説明

難燃性樹脂組成物及びその製法

(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、及び(iii)デンプン14〜40重量%を含み、すべての重量が組成物の総重量を基準とし、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な重量%比で存在する、難燃性組成物が開示されている。組成物及び本発明の組成物を含む物品を調製する方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族アルケニル樹脂及びデンプンを含む難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂などの芳香族アルケニル樹脂を含む難燃性樹脂組成物は、典型的にはハロゲン含有難燃性添加剤を含む。環境、衛生、及び安全(EHS)の問題を最小化するため、非ハロゲン難燃性添加剤を含有する難燃性芳香族アルケニル樹脂組成物の開発に対する市場ニーズが高い。そのような組成物は環境に優しい難燃性組成物として知られている。典型的には、良好な機械的特性及び望ましい加工特性を維持しながら、ハロゲン含有添加剤を含まず、必要とされる難燃性等級を有する難燃性芳香族アルケニル樹脂組成物を開発することは不可能であった。したがって、機械的特性の魅力的なバランスもとれており、適切な難燃性を有する、環境に優しい難燃性芳香族アルケニル樹脂組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
発明者らは、難燃性と機械的特性の魅力的なバランスとを併せ持つ、環境に優しい難燃性芳香族アルケニル樹脂組成物を見いだした。本発明の組成物から作られる物品は多くの場合、UL−94のプロトコルに従って測定される、V−1又はそれを上回る難燃性等級を示す。この物品は難燃性を必要とする用途、特に難燃性のためのハロゲンを含まない(環境に優しい)組成物を必要とする用途において有用である。本発明は、費用効率の高い添加剤を使用した、環境に優しい難燃性ポリマー製品に関する、独特な解決策を提供する。
【0004】
一実施形態において、本発明は、(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、及び(iii)デンプン14〜40重量%を含み、すべての重量が組成物の総重量を基準とし、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な重量%比で存在する、樹脂状の難燃性組成物を含む。
【0005】
別の実施形態において、本発明は、(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、(iii)デンプン14〜40重量%、並びに(iv)潤滑剤、流動促進剤、可塑剤、静電防止剤、離型材、耐衝撃性改質剤、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、ドリップ防止剤、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、金属ステアリン酸塩、難燃補助剤、ゴム性添加剤、無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む補助コポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な1:2〜2:1の範囲の重量%比で存在する、樹脂状の難燃性組成物を含む。
【0006】
さらに別の実施形態において、本発明は(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、(iii)デンプン14〜40重量%、及び(iv)潤滑剤、流動促進剤、可塑剤、静電防止剤、離型材、耐衝撃性改質剤、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、ドリップ防止剤、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、金属ステアリン酸塩、難燃補助剤、ゴム性添加剤、無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む補助コポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な1:2〜2:1の範囲の重量%比で存在する、樹脂状の難燃性組成物を調製する押出プロセスを含む。このプロセスは、ポリリン酸アンモニウムの少なくとも一部を、芳香族アルケニル樹脂及びデンプンの下流において押出機へ加えるステップを含む。本発明の組成物を含む物品も開示されている。本発明の他の様々な特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照することによって明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
下記の明細書及びそれに続く特許請求の範囲において、用語は、以下の意味を有すると定義される。単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に別途指示されない限り、複数形の指示対象を含む。専門用語「モノエチレン性不飽和」とは、1分子当たり1つのエチレン性不飽和部位を有することを意味する。専門用語「ポリエチレン性不飽和」とは、1分子当たり2以上のエチレン性不飽和部位を有することを意味する。専門用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを総称する;例えば、用語「(メタ)アクリレートモノマー」は、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーを総称する。用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタクリルアミドを総称する。
【0008】
本発明の様々な実施形態で使用される場合の用語「アルキル」は、炭素原子及び水素原子を含有し、また任意選択で炭素及び水素に加えて例えば周期表の15、16、及び17族から選択される原子を含有していてもよい、直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、トリシクロアルキル、及びポリシクロアルキル基を示すことを意図する。アルキル基は飽和であっても又は不飽和であってもよく、例えばアルケニル、ビニル、又はアリルを含むことができる。用語「アルキル」は、アルコキシド基のアルキル部分も包含する。様々な実施形態において、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基は1〜32個の炭素原子を含有する基であり、例示的な非限定的例として、C〜C32アルキル(任意選択でC〜C32アルキル、C〜C15シクロアルキル、又はアリールから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい);及び、C〜C15シクロアルキル(任意選択でC〜C32アルキルから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい)が挙げられる。一部の特定の例示的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルが含まれる。シクロアルキル基及びビシクロアルキル基のいくつかの例示的な非限定的例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロヘプチル、及びアダマンチルが挙げられる。様々な実施形態において、アラルキル基は7〜約14個の炭素原子を含有する基である;これらとしては、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル、及びフェニルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の様々な実施形態で使用される場合の用語「アリール」は、6〜20個の環状炭素原子を含有する置換又は非置換のアリール基を示すことを意図する。これらのアリール基のいくつかの例示的な非限定的例としては、C〜C32アルキル、C〜C15シクロアルキル、アリール、並びに周期表の15、16、及び17族から選択される原子を含む官能基から選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい、C〜C20アリールが挙げられる。アリール基のいくつかの特定の例示的な例には、置換又は非置換のフェニル、ビフェニル、トリル、ナフチル、及びビナフチルが含まれる。
【0009】
