説明

離間した壁間の材料に対する非侵入型試験

検出器は、試験材料を貫通する一対の独自の信号路を提供する。検出器の1つの実施形態では上記信号路の外側部分が同一にして、少なくとも2つの独自の信号路に沿って通過する計測信号の選択されたパラメータを計測するようにしている。これらの計測値から、試験材料の少なくとも1つのパラメータを算出する方法が提供される。パラメータは固有パラメータおよび状態パラメータを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試験材料のパラメータを求めることに関し、特に、一対の計測信号を試験材料内で長さが異なる一対の信号路に沿って通過させ、一対の計測値を得て、その一対の計測値から、試験材料の少なくとも一つのパラメータを求めることに関する。
【背景技術】
【0002】
試験材料、特に液体または流体の状態にある試験材料の計測は、数々の機構によってなされてきた。
【0003】
例えば、米国特許第3,939,707号には、導管の試験対象部分の断面の可視化が開示されている。その試験対象部分は可視化平面上にある。
【0004】
米国特許第4,257,278号には、ドップラー法の超音波画像システムによる血流量の計測が開示されている。
【0005】
米国特許第5,095,514号には、ある長さの光ファイバーを埋め込んだ母材からなる本体を有する光ファイバーセンサが開示されている。その本体が外乱に曝されたとき、変換作用によって対応する機械的応力および歪が内部に発生し、これら応力および歪が光ファイバーに作用するようになっている。光ファイバーの応力および歪は光伝送の変化を引き起こすが、この変化は、上記長さの光ファイバーを光が通過する際に検出できる。
【0006】
米国特許第6,216,544号には、超音波を使用して流体の流れを計測する超音波流量計が開示されている。この流量計は流量計測部および一対の超音波発信機を備えており、これらは、直接波と反射波との位相差の計測結果への影響が少なくなるように構成されている。
【0007】
米国特許第6,318,179号には対象物を映像化する超音波システムが開示されている。このシステムは、第1の物質と第2の物質を有し、第1の物質が第2の物質に対して第1の方向へ移動する。そのような状況において、望ましい実施形態では、対象物内に超音波ビームを伝達させることによって第1の物質の第2の物質に対する移動の量的な計測が可能である。この超音波ビームは、所定の寸法を有し、複数のビーム位置を定め、第1の方向と平行な1以上のスキャン方向成分を有する1以上のスキャン方向に移動するビーム軸を定める。一または複数のスキャン方向におけるビーム位置に応じて、第1の反射超音波が第1の物質から受信され、第2の超音波が第2の物質から受信される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、試験材料の求められたパラメータの正確性をさらに向上させる必要が、依然としてある。プローブ、容器または導管のパラメータならびに温度や圧力等の過渡的な変数の影響を少なくし、あるいは除去する必要性がさらに存在するのである。試験材料のいくつかのパラメータの同時計測が可能なシステムの必要性も存在する。計測結果がマトリックスの成分を構成していて、データ処理において正確性および信頼性をさらに高めることのできるようなシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プローブ、容器または導管のパラメータならびに過渡的な変動の影響を減少させ、算出された試験材料のパラメータの正確性を向上させるための、試験材料の計測装置およびその方法を提供する。本発明は、過渡的な要素の影響を減少させ、試験材料のパラメータの同時的かつ正確な計測を改善するものである。概要を述べると、試験材料のパラメータは、試験材料を通過する所定の独自の信号路を用いることによって、壁(あるいは殻または導管)の特性や周囲の影響を受けずに求めることができる。この独自の信号路は、形状または形態の差が既知である状態で、試験材料の形状または形態に既知の変化を加えることで、提供できる。あるいは、試験材料内部における長さの差が既知または計測済みである、静的な直線的信号路を用いることによって提供できる。ひとつの実施形態においては、変形を加えることで、試験材料を通過する直線的信号路間の既知の差を提供している。
【0010】
変形を加えることのできる試験材料の代表的なものとしては、ポリマー管、ヒトまたは動物の組織等の可撓性の導管を流れる液体が含まれる。容器に収容された液体および缶詰に収容された物質、特に変形に耐えるものについては、本発明によって計測可能である。
【0011】
概要を述べると、試験材料を検出器の計測ゾーン内に置き、少なくとも二つの独自の信号路を提供する。これら信号路の周辺部すなわち外側部分(試験材料の外の部分)は同一である。信号路は、試験材料を貫通する、予め設定された、既知のまたは計測済みの直線距離の分だけ異なるという点において独自のものである。
【0012】
本発明は、試験材料を貫通する一対の信号路を提供する。これら信号路は試験材料の外側において同一部(または既知部)を有し、試験材料内部には長さの異なる直線部分を有している。この内部の長さの差は既知(または計測済み)である。このため、一つの信号路の内部の長さは、残りの信号路の内部の長さよりも短くなっている。
【0013】
これらの信号路に沿って、少なくとも一対の計測信号が伝送される。第一信号路に沿って第一計測信号が、第二信号路に沿って第二計測信号が伝送されるのである。この一対の計測信号の伝送は、同時伝送でもよく、シリアル伝送であってもよい。
【0014】
各計測信号のパラメータまたは一対の信号のパラメータを計測、感知、または決定する。好ましくは、対をなす計測信号の各信号について、同一の信号パラメータを計測する。
【0015】
一対の計測値から試験材料の一つの固有パラメータを求めることができる。
【0016】
信号路に沿って通過する一対の計測信号から、計測値の対またはセットが得られる。ここで、一方の計測信号は第一信号路を通過し、他方の計測信号は、残りの信号路を通過する。これらの計測値を処理して、試験材料の情報および/または試験材料の状態の情報および/または、ボーラス注入等の変化を含む一時的または過渡的な変化に関する情報を提供する。この情報は、導管(殻)、検出器、導管(容器)の壁および各要素の温度効果の影響を受けない。計測信号は、試験材料の局所的変化や、温度偏差、塩分、圧力、色、透明性、伝導性といった状態に対応して選択することができる。しかしながら、所与の一対の計測信号の複数のパラメータを測定して、試験材料の二つ以上の固有パラメータを求めることができる。
【0017】
一つの実施形態においては、本方法は、少なくとも二つの離間した壁間に存在する試験材料を計測する方法を提供する。まず、第一および第二信号路に沿って計測信号を通過させる。ここで、各信号路は離間した両壁を通過し、(a)試験材料内部では異なった直線長さを有し、(b)試験材料外部では同一または既知のパス長を有している。そして、第一信号路と第二信号路に沿った計測信号の少なくとも一つの信号パラメータを計測するのである。計測可能な信号パラメータは、計測信号の位相、振幅、周波数、減衰係数、伝搬時間の少なくとも一つを含む。そして、信号パラメータの第一および第二計測値に対応する、試験材料の少なくとも一つのパラメータを求める。
