面輸送による電流容量の相対的な増加も、デバイスの寸法が小型化されるにつれて増大する。
【0138】
実験ii
我々は、多孔質材料のゼータ電位を調整するために、界面活性剤の使用を調査した。表4のデバイス2に関する輸送実験において、我々は、未処理のマイクロ多孔質のセルロース・アセテート/セルロース・ナイトレートマトリクスが、孔表面上の固定化負電荷のせいで低ゼータ電位を有し、一部の電気浸透ポンピングが起こることを見出した。我々は、溶液成形されたマイクロ多孔質セルロース・アセテートを含む表のデバイス7を用いて行われる輸送実験に関する類似の結果を得た。
【0139】
我々がトリトンTX−100などの非イオン性界面活性剤を親水性マトリクス中に組み込む場合(表4のデバイス3および5)、孔表面上での非イオン性界面活性剤の吸着はゼータ電位を抑制することが見出され、マイクロ多孔質材料は電気浸透ポンピングに対してより活動的でなくなる。我々は、電気泳動のみによって陰イオンレッド染料の最速流量を観察した。デバイス3および5に関する輸送実験において観察される移動度の比較は、デバイス5対デバイス3における運転緩衝液のより高いイオン強度でより低い電気泳動および電気浸透移動度を示した。
【0140】
我々が硫酸ドデシルアンモニウム(AMS)などの陰イオン界面活性剤を親水性マトリクス中に組み込む場合(表4のデバイス4および6)、荷電陰イオンを吸着した孔表面およびマイクロ多孔質材料は、電気浸透ポンピングに対してより活動的となり(正極から離れる方向に)、陰イオン染料電気泳動に対して反対になる。こうした処理親水性マトリクスのゼータ電位は、−10〜−20mVの範囲にあると推定された。染料の正味の有効流動は一段と遅く、電気泳動単独に対して反対方向にさえあった。デバイス4および6に関する輸送実験において観察される移動度の比較は、デバイス6対デバイス4における運転緩衝液のより高いイオン強度でより低い電気泳動および電気浸透移動度を示した。
【0141】
あるいは、シリコン毛細管デバイス(Lucy et al.Anal.Chem.68(2),300〜305,1996)において以前に記載されていたように、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)などの陽イオン界面活性剤が親水性マトリクス中に組み込まれる場合、孔表面は荷電陽イオンを吸着でき、マイクロ多孔質材料はその負のゼータ電位を失い、中性電荷またはやや正にさえなることができ、その結果正極に向けての方向における電気浸透に対して活動的となる。
【0142】
我々は、マイクロ多孔質親水性マトリクスの孔表面上への界面活性剤の吸着により電気浸透のために必要な表面電荷を調整することは便利であることを見出してきた。表面電荷を生みだすかまたは修正するために表面上に吸着する技術上公知の多くの界面活性剤がある。また、表面電荷を導入するために同じようにうまく用いることができる技術上公知の多くの他の方法がある。これらには、化学的方法(例えば、Kumar et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,19,1〜31,1993を参照すること)、表面接着および誘導体化法(例えば、Ma et al.,Macromolecules,33,331〜335,2000を参照すること)、プラズマ修正法(例えば、Poncin−Epaillard et al.,J.Appl Polymer Science.,44,1513〜1522,1992を参照すること)、および荷電実体の物理的包括法(例えば、Wroblewski et al.,Sensors and Actuators,48,471〜475,1998を参照すること)などが挙げられる。技術上公知のあらゆる方法は、本発明の親水性マトリクスデバイスのマイクロ多孔質表面の表面電荷を導入するかまたは修正するために用いることができる。また、技術上公知であるように、荷電表面は、特に、輸送しようとする試薬が孔表面上の電荷に反対の電荷を有する場合、輸送しようとする試薬の吸着を引き起こすことができる。
【0143】
試薬が親水性マトリクスデバイスの電動学的ポンピング領域中にあり、ポンピングが電気浸透による場合、本発明のそれらのデバイスにおいて、表面電荷の量的および化学的性質は、電気浸透流動を誘発するがまだ孔を通して輸送しようとする試薬の有意な吸着を引き起こさないために十分でなければならない。従って、これらのデバイスにおいて、我々は、表面電荷を誘発するための最適処理が、ポンプ注入しようとする試薬を最小に吸着する表面をもたらす方法を利用すると共に、この方法はおそらく輸送しようとする化学種に対して特定的であることを信じる。ポンプ注入しようとする試薬が注入器の流出端に近接し、電動学的ポンピング領域を越えて離れた第2リザーバ中にある本発明の他のデバイスにおいて、ポンプ領域の孔表面の表面電荷は、ポンプ注入しようとする試薬との相互作用を考慮する必要性なしで上に列挙したあらゆる表面処理により調整することができる。
【0144】
囲まれた輸送通路およびリザーバを含む囲まれた親水性マトリクス注入器を用いる微細位置に対する流体i/o
集積化トップ・サイド電極を有する囲まれた親水性マトリクスデバイスの別の実施形態を図3に示す。この実施例の注入器−ポンプデバイスは、本発明の集積化流体i/oを有するマイクロ反応器アレイの基本的な構築物である。
【0145】
この実施例において、我々は、酸化シリコン基板上にデバイスを組み立てた。基板上に、前述の方策の通りに組み立てられた0.2マイクロメートル厚さの光パターン化金である4個の離れた電極315、316、317および318があった。7マイクロメートル厚さのマイクロ多孔質セルロース・アセテート親水性マトリクスを、前述の処理手順の通りにスピンコートし、光形成し、含浸した。表5に示す試薬により含浸した。含浸塩、界面活性剤および湿潤剤を含むマイクロ多孔質膜を、離れた電極に接触する要素中に形成した。形成された親水性マトリクスの一端で、その流出端から離れたリザーバの一端で三ヶ月形の電極315に接触する円形のリザーバ領域304があった。リザーバ領域は、その長さに沿って電極317および318に接触する輸送通路領域302の一端に接触した。円形リザーバから狭い輸送通路への移行を、ポンピングの間の圧力ホットスポットを避けるために先細とした。輸送通路302は、電極317とのその接触の領域を越えて流出端305を有した。次に、我々は、表5に示すように水中に溶解した材料の既知の投与量の容量分配によりリザーブ領域中へのポンピング用の材料を正確に置いた。マイクロ多孔質親水性マトリクスが十分に濡れた後、投与量を計算して、表中に示されるリザーバ中の最終濃度を与えた。最終的に、親水性マトリクスをガス透過性層303により被覆した。層303を、305での輸送通路の流出端を除いて、それを完全に囲む親水性マトリクス上に形成した。二つの被覆法を用いた。この実施例の薄/厚膜版において、我々は、型抜きした25マイクロメートル厚さのPDMS膜を組み立てた。この実施例の薄/厚膜版において、我々は、トリクロロエチレン中の20%溶液からのステンシルを通して10マイクロメートルのPI−PDMSを被覆した。
【0146】
平面基板および囲まれた親水性マトリクスデバイスを、平面基板300とポリカーボネートの共平面スラブ307の間に挟まれたエラストマーガスケット306により規定される流体室308を含むマイクロ流体セル中に組み立てた。室を、入口配管309および流出配管310を通して流体的に接続した。水溶液をシリンジ350により室中に注入した。その一端が注入器の流出末端305の真上のポリカーボネートスラブ307中に位置付けられる光ファイバー束320があった。ファイバー束320の他端を光測定用のダイオード光検出器(示されていない)に接続した。
【0147】
我々は、モデルの化学発光系を用いて囲まれた親水性マトリクス注入器のポンピング特性を調査した。我々は、以下の化学発光反応を我々のモデル系として用いてきた。
【化4】

アッセイ試薬をシグマ・ケミカル(Sigma Chemical Co.)から得た。このモデル系は、前述の通りに本発明の多くの創意工夫に満ちた実施形態において有用である。
【0148】
このアッセイの一つのフォーマットにおいて、我々は、それらのリザーバ中にATPを有する注入器を調製した。デバイスを、前述のように7マイクロメートル厚さの溶液成形セルロース・アセテート親水性膜により組み立てた。また、前述のように、試薬がマトリクスに添加される二つの処理段階がある。第1のウエハーレベルソーク処理において、パターン化親水性マトリクス構造のアレイをソーク溶液にさらして、材料を全体マトリクス(リザーバおよび通路)中に含浸させる。マトリクスをガス透過性絶縁体中に囲む直前に、第2処理段階を行う。この処理において、ポンプ注入しようとする試薬および追加の他の試薬を、微細分配処理により水溶液からリザーバ領域中へ正確に置く。表5に我々がこれらの実験集積化ATP注入器において用いた種々の方策をまとめる。
