説明

電力を節約するためのトライステート型位相同期ループ

その周波数が位相同期ループ(PLL)によって制御されかつ間欠的に動作している無線部を備えるシステムにおいて、PLLが設計周波数において安定した後に、PLL内の制御コンデンサをトライステートにすることによって、PLLによって消費される電力を低減する方法及びシステムを提供する。前記コンデンサが安定した後に、PLL内の構成要素のうちのいくつかへの電力が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路に関し、より詳細には、本発明は位相同期ループ(PLL)回路に関する。
【0002】
[関連出願及び優先権主張]
本出願は、2005年9月26日に出願の仮特許出願第60/720,858号の非仮出願である。仮特許出願第60/720,858号の出願日に対する優先権を主張する。仮特許出願第60/720,858号の全内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
位相同期ループは極めて高精度の基準周波数を提供する。さらに、PLLは、クロック信号を逓倍又は分周するために用いることができる。たとえば、10MHzの入力クロックをPLLによって逓倍して、1000MHzの出力信号を生成することができる。位相同期ループは、多くの場合に、無線受信機又は無線送信機の周波数を制御するために用いられる。
【0004】
無線受信機及び/又は無線送信機を含む数多くのデバイスでは、電力を節約することが大きな関心事である。たとえば、電池駆動式デバイスでは、電池の動作時間を延ばすために、低消費電力であることが望ましい。
【0005】
無線受信機又は無線送信機を含むいくつかのデバイスでは、無線部は、短い間隔にわたって周期的に動作することができるだけである。そのようなデバイスでは、無線の周波数を制御するPLLは、無線が動作している全時間にわたって動作することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、その周波数が位相同期ループ(PLL)によって制御されかつ間欠的に動作している無線部を備えるシステムにおいて、PLLが設計周波数において安定した後に、PLL内の制御コンデンサをトライステートにすることによって、PLLによって消費される電力を低減する方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の方法は、
無線部の周波数を制御する位相同期ループ(PLL)を含むシステムを動作させる方法であって、前記無線部は短時間だけ動作し、該方法は、
前記無線部の特定の動作周期の開始時に、該PLLの周波数を安定させるために閉ループモードにおいて前記PLLを動作させること、
前記PLLの動作が安定した後に、前記PLLによって消費される電力を低減させるために前記PLLをトライステートにすること、及び
前記特定の動作周期の残りの部分の間、前記無線部に基準周波数を与えるために前記トライステートにされたPLLを動作させ続けること、
を含む。
【0008】
請求項8記載の方法は、
コンデンサを備える位相同期ループ(PLL)を動作させる方法であって、前記コンデンサ上の電荷が、前記PLLによって与えられる出力信号の周波数を決定し、前記PLLは位相周波数検出器(PFD)を備え、該方法は、
最初に、前記PLLが特定の周波数において安定できるようにすると共に前記コンデンサ上の前記電荷が特定の値において安定できるようにするステップと、
前記コンデンサ上の前記電荷が安定した後に、前記コンデンサに対して、それ以上電荷が追加も除去されないように前記コンデンサをトライステートにするステップと、
前記コンデンサがトライステートになるときに、前記PFDによって使用される電力を低減するステップと
を含む。
【0009】
請求項13記載のシステムは、
短時間だけ、間欠的に動作することができる無線部と、
前記無線部の周波数を制御しかつフォワードパス及びフィードバックパスを有するループ内に接続される複数のユニットを有する位相同期ループ(PLL)と、
コンデンサ上の電荷が前記PLLの周波数を制御するコンデンサと、
前記コンデンサが安定した後に、前記コンデンサをトライステートにしかつそれにより前記コンデンサに対して電荷が追加も除去もされ得なくなる、ゲートと、
前記コンデンサがトライステートになった後に、前記PLL内の前記複数のユニットによって消費される電力を低減するゲートと
