説明

難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物

【課題】 熱伝導性に優れ、かつ難燃性にも優れる樹脂材料を提供すること。
【解決手段】 主鎖が主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位からなり、主として鎖状の構造よりなる熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、難燃剤(C)を1〜100重量%含有する、難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−M−Sp− (1) (式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
難燃剤は、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤、より選ばれる1種以上のものであることが好ましい。難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の原料である熱可塑性樹脂(A)は、樹脂単体の熱伝導率が0.45W/(m・K)以上のものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝導性に優れた新規な高熱伝導性熱可塑性樹脂材料に関する。詳しくは、熱伝導性フィラーなどを添加しなくても樹脂単体で高熱伝導性を示すとともに、また熱伝導性フィラー添加でこれまでに知られた材料と比べ画期的な高熱伝導性を示し、なおかつ難燃性に優れる樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。
【0003】
高熱伝導性無機化合物としては、グラファイト、炭素繊維、アルミナ、窒化ホウ素、等の高熱伝導性無機物を、通常は30体積%以上、さらには50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。しかしながら、無機物を大量に配合しても樹脂単体の熱伝導性が低いために、樹脂組成物の熱伝導率には限界があった。
【0004】
また電気・電子分野では、UL−94規格に基づく高い難燃性が要求されるので、種々の難燃剤による難燃化の方法が多数提案され、実用化されているが、樹脂それぞれの特性に応じた難燃剤の検討が必要であり、汎用的に使用可能な難燃剤は知られていない。
樹脂単体の熱伝導性が優れた熱硬化性樹脂としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のエポキシ樹脂、又は特許文献3に記載のビスマレイミド樹脂が報告されている。しかしながらこれらの樹脂は熱硬化性を示すため、射出成形などの成形方法を適用することはできないうえ、分子構造が複雑であり、製造が困難であるという欠点を有する。特許文献2に記載のエポキシ樹脂は合成が比較的簡便であるが、熱伝導率が不十分であった。
【0005】
一方熱可塑性樹脂については、射出成形時に延伸や磁場配向など特殊な成形加工法を採用することで、特定方向に高熱伝導性を付与する研究例はあるものの、特殊な成形法を採用せずとも通常の射出成形で高熱伝導性が得られるような樹脂に関する報告例は全くなかった。
【0006】
液晶性熱可塑性樹脂については非特許文献1〜4に液晶相を示すメソゲン基とアルキル鎖との交互重縮合体が記載されている。しかしこれらポリマーの難燃性、熱伝導性等に関しては一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号WO2002/094905号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2006/120993号公報
【特許文献3】特開2007−224060号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Macromolecules,vol17,P2288(1984)
【非特許文献2】Polymer,vol24,P1299(1983)
【非特許文献3】Eur.Polym.J.,vol16,P303(1980)
【非特許文献4】Mol.Cryst.Liq.Cryst.,vol88,P295(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、樹脂単体が熱伝導性に優れ、製造が容易で、かつ難燃性に優れた高熱伝導性成形体が得られる、高熱伝導性樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、特定の構造を有し樹脂単体として優れた熱伝導性を示す熱可塑性樹脂に対し、特定の難燃剤を添加することにより、良好な難燃性と熱伝導性とを両立しうることを見出し、本発明に至った。すなわち、本願発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
1). 主鎖が主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位からなり、主として鎖状の構造よりなる熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、難燃剤(C)を1〜100重量%含有する、難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−M−Sp− (1)
(式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
2).前記難燃剤が、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤および無機系難燃剤からなる群より選ばれる1種以上の難燃剤である、1)に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
3). 前記一般式(1)が下記一般式(2)で示される単位である、1)に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−A1−x−A2−y−R−z− (2)
(式中、A1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。x、yおよびzは、各々独立して直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の置換基を示す。)
4). −A1−x−A2−に相当する部分が下記一般式(3)で表されるメソゲン基であることを特徴とする、3)に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
5). 熱可塑性樹脂のRに相当する部分が直鎖の脂肪族炭化水素鎖である、3)または4)いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
6). 熱可塑性樹脂のRの分子鎖の炭素数が偶数である3)〜5)いずれか1項に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