【0018】
また別の実施形態においては、離間した壁間に存在する試験材料を計測するための検出器を提供する。この検出器は、第一信号路を有する第一センサ組立体と、異なる第二信号路を有する第二センサ組立体とを備えている。第一信号路は、両壁を含む第一外部成分と試験材料を通過する第一直線内部成分とを含む。第二信号路は、両壁を含む第二外部成分と、試験材料を通過する第二直線内部成分とを含んでいる。第一外部成分は第二外部成分と等しく、第一内部成分と第二内部成分とは異なっている。第一センサ組立体と第二センサ組立体にコントローラを接続し、このコントローラは、第一信号路と第二信号路に沿って通過する計測信号のパラメータに応答して、試験材料の特性や状態を求める。
【0019】
さらに別の実施形態においては、一対のセンサ間に延びる信号路を有する第一センサ組立体を備えた検出器を提供する。これらのセンサは、第一位置と第二位置との間を既知の距離だけ移動可能である。センサが第一位置にある状態で、信号路に沿って計測信号を通過させ、計測信号のパラメータを計測する。そして、検出器の変換器を第二位置に配置させ、再び計測信号のパラメータを計測する。これらの二つの計測値および第一位置と第二位置との間の既知の距離により、試験材料のパラメータが算出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および図2は、導管12を流れる流体のような試験材料を計測するための動的検出器20を示している。動的検出器20は変形可能な導管12と協働して係合させるクランプオン検出器にすることができる。試験材料は、導管内を流れるか、あるいはその内部に置かれている。
【0021】
概説すると、第1の実施形態においては、検出器20は試験材料を計測範囲内に置き、少なくとも二つの独自の直線的信号路が試験材料を通って提供されるようにする。この二つの信号路は、試験材料を通る予め決められた直線距離のみが異なっている。一方、これら信号路の外部要素(およびセンサ)は、十分にまたは本質的に同一である。各信号路の外部要素は、計測信号に少なくとも実質的に同一の影響を与えるように選択されることが望ましい。試験材料を通る直線距離を異ならせることは、動的または静的に達成される。すなわち、検出器20は、計測セット間において形態を変更させて、独自の信号路を形成してもよく(動的)、あるいは検出器20は二つの信号路または計測空間を画成するように試験材料を保持していてもよい(静的)。すなわち、二つの信号路は、各信号路における試験材料の量が異なるのである。
【0022】
好ましくは、動的検出器20は、予め定められた二つの位置間での形態変更が可能であり、その際、試験材料の量または変形における差異は既知である。検出器を第一位置に設定して信号パラメータの第一の計測を行い、検出器を第二位置に設定して信号パラメータの第二の計測を行う。第一の計測と第二の計測の間に、計測範囲における既知の量的変化が生じる。一方、信号路の周辺部分およびセンサは一定である。
【0023】
動的検出器20は、ハウジング30およびセンサ組立体50を含む。ハウジング30は、移動可能な蓋を含んでいてもよく、導管12内に長さが異なる信号路を定めるための通路34を区画する。センサ組立体50は、上流側変換器52、上流側プリズム54、下流側変換器62および下流側プリズム64を含む。
【0024】
変換器(transducer)という用語は、圧電結晶体、マイクロホンあるいは光電セルのような、一つの形態の入力エネルギーを他の形態の出力エネルギーに変換するあらゆる素子または装置を包含する。そのような変換は、電気―機械変換、光―機械変換、光―化学変換ならびに電気―光変換を含むが、それらに限定されるものではない。センサは、試験材料との相互作用の前/後に信号を発信/受信する物理的刺激に反応する変換器を含んでいる。例えば、センサは、音響整合層を有する圧電素子を含んでいてもよい。このように、検出器20とは、特別な目的のために、少なくとも一つのセンサが配置されたものである。
【0025】
この実施形態の検出器20は、超音波計測信号および変換器を有する超音波センサを用いたものとして記述されているが、信号路に沿って通過する計測信号を検出することができるセンサであれば、どのような種類のセンサを用いてもよいことが理解される。センサおよび計測信号は、光学的なもの、電気的なもの、物理的なもの、音響的なもの、電磁的なもの、またはそれらのあらゆる組み合わせを含むが、それに限定されるものではない。同様に、センサによって計測(感知)される信号パラメータは、どのような種類の信号パラメータであってもよく、時間遅延、伝搬時間、強度、減衰、周波数、振幅、位相、ならびに時間的および/または空間的特性等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。時間的および/または空間的特性としては、光の波長、電圧および/または電流の関数としての、電気的な抵抗、インピーダンス、アドミッタンスまたは伝導率、光の透過性または吸収を含むが、それらに限定されるものではない。
【0026】
上流側(第一)変換器52から下流側(第二)変換器62に至る信号路が画成される。その信号路は、上流側プリズム54、第一導管壁、試験材料、第二導管壁および下流側プリズム64を貫通する部分を含んでいる。
【0027】
この信号路は、好ましくは、内側部分および外側部分として定義される。信号路の内側部分は、試験材料を通過する部分(X,X)である。信号路の外側部分は、信号路の残りの全ての部分であり、図1に示すように、上流側プリズム54、第一導管壁、第二導管壁、下流側プリズム64ならびにあらゆる相互連結用のゲル、接着剤または物質および、計測信号が通過するハウジング30のあらゆる部分を含んでいる。
【0028】
「導管」という語が用いられているが、試験材料は管、溝または他の流路の内部に配置してもよいことが理解される。さらに、導管という語は、材料に限定されることなく、いかなるタイプの流れを収容する構造をも含むことを意図している。したがって、導管12は、試験材料を保持し、かつ計測信号が通過することができるいかなる物質をも含んでいる。それ故、導管12は、金属,複合材,ラミネート材またはポリマーからなる剛性および軟性のダクト、容器、缶またはパイプを包含している。
【0029】
概して、この発明では、試験材料を通過する直線信号路間の既知の差異を利用している。この既知の差異は、異なる信号路の計測、調整または既知の値によって得ることができる。開示内容を限定するものではないが、例えば図1に示すように、dはプリズム54,64間の固定された距離であり、χは導管12の内壁間の距離であり、Xは信号路の内側部分の線形(直線)距離であり、αは計測信号[波]が試験材料に進入するときの角度である。
【0030】
信号路の内側直線部分の長さXは、次式によって求められる。
=χ/cosα
【0031】