本発明の実施形態における組成物は、少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂を含む。芳香族アルケニル樹脂については特に制限はなく、これはいくつかの実施形態において、1つ又は複数のホモポリマー、コポリマー、コアシェル樹脂、又はゴム改質樹脂を含むことができる。いくつかの特定の実施形態において、芳香族アルケニル樹脂は、スチレンに由来する構造単位を有する少なくとも1つのポリマー材料を含む。他の特定の実施形態において、芳香族アルケニル樹脂は、ポリスチレン、発泡性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ゴム改質ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アルキルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、メチルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−メチルアクリレートコポリマー、スチレン−メチルメタクリレートコポリマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリルコポリマー、ポリクロロスチレン、ポリビニルトルエンなど、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、硬質熱可塑性相中に分散した不連続のエラストマー相を含む、少なくとも1つのゴム改質熱可塑性樹脂を含み、硬質熱可塑性相の少なくとも一部がエラストマー相へグラフトされている。ゴム改質熱可塑性樹脂は、グラフトのための少なくとも1つのゴム基材を使用する。ゴム基材は組成物のエラストマー相を含む。ゴム基材について特に制限はないが、ただし、少なくとも一部のグラフト可能なモノマーによってグラフトされやすいものである。いくつかの実施形態において、適切なゴム基材には、ブチルアクリレートゴム、ジメチルシロキサン/ブチルアクリレートゴム、又はシリコーン/ブチルアクリレート複合ゴム;例えばエチレン−プロピレンゴム又はエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムなどのポリオレフィンゴム、;ジエン由来ゴム;又はポリメチルシロキサンゴムなどのシリコーンゴムポリマーが含まれる。ゴム基材は、通常、一実施形態では25℃以下、別の実施形態では約0℃未満、別の実施形態では約−20℃未満、さらに別の実施形態では約−30℃未満のガラス転移温度Tgを有する。本明細書で述べるように、ポリマーのTgは、示差走査熱量測定法(DSC;加熱速度20℃/分、Tg値は変曲点で測定される)によって測定される、ポリマーのT値である。
【0011】
一実施形態においてゴム基材は、共役ジエンモノマー及び非共役ジエンモノマーから選択される1つ又は複数の不飽和モノマーに由来する構造単位を有するポリマーを含む。適切な共役ジエンモノマーとしては、限定はされないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、ジクロロブタジエン、ブロモブタジエン、及びジブロモブタジエン、並びに共役ジエンモノマーの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、共役ジエンモノマーは1,3−ブタジエンである。適切な非共役ジエンモノマーとしては、限定はされないが、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ヘキサジエン、及びフェニルノルボルネンが挙げられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、ゴム基材は、任意選択で、少量の他の不飽和モノマーに由来する構造単位、例えば、(C〜C)オレフィンモノマー、芳香族アルケニルモノマー、及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから選択される1つ又は複数のモノマーに由来する構造単位を、約30重量%まで含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「(C〜C)オレフィンモノマー」は、1分子当たり2〜8個の炭素原子を有し、1分子当たり1つのエチレン性不飽和部位を有する化合物を意味する。適切な(C〜C)オレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、ヘプテンが挙げられる。他の特定の実施形態において、ゴム基材は、任意選択で、(メタ)アクリレートモノマー、芳香族アルケニルモノマー、及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから選択される1つ又は複数のモノマーに由来する構造単位を約25重量%まで含むことができる。適切な共重合可能な(メタ)アクリレートモノマーとしては、限定はされないが、C〜C12アリールもしくはハロアリールで置換されたアクリレート、(C〜C12)アリールもしくはハロアリールで置換されたメタクリレート、又はそれらの混合物;モノエチレン性不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びイタコン酸など;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(C〜C12)アルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチルメタクリレートなど;(C〜C12)シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、例えばシクロヘキシルメタクリレートなど;(メタ)アクリルアミドモノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、及びN−置換アクリルアミド、又はN−置換メタクリルアミドなど;マレイミドモノマー、例えばマレイミド、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びハロアリール置換マレイミドなど;無水マレイン酸;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びビニルエステル、例えば酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルなどが挙げられる。適切な芳香族アルケニルモノマーとしては、限定はされないが、芳香族ビニルモノマー、例えばスチレン、及び、芳香環に結合したアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、又はハロ置換基を1つ又は複数有する置換スチレンなど(限定はされないが、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルビニルトルエン、ビニルキシレン、トリメチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、α−クロロスチレン、ジクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、メトキシスチレンが挙げられる)、及び、ビニル置換縮合芳香環構造(例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど)、並びに、芳香族ビニルモノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー(例えばアクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、及びα−クロロアクリロニトリルなど)の混合物が挙げられる。芳香環上に置換基の混合物を有する置換スチレンもまた適切である。本明細書で使用される場合、用語「モノエチレン性不飽和ニトリルモノマー」は、1分子当たり1つのニトリル基及び1つのエチレン性不飽和部位を含む非環式化合物を意味し、限定はされないが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0013】
特定の実施形態において、エラストマー相は、1つ又は複数の共役ジエンモノマーに由来する繰り返し単位60〜100重量%、及び芳香族アルケニルモノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから選択される1つ又は複数のモノマーに由来する繰り返し単位0〜40重量%を含み、例えばスチレン−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、又はスチレン−ブタジエン−アクリロニトリルコポリマーなどである。別の特定の実施形態において、エラストマー相は、1つ又は複数の共役ジエンモノマーに由来する繰り返し単位70〜90重量%、及び芳香族アルケニルモノマーから選択される1つ又は複数のモノマーに由来する繰り返し単位30〜10重量%を含む。
【0014】
一実施形態においてゴム基材は、ゴム改質熱可塑性樹脂の重量を基準として、ゴム改質熱可塑性樹脂中に約5重量%〜約80重量%のレベルで存在することができる。1つの特定の実施形態においてゴム基材は、ゴム改質熱可塑性樹脂の重量を基準として、ゴム改質熱可塑性樹脂中に約10重量%〜約25重量%のレベルで存在することができる。別の特定の実施形態においてゴム基材は、ゴム改質熱可塑性樹脂の重量を基準として、ゴム改質熱可塑性樹脂中に約55重量%〜約80重量%のレベルで存在することができる。
【0015】