7). 熱可塑性樹脂のRが−(CH28−、−(CH210−、および−(CH212−から選ばれる少なくとも1種であり、数平均分子量が3000〜40000である3)〜6)いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
8). 熱可塑性樹脂の−y−R−z−が−O−CO−R−CO−O−である、3)〜7)いずれかに記載の熱可塑性樹脂を用いた、難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
9). 無機充填剤(B)を含有する1)〜8)いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
10). 無機充填剤(B)が、単体での熱伝導率が12W/m・K以上の無機化合物であることを特徴とする、9)に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
11). 無機充填剤(B)が、電気絶縁性高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、9)または10)に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
12). 無機充填剤(B)が、導電性の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、9)または10)に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
13)難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の原料である熱可塑性樹脂(A)の、樹脂単体の熱伝導率が0.45W/(m・K)以上である、1)〜8)いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は高熱伝導性を示すため、高熱伝導性無機充填剤を無添加あるいは少量配合しただけで高熱伝導性の熱可塑性樹脂組成物が得られ、また高熱伝導性無機充填剤を大量に配合した際には大きく熱伝導率が向上するので、良好な難燃性と高熱伝導性とを併せ持った成形品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物に用いられる樹脂は、主鎖が主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位からなり、主として鎖状の構造よりなることを特徴とするものである。
−M−Sp− (1)
(式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
本発明で言う熱可塑性とは、加熱により可塑化する性質のことである。
【0016】
本発明で言う主としてとは、分子鎖の主鎖中に含まれる一般式(1)の量について、全構成単位に対して50mol%以上であり、好ましくは70mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上であり、最も好ましくは本質的に100mol%である。50mol%未満の場合は、樹脂の結晶化度が低くなり、熱伝導率が低くなる場合がある。
本発明の樹脂は対称性が極めて高く、剛直鎖が屈曲鎖で結合された構造のため、分子の配向性が高く、形成される高次構造が緻密となり、優れた熱伝導性を有する。
【0017】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の原料である熱可塑性樹脂の熱伝導率は、通常、0.45W/(m・K)以上であり、好ましくは0.6W/(m・K)以上、より好ましくは0.8W/(m・K)以上、さらに好ましくは1.0W/(m・K)以上、これより好ましくは1.2W/(m・K)以上、特に好ましくは1.3W/(m・K)以上である。熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には30W/(m・K)以下、さらには10W/(m・K)以下の値が例示できる。結晶化の進んだ樹脂の場合に、高い熱伝導率を示すことが多い。
【0018】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物に用いられる樹脂に含まれるメソゲン基とは、剛直で配向性の高い置換基を意味する。好ましいメソゲン基としては、下記一般式
−A1−x−A2
(A1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは結合子であり、直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。)で表される基が挙げられる。ここでA1、A2は各々独立して、ベンゼン環を有する炭素数6〜12の炭化水素基、ナフタレン環を有する炭素数10〜20の炭化水素基、ビフェニル構造を有する炭素数12〜24の炭化水素基、ベンゼン環を3個以上有する炭素数12〜36の炭化水素基、縮合芳香族基を有する炭素数12〜36の炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。
【0019】
1、A2の具体例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン等が挙げられる。また、これらは無置換であっても良く、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基を有する誘導体であっても良い。
【0020】
これらのうち、結合子に相当するxの主鎖の原子数が偶数であるとメソゲン基の分子幅が小さく、結合の回転の自由度が少なく、結晶化度が高い傾向があり、樹脂単体の熱伝導率が向上しやすく好ましい。すなわち直接結合、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基が好ましい。
【0021】
メソゲン基の具体例として、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、スチルベン、ジフェニルエーテル、1,2−ジフェニルエチレン、ジフェニルアセチレン、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、フェニルベンズアミド、アゾベンゼン、2−ナフトエート、フェニル−2−ナフトエート、およびこれらの誘導体等から水素を2個除去した構造を持つ2価の基が挙げられる。
【0022】
さらに好ましくは下記一般式(3)で表されるメソゲン基である。このメソゲン基はその構造ゆえに剛直で配向性が高く、さらには入手または合成が容易である。
【0023】
【化2】

【0024】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂は単独であるいは種々の配合物を用いて組成物と成すことができる。組成物に用いる高熱伝導性熱可塑性樹脂に含まれるメソゲン基としては、架橋性の置換基を含まないものであることが好ましい。
【0025】
本発明に係る一般式(1)のスペーサーとは、屈曲性分子鎖を意味し、メソゲン基との結合基を含む。スペーサーの主鎖原子数は好ましくは4〜28であり、より好ましくは6〜24であり、さらに好ましくは8〜20である。スペーサーの主鎖原子数がこの範囲にあることにより、熱可塑性樹脂の分子構造が十分な屈曲性を有しつつ、結晶性が高く、熱伝導率が良好となるので好ましい。スペーサーの主鎖を構成する原子の種類は特に限定されず何でも使用できるが、好ましくはC、H、O、S、Nから選ばれる少なくとも1種の原子である。