【0149】
組立て後、注入器を図3に示すようにフロー・セル中に取り付け、ルシフェリンおよび酵素ルシフェラーゼを含有するアッセイ混合物を、シリンジ350から管路309を通して流体室308中に導入した。集積化流体i/o注入器を、ガス透過性絶縁体を通しての水吸収により濡らす。濡れた後、その活性状態にある注入器デバイスは、今、ATPを反応室中に注入することができる。ATPを、基準に対してリザーバ電極315に電圧をかけることによりリザーバから反応器中に注入した。外側電極は溶液316中かまたは通路電極の一つで通路中にあることができる。反応が全くない(ATPがない)場合に基線光レベルを記録し、次に、ATPがリザーバ304から反応室308中に注入されるにつれて時間と共に監視した。
【0150】
【表5】

【0151】
図4Aは、一般的な実験生物発光の光曲線を示す。実験のスタートで光レベルは基線にある。40秒で、リザーバ電極は反応器における基準に対して−10V励起される。電圧を60秒間にわたりかける。電圧がかけられた後と光強度が増大し始める前に遅延時間がある。これがリザーバから流出末端までの注入器の通路に沿ってATPをポンプ注入する時間である。この時間遅れは、線形ポンプ速度従って有効な電動学的移動度の推定を可能とする。注入器が多順次添加用に用いられる場合、ポンプの通路がすでにATPにより準備されているので、遅れ時間は全くない。線形ポンプ速度掛ける単位長さ当りの注入器通路体積掛ける注入器中のATP濃度は、秒当りのポンプ注入しようとするATPのモル数を与える。ATPの秒当りのモル掛けるポンピング時間は、反応器中へ注入されるATPの全体投与量を与える。注入器の通路の流出末端に到着するATPは、流出末端領域中の反応室の約1マイクロリットル体積中で、および直接光ファイバー光コレクタ下でアッセイ試薬との生物発光反応を引き起こす。
【0152】
光強度対時間曲線下の面積は、光に転換したATPの全体モル数に比例する。用量反応曲線は、各種量のATPを反応器中に注入することにより生みだすことができ、光出力を測定する。我々は、2種類の試験を行った:一定電圧および変動時間でのATP添加用の用量反応曲線、および変動ポンプ電圧でのATP添加用の用量反応曲線。
【0153】
用量反応曲線は図4Bのグラフに示される。このグラフにおけるデータは表5のデバイス番号1で得られた。このデバイスを100mMでのATPにより含浸されたリザーバからATPを注入するために用いた。この実験において、我々は、10-14モルほどの低いもの(100mM濃度で0.1pL全体注入体積)から10-9モルまで(100mM濃度で10nL注入体積)のATP投与量を注入することができた。輸送通路をセルロース・アセテート孔表面上のCTAC陽イオン吸収により処理してきた。ATP輸送を、反応室における基準に対して−1〜−10ボルト範囲にある負の電圧をリザーバ電極にかけることにより達成した。電動学的輸送は、おそらく、リザーバから注入器の流出末端までの通路に沿っての方向における電気泳動および電気浸透の両方によるものであった。電極315と316の間にかけられた−10Vにより、通路302に沿っての線速度は、それを横切る6.5ボルト(探針電極317と318間で測定した)での3mm長さの通路に沿って22ミクロン/秒であり、約7pL/秒の体積ポンプ流量(65マイクロメートル幅x7マイクロメートル厚さx70%気孔率輸送通路に対して)および0.7pモル/秒のATP注入流量をもたらした。−2V印加により、線速度は、通路を横切る0.6ボルトの電圧降下を伴って約2ミクロン/秒であり、0.7pL/秒の体積ポンプ流量および70fモル/秒のATP注入流量をもたらした。有効電動学的移動度は1.04x10-4cm2/Vsであった。用量反応曲線は、図4Bに示されるように測定範囲にわたり直線であった。
【0154】
表5のデバイス2を用いる別の実験において、我々は電動学的ポンピングの電圧依存性を調査した。このデバイスの輸送通路をTX非イオン性界面活性剤により処理した。従って、我々は電気浸透がほとんどないか全くないことを予想できた。我々は第1の低カソードリザーバ電圧でのATPの投与量を注入し、光出力を記録した。次に、我々は第2のより大きなカソード電圧での第2のATP投与量を注入し、第2光出力を記録した。我々は、次第に給与電圧を上げていってより大きなATP投与量を注入し、各電圧での光出力を測定して用量反応曲線を作成した。図4Cに、我々はこの実験の結果を示す。このグラフにおいて、我々は、注入時間で割った所定の注入に対する光強度をプロットしてポンプ流量対給与電圧を得た。ポンプ速度は、−40ボルトまでは給与電圧に比例する。−40ボルトを超えると光量は次第に減少した。我々は、低給与電圧で我々が主として電気泳動的にポンプ注入されたATPを測定していたことを信じる。−40ボルトを超えると、リザーバ中のカソードに向う方向に電気浸透が起こり、その結果有効なATP流出量を減じた。
【0155】
別の実験において、我々は表5のデバイス3を用いた。このデバイスの輸送通路をADS陰イオン界面活性剤により処理した。従って、我々は電気浸透および電気泳動が反対方向にあると予想した。我々は、我々がリザーバ電極に+100ボルトをかけるまではATPを見ることは全くなかった。この給与電圧で、我々は注入器からの正味のATP電気浸透流出量、50fモル/秒を見た。有効電動学的移動度は7x10-5cm2/Vsであった。
【0156】
上の一連の実験からの結論は、図3構成の集積化流体注入器設計の最善の態様が、電気泳動および電気浸透が協調的であるように、注入器の輸送通路内の固定化電荷がポンプ注入しようとする試薬上の電荷に対して反対にあるように調整することにある、ということである。ポンプ注入される試薬が中性である場合には、固定化電荷のサインはいずれでも許容可能である。
【0157】
上述の注入器構成は、供給源リザーバが完全に囲まれるので、従来型のマイクロ流体配置とは有意に異なる。リザーバは空気抜きされないので、流体が注入器の輸送通路を通して電動学的に排出されるにつれて背圧が立ってくるであろう。我々は、リザーバが電解質体積で使い果たされるので注入器のリザーバが固定次元を有する場合、減圧下での気体体積の結果になると計算してきた。典型的な例として、リザーバが当初10%空気空間を含有する場合、我々はリザーバ体積の5%をポンプ注入し、約0.5気圧の背圧を達成することができる。従って、当初の乾燥親水性マトリクスの濡れを可能とするガス透過性絶縁体がまた空気に対しても透過性であることは、本発明の注入器にとって重大な利点となる。この場合に、リザーバからの電解質の電動学的排出による体積置換に基づく背圧は、囲むガス透過性絶縁体を通しての透過により空気がリザーバを埋め戻すので低減する。PDMSの空気透過度の公表値を用いての我々の計算において、我々が、空気流入量が常に十分に高いという理由により、背圧蓄積なしで一般的な電動学的流動を達成することができることを、我々は決めてきた。
【0158】
背圧に対する十分な電動学的ポンピング力を提供することができる親水性マトリクス材料を有するこうした空気抜きのない密閉ポンプを設計することは、明確に、必要である。毛細管電動学的ポンプの技術分野において、背圧に対してポンプ注入する能力が、毛細管次元が小さくなるほど上がることは周知のことである。従来型の実験室チップ・マイクロ流体デバイスにおいて用いられているような、荷電壁を有する開放型の50マイクロメートル径毛細管または溝は、背圧に抗してポンプ注入するためには限定された能力を有する。ナフィオンなどのナノ多孔質材料は、大きな背圧に抗してポンプ注入することができるが、しかし、ポンプ注入体積は小さく、電流は大きい。50nm〜5マイクロメートル範囲にある孔径を有するマイクロ多孔質材料が適しており、且つそれらが背圧に抗して運転でき、有用なポンプ注入体積を送達することができるという理由で100nm〜1マイクロメートルが好ましいことを、我々は見出してきた。
【0159】
さて、我々は、実用的なバイオアッセイ用途において利用することができるマイクロ反応器および囲まれた親水性マトリクスデバイスを含む流体i/oのなお他の可能な構成を説明する。我々は、囲まれた親水性マトリクスデバイスを利用する特定の創意に富む流体i/oデバイスを、以下に、さらに詳細に列挙する。
【0160】
図5において、ICカード用のチップモジュールの製造において用いられるような積層金属化によるダイスタンプ孔を有するエポキシホイルシートを、集積化電極および裏側接触を有する囲まれた親水性マトリクスデバイスを組み立てるために用いることができる。ICカードタイプの積層板のための材料および方法は、また、同時係属出願第09/871,823号に記載されてきた。
【0161】