図2においては、プリズム54,64(および関連の変換器)は、所定の(または既知のまたは計測された)距離Δdだけ互いに接近するように移動させられている。それによって、プリズムが距離dだけ離間し、導管の内壁が相当する距離χだけ離間する。導管の壁がまったく圧縮しないか、無視できる程度にしか圧縮しないものと仮定すると、信号路の外側部分は一定のままである。すなわち、試験材料を貫通する信号路の長さだけが変化する。その位置変化は、次式によって表される。
Δd=d−d=χ−χ
【0032】
プリズム54,64が移動させられたので、距離Xは距離Xとは異なっており、したがって信号路が変化した。かくして、検出器20が第一位置にある時に独自の第一信号路が提供され、第二位置にある検出器によって、異なる独自の第二信号路が形成される。
【0033】
内部の直線経路の長さXは、次式によって求められる。
=χ/cosα
【0034】
表現を変えると、
=d−Δd;χ=χ−Δd;かつX=X−Δd/cosα
【0035】
信号路の内側部分における差異が既知であるので、計測信号について考察する。図1に示すように、信号路に沿って上流側変換器52から下流側変換器62まで通過する音の計測信号の伝搬時間(TOF)Tは、次式のとおりである。
=ΣTe+X/(C+Vsinα) (1)
【0036】
ここで、ΣTeは信号路の外側部分に沿う計測信号の合計伝搬時間であり、Cは試験媒質内における固有の音速であり、Vは導管12を通って流れる試験材料の速度である。
【0037】
図1に示すように、信号路に沿って下流側変換器62から上流側変換器52まで通過する音の計測信号の伝搬時間(T)は、次式のとおりである。
=ΣTe+X/(CーVsinα) (2)
【0038】
検出器20を図2に示す第二の形態に配置すると、独自の第二信号路が形成される。また、信号路に沿って上流側変換器52から下流側変換器62まで通過する音の計測信号の伝搬時間(T)が次式によって求められる。
=ΣTe+X/(C+Vsinα) (3)
【0039】
図2に示すように、信号路に沿って下流側変換器62から上流側変換器52まで通過する音の計測信号の伝搬時間(T)は、次式によって求められる。
=ΣTe+X/(CーVsinα) (4)
【0040】
TeおよびΣTeは、流れを収容する構造物のタイプおよび/または素材の相違により、または温度変化に応じて相当変化する可能性がある。さらに、圧力や時間のような依存要素が存在する可能性がある。
【0041】
スネル(Snell)の法則により、次の関係式が存在する。
sinβ/Cp=sinα/C (5)
【0042】
ここで、Cpはプリズム54,64内における音速である。プリズム54,64が既知であり、試験することができる(またはデータが提供される)ため、Cpは既知または容易に求めることができる。
【0043】
これらの方程式から、試験材料の数々のパラメータを求めることができる。方程式の引き算により、影響を取り除くことができる。便宜的に、次の定義を用いる。
2−T=ΔT21;T−T=ΔT12;T−T=ΔT13;T−T4=ΔT24
【0044】
両方の信号路について計測された信号パラメータの使用を検討する前に、各形態(図1または図2)において導管12内を流れる試験材料の流速が求められることは注目に値する。
【0045】
例えば、T(図1において上流側に向かう伝搬時間)からT(図1において下流側に向かう伝搬時間)を引くと次の式が得られる。
ΔT21=2XVsinα/[C−(Vsinα)] (6a)
【0046】
しかしながら、分母における減数は、Cに比べて小さく、無視することができるので、次の式が得られる。
ΔT21=2XVsinα/C (6b)
【0047】
そして、これは、公知の瞬間流量計が基礎としている式である。望ましくはないが、計測された流速は、流れている物質の音速Cに依存する。
【0048】
外的要素が等しい場合において、両方の独自の信号路での計測を検討する。上記T1およびT3を求める際の信号路に関し、式(1)および(2)から次の式が得られる。
1/ΔT13=C・cosα/Δd (7)
【0049】
計測された4つの伝搬時間T1,T2,T3,T4全てを用いれば、次の式が得られる。
【数1】

【0050】
上式は、式(5)を用いて次のように書き換えられる。
【数2】

【0051】
この式によれば、計測された二つのパラメータΔT13およびΔT24によって音速を直接的に求めることができる。
【0052】
式(5)は、αをCの関数として完全に定義する。したがって、式(7)および/または(8)は、試験材料の外側または外部に存在する材料の音の特性による影響を受けることなく、試験材料の音速を計測するための手段を構築する。一般に、音速は液体の組成および混合比の関数であり、液体の温度、塩分、圧力ならびに血中蛋白濃度等のパラメータが含まれる。したがって、そのような液体の属性の一つだけが分からない場合には、式(7)および/または式(8)が液体の未知の特性を計測する(または求める)ための手段を提供する。
【0053】
両方の独自の信号路からの計測値はまた、式6bにおける音速の特性に影響されない、流れの計測手段を提供する。式(1)〜(4)から次の式が得られる。
ΔT13=(X−X)/(C+Vsinα) (9a)
ΔT24=(X−X)/(CーVsinα) (9b)
【0054】
上記定義により、Δd=(X−X)cosαである。Cは、式9(a)および9(b)から除去することができ、その結果、流速を表わす次の式が得られる。
【数3】

【0055】
したがって、音速Cおよび流速Vは、正確に、かつ検出器の材質、導管の壁、温度および外部信号路に従属することなく、求めることができる。
【0056】
試験材料のパラメータの決定は、導管の壁への堆積物に影響されることがない。堆積物としては、試験材料内の異物の蓄積、例えば人間や動物の血管等の壁の蓄積物等が考えられる。そのような堆積物は、計測範囲においてしばしば均質であるから、試験材料の求めたいパラメータの決定は、そのような堆積物に影響されることがない。また、導管の壁の局所領域において堆積物が一様でない場合でも、その堆積物をこの発明の検出器によって検出することができる。一般に、信号路に沿って均質である対象物、たとえば信号路に沿って計測信号に対して適度な透過性を有する対象物等に関しては、結果として得られる計測値が、そのような対象物の存在によって影響を受けることはない。その対象物が信号路に故意に置かれたものであろうと、信号路に意図せずに発生したものであろうと、影響を受けることはない。
【0057】
減衰係数δは、求めることができるもう1つの独立した固有パラメータである。減衰係数は、信号路に沿う波の減衰の計測値から求められる。
【0058】
伝搬信号(波)の減衰は、次式によって表される。
【数4】

【0059】
ここで、Aは放出波の振幅であり、χは距離である。
【0060】
発信側変換器から受信側変換器までの信号路に沿った計測信号の減衰は、次式で表される。
【数5】

【0061】
ここで、eのーΣδeχe乗は、外部信号路における振幅の損失(減衰)に相当し、eのーδχ乗は、内部信号路に沿って(試験材料を貫いて)通過する計測信号における振幅の損失(減衰)に相当する。
【0062】
