説明

離型方法

【課題】従来よりも少ないエネルギーで離型することができる離型方法を提供する。
【解決手段】型1を用いて成型された成型物3を型1から分離する離型方法において、前記成型物3に超音波振動子7を直接当接すること、前記成型物3をインパクトハンマで直接打撃すること、前記成型物3の端部に圧縮空気を吹きつけること、前記成型物3の端部に楔を入れ込むことの少なくともいずれかによって、型1から成型物3を分離する離型方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型方法に係り、たとえば、上型と下型とを用いて成型された成型物を下型から離す離型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型でガラスレンズを成型し、この成型後に振動子を用いてガラスレンズを型から離す離型方法が知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248804号公報
【特許文献2】特開2007−320037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の離型方法では、金型を振動子で振動させているので、多くのエネルギーが必要になる。すなわち、金型の質量や剛性が、この金型で成型されるガラスレンズの質量や剛性に比べて相当に大きいので、金型からのガラスレンズの離型が可能なまで金型を振動させるには、大きなエネルギーが必要になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、型を用いて成型された成型物を型から分離する離型方法において、従来よりも少ないエネルギーで離型することができる離型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、型を用いて成型された成型物を前記型から分離する離型方法において、前記成型物に超音波振動子のホーンを直接当接すること、前記成型物をインパクトハンマで直接打撃すること、前記成型物の端部に圧縮空気を吹きつけること、前記成型物の端部に楔を入れ込むことの少なくともいずれかによって、前記型から前記成型物を分離する離型方法である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上型と下型とを用いて成型物を成型し、この成型後に前記下型に成型物が残るように前記上型を前記下型と前記成型物とから離した後、前記下型から前記成型物を分離する離型方法において、前記下型と前記成型物との密着面に主としてせん断力が発生するように、前記成型物に超音波振動子を直接当接して、前記下型から前記成型物を分離する離型方法である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の離型方法において、前記成型物は、厚さ方向の面に複数の凸部が並んで形成されている平板状のレンズ集合体であり、前記超音波振動子を、前記レンズ集合体の外周の一部に当接させ、前記レンズ集合体をこの厚さ方向と直交する方向に振動させる離型方法である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の離型方法において、前記超音波振動子を用いた分離によって、前記レンズ集合体の一部を前記下型から僅かに剥離し、この剥離をした後に前記剥離部分を次第に広げて、前記レンズ集合体を前記下型から離す離型方法である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上型と下型とを用いて、厚さ方向の面に複数の凸部が並んで形成されている平板状のレンズ集合体を成型し、この成型後に前記下型にレンズ集合体が残るように前記上型を前記下型と前記レンズ集合体とから離した後、前記下型から前記レンズ集合体を分離する離型方法において、前記レンズ集合体の端部をインパクトハンマで直接打撃すること、もしくは、前記レンズ集合体の端部に圧縮空気を吹きつけること、もしくは、前記レンズ集合体の端部に楔を入れ込むことによって、前記レンズ集合体の一部を前記下型から僅かに剥離し、この剥離をした後に前記剥離部分を次第に広げて、前記レンズ集合体を前記下型から離す離型方法である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、基板の面に膜状に設けられている成型材料を、型を用いて成型して成型物を生成し、この後に前記型から前記成型物を分離する離型方法において、