ゴム基材の粒径分布について特に制限はない(以下、グラフト後のゴム基材と区別するために、初期ゴム基材と呼ぶことがある)。いくつかの実施形態において、初期ゴム基材は、粒径が約50ナノメートル(nm)〜約1000nmの範囲、より具体的には粒径が約200nm〜約500nmの範囲である、広くて本質的に単峰性の粒径分布を有することができる。他の実施形態において、初期ゴム基材の平均粒径は約100nm未満とすることができる。さらに他の実施形態において、初期ゴム基材の平均粒径は約80nm〜約400nmの範囲とすることができる。他の実施形態において、初期ゴム基材の平均粒径は約400nmを超えることができる。さらに他の実施形態において、初期ゴム基材の平均粒径は約400nm〜約750nmの範囲とすることができる。さらに他の実施形態において、初期ゴム基材は、少なくとも2つの平均粒径分布を有する粒径の混合物である粒子を含む。特定の実施形態において、初期ゴム基材は、各平均粒径分布が約80nm〜約750nmの範囲である粒子の混合物を含む。別の特定の実施形態において、初期ゴム基材は、平均粒径分布が約80nm〜約400nmの範囲である粒子と;広くて本質的に単峰性の平均粒径分布を有する粒子との混合物を含む。
【0016】
ゴム基材は、既知の方法、限定はされないが、例えば塊状、溶液、又はエマルション法などに従って製造することができる。1つの非限定的な実施形態において、フリーラジカル開始剤、例えばアゾニトリル開始剤、有機過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、又はレドックス開始剤系の存在下で、及び任意選択で連鎖移動剤、例えばアルキルメルカプタンの存在下で、水性エマルション重合によりゴム基材が製造され、ゴム基材の粒子が製造される。
【0017】
ゴム改質熱可塑性樹脂の硬質熱可塑性樹脂相は、1つ又は複数の熱可塑性ポリマーを含む。本発明の一実施形態において、ゴム基材の存在下でモノマーを重合させそれによって硬質熱可塑性相を生成させ、少なくともその一部はエラストマー相に化学的にグラフトされている。ゴム基材に化学的にグラフトされている硬質熱可塑性相の部分は、以下、「グラフト化コポリマー」と呼ぶことがある。いくつかの実施形態において、2以上の異なるゴム基材(各々が異なる平均粒径を有する)を、硬質熱可塑性相を調製するために、重合反応において別々に使用し、次いでそれらの生成物を混合してゴム改質熱可塑性樹脂を作製することができる。初期ゴム基材の平均粒径がそれぞれ異なるそのような生成物が一緒に混合される、例示的な実施形態において、前記基材の割合は約90:10〜約10:90の範囲、又は約80:20〜約20:80、又は約70:30〜30:70の範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、小さい方の粒径を有する初期ゴム基材は、粒径サイズが2以上の初期ゴム基材を含むそのような混合物中の主成分である。
【0018】
硬質熱可塑性相は、一実施形態では約25℃を超え、別の実施形態では90℃以上であり、さらに別の実施形態では100℃以上であるガラス転移温度(Tg)を示す、熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含む。特定の実施形態において、硬質熱可塑性相は、芳香族アルケニルモノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから成る群から選択される1つ又は複数のモノマーに由来する構造単位を有するポリマーを含む。適切な芳香族アルケニルモノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーとしては、上記でゴム基材の説明において明記されたものが挙げられる。さらに、硬質熱可塑性樹脂相は、この相についてのTgの制限が満たされるならば、任意選択で、1つ又は複数の他の共重合可能なモノマーに由来する第3の繰り返し単位を約10重量%まで含むことができる。
【0019】
硬質熱可塑性相は、典型的には1つ又は複数の芳香族アルケニルポリマーを含む。適切な芳香族アルケニルポリマーは、1つ又は複数の芳香族アルケニルモノマーに由来する構造単位を少なくとも約20重量%含む。一実施形態において、硬質熱可塑性相は、1つ又は複数の芳香族アルケニルモノマー及び1つ又は複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーに由来する構造単位を有する、芳香族アルケニルポリマーを含む。そのような芳香族アルケニルポリマーの例としては、限定はされないが、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリルコポリマー、又はα−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリルコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは、個々に又は混合物として硬質熱可塑性相に使用することができる。
【0020】
コポリマー中の構造単位が1つ又は複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーに由来する場合、グラフト化コポリマー及び硬質熱可塑性相を含むコポリマーを生成するために加えられるニトリルモノマーの量は、グラフト化コポリマー及び硬質熱可塑性相を含むコポリマーを生成するために加えられるモノマーの総重量を基準として、一実施形態では約5重量%〜約40重量%の範囲、別の実施形態では約5重量%〜約30重量%の範囲、別の実施形態では約10重量%〜約30重量%の範囲、さらに別の実施形態では約15重量%〜約30重量%の範囲とすることができる。
【0021】
ゴム改質熱可塑性樹脂の硬質熱可塑性樹脂相は、この相についてのTgの制限が満たされるならば、任意選択で1つ又は複数の他の共重合可能なモノマー、例えばモノエチレン性不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸、メタクリル酸、及びイタコン酸など);ヒドロキシ(C〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー(例えばヒドロキシエチルメタクリレートなど);(C〜C12)シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー(例えばシクロヘキシルメタクリレートなど);(メタ)アクリルアミドモノマー(例えばアクリルアミド及びメタクリルアミドなど); マレイミドモノマー(例えばN−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミドなど)、無水マレイン酸、ビニルエステル(例えば酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルなど)などに由来する繰り返し単位を約10重量%まで含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「(C〜C12)シクロアルキル」は、1つの基当たり4〜12個の炭素原子を有する環状アルキル置換基を意味する。
【0022】
ゴム基材と硬質熱可塑性相を含むモノマーとの間に起きるグラフトの量は、ゴム基材の相対量及び組成によって変化する。一実施形態において、組成物中の硬質熱可塑性相の総量を基準として約10重量%を超える硬質熱可塑性相がゴム基材に化学的にグラフトされる。別の実施形態において、組成物中の硬質熱可塑性相の総量を基準として約15重量%を超える硬質熱可塑性相がゴム基材に化学的にグラフトされる。さらに別の実施形態において、組成物中の硬質熱可塑性相の総量を基準として約20重量%を超える硬質熱可塑性相がゴム基材に化学的にグラフトされる。特定の実施形態において、ゴム基材に化学的にグラフトされた硬質熱可塑性相の量は、組成物中の硬質熱可塑性相の総量を基準として約5重量%〜約90重量%;約10重量%〜約90重量%;約15重量%〜約85重量%;約15重量%〜約50重量%;又は約20重量%〜約50重量%の範囲とすることができる。さらに他の実施形態において、硬質熱可塑性相の約40重量%〜90重量%はフリー、すなわちグラフトされていない。
【0023】
硬質熱可塑性相ポリマーは、既知の方法、例えば塊状重合、エマルション重合、懸濁重合、又はそれらの組合せに従って製造することができ、硬質熱可塑性相の少なくとも一部が、硬質熱可塑性相の場合にゴム基材中に存在する不飽和部位との反応を介してゴム基材に化学結合している、すなわち「グラフト」している。グラフト反応は、バッチ法、連続法、又は半連続法で行うことができる。