異なる信号路(試験材料を貫通する長さの異なる信号路)に沿って得られた受信振幅A1,A2の一対の計測値に関し、内部の長さの差が既知であるので、計測された振幅の比は、次のようになる。
【数6】

【0063】
この比から、減衰係数δが直ちに求められる。
【0064】
したがって、単一の検出器20によって、計測信号(この場合、超音波)の単一の周波数(パラメータ)を用いて、3対の計測値を得ることにより、試験材料の独立した三つのパラメータ、すなわち音速C、流速Vおよび減衰係数δを求めることができる。
【0065】
演算は、信号処理装置やコンピュータ等のコントローラを含む、いかなる種類の機構によって行ってもよい。コンピュータは、処理のためのプログラムがインプットされたデスクトップ型、ラップトップ型、または専用のコンピュータである。そのようなコントローラは、試験材料のパラメータを求めるために、記述した演算または派生する演算を実行するよう、簡単にプログラミングされる。そのコントローラは、一つの信号を他の信号または他の信号の一部に加えるような、予備的な信号処理も行うことができる。
【0066】
計測値が単一の検出器によって得られ、実質的に同時に(計測信号の所与の伝搬時間の程度内で)行われるため、データの相関関係に含まれる誤差は減じられる。すなわち、温度のような過渡的な変数が試験材料の求められたパラメータに与える影響は、少ないか無視できる程度のものとなる。
【0067】
また、音速や減衰係数のようなパラメータを用いて、試験材料の付加的なパラメータの演算を行うこともできる。例えば、もし血液が試験材料である場合、温度、導管(管)の材質および導管の壁の厚さといった、他の方法では障害となる要因や影響を最小限に抑えながら、血液中のタンパク質および/または水分の量も求めることができる。
【0068】
変換器52,62が信号路の各端部に示されているが、変換器の一方は反射器で置き換えてもよいことが分かる。この構成においては、変換器によって送信された計測信号は、反射器まで進行し、反射されて同一の信号路に沿って戻り、変換器によって受信される。このような実施形態においては、流速の計測値を提供することはないが、その他のパラメータ(音速Cおよび減衰係数δ)については、計測信号が試験材料を2回通過するので、正確さ(感度)が増す。
【0069】
多数の異なる周波数、短パルスまたは掃引周波数を使用して、この発明の方法をさらに強力にすることが考えられる。
【0070】
動的検出器20では、試験材料のパラメータの決定が情報の連続的な取り込みによって行われることが特徴である。検出器が第一位置(広い通路を区画する)にある時に1セットの計測がなされ、検出器が第二位置(狭い形状にする)にある時に第2のセットの計測がなされる、という点に特徴があるのである。
【0071】
動的検出器には多くの利点があり、計測通路34が簡単な構造を有し、かつ一つの検出器で広範な寸法の導管に適用できる。しかし、通路34の形態を変えるためのアクチュエータが必要であり、したがって高速流体のような動的プロセスの計測に関しては、適用が限定される。アクチュエータは、ピエゾアクチュエータ、ギアやラック、油圧式または空気圧式のものであってもよい。アクチュエータはコントローラに動作可能に連結でき、第一または第二の位置に選択的に配置される。
【0072】
計測信号は、動的検出器20によって計測することができるが、同一の演算が静的検出器によってもなし得ることが理解される。代表的な静的検出器20が図3から図5に示されている。
【0073】
概要を述べると、静的検出器20は、通路34の永久的な構造を定め、二つの独自の永久的内側信号路を提供する。それらの信号路は、各信号路の内側部分が互いに異なる長さであるという点において独自のものである。静的検出器の実施形態においては、計測信号がこれにより信号路に沿って同時に通過することができ、それにより並列的な信号の収集を提供する。各内側信号路と関連した導管12の横断面積は、異なっていてもよいが、望ましい構造では、導管の横断面積およびその形状は一定である。
【0074】
図3に示すように、検出器20内の導管12は、幅広部72および幅狭部74を画成する。第一信号路の内側部分Xは幅広部を横切って延び、第二信号路の内側部分Xは幅狭部を横切って延びる。これらの信号路の外側部分は、同一に構成されている。第一信号路と第二信号路の外側部分が同一(既知または測定済み)であるので、前述した方程式を静的検出器20に適用することができる。
【0075】
具体的に述べると、図3に示すように、第一信号路の外部構成は第一センサ組立体110を含み、第二信号路の外部構成は第二センサ組立体130を含む。第一センサ組立体110は、上流側変換器112、上流側プリズム114、下流側変換器122、および下流側プリズム124を含む。したがって、第一信号路は、第一センサ組立体110と導管の二つの壁の厚さとを含んでいる。
【0076】
第二センサ組立体130は、上流側変換器132、上流側プリズム134、下流側変換器142および下流側プリズム144を含んでいる。したがって、第二信号路は、第二センサ組立体130と導管の二つの壁の厚さとを含んでいる。
【0077】
各種の連結層または連結媒体を各プリズムおよび変換器に連結してもよいことが理解される。動的検出器の場合と同様に、各信号路の外側部分が同一であることが望ましい。
【0078】
信号路の内側部分における差は既知であるので、再び計測信号について考察する。音の計測信号が、図3に示すように第一信号路に沿って上流側変換器112から下流側変換器122まで通過する際の伝搬時間(TOF)Tは、次式で求められる。
=ΣTe+X/(C+Vsinα) (14)
【0079】
ここで、ΣTeは、信号路の外側部分に沿う計測信号の伝搬時間の合計であり、Cは試験媒体における固有の音速であり、Vは導管12内を流れる試験材料の流速である。
【0080】
音の計測信号が、図3に示すように第一信号路に沿って下流側変換器122から上流側変換器112までを通過する際の伝搬時間(T)は、次式で求められる。
=ΣTe+X/(CーVsinα) (15)
【0081】
音の計測信号が、図3に示すように第二信号路に沿って上流側変換器132から下流側変換器142までを通過する際の伝搬時間(T)は、次式で求められる。
=ΣTe+X/(C+Vsinα) (16)
【0082】
音の計測信号が、図3に示すように、第二信号路に沿って下流側変換器142から上流側変換器132までを通過する際の経過時間(T)は、次式で求められる。
=ΣTe+X/(CーVsinα) (17)
【0083】
温度変化に応答する場合のように、ΣTeが大幅に変動する可能性があることが理解される。しかし、圧力や時間のような依存要素が存在する可能性もある。
【0084】
前述したように、試験材料のパラメータを、これらの計測された信号パラメータから求めることができる。
【0085】
静的検出器20の望ましい実施形態において、導管12の断面積と断面形状はともに、第一内側信号路および異なる第二内側信号路の長手方向の位置において変わらず維持されている。図4に示すように、ハウジング30および通路34が設けられており、導管12の断面積および断面形状が第一および第二の信号路内において維持されている。導管12の長手方向の寸法は、オフセットを含んでいる。この構造において、静的検出器20は、第一変換器組立体110および第二変換器組立体130を有している。信号路は、導管12の長手方向のオフセットに沿って延びる略「X」の形状を成している。したがって、変換器112と122との間の信号路の内側部分は、変換器132と142との間の信号路の内側部分と異なっている(短くなっている)。
