説明

離型剤塗布装置

【課題】 型枠の大きさや配置パターンの異なる型枠設置台が順次搬送される状況において、それら型枠設置台の型枠にのみ離型剤を塗布する離型剤塗布装置を提供する。
【解決手段】 この離型剤塗布装置は、搬送中の型枠設置台(2)のIDタグ(11)に記録されている識別情報をIDリーダ(12)によって読み取って、その識別情報に対応する型枠配置情報を記憶手段から読み出し、型枠設置台(2)における型枠部分のみに離型剤を塗布するように、読み出した型枠配置情報に基づいて離型剤噴射器(10)(10)…を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送される型枠設置台上の型枠に対して離型剤を自動的に塗布するための離型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート製の外壁パネルの製造ラインにおいては、型枠内へのコンクリートの打設、養生、脱型、型枠の清掃の4工程が順次なされている。型枠は、型枠設置台に設置された状態でコンベアによって所定速度で搬送され、コンクリートの打設前には、脱型を容易にするための水溶性液体である離型剤が塗布されるようになっている。
【0003】
この離型剤の塗布作業は、従来より手作業で行われていたが、近年では自動化が図られている。例えば、搬送される型枠設置台の通過を近接センサによって検知すると、スプレーノズルから離型剤を噴射させて型枠に対する離型剤の塗布を開始し、所定時間が経過すると、離型剤の噴射を停止して塗布を完了することで、離型剤の塗布作業を自動化した離型剤塗布装置がある。
【0004】
また、特許文献1にも開示されているように、ローラ等を使用して離型剤を自動的に塗布する離型剤塗布装置も提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−37716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製造ラインにおいて、種類の異なる外壁パネルを順次製造する場合、型枠の大きさや配置パターンの異なる型枠設置台が順次搬送されることになるが、従来の離型剤塗布装置では、このような状況に柔軟に対応することが困難であった。
【0007】
例えば、スプレーノズルを用いた離型剤塗布装置においては、図8に示すように、型枠(51)(52)以外の部位を含めた型枠設置台(50)のほぼ全面に離型剤を噴射することで対応している。しかし、この場合には、離型剤を必要箇所以外にまで塗布することになって、離型剤の無駄使いになるとともに、作業者に対して安全で衛生的な作業環境を提供することができないといった問題があった。また、型枠設置台上にて作業を行う作業者の靴に離型剤が付着することで、型枠設置台の周辺にまで環境の悪化が及んでしまうことがあった。
【0008】
また、ローラを用いた離型剤塗布装置においては、型枠内に差し入れたローラを型枠内面に接触するまで移動させて、この状態でローラを型枠内面に沿って移動させることで、型枠の大きさや配置パターン等が異なっても、型枠部分にのみ離型剤を塗布することができるようになっている。しかし、この場合には、型枠の大きさや配置パターンに関係なく、単にローラを型枠の内面に接触させて移動させているだけであり、ローラの動きに無駄が生じて作業効率の低下を招き易い。
【0009】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、型枠の大きさや配置パターンの異なる型枠設置台が順次搬送される状況において、それら型枠設置台の型枠に対して効率良く的確に離型剤を塗布することができる離型剤塗布装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明の離型剤塗布装置は、搬送中の型枠設置台上の型枠に対して、塗布手段によって離型剤を自動的に塗布するためのものであって、各型枠設置台における型枠の配置状況を示す型枠配置情報と各型枠設置台の固有の識別情報とを関連づけて記憶する記憶手段と、搬送中の型枠設置台の識別情報を読み取る読取手段と、この読取手段で読み取った識別情報に対応する型枠配置情報を前記記憶手段から読み出して、前記識別情報を読み取った型枠設置台における型枠部分のみに離型剤を塗布するように、読み出した型枠配置情報に基づいて前記塗布手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
具体的に、前記読取手段は、前記型枠設置台に取り付けたIDタグに記録されている前記識別情報を読み取るIDリーダからなる。
