説明

集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置

【課題】集積型薄膜太陽電池の製造工程において生じる除去物を効率よく除去することができ、優れた収率で集積型薄膜太陽電池を製造することができる集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明の集積型薄膜太陽電池の製造方法は、スクライブ工程と、前記スクライブで生じた除去物を前記基板から除去する除去工程とを含み、前記除去工程が、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積型薄膜太陽電池の製造方法としては、基板上に下部電極膜、半導体膜、及び上部電極膜の薄膜を成膜し、それぞれの成膜後に、該薄膜をレーザ光などでスクライブ加工することで、前記基板上に電気的に直列に接続された複数の単位セルを形成する方法が行われている。
【0003】
集積型薄膜太陽電池の製造方法では、前記スクライブ加工で除去物(ゴミ)が生じる。前記除去物が基板に付着すると、得られる太陽電池の中に性能が低下した太陽電池が含まれることとなり、収率が低下するという問題がある。
特にスクライブ加工は、前記各膜に対して行われるため、それぞれの加工の段階で除去物の除去が不十分であると、製造された太陽電池に短絡を起こすものが含まれたりするなどの問題があり、太陽電池の収率を上げるためには、スクライブ加工における除去物をいかに除去するかが非常に大きな問題となる。
また、集積型薄膜太陽電池をロール・トゥ・ロール方式により、各工程を一貫して行う場合でも、スクライブ加工で生じる除去物の除去が重要であり、スクライブ加工で生じる除去物の優れた除去方法が強く求められている。
【0004】
これまでに、除去物を除去する方法として、ダスト等によるレーザ光の光路障害等を発生させることなく、パターニング加工の際の飛散物の半導体装置の膜面への再付着を防止し、歩留まりよく半導体装置を製造する手段として、静電気を帯びたドラムに飛散物を付着させて回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、スクライブ加工で生じる除去物の除去が十分ではなく、また、真空中でゴミの除去を行うことが考慮されていないという問題がある。
【0005】
また、薄膜などへのダメージを低減する方法として、太陽電池の基板上の膜に窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性な気体をレーザスポットに吹き付けながら膜を分割する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この提案では、気体を吹付けることにより、除去物を除去する効果もあると考えられる。しかしながら、この提案では、スクライブ加工で生じる除去物の除去が十分ではなく、また、太陽電池の生産効率を上げるために必要な各工程の装置を連結することや、真空中でゴミの除去を行うことも考慮されていないという問題がある。
【0006】
したがって、集積型薄膜太陽電池の製造工程において生じる除去物を効率よく除去することができ、優れた収率で集積型薄膜太陽電池を製造することができる集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置の開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−316178号公報
【特許文献2】特開2001−320071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、集積型薄膜太陽電池の製造工程において生じる除去物を効率よく除去することができ、優れた収率で集積型薄膜太陽電池を製造することができる集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 集積型薄膜太陽電池の製造方法であって、
スクライブ工程と、
前記スクライブで生じた除去物を前記基板から除去する除去工程とを含み、
前記除去工程が、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせることを特徴とする集積型薄膜太陽電池の製造方法である。
前記<1>の集積型薄膜太陽電池の製造方法では、スクライブ工程で集積型薄膜太陽電池の基板上に成膜された薄膜がスクライブされ、除去工程で前記スクライブ工程で生じた除去物が除去される。前記除去工程では、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせているので、前記除去物は基板と反発し、基板に付着することが抑制され、除去物が効率よく除去される。
<2> 少なくとも除去工程が真空中で行われる前記<1>に記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法である。
<3> 除去工程が、スクライブ部分に、高エネルギー電磁波を照射する処理、及びガスを吹付ける処理の少なくともいずれかを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法である。
<4> 除去物を付着させる付着工程を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法である。
<5> ロール・トゥ・ロール方式である前記<1>から<4>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法である。
<6> カルコパイライト系半導体を用いた集積型薄膜太陽電池である前記<1>から<5>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法である。
<7> 集積型薄膜太陽電池の製造装置であって、
スクライブ手段と、
前記スクライブで生じた除去物を前記基板から除去する除去手段とを含み、
前記除去手段が、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせる手段であることを特徴とする集積型薄膜太陽電池の製造装置である。
前記<7>の集積型薄膜太陽電池の製造装置では、スクライブ手段で集積型薄膜太陽電池の基板上に成膜された薄膜がスクライブされ、除去手段で前記スクライブ手段で生じた除去物が除去される。前記除去手段では、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせているので、前記除去物は基板と反発し、基板に付着することが抑制され、除去物が効率よく除去される。
<8> 少なくとも除去手段が真空手段内に備えられる前記<7>に記載の集積型薄膜太陽電池の製造装置である。
<9> 除去手段が、高エネルギー電磁波照射手段、及びガス吹付け手段の少なくともいずれかを含む前記<7>から<8>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造装置である。
<10> 除去物を付着させる付着手段を含む前記<7>から<9>のいずれかに記載の薄膜太陽電池の製造装置である。
<11> ロール・トゥ・ロール方式である前記<7>から<10>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造装置である。
<12> カルコパイライト系半導体を用いた集積型薄膜太陽電池である前記<7>から<11>のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、集積型薄膜太陽電池の製造工程において生じる除去物を効率よく除去することができ、優れた収率で集積型薄膜太陽電池を製造することができる集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、集積型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための図であって、基板表面に直交する断面図である。
【図1B】図1Bは、集積型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための図であって、基板表面に直交する断面図である。
【図1C】図1Cは、集積型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための図であって、基板表面に直交する断面図である。
【図1D】図1Dは、集積型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための図であって、基板表面に直交する断面図である。
【図1E】図1Eは、集積型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための図であって、基板表面に直交する断面図である。