集積化裏側電極を有する囲まれた親水性マトリクス注入ポンプは、図5に示される。このデバイスにおいて、ホイルを通して型抜きされた穴501、502を有する平面絶縁性エポキシ基板ホイル500がある。下側は、光パターン化されて電極接触要素503、504を形成し、次に金と共にプレート化される銅ホイルにより既に積層化していた。この方法は、パンチ穴および接触金属パターンのレイアウトが本発明による電動学的デバイスにおける使用のための技術に適合するように修正されることを除いて、ICカードチップモジュールの製造においてうまく確立されている。エポキシホイルの上側には、輸送通路506中に形成される親水性マトリクスおよびリザーバ領域520がある。親水性マトリクス成分507および508は、穴501および502を通して電極503および504に接触し、また、通路506に沿っておよびリザーバ520で親水性マトリクスに接触する。ガス透過性絶縁体層509は、親水性マトリクス要素506、520、507、508上に被覆され、その結果、親水性マトリクス回路を囲む。要素506の領域510は未被覆のまま残される。これは、囲まれた親水性マトリクス注入ポンプの流出オリフィスである。モジュールは流体溝512および513を含むカード・ハウジング511中に密閉される。使用において、囲まれた親水性マトリクスポンプを濡らすための水溶液を溝512に供給し、反応物質溶液を511に供給する。電極503と504間に電圧をかけてオリフィス510を通して試薬含有流体を反応物質流中に押し上げる。
【0162】
図6〜8は、集積化化学試薬を反応部位に供給するための微細反応部位および多隣接注入器を含む微細位置を有するデバイスを示す。発明者は、マイクロ反応器およびマイクロ反応器に集積化試薬を供給する多隣接流体i/oを必要とする多くの可能なバイオアッセイフォーマットを予想している。従って、図は、いかに1を超える集積化試薬注入器をマイクロ反応器周りに接続するかを実証するデバイス構成を記載している。本構成は、また、より広い範囲のデバイス性能を可能とする一部の追加の設計態様を示す。
【0163】
図6は、微細位置の少なくとも一つ、できればアレイを含む平面デバイスの単一微細位置を示す。
【0164】
図6Aは平面概略図であり、図6Bは図6Aの断面ABB’A’を通しての側面概略図である。2組のポンプ対602、603および604、605を含む4個の離れた電極を有する平面絶縁性基板601の微細位置600がある。オーバーレイ親水性マトリクスに対して接触がなされる開口部607、608、609および610箇所を除いて、電極を覆う平面基板上に絶縁体606がある。電極は、動力を電極に提供する外部回路に平面デバイス上の他のどこかで接続する(示されていない)。
【0165】
それぞれがリザーバに接続する1端および別の流出端を有するリザーバおよび輸送通路を含む、二つの形成された親水性マトリクス流体注入器がある。各リザーバは少なくとも一つのポンプ注入しようとする化学試薬を含有し、各リザーバ中の試薬は異なることができる。第1注入器は、電極603の開口部608上にそのリザーバ612、およびその流出端に近接する電極602に開口部607を通して電気接触し、流出端Bに位置するマイクロ反応器616にリザーバ612を流体的に接続するその輸送通路611を有する。第2注入器は、電極605の開口部610上にそのリザーバ614、およびその流出端に近接する電極604に開口部609を通して電気接触し、流出端B’に位置するマイクロ反応器616にリザーバ614を流体的に接続するその輸送通路613を有する。ガス透過性絶縁体615はオーバーレイし、マイクロ反応器位置616での開口部があるそれらの流出端箇所を除いて、流体注入器の各部を完全に囲む。
【0166】
このデバイスの使用において、平面微細位置を水性流体と接触させる(例えば、図6Bに示される微細溝617中に含有させるが、しかし、同じ可能性で、当該技術分野のマイクロウエルまたは他の従来型流体室中に含有させる)。水蒸気はガス透過性絶縁体615を通して透過し、囲まれた親水性マトリクス注入器を濡らす。溝617中の水性流体または溝の中に続けて導入される他の水性流体は、マイクロ反応器616で反応しようとする試料ならびに他の試薬を含有することができる。この時間帯、注入器を流体的に反応器に接続する。従って、注入器がそれらそれぞれの電極により動力を与えられる前に、注入器リザーバ中の化学試薬が輸送通路に沿って拡散により反応器中に移動する機会がある。接地された602および604に対して603および605に電圧をかける場合、注入器内流体の電気浸透駆動がある。注入器の流出端から押し出される流体は、囲まれた親水性マトリクスのリザーバ内に含有される集積化試薬を反応器中に運び込む。注入器の輸送通路に沿っての試薬の電気浸透輸送は、輸送通路が中で試薬リザーバとマイクロ反応器間で100マイクロメートルよりも長いデバイスにおける拡散輸送よりも一段と速い。従って、電気浸透ポンプ動力が供給されるまでは、マイクロ反応器中への試薬漏洩はほとんどないかまたは全くない。
【0167】
図7は、図6の多注入器デバイスの変形であり、拡散停止を含む。図7は、微細位置の少なくとも一つ、できればアレイを含む平面デバイスの単一微細位置を示す。図7Aは平面概略図であり、図7Bは図7Aの断面ABB’A’を通しての側面概略図である。2組のポンプ対702、703および704、705を含む4個の離れた電極を有する平面絶縁性基板701の微細位置700がある。接触がオーバーレイ親水性マトリクスになされる開口部707、708、709および710箇所を除いて、電極を覆う平面基板上に絶縁体706がある。電極は、動力を電極に提供する外部回路に平面回路上の他のどこかで接続する(示されていない)。
【0168】
それぞれがリザーバ、およびリザーバに接続する1端および別の流出端を有する輸送通路を含む、二つの形成された親水性マトリクス流体注入器がある。各リザーバは少なくとも一つのポンプ注入しようとする化学試薬を含有し、各リザーバ中の試薬は異なることができる。第1注入器は、電極703の開口部708上にそのリザーバ712、および流出端に近接する電極702に開口部707を通して電気接触し、流出端Bに位置するマイクロ反応器716にリザーバ712を流体的に接続するその輸送通路711を有する。第2注入器は、電極705の開口部710上にそのリザーバ714、および流出端に近接する電極704に開口部709を通して電気接触し、流出端B’に位置するマイクロ反応器716にリザーバ714を流体的に接続するその輸送通路713を有する。マイクロ反応器領域は、また、親水性マトリクス716を含む。親水性マトリクス輸送通路711および712の流出端を空隙720および721により反応器の親水性マトリクスから分離する。ガス透過性絶縁体715はオーバーレイし、空隙720および721を含む流体注入器の各部を完全に囲むが、しかし、マイクロ反応器位置716の親水性マトリクス上の空隙を越えて囲む絶縁体中に開口部がある。
【0169】
このデバイスの使用において、平面微細位置を水性流体と接触させる(例えば、図7Bに示される微細溝717中に含有されるが、しかし、同じ可能性で、当該技術分野のマイクロウエルまたは他の従来型の流体室中に含有される)。水蒸気はガス透過性絶縁体715を通して透過し、囲まれた親水性マトリクス注入器を濡らす。溝717中の水性流体または溝の中に続けて導入される他の水性流体は、マイクロ反応器716で反応しようとする試料ならびに他の試薬を含有することができる。この時間帯、注入器は空隙720および721のせいで流体的に反応器に接続されない。従って、注入器がそれらそれぞれの電極により動力を与えられるまで、注入器リザーバ中の化学試薬が反応器中に移動する機会は全くない。接地された702および704に対して703および705に電圧をかける場合、注入器内流体の電気浸透駆動がある。注入器の流出端から押し出される流体は、空隙を置き換え、次に、注入器を流体的に反応器に接続し、こうして、囲まれた親水性マトリクスのリザーバ内に含有される集積化試薬を反応器中にポンプ注入する。こうした設計は、注入器の寸法が小型化されるので、特に価値がある。短い輸送通路(例えば、リザーバと反応器間の100マイクロメートル未満の距離)を有する注入器に対して、拡散停止として機能する空隙が全くない場合、リザーバから反応器中への試薬の有意な拡散漏洩があることができる。
【0170】
図8は、図6の多注入器デバイスの別の変形であり、リザーバから隣接マイクロ反応器中に流体および試薬を押し出すポンプ下流の試薬リザーバを含む。図8は、微細位置の少なくとも一つ、できればアレイを含む平面デバイスの単一微細位置を示す。図8Aは平面概略図であり、図8Bは図8Aの断面ABB’A’を通しての側面概略図である。2組のポンプ対802、803および804、805を含む4個の離れた電極を有する平面絶縁性基板801の微細位置800がある。オーバーレイ親水性マトリクスに対して接触がなされる開口部807、808、809および810箇所を除いて、電極を覆う平面基板上に絶縁体806がある。電極は、動力を電極に提供する外部回路に平面回路上の他のどこかで接続する(示されていない)。