【0086】
図4の静的検出器20の実施形態の利点は、導管12の幅が検出器内で変化しないことである。導管の縦軸が単に移動するのみである。しかし、動的検出器と同様、各信号路の外側部分は同一、または計測信号の計測の前に測定されている。検出器20のすべての実施形態について、センサ各組とプリズム各組における両計測信号(波)の入射角が、センサ組立体110と130で同一であることが望ましい。
【0087】
静的検出器20においては、計測信号の伝送は同時でも、順次でもよく、またその順序は問わない。例えば、第一計測信号を変換器112が発信して変換器122で受信し、それから、第二計測信号を変換器132が発信して変換器142で受信してもよい。あるいは、変換器112と変換器132が同時に対応する計測信号を発信して、その計測信号を対応の変換器で受信し、計測してもよい。
【0088】
静的検出器20のまた別の実施形態を図5に示す。ハウジング30は、幅広部72と幅狭部74を画成する通路34を含んでいる。検出器20は、上流側変換器152、下流側変換器172および中間変換器162を含む。上流側変換器152は上流側プリズム154と協働し、下流側変換器172は下流側プリズム174と協働する。好ましい構成においては、上流側変換器152と下流側変換器172を導管12の一側に配置し、中間変換器162を導管の他側の、長手方向においては上流側変換器と下流側変換器の中間位置に配置する。中間変換器162は長方形の音響ブロックまたはプリズム164と音響的に結合することができる。この実施形態においては、信号路は略「V」字型を成す。
【0089】
第一信号路は上流側変換器152から幅広部72を横切って中間変換器162に達し、第二信号路は下流側変換器172から幅狭部74を横切って中間変換器162まで延びる。
【0090】
既に他の構造について述べてきたように、計測信号は第一および第二信号路を通過し、処理されて、試験材料のパラメータを提供する。
【0091】
いかなる構造の検出器20についても、計測信号(波またはフィールド)は、いかなる物理的発生源によるものであってもよいことが理解される。便宜上、計測信号は超音波信号として記述してある。さらに、計測信号は、超音波センサ、電磁センサ、磁石センサ、光学センサ、電気センサ、熱センサ、化学センサ等、他のいかなる種類のセンサと組み合わせて使用することができる(干渉しない方法で行うのが望ましい)。これらの付加的センサは、動的または静的検出器のハウジング本体フレーム内部に内蔵することができる。
【0092】
動的または静的検出器の変換器は単一平面上に配置し、それによって可撓性の導管の通路への挿抜を容易にすることを考えているが、開放通路または移動可能なカバーを有する閉じた通路を流れる液体を用いてもよい。
【0093】
可撓性の導管の挿入が可能な非開放の閉じた導管12(インラインプローブと共に用いられる類)においては、センサ組立体および対応する変換器を、導管の軸線を通って直交する平面に配置してもよい(図6から図9)。これらの構成においては、(液体試験材料の)リアルタイムの流量と試験材料のパラメータを共に計測することができる。
【0094】
これらの実施形態においては、検出器20は、導管12を通る流れを妨げることが比較的少なく、導管の周辺部あるいは中心軸に明確な偏りが生じることがない。
【0095】
図6から図10においては、検出器20は、第一および第二センサ組立体110、130の付いた通路34を有するハウジング30を提供する。図7に示すとおり、通路34は略長方形の断面を成し、第一センサ組立体110は通路の長辺方向に沿って伸びる信号路を含み、第二センサ組立体130は通路の短辺方向に沿って伸びる信号路を含んでいる。
【0096】
ハウジング30の材質により、第一センサ組立体110は上流側プリズム114と下流側プリズム124を含んでいてもよく、第二センサ組立体は上流側プリズム134と下流側プリズム144を含んでいてもよい。
【0097】
この実施形態の検出器20においては、信号パラメータの同時計測が可能である。導管12は両方の独自の信号路に共通の断面積を定める。
【0098】
図8、図9は、図6、図7のインライン超音波検出器20に、金属導管のような壁の薄い導管を加えて示したものである。金属はいかなるものであってもよく、医療業界で用いられるステンレス、チタン等が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0099】
図6から図10においては、ハウジング30が導管20に断面を画成させ、センサ組立体110、130は第一、第二の独自の信号路が導管内の同じ位置に存在するように配置されている。第一、第二センサ組立体110、130は上流側および下流側センサを含んで、流速Vを求められるようにしてもよい。
【0100】
図11は、静的検出器の別の実施形態の概略図で、付加的センサ160が用いられている。センサ組立体110、130は、各信号路が導管12の長手方向に沿って、つまり試験材料の流れの方向に沿って延びる成分を含むように構成されている。この実施形態において、4つの超音波変換器を有する検出器を用いることにより、第一、第二信号路を通過する対応する計測信号の計測を行えば、試験材料内での音速(固有パラメータ)と可撓性の導管内の試験材料の流量(状態のパラメータ)といったような2つのパラメータの同時計測を行うことができる。
【0101】
図12は、ポリマー円管等の可撓性の導管12に用いる静的検出器20の実施形態を示している。ハウジングは導管12に所定の断面形状を与える。検出器20は一対のセンサ組立体110、130を含み、各センサ組立体は発信側変換器112、132と受信側変換器122、142を含んでいる。センサ組立体の各信号路をこの図では点線で示す。ここで、第一センサ組立体の信号路の長さをD1とし、第二センサ組立体の信号路の長さをD2とする。
【0102】
図12の第一、第二センサ組立体の信号(超音波パルス等)の伝搬時間は以下の式で表わすことができる。
T1=ΣT11+ΣT12+X1/C
T2=ΣT11+ΣT12+X2/C (18,19)
【0103】
ここで、ΣT11は検出器内での遅延時間であり、ΣT12は導管壁内での伝搬時間であり、X1は試験材料を通過する第一信号路の長さであり、X2は試験材料を通過する第二信号路の長さであり、Cは試験材料内における音速を示す。
【0104】
図12に示す検出器に関して、導管の壁厚が各信号路内で一定であると仮定すると、以下の関係が成り立つ。
X1−X2=D1−D2=一定 (20)
【0105】
そして、T1からT2を引くと以下が得られる。
T1−T2=(X1−X2)/C (21)
【0106】
これをCについて解くと、以下の式が得られる。
C=(X1−X2)/(T1−T2) (22)
【0107】