【図2】図2は、集積型薄膜太陽電池の平面図である。
【図3】図3は、集積型薄膜太陽電池の製造装置を説明するための図である。
【図4】図4は、レーザスクライブ手段と静電気除去手段の一実施形態を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、コリメートファイバとエアノズルを一体化した形態の一実施形態を説明するための図である。
【図5B】図5Bは、コリメートファイバとエアノズルが分離した形態の一実施形態を説明するための図である。
【図6】図6は、メカニカルスクライブによる溝の形成の一実施形態を説明するための図である。
【図7】図7は、付着工程の一実施形態を説明するための図である。
【図8】図8は、第3スクライブ工程後の基板上の除去物の数を示す図である。
【図9】図9は、収率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(集積型薄膜太陽電池の製造方法及び製造装置)
本発明の集積型薄膜太陽電池の製造方法は、スクライブ工程、除去工程を少なくとも含み、必要に応じて更に付着工程などのその他の工程を含んでなる。
本発明の集積型薄膜太陽電池の製造装置は、スクライブ手段、除去手段を少なくとも含み、必要に応じて更に付着手段などのその他の手段を含んでなる。
【0013】
まず、本発明の集積型薄膜太陽電池の製造方法の一実施形態を図1A〜図1E、及び図2に従って説明する。
図1A〜図1Eは、集積型薄膜太陽電池の製造方法を説明するための図であって、基板表面に直交する断面図である。
まず、図1Aでは、基板1上に下部電極膜2を形成(以下、「下部電極膜形成工程」と称することがある。)した後、レーザ光L1を照射することによって、下部電極膜2の一部をストライプ状に除去して溝を形成する(以下、「第1のスクライブ工程」と称することがある。)。これにより、下部電極膜2は、溝によって短冊状に分割される。
次いで、図1Bに示すように、下部電極膜2、及び下部電極膜2が除去されて露出した基板1上に半導体膜3を形成する(以下、「半導体膜形成工程」と称することがある。)。
次いで、図1Cに示すように、半導体膜3をスクライブし、半導体膜3の一部をストライプ状に除去して溝を形成する(以下、「第2のスクライブ工程」と称することがある。)。これにより、半導体膜3は、溝によって短冊状に分割される。
次いで、図1Dに示すように、半導体膜3、及び半導体膜3が除去されて露出した下部電極膜2上に上部電極膜4を形成する(以下、「上部電極膜形成工程」と称することがある。)。上部電極膜4は、半導体膜3を分割することにより生じた溝の部分を通じて下部電極膜2と電気的に接続される。
そして、図1Eに示すように、上部電極膜4をスクライブし、上部電極膜4の一部をストライプ状に除去して溝を形成する(以下、「第3のスクライブ工程」と称することがある。)。これにより、上部電極膜4は、溝によって短冊状に分割される。
前記除去工程は、前記第1のスクライブ工程、前記第2のスクライブ工程、及び前記第3のスクライブ工程の中、及び前記第1のスクライブ工程、前記第2のスクライブ工程、及び前記第3のスクライブ工程の後の少なくともいずれかの段階で行う。
以上の工程により、各単位セル5の上部電極膜4が、隣接する単位セル5の下部電極膜2と接続されることにより、各単位セル5が直列接続され、集積型薄膜太陽電池を製造することができる。
図2は、集積型薄膜太陽電池10の平面図であり、符号14は上部電極膜、符号12は下部電極膜、符号15は単位セルを示す。図2に示すように、各単位セル15は、その長手方向Aに垂直な方向に直列接続されるように並べて配置されている。
【0014】
次に、本発明の集積型薄膜太陽電池の製造装置の一実施形態を図3に従って説明する。
図3は、ロール・トゥ・ロール方式の製造装置の一実施形態を示す。図3に示す製造装置は、基板46をロール状に巻いて供給する基板供給手段を含むチェンバー31と、前記基板上に下部電極膜を形成する下部電極膜形成手段を含むチェンバー33と、前記下部電極膜の一部をストライプ状に除去して前記下部電極膜を短冊状に分割する第1のスクライブ手段を含むチェンバー35と、前記下部電極膜、及び前記下部電極膜が除去されて露出している基板上に半導体膜を形成する半導体膜形成手段を含むチェンバー37と、前記半導体膜の一部をストライプ状に除去して前記半導体膜を短冊状に分割する第2のスクライブ手段を含むチェンバー39と、前記半導体膜、及び前記半導体膜が除去されて露出している前記下部電極膜上に上部電極膜を形成する上部電極膜形成手段を含むチェンバー41と、前記上部電極膜の一部をストライプ状に除去して前記上部電極膜を短冊状に分割する第3のスクライブ手段を含むチェンバー43と、前記基板上に短冊状に集積された単位セルを巻取る巻取り手段を含むチェンバー45と、各手段を接続し、基板を搬送する接続手段32、34、36、38、40、42、44とを備える。
前記第1のスクライブ手段を含むチェンバー35、第2のスクライブ手段を含むチェンバー39、及び第3のスクライブ手段を含むチェンバー43の少なくともいずれかは、前記除去手段を備える。前記除去手段としては、詳細は後述するが、前記チェンバーが、前記除去手段を含む場合、前記チェンバー35、チェンバー39、及びチェンバー43は、例えば、ガス噴射口と、ガスを排気する排気装置が取付けられていることが好ましい。
前記下部電極膜形成手段を含むチェンバー33、半導体膜形成手段を含むチェンバー37、及び上部電極膜形成手段を含むチェンバー41は、コンダクタンスの小さい接続手段32、34、36、38、40、42、及び44により接続されていることが好ましい。前記接続手段のコンダクタンスが小さいと、隣接するチェンバーの影響が小さく、成膜手段内の圧力を十分低く保つことが出来、一貫工程で成膜、及びスクライブができるため、集積型薄膜太陽電池を生産性よく製造できる点で、有利である。
【0015】
以下、本発明の集積型薄膜太陽電池の製造方法、製造装置の詳細について説明する。
【0016】
<種類>
前記集積型薄膜太陽電池の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Si系半導体を用いた薄膜太陽電池、カルコパイライト系半導体を用いた薄膜太陽電池などが挙げられ、これらの中でも光の吸収率が高く、より薄い薄膜で太陽電池を形成できる点でカルコパイライト系半導体を用いた薄膜太陽電池が好ましい。
【0017】
<製造方式>
前記集積型薄膜太陽電池の製造方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロール・トゥ・ロール方式、枚葉方式などが挙げられる。これらの中でも、湾曲可能な基板を用いることにより、大量に連続的に生産が可能であり、高速成膜に適しているだけでなく、基板収納スペースがコンパクトになるため装置コストを低減することができ、基板支持用のトレイなどが不必要で付帯設備コストを低減することができる点で、ロール・トゥ・ロール方式が好ましい。
【0018】
前記集積型薄膜太陽電池の製造は、真空中で行ってもよいし、大気中で行ってもよいし、真空中で行う工程と大気中で行う工程とを組み合わせてもよい。これらの中でも、一連の工程を連続して行うことにより、製造効率を高めることができる点で、真空中で行われることが好ましい。
前記真空とは、大気よりも気体密度あるいは気圧の低い空間の状態をいう。
前記真空手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油回転ポンプ、分子ポンプのような機械的真空ポンプや、拡散ポンプのような蒸気噴射ポンプや、ゲッターポンプ等の表面現象を利用するポンプなどが挙げられる。
【0019】
<基板供給工程、基板供給手段>
前記基板供給工程は、基板を供給する工程である。前記基板は、基板供給手段により供給される。
前記基板供給手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板をロール状に巻いて供給する手段、段積みにした基板を1枚ずつ供給する装置などが挙げられる。
【0020】
−基板−
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性の基板、導電性の基板、ある金属に異なる金属を貼り合わせたり、めっきしたりした複合材などが挙げられる。
前記絶縁性の基板としては、例えば、酸化アルミニウムからなる基板、ガラス基板、セラミック基板、ポリイミド基板などが挙げられる。
【0021】
また、前記基板は、表面に絶縁性層と、導電性層とを有するものであってもよい。
前記絶縁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、ガラスなどが挙げられる。
前記絶縁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.4μm〜1μmなどが挙げられる。