【0171】
ポンプリザーバ812および814、およびそれぞれがポンプリザーバに接続する1端および別の流出端を有する輸送通路811および813を含む、二つの形成された親水性マトリクス流体注入器がある。各注入器における輸送通路の流出端に近い位置に、試薬リザーバ820、821がある。各試薬リザーバは少なくとも一つのポンプ注入しようとする化学試薬を含有し、各リザーバ中の試薬は異なることができる。第1注入器は、電極803の開口部808上にそのポンプリザーバ812、およびポンプリザーバ812を試薬リザーバ820に、次に流出端Bに位置するマイクロ反応器816に流体的に接続するその輸送通路811を有し、流出端に近いがしかし試薬リザーバ820の上流に位置する電極802に開口部807を通して電気接触する。第2注入器は、電極805の開口部810上にそのリザーバ814およびポンプリザーバ814を試薬リザーバ821に、次に流出端B’に位置するマイクロ反応器816に流体的に接続するその輸送通路813を有し、流出端に近いがしかし試薬リザーバ821の上流に位置する電極804に開口部809を通して電気接触する。ガス透過性絶縁体815はオーバーレイし、マイクロ反応器位置816に開口部があるそれらの流出端箇所を除いて、流体注入器の各部を完全に囲む。
【0172】
このデバイスの使用において、平面微細位置を水性流体と接触させる(例えば、図8Bに示される微細溝817中に含有されるが、しかし、同じ可能性で、当該技術分野のマイクロウエルまたは他の従来型の流体室中に含有される)。水蒸気はガス透過性絶縁体815を通して透過し、囲まれた親水性マトリクス注入器を濡らす。溝817中の水性流体または溝の中に続けて導入される他の水性流体は、マイクロ反応器816で反応しようとする試料ならびに他の試薬を含有することができる。接地された802および804に対して803および805に電圧をかける場合、注入器内流体の電気浸透駆動がある。ポンプリザーバから押し出される流体は、注入器流出端を通して試薬リザーバ内に含有される試薬をマイクロ反応器中に押し上げる。注入器流出端から外に放出される材料は、試薬リザーバ内に含有されるものである。この設計は、注入器のポンプリザーバおよび注入器の輸送通路の内容物が、反応器中にポンプ注入しようとする試薬または反応器中で起こるバイオアッセイ反応と適合しない場合の例に、特に適する。この不適合は、二つの方法の内の一つにおいて明らかにすることができる。第1に、ポンプを効率よく運転することを必要とする材料がバイオアッセイ反応に対して有害である場合、それらが注入器の流出端から放出されることは好ましくない。ポンプリザーバおよび通路は、例えば、注入器のポンピング特性を最適化するために必要である湿潤剤、酸化還元材料および緩衝塩を含むことが可能であり、一部またはすべてのこれら材料はバイオアッセイ反応に対して有害であることが可能である。第2に、ポンプ注入しようとする試薬は、それ自身、ポンプの効率的な運転に対して有害であることが可能である。例えば、試薬は高イオン強度であることが可能であるか、または、それは、輸送通路の親水性マトリクスの壁上で吸収することが可能であり、その結果ポンプの電気浸透係数を減じるか、または試薬の電気泳動輸送を減じる。ポンプ注入しようとする試薬は、電気活性であり、ポンプ電極の一つで電気化学的に反応することが可能である。試薬リザーバが注入器の二つのポンピング電極間に生み出される電場領域の外側にあるので、バイオアッセイを行うために反応器中にポンプ注入するために必要な試薬リザーバの内容物は、ポンプの効率を危うくしないですむ。
【0173】
図1〜3に概略的に示され、さらに上に使用した実施例において記載されるデバイスは、いかに囲まれた親水性マトリクス回路が室および管路を含む多くの各種従来型流体成分と組み合わせることができるかを実証する。囲まれた親水性マトリクスデバイスを用いて可能である流体回路配置の範囲、およびいかにこうしたデバイスを従来型の流体要素と組み合わせることができるかをよりよく理解するために、我々は、さらに詳細なデバイス構成およびそれらの使用態様を、以下に記載する。
【0174】
図9Aは平面概略図における一つの実施形態を説明する。本発明のデバイスは、単一の微細位置903、または、図に示されるような、化学反応を行うための微細位置のアレイ900である。アレイの微細位置は、少なくとも一つのマイクロ反応部位905、および1以上のポンプおよび輸送通路906を介してマイクロ反応器(複数を含む)に接続される試薬リザーバ領域904からなる集積化ナノ流体i/oデバイスから構成される。ナノ流体i/oデバイスは、囲まれた親水性マトリクス回路である。矢印906により概略的に示されるように、流体のナノリットル体積は各マイクロ反応器から引き出されるか、または隣接リザーバからその中に注入することができる;それゆえに用語ナノ流体i/oである。図9Aは、また、1以上のポンプおよび輸送通路902を介してアレイ900に接続される試薬リザーバ901からなるマイクロ流体i/oデバイスを示す。流体のより大きなマイクロリットル体積は各アレイから引き出すか、または隣接リザーバからそれに供給することができる;それゆえに用語マイクロ流体i/oである。マイクロ流体i/oデバイスは、囲まれた親水性マトリクス回路である。使用の間、少なくともデバイスの平面上部表面または図9のアレイの少なくとも一部を、アッセイしようとする試料を含む少なくとも一つの水溶液に接触させる。
【0175】
図9Bは、さらに詳細に、マイクロ反応器周りのナノ流体i/oの配置を示す。それぞれ通路908、910および912に沿ってマイクロ反応器905への流体入力に対するポンプ注入された試薬を含有するリザーバ907,909および911のアレイが示される。発明者は、リザーバおよびマイクロ反応器周りの独立に制御されるポンプの数は、行われようとするアッセイのフォーマットにより決定されようとする各種バイオアッセイ・デバイスにおいて異なることを予想する。また、図9Bに示されるものは、マイクロ反応器から排水室として機能するリザーバ913に流体を引き出すための通路914である。加えて、マイクロ反応器から分離デバイス915に、次に通路918に沿って排水部917に流体を引き出すための任意の通路916が示される。試薬リザーバ907、909、911、分離器915、排水領域913、917および領域を相互連結する通路918および領域をマイクロ反応器に接続する通路908、910、912、914、916からなる領域が、集合的に、囲まれた親水性マトリクスデバイスを含むナノ流体i/oを構成する。ナノ流体i/o要素の数およびタイプおよびそれらの配置は、アッセイフォーマットにより決定される。
【0176】
図10Aは、少なくとも一つのマイクロ反応器1002およびポンプ注入された試薬リザーバ1001および輸送通路1003を含む流体i/oを含む微細位置1000の平面概略図を示す。図10Aには断面A−A’がまた示されている。図10B〜Dは、本発明によるマイクロ反応器および流体i/oの種々の配置を有する、図10Aの断面A−A’を通しての側面概略図を示す。図10Bは、試薬リザーバ領域1001およびマイクロ反応器1004に接続する通路1003を有する平面絶縁性基板1010の概略図を示す。絶縁体1011、囲む領域1001および通路1003がある。領域1001および通路1003は親水性マトリクスからなる。領域1001は乾燥試薬を含有するリザーバである。水蒸気輸送ができる絶縁体1011の少なくとも一部があり、その結果、使用の間または前に、初期乾燥親水性マトリクス1001および1003の濡れを容易にする。濡れは、デバイスの上部表面の少なくとも一部を、少なくとも一部の1011を通して親水性マトリクス中に浸漬する水溶液からの水の輸送により起こる。親水性マトリクス領域1001および通路1003および囲む絶縁体1011は、一緒に、本発明による囲まれた親水性マトリクス回路を構成する。図10Bの実施形態において、マイクロ反応器1004は、絶縁体1011中の開口部により平面表面上に規定されるマイクロウエルである。
【0177】
図10Cは、マイクロ反応器および流体i/oの代替配置の概略図を示す。マイクロ反応器は、絶縁体1011における開口部1006中の親水性マトリクス1005からなる。反応は1005の上または内で起こる。領域1001および通路1003および絶縁体1011は、流体i/o流出物をマイクロ反応器に供給する囲まれた親水性マトリクス回路を構成する。
【0178】
図10Dは、なお別の代替マイクロ反応器配置を示す。マイクロ反応器は親水性マトリクス1007からなる。マイクロ反応器1007は通路1003により領域1001に接続される。領域、通路および今またマイクロ反応器は、絶縁体1011内に囲まれる。開口部1008は、絶縁体1011を通して、浸漬電解質から親水性マトリクス回路内に含有されるマイクロ反応器中への流体輸送を可能とする。