前記型と前記成型物との密着面に主としてせん断力が発生するように前記成型物に超音波振動子を直接当接すること、もしくは、前記成型物の端部をインパクトハンマで直接打撃すること、もしくは、前記成型物の端部に圧縮空気を吹きつけること、もしくは、前記成型物の端部に楔を入れ込むことによって、前記型から前記成型物を分離する離型方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも少ないエネルギーで離型をすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る離型方法で、下型から離型されたレンズ集合体の概略構成を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるI−I断面図である。
【図2】上型と下型とを用いたレンズ集合体の成型方法の概要を示す図である。
【図3】超音波振動子と真空吸着用の吸盤とを用いた、レンズ集合体の下型からの離型方法の概要を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるIII矢視図である。
【図4】レンズ集合体の下型からの離型方法の概要を示す図であり、(a)は楔を用いた場合を示しており、(b)は圧縮空気を用いた場合を示している。
【図5】基板に形成された成型物の離型方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る離型方法は、金型もしくはガラス等の型1用いて、成型材料を硬化して成型された成型物3(図2参照)を型1から分離する(離型する)方法である。これにより図1に示す単独の成型物3を得ることができる。
【0015】
成型物3は、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂等の樹脂もしくはガラスで構成されている。また、この実施形態では、成型物3として、レンズ集合体を例に掲げて説明する。
【0016】
ここで、レンズ集合体3について詳しく説明する。レンズ集合体3は、図1等で示すように、平板状に形成されており、厚さ方向の面に複数の凸部(たとえば球冠状もしくはこぶ状の凸部)5が並んで形成されている。
【0017】
レンズ集合体3は可視光線等の所定の波長の電磁波を透過するようになっている。また、レンズ集合体3は、各凸部5毎に切り離されて、たとえば、携帯電話のカメラのレンズとして使用される。
【0018】
各凸部5は、レンズ集合体3の厚さ方向のたとえば両面に形成されている。すなわち、図1(b)、図2(b)、(c)で示すように、レンズ集合体3下側には各凸部5Bが形成されており、レンズ集合体3上側には各凸部5Aが形成されている。
【0019】
レンズ集合体3をこの厚さ方向から見ると、図1(a)で示すように、各凸部5は、所定の間隔をあけて並んでおり、レンズ集合体3に設けられている各凸部5Aの中心位置のそれぞれと、レンズ集合体3に設けられている各凸部5Bの中心位置のそれぞれとが、お互いに一致している。そして、これらの各凸部5の部分が凸レンズとして作用するようになっている。
【0020】
さらに、レンズ集合体3は、各凸部5が存在しないとすると、たとえば円形の平板状(円板状)に形成されている。円板の直径は、4インチ〜8インチ程度である。また、図1等では、説明の便宜のために凸部5が19個だけ描かれているが、実際には、凸部5は、数百個〜数千個存在している。
【0021】
次に、離型方法について説明する。レンズ集合体3の型1からの離型は、次の(1)〜(4)で示すことの少なくともいずれかを行うことによってなされる。
【0022】
(1)レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)に超音波振動子7の超音波振動しているホーン9を直接当接して、レンズ集合体3の外周の一部を型1から僅かに剥離すること(図3(a)参照)。
【0023】
(2)レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)をインパクトハンマで直接打撃してレンズ集合体3の外周の一部を型1から僅かに剥離すること(図示せず)。
【0024】
(3)レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)に、ノズル11から噴出している圧縮空気を吹きつけること(圧縮空気を吹き付け吹き込んでレンズ集合体3の外周の一部を型1から僅かに剥離すること;図4(b)参照)。
【0025】
(4)レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)に、楔13を入れ込むこと(楔13を入れ込んでレンズ集合体3の外周の一部を型1から僅かに剥離すること;図4(a)参照)。
【0026】