【0026】
好ましいスペーサーとしては、下記一般式
−y−R−z−
(yおよびzは、各々独立して直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。Rは分岐を含んでもよい主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の置換基を示す。)で表される基が挙げられる。ここでRは、炭素原子数2〜20の鎖状飽和炭化水素基、1〜3個の環状構造を含む炭素原子数2〜20の飽和炭化水素基、1〜5個の不飽和基を有する炭素原子数2〜20の炭化水素基、1〜3個の芳香環を有する炭素原子数2〜20の炭化水素基、1〜5個の酸素原子を有する炭素原子数2〜20のポリエーテル基から選択されるものが好ましい。
【0027】
スペーサーの具体例としては例えば脂肪族炭化水素鎖、ポリエーテル鎖等が挙げられる。熱可塑性樹脂の結晶性が高くなり、熱伝導率が高い傾向を示すことから、Rは分岐を含まない直鎖の脂肪族炭化水素鎖であることが望ましい。また、Rは飽和でも不飽和でもよいが、本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂が適度な屈曲性を有することから、飽和脂肪族炭化水素鎖であることが望ましい。全R中、その50重量%を越えるユニットが飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましく、最も好ましくは、不飽和結合を含まないことが好ましい。
【0028】
Rの炭素数は2〜20であることが好ましく、炭素数4〜18であることがより好ましく、さらには炭素数6〜16であることが好ましい。またメソゲン基が直線状につながっていると、結晶化度が低下しにくく、熱伝導率が確保できるので、Rはこれら炭素数の直鎖の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、中でも炭素数は偶数であることが好ましい。偶数の場合、メソゲン基がより規則正しく配列するため、熱伝導率が高くなる傾向がある。
【0029】
特に熱伝導率が優れた樹脂が得られるという観点から、Rは−(CH28−、−(CH210−、および−(CH212−から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。yおよびzは置換基Rをメソゲン基と結合するための基である。このような基を有するスペーサーの中でも、熱伝導率が優れた樹脂が得られるという観点から一般式(4)は−CO−O−R−O−CO−または−O−CO−R−CO−O−の構造を有するものが好ましく、−O−CO−R−CO−O−が特に好ましい。
【0030】
本発明の組成物に用いられる樹脂の数平均分子量はポリスチレンを標準とし、本発明に用いる熱可塑性樹脂をp−クロロフェノールとo−ジクロロベンゼンの1:2(Vol比)混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して調製した溶液を用いて、GPCにて80℃で測定することができる。本発明の熱可塑性樹脂の数平均分子量は3000〜40000であることが好ましく、上限を考慮すると3000〜30000であることがさらに好ましく、3000〜20000であることが特に好ましい。一方、下限を考慮すると、3000〜40000であることが好ましく、5000〜40000であることがさらに好ましく、7000〜40000であることが特に好ましい。さらに上限および下限を考慮すると、5000〜30000であることがさらに好ましく、7000〜20000であることが最も好ましい。数平均分子量が3000未満または40000より大きい場合、同一の一次構造を有する樹脂であっても熱伝導率が低くなりすぎる場合がある。
【0031】
また本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂は、ラメラ晶を含むものであることが好ましい。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂では、結晶化度の指標としてラメラ晶の量を用いることができる。ラメラ晶が多いほど結晶化度が高い。
【0032】
本発明でいうラメラ晶は、長い鎖状の分子が折り畳まれて平行に並び作られる板状結晶に相当する。このような結晶が樹脂中に存在するか否かは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察またはX線回折によって容易に判別することができる。
【0033】
該連続相を成すラメラ晶の割合は、RuO4で染色した試料を透過型電子顕微鏡(TEM)により直接観察することで算出することができる。具体的な方法として、TEM観察用の試料は、成形した厚み6mm×20mmφのサンプルの一部を切り出し、RuO4にて染色した後、ミクロトームにて作成した0.1μm厚の超薄切片を使用するものとする。作成した切片を加速電圧100kVでTEMにて観察し、得られた4万倍スケールの写真(20cm×25cm)から、ラメラ晶の領域を決定することができる。領域の境界は、ラメラ晶領域を周期的なコントラストの存在する領域とし、決定できる。ラメラ晶は深さ方向にも同様に分布していることから、ラメラ晶の割合は写真の全体の面積に対するラメラ晶領域の割合として算出するものとする。また、樹脂自体が高熱伝導性を有するためにはラメラ晶の割合が10Vol%以上であることが好ましい。ラメラ晶の割合は、20Vol%以上であることがより好ましく、30Vol%以上であることがさらに好ましく、さらには40Vol%以上であることが特に好ましい。
【0034】
また本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂は、結晶を含むものであることが好ましい。本発明では、高熱伝導性熱可塑性樹脂中のラメラ晶の割合から、以下の計算式により結晶化度を求めることができる。
結晶化度(%)= ラメラ晶の割合(Vol%)× 0.7
樹脂自体が高熱伝導性を有するためには、高熱伝導性熱可塑性樹脂の結晶化度が7%以上であることが好ましい。結晶化度は、14%以上であることがより好ましく、21%以上であることがさらに好ましく、28%以上であることが特に好ましい。
【0035】
また本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂が高熱伝導性を発揮するためには、樹脂自体の密度が1.1g/cm3以上であることが好ましく、1.13g/cm3以上であることがより好ましく、1.16g/cm3以上であることが特に好ましい。樹脂密度が大きいということは、ラメラ晶の含有率が高いこと、すなわち結晶化度が高いことを意味している。
【0036】
また本発明で使用する高熱伝導性熱可塑性樹脂は、熱伝導率が等方的に高いことが好ましい。熱伝導率が等方的であるか否かを測定する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を厚み1mm×25.4mmφの円盤状としたサンプルに対して、Xeフラッシュ法にて厚さ方向、面方向の熱伝導率を別々に測定する方法が挙げられる。本発明に係る熱可塑性樹脂の熱伝導率は等方的に高く、上記の測定方法にて測定された、厚さ方向、面方向の熱伝導率は0.3W/(m・K)以上である。