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本明細書において記述される方法及びシステムは、PLLによって消費される電力量を削減することに向けられ、そのPLLは短い間隔にわたって周期的にのみ動作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで、本発明のいくつかの実施形態が、添付の図面を参照しながら説明される。本発明の種々の他の実施形態も実現可能であり、実用化することができる。本発明は、数多くの異なる形で具現することができるので、本発明は、本明細書において述べられる実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0012】
添付図面は、本発明の好ましい実施形態及びそのような実施形態の動作を例示する。それらの図において、枠の大きさは、種々の物理的な構成要素の大きさを表すことは意図していない。複数の図において同じ構成要素が現われる場合、その構成要素が現れる全ての図において、その構成要素を示すために同じ参照符号が用いられる。
【0013】
種々のユニットのうち、当業者が本発明を理解するのに必要とされる部分だけが図示及び説明される。それらの図示されない部分及び構成要素は従来どおりであり、当該技術分野において知られている。
【0014】
図1Aに示される第1の好ましい実施形態は、周辺デバイス10及びワークステーション11を含む。周辺デバイス10は、矢印12によって示される無線リンクによって、ワークステーション11に無線接続される。この例の周辺デバイス10は、コンピュータマウスである。しかしながら、そのデバイスとして、キーボード、ジョイスティック等の任意の他のタイプの周辺デバイスを用いることができる。さらに、本発明の他の実施形態は、他のタイプのデバイス間の無線リンクを含む。
【0015】
周辺デバイス10は、無線部14を含み、無線部14はPLL15からの信号を利用する。ワークステーション11は、PLL17からの信号を利用する無線部16を備える。無線部14及び16はPLLを利用して、或る特定の周波数の信号を生成することに留意されたい。その際、各無線部は、関連するPLLからの信号を、直に、又は他の信号と組み合わせて利用し、無線部の周波数を同調させる。
【0016】
周辺デバイス10内の無線部14は周期的にのみ動作することができる。周辺デバイス10がコンピュータマウスである実施形態では、無線部14は、マウスが動かされるときにだけ動作することができる。周辺デバイスがキーボードである実施形態では、無線部は、キーが押される短い時間だけ動作することができる。ここに示される実施形態では、ワークステーション11内の無線部16は絶えず動作することができる(ワークステーションでは、電力が逼迫していないため)。しかしながら、他の実施形態では、ワークステーション11内の無線部も、周期的にしか動作することができない。
【0017】
図1Bは、無線部14が動作している時間の一例を示す。しかしながら、例示の目的上、時系列及び時間は縮尺どおりではない。ワークステーションと通信するコンピュータマウスを含む典型的な応用形態では、コンピュータマウス内の無線部は、標準的なタイプの用途では、全時間の約1パーセント程度しか動作することができないであろう。もちろん、無線部が動作することができる実際の時間の長さは、周辺デバイスの個々の用途及び個々の使用者によるであろう。しかしながら、数多くの用途において、無線部14はわずかなパーセンテージの時間しか動作することができない。
【0018】
図1Aに示される実施形態では、無線部14が動作している周期がそれぞれ、図1Cに示されるように2つの部分に分割される。その時間はL及びTで示される。時間L中に、PLL15は標準的に動作し、設計周波数にロックする。時間T中に、PLL15はトライステートになり、利用する電力が下がる。すなわち、時間T中に、PLLは、無線部14のための基準周波数を与え続けるが、後に説明されるように、低い電力を利用する状態に切り替わる。
【0019】
図2Aは、PLL15の第1の実施形態における主な構成要素を示す。PLL15のフォワードパスは、水晶振動子20と、周波数分周器21Aと、位相−周波数検出器(PFD)21Bと、チャージポンプ21Cと、フィルタ21Dと、電圧制御発振器(VCO)21Eとを含む。フィードバックパスは、周波数分周器21Fを含む。コンデンサ27は、フィルタ21Dの一部であり、VCO21Eに制御電圧を与える。
【0020】
図2Bは、PLL15の動作の時系列を示す。図2Bには、4つの時間が、A、B、C及びDで示されており、後に説明される。各時間の長さは、種々の詳細な設計上の検討事項によって決まる。以下の説明では、本明細書において説明される具体的な実施形態の場合の各時間の長さが与えられるが、他の実施形態では、その時間の長さが異なることは理解されたい。
【0021】
時刻A:時刻Aでは、無線部14がオンにされ、PLLが標準的な閉ループモードにおいて動作し始める。時刻Aと時刻Bとの間では、PLLは所望の周波数において安定している。本明細書において示される実施形態では、PLLが所望の周波数に安定するのにかかる時間、すなわち、時刻Aと時刻Bとの間の時間は約100マイクロ秒である。他の実施形態では、時間Aは、それよりも長いことも、短いこともある。