【0024】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、ABS樹脂であるゴム改質熱可塑性樹脂を含む。本発明の組成物中での使用に適した例示的なABS樹脂には、CYCLOLAC(登録商標)の商標名でSABIC Innovative Plastics(商標)から入手可能なものが含まれる。いくつかの特定の実施形態において、本発明の組成物は、ABSなどの少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂に由来するゴム5〜50重量%を含み、重量%の値は組成物全体の重量を基準としており、用語「ゴム」はABS中のゴム基材を指す。さらに他の特定の実施形態において、本発明の組成物は、ABSなどの少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂に由来するゴムを組成物全体の重量を基準として5〜35重量%を含む。さらに他の特定の実施形態において、本発明の組成物は、ABSなどの少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂に由来するゴムを組成物全体の重量を基準として5〜30重量%を含む。さらに他の特定の実施形態において、本発明の組成物は、ABSなどの少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂に由来するゴムを組成物全体の重量を基準として30重量%未満を含む。所望のゴム含量を有する1つの芳香族アルケニル樹脂を使用するか、又は各々のゴム含量が異なる2つ以上の芳香族アルケニル樹脂を使用するかにより、ゴム含量は変化し得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準として芳香族アルケニル樹脂を40〜70重量%含み、他の実施形態においては芳香族アルケニル樹脂を40〜66重量%含む。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、組成物全体の重量を基準としてゴム含有樹脂に由来するゴムを5〜50重量%含む。さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、組成物全体の重量を基準としてゴム含有樹脂に由来するゴムを5〜35重量%含む。
【0025】
本発明の実施形態における組成物は、デンプン(多くの場合デンプン又は穀粉であり、以下、「デンプン」と呼ぶ)を含む成分を含む。デンプンの例示的な例には、コーンスターチ、小麦デンプン、小麦粉、ジャガイモデンプン、ジャガイモ粉、トウモロコシ粉、グルテンフリーベーキング粉、アタ粉(atta flour)、ライ麦粉、米粉、そば粉、栗粉、ヒヨコマメ粉、テフ粉、大麦粉、ナッツ粉、タピオカ粉、大豆粉、ヒバマタ粉(tang flour)、スペルト粉、エンドウ豆粉、そら豆粉、チューニョ粉(chuno flour)、ドングリ粉、タロイモ粉、アマランス粉、クズウコン粉、キノア粉など、及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの特定の実施形態において、本発明の組成物はコーンスターチを含む。他の実施形態において、本発明の組成物はデンプン及び任意選択でセルロース系材料を含む。様々な実施形態において、任意選択のセルロース系材料は、セルロース系繊維、木質繊維、亜麻繊維、麻繊維、ジュート繊維、種子殻、破砕米殻(ground rice hull)、新聞紙、ケナフ麻、ヤシ殻、又は同様の材料を含み得又はそれに由来し得る。いくつかの特定の実施形態において、任意選択のセルロース系材料は異なる形態で入手可能である木質繊維とすることができる。他の例示的な例において、任意選択のセルロース系材料は、おがくず、アルファルファ、小麦パルプ、木質チップ、木質粒子、破砕木材、木粉、木質フレーク、木材ベニヤ、木材積層物、紙、ボール紙、わら、綿、落花生殻、バガス、植物繊維、竹繊維、ヤシ繊維、又は同様の材料を含むか又はそれに由来する。当業者は、本発明の実施形態において使用されるときの任意選択のセルロース系材料が、異なる種類のセルロース系材料の任意の適切な組合せとすることができることを認識するべきである。いくつかの特定の実施形態において、任意選択のセルロース系材料はセルロース系繊維及び木粉から選択される。いくつかの具体的な実施形態において、本発明の組成物はセルロース系材料を含有しない。本発明の組成物中に存在する場合、セルロース系材料は、いくつかの実施形態ではデンプンに対する重量/重量比で1:99〜99:1の範囲、いくつかの実施形態ではデンプンに対する重量/重量比で1:10〜10:1の範囲で、さらに他の実施形態ではデンプンに対する重量/重量比で1:2〜2:1の範囲で存在する。
【0026】
本発明の実施形態における組成物は、少なくとも1つのポリリン酸アンモニウムも含む。ポリリン酸アンモニウムは既知の材料であり、例えば米国特許第3,423,343号及び第3,513,114号に例示されるように調製することができる。いくつかの例示的な実施形態において、ポリリン酸アンモニウムは一般式(NH3n+1(式中、nは1以上である)、又は(NHPO(式中、nは2以上の整数を表す)を有する。市販のポリリン酸アンモニウムの例示的な例には、Clariantにより製造及び販売されるEXOLIT(登録商標)ポリリン酸アンモニウム、ICL Performance Products LPより入手可能なPHOS−CHECK(登録商標)ポリリン酸アンモニウム、及びBudenheim Iberica Comercial S.Aより入手可能なFR CROS(登録商標)ポリリン酸アンモニウムが含まれる。一実施形態において、本発明の組成物は、架橋及び/又は分岐している、少なくとも1つの「結晶相II」ポリリン酸アンモニウムを含む。結晶相IIポリリン酸アンモニウムは当技術分野において既知である。それらは高分子量のポリリン酸アンモニウムであり、高い熱安定性(例えば、約300℃で分解が始まる)及び低い水溶性を示す。結晶相IIポリリン酸アンモニウムの例示的な例は、Clariantより入手可能なEXOLIT(登録商標)AP423である。いくつかの実施形態では本発明の組成物において被覆ポリリン酸アンモニウムも使用することができる。被覆ポリリン酸アンモニウムの例示的な例には、メラミン被覆又はメラミン−ホルムアルデヒド被覆又は表面で反応させたメラミン被覆ポリリン酸アンモニウムが含まれる。1つの例示的な被覆ポリリン酸アンモニウムは、Budenheim Iberica Comercial S.Aより入手可能なFR CROS(登録商標)C40である。
【0027】
本発明の様々な実施形態において、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンは、UL−94のプロトコルに従って測定される、少なくともV−1又はそれを上回る難燃性等級を示す物品を提供するのに有効な総重量で、本発明の組成物中に共に存在することができる。特定の実施形態において、ポリリン酸アンモニウムは本発明の組成物中に、組成物全体の重量を基準として約5重量%〜約35重量%の範囲の量、又は約7重量%〜約33重量%の範囲の量、又は約9重量%〜約33重量%の範囲の量で、又は約12重量%〜約33重量%の範囲の量で存在することができる。特定の実施形態において、デンプンは本発明の組成物中に、組成物全体の重量を基準として約5重量%〜約45重量%の範囲の量、又は約10重量%〜約40重量%の範囲の量、又は約14重量%〜約40重量%の範囲の量で存在することができる。本発明の他の特定の実施形態において、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンは、UL−94のプロトコルに従って測定される、V−0、又はV−1、又はV−2の難燃性等級を示す物品を提供するのに有効な重量%比で存在することができる。本発明の他の特定の実施形態において、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンは、1:10〜10:1、多くの場合1:8〜8:1、さらに多くの場合、1:5〜5:1、さらにより多くの場合1:3〜3:1、さらにより多くの場合1:2〜2:1の範囲の重量%比で存在することができる。他の特定の実施形態において、セルロース系材料が組成物中に存在する場合、セルロース系材料及びデンプンの組合せは本発明の組成物中に、組成物全体の重量を基準として、5重量%〜約45重量%の範囲の量、又は約10重量%〜約40重量%の範囲の量、約14重量%〜約40重量%の範囲の量で存在することができる。本発明の他の特定の実施形態において、(i)ポリリン酸アンモニウム並びに(ii)デンプン及び任意成分のセルロース系材料の組合せは、UL−94のプロトコルに従って測定される、V−0、又はV−1、又はV−2の難燃性等級を示す物品を提供するのに有効な重量%比で存在することができる。本発明の他の特定の実施形態において、(i)ポリリン酸アンモニウム並びに(ii)デンプン及び任意成分のセルロース系材料の組合せは、1:10〜10:1、多くの場合1:8〜8:1、より多くの場合1:5〜5:1、さらにより多くの場合1:3〜3:1、さらにより多くの場合1:2〜2:1の範囲の(i)対(ii)の重量%比で存在することができる。
【0028】