【0037】
本発明の組成物に用いられる熱可塑性樹脂は、公知のいかなる方法で製造されても構わない。構造の制御が簡便であるという観点から、メソゲン基の両末端に反応性官能基を有する化合物と、置換基Rの両末端に反応性官能基を有する化合物とを反応させて製造する方法が好ましい。このような反応性官能基としては水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、シアノ基、など公知のものを使用でき、これらを反応させる条件もとくに限定されない。
【0038】
合成の簡便さという観点からは、水酸基とカルボキシル基による反応が好ましい。具体的にはメソゲン基の両末端に水酸基を有する化合物と置換基Rの両末端にカルボキシル基を有する化合物、またはメソゲン基の両末端にカルボキシル基を有する化合物と置換基Rの両末端に水酸基を有する化合物を反応させる製造方法が挙げられる。
【0039】
メソゲン基の両末端に水酸基を有する化合物と置換基Rの両末端にカルボキシル基を有する化合物からなる熱可塑性樹脂の製造方法の一例としては、両末端に水酸基を有するメソゲン基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いてそれぞれ個別に、または一括して酢酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、置換基Rの両末端にカルボキシル基を有する化合物と脱酢酸重縮合反応させる方法が挙げられる。重縮合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で行われることが好ましい。反応温度としては、通常200〜350℃さらには230〜330℃、特には250〜300℃の温度で行われることが好ましい。また、窒素等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下に、0.5〜5時間行われることが好ましい。反応温度が低すぎると反応の進行は遅く、高すぎる場合は分解等の副反応が起こりやすい。
【0040】
多段階の反応温度を採用してもかまわないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したらすぐに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。得られた熱可塑性樹脂はそのままでも使用してもよいし、未反応原料を除去するまたは、物性をあげる意味から固相重合を行なうこともできる。
【0041】
固相重合を行なう場合には、得られた熱可塑性樹脂を3mm以下好ましくは1mm以下の粒径の粒子に機械的に粉砕し、固相状態のまま250〜350℃で窒素等の不活性ガス雰囲気下、または減圧下に1〜20時間処理することが好ましい。ポリマー粒子の粒径が3mm以上になると、処理が十分でなく、物性上の問題を生じるため好ましくない。固相重合時の処理温度や昇温速度は、熱可塑性樹脂粒子が融着を起こさないように選ぶことが好ましい。
【0042】
本発明の樹脂の製造に用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては,炭素数2〜5個の低級脂肪酸の酸無水物,たとえば無水酢酸,無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸,無水ジクロル酢酸,無水トリクロル酢酸,無水モノブロム酢酸,無水ジブロム酢酸,無水トリブロム酢酸,無水モノフルオロ酢酸,無水ジフルオロ酢酸,無水トリフルオロ酢酸,無水酪酸,無水イソ酪酸,無水吉草酸,無水ピバル酸等が挙げられるが,無水酢酸,無水プロピオン酸,無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。
【0043】
低級脂肪酸の酸無水物の使用量は,用いるメソゲン基が有する水酸基の合計に対し1.01〜1.50倍当量,さらには1.02〜1.2倍当量用いることが好ましい。その他メソゲン基の両末端にカルボキシル基を有する化合物と置換基Rの両末端に水酸基を有する化合物を反応させる製造方法については例えば、特開平2−258864号公報に記載のように4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルと脂肪族ジオールを溶融重合する方法が挙げられる。
【0044】
本発明の樹脂の末端の構造はとくに限定されないが、射出成形などの成形に適した樹脂が得られると言う観点からは、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アシル基、アルコキシ基などで末端が封止されていることが好ましい。末端にエポキシ基、マレイミド基などの反応性が高い官能基を有する場合は、樹脂が熱硬化性となり、射出成形性が損なわれることがある。
【0045】
本発明の樹脂は、その効果の発揮を失わない程度に他のモノマーを共重合して構わない。例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸またはカプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂肪族ジオール、脂環族ジカルボン酸、脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールが挙げられる。
【0046】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2―ヒドロキシ―7―ナフトエ酸、2―ヒドロキシ―3―ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0047】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、1,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジカルボキシビフェニル、3,4’―ジカルボキシビフェニル、4,4’’―ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテルおよびビス(3−カルボキシフェニル)エタン等、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0048】
芳香族ジオールの具体例としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび2,2’−ジヒドロキシビナフチル等、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0049】
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’−ジアミノビナフチルおよびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0050】
芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸および7−アミノ−2−ナフトエ酸およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