前記絶縁性層の形成位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性層の片側あるいは両側で、必ずしも全面に付いている必要は無く、少なくとも太陽電池セルを形成する部分に付いている態様などが挙げられる。
前記絶縁性層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ、イオンプレーティング、ゾルゲル法、塗布、圧接、陽極酸化、電着などが挙げられる。
前記導電性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス、鉄やその合金等の金属などが挙げられる。
前記導電性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湾曲可能な基板とする場合には、材料の剛性によって異なり、支持体として必要な強度を持つことを考慮すると、例えば、ステンレスのような固い材料であれば、10μm〜100μm、アルミニウムのような柔らかい材料であれば、100μm〜400μm、単に導電性のみを求める為なら0.1μm〜1μmなどが挙げられる。
前記導電性層の形成位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性層の片側あるいは両側で、必ずしも全面に付いている必要は無く、少なくとも太陽電池セルを形成する部分に付いている態様であって、絶縁性層と導電性層は複数の交互層とするなどが挙げられる。
前記導電性層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ、イオンプレーティング、ゾルゲル法、塗布、圧接、陽極酸化、電着などが挙げられる。
【0022】
前記基板は、ロール・トゥ・ロール方式の生産に使用することができるものであることが好ましい。
前記ロール・トゥ・ロール方式の生産に使用することができる基板としては、例えば、製造工程で利用するロール半径で曲げてもクラックなどのダメージが生じることがなく、基板を送る時に必要な張力を保つ為に引張応力がかかってもクリープ現象が起こらない基板などが挙げられる。
【0023】
また、前記基板の端部は、電位が一定となる端子に接続されていることが好ましい。前記基板の端部が、電位が一定となる端子に接続されていることにより、製造工程で発生した静電気を除去することができる。
前記電位が一定となる端子に接続する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性ロール、導電性ブラシで接触することで通電したり、巻き取ったロールの端を機械的金属などの導電性材料で掴むことで通電し、アースに接地する方法などが挙げられる。
【0024】
<下部電極膜形成工程、下部電極膜形成手段>
前記下部電極膜形成工程は、前記基板上に下部電極膜を形成する工程である。前記下部電極膜は、下部電極膜形成手段により形成することができる。
【0025】
−下部電極膜−
前記下部電極膜の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、半導体、導電性有機物などが挙げられる。
前記金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Mo、Ni、Cr、W、Ptなどが挙げられる。
前記半導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ZnO、ITO、Si、Seなどが挙げられる。
前記導電性有機物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。
【0026】
前記下部電極膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5μm〜2μmなどが挙げられる。
前記下部電極膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
前記下部電極膜の形成方法に用いる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着装置、スパッタリング装置などが挙げられる。
【0027】
<半導体膜形成工程、半導体膜形成手段>
前記半導体膜形成工程は、前記下部電極膜、及び前記下部電極膜が除去されて露出している基板上に半導体膜を形成する工程である。前記半導体膜は、半導体膜形成手段により形成することができる。
【0028】
−半導体膜−
前記半導体膜は、前記下部電極膜側からp型半導体膜と、n型半導体膜とをこの順に含み、pn接合される。
前記p型半導体膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温で液相又は加熱により液相となる元素、化合物、又は合金を含む物質、カルコゲン化合物(S、Se、Teを含む化合物)、カルコパイライト型構造の化合物及び欠陥スタナイト型構造の化合物、アモルファスシリコンなどを用いることができる。
前記カルコゲン化合物の具体例としては、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTeなどのII−VI化合物、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)などのI−III−VI族化合物、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)SeなどのI−III−VI族化合物などが挙げられる。
前記カルコパイライト型構造の化合物及び欠陥スタナイト型構造の化合物の具体例としては、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)などのI−III−VI族化合物、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)SeなどのI−III−VI族化合物などが挙げられる。
ただし、上記の記載において、(In,Ga)、(S,Se)は、それぞれ、(In1−xGa)、(S1−ySe)(ただし、x=0〜1、y=0〜1)を示す。
前記n型半導体膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CdS、ZnO、Zn(O,OH)、Zn(O,OH,S)、In(O,OH)、In(O,OH,S)などの少なくともII族、あるいはIII族元素とVI族元素とを含むn型半導体膜などが挙げられる。
前記半導体膜の前記pn接合としては、カルコパライト構造半導体膜と、II族、あるいはIII族元素とVI族元素とを含む半導体膜とによって形成されることが、特性が高い集積型薄膜太陽電池を製造できる点で、好ましい。
アモルファスシリコンの場合、p・n層がそれぞれp型・n型アモルファスシリコンであってもよいし、p層とn層が逆であってもよい。
【0029】
前記p型半導体膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5μm〜2μmなどが挙げられる。
前記p型半導体膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、有機金属気相成長(MOCVD)法、化学気相成長(CVD)法、塗布法、電着法などが挙げられる。
前記p型半導体膜の形成方法に用いる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着装置、スパッタリング装置、イオンプレーティング装置、MOCVD装置、CVD装置、塗布装置、電着装置などが挙げられる。
前記n型半導体膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10nm〜100nmなどが挙げられる。
前記n型半導体膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、化学析出法(CBD法)、塗布法、電着法などが挙げられる。
前記下部電極膜の形成方法に用いる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング装置、化学析出装置、塗布装置、電着装置などが挙げられる。
前記半導体膜は、前記p型半導体膜を形成した後、前記n型半導体膜を形成することにより、形成することができる。
【0030】
<上部電極膜形成工程、上部電極膜形成手段>
前記上部電極膜形成工程は、前記半導体膜、及び前記半導体膜が除去されて露出している前記下部電極膜上に上部電極膜を形成する工程である。前記上部電極膜は、上部電極膜形成手段により形成することができる。
前記上部電極膜形成工程により、上部電極膜は、半導体膜が除去されている溝を通じて下部電極膜12と接続される。