従って、試験材料内の音速を、導管12、導管の壁厚、導管の壁の材質および温度とは独立して求めることができる。これらの因子を除去したことで、求められた試験材料内の音速の値の正確性が高まる。
【0108】
このように、検出器20の一つの実施形態で、第一信号路に沿って計測信号を通し、計測信号の第一の値を得て、壁間の間隔を変更し、第二信号路に沿って計測信号を通し、計測信号の第二の値を得ることができる。
【0109】
信号路の外側部分の影響、すなわち、ハウジング30および導管のパラメータの影響ならびに温度等の過渡的な影響などを、試験材料の所望パラメータの演算によって有効に除去することができるため、求められた試験材料のパラメータの正確性が増す。信号路を取り囲む検出器の要素は、環境温度に関して熱伝導率が等しい。このような熱伝導率は出来る限り低くすることが望ましい。信号路の外側部分に対する環境効果がパラメータの計測値に影響を及ぼす可能性のある場合には、検出器の設計において、このような影響が各信号路に対して必ず等しくなるように注意を払う必要がある。例えば、環境温度によって変換器、プリズムおよび導管壁での超音波伝搬時間が変化しかねない場合、あるいは周囲の迷光によって光学センサの表示値が変化しかねない場合は、検出器の構造を、そのような影響が、少なくとも各信号路間で実質的に等しく、かつ各信号路内では最小となるようにするのが望ましい。
【0110】
さらに、試験材料の数個のパラメータを同一種類の計測信号から同時に計測し、その結果マトリックスを得ることで、信頼性をさらに向上させることができる。すなわち、数個の計測信号が同じ信号路を同時に用いることで、計測値を関連付け、データをマトリックスあるいはベクトルとして処理できるようになり、計測値の有用性がさらに高められる。
【0111】
計測信号の周波数は異なっていてもよい。したがって、例えば信号の減衰を計測し、続いてレシオメトリックなデータ処理を行なうことで、求められたパラメータの信頼性が向上する。実質的に同時的な計測および処理を行なうことにより、付加的な情報を得るとともに、計測値間の相関関係によって、より正確な結果を得ることが可能になる。周波数の異なる計測信号を用い、計測信号の減衰を用いて、その後レシオメトリックな、または関連したデータの処理を行なうことによって、計測値の正確性を大幅に向上させることができる。
【0112】
さらなる実施形態では、2つの固定的な独自の信号路を画成する静的検出器におけるようなハウジング30を、動的ハウジングに組み込めるようにし、各センサ組立体を第二位置に移動させ、それによって第三、第四の独自の信号路を画成させるようにしてもよい。その結果得られる追加データを用いて、求めたパラメータの正確性を向上させることができる。
【0113】
本発明によって、試験材料の固有パラメータ、並びに時間、圧力または温度の関数としての固有パラメータの変動を含むさまざまなパラメータを求めることができる。例えば、粘度、音速、減衰係数および試験材料の密度を求めることができる。さらに、同時に計測された信号パラメータを組み合わせて処理することで、より信頼性の高いデータを得ることができる。これは、試験材料のパラメータ間に潜在的相関関係があるためである。このことは、試験材料の固有パラメータを、時間および/または他の直接的、間接的因子の関数として求めたいとき、特に重要である。これらの因子としては、温度、圧力、混合剤、希釈、ろ過、経年劣化が含まれるが、これらに限定されるものではない。得られた相関パラメータの組合せは最終産物として用いることができ、また診断信号の発生および/または血液透析、液体の浄化、ろ過等の処理の進行および有効性の評価に利用することができる。
【0114】
また別の実施形態においては、検出器20は、内部成分と外部成分の異なる第一、第二信号路SP1、SP2を提供するように構成されている。詳述すると、図13から図15に示すように、一方の信号路SP2の内部成分は除去されている(ゼロ値)。信号路の外部成分は計測信号に等しい影響を与える構造であれば、どのような構造であってもよい。従って、第二信号路の内部成分が0であるので、式22は以下のようになる。
C=(X1)/(T1−T2) (23)
【0115】
加えて、各信号路の外部成分が計測信号に同一の影響を与えることが望ましいが、第一、第二の信号路の外部成分間に差異が存在してもよいことが理解される。外部成分間の差異は所望の正確性の許容限度内に収めることができ、あるいは検出器20のための補正因子によって修正できる。
【0116】
試験材料は静的または動的ないかなるものであってもよく、換言すれば、流れているものでも、静止しているものでもよい。
【0117】
サーモカップル、サーミスタ等の温度センサを検出器20とともに用いてもよい。温度センサは試験材料に熱的に連結するように設置してもよい。温度センサの試験材料への熱的連結が、関係する温度の正確な表示および計測を提供するのに十分なものであることが望ましい。
【0118】
計測材料内の(信号路に沿った)流体温度を一定の限度内に維持しなければならない場合、または望ましい機能に応じて変化させなければならない場合には、温度調節器(加熱器/冷却器)を用いて温度の調節を行なってもよい。例えば、ペルチェ冷却/加熱素子を用いて、試験材料の温度を調節することができる。温度調節器をコントローラに接続し、センサ組立体と協働させてもよい。
【0119】
従来の検出器においては温度の変動および不安定性は有害因子であったが、超音波計測信号等を用いた本発明による検出器20においては、実質的に瞬時に、しかも壁または導管の影響を受けることなしに、試験材料の温度変化に反応することができるため、試験材料のモニタリングに有利に用いることができる。
【0120】
また、計測信号を試験材料内の信号路で発生させたり、励起させたりしてもよい。限定的な意味ではなく、例としてあげるならば、蛍光効果、ドップラー効果、ホール効果、ファラディー効果等の効果を、2つの異なる信号路沿いに計測し、上述の方法で処理することができる。
【0121】
通路/導管12に適した素材が発見されている。ペバックス、シリコンゴム、PVC、ウルテム、ポリスチレンを含む様々のポリマーおよびプラスチックならびに薄肉金属等である。
【0122】
同様に、センサ組立体は様々なタイプのものであってよく、トランソニックシステムズ社が発売し、本発明者名義で2000年8月8日に発行された米国特許第6,098,466号で開示されたものはその一例である。
【0123】
以上、本発明を具体的な実施形態と結びつけて説明してきたが、当業者にとっては、様々な代案、修正、変更が可能であることが、上記の記述内容から明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の精神および範囲を広義において逸脱しない限りにおいて、それらの代案、修正、変更をすべて包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】動的検出器の、第一の形態における断面図である。
【図2】図1の検出器の、第二の形態における断面図である。
【図3】静的検出器の断面図である。
【図4】別の実施形態による静的検出器の断面図である。
【図5】さらに別の実施形態による静的検出器の断面図である。