上記(1)〜(4)のいずれかによってレンズ集合体3の一部を僅かに剥がした後、詳しくは後述するが、真空吸着等によって保持したレンズ集合体3を型1から離す方向に移動することで、僅かに離型した部分を次第に広げて、型1からレンズ集合体3が分離される(離型される)。
【0027】
なお、超音波振動子7、インパクトハンマ、圧縮空気、楔13を用いて、レンズ集合体3を型1から完全に離すようにしてもよい。たとえば、超音波振動子7のホーン9をレンズ集合体3に当接させ、レンズ集合体3全体をごく僅かに振動させることで、レンズ集合体3の全体を型1から離すようにしてもよい。
【0028】
離型方法について例を掲げてより詳しく説明する。
【0029】
型1は、上型1Aと下型1Bとを備えて構成されている。そして、上型1Aと下型1Bとを用いてレンズ集合体3が成型される。
【0030】
ここで、上型1Aと下型1Bとを用いたレンズ集合体3の成型について説明する。
【0031】
上型1Aは、たとえば円形状で平板状に形成されており、図2(a)で示すように、下面にレンズ集合体3の各凸部5Aを成型するために複数の凹部15が形成されている。下型1Bも、たとえば円形状で平板状に形成されており、図2(a)で示すように、上面にレンズ集合体3の各凸部5Bを成型するために複数の凹部17が形成されている。
【0032】
まず、上型1Aが下型1Bから離れて下型1Bの上方に存在し、下型1Bの上面と上型1Aの下面とがお互いに平行になって対向し、各凹部15のそれぞれと、各凹部17のそれぞれとの位置が、各型1A,1Bの厚さ方向から見たときにお互いに一致するようにしておく。
【0033】
このようにして、上型1Aの下面と下型1Bの上面とがお互いに対向している状態で、下型1Bの上面の中央部に、硬化前の紫外線硬化樹脂(成型材料)19を供給する(図(a)参照)。
【0034】
続いて、上型1Aの下面と下型1Bの上面との間に所定の僅かな間隔が開いている程度にまで、上型1Aを下型1Bに相対的に近づけると、硬化前の紫外線硬化樹脂19が広がり、各凹部15,17に入り込む(図2(b)参照)。
【0035】
硬化前の紫外線硬化樹脂19が各凹部15,17に入り込んだ状態で、紫外線硬化樹脂19に紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂19を硬化する。この硬化によってレンズ集合体3が成型される。
【0036】
なお、紫外線硬化樹脂19でレンズ集合体3を生成する場合、下型1B、上型1Aの少なくともいすれかが、紫外線を透過する材料で構成されているものとする。一方、熱硬化樹脂でレンズ集合体3を生成する場合、下型1Bと上型1Aは金属で構成されており、熱硬化樹脂を加熱するためのヒータが型1に設けられているものとする。
【0037】
上述したようにして、レンズ集合体3を成型した後、下型1Bにレンズ集合体3が残るように上型1Aを下型1Bとレンズ集合体3とから離す(図2(c)参照)。
【0038】
上型1Aを下型1Bとレンズ集合体3とから離した後、下型1Bとレンズ集合体3との密着面21に主としてせん断力が発生するように、レンズ集合体3のみに超音波振動子7の超音波振動しているホーン9を直接当接して(図3参照)、下型1Bからレンズ集合体3を分離する。
【0039】
さらに詳しく説明すると、上型1Aと下型1Bとを用いてレンズ集合体3を成型し終えた状態では、下型1Bの平面状の上面(レンズ集合体3の各凸部5Bを成型するための複数の凹部17が形成されている下型1Aの上面)に、レンズ集合体3の厚さ方向の一方の面が密着している。また、上型1Aの平面状の下面(平面にレンズ集合体3の各凸部5Aを成型するための複数の凹部15が形成されている上型1Aの下面)に、レンズ集合体3の厚さ方向の他方が面に密着している。
【0040】
ここで、レンズ集合体3を成型し終え、下型1Aから上型1Bを離したときに、下型1Bにレンズ集合体3がくっついている理由について説明する。
【0041】
レンズ集合体3の厚さ方向の一方の面に設けられている各凸部5Bの形態と、レンズ集合体3の厚さ方向の他方の面に設けられている各凸部5Aの形態とは、お互いが異なっている。これにより、レンズ集合体3の成型後に上型1Aを下型1Bから離したとき、スパイク効果で、レンズ集合体3が下型1Bにくっついたまま残るようになっている。
【0042】
たとえば、レンズ集合体3の厚さ方向の一方の面の各凸部5Bの曲率半径が、レンズ集合体3の厚さ方向の他方の面の各凸部5Aの曲率半径よりも小さく、しかも、レンズ集合体3の厚さ方向の一方の面が下型1Bに密着し、レンズ集合体3の厚さ方向の他方の面が上型1Aに密着して、成型がなされたとする。この成型後、下型1Bから上型1Aを離そうとすると、レンズ集合体3が上型1Aよりも下型1Bのほうに強くくっついているので、レンズ集合体3が下型1Bに残るのである。