【0031】
−上部電極膜−
前記上部電極膜の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ZnO、ZnO:Al、ITOなどが挙げられる。
【0032】
前記上部電極膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5μm〜1μmなどが挙げられる。
前記下部電極膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、MOCVD法、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
前記下部電極膜の形成方法に用いる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング装置、MOCVD装置、CVD装置、蒸着装置、イオンプレーティング装置などが挙げられる。
【0033】
<スクライブ工程、スクライブ手段>
前記スクライブ工程としては、前記第1のスクライブ工程、前記第2のスクライブ工程、及び前記第3のスクライブ工程が挙げられる。
前記スクライブ手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザスクライブ手段、メカニカルスクライブ手段などが挙げられる。
【0034】
−第1のスクライブ工程−
前記第1のスクライブ工程は、前記下部電極膜の一部をストライプ状に除去して前記下部電極膜を短冊状に分割する工程である。
前記第1のスクライブ工程におけるスクライブ手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レーザスクライブ手段が好ましい。
【0035】
−第2のスクライブ工程−
前記第2のスクライブ工程は、前記半導体膜の一部をストライプ状に除去して前記半導体膜を短冊状に分割する工程である。
前記第2のスクライブ工程におけるスクライブ手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、レーザスクライブ手段、メカニカルスクライブ手段が挙げられる。
【0036】
−第3のスクライブ工程−
前記第3のスクライブ工程は、前記上部電極膜の一部をストライプ状に除去して前記上部電極膜を短冊状に分割する工程である。なお、前記第3のスクライブ工程では、前記半導体膜の一部が除去されてもよい。
前記第3のスクライブ工程におけるスクライブ手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、レーザスクライブ手段、メカニカルスクライブ手段が挙げられる。
【0037】
−レーザスクライブ手段−
前記レーザスクライブ手段に用いるレーザとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連続、又はパルス発振レーザ光が挙げられる。
前記レーザ光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記半導体膜のバンドギャップよりも高いエネルギーを有する波長のレーザ光であることが、前記半導体膜を容易に除去できる点で、好ましい。
具体的には、前記半導体膜がCdS膜を含む場合には、波長が0.5μm以下のレーザ光が挙げられ、また、前記半導体膜がZnO膜を含む場合には、波長が0.39μm以下のレーザ光が挙げられる。
前記レーザ光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Nd:YAG、Nd:YLF、及びNd:YVOから選ばれる1つのレーザ結晶を用いたレーザの第2高調波や第3高調波などが、前記半導体膜を容易に除去できる点で、好ましい。
また、前記第2のスクライブ工程では、除去する半導体膜の特性に適合するレーザ光を選択して照射することにより、半導体膜でほとんどのエネルギーが吸収されるため、下部電極膜へ大きなダメージを与えることなく、半導体膜を選択的に除去できる。また、前記第2のスクライブ工程をレーザスクライブ手段で行うと、レーザ光によって形成される溝の側面は、メカニカルスクライブ手段によって形成される溝と異なり、外側に傾斜しているため、上部電極膜のカバーリングが向上する点で、有利である。
また、レーザスクライブでは、スクライブされる点の周りにも光が照射されるようにすることが、発生した除去物を良導体化して、前記基板などへの静電気的な吸着を防ぐことができる点で、好ましい。
【0038】
また、前記レーザとしては、公知のレーザを適宜選択して使用してもよい。前記公知のレーザの具体例としては、特開平11−312815号公報に記載されているアークランプ等の連続放電ランプによってNd:YAG結晶を励起して発振したレーザ(Nd:YAGレーザ)が挙げられる。
前記レーザスクライブにおける、対象を削る能力はエネルギー密度、パルス時間、波長に依存する。そのため、対象の材料の光吸収率が高い波長のレーザを用いるのが好ましい。例えば、1,064nmと532nmとでは、加工スレッショルドパワーが1桁異なる。
また、パルス時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nsよりは0.1nsが好ましい。また、エネルギー密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、数J/cmが好ましい。
また、スクライブにより形成された溝の上部エッジが盛り上がるのを防ぐ方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レーザ光のビームプロファイルを調整する方法、シリンドリカルレンズを使った異方性の集光ビームを用いる方法が好ましい。このようなスクライブにより形成された溝の上部エッジが盛り上がるのを防ぐ方法としては、例えば、Optics and Lasers in Engineering,34,p15(2000)を参考にすることができる。
【0039】
−メカニカルスクライブ手段−
図6にメカニカルスクライブによる溝の形成の一実施形態を示す。図6では、半導体膜72の一部をメカニカルスクライブ手段71によりストライプ状に除去して前記半導体膜を短冊状に分割している。
図6中、符号73は下部電極膜、符号74は基板を示す。
【0040】
前記メカニカルスクライブ手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溝形成工具が挙げられる。
前記溝形成工具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性のものが好ましく、例えば、タングステン針、ダイヤモンド刃などが挙げられる。
前記スクライブ工程では、前記下部電極膜(例えば、Mo膜)の硬度が高いため、前記Mo膜をストッパーとして半導体膜、又は、半導体膜及び上部電極膜のみに溝を形成することができる。前記第3のスクライブ工程では、半導体膜が下部電極膜よりも軟らかいため、上部電極膜とともに半導体膜が除去される。
前記溝を形成する際の加工負荷、及び前記半導体膜、又は上部電極膜を剥離する際の加工負荷としては、特に制限はなく、膜へのダメージがより少なくなるように適宜調整することができ、例えば、100mN程度が挙げられる。
また、メカニカルスクライブ工程では、物体を擦り合せたり、破壊することにより、電荷が発生するので、タングステン針などの導電性の刃を用い、該針を接地してアース電位としたり、導電性のローラを用いて電気的に接続し、電位を制御したりすることで、発生する電荷を逃がしてもよい。
また、前記第2のスクライブ工程、及び第3のスクライブ工程では、前記溝形成工具によって薄膜へのダメージが少ない溝を形成した後に、剥離工具によって薄膜を剥離してパターニングすると、剥離部分以外に欠け、クラック、膜剥離等がより生じ難くなる点で、好ましい。
前記剥離工具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タングステン針、ダイヤモンドチップなどが挙げられる。
【0041】
また、前記メカニカルスクライブの手段としては、公知の技術を適宜選択して使用してもよい。
前記公知のメカニカルスクライブの技術としては、例えば、特開2004−115356号公報に記載されている先端がテーパー状になった金属針(ニードル)を所定の圧力で押し付けながら移動させることで、光吸収層とバッファ層を掻き取る技術が挙げられる。
また、前記メカニカルスクライブに用いる針の圧力をターゲットに対して一定になるようにアクティブ制御する方法も用いることができ、前記針を櫛形に複数本セットすることにより、一度に複数本の制御をすることができる。また、スクライブ時に切離される線間の抵抗を測定することで合否判定を行い、不良品混入を阻止する技術を用いることもできる。下部電極膜(例えば、Mo電極膜)のスクライブに失敗していると、その後のすべての工程が無駄になる(JENOPTIK GmbH社 パンフレット参照)。