【0179】
試料および非集積化試薬を従来型の平面マイクロ・アレイに導入するための技術上公知のいくつかの方法がある。一つの広く用いられる方法は、最も一般的にはスライドガラス基板上にある平面マイクロ・アレイを取り、そのスライドをペトリ皿または類似の開放容器中に浸漬することである。試料を皿の中に注ぎ込み、平面マイクロ・アレイの上部表面全体を覆う。覆いをペトリ皿の上に置く。別の一般的に用いられる技術において、試料を、従来型のマイクロ流体カートリッジ中に含有されたマイクロ・アレイに導入する。カートリッジは、室の一つの壁を形成する平面マイクロ・アレイを有する試料用の室を形成する筐体である。室は試料導入用の入口オリフィスおよび出口オリフィスを有する。上述の先行技術の皿および室は、また、本発明の集積化流体i/oを有する平面デバイスおよびアレイと共に用いるために適切である。図11〜12は、本発明のデバイスが他の試料室および流体要素と連動することができる他の方法を示す。
【0180】
図11A〜11Cは、本発明による組込み流体i/oが従来型の流体溝中に組み合わされる実施形態の概略図である。
【0181】
図11Aは、ポンプ注入された試薬リザーバおよびオリフィス1103を通して溝1104に流体的に接続される輸送通路からなる囲まれた親水性マトリクスデバイスである集積化流体i/o1101を含む微細位置1100の平面概略図を示す。流体i/oは、溝1104から化学物質を注入するかまたは引き出す。
【0182】
図11Bは、図11Aの断面A−A’を通しての側面概略図である。リザーバ領域、通路および任意のマイクロ反応器に形成される1以上の親水性マトリクスを含む集積化流体i/o成分1101を有する平面絶縁性基板1110がある。親水性マトリクス成分1101を囲む絶縁体1102がある。水蒸気輸送ができる少なくとも一部の絶縁体1102があり、その結果、使用の間または前に乾燥親水性マトリクス1101の濡れを容易にする。平面基板1110および囲まれた親水性マトリクス回路により提供される集積化流体i/oは、微細位置1100または微細位置のアレイが溝内に含有されるように、溝1104と共に他の平面絶縁要素1111および1112に接続される。流体は、毛細管電動学的ポンピングまたは空気ポンピングを含む従来型の流体ポンピング手段により、従来型の微小流体溝1104中に導入され、それに沿って動くことができる。濡れは、少なくとも1102の一部を通して親水性マトリクス回路1101の少なくとも一部の上部表面を親水性マトリクス中に浸漬する、溝1104中に導入される水溶液からの水の輸送により起こる。開口部1103は、絶縁体1102を通して、囲まれた親水性マトリクス回路1101を溝1104中の流体と流体的に接続し、囲まれた親水性マトリクス回路の外にある試薬の溝1104中流体中への輸送を可能とする。このデバイスの代替使用において、溝1104中に含有されるアッセイ用の溶解試料を含む流体は、囲まれた親水性マトリクス回路内に含有されるマイクロ反応器中に導入することができる。
【0183】
溝1104を有する溝カバー要素1111、1112は、単一成分として組み立てることが可能である。溝1104は、レーザーアブレーション、エッチングまたは成形技術などの技術上公知の方法を用いて形成される。あるいは、図に示されるように、カバー要素は、最終組立品中に密閉される二つの成分1111および1112であることが可能である。この場合、1111は平面スラブであり、1112はスロット付きのスラブかまたは平面基板1110または平面スラブ1111のいずれかの上に組み立てられる成形ガスケット要素である。
【0184】
平面スラブ1111上に置かれる任意の試薬1115がある。例えば、1111はその表面上に固定化される捕捉分子を含む。捕捉試薬1115を含む図11のデバイスの使用において、平面スラブは、最初に、従来型のマイクロ・アレイ実験においてなされるように、捕捉部位上で試料分子をつかまえるために試験試料と反応する。スラブ1111は、今、集積化流体i/oデバイスを含有するスラブ1110と共に組み立てられ、その結果、流体i/oデバイスおよびデバイスの流体溝内の各微細位置での捕捉部位がある。試薬を集積化流体i/oデバイスからマイクロ反応器中に導入して、バイオアッセイを完了する。
【0185】
図11Cは、本発明による集積化流体i/oを含む微細位置1121〜1129のアレイ1120がいかに先行技術の従来型マイクロ流体溝1130、1131および1132中に配置することができるかを示す。溝1130は室1141〜1143のアレイを接続し、溝1131は室1144〜1146を接続し、溝1132は室1147〜1149を接続する。従って、それぞれが本発明の集積化流体i/oを有する微細位置を含有する、先行技術流体溝を用いて流体的に接続される室のアレイが形成される。
【0186】
図12Aおよび12Bは、本発明によるマイクロ反応器および集積化流体i/oが、従来型先行技術のマイクロプレートのウエルまたはウエルのアレイ中に組み合わされる実施形態の概略図である。
【0187】
図12Aおよび12Bは、集積化流体i/oを含む微細位置1200のそれぞれ平面および側面の概略図を示す。リザーバ領域、通路および任意のマイクロ反応器に形成される1以上の親水性マトリクスを含む集積化流体i/o成分1201を有する平面絶縁性基板がある。親水性マトリクス成分1201を囲む絶縁体1202がある。水蒸気輸送ができる少なくとも一部の絶縁体1202があり、その結果、使用の間または前に乾燥親水性マトリクス1201の濡れを容易にする。平面基板1210および囲まれた親水性マトリクス回路により提供される集積化流体i/oは、微細位置1200がウエル内に含有されるように、ウエル1204を有する別の平面絶縁要素1211に接続される。流体は、マイクロプレート流体技術分野において公知である毛細管電動学的ポンピングまたは空気ポンピングを含む従来型の流体ポンピング手段に接続される分配手段により、ウエル1204中に導入することができる。濡れは、少なくとも1202の一部を通して親水性マトリクス回路1201の少なくとも一部の上部表面を親水性マトリクス中に浸漬する、ウエル1204中に導入される水溶液からの水の輸送により起こる。開口部1203は、絶縁体1202を通して、囲まれた親水性マトリクス回路1201をウエル1204中の流体と流体的に接続し、囲まれた親水性マトリクス回路の外にある試薬のウエル1204中流体中への輸送を可能とする。スラブ1211中のウエル1204のアレイは、各マイクロウエルが本発明の集積化流体i/oデバイスに流体的に接続されるマイクロプレートを含む。
【0188】
図12C〜12Fは上記デバイスの変形を示す。この変形はカバープレートを有するマイクロウエルまたはマイクロウエル・アレイである。
【0189】
図12Cに示されるように、微細位置のアレイを有する平面基板1250があり、各微細位置は、オリフィス1253を有する絶縁体1252により囲まれる親水性マトリクス回路1251を含む流体i/oデバイスを含む。試薬1262を有する微細位置のアレイを含む平面スラブ1260のカバープレートがある。スラブ1260上の微細位置アレイのステップアンドリピート次元は、平面基板1250上の集積化流体i/oデバイスのアレイのステップアンドリピート次元と同じである。このデバイスの一つの使用において、そのアレイを有するカバースラブ1260は、最初に、試験溶液中に浸漬し、微細位置のアレイを試験溶液との化学反応にさらすことが可能である。この使用態様において、カバースラブおよび微細位置のアレイは、公知の技術の標準マイクロ・アレイに類似している。例えば、1260は、当該技術分野のタンパク質アレイまたはDNAアレイにおけるように、捕捉部位のアレイを含む平面基板であることが可能であろう。試験流体にさらされる場合、試験溶液の成分が技術上公知であるように相補的な部位で結合する結合反応がある。次に、スラブを1列に並べて、図12Dに示すように流体i/oデバイスのアレイに近接するがしかし離して組み立てる。水性流体1263を近接する二つのプレート間に導入し(図12E)、次に、二つのプレートを一緒に押し付ける。プレートを押し付けると、図12Fに示されるように、ウエルのアレイは流体で満たされたままで残るが、しかし、各ウエルはウエル壁要素1261により他から単離される。バイオアッセイ手順は、試薬を、各単離ウエル内に含有される集積化流体i/oからのウエルアレイの各単離ウエル中に試薬をポンプ注入することにより継続される。バイオアッセイ反応を、光学的手段などのマイクロ・アレイまたはマイクロプレート技術分野において公知の標準技術によって監視する。
【0190】
このデバイス使用の別の態様において、二つのプレートを近接させ(図12D)、試験流体をプレート間に導入し(図12E)、次に、それらを一緒に押し付ける。この実施例において、スラブ1260の微細位置上の試薬だけが、単離ウエル内に含有される流体と相互作用する。