本発明の組成物は、任意選択で、当技術分野で既知の添加剤も含むことができ、限定はされないが、色安定剤などの安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、紫外線遮断剤、及び紫外線吸収剤;難燃補助剤、ドリップ防止剤、潤滑剤、流動促進剤又は他の加工補助剤;可塑剤、静電防止剤、離型材、耐衝撃性改質剤、フィラー、又は有機、無機、若しくは有機金属系とすることができる染料若しくは顔料などの着色剤;視覚効果添加剤、及び同様の添加剤が挙げられる。例示的な添加剤としては、限定はされないが、シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉、ガラス繊維又はガラス球、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、リトポン、酸化亜鉛、金属ステアリン酸塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、破砕石英、粘土、焼成粘土、タルク、カオリン、アスベスト、コルク、綿又は合成織物繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの補強フィラー、及び金属フレーク(限定はされないがアルミニウムフレークが挙げられる)が挙げられる。多くの場合1つを超える添加剤が本発明の組成物中に含まれ、いくつかの実施形態では1つを超える1つのタイプの添加剤が含まれる。特定の実施形態において、本発明の組成物は少なくとも1つの金属ステアリン酸塩を含む。他の特定の実施形態において、本発明の組成物はステアリン酸亜鉛を含む。本発明の組成物中に存在する金属ステアリン酸塩の量は、金属ステアリン酸塩を用いずに調製された同様の組成物と比較して、前記組成物から成形される部材の色を改善するのに十分な量である。いくつかの特定の実施形態において、金属ステアリン酸塩の量は、樹脂成分100部当たり0.1部(phr)〜10phrの範囲、他の特定の実施形態では0.5phr〜5phrの範囲、さらに他の特定の実施形態では0.7phr〜3phrの範囲である。
【0029】
本発明のいくつかの特定の実施形態において、本発明の組成物は任意選択でゴム性添加剤を含む。例示的なゴム性添加剤には、エラストマーホモポリマー又はコポリマーが含まれる。そのようなゴム性添加剤の特定の例示的な例としては、限定はされないが、ポリイソプレン及びポリブタジエンなどのポリジエン;ジエン構造単位が部分的に又は完全に水素化されている場合がある、ジブロック及びトリブロックコポリマーを含めたスチレン−ジエンブロックコポリマー;カルボン酸基又はエステル基を含有するオレフィンポリマー;ニトリル−ブタジエンゴム、天然ブチルゴム、ポリイソブチレン、並びにカルボン酸基又はその官能性誘導体(例えば無水物、エステル、アミド、又はイミド基)を有するゴム性コア及び硬質シェルを有するコアシェルポリマーが挙げられる。
【0030】
ゴム性添加剤の他の特定例としては、限定はされないが、スチレン系ブロックコポリマー及び様々な酸官能性エチレン−プロピレンコポリマー(例えばEP−グラフト−無水マレイン酸)が挙げられる。さらなる例は、いわゆるエラストマーブロックコポリマー、例えばA−B−Aトリブロックコポリマー及びA−Bジブロックコポリマーである。使用することができるA−B及びA−B−Aタイプのブロックコポリマー耐衝撃性改質剤は、典型的には1つ又は2つの芳香族アルケニルブロック(典型的にはスチレンブロックである)及びゴム性ブロック(例えば部分的又は完全に水素化されている場合があるブタジエンブロック)を含む熱可塑性ゴムである。これらのトリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの混合物は、多くの場合、本発明の組成物中での使用に適している。適切なA−B及びA−B−Aタイプのブロックコポリマーは、例えば米国特許第3,078,254号、第3,402,159号、第3,297,793号、第3,265,765号、及び第3,594,452号、並びに英国特許1,264,741号に開示されている。A−B及びA−B−Aブロックコポリマーの典型的な種類の例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン(SBR)、水素化ポリスチレン−ポリブタジエン(ポリスチレン-ポリ(エチレン−プロピレン)として知られている場合もある)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、水素化ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブタジエン)−ポリスチレン(SEBS)として知られている場合もある)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)、並びにそれらの選択的に水素化されたバージョンが挙げられる。例示的なA−B及びA−B−Aブロックコポリマーは、いくつかの供給元から市販されており、INSA,Houston,Tex.からの商標SOLPRENE、Kraton Polymers LLCからの商標KRATON、Dexcoからの商標名VECTOR、及びKurarayからの商標SEPTONが挙げられる。
【0031】
さらなる実施形態において、有用なゴム性添加剤は、官能化エラストマーポリオレフィン(例えば、無水物、エポキシ、オキサゾリン、及びオルトエステルから成る群の少なくとも1つの部位を含有するエラストマーポリオレフィンなど)を含むことができる。エラストマーポリオレフィンの必須の構造単位は、典型的にはエチレン及び少なくとも1つのC3〜8−αオレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンなど)を含むモノマーに由来する。エチレン及び少なくとも1つのC3〜8−αオレフィンの比率は、それらが共にポリマーの大部分を占めるならば、決定的重要性を持たない。
【0032】
特定の一実施形態において、官能性エラストマーポリオレフィンは官能性エチレン−プロピレンゴム又は官能性エチレン−プロピレン−ジエン−エラストマーである。ジエン部分は、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、又はジシクロペンタジエンなどの、少なくとも1つの非共役ジエンである。これらのエラストマーポリオレフィンは、それぞれEPR及びEPDMエラストマーとして当技術分野で既知である。先に記載したものの混合物などの、ゴム性添加剤の混合物も、本発明の組成物において有用である。いくつかの特定の実施形態において、ゴム性添加剤の例示的な例には、芳香族アルケニル樹脂を含む組成物の衝撃強度を改善することが当技術分野で知られているものが含まれる。他の特定の実施形態において、本発明の組成物はニトリル−ブタジエンゴム又はスチレン−ブタジエンゴムを含む。
【0033】
他の特定の実施形態において、本発明の組成物は、任意選択で、難燃補助剤として少なくとも1つの有機リン化合物を含む。適切な有機リンの難燃性化合物は当技術分野で既知であり、限定はされないが、トリアリールホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、及びエチルジフェニルホスフェートなどのモノホスフェートエステル、並びにジホスフェートエステル及びオリゴマーホスフェート、例えばアリールジホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、ビスフェノールAジホスフェート、ジフェニル水素ホスフェート、及び2−エチルヘキシル水素ホスフェートなどが挙げられる。適切なオリゴマーホスフェート化合物は、例えば米国特許第5,672,645号に明記されている。難燃補助剤は、存在する場合、組成物全体の重量を基準として典型的には約4〜16重量%の量で、具体的には5〜15重量%の量で存在する。
【0034】
他の特定の実施形態において、本発明の組成物は、任意選択で、無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む少なくとも1つの補助コポリマーを含む。この一般的タイプの補助コポリマーの例示的な例には、スチレン−無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー(SANMA)、ポリ(エチレン−g−無水マレイン酸)、ポリ(プロピレン−g−無水マレイン酸)、(エチレン−プロピレン)−g−無水マレイン酸、EPDM−g−無水マレイン酸、スチレン−アクリル酸コポリマー(SAA)など、及びそれらの混合物が含まれる。無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む補助コポリマーは、本発明の組成物中に存在する場合、いくつかの実施形態では、前記コポリマーを含有しない組成物から生じる成形部材の衝撃強度と比較して、前記組成物から生じる成形部材の衝撃強度を改善するのに十分な量で存在する。特定の実施形態において、無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む補助コポリマーは、本発明の組成物中に存在する場合、典型的には約0.2〜5phr、具体的には0.5〜3phrの量で存在する。
【0035】
本発明の組成物及びそれから作られる物品は、既知の熱可塑性樹脂処理技術によって調製することができる。使用することができる既知の熱可塑性樹脂処理技術としては、限定はされないが、バッチ混合、内部ミキサー中の混合、バンバリーミキサー中の混合、押出成形、1軸スクリュー押出機における押出成形、2軸スクリュー押出機における押出成形、カレンダー加工、混練、異形押出成形、シート押出成形、パイプ押出成形、共押出成形、金型成形、押出ブロー成形、熱成形、射出成形、共射出成形、回転成形、圧縮成形、及び同様の方法、並びにそのような方法の組合せが挙げられる。特定の実施形態において、組成物は押出法によって調製される。特定の実施形態において、物品は本発明の組成物から射出成形法によって調製される。本発明はさらに、前記物品についての付加的な製作作業、限定はされないが、インモールドデコレーション、塗装オーブン内での焼付、溶接、機械加工、オーバーモールディング、共押出成形、多層押出成形、表面エッチング、ラミネート加工、及び/又は熱成形の1つ又は複数の作業などが考えられる。