【0043】
また、たとえば、各凸部5Aのまわりに形成されているレンズ枠(図示せず)の形態と、各凸部5Bのまわりに形成されているレンズ枠(図示せず)の形態とが異なっていることにより、スパイク効果で、レンズ集合体3が下型1Bにくっついたまま残るようになっている。なお、レンズ枠は、凸部5が内側に存在するたとえば環状の凸部で形成されている。
【0044】
超音波振動子7の超音波振動しているホーン9は、レンズ集合体3の外周の一部に当接し、レンズ集合体3をこの厚さ方向と直交する1つの方向(図3の左右方向)に振動させる。
【0045】
超音波振動子7の超音波振動しているホーン9は、この長手方向に振動している。図3で示すように、ホーン9の長手方向の一方の端部(基端部)は、超音波振動子7の本体部23に一体的に設けられている。ホーン9の長手方向の他端部側(先端部側)は、超音波振動子7の本体部23から離れる方向に延伸している。そして、ホーン9は、主にこの長手方向で振動するようになっている。
【0046】
そして、ホーン9の長手方向が平板状のレンズ集合体3の厚さ方向と直交し、かつ、ホーン9の長手方向の中心軸の延長線上に平板状のレンズ集合体3の中心が存在するようにし、かつ、ホーン9と下型1Bとが接触しないようにして(離れている状態で)、振動しているホーン9の先端部を平板状のレンズ集合体3の側面に当接させる(図3参照)。
【0047】
これによって、下型1Bにくっついているレンズ集合体3が下型1Bに対して振動し(極めて短い周期で極めて短い往復移動をし)、密着面21の少なくとも一部に繰り返しのせん断力が発生するようになっている。
【0048】
なお、下型1Bの質量がレンズ集合体3の質量に対して十分に大きいときには、レンズ集合体3が下型1Bに対して十分に振動するが、下型1Bの質量がレンズ集合体3の質量に対して十分に大きくないときには(下型1Bの質量が小さい場合には)、下型1Bがレンズ集合体3といっしょに振動してしまうことを防止するために、下型1Bを質量の大きい下型設置体(図示せず)に固定しておくことが望ましい。
【0049】
図3で示す態様では、超音波振動子7を用いたレンズ集合体3の下型1Bからの分離によって、レンズ集合体3の外周の一部(図3(a)で示す部位25)が下型1Bから僅かに剥離している。なお、部位25は、レンズ集合体3の凸部5には到達していないレンズ集合体3の周辺部位の一部である。
【0050】
この剥離をした後に、剥離部分25を次第に広げて、レンズ集合体3の全体を下型1Bから離している。
【0051】
すなわち、まず、超音波振動子7を当接させた部位の近傍の部位(図3(a)で示す部位25)のみが、下型1Bから離れる。続いて、レンズ集合体3の上面(上型1Aの下面に接触した面)であって、超音波振動子7を当接させた部位の近傍の部位(凸部5Aが形成されていないレンズ集合体3の周辺部)のみを、保持部材(突出位置PS3に位置しているたとえば真空吸着用の吸盤27A)で保持し、保持部材27Aを上昇させる(下型1Bの上面に直交する方向であって下型から離れる方向に移動する;図3(b)の上方に移動する)。これにより、剥離部分が次第に広がって、レンズ集合体3の全体が下型1Bから離れる。なお、この場合において、下型1Bの重量が十分大きくない場合は、上述したように、下型1Aを下型設置体に固定しておくものとする。
【0052】
この後、保持部材27Aを、一旦、保持した位置PS3まで下降して、レンズ集合体3が下型1Bに接触している状態(分離前のように接触してはいるが、成型直後のように下型1Bにくっついてはおらず、力をほとんど加えることなく、レンズ集合体3を下型1Bから分離することができる状態)にする。
【0053】
なお、保持部材27A,27B,27Cのそれぞれは、たとえば、ロボットハンド29に設けられている。そして、図示しないエアーシリンダ等のアクチュエータによって、図3(b)に破線で示した収容位置P1と突出位置P3との間を移動自在になっている。また、超音波振動子7も、ロボットハンド29に設けられている。
【0054】
続いて、他の保持部材(突出位置PS3に位置している保持部材)27B,27Cと保持部材27Aとで、レンズ集合体3を保持する。このとき保持する箇所は、凸部5Aが形成されていないレンズ集合体3の周辺部であって、レンズ集合体3円周を等配する箇所であることが望ましい。
【0055】
続いて、各ロボットハンド29を移動して各保持部材27A,27B,27Cを同時に上昇させることによって、レンズ集合体3を下型1Bから離す。そして、レンズ集合体3をそのまま、たとえば製品ストッカー(図示せず)まで搬送する。
【0056】