【0191】
図13は、本発明による集積化電動学的注入ポンプのアレイをいかに電気的に接続することができるかを説明する。
【0192】
ポンプアレイの最も適応性のある電気接続は、アレイのそれぞれポンプ注入された位置の独立のアドレス指定を可能とする。好ましくは、各ポンプ注入された位置が、部位特定的に、且つすべての他から独立してアドレス指定される。図13に、平面基板1350上の微細位置のアレイが示される。各微細位置で、マイクロ反応器および本発明の囲まれた親水性マトリクス注入器を含む集積化流体i/oデバイスがある。各注入器1313は電動学的ポンプ動力供給用の二つの電極を有する。一つの電極は水平行電極1340に、他方は垂直列電極1330に接続する。平面デバイス1350の一方の側での外部回路に対する接続用の行電極接触のアレイ、および別の側での列電極接触のアレイがある。
【0193】
各微細位置でポンプに動力を与えるための走査回路は、マトリクスLCDディスプレイに動力を与えるために用いられるものに類似している。低コスト用途のため、我々は当該技術分野において公知のPMLCDマトリクス・アドレス指定技術に類似のパッシブ・マトリクス・コントロール・スキームを選択する。
【0194】
ポンプアレイを駆動するための二つの可能な方法がある:1行ごとおよびピクセルごと(微細位置ごと)。1行ごとのアドレス態様において、列Y1、Y2、Y3・・・Ymは、シフト・レジスタおよびスイッチ・アレイ1310を通して開放回路から順次接地される。Y1を接続することにより、電圧V11、V21、V31・・・Vn1が同時に行X1、X2、X3・・・Xn(1行ごとに書くと)を通してかけられる。行電圧は、シフト・レジスタ1311および試料およびホールド・バッファー1312に適用されるコンピュータの1321DACからの連続データ流から得られる。次に、Y2が接続される場合、電圧V12、V22、V32・・・Vn2が行ラインを通してかけられる。アレイを通して以下同様に行われる。ピクセルごとのアドレス態様において、列は上のようにアドレス指定されるが、しかし、今、我々はスイッチ・アレイを通して開放回路からのDACに各行を順番に接続することにより順次行電圧をかける。列の流れは、ピクセルごとのデータを含有する連続文字列である。これはフィードバック制御用に用いることができる。ピクセルごとのアドレス態様は、1行ごとよりも一段と遅い。
【0195】
10,000個の微細位置を有するバイオチップは、全体で200接触に対して、100行および100列接続能力を必要とする。バイオチップが単位使用の使い捨てであるので、200接続は、繰り返し接触用に設計される高密度接触性デバイス(電子試験またはバーンイン用途の技術分野において公知のものなど)に対してなされる。適切な技術は、高密度パッケージドICテスター用に用いられるz−作用コネクタであり、電子成分回路テスターにおいて用いられるようなポゴ・ピンアレイまたはチップテスターにおけるチップパッドへの直接接触に用いられるようなz−作用金属ピン技術でさえも適切である。QFPICパッケージテストおよびバーンイン・ソケットは、この用途において用いることができる好ましい規格品品目である。これらのデバイスは側面当り数百回のピンでのデバイスに対する接触を可能とし、本発明の高密度アレイへの開閉繰り返し接触を可能とする。
【0196】
図13の2電極ポンプアレイは、2金属レベル・プレーナープロセスを用いて組み立てることができる。第1金属レベルを平面基板上に正確に置き、水平の行電極要素のアレイを光処理法により組み立てる。次に、単離絶縁層を、各ポンプ接続部位で開口部を有する行電極上に正確に置く。次に、第2レベル金属を正確に置き、垂直の列電極要素のアレイを光処理法により組み立てる。第2単離絶縁体を各ポンプ接続部位で開口部を有する列電極上に正確に置く。このようにして、各ポンプ位置で1対の電極がある。行および列のアレイの交差点は電気的に単離される。四角のアレイの各対の電極上に囲まれた親水性マトリクスデバイスを組み立てることによりデバイスを完成して、各微細位置での囲まれた親水性マトリクス注入器をもたらす。
【0197】
使用において、平面デバイスを、アレイの各微細位置で一つ、多くのバイオアッセイ反応を行うために必要とされる1以上の試験溶液中に浸漬する。試薬を組み込む流体を、以下に記載するように、集積化リザーバから電動学的にポンピングすることによりアレイの各マイクロ反応器に持ってくる。アレイのマイクロ反応器中の反応過程を検出手段により監視し、平面デバイス上の反応のアレイの過程を検出器アレイにより監視する。こうした検出器アレイは技術上公知であり、好ましい光学的検出手段を用いる場合、オプティカル・スキャナおよびCCDカメラが挙げられる。
【0198】
ポンプ動力のフィードバック制御は、好ましい使用態様である。フィードバック制御を実施するために二つの方法がある。最善の方法は、光学標識をポンプリザーバ中に組み込むことである。この化学物質はバイオアッセイ試薬と並んでポンプ注入されるが、しかし、それは反応には参画しない。標識濃度はバイオアッセイ用に用いられるのと同じ読み出し装置により測定することができる。別のスキームにおいて、我々は各部位でのポンプ流を測定し、このシグナルをフィードバック制御用に用いることができる。1行ごとのアドレス態様において、我々は現場特定の光学データでの制御によるフィードバック制御を運転することができるが、しかし、我々が各部位でそれを測定しないのでポンプ流ではできない。
【0199】
本発明の特定実施形態が説明目的のために本明細書において記載されてきたが、種々の修正はその精神および範囲から逸脱することなくなすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】薄膜微細加工技術において製造される囲まれた親水性マトリクスデバイスを示す。
【図2】厚膜または薄および厚膜技術の組合せにおいて製造される集積化電極を有する囲まれた親水性マトリクスデバイスを示す。
【図3】厚膜または薄および厚膜技術の組合せにおいて製造される集積化電極および集積化された囲まれたリザーバを有する囲まれた親水性マトリクスデバイスを示す。
【図4A】集積化注入器から電動学的に注入されたATP用の化学発光の光出力対時間を示す。
【図4B】集積化ATP注入器用の用量反応曲線を示す。
【図4C】集積化ATP注入器のポンプ流量の電圧依存性を示す。
【図5】厚膜または薄および厚膜技術の組合せにおいて製造される集積化電極および基板を通しての電気接触を有する囲まれた親水性マトリクスデバイスを示す。
【図6A】マイクロ反応器および多集積化流体注入器からなる微細位置の概略平面図である。
【図6B】マイクロ反応器および多集積化流体注入器からなる微細位置の概略側面図である。
【図7A】拡散停止を組み込むマイクロ反応器および多集積化流体注入器からなる微細位置の概略平面図である。
【図7B】拡散停止を組み込むマイクロ反応器および多集積化流体注入器からなる微細位置の概略側面図である。
【図8A】個別のポンプリザーバおよび試薬リザーバを組み込むマイクロ反応器および多集積化流体注入器からなる微細位置の概略平面図である。
【図8B】個別のポンプリザーバおよび試薬リザーバを組み込むマイクロ反応器および多集積化流体注入器からなる微細位置の概略側面図である。
【図9A】マイクロ反応器および集積化ナノ流体i/oおよび集積化マイクロ流体i/oからなる微細位置のアレイの概略平面図である。
【図9B】マイクロ反応器および集積化ナノ流体i/oの詳細図からなる微細位置の概略平面図である。
【図10A】ウエル中のマイクロ反応器および集積化ナノ流体i/oからなる微細位置の概略平面図である。
【図10B】ウエル中のマイクロ反応器および囲まれた親水性マトリクスデバイスを含む集積化ナノ流体i/oからなる微細位置の概略側面図である。
【図10C】ウエル中のマイクロ反応器および囲まれた親水性マトリクスデバイスを含む集積化ナノ流体i/oからなる微細位置の概略側面図である。
【図10D】ウエル中のマイクロ反応器および囲まれた親水性マトリクスデバイスを含む集積化ナノ流体i/oからなる微細位置の概略側面図である。
【図11A】溝中のマイクロ反応器および集積化ナノ流体i/oからなる微細位置の概略平面図である。
【図11B】溝中のマイクロ反応器および囲まれた親水性マトリクスデバイスを含む集積化ナノ流体i/oからなる微細位置の概略側面図である。
【図11C】溝のアレイ中のマイクロ反応器および集積化ナノ流体i/oからなる微細位置のアレイの概略平面図である。
【図12A】ウエル中のマイクロ反応器および集積化流体i/oからなる微細位置の概略平面図である。
【図12B】ウエル中のマイクロ反応器および集積化流体i/oからなる微細位置の概略側面図である。