【0051】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンなどが挙げられる。
【0052】
脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオールおよび脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状または分鎖状脂肪族ジオールなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
【0053】
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレンなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
【0054】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率は好ましくは0.4W/(m・K)以上であり、より好ましくは1.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは5.0W/(m・K)以上、特に好ましくは10W/(m・K)以上である。熱可塑性樹脂(A)に無機充填剤(B)を含有することで、より高熱伝導性となることも可能である。この熱伝導率が低いと、電子部品から発生する熱を効率的に外部に伝えることが困難である。熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には100W/(m・K)以下、さらには80W/(m・K)以下のものが用いられる。熱可塑性樹脂(A)は、優れた熱伝導性を有するため、上記の範囲の熱伝導率を有する高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることが可能となる。
【0055】
本発明に用いられる難燃剤(C)は各種のものが知られており、例えばシーエムシー化学発行の「高分子難燃化の技術と応用」(P149〜221)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これら難燃剤のなかでも、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤を好ましく用いることができる。
リン系難燃剤としては、リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンなどを挙げることができる。これらのリン系難燃剤は、1種単独で、あるいは2種以上を混合して使用しても良い。また、これらのリン系難燃剤は前記高熱伝導性熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜60重量部である。
【0056】
ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン、臭素化架橋芳香族重合体であり、特に臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルが好ましい。これらのハロゲン系難燃剤は1種単独で、あるいは2種以上を混合して使用しても良い。また、これらのハロゲン系難燃剤のハロゲン元素含量は15〜87%であることが好ましい。また、上記のハロゲン系難燃剤は前記高熱伝導性熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜60重量部である。
【0057】
無機系難燃剤としては、具体的な例としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硼酸亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウムが挙げられる。これらの無機化合物はシランカップラーやチタンカップラーなどで処理されていても良く、1種単独で、あるいは2種以上を混合して使用しても良い。また、これらの無機系難燃剤は前記高熱伝導性熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂(A)が優れた熱伝導性を有するため、無機充填剤(B)を用いなくても優れた熱伝導性を有するが、無機充填剤(B)を用いることにより熱伝導性をさらに向上することができる。
【0059】
本発明の高熱伝導性樹脂組成物において、無機充填剤(B)を用いる場合、その使用量は、好ましくは熱可塑性樹脂(A)と無機充填剤(B)の体積比で99:1〜20:80であり、好ましくは90:10〜30:70であり、より好ましくは80:20〜40:60であり、特に好ましくは70:30〜50:50である。(A)と(B)の体積比がこれら範囲にあることにより、熱伝導率と機械物性のバランスが良好となり好ましい。
【0060】
また、熱可塑性樹脂(A)と無機充填剤(B)の体積比で90:10〜70:30と少量の場合でも、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は優れた熱伝導性を有し、さらに同時に無機充填剤(B)の使用量が少量であるため成形時に成形品の外観が良好となり、かつ成形品の密度を下げることができる。熱伝導率、成形品外観に優れ、かつ密度が小さいことは電気・電子工業分野、自動車分野、等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いる際に有利である。
【0061】
無機充填剤(B)としては、公知の充填剤を広く使用できる。無機充填剤(B)単体での熱伝導率は特に限定が無いが、好ましくは0.5W/m・K以上、より好ましくは1W/m・K以上のものである。得られる組成物が熱伝導性に優れるという観点からは、単体での熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導性無機化合物であることが特に好ましい。
【0062】
高熱伝導性無機化合物単体での熱伝導率は、好ましくは12W/m・K以上、さらに好ましくは15W/m・K以上、最も好ましくは20W/m・K以上、特に好ましくは30W/m・K以上のものが用いられる。高熱伝導性無機化合物単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/m・K以下、さらには2500W/m・K以下、のものが好ましく用いられる。
【0063】
成形体として特に電気絶縁性が要求されない用途に用いる場合には、導電性の高熱伝導性無機化合物としては金属系化合物や導電性炭素化合物等を用いることができる。導電性炭素化合物としては、熱伝導性に優れることから、グラファイト、炭素繊維をあげることができる。金属系化合物としては、導電性金属粉、導電性金属繊維、フェライト類、金属酸化物、等の高熱伝導性無機化合物を好ましく用いることができる。導電性金属粉としては各種金属を微粒子化した導電性金属粉、導電性金属繊維としては各種金属を繊維状に加工した導電性金属繊維、フェライト類としては軟磁性フェライト等の各種フェライト類、金属酸化物としては酸化亜鉛、等の金属酸化物、等の高熱伝導性無機化合物があげられる。
【0064】