【0036】
本発明の新規の態様は、本発明の組成物の作製方法を包含し、この方法ではいくつかの実施形態において、ポリリン酸アンモニウムとデンプンとの間の接触時間を最小化するような方法でポリリン酸アンモニウム及びデンプンを組成物中に取り入れる。前記接触時間の最小化の例示的な例としては、限定はされないが、ポリリン酸アンモニウムを取り入れる前に樹脂成分のすべて又は少なくとも一部及びデンプンをプレコンパウンド化することが挙げられる。本発明の他の実施形態において、芳香族アルケニル樹脂のすべて又は少なくとも一部を、デンプンと混合する前にポリリン酸アンモニウムのすべて又は少なくとも一部とプレコンパウンド化することができる。他の特定の実施形態において、芳香族アルケニル樹脂のすべて又は少なくとも一部をポリリン酸アンモニウムのすべて又は少なくとも一部とプレコンパウンド化することができ、そのプレコンパウンド化した材料を、次いで芳香族アルケニル樹脂及びデンプンを含む別個のプレコンパウンド化した材料と混合することができる。さらなる樹脂状及び非樹脂状の組成成分は、任意のプレコンパウンド化した混合物中に任意選択で取り入れることができる。いくつかの実施形態において、プレコンパウンド化した混合物は、ポリリン酸アンモニウム以外のすべてのブレンド組成成分、又はデンプン以外のすべてのブレンド組成成分を含むことができる。芳香族アルケニル樹脂と(i)ポリリン酸アンモニウム又は(ii)デンプンのいずれかとのそのようなプレコンパウンド化は、限定はされないが、押出又は混練などの既知の方法を用いて行うことができる。(i)芳香族アルケニル樹脂及びポリリン酸アンモニウム並びに(ii)芳香族アルケニル樹脂及びデンプンを含むプレコンパウンド化した材料の混合物のコンパウンド化は、既知のコンパウンド化法を用いて行うことができる。芳香族アルケニル樹脂及びポリリン酸アンモニウムを含むプレコンパウンド化済み材料は、プレコンパウンド化済み材料の総重量を基準として、一実施形態では15〜80重量%のポリリン酸アンモニウム、別の実施形態では15〜60重量%のポリリン酸アンモニウム、さらに別の実施形態では20〜55重量%のポリリン酸アンモニウムを含有する。芳香族アルケニル樹脂及びデンプンを含むプレコンパウンド化済み材料は、プレコンパウンド化済み材料の総重量を基準として、一実施形態では15〜60重量%のデンプン、別の実施形態では20〜50重量%のデンプン、さらに別の実施形態では25〜45重量%のデンプンを含有する。
【0037】
さらに他の実施形態において、本発明の組成物は押出プロセスで調製されるが、芳香族アルケニル樹脂及びデンプンのすべて又は少なくとも一部が押出機の供給スロートで供給されている状態で、ポリリン酸アンモニウムのすべて又は少なくとも一部が押出機の下流供給口で押出機へ供給される。さらに他の実施形態において、本発明の組成物は押出プロセスで調製されるが、芳香族アルケニル樹脂及びポリリン酸アンモニウムのすべて又は少なくとも一部が押出機の供給スロートで供給されている状態で、デンプンのすべて又は少なくとも一部が押出機の下流供給口で押出機へ供給される。本発明の組成物のための任意のコンパウンド化プロセス(限定はされないが、押出中における下流でのポリリン酸アンモニウムの供給が挙げられる)は、固体のポリリン酸アンモニウムを供給することによって、又は、任意選択で1つ又は複数の付加的なブレンド成分(例えば、液体難燃補助剤などの少なくとも1つの難燃補助剤)を組み合わせた、ポリリン酸アンモニウムの液体混合物を注入することによって、行うことができる。任意選択で、任意の押出プロセスは、押出機中の1つ又は複数の適切な位置で真空排気を行うことができる。本発明の特定の実施形態は、樹脂状の難燃性組成物を調製するための押出プロセスであって、組成物は(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、及び(iii)デンプン14〜40重量%を含み、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な1:2〜2:1の範囲の重量%比で存在し、組成物は組成物全体の重量を基準でゴム15〜40重量%を含む押出プロセスである。このプロセスは、ポリリン酸アンモニウムのすべて又は少なくとも一部を、芳香族アルケニル樹脂及びデンプンの下流で、押出機へ加えるステップを含む。
【0038】
本発明の組成物は有用な物品に成形することができる。有用な物品には、難燃性を必要とする用途、及び特に難燃性のハロゲンを含まない(環境に優しい)組成物を必要とする用途において一般に使用される物品が含まれる。いくつかの実施形態において、物品には本発明の組成物を含む単一物品が含まれる。他の実施形態において、物品には、電気製品の筐体、事務機器の内部及び外部部品、プリンター、コンピューターの筐体、スイッチ、プロファイル(profiles)、窓枠(window profiles)、及び同様の物品が含まれる。本発明の組成物に由来する少なくとも1つの層を含む多層物品も考えられる。本発明の組成物から作られる物品、例えば成形物品は多くの場合、UL−94のプロトコルに従って測定されるV−1又はそれを上回る難燃性等級(例えばV−1、又はV−0等級)を示す。
【0039】
さらなる説明がなくとも、当業者は本明細書の記載を用いて本発明を最大限に利用できると考えられる。以下の例は、クレイムされた発明を実施する際に当業者にさらなる手引きを与えるためのものである。実施例は、本出願の教示に寄与する成果を単に代表するものである。したがってこれらの実施例は、添付の特許請求の範囲に規定された本発明を、いかなる形においても限定することを意図していない。
【0040】
下記の実施例において及び比較例において、特筆されない限り成分の量は重量%で表される。下記の組成物中のABSは約14〜17%のポリブタジエンゴムを含み、SABIC Innovative Plastics(商標)から入手した。高ゴムABS(「HR−ABS」と略す)は約60〜78%のポリブタジエンゴムを含むBLENDEX(登録商標)ABSであり、SABIC Innovative Plastics(商標)から入手した。高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、典型的には約10%未満のゴム含量を含む。スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)は、典型的には約3:1のスチレン:アクリロニトリルに由来する構造単位を含む。ポリリン酸アンモニウム(「APP」と略す)は、各々が約31〜32重量%のリンを含有するEXOLIT(登録商標)AP422ポリリン酸アンモニウム又はEXOLIT(登録商標)AP423ポリリン酸アンモニウムであり、どちらもClariantから入手した。コーンスターチは食品グレード材料であった。難燃特性はUL−94のプロトコルに従って測定した。難燃性等級における「NC」の表記は、難燃性が観察されなかったことを示す。キロジュール毎平方メートル(kJ/m)の単位のノッチなし(UNII)及びノッチ付きアイゾット衝撃強度(NII)値を、ISO180に従って室温で測定した。ダイナタップ衝撃強度値を、ジュールの単位で、計装衝撃試験装置(instrumented impact apparatus)を使用してASTM D3763の試験手順に従って測定した。熱変形温度(HDT)を、1.82mPa(264ポンド毎平方インチ)の繊維応力にてASTM D648に従って測定した。メルトフローレート(「MFR」)値を、グラム毎10分(g/10分)の単位で、ASTM D1238に従い200℃及び10kgの適用質量の条件下で測定した。
【実施例】
【0041】
<実施例1及び比較例1>
HR−ABS 30部、SAN 26部、コーンスターチ 24部、ポリリン酸アンモニウム 20部、EBSワックス 2部、ステアリン酸亜鉛 1部、ビスフェノールAジホスフェート 3部、及びホスファイト安定剤 0.5部を含む本発明の組成物を、バンバリーミキサー中でコンパウンド化した。ポリリン酸アンモニウムが存在せずSANの量を26部とする代わりに46部としたこと以外は同じ成分を含む比較例用の組成物を調製した。実施例及び比較例のコンパウンド化した材料を、射出成形して試験部材として、この試験部材について物理特性を試験した。厚さ0.32cmである燃焼棒の難燃特性を試験した。本発明の実施例では、UL−94による等級がV−0であった。比較例では測定可能な難燃性を示さなかった。
【0042】
<実施例2〜6及び比較例2>
表1に示される、HR−ABS及び付加成分を含む組成物を、バンバリーミキサー中でコンパウンド化した。スチレン−ブタジエンゴムを「SBR」と略す。ニトリル−ブタジエンゴムを「NBR」と略す。各組成物はまた、EBSワックス2部、ステアリン酸亜鉛1部、及びレゾルシノールジホスフェート3部を含有していた。コンパウンド化した材料を射出成形して試験部材とし、この試験部材について物理特性を試験した。特筆されない限り、厚さ0.23cm(0.09インチ)の燃焼棒の難燃特性を試験した。試験結果を表1に示す。
【0043】