【0022】
時刻B:周波数が安定した後に、PLLループが開ループになる。すなわち、時刻BにおいてPLLはトライステートになる。PLLがトライステートになった後に、PLLは、許容周波数範囲内にある周波数信号を生成し続け、無線部14は動作し続ける。コンデンサ27上の電荷は、概ね一定のままであり、それゆえ、VCO21Eへの制御信号は一定のままである。
【0023】
時刻C:PLLがトライステートになった直後に、PLL内の特定の構成要素への電力が低減される。PLLは開ループにおいて、又はトライステート状態で動作しているので、或る特定の構成要素への電力を低減しても、PLLによって生成される信号は影響を及ぼされない。ここで示される実施形態では、PLLがトライステートになった時刻(時刻B)と、特定の構成要素への電力が低減される時刻(時刻C)との間の時間は約5マイクロ秒である。時刻Bと時刻Cとの間に時間差があるのは、単に、電力が低減される前に実効的にトラステート状態になるだけの十分な時間が必要とされるためである。無線部14は、時刻C後にも動作し続ける。
【0024】
時刻D:最後に、或る時間が経過した後に、無線部がオフにされ、PLLがオフにされる。コンデンサ27は、約5ミリ秒間(この時間はミリ秒単位であり、上記で与えられた他の時間はマイクロ秒単位であることに留意されたい)、その電荷を許容範囲内に保持することができる(それゆえ、PLLの周波数を保持することができる)ことに留意されたい。したがって、ここに示される実施形態では、時刻Bと時刻Dとの間の時間は、最大で5ミリ秒になることがある。ワークステーションと通信するマウス又はキーボードのような周辺デバイスを含む実施形態では、これは、要求されるデータを送信するのに十分過ぎるほどの時間である。しかしながら、他の実施形態では、時刻Bと時刻Dとの間の時間は、これらの実施形態においてコンデンサがどのくらい長く電荷を保持することができるか、及び無線部がどのくらい長くオンである必要があるかによって、5ミリ秒より長くなることも、短くなることもある。
【0025】
図2Aに示される実施形態では、PLL15はトライステートになり、電力はゲート25、26A及び26Bによって制御される。電源23によって、電力が、分周器21A、PFD21B、チャージポンプ21C及び分周器21Fに供給される。ゲート25は、電源23から、分周器21A、PFD21B、チャージポンプ21C、フィルタ21D及び分周器21Fへの電力の流れを制御する。
【0026】
ゲート26A及び26Bは、PFD21Bからチャージポンプ21Cへのアップ信号及びダウン信号の流れを制御する。ゲート25、26A及び26Bは、制御ユニット24からの信号によって操作される。
【0027】
ゲート25、26A及び26Bが閉じられるとき、その回路は従来のPLLとして動作する。すなわち、分周器21Fからのフィードバック信号が、分周器21Aからの基準信号と比較される。差がある場合には、チャージポンプ21Cに適当なアップ信号又はダウン信号が与えられ、チャージポンプ21Cが、コンデンサ27上の電荷を増減する。
【0028】
ゲート26A及び26Bが開けられる(すなわち、フローティング状態にある)とき、PFD21Bからのアップ信号又はダウン信号はチャージポンプ21Cには送られない。それゆえ、コンデンサ27はドライステートになる。すなわち、その電荷は、大きな漏れ電流が生じることがない限り、一定のままである。しかしながら、その電荷は、約5ミリ秒間、VCO21Eの周波数が許容範囲内に留まるのに十分なほど一定に保持される。
【0029】
要するに、図2Aに示されるPLL回路は以下のように動作する。
1)無線部14がオンになるとき、PLLが起動され、約100マイクロ秒内に、PLLは適当な周波数に安定する。PLLが安定した後に、無線部14が動作し始める。
【0030】
2)約5マイクロ秒後に、ゲート26A及び26Bが開けられ、コンデンサ27がトライステートになる。すなわち、コンデンサ27に対して、電荷が加えられることも、引き出されることもなく、VCOは、許容周波数範囲内で信号を生成し続ける。ゲート26A及び26Bが開けられた後にも、無線部14は動作し続ける。
【0031】
3)ゲート26A及び26Bが開けられた直後に、ゲート25が開けられ、それにより分周器21A、PFD21B、分周器21Fの電源を切る。ゲート25が開けられた後にも、無線部14は動作し続ける。
【0032】
4)最後に、数ミリ秒後に、無線部14がオフされ、無線部14及びPLL15は次のサイクルを待つ。
【0033】