【図12C】集積化流体i/oデバイスにより組み立てられているマイクロウエル・アレイの概略側面図である。
【図12D】集積化流体i/oデバイスにより組み立てられているマイクロウエル・アレイの概略側面図である。
【図12E】集積化流体i/oデバイスにより組み立てられているマイクロウエル・アレイの概略側面図である。
【図12F】集積化流体i/oデバイスにより組み立てられているマイクロウエル・アレイの概略側面図である。
【図13】電動学的ポンプアレイおよびその電気接続のブロック略図回路である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁基板、
マトリクス通路が親水性マトリクス通路に沿って電位生成用動力供給源とのそれぞれの電気接触用の一対の離れた接触位置を有する、溶質の動電学的輸送用の基板上の親水性マトリクス通路、
基板上に支持されると共に、動力供給源に接続するための接触端および接触位置の一つでの親水性マトリクスとの電気接触用のマトリクス端を有する電極、
初期に乾燥しており、マトリクスの水吸収率を増大させるための湿潤剤を含むマトリクス、
絶縁体が水蒸気透過性である、絶縁体と基板間のマトリクスを密閉するための親水性マトリクスを囲む絶縁体、および
絶縁体を通しての水性溶質通過用のマトリクス上の絶縁体中のオリフィス、
を含む、水性溶質輸送用の囲まれた親水性マトリクスデバイス。
【請求項2】
基板上に支持される一対の電極を含み、それぞれの電極は動力供給源に接続するための接触端、および接触位置の一つでのマトリクスに対する電気接続用のマトリクス端を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
親水性マトリクスが、初期、それが実質的に非導電性である乾燥および不活性状態にあり、囲む絶縁体を水性環境にさらすと、絶縁体を通しての水蒸気の輸送により湿った状態に移行する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
絶縁体がオリフィスを通しての毛細管作用によりマトリクス中への水の組込みを可能とするためにガス透過性である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
絶縁体が水通過用の濡れ開口部を含み、濡れ開口部を通しての毛細管作用によりマトリクス中への水の組込みの間囲まれたマトリクス内のガスの排出を可能とするためにガス透過性である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
水が絶縁体の水蒸気透過性材料を通しての輸送によりマトリクス中に組み込まれる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項7】
湿潤剤が、水中に溶解する場合、溶液の粘度が純水よりも有意により高くない濃度で純水よりも有意により少ない水蒸気圧を有する水溶液を形成する低分子量中性分子である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
湿潤剤が、尿素、アラニン、オルシニン、プラリーヌ、リジン、グリシン、ポリオールおよび砂糖、蔗糖、グルコース、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、乳糖、マルトース、ラクツロース、グリセロール、プロピレン・グリコール、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸およびそれらの組合せの群から選択される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
接触位置でのマトリクスと電極間の電気接触が、接触位置での電極とマトリクス材料間の直接の物理的接触により達成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項10】
電極およびマトリクス通路が接触位置で離れていると共に、電気接触が中間的な導電性物質により達成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項11】
電極およびマトリクス通路が接触位置で離れていると共に、電気接触が、マトリクスが乾燥状態にある場合初期に乾燥および非導電性状態にありマトリクスが濡れると導電性が与えられる親水性の中間的な導電性物質により達成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項12】
電極およびマトリクス通路が接触位置で離れており、電気接触が、接触位置でマトリクス中に含まれ、マトリクスが乾燥状態にある場合初期に乾燥および非導電性状態にありマトリクスが濡れると導電性が与えられる親水性物質により達成されると共に、濡れの後接触位置で電極とマトリクス間の空間を電気的に橋渡しする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項13】
親水性マトリクス通路がそこを通しての水性溶質の電気浸透輸送用の固定化電荷を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
親水性マトリクスがオリフィスを通して電動学的にポンプ注入しようとする試薬を含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
マトリクスが乾燥状態にある場合試薬が乾燥状態にあり、乾燥状態にある試薬が実質的に位置的にも化学的にも安定である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
親水性マトリクスが電解質塩を含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
マトリクス中の最大電解質塩濃度が10mMである、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
湿潤剤が中性分子である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
中性湿潤剤が添加されてマトリクスの湿潤状態において1モルを超える濡れ濃度を与える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
親水性マトリクスがさらに酸化還元添加剤を含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
酸化還元添加剤が中性である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項22】
親水性マトリクスがマイクロ多孔質である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
マトリクスのミクロ細孔が50ナノメートル〜5マイクロメートル間の径を有する、請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
親水性マトリクスが50マイクロメートルの最大厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
水蒸気透過性絶縁体が厚さ25マイクロメートル未満である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
電極対の一つが酸素還元反応を支持するためのカソード電極として構築され、囲む絶縁体が絶縁体を通しての酸素の側方拡散を可能とするためガス透過性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
電極対の一つが水酸化反応を支持するためのアノード電極として構築され、囲む絶縁体がガス透過性絶縁体を通しての側方透過による電極領域からの酸素除去を可能とするためガス透過性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
親水性マトリクス材料がドライエッチィング性であるように選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
親水性マトリクスがさらにドライエッチィング性添加剤を含有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項30】
親水性マトリクス通路がさらに電動学的輸送によりマトリクス通路に沿って輸送しようとする試薬を含有するためのリザーバを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項31】
親水性マトリクスリザーバ領域が円形であり、マイクロノズル分配器、インクジェット分配器またはピン移送分配器から局部的に正確に置かれる試薬を含有する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項32】