中でも、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、酸化亜鉛、からなる群より選ばれる1種以上の導電性の高熱伝導性無機化合物が好ましい。
【0065】
成形体として電気絶縁性が要求される用途に用いる場合には、高熱伝導性無機化合物としては電気絶縁性を示す化合物が好ましく用いられる。電気絶縁性とは具体的には、電気抵抗率1Ω・cm以上のものを示すこととするが、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは105Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上のものを用いるのが好ましい。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、一般的には1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
【0066】
高熱伝導性無機化合物のうち、電気絶縁性を示す電気絶縁性高熱伝導性無機化合物としては金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭酸塩、絶縁性炭素材料、金属水酸化物、を例示することができる。金属酸化物としては酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅をあげることができる。金属窒化物としては窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素をあげることができる。
【0067】
金属炭化物としては炭化ケイ素を、金属炭酸塩としては炭酸マグネシウムを、絶縁性炭素材料としてはダイヤモンドを、金属水酸化物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムをあげることができる。
【0068】
中でも、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、からなる群より選ばれる1種以上の電気絶縁性高熱伝導性無機化合物が好ましい。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0069】
高熱伝導性無機化合物の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、等種々の形状を例示することができる。またこれら高熱伝導性無機化合物は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら高熱伝導性無機化合物は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
【0070】
これら高熱伝導性無機化合物は、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
【0071】
本発明の樹脂組成物には、前記の高熱伝導性無機化合物以外にも、その目的に応じて公知の無機充填剤を広く使用できる。樹脂単体の熱伝導率が高いために、無機化合物の熱伝導率が10W/mK未満と比較的低くても、樹脂組成物として高い熱伝導率を発現することが可能である。
【0072】
高熱伝導性無機化合物以外の無機充填剤としては、例えばケイソウ土粉;塩基性ケイ酸マグネシウム;焼成クレイ;微粉末シリカ;石英粉末;結晶シリカ;カオリン;タルク;三酸化アンチモン;微粉末マイカ;二硫化モリブデン;ロックウール;セラミック繊維;アスベストなどの無機質繊維;およびガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスクロス、溶融シリカ等ガラス製充填剤が挙げられる。
【0073】
これら充填剤を用いることで、例えば熱伝導性、機械強度、または耐摩耗性など樹脂組成物を応用する上で好ましい特性を向上させることが可能となる。さらに必要に応じて紙、パルプ、木料;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などの合成繊維;ポリオレフィン粉末等の樹脂粉末;などの有機充填剤を併用して配合することができる。
【0074】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果の発揮を失わない範囲で、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂等いかなる公知の樹脂も含有させて構わない。好ましい樹脂の具体例として、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。これら樹脂を併用する場合その使用量は、通常樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0〜10000重量部の範囲が例示でき好ましい。
【0075】
本発明の高熱伝導性樹脂材料には、上記樹脂や充填剤以外の添加剤として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、安定剤、耐炎剤、顔料、着色剤、その他の助剤等を本発明の効果を失わない範囲で、添加することができる。これらの添加剤の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、合計で0〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0076】
本発明の組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
【0077】
使用形態としては、樹脂フィルム、樹脂成形品、樹脂発泡体、塗料やコーティング剤、等さまざまな形態を例示することができる。成形加工法としては例えば、射出成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、ブロー成形、等が利用できる。本発明で得られた高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は成形性に優れるため、現在広く用いられている射出成形機が使用可能であり、インサート成形、ホットランナー成形、などの特殊成形であっても成形が容易である。
【0078】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。特に優れた成形品外観、高熱伝導性、という優れた特性を併せ持つことから、放熱・伝熱用の樹脂材料として、非常に有用である。
【0079】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。
【0080】
これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料、としても非常に有用に用いることができる。
【0081】
本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は従来良く知られている組成物に比べて、高熱伝導性無機物の配合量を減らすことができるため成形加工性が良好であり、上記の用途における基板などの部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の組成物およびその成形品について、実施例および比較例を挙げさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、以下にあげる各試薬は特に特記しない限り和光純薬工業(株)製の試薬を用いた。