なお、上述したように、超音波振動子7でレンズ集合体3を僅かに振動させることで、レンズ集合体3の全体を下型1Bから離すようになっている場合には、レンズ集合体3の全体を下型1Bから離した後、保持部材27A,27B,27Cでレンズ集合体3を保持し、この保持した状態で保持部材27A,27B,27Cを上昇し、レンズ集合体3を下型1Bから離せばよい。
【0057】
ところで、上記説明では、超音波振動子7を用いて離型をしているが、上述したように、レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)をインパクトハンマで打撃してレンズ集合体の外周の一部(たとえば、図3(a)で示す部位25)を下型1Bから僅かに剥離してもよい。
【0058】
インパクトハンマによる打撃は、超音波振動子7の場合と同様にして、インパクトハンマによる打撃力の方向が平板状のレンズ集合体3の厚さ方向と直交し、かつ、インパクトハンマによる打撃力の延長線上に平板状のレンズ集合体3の中心が存在し、かつ、インパクトハンマと下型1Bとが接触しないようにしてなされる。
【0059】
また、図4(b)で示すように、レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)に圧縮空気を吹きつけて(圧縮空気を吹き込んで)、レンズ集合体3の外周の一部(たとえば、図3(a)で示す部位25)を下型1Bから僅かに剥離してもよい。
【0060】
また、図4(a)で示すように、レンズ集合体3の端部(レンズ集合体3の外周の一部)に楔13を入れ込んで、レンズ集合体3の外周の一部を下型1Bから僅かに剥離することによって、レンズ集合体3の外周の一部(たとえば、図3(a)で示す部位25)を下型1Bから僅かに剥離してもよい。
【0061】
この剥離をした後に、図3で示したように、また、超音波振動子7の場合と同様にして、吸盤27Aを用いて、剥離部分を次第に広げ、レンズ集合体3を下型1Bから離してもよい。
【0062】
なお、図4(a)に示す場合において、楔13が音波振動するようになっていてもよい(楔13が超音波振動子のホーンになっていてもよい)。
【0063】
レンズ集合体3の離型方法によれば、超音波振動子7をレンズ集合体3に直接当接させるので、下型1Bはほとんど振動せずレンズ集合体3が主に振動する。これにより、従来よりも少ないエネルギーでレンズ集合体3を下型1Bから容易に剥がすことができる。
【0064】
なお、超音波振動子7が直接当接したレンズ集合体3の部位(当接部位)は、カメラレンズ等の製品の機能部分として使用される部位ではないので、当接部位に若干の傷がついてしまったとしても、特に問題は発生しない。
【0065】
また、レンズ集合体3の離型方法によれば、下型1Bとレンズ集合体3との密着面21に主としてせん断力が発生するように、レンズ集合体3に超音波振動子7を直接当接するので、一層少ないエネルギーでレンズ集合体3を下型1Bから容易に剥がすことができる。
【0066】
また、レンズ集合体3の離型方法によれば、超音波振動子7によって、レンズ集合体3の外周の一部25を下型1Bから僅かに剥離させ、この剥離をさせた後に、剥離部分25を次第に広げて、レンズ集合体3を下型1Bから離すので、レンズ集合体3に大きな振動エネルギーを加えないで、レンズ集合体3を下型1Bから分離することができ、レンズ集合体3(特に凸部5)が超音波振動によって下型1Bで傷付くことを防止できる。
【0067】
ところで、上述した離型方法を、図5で示すように、基板31(成型物35)を型33から分離する場合に適用してもよい。
【0068】
すなわち、薄い平板状の基板(金属もしくはガラス等の材料で構成されている基板)31の厚さ方向の一方の面(上面)に、薄く膜状に設けられている成型材料(紫外線硬化硬化樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂等の材料で構成されている成型材料)35を、型33を用いて成型し、この成型後に型33から成型された成型物35を分離する場合に適用してもよい。なお、型33には、型1の場合と同様にして、複数の凹部37が設けられているものとする。
【0069】
成型物35の成型前は、図5(a)で示すように、上面に成型物35が設けられている基板31の下面が基板保持体39の上面に接して、たとえば真空吸着によって、基板31が基板保持体39に一体的に設けられている。また、型33は、基板31や成型物35の上方で基板31や成型物35から離れている。
【0070】
続いて、型33の下面が成型物35に接触し型33の凹部37に成型物35が入り込むように、型33を下降し、成型物35を硬化させる。この硬化後の真空吸着を停止し、型33を上昇させると、図5(b)で示すように、型33に成型物35と基板31とがくっついた状態で、基板保持体39から基板31等が離れる。