【0012】
また、前記塗布手段は、前記型枠設置台の搬送路上方において、搬送方向に対して略直交する方向に間隔をあけて配置した複数の離型剤噴射器からなり、前記制御手段は、前記読み出した型枠配置情報に基づいて、前記複数の離型剤噴射器のうち使用する離型剤噴射器を選択してその噴射タイミングを設定するとともに、前記識別情報を読み取った型枠設置台の通過を検知する通過検知センサからの検知信号により、前記選択した離型剤噴射器の開閉弁を前記噴射タイミングに従って開閉する。
【0013】
さらに、離型剤の塗布が不要な型枠設置台の識別情報を記録する記録手段を備え、前記制御手段は、前記読取手段で読み取った識別情報が前記記録手段に記録されている場合に、その識別情報が付与された型枠設置台に対する前記塗布手段による離型剤の塗布を禁止する。
【発明の効果】
【0014】
この発明の離型剤塗布装置では、搬送中の型枠設置台の型枠配置状況を離型剤の塗布前に事前に把握し、その型枠配置状況に応じて塗布手段を制御して、型枠設置台における型枠部分にのみ離型剤を塗布するようになっている。このため、型枠の大きさや配置パターンの異なる型枠設置台が順次搬送される状況において、離型剤を必要箇所にのみ的確に効率良く塗布して、材料費の削減及び作業効率の向上を図ることができるとともに、作業者に対して安全で衛生的な作業環境を提供することができる。
【0015】
また、搬送方向に対して略直交する方向に間隔をあけて配置した複数の離型剤噴射器のうち使用する離型剤噴射器を選択して、それら離型剤噴射器の噴射タイミングを設定することによって、型枠配置状況に応じた離型剤の塗布を実現しているので、ローラや噴射器を移動させながら離型剤を塗布する場合と比べて、構造を簡単にすることができる。
【0016】
さらに、製造ラインにおいて離型剤の塗布が不要な型枠設置台が搬送されても、その型枠設置台に対しては離型剤の塗布を自動的に禁止するので、離型剤の無駄を確実に防止することができ、作業効率をさらに向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の実施形態に係る離型剤塗布装置は、図1に示すように、コンクリート製の外壁パネルの製造ラインに設けられており、コンクリートの打設前に、例えばチェーンコンベア(1)によって順次搬送される型枠設置台(2)上の外壁パネル成型用の型枠(3)に対して、脱型を容易にするための離型剤を自動的に塗布するためのものである。なお、製造ラインにおいて複数用意された型枠設置台(2)(2)…には、大きさや配置パターンの異なる各種の型枠(3)(3)…が夫々設置されている。
【0018】
上記の離型剤塗布装置は、塗布手段としての複数の離型剤噴射器(10)(10)…と、複数用意された型枠設置台(2)(2)…の夫々に取り付けられて、型枠設置台(2)(2)…の固有の識別情報が記録されたIDタグ(11)(11)…と、チェーンコンベア(1)の脇に固定されて、搬送中の型枠設置台(2)(2)…のIDタグ(11)(11)…に記録されている識別情報を読み取る読取手段としてのIDリーダ(12)と、型枠設置台(2)(2)…の所定位置における通過を検知する通過検知センサ(13)と、プログラマブルコントローラ「以下、PLCと称する。」(14)及びパーソナルコンピュータ「以下、PCと称する。」(15)とを備えている。
【0019】
離型剤噴射器(10)(10)…は、例えば10個用意されており、搬送路上方すなわちチェーンコンベア(1)の上方において、搬送方向に対して略直交する方向に等間隔をあけて配置されている。そして、離型剤噴射器(10)は、図5に示すように、電磁弁からなる開閉弁(16)を備えており、この開閉弁(16)の開閉動作によって、図示しない供給装置から供給された離型剤がノズル(17)からチェーンコンベア(1)上の型枠設置台(2)へ向かって噴射するようになっている。
【0020】
通過検知センサ(13)は、IDリーダ(12)よりも搬送方向下流側で離型剤噴射器(10)(10)…よりも搬送方向上流側において、チェーンコンベア(1)を挟むようにして対向配置された受発光素子(13a)(13b)を備えた光電センサからなり、型枠設置台(2)の搬送方向前端部が受発光素子(13a)(13b)間を通過して光路を遮断することで、型枠設置台(2)の通過を検知するようになっている。
【0021】
PLC(14)は、PC(15)からの指令に基づいて離型剤噴射器(10)(10)…の開閉弁(16)(16)…の開閉動作をコントロールするもので、図2に示すように、その入力側にIDリーダ(12)及び通過検知センサ(13)が接続され、出力側に10個の開閉弁(16)(16)…が接続されている。