【0083】
[評価方法]
数平均分子量:本発明の熱可塑性樹脂をp−クロロフェノールとo−ジクロロベンゼンの1:2Vol比混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して試料を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。高温GPC((株)Waters製;150−CV)にてINJECTOR COMP:80℃、COLUMN COMP:80℃、PUMP/SOLVENT COMP:60℃、Injection Volume:200μl、の条件で測定した。
【0084】
熱伝導率:得られた組成物から75t射出成形機にてテストピースを成形した。得られたテストピースから30mm角×3.2mm厚みの板柱状試験片を2個切り出し、京都電子工業製ホットディスク法熱伝導率測定装置で4φのセンサーにて熱伝導率を測定した。
【0085】
燃焼性:以下に示すUL規格の規定に準じて行った。試験片の上端をクランプで止めて試験片を垂直に固定し、下端に所定の炎を10秒間当てて離し、試験片の燃焼時間(1回目)を測定する。消火したら直ちに再び下端に炎を当てて離し、試験片の燃焼時間(2回目)を測定する。5片について同じ測定を繰り返し、1回目燃焼時間のデータ5個と、2回目燃焼時間のデータ5個の、計10個のデータを得る。10個のデータの合計をT、10個のデータのうち最大値をMとする。Tが50秒以下、Mが10秒以下でクランプまで燃え上がらず、炎のついた溶融物が落ちて12インチ下の木綿に着火するようなことがなければV−0相当、Tが250秒以下、Mが30秒以下でその他はV−0と同様の条件を満たせばV−1相当となる。
【0086】
[製造例1]
4,4’−ジヒドロキシビフェニル、セバシン酸、無水酢酸をモル比でそれぞれ1:1.05:2.1の割合で密閉型反応器に仕込み、常圧下、窒素ガス雰囲気で150℃にて3hアセチル化反応を行い、1℃/minの昇温速度で280℃まで加熱し重縮合を行った。酢酸の留出量が理論酢酸生成量の90%に到達した時点で引き続きその温度を保ったまま、約20分かけて10torrに減圧し、高分子量まで溶融重合を行った。減圧開始から1時間後、不活性ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0087】
[製造例2,3]
製造例1のセバシン酸をドデカン二酸、テトラデカンニ酸にそれぞれした以外はそれぞれ同様に重合し、樹脂を得た。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0088】
[製造例4〜7]
製造例3の減圧開始からの重合時間をそれぞれ0時間、1.5時間、3時間、6時間にした以外は同様に重合し、数平均分子量の違う樹脂を合成した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0089】
[製造例8]
重合反応装置に4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルと1,10−デカンジオールを1:1.05のモル比で仕込み、触媒としてTBT(テトラブチルチタネート)をポリエステルの構成単位1モルに対し5×10-4モル添加し、280℃の温度でエステル交換反応させてメタノールを留出させた後、10torrの減圧下、280℃で1.5時間重縮合反応を行った。そののち不活性ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0090】
[製造例9]
製造例6の1,10−デカンジオールをトリエチレングリコールに変更した以外は同様に重合した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0091】
[製造例10]
4−アセトキシ安息香酸−4−アセトキシフェニル、ドデカン二酸をモル比でそれぞれ1:1.05の割合で密閉型反応器に仕込み、常圧下、窒素ガス雰囲気で1℃/minの昇温速度で280℃まで加熱し重縮合を行った。酢酸の留出量が理論酢酸生成量の90%に到達した時点で引き続きその温度を保ったまま、約20分かけて10torrに減圧し、高分子量まで溶融重合を行った。減圧開始から1.5時間後、不活性ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0092】
[製造例11]
4,4’−ジアセトキシアゾキシベンゼン、ドデカン二酸をモル比でそれぞれ1:1.05の割合で密閉型反応器に仕込み、常圧下、窒素ガス雰囲気で1℃/minの昇温速度で280℃まで加熱し重縮合を行った。酢酸の留出量が理論酢酸生成量の90%に到達した時点で引き続きその温度を保ったまま、約20分かけて10torrに減圧し、高分子量まで溶融重合を行った。減圧開始から1.5時間後、不活性ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
【0093】
以下に使用した無機充填剤(B)および難燃剤(C)を示す。
(B−1):窒化ホウ素粉末(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製PT110、単体での熱伝導率60W/m・K、体積平均粒子径45μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)
(B−2):天然鱗片状黒鉛粉末(中越黒鉛(株)製BF−250A、単体での熱伝導率1200W/m・K、体積平均粒子径250.0μm、導電性)
(C−1): 有機リン酸塩系難燃剤;OP935(クラリアントジャパン(株)製)
(C−2):縮合リン酸エステル系難燃剤;PX−200(大八化学工業(株)製)
(C−3):縮合リン酸エステル系難燃剤;FP−600((株)ADEKA製)
(C−4):メラミン・シアヌル酸付加物;メラミンシアヌレート(日産化学工業(株)製MC−4000)
(C−5):臭素系複合難燃剤;臭素化ポリスチレン(Albemarle Corporation製SAYTEX HP−7010)/三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製PATOX−p)=80/20(重量比)複合体
(C−6):臭素系複合難燃剤;臭素化ポリスチレン(Albemarle Corporation製SAYTEX BT−93W)/三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製PATOX−p)=80/20(重量比)複合体
(C−7):臭素系複合難燃剤;臭素化ポリスチレン(グレートレイクスケミカル(株)製PDBS−80)/三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製PATOX−p)=80/20(重量比)複合体
(C−8):赤リン系難燃剤;ノーバエクセル140(燐化学工業(株)製)
【0094】
[実施例1〜10、比較例1〜4]