輸送通路がマトリクスリザーバと絶縁体中のオリフィス間に位置する空隙を含む、請求項29に記載のデバイス。
【請求項33】
マトリクスがさらに他の電極とオリフィス間に置かれる第2親水性マトリクスリザーバを含む、請求項29に記載のデバイス。
【請求項34】
第2リザーバがオリフィスを通して電動学的にポンプ注入されようとする試薬を含有する、請求項58に記載のデバイス。
【請求項35】
絶縁基板、
基板上に支持され、各電極が動力を供給するための外部回路に接続するための接触端および親水性マトリクスとの電気接触用のマトリクス端を有する一対の電極、
マトリクス通路が、試薬を含有するためのリザーバ、試薬の電動学的輸送用の輸送通路、化学反応を行うための個別のマイクロ反応器、および電極のそれぞれのマトリクス端との電気接触用の一対の離れた接触位置を含み、マトリクスが初期乾燥しておりマトリクスの水吸収率を増大させるための湿潤剤を含む、溶質の動電学的輸送用の基板上の親水性マトリクス通路、
絶縁体が水蒸気透過性である、絶縁体と基板間のマトリクスを密閉するための親水性マトリクスを囲む絶縁体、および
絶縁体を通しての水性溶質通過用のマトリクス上の絶縁体中のオリフィス、
を含む、集積化流体i/oを有するマイクロ反応器デバイス。
【請求項36】
それぞれが請求項29に記載の親水性マトリクス流体i/oデバイスを包含する微細位置のアレイを含む、親水性マトリクス流体i/oデバイスの平面アレイ。
【請求項37】
それぞれが請求項35に記載のマイクロ反応器デバイスを包含する、微細位置のアレイを含む、平面マイクロ反応器アレイ。
【請求項38】
各反応器デバイスが核酸ハイブリダイゼーション反応を行うために構築される、請求項37に記載のアレイ。
【請求項39】
各反応器デバイスがタンパク質−タンパク質相互作用を行うために構築される、請求項37に記載のアレイ。
【請求項40】
請求項29記載の囲まれた親水性マトリクス流体i/oデバイスおよび請求項35に記載の反応器デバイスの組合せを含み、親水性マトリクス流体i/oデバイスの絶縁体中のオリフィスは試薬交換用の反応器デバイスの絶縁体中のオリフィスに重なり、親水性マトリクス流体i/oデバイスはオリフィスを通してのリザーバから反応器デバイスへの電動学的試薬輸送のために構築される、バイオアッセイ・デバイス。
【請求項41】
予め選択されたステップ・アンド・リピート次元で配置されるマイクロ反応器デバイスを有する第1平面アレイ、
それぞれが固定化反応物質を含むと共に第1アレイにおけるマイクロ反応器デバイスと同じステップ・アンド・リピート次元で配置される微細位置の第2平面アレイ、
それぞれのアレイ上のマイクロ反応器が互いに向かい合い対をなして整列するように、共平面の第1および第2アレイを離れた平行方向に整列させるための配列手段、
共平面の第1および第2アレイの間に流体を導入するための手段、および
単離され流体で満たされたウエルのアレイ(各ウエルは第1アレイのマイクロ反応器、離れて平行の第2アレイの微細位置、および中間流体を含有する)を形成するための、マイクロ反応器および向かい側の微細位置の各対を密閉するための手段、
を含む、バイオアッセイ・デバイス。
【請求項42】
予め選択されたステップ・アンド・リピート次元で配置されるマイクロ反応器デバイスを有する第1平面アレイ、
第1アレイにおけるマイクロ反応器と同じステップ・アンド・リピート次元で配置される親水性マトリクス流体i/oデバイスを有する第2平面アレイ、
第1平面アレイ上の各マイクロ反応器が第2アレイの一つの親水性マトリクス流体i/oデバイスに面するように、共平面の第1および第2アレイを離れた平行方向に整列させるための配列手段、
共平面の第1および第2アレイの間に流体を導入するための手段、および
単離され流体で満たされたウエルのアレイ(各ウエルは第1アレイのマイクロ反応器、離れて平行の第2アレイの親水性マトリクス流体i/oデバイス、および中間流体を含有する)を形成するための、マイクロ反応器および向かい側の親水性マトリクス流体i/oデバイスの各対を密閉するための手段、
を含む、バイオアッセイ・デバイス。
【請求項43】
さらに各単離ウエル中の反応を監視するための手段を含む、請求項41または42に記載のバイオアッセイ・デバイス。
【請求項44】
それぞれがマイクロ反応器への輸送用の異なる試薬を含有する複数のリザーバを含む、請求項35に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項45】
リザーバから試薬を受け取るための複数のマイクロ反応器を含む、請求項35に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項46】
オリフィスがリザーバとマイクロ反応器の間に位置する、請求項35に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項47】
マトリクス通路が接触位置間に延びる第1部分および第1部分の延長上にある第2部分を含み、さらに、リザーバ中の試薬のそこを横切る浸透輸送を防ぐためにマトリクス通路中に隙間を含み、この隙間は第1部分中に且つリザーバとマイクロ反応器の間に置かれる、請求項46に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項48】
マトリクス通路が接触位置間に延びる第1部分および第1部分の延長上にある第2部分を含み、リザーバは第2部分中に位置し、オリフィスはリザーバと第1部分の間に置かれる、請求項35に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項49】
マトリクス通路が連続して第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は接触位置の間に延び、リザーバは第1部分中に位置し、オリフィスおよびマイクロ反応器は第3部分中に置かれる、請求項35に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項50】
さらに第2部分中に位置する第2リザーバを含む、請求項49に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項51】
さらに、そこを横切る溶質の浸透輸送を防ぐために第2および第3部分の一つの中のマトリクス通路中に隙間を含み、この隙間は第2リザーバとオリフィスの間に置かれる、請求項50に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項52】
前記隙間がリザーバと第3部分の間の第2部分中に置かれる、請求項51に記載のマイクロ反応器デバイス。
【請求項53】
請求項35に記載の第1マイクロ反応器デバイス、および、第2マイクロ反応器デバイスのマトリクス通路が、第1マイクロ反応器デバイスのマトリクス通路に沿って電動学的ポンピングを通して橋かけすることができる中間的な空隙により、第1マイクロ反応器デバイスのマトリクス通路から分離されるように、第1マイクロ反応器デバイスに直列に配置される請求項35に記載の第2マイクロ反応器デバイスを含む、バイオアッセイ・デバイス。
【請求項54】
基板が一対の向かい合った表面を有し、マトリクス通路が基板表面の一つの上に支持され、一対の電極の少なくとも一つが他の基板表面上に支持され、基板は反対側基板表面上の電極とのマトリクスの電気接触を提供するために成形され構築される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項55】
基板が、反対側基板表面上の電極との接触位置の一つでのマトリクスの物理的および電気的接触用の通路を含む、請求項54に記載のデバイス。
【請求項56】
電極対が基板表面の一つの上に支持され、マトリクスが反対側の基板表面上に支持され、各接触位置での基板が通り抜けの通路を有し、マトリクス材料は通路を通して延びそれぞれの電極と接触する、請求項54に記載のデバイス。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−508350(P2006−508350A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555907(P2004−555907)
【出願日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001843
【国際公開番号】WO2004/050243
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505204354)エポカル インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】