表2のデータは、本発明の組成物中にコーンスターチ及びポリリン酸アンモニウムの両方を存在させることによって、UL−94難燃性等級V−0の結果が得られることを示している。ポリリン酸アンモニウムを含有するがコーンスターチを含有しない比較例の組成物では、よりゴムの含量が低いABSを使用しているにもかかわらず、難燃性は観察されなかった(比較例2を参照)。樹脂組成物中にゴム性添加剤を存在させることは、通常、この耐衝撃性改質剤によって提供される追加的な燃料が存在することになるので、その組成物はより燃えやすいものになる。驚くべきことに、追加的な燃料物質がゴム状添加剤の形態で存在する場合は、実施例3〜6に示されるように、本発明の組成物におけるUL−94難燃性等級V−0に悪影響を与えない。ゴム状添加剤が存在することによって、本発明の組成物から作られる成形部材の耐衝撃性も改善される。
【0044】
<実施例7〜8>
HR−ABS及びコーンスターチを含む本発明の組成物を、ステアリン酸亜鉛有り及び無しでコンパウンド化した。さらに、両方の組成物は樹脂成分100部当たりビスフェノールAジホスフェート3部(phr)及び潤滑剤2phrを含有していた。コンパウンド化した材料の試験部材について、難燃性及び色を評価した。マクベスカラーアイ(Macbeth ColorEye、登録商標)7000A分光光度計を用いて、以下の評価試験条件で色を測定した:DREOLL;D65光源;CIE LAB Equations;10度観測;反射モード;鏡面反射成分除外(SCE);紫外線除外;大ビューポート。ブレンドの組成及び試験結果を表2に示す。
【0045】
表2のデータは、ステアリン酸亜鉛を含む本発明の実施例における組成物が、ステアリン酸亜鉛を含まない組成物よりも色が明るいことを示す。
【0046】
<実施例例9〜11>
HR−ABS、コーンスターチ、及びステアリン酸亜鉛を含む本発明の組成物をコンパウンド化した。ブレンドの組成を表3に示す。1つの実施例ではスチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸(SANMA)コポリマーを加えた。別の実施例ではスチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマーを加えた。さらに、すべての組成物は樹脂成分100部当たりEBSワックス2部(phr)及びレゾルシノールジホスフェート1部を含有していた。コンパウンド化した材料の試験部材について機械特性を評価した。試験結果を表3に示す。
【0047】
表3のデータは、無水マレイン酸に由来する構造単位を含むコポリマーを含む組成物が、衝撃強度を驚くべき程、改善させることを示す。
【0048】
<実施例12及び比較例3>
高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、コーンスターチ、及びポリリン酸アンモニウムを含む本発明の組成物を、内部ミキサー中でコンパウンド化する。コンパウンド化した材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。ポリリン酸アンモニウムが存在しないこと以外は同様の量の成分を含有する比較例の組成物は、難燃性を示さない。
【0049】
<実施例13及び比較例4>
ポリスチレン(PS)、コーンスターチ、及びポリリン酸アンモニウムを含む本発明の組成物を、内部ミキサー内でコンパウンド化する。コンパウンド化した材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。ポリリン酸アンモニウムが存在しない以外は同様の量の成分を含有する比較組成物は、難燃性を示さない。
【0050】
<実施例14及び比較例5>
SAN、コーンスターチ、及びポリリン酸アンモニウムを含む本発明の組成物を、内部ミキサー中でコンパウンド化する。コンパウンド化した材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。ポリリン酸アンモニウムが存在しないこと以外は同様の量の成分を含有する比較例の組成物は、難燃性を示さない。
【0051】
<実施例15及び比較例6>
少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂、コーンスターチ、セルロース系材料、及びポリリン酸アンモニウムを含む本発明の組成物を、内部ミキサー中でコンパウンド化する。コンパウンド化した材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。ポリリン酸アンモニウムが存在しないこと以外は同様の量の成分を含有する比較例の組成物は、難燃性を示さない。
【0052】
<実施例16>
少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂、コーンスターチ、ポリリン酸アンモニウム、及び難燃補助剤として少なくとも1つの有機リン化合物を含む本発明の組成物を、内部ミキサー中でコンパウンド化する。コンパウンド化した材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。
【0053】
<実施例17>
少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂、コーンスターチ、及びポリリン酸アンモニウムを含む本発明の組成物を、押出機中でコンパウンド化し、芳香族アルケニル樹脂及びコーンスターチのすべて又は少なくとも一部が押出機の供給スロートで供給されている状態で、ポリリン酸アンモニウムの少なくとも一部が押出機の下流供給口で押出機へ供給される。コンパウンド化した材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。
<実施例18>
少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂及びデンプンを含む組成物をプレコンパウンド化し取り出す。少なくとも1つの芳香族アルケニル樹脂及びポリリン酸アンモニウムを含む別の組成物をプレコンパウンド化し取り出す。この2つのプレコンパウンド化した組成物を共にコンパウンド化し、生成物を取り出す。最終的なコンパウンド化済み材料を試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材は少なくともUL−94難燃性等級V−2を示す。
【0054】
<実施例19>
HR−ABS及びコーンスターチを含む組成物をプレコンパウンド化し取り出す。HR−ABS及びポリリン酸アンモニウムを含む別個の組成物をプレコンパウンド化し取り出す。この2つのプレコンパウンド化した組成物を共にコンパウンド化して、コーンスターチ 24重量%、HR−ABS 30重量%、及びポリリン酸アンモニウム 20重量%を含む最終組成物を得る。さらにその最終組成物は、SAN 26重量%、ビスフェノールAジホスフェート 3phr、ステアリン酸亜鉛 1phr、及びEBSワックス 2phrを含む。最終のコンパウンド化済み材料を取り出し試験部材に成形して、その試験部材について難燃性を試験する。成形した試験部材はUL−94難燃性等級V−0を示す。
【0055】
<実施例20及び比較例7>
HR−ABS及びコーンスターチを含む本発明の組成物をコンパウンド化した。HR−ABS及びセルロース系材料を含む比較例の組成物をコンパウンド化した。セルロース系材料はCreaFill Fibers Corp.,Chestertown,Marylandから入手したTC180等級であった。本発明の実施例及び比較例の両方は、ホスファイト安定剤0.5部及び有機ジホスフェート3部を含有していた。実施例及び比較例のコンパウンド化済み材料を試験部材に成形して、その試験部材の物理特性を試験した。ブレンドの組成及び試験結果を表4に示す。
【0056】
コーンスターチを含有する本発明の実施例におけるメルトフローレートは、コーンスターチの代わりにセルロースを含有する比較例におけるメルトフローレートよりも著しく高い。
【0057】
本発明は典型的な実施形態によって例証及び説明されているが、本発明の趣旨から決して逸脱することなく様々な修正及び置換を行うことができるから、示されている詳細に限定することを意図するものではない。本明細書に開示される本発明の更なる修正物及び等価物は、日常的に行われる実験によって当業者が思い付くことができるので、そのような修正物及び等価物のすべては、下記の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨及び範囲に含まれる。本明細書で引用されたすべての特許及び出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、及び(iii)デンプン14〜40重量%を含み、すべての重量は組成物の総重量を基準とし、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンは、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な重量%比で存在する、樹脂状の難燃性組成物。
【請求項2】
ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが1:3〜3:1の範囲の重量%比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが1:2〜2:1の範囲の重量%比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