製造例1〜11で合成した熱可塑性樹脂(A)、無機充填剤(B)および難燃剤(C)を表2の組成で用意し、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)を0.2重量部加え、ヘンシェルミキサーにて混合した後、日本製鋼所製45mm同方向噛み合い型二軸押出機TEX44のスクリュー根本付近に設けられたホッパーより投入した。設定温度は供給口近傍が200℃で、順次設定温度を上昇させ、押出機スクリュー先端部温度を220℃に設定した。ここで表2中の無機充填剤(B)量は、樹脂組成物全体積を100%としたときの、樹脂組成物全体積中での体積%を表わす。また表2中の難燃剤(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する重量部である。
【0095】
本条件にて高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた組成物を140℃で4時間乾燥後、東芝機械製75tmm射出成形機を用いて射出成形を実施した。成形条件は、シリンダー温度220℃、ノズル部温度220℃、金型温度120℃に設定した。得られた成形品の熱伝導率および燃焼性試験の結果を表2に示す。
【0096】
[比較例5,6]
熱可塑性樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート(PET)((株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペットEFG−70)(フェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で測定したときの固有粘度(IV)が0.75 dl/g)を用い、無機充填剤(B)および難燃剤(C)を表2の組成で用意し、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)を0.2重量部加え、ヘンシェルミキサーにて混合した後、押出機スクリュー先端部温度、ダイス温度および成形時のシリンダー温度、ノズル部温度を280℃に設定した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた成形品の熱伝導率および燃焼性試験の結果を表2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
以上示したとおり、本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導性に優れた熱可塑性樹脂を用いるため、高熱伝導性無機充填剤を特に配合しなくても、高熱伝導性を示し、大量に配合した場合には、熱伝導率は大きく向上する。また難燃性にも優れるために、このような組成物は電気・電子工業分野、自動車分野、等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いることが可能で、工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖が主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位からなり、主として鎖状の構造よりなる熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、難燃剤(C)を1〜100重量%含有する、難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−M−Sp− (1)
(式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
【請求項2】
前記難燃剤が、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤および無機系難燃剤からなる群より選ばれる1種以上の難燃剤である、請求項1に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)が下記一般式(2)で示される単位である、請求項1に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−A1−x−A2−y−R−z− (2)
(式中、A1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。x、yおよびzは、各々独立して直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の置換基を示す。)
【請求項4】
−A1−x−A2−に相当する部分が下記一般式(3)で表されるメソゲン基であることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【化1】

【請求項5】
熱可塑性樹脂のRに相当する部分が直鎖の脂肪族炭化水素鎖である、請求項3または4いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂のRの分子鎖の炭素数が偶数である請求項3〜5いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂のRが−(CH28−、−(CH210−、および−(CH212−から選ばれる少なくとも1種であり、数平均分子量が3000〜40000である請求項3〜6いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂の−y−R−z−が−O−CO−R−CO−O−である、請求項3〜7いずれかに記載の熱可塑性樹脂を用いた、難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
無機充填剤(B)を含有する請求項1〜8いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
無機充填剤(B)が、単体での熱伝導率が12W/m・K以上の無機化合物であることを特徴とする、請求項9に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
無機充填剤(B)が、電気絶縁性高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項9または10に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
無機充填剤(B)が、導電性の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項9または10に記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の原料である熱可塑性樹脂(A)の、樹脂単体の熱伝導率が0.45W/(m・K)以上である、1〜8いずれかに記載の難燃性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−231158(P2011−231158A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100516(P2010−100516)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】