また、特開2004−115356号公報に記載されているように、針先の磨耗を針先形状の顕微鏡観察で評価し必要な圧力を加えて使用する技術を用いることもでき、該技術によれば、針の交換頻度を少なくすると共にスクライブにより形成する溝の形状を安定化でき、歩留まりを向上することができる。また、排気されるガスは、必要に応じてフィルターで粉体や気体を取り除くのが好ましい。
【0042】
−−溝の形状−−
前記スクライブ工程で形成される溝の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、断面略V字状で左右非対称の形状であることが好ましい。前記溝の形状が、断面略V字状で左右非対称の形状であると、除去物の飛散方向を非対称にすることができ、前記半導体層や前記上部電極層をスクライブするときに、発電に寄与する面上への除去物の飛散を少なくすることができる点で、好ましい。
【0043】
<除去工程、除去手段>
前記除去工程は、前記スクライブで生じた除去物を前記基板から除去する工程である。前記除去工程は、除去手段により行うことができる。
また、前記除去工程は、高エネルギー電磁波を照射する処理、及びガスを吹付ける処理の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
前記除去工程を行う段階としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記スクライブ工程中に行ってもよく、前記スクライブ工程後に行ってもよく、前記スクライブ工程中、及び前記スクライブ工程後の段階で行ってもよい。
【0044】
前記除去工程では、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせる。
前記電位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、500V以上が好ましく、1kV以上がより好ましく、1kV〜10kVが特に好ましい。前記電位が、500V未満であると、除去物がとれないことがあり、10kVを超えると、太陽電池の構成部材の絶縁材料や半導体が絶縁破壊することがある。一方、前記電位が前記特に好ましい範囲内であると、除去物の除去の点で、有利である。
【0045】
前記基板に電位を持たせる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接触により電位を持たせる手段、非接触により電位を持たせる手段などが挙げられる。前記接触により電位を持たせる手段の具体例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレードなどが挙げられる。前記非接触により電位を持たせる手段の具体例としては、コロナ帯電器などが挙げられる。
なお、前記基板に電位を持たせる際には、基板の電位を一定に保ち、過剰な電位が生じることを防止するために、前記基板を地面と導通させてもよい。
【0046】
前記基板(基板上のスクライブされる膜(下部電極膜、半導体膜、上部電極膜)を含む)に電位を持たせることにより、スクライブで発生する導電性の除去物は分極してスクライブされた膜に触れると、静電気の反発力が働いて前記スクライブされた膜から離れる。
【0047】
−高エネルギー電磁波、ガス−
前記高エネルギー電磁波を照射する処理、及びガスを吹付ける処理は、スクライブ工程で生じる除去物を効率よく良導体化し、除去物の除去を容易にすることができる点で好ましい。これらの中でも、高エネルギー電磁波を照射する処理が、除去物のキャリア濃度を高めることができる点で、より好ましい。
前記高エネルギー電磁波、及びガスはいずれか単独で使用してもよいし、併用してもよい。
前記高エネルギー電磁波を照射する部分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スクライブ部分に対して照射することが好ましい。
前記高エネルギーとは、前記スクライブ工程で生じたCIGS、ZnOなどを含む除去物の電荷キャリアを励起できるエネルギーをいい、例えば、除去物の材料のバンドギャップ以上のエネルギーをいう。キャリアが励起されることにより除去物の導電性が増し、良導体となる。
前記高エネルギー電磁波の具体例としては、紫外線、軟X線などが挙げられる。
前記高エネルギー電磁波を照射する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線灯、X線管などが挙げられる。
【0048】
前記ガスを吹付ける部分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スクライブ部分に対して吹付けることが好ましい。
前記ガスの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、太陽電池を構成する材料を含むガス、太陽電池を構成する材料と化学反応しにくい気体などが挙げられる。これらの中でも、太陽電池を構成する材料を含むガスが、半導体材料表面のダメージ・欠陥の低減の点で、好ましい。
前記太陽電池を構成する材料としては、上述の半導体膜形成工程などで記載したものが挙げられる。
前記太陽電池を構成する材料と化学反応しにくい気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などが挙げられる。
前記ガスは、イオン化されたものであってもよいし、イオン化されていないものであってもよいし、一部がイオン化されたものであってもよい。これらの中でも、イオン化されたガスが、除去物の電荷の制御性の点で、好ましい。
【0049】
前記ガスのイオン化の程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、プラスイオンとマイナスイオンの両方を同程度含んだイオン化ガスを照射して除去物の電荷を中和することで、太陽電池に静電気力で引き付けられにくくすることができる。さらに、マイナスあるいはプラスの電荷イオンを多くすることで除去物をマイナスあるいはプラスに帯電させ、太陽電池側の電位を除去物と同じ極性にマイナスあるいはプラスに帯電させることで、除去物と太陽電池の間に電気的な反発力を発生させるとより好ましい。これにより除去物が太陽電池に付着しにくくする効果がある。
【0050】
除去物が除去されたことを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SEM等の電子顕微鏡、光学的顕微鏡、AFM観察などにより確認する方法が挙げられる。
【0051】
図4にレーザスクライブ手段と除去手段の一実施形態を示す。図4に示すように基板53はロール54上に支持され、ロール54上でスクライブ手段51によりスクライブされる。前記スクライブ手段51としては、例えば、コリメートファイバアレイ、針アレイが挙げられる。そして、スクライブ手段51によりスクライブされる基板53上のスクライブ部分にはエアノズルアレイ52からガスなどが吹き付けられる。また、前記スクライブ部分には、高エネルギー電磁波である紫外線を、石英窓を介して照射してもよい(不図示)。
前記レーザスクライブでは、スクライブ用レーザ光は光ファイバで供給され、光を照射するコリメートレンズ部分が太陽電池のセルのユニット間隔に並んで固定されている。また、各光照射スポットにエアを噴射するノズルが用意されていることが好ましい。また、コリメートレンズと基板との距離は一定に保たれていることが好ましく、距離を測定しながらフィードバック制御をかけることが好ましい。
また、図4に示すように基板を支持するロール上でスクライブすると、距離を一定に保ち易い点で、更に好ましい。また、ロール上でスクライブすると、ガスを噴射した延長上に他の光照射ポイントや基板が重ならない配置にでき、クリーニング効果を高くできる。
特に、ロール上の基板部分に光を照射し、光照射部分に光照射とは異なる方向にガスを吹付けるのが好ましい。図4の配置であれば、ガスの噴出方向の延長上に基板がないため、吹飛ばした除去物が再び基板に付くことを少なくすることができる。
【0052】
図5Aにコリメートファイバとエアノズルを一体化した形態の一実施形態を示し、図5Bにコリメートファイバとエアノズルが分離した形態の一実施形態を示す。
図5Aでは、コリメートファイバとエアノズルを一体化したもの61のガスの噴出口付近に高電圧を印加することができる先の尖った電極62が配置されている。これにより、電極付近を通過するガスの一部をイオン化することができる。
図5Bでは、コリメートファイバ64とエアノズル66が分離しており、エアノズル66のガスの噴出口付近に高電圧を印加することができる先の尖った電極65が配置されている。これにより、電極付近を通過するガスの一部をイオン化することができる。