芳香族アルケニル樹脂が、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)、α−メチルスチレン/アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリルコポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ポリリン酸アンモニウムのタイプが結晶相IIである、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのセルロール系材料をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
セルロース系材料が、セルロース系繊維、木質繊維、種子殻、破砕米殻、新聞紙、ケナフ麻、ヤシ殻、おがくず、アルファルファ、小麦パルプ、木質チップ、木質粒子、破砕木材、木粉、木質フレーク、木材ベニヤ、木材積層物、紙、ボール紙、わら、綿、落花生殻、バガス、植物繊維、竹繊維、又はヤシ繊維を含むか又はそれに由来する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの難燃補助剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
難燃補助剤が、モノホスフェートエステル、トリアリールホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、ジホスフェートエステル、アリールジホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、ビスフェノールAジホスフェート、ジフェニル水素ホスフェート、2−エチルヘキシル水素ホスフェート、及びオリゴマーホスフェートから成る群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
潤滑剤、流動促進剤、可塑剤、静電防止剤、離型材、耐衝撃性改質剤、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、ドリップ防止剤、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、金属ステアリン酸塩、ゴム性添加剤、無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む補助コポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
ステアリン酸亜鉛を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
スチレン−ジエンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、及びニトリル−ブタジエンゴムから成る群から選択される少なくとも1つのゴム性添加剤を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
スチレン−無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー(SANMA)、ポリ(エチレン−g−無水マレイン酸)、ポリ(プロピレン−g−無水マレイン酸)、(エチレン−プロピレン)−g−無水マレイン酸、EPDM−g−無水マレイン酸、スチレン−アクリル酸コポリマー(SAA)、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの補助コポリマーを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
補助コポリマーが0.2〜5phrの量で存在する、請求項10又は12に記載の組成物。
【請求項15】
芳香族アルケニル樹脂及びデンプンの下流に、ポリリン酸アンモニウムの少なくとも一部を供給する押出プロセスによって調製される、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
ポリリン酸アンモニウムと混合される前に芳香族アルケニル樹脂の少なくとも一部及びデンプンをプレコンパウンド化する押出プロセスによって調製される、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
芳香族アルケニル樹脂の少なくとも一部及びデンプンをプレコンパウンド化し、芳香族アルケニル樹脂の少なくとも一部及びポリリン酸アンモニウムをプレコンパウンド化し、これら2つのプレコンパウンド化した材料をある割合でコンパウンド化して最終組成物を生成する、コンパウンド化プロセスによって調製される請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
樹脂状の難燃性組成物を調製するための押出プロセスであって、樹脂状の難燃性組成物が(i)芳香族アルケニル樹脂40〜66重量%、(ii)ポリリン酸アンモニウム9〜33重量%、(iii)デンプン14〜40重量%、並びに(iv)潤滑剤、流動促進剤、可塑剤、静電防止剤、離型材、耐衝撃性改質剤、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、ドリップ防止剤、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、金属ステアリン酸塩、難燃補助剤、ゴム性添加剤、無水マレイン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構造単位を含む補助コポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み、ポリリン酸アンモニウム及びデンプンが、UL−94のプロトコルに従って測定される少なくとも難燃性等級V−1を示す成形物品を与えるのに有効な1:2〜2:1の範囲の重量%比で存在し、芳香族アルケニル樹脂及びデンプンの下流においてポリリン酸アンモニウムの少なくとも一部を押出機へ加えるステップを含む、押出プロセス。
【請求項19】
難燃補助剤が、モノホスフェートエステル、トリアリールホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、ジホスフェートエステル、アリールジホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、ビスフェノールAジホスフェート、ジフェニル水素ホスフェート、2−エチルヘキシル水素ホスフェート、及びオリゴマーホスフェートから成る群から選択される、請求項18に記載の押出成形プロセス。
【請求項20】
組成物がステアリン酸亜鉛を含む、請求項18または19のいずれかに記載の押出プロセス。
【請求項21】
組成物が、スチレン−ジエンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、及びニトリル−ブタジエンゴムから成る群から選択される少なくとも1つのゴム性添加剤を含む、請求項18〜20のいずれかに記載の押出プロセス。
【請求項22】
組成物が、スチレン−無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー(SANMA)、ポリ(エチレン−g−無水マレイン酸)、ポリ(プロピレン−g−無水マレイン酸)、(エチレン−プロピレン)−g−無水マレイン酸、EPDM−g−無水マレイン酸、スチレン−アクリル酸コポリマー(SAA)、及びそれらの混合物から成る群から選択される補助コポリマー0.2〜5phrを含む、請求項18〜21のいずれかに記載の押出プロセス。
【請求項23】
ポリリン酸アンモニウムと混合される前に芳香族アルケニル樹脂の少なくとも一部及びデンプンを共にプレコンパウンド化するステップをさらに含む、請求項18〜22のいずれかに記載の押出プロセス。
【請求項24】
芳香族アルケニル樹脂の少なくとも一部及びデンプンをプレコンパウンド化するステップと;芳香族アルケニル樹脂の少なくとも一部及びポリリン酸アンモニウムをプレコンパウンド化するステップと;これら2つのプレコンパウンド化した材料をある割合でコンパウンド化して最終組成物を得るステップとをさらに含む、請求項18〜23のいずれかに記載の押出成形プロセス。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の組成物を含む物品。
【請求項26】
電気製品の筐体、事務機器の内部又は外部部品、プリンターの筐体、コンピューターの筐体、スイッチ、プロファイル(profile)、又は窓枠を含む、請求項25に記載の物品。

【公表番号】特表2012−514109(P2012−514109A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544489(P2011−544489)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068980
【国際公開番号】WO2010/078108
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(309001610)サビック イノベーティブ プラスチックス イーペー ベスローテン フェンノートシャップ (16)
【Fターム(参考)】