【図6】一対のセンサ組立体と長方形の通路とを有する検出器の概略図である。
【図7】図6の検出器の概略側面図である。
【図8】図6の検出器の概略図であり、可撓性の導管を含めて示す。
【図9】図8の検出器の概略側面図である。
【図10】図6〜図9の静的検出器の概略斜視図である。
【図11】図10の静的検出器の概略斜視図であり、追加センサを用いた状態を示す。
【図12】静的検出器の概略斜視図である。
【図13】また別の実施形態による静的検出器の断面斜視図であり、試験材料外部の信号路を示す。
【図14】また別の実施形態による静的検出器の断面斜視図であり、試験材料外部の信号路を示す。
【図15】また別の実施形態による静的検出器の断面斜視図であり、試験材料外部の信号路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を備えた、少なくとも2つの離間した壁間に位置する試験材料を計測する方法。
(a)第一および第二信号路に計測信号を通過させる。各信号路は少なくとも2つの離間した壁を貫通し、(i)離間した壁間の試験材料内部では異なったパス長を有し、(ii)試験材料外部では同一または既知のいずれかのパス長を有している。
【請求項2】
上記第一信号路と第二信号路に沿って通過させた計測信号の、少なくとも1つの信号パラメータを計測する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記計測信号の伝搬時間、位相、周波数、強度、振幅、減衰の少なくとも1つを計測する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、上記第一および第二の計測された信号パラメータに対応して、試験材料の少なくとも1つの特性を求める請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第一および第二信号路に沿って計測信号を通過させる工程が、離間した壁のうち少なくとも1つの壁の移動を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第一信号路および第二信号路に沿って計測信号を通過させる工程が、計測信号を所定の断面の試験材料の異なる部位を通過させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
計測信号を第一信号路に沿って通過させた後、計測信号を第二信号路に沿って通過させる前に、壁間の間隔を変更する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
離間した壁間に長手方向の軸線が形成され、その長手方向の軸線が偏寄される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試験材料の固有の特性または状態パラメータのうち、少なくとも1つを求める請求項1に記載の方法。
【請求項10】
同時または実質的に同時に、上記第一信号路および第二信号路に沿って信号を計測する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記第一および第二信号路に沿って通過させた計測信号の、同時に計測された信号パラメータに対応して、試験材料の特性を求める請求項1に記載の方法。
【請求項12】
試験材料内の第一および第二信号路のパス長が直線であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第一信号路および第二信号路の少なくとも1つに沿って通過する計測信号に予備的信号処理を行う請求項1に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程を備えた、離間した壁と少なくとも部分的に境界を成す試験材料の特性を求める方法。
(a)第一信号路に沿う第一信号の少なくとも1つの信号パラメータを計測する。第一信号路は試験材料内に第一内部長さを有している。第一信号路は上記離間した壁と試験材料とを貫通する。
(b)第二信号路に沿う第二信号の少なくとも1つの信号パラメータを計測する。第二信号路は試験材料内に第二内部長さを有している。第二信号路は上記離間した壁と試験材料とを貫通する。
(c)第一信号路および第二信号路に沿って計測された少なくとも1つの信号パラメータに対応して、試験材料の少なくとも1つの特性を求める。
【請求項15】
少なくとも1つの信号パラメータの計測が、第一信号および第二信号の伝搬時間、周波数、振幅、位相または減衰のいずれか1つの計測を含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第一信号路は試験材料の外側に第一外側部分を有し、第二信号路は試験材料の外側に第二外側部分を有し、これら第一、第二外側部分は、計測される信号パラメータに関して等しい請求項14に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの特性を求めることが、試験材料の特性および流れの特性のいずれか1つを求めることを含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第一信号路および第二信号路沿いに行う少なくとも1つの信号パラメータの計測が、同時または実質的に同時であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第一内部長さと第二内部長さが直線であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
以下の工程を備えた、離間した壁間に位置する試験サンプルを分析する方法。
(a)第一信号路および第二信号路に沿って通過する計測された信号パラメータに対応して、試験サンプルの少なくとも1つの特性を求める。第一、第二信号路は試験サンプル内の内部長さが異なり、試験サンプル外部ではパス長が実質的に等しい。試験サンプル外部のパス長は、離間した壁を含む。
【請求項21】
上記信号パラメータとして、伝搬時間、振幅、減衰、周波数、電圧、電流、インピーダンス、コンダクタンス、透過性、不透明性または位相の少なくとも1つを用いる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
直線状の内部長さを用いる請求項20に記載の方法。
【請求項23】
以下の工程を備えた、2つの離間した壁間に位置する試験材料の特性を求める方法。
(a)試験材料内の第一内部成分と、上記両壁を含む第一外部成分とを有する第一信号路長さを提供する。
(b)試験材料内の第二内部成分と、両壁を含む第二外部成分とを有する第二信号路を提供する。第一、第二内部成分は長さが異なり、第一、第二外部成分は等しい。
(c)第一信号路に沿う第一試験信号のパラメータを計測し、第二信号路に沿う第二試験信号のパラメータを計測する。
(d)計測されたパラメータに応じて、少なくとも1つの材料の特性を求める。
【請求項24】
上記第一内部成分と第二内部成分とを直線になるように形成する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
以下の工程を備えた、試験材料の検査方法。