前記電極62、及び電極65としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性の針、導電性の細線が挙げられる。
なお、図5A、及び図5B中の符号63は、スクライブされる部分を示し、矢印は、ガスの流れを示す。
前記スクライブがメカニカルスクライブの場合は、コリメートファイバを針に置き換えた構造とすればよい。
また、前記ガスは、スクライブ部分に集中するようにすることが好ましい。
【0053】
<付着工程、付着手段>
前記付着工程は、前記スクライブ工程で生じた除去物を付着させ、回収する工程である。前記除去物は、付着手段により回収される。
前記付着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去物付着用基板などが挙げられる。
【0054】
−除去物付着用基板−
前記除去物付着用基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性を有する基板が好ましい。前記導電性を有する基板を用いることにより、該基板に電位を持たせ、前記除去物を付着させることができる。
また、前記除去物付着用基板は、絶縁体、又は、絶縁体層と導体層を交互に有する層からなるものであってもよい。
前記導電性を有する基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅フィルム、チタンフィルム、アルミニウムフィルム、ステンレスフィルムなどが挙げられる。
前記除去物付着用基板の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記集積型薄膜太陽電池の基板と同じ大きさ、前記集積型薄膜太陽電池の基板より大きいものなどが挙げられる。
前記除去物付着用基板に電位を持たせる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接触により電位を持たせる手段、非接触により電位を持たせる手段などが挙げられる。前記接触により電位を持たせる手段の具体例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレードなどが挙げられる。前記非接触により電位を持たせる手段の具体例としては、コロナ帯電器などが挙げられる。
なお、前記除去物付着用基板に電位を持たせる際には、除去物付着用基板の電位を一定に保ち、過剰な電位が生じることを防止するために、前記除去物付着用基板を地面と導通させてもよい。
前記除去物付着用基板に持たせる電位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500V以上が好ましく、1kV以上がより好ましく、1kV〜10kVが特に好ましい。前記電位が、500V未満であると、除去物が十分にとれないことがあり、10kVを超えると、太陽電池の構成部材などとの間に放電が発生したり、除去物付着用基板の粘着層などの絶縁物が絶縁破壊することがある。一方、前記電位が前記特に好ましい範囲内であると、除去物の除去の点で、有利である。
また、前記除去物付着用基板が導体層を2層以上有する場合、両側の最外側の電極間に電圧を印加することが好ましい。
【0055】
また、前記除去物付着用基板は、表面に粘着層を有することが好ましい。前記粘着層を有することにより、前記除去物が付着した後に離れることがなく、効率的に除去物を取り除くことができる。
前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開平5−309349に記載されたようなブチルゴムなどのゴムシートに僅かにカーボンファイバを混入したもの等の、ゴム系粘着材や、アクリル系粘着材、シリコーン系粘着材、ウレタン系粘着材を使用することができる。溶媒を含むものは真空中でガス源になったり、ガスが抜けると粘着性を失ったりするので、溶媒を含まないものを用いるのが好ましい。
【0056】
前記除去物付着用基板の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記太陽電池の基板に最も近接する側(除去物付着用基板の最表面)に粘着性を有する絶縁層を有し、前記絶縁層の下に導体層を有する構造が特に好ましい。
スクライブ工程で生じる導電性の除去物は、電界の影響を受けると分極し、電極にひきつけられるが、帯電した前記除去物付着用基板に接触すると除去物が帯電し、電気的反発力で前記除去物付着用基板表面から飛び出す可能性がある。しかし、最表面の層が前記粘着性を有する絶縁層であると、付着した除去物が除去物付着用基板の導体からの電荷移動によって帯電せずに、電気的な反発力が発生しない。
【0057】
図7に前記付着工程の一実施形態を示す。
図7に示すように半導体膜などの薄膜を形成した集積型薄膜太陽電池の基板82は、ロール86上で、スクライブ手段85によりスクライブされる。その後、ロール状の除去物付着用基板84をスクライブされた基板82と近接させる。その際、前記除去物付着用基板84に導電性ロール83により電圧を印加する。これにより、前記基板82に付着した除去物を静電気的に吸引することができる。
ここで、前記基板82は、該基板の導電性部分(例えば、アルミニウム部分)が、基板82の送り出し側、及び巻取り側の少なくともいずれかで、例えば、アース電位に接地され、電気的に一定電位に保たれている。また、導電性ロール81などで電気的に接続することで一定電位としてもよい。また、前記基板82のアルミニウム部分と、基板の酸化アルミニウム上に形成されたMo、CIGS、ZnO等の半導体、又は導体とを、スクライブ手段85の導電性のある針、及び導電性ロール81の少なくともいずれかを用いて電気的に接続した状態で、高電圧が印加された除去物付着用基板84を近接させることで、前記基板82のアルミニウム部分と、基板の酸化アルミニウム上に形成されたMo、CIGS、ZnO等の半導体、又は導体を帯電させてもよい。
この状態では、スクライブによって発生した導電性の除去物は前記基板82に近いと分極し、引き付けられるが、前記基板82に接触すると基板82と同電位になり反発力が働いて離れていく。また、除去物は、前記基板82と近接した除去物付着用基板84との間の電界によって、除去物付着用基板84に引き付けられ、除去物付着用基板84に付着する。このとき、発生する除去物の導電性が増すよう、除去物の構成物のキャリアが励起されるよう電磁波、特に可視光、紫外線や軟X線等を照射しながら行うことが好ましい。
また、除去物が付着した除去物付着用基板84は、ロール87によって製造工程の外に取出すことができ、継続的に除去物の除去を行うことができる点で、好ましい。
【0058】
−巻取り工程、巻取り手段−
前記巻取り工程は、前記基板上に短冊状に集積された単位セルを巻取る工程である。前記基板上に短冊状に集積された単位セルは、巻取り手段により巻き取られる。
前記巻取り手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自動張力制御機能、エッジ自動位置制御機能を備えた自動巻取り装置などが挙げられる。
【0059】
前記巻取り工程では、上述した基板供給工程と同様に、前記基板の端部が、電位が一定となる端子に接続されていることが好ましい。前記基板の端部が、電位が一定となる端子に接続されていることにより、基板の電位を一定とすることができる。
前記電位が一定となる端子に接続する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述した基板供給工程と同様の方法を用いることができる。
【0060】
−搬送工程、搬送手段−
前記搬送工程は、前記太陽電池の基板を搬送する工程である。
前記搬送手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記基板を支持するロールなどが挙げられる。
前記ロールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性を有するロールが含まれていることが、基板に発生する静電気を除去することができる点で、好ましい。
また、前記搬送手段は、前記太陽電池の基板に触れる除電用ブラシを備えていることが、基板に発生する静電気を除去することができる点で、好ましい。
【0061】
−除去物回収工程、除去物回収手段−
前記付着工程に加えて、更に除去物回収工程を含んでいてもよい。
前記除去物回収工程は、前記スクライブ工程で生じた除去物を回収する工程である。