【0022】
PC(15)は、図3に示すように、制御手段としての中央演算処理装置「以下、CPUと称する。」(30)、リードオンリーメモリ(ROM)(31)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(32)、キーボードやマウス等の入力部(33)、記憶手段としてのハードディスク等からなる記憶部(34)、記録手段としてのUSBメモリ等からなる外部記録部(35)、ディスプレイやプリンタ等からなる出力部(36)を備えている。
【0023】
このPC(15)の記憶部(34)には、各型枠設置台(2)(2)…の固有の識別情報と各型枠設置台(2)(2)…における型枠(3)(3)…の配置状況を示す型枠配置情報とが関連づけて記憶されていて、データベース化されている。ここで、識別情報は、例えば各型枠設置台(2)(2)…に付与された識別番号であり、型枠設置台(2)(2)…が10台ある場合には、各型枠設置台(2)(2)…に対してNo1〜No10の識別番号が順次付与されている。型枠配置情報は、例えば方形の型枠設置台(2)の1つの角部を基準として、方形の型枠(3)の4つの角部を座標(x,y)で夫々示したものである。
【0024】
CPU(30)は、IDリーダ(12)で読み取ったIDタグ(11)の識別情報に対応する型枠配置情報を記憶部(34)から読み出して、型枠設置台(2)における型枠(3)部分のみに離型剤を塗布するように、読み出した型枠配置情報に基づいて、PLC(14)を介して離型剤噴射器(10)(10)…を制御するようになっている。具体的に、CPU(30)は、読み出した型枠配置情報に基づいて、10個の離型剤噴射器(10)(10)…のうち使用する離型剤噴射器(10)(10)…を選択して、その噴射タイミングを設定する。そして、通過検知センサ(13)からの検知信号により、PLC(14)を介して選択した離型剤噴射器(10)(10)…の開閉弁(16)(16)…を決定した噴射タイミングに従って開閉するようになっている。
【0025】
また、外部記録部(35)には、離型剤の塗布が不要な型枠設置台(2)(2)…の識別情報を記録する。この外部記録部(35)を、製造ラインが稼動し始める前にPC(15)にセットすることで、CPU(30)は、IDリーダ(12)で読み取った識別情報が外部記録部(35)に記録されているか否かを判断して、記録されている場合には、PLC(14)に指令を送らないようにして、その識別情報が付与された型枠設置台(2)に対する離型剤の塗布を禁止するようになっている。
【0026】
次に、上記構成の離型剤塗布装置による離型剤の塗布作業を、図4及び図5に基づいて説明する。清掃後の型枠(3)を設置した型枠設置台(2)がチェーンコンベア(1)によって搬送されてくると、その型枠設置台(2)のIDタグ(11)に記録されている識別情報をIDリーダ(12)によって読み取る(S1)。このIDリーダ(12)で読み取った識別情報は、PC(15)内に送信されて、CPU(30)によって外部記録部(35)に記憶されている識別情報との照会がなされ(S2)、読み取った識別情報が付与された型枠設置台(2)において離型剤の塗布が必要か否かを判別する(S3)。すなわち、読み取った識別情報が外部記録部(35)に記録されていれば離型剤の塗布が不要な型枠設置台(2)として判断し、外部記録部(35)に記録されていなければ離型剤の塗布が必要な型枠設置台(2)として判断する。
【0027】
そして、離型剤の塗布が不要な型枠設置台(2)である場合には、通過検知センサ(13)によって型枠設置台(2)の通過が検知されても(S4)、CPU(30)はPLC(14)に対して指令を出すことなく、離型剤噴射器(10)(10)…からの離型剤の噴射が禁止されて(S5)、型枠設置台(2)はそのまま搬送されていく。
【0028】
離型剤の塗布が必要な型枠設置台(2)である場合には、CPU(30)は、読み取った識別情報に関連付けられている型枠配置情報を記憶部(34)から読み出して(S6)、この型枠配置情報すなわち型枠(3)の各座標に基づいて、使用する離型剤噴射器(10)(10)…を選択するとともに、それらの噴射タイミングを設定する(S7)。ここで、噴射タイミングは、通過検知センサ(13)から離型剤噴射器(10)(10)…までの距離及び型枠設置台(2)の搬送速度を考慮しながら、通過検知センサ(13)によって型枠設置台(2)の通過を検知してから噴射を開始するまでの時間及び噴射を終了するまでの時間を計算することによって得られる。