(a)一対の信号路に沿って通過する一対の信号の一対の計測値に対応して、試験材料の特性を求める。
【請求項26】
さらに、上記一対の信号路に沿って通過する上記一対の信号の第二の対の計測値に対応して、上記試験材料の第二の異なる特性を求める請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記第一の対の計測値と上記第二の対の計測値を同時に得る請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記一対の信号路に沿って通過する第二の対の信号の第二の対の計測値に対応して、上記試験材料の第二の異なる特性を求める請求項25に記載の方法。
【請求項29】
上記第一の対の計測値と上記第二の対の計測値を同時に得る請求項28に記載の方法。
【請求項30】
以下の工程を備えた、2つの離間した壁間に位置する試験材料の特性を求める方法。
(a)試験材料および両壁を貫く第一信号路と第二信号路を提供する。第一、第二信号路は、等しい外部成分を有し、試験材料内では異なった直線長さを有する。
(b)上記第一信号路と第二信号路に沿って計測された試験信号の信号パラメータに対応して、少なくとも1つの試験材料の特性を求める。
【請求項31】
さらに、第一信号路と第二信号路に沿って通過する試験信号の計測された第二信号パラメータに対応して、試験材料の第二の特性を求める請求項30に記載の方法。
【請求項32】
さらに、同時に計測された第二信号パラメータに対応して、試験材料の第二の特性を求める請求項30に記載の方法。
【請求項33】
以下の工程を備えた、離間した壁間に位置する試験サンプルの特性を求める方法。
(a)第一信号路と第二信号路に沿って、計測信号の少なくとも1つの信号パラメータを計測する。各信号路は、(1)離間した壁を貫通し、(2)等しい外部成分を有し、(3)試験サンプル内において異なった直線長さを有する。
(b)計測された信号パラメータに対応する、少なくとも1つの試験材料の特性を求める。
【請求項34】
以下の構成を備えた、離間した2つの壁間の試験材料を計測するための検出器。
(a)第一外部成分と第一内部成分とを備えた第一信号路を有する第一センサ組立体。第一外部成分は両壁を含んでいる。
(b)異なった第二信号路を有する第二センサ組立体。第二信号路は、第二外部成分と第二内部成分とを含む。第二外部成分は両壁を含んでいる。 (c)上記第一外部成分は、計測される信号パラメータに関して上記第二外部成分と実質的に等しい。上記第一の直線長さの内部成分は、計測される信号パラメータに関して上記第二の直線長さの内部成分とは異なっている。
【請求項35】
さらにコントローラを備え、このコントローラは、上記第一センサ組立体と第二センサ組立体とに接続され、上記第一信号路と第二信号路に沿った計測信号のパラメータに応答して、試験材料の特性を求めることを特徴とする、請求項34に記載の検出器。
【請求項36】
以下の構成を備えた、試験材料を計測するための検出器。
(a)離間した第一壁と第二壁とを有するセンサハウジング。第一、第二壁は第一離間状態と第二離間状態の間を移動可能である。
(b)上記第一、第二壁に連結され、第一信号路を画成する第一センサ組立体。この第一信号路は、離間した第一壁と第二壁を横切り、試験材料を貫通して延びる。
(c)上記第一センサ組立体に接続されたコントローラ。このコントローラは、上記壁が上記第一離間状態にある時と上記第二離間状態にある時との、上記信号路に沿った計測信号の信号パラメータの差を求める。
【請求項37】
上記第一センサ組立体が、上記信号路に沿った計測信号の周波数、振幅、減衰、位相または伝搬時間の少なくとも1つを検出することを特徴とする、請求項36に記載の検出器。
【請求項38】
上記第一壁が固定され、上記第二壁が移動可能であることを特徴とする、請求項36に記載の検出器。
【請求項39】
上記第一壁が移動可能であり、上記第二壁が固定されていることを特徴とする、請求項36に記載の検出器。
【請求項40】
上記第一壁と第二壁がともに移動可能であることを特徴とする、請求項36に記載の検出器。
【請求項41】
以下の構成を備えた、試験空間中の試験材料を計測するための検出器。
(a)少なくとも部分的に上記試験空間を画成するセンサハウジング。 (b)上記センサハウジングに接続され、第一信号路を画成する第一センサ組立体。この第一信号路は、上記試験空間を貫通して延びる第一内部成分と、一対の離間した壁を含む第一外部成分とを有する。
(c)上記センサハウジングに接続され、異なる第二信号路を画成する第二センサ組立体。この第二信号路は、試験材料を貫通して延びる第二内部成分と、一対の離間した壁を含む第二外部成分とを有する。
(d)第一内部成分と第二内部成分とは異なる。
【請求項42】
上記第一センサ組立体および第二センサ組立体で計測された信号パラメータに関して、上記第一外部成分と第二外部成分が実質的に等しいことを特徴とする、請求項41に記載の検出器。
【請求項43】
上記第一内部成分と第二内部成分が直線であることを特徴とする、請求項41に記載の検出器。
【請求項44】
さらにコントローラを備え、このコントローラが、上記第一センサ組立体と第二センサ組立体とに接続され、第一センサ組立体と第二センサ組立体とによって計測されたパラメータの差を求めることを特徴とする、請求項41に記載の検出器。
【請求項45】
上記センサハウジングが、所定の断面と長手方向に延びる縦軸を有する上記試験空間を画成し、この縦軸が長手方向に沿って偏寄していることを特徴とする、請求項41に記載の検出器。
【請求項46】
以下の工程を備えた、試験材料の特性を求める方法。
(a)試験材料内の第一経路に沿って信号パラメータの第一値を計測し、試験材料内の異なる第二経路に沿って上記信号パラメータの第二値を計測する。
(b)上記信号パラメータの上記第一、第二計測値に応じて、試験材料の少なくとも1つの特性を求める。
【請求項47】
上記第一値と第二値を同時に計測する請求項46に記載の方法。
【請求項48】
上記第一値と第二値とを実質的に同時に計測する請求項46に記載の方法。
【請求項49】
さらに、上記第一経路に沿って第二信号パラメータの第一値を計測し、上記第二経路に沿って上記第二信号パラメータの第二値を計測する請求項46に記載の方法。
【請求項50】
試験材料の少なくとも2つの特性を求める請求項49に記載の方法。
【請求項51】
上記第一経路と第二経路を直線状に形成する請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−512652(P2008−512652A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530404(P2007−530404)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/031352
【国際公開番号】WO2006/028984
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507072829)トランソニック システムズ インク (1)
【Fターム(参考)】