前記除去物回収方法、及び手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、特開平5−55187号公報や特開2006−49440号公報に記載されているような導電性粘着材を使った静電集塵法、特開平5−67714号公報に記載されているようなスクライブ等によりゴミの発生場所が特定できる場合に、振動ブラシからイオン化大気を吹付け専用ダクトから吸引する方法、特開平6−252066号公報に記載されているような静電集塵機やイオン化クリーニングガスを用いる方法、特開平8−80453号公報に記載されているような捕集板と誘電体埋設電極間に電圧印加する構造の集塵機を用いる方法、特開平8−316178号公報に記載されているようなドラム型真空用静電集塵機を、スクライブ等のゴミが発生する場所が特定できる場所や、太陽電池の搬送上都合の良い場所に配置する方法、特開平9−82675号公報に記載されているようなイオン照射器と静電集塵による真空用集塵機を製造用真空装置内に取付ける方法、特開2003−51523号公報に記載されているような真空と大気とを行き来可能な基板に静電気で集塵して装置を止めることなく、ゴミを取出せるようにする方法などが挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
ロール・トゥ・ロール方式を用い、真空中で、以下の方法により、集積型薄膜太陽電池1を製造した。
前記集積型薄膜太陽電池の基板としては、絶縁性陽極酸化アルミニウム基板を用いた。
〔真空条件〕
バックプレッシャー:10−5Pa
【0064】
<下部電極膜形成工程>
前記基板上に、下部電極膜として、Mo膜(厚み0.4μm)をスパッタリングにより形成した。スパッタリング条件を以下に示す。
〔スパッタリング条件〕
放電ガス Ar(5〜10sccm)を導入して、電力50WでDC放電をさせた。Moガス圧力を0.5Pa〜20Pa程度でスパッタした。
<第1のスクライブ工程>
前記下部電極膜を以下のレーザスクライブにより、下部電極膜の一部をストライプ状に除去して溝を形成した。これにより、下部電極膜は、溝によって短冊状に分割された。
〔レーザスクライブ〕
YAGレーザの第二高長波532nmにて10kHzの繰返し周波数で、幅80nmのスクライブを行った。
<除去工程>
前記基板は、その端部を電位が、100Vで一定となるように直流電源に接続した。
−高エネルギー電磁波照射−
また、高エネルギー電磁波として、紫外線を、紫外線を透過する石英の窓を介して真空装置の外からスクライブ部分に照射した。
高エネルギー電磁波としては、CuInSe2 膜のエネルギーギャップは約1.4eV、CdS膜のエネルギーギャップは約2.5eV、ZnO膜のエネルギーギャップは約3.2eVであり、これらのエネルギーギャップを超える光子エネルギーを有する波長は約0.39μm以下が好ましく、約260nmにピークをもつ殺菌灯が好適に使用できる。
<付着工程>
除去物付着用基板として、粘着剤層を表面に有する銅フィルムを用いた。前記粘着剤層の材料は、ブチルゴム系の粘着シートであり、接着剤により銅フィルムの表面に粘着剤層を張付けた。また、前記除去物付着用基板は、電位が、−2kVで一定となるようにアース電位に接地した。
【0065】
<除去物除去性評価>
前記第1のスクライブ工程、除去工程、及び付着工程の後の基板上の除去物について、SEM観察により、前記基板の100μm×130μmの範囲を3箇所観察し、長径が2μmを超えるゴミを数え、以下の基準で除去物除去性を評価した。結果を表1に示す。
○:200個以下
△:201個以上、20,000個以下
×:20,001個以上
【0066】
<半導体膜形成工程>
前記下部電極膜、及び下部電極膜が除去されて露出した基板上に、半導体膜として、Cu(In,Ga)Se(CIGS)膜と、II族元素、及びVI族元素を含む化合物とを積層した半導体膜(厚み1.8μm)を以下のスパッタリングにより形成した。
まず、NaFをスパッタにて約20nm成膜した。次に、CIGS層をインライン蒸着法にて成膜した。Moコート基板上にバイレイヤー法を用いてCu(In,Ga)Se光吸収層を作製した。バイレイヤー法の詳細を以下に示す。
はじめに、第1段階としてCu、In、Ga及びSeのKセルから、Cu、In、Ga及びSeを基板表面に供給しながら基板を移動させてCu(In,Ga)Se膜を作製した。その際、Cuのフラックスを過剰に供給し、作製されるCu(In,Ga)Se膜がCuリッチ(膜中のI族元素であるCuとIII族元素であるInとGaの比がCu/(In+Ga)>1)となるようにした。次に移動した先において第2段階として、In、Ga及びSeのKセルよりInとGaとSeのみを供給し、Cu(In,Ga)Se膜全体が(In,Ga)リッチとなるように膜厚約1.8μmのCu(In,Ga)Se膜を作製した。
次に、ZnSをスパッタにて約50nm成膜した。
<第2のスクライブ工程>
前記半導体膜を、溝形成工具として、タングステン針を用い、半導体膜の一部をストライプ状に除去して溝を形成した。これにより、半導体膜は、溝によって短冊状に分割された。
<除去工程、及び付着工程>
前記第2のスクライブ工程では、前記第1のスクライブ工程における除去工程、及び付着工程と同様にして、除去物を除去した。
また、前記第2のスクライブ工程の後の基板上の除去物の数を前記第1のスクライブ工程後と同様に測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0067】
<上部電極膜形成工程>
前記半導体膜、及び半導体膜が除去されて露出した下部電極膜上に、上部電極膜として、ZnO膜と、ITO膜との2層膜(厚み各0.5μm)を以下のスパッタリングにより形成した。
ITO膜が外側になるように、まず、ZnOを成膜し、次にFRスパッタにてITO薄膜を成膜した。
<第3のスクライブ工程>
前記上部電極膜を、前記第2のスクライブ工程と同様にしてスクライブを行い、上部電極膜の一部をストライプ状に除去して溝を形成した。これにより、上部電極膜は、溝によって短冊状に分割された。
<除去工程、及び付着工程>
前記第3のスクライブ工程では、前記第1のスクライブ工程における除去工程、及び付着工程と同様にして、除去物を除去した。
また、前記第3のスクライブ工程の後の基板上の除去物の数を前記第1のスクライブ工程後と同様に測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0068】
以上により、セル面積が4cm、直列接続された3つの単位セルからなるCIGS系の集積型薄膜太陽電池を得た。
【0069】
(実施例2)
実施例1において付着工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例2のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
実施例1の除去工程において高エネルギー電磁波の照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例3のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
実施例1において、付着工程を行わなかった点、除去工程において高エネルギー電磁波の照射を行わなかった点以外は、実施例1と同様にして、実施例4のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
実施例1の除去工程において、更にガスとして、Arを以下の条件でスクライブ部分に吹付けた以外は、実施例1と同様にして、実施例5のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
〔ガス吹付け条件〕
イオン銃を用い、イオン加速電圧200eV以下、イオン照射電流密度20μA/cm以下の条件で照射した。
【0073】
(実施例6)
実施例5において、付着工程を行わなかった以外は、実施例5と同様にして、実施例6のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例7)
実施例5の除去工程において、高エネルギー電磁波の照射を行わなかった以外は、実施例5と同様にして、実施例7のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例8)
実施例5において、付着工程を行わなかった点、除去工程において高エネルギー電磁波の照射を行わなかった点以外は、実施例5と同様にして、実施例8のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例9〜実施例16)
実施例1〜8の第2のスクライブ工程、及び第3のスクライブ工程を以下のレーザスクライブに変えた以外は、実施例1〜8と同様にして、実施例9〜16のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表2に示す。
−レーザスクライブ−
前記第2のスクライブ工程、及び第3のスクライブ工程では、レーザ光として、YAGのTHG光を繰返し周波数10kHzの条件で照射することによって、薄膜の一部をストライプ状に除去して溝を形成し、半導体膜、又は上部電極膜を、溝によって短冊状に分割した。