【0029】
そして、通過検知センサ(13)によって型枠設置台(2)の通過を検知すると(S8)、CPU(30)が、PLC(14)を介して選択した離型剤噴射器(10)(10)…の開閉弁(16)(16)…を計算した噴射開始時間から噴射終了時間まで開放して、選択した離型剤噴射器(10)(10)…の直下に位置する型枠部分にのみ離型剤を噴射する(S9)。
【0030】
図1に示す型枠設置台(2)の搬送時においては、型枠設置台(2)に設置されている2つの型枠(3)(3)に対応して、例えば左側から2番目乃至5番目、及び、7番目乃至9番目の離型剤噴射器(10)(10)…を選択して(図6参照)、これら離型剤噴射器(10)(10)…を、通過検知センサ(13)によって型枠設置台(2)の通過を検知してから、例えば2秒後に噴射を開始して10秒後に噴射を終了することで、図7に示すように型枠(3)(3)に対してのみ離型剤を塗布する。そして、順次搬送されてくる型枠設置台(2)に対して、上記と同様の離型剤塗布作業を繰り返す。これにより、型枠(3)の大きさや配置パターンの異なる型枠設置台(2)が順次搬送されても、効率良くしかも必要な箇所にのみ的確に離型剤を塗布することができる。
【0031】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態に係る離型剤塗布装置による離型剤塗布作業を示す斜視図である。
【図2】離型剤塗布装置のブロック図である。
【図3】PCの構成図である。
【図4】離型剤塗布装置による離型剤塗布作業を示すフローチャートである。
【図5】離型剤塗布作業の流れを示す図である。
【図6】離型剤噴射器の噴射状態を示す図である。
【図7】型枠設置台に対する離型剤の塗布状態を示す図である。
【図8】従来の型枠設置台に対する離型剤の塗布状態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
(2) 型枠設置台
(3) 型枠
(10) 離型剤噴射器(塗布手段)
(11) IDタグ
(12) IDリーダ(読取手段)
(13) 通過検知センサ
(16) 開閉弁
(30) CPU(制御手段)
(34) 記憶部(記憶手段)
(35) 外部記録部(記録手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の型枠設置台上の型枠に対して、塗布手段によって離型剤を自動的に塗布するための離型剤塗布装置であって、各型枠設置台における型枠の配置状況を示す型枠配置情報と各型枠設置台の固有の識別情報とを関連づけて記憶する記憶手段と、搬送中の型枠設置台の識別情報を読み取る読取手段と、この読取手段で読み取った識別情報に対応する型枠配置情報を前記記憶手段から読み出して、前記識別情報を読み取った型枠設置台における型枠部分のみに離型剤を塗布するように、読み出した型枠配置情報に基づいて前記塗布手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする離型剤塗布装置。
【請求項2】
前記読取手段は、前記型枠設置台に取り付けたIDタグに記録されている前記識別情報を読み取るIDリーダからなる請求項1記載の離型剤塗布装置。
【請求項3】
前記塗布手段は、前記型枠設置台の搬送路上方において、搬送方向に対して略直交する方向に間隔をあけて配置した複数の離型剤噴射器からなり、前記制御手段は、前記読み出した型枠配置情報に基づいて、前記複数の離型剤噴射器のうち使用する離型剤噴射器を選択してその噴射タイミングを設定するとともに、前記識別情報を読み取った型枠設置台の通過を検知する通過検知センサからの検知信号により、前記選択した離型剤噴射器の開閉弁を前記噴射タイミングに従って開閉する請求項1又は2記載の離型剤塗布装置。
【請求項4】
離型剤の塗布が不要な型枠設置台の識別情報を記録する記録手段を備え、前記制御手段は、前記読取手段で読み取った識別情報が前記記録手段に記録されている場合に、その識別情報が付与された型枠設置台に対する前記塗布手段による離型剤の塗布を禁止する請求項1乃至3のいずれかに記載の離型剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−159491(P2006−159491A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351167(P2004−351167)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】