【0071】
そして、上述した離型方法を用いて、成型物35と基板31とを(特に硬化した成型物35を)、型33から離す。なお、超音波振動子7等を用いて成型物35と基板31とを型33から離す場合、超音波振動子のホーンを成型物35に当接させるのであるが、超音波振動子のホーンを成型物35と基板31とに当接させてもよい。
【0072】
なお、上記説明では、レンズ集合体3には、多数の凸部5が形成されているが、凸部5の数が数個から数十個であってもよいし、レンズ集合体3の代えて1つのレンズを成型して離型するようにしてもよい。
【0073】
また、上記説明では、レンズ集合体3の周辺部の1箇所にのみ、超音波振動子7等を当接させているが、レンズ集合体3の周辺部の複数箇所(お互いが離れている複数箇所;たとえば、レンズ集合体3の円形状の外周を等分配する複数箇所)に超音波振動子7等を当接させて、離型をするようにしてもよい。レンズ集合体3の周辺部の複数箇所に超音波振動子7等を当接させる場合、各超音波振動子7等を同時に当接させてもよいし、時間をずらして当接させてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 型
1A 上型
1B 下型
3 レンズ集合体(成型物)
5,5A,5B 凸部
7 超音波振動子
13 楔
21 密着面
31 基板
33 型
35 成型物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて成型された成型物を前記型から分離する離型方法において、
前記成型物に超音波振動子のホーンを直接当接すること、前記成型物をインパクトハンマで直接打撃すること、前記成型物の端部に圧縮空気を吹きつけること、前記成型物の端部に楔を入れ込むことの少なくともいずれかによって、前記型から前記成型物を分離することを特徴とする離型方法。
【請求項2】
上型と下型とを用いて成型物を成型し、この成型後に前記下型に成型物が残るように前記上型を前記下型と前記成型物とから離した後、前記下型から前記成型物を分離する離型方法において、
前記下型と前記成型物との密着面に主としてせん断力が発生するように、前記成型物に超音波振動子を直接当接して、前記下型から前記成型物を分離することを特徴とする離型方法。
【請求項3】
請求項2に記載の離型方法において、
前記成型物は、厚さ方向の面に複数の凸部が並んで形成されている平板状のレンズ集合体であり、
前記超音波振動子を、前記レンズ集合体の外周の一部に当接させ、前記レンズ集合体をこの厚さ方向と直交する方向に振動させることを特徴とする離型方法。
【請求項4】
請求項3に記載の離型方法において、
前記超音波振動子を用いた分離によって、前記レンズ集合体の一部を前記下型から僅かに剥離し、
この剥離をした後に前記剥離部分を次第に広げて、前記レンズ集合体を前記下型から離すことを特徴とする離型方法。
【請求項5】
上型と下型とを用いて、厚さ方向の面に複数の凸部が並んで形成されている平板状のレンズ集合体を成型し、この成型後に前記下型にレンズ集合体が残るように前記上型を前記下型と前記レンズ集合体とから離した後、前記下型から前記レンズ集合体を分離する離型方法において、
前記レンズ集合体の端部をインパクトハンマで直接打撃すること、もしくは、前記レンズ集合体の端部に圧縮空気を吹きつけること、もしくは、前記レンズ集合体の端部に楔を入れ込むことによって、前記レンズ集合体の一部を前記下型から僅かに剥離し、
この剥離をした後に前記剥離部分を次第に広げて、前記レンズ集合体を前記下型から離すことを特徴とする離型方法。
【請求項6】
基板の面に膜状に設けられている成型材料を、型を用いて成型して成型物を生成し、この後に前記型から前記成型物を分離する離型方法において、
前記型と前記成型物との密着面に主としてせん断力が発生するように前記成型物に超音波振動子を直接当接すること、もしくは、前記成型物の端部をインパクトハンマで直接打撃すること、もしくは、前記成型物の端部に圧縮空気を吹きつけること、もしくは、前記成型物の端部に楔を入れ込むことによって、前記型から前記成型物を分離することを特徴とする離型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45713(P2012−45713A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186894(P2010−186894)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】