【0077】
(実施例17〜実施例24)
実施例1〜8の第2の半導体膜形成工程を以下のように変えた以外は、実施例1〜8と同様にして、実施例17〜24のSi系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表3に示す。
−半導体膜形成工程−
前記下部電極膜、及び下部電極膜が除去されて露出した基板上に、以下の半導体膜をCVD法により形成した。
モノシランガスを使いn層を100nmの厚さに積層した。続いて、i層を400nmの厚さに積層した。その後、非晶質半導体の光電変換層のp層を12nmの厚さに積層した。
【0078】
(実施例25〜実施例32)
実施例17〜24の第2のスクライブ工程、及び第3のスクライブ工程を以下のレーザスクライブに変えた以外は、実施例17〜24と同様にして、実施例25〜32のSi系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表4に示す。
−レーザスクライブ−
前記第2のスクライブ工程、及び第3のスクライブ工程では、レーザ光として、YAGの第二高長波を照射することによって、薄膜の一部をストライプ状に除去して幅50μmの溝を形成し、半導体膜、又は上部電極膜を、溝によって短冊状に分割した。
【0079】
(実施例33〜実施例64)
実施例1〜32において、真空中で行っていた点を、大気圧中に変えた以外は、実施例1〜32と同様にして、実施例33〜64のCIGS系又は、Si系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表5〜表8に示す。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、除去工程、及び付着工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表9に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例9において、除去工程、及び付着工程を行わなかった以外は、実施例9と同様にして、比較例2のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表9に示す。
【0082】
(比較例3)
実施例33において、除去工程、及び付着工程を行わなかった以外は、実施例33と同様にして、比較例3のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表9に示す。
【0083】
(比較例4)
実施例41において、除去工程、及び付着工程を行わなかった以外は、実施例41と同様にして、比較例4のCIGS系の集積型薄膜太陽電池を製造した。また、実施例1と同様にして、除去物除去性評価を行った。結果を表9に示す。
【0084】
<太陽電池の性能評価>
前記実施例1〜実施例64、及び比較例1〜4で得られた太陽電池の性能を以下のようにして試験を行い、下記評価基準により評価した。
−試験方法−
太陽電池セルの発電効率を18枚測定し、平均値を求めた。
−評価基準−
CIGS系太陽電池の場合
○: 発電効率の平均値が、12%以上。
△: 発電効率の平均値が、10%以上12%未満。
×: 発電効率の平均値が、10%未満。
Si系太陽電池の場合
○: 発電効率の平均値が、8%以上。
△: 発電効率の平均値が、6%以上8%未満。
×: 発電効率の平均値が、6%未満。
【0085】
<収率評価>
前記実施例1〜実施例64、及び比較例1〜4で得られた太陽電池について、18枚のセルのうち、CIGS系太陽電池の場合、発電効率が、12%以上であったセルの数の比率を求め、Si系太陽電池の場合、発電効率が、8%以上であったセルの比率を求め、以下の基準で、収率を評価した。結果を表1〜表9に示す。
◎:収率が、0.9以上。
○:収率が、0.8以上、0.9未満。
△:収率が、0.2以上、0.8未満。
×:収率が、0.2未満。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
図8に第3スクライブ工程後の基板上の除去物の数を示す。また、図9に収率を示す。
【0096】
表1〜表9、及び図8〜9の結果より、集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせる除去工程を行った実施例1〜64の製造方法では、製造工程において除去物を除去することができ、前記実施例1〜64の製造方法で製造された集積型薄膜太陽電池は性能にも優れており、収率が高かった。特に実施例13は、他の実施例よりも優れていた。
一方、集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせる除去工程を行わなかった、比較例1〜4の製造方法では、製造工程において除去物を除去することができず、また、得られた集積型薄膜太陽電池の性能にもバラツキがあり、収率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の集積型薄膜太陽電池の製造方法によれば、集積型薄膜太陽電池の製造工程において生じる除去物を効率よく除去することができ、優れた収率で集積型薄膜太陽電池を製造することができる。
本発明の集積型薄膜太陽電池の製造装置によれば、集積型薄膜太陽電池の製造工程において生じる除去物を効率よく除去することができ、優れた収率で集積型薄膜太陽電池を製造することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 基板
2 下部電極膜
3 半導体膜
4 上部電極膜
5 単位セル
10 集積型薄膜太陽電池
12 下部電極膜
14 上部電極膜
15 単位セル
31 基板供給手段
32、34、36、38、40、42、44 接続手段
33 下部電極膜形成手段
35 第1のスクライブ手段
37 半導体膜形成手段
39 第2のスクライブ手段
41 上部電極膜形成手段
43 第3のスクライブ手段
45 巻取り手段
46 基板
51 スクライブ手段
52 エアノズルアレイ
53 基板
54 ロール
61 コリメートファイバとエアノズルを一体化したもの
62 電極
63 スクライブされる部分
64 コリメートファイバ
65 電極
66 エアノズル
71 メカニカルスクライブ手段
72 半導体膜
73 下部電極膜
74 基板
81 導電性ロール
82 基板
83 導電性ロール
84 除去物付着用基板
85 スクライブ手段
86 ロール
87 ロール
L1 レーザ光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積型薄膜太陽電池の製造方法であって、
スクライブ工程と、
前記スクライブで生じた除去物を前記基板から除去する除去工程とを含み、
前記除去工程が、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせることを特徴とする集積型薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項2】
少なくとも除去工程が真空中で行われる請求項1に記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項3】
除去工程が、スクライブ部分に、高エネルギー電磁波を照射する処理、及びガスを吹付ける処理の少なくともいずれかを含む請求項1から2のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
除去物を付着させる付着工程を含む請求項1から3のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
ロール・トゥ・ロール方式である請求項1から4のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項6】
カルコパイライト系半導体を用いた集積型薄膜太陽電池である請求項1から5のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項7】
集積型薄膜太陽電池の製造装置であって、
スクライブ手段と、
前記スクライブで生じた除去物を前記基板から除去する除去手段とを含み、
前記除去手段が、前記集積型薄膜太陽電池の基板に電位を持たせる手段であることを特徴とする集積型薄膜太陽電池の製造装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−251525(P2010−251525A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99422(P2009−99422)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】