図2Aに示される回路の数多くの異なる詳細な実施態様が実現可能である。PFD回路、チャージポンプ、フィルタ及びVCOを設計する技法は高度化しており、図2Aに示される実施形態において、数多くの異なる設計を用いることができる。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態の1つの特定の詳細な実施態様を示す。図3に示される実施形態は、図2Aに示される実施形態に類似であるが、VCOへの入力がトライステートになった後に、種々の構成要素への電力が低減される方法が、図2Aに示される方法とは異なる。
【0035】
説明の便宜上、図3に示される回路は、7つの部分、パワーダウン回路31、PFD32、トライステートゲート33、チャージポンプ34、フィルタ35、VCO36、分周器37、トライステートエッジゲーティング回路39に分割される。本明細書において記述される具体的な設計は、2.4ギガヘルツの信号を生成し出力するように設計される。
【0036】
部分31〜39は、例示及び説明の目的で図3において別個に示されることに留意されたい。実際の回路では、図示される構成要素が、示すように接続される。しかしながら、その回路は、図3に示されるようにレイアウトされるか、又は分割される必要はない。
【0037】
PFD32は、フリップフロップ53及び55と、AND回路54とを含む。標準的に動作するとき、PFDは、分周器37からのフィードバック信号を基準信号REFと比較する。PFD32は、周波数を上げる必要があるが、下げる必要があるかを指示するアップ信号及びダウン信号を生成する。基準信号REFの信号源は、図3には示されないことに留意されたい。REF信号は水晶振動子によって生成され、図2Aに示されるように分周することができる。
【0038】
チャージポンプ34は、インバータ62と、FETトランジスタ63及び64とを備える。チャージポンプ34は、PFD32からのアップ信号及びダウン信号に応答してフィルタ35に進むライン72上の信号を増減する。フィルタ35は、抵抗69と、コンデンサ66及び67とを含む。チャージポンプ34からの信号に応答して、フィルタ35は、電圧制御発振器(VCO)36の周波数を制御する電圧信号を与える。
【0039】
ここで例示される特定の実施形態では、フィルタ35内の抵抗及びコンデンサは以下の値を有する。
抵抗69:10Kオーム
コンデンサ66:200ピコファラド
コンデンサ67:20ピコファラド
【0040】
VCO36は、高い入力インピーダンスを有するVCOである。VCO36によって生成される出力信号の周波数は、フィルタ35からの入力ライン上の電圧によって制御される。そのようなVCOは市販されている。
【0041】
この実施形態では、REF信号は1MHzの周波数を有する。PLLが制御する無線部は、500ミリ秒未満の時間だけ続くバースト状態において動作する。したがって、コンデンサ66がトライステートになるとき、PLLは、500ミリ秒にわたって、その周波数を保持する。コンデンサがその電荷を保持することができる時間の長さは、漏れ電流の量によって決まり、上記で与えられた時間は、市販の構成要素で達成することができる。
【0042】
PLLが起動されるとき(すなわち、PLLの周波数が制御している無線部がオンされるとき)、電力状態信号70及びトライステート信号71がハイにされる。信号70がハイであるとき、AND回路51がREF信号をPFD32に渡す。トライステート信号71がハイであるとき、PFD32からのアップ信号及びダウン信号がチャージポンプ34に渡される。こうして、信号70及び71がハイであるとき、その回路は標準的なPLLとしての役割を果たし、短い時間の後に、設計された周波数にロックする。図示される回路は、2.4ギガヘルツの周波数にロックするのに、約100マイクロ秒を要する。
【0043】
PLLが安定した後に、トライステート信号71がローに移行し、それゆえ、PFD32からのアップ信号及びダウン信号はもはや、チャージポンプ34に達しなくなる。
【0044】
次に、電力状態信号70がローに移行する。電力状態信号70がローであるとき、REF信号及びフィードバック信号はいずれもANDゲート51及び52の中を通らない。これにより、PFD内の回路が状態を変更しなくなり、それにより電力が節約される。信号71はローであるので、トランジスタ63及び64は状態を変更せず、それによっても電力が節約されることに留意されたい。
【0045】
図3に示される回路の動作のための例示的な時間は以下のとおりである。
無線部がオンに切り替わるときに、2.4ギガヘルツにおいて動作するPLLがオンに切り替わるものと考える。
1)回路が起動された後にPLLが安定するのにかかる時間:100マイクロ秒。
2)トライステート信号71がローに移行する時刻と、電力信号70がローに移行する時刻との間の時間間隔:5マイクロ秒。
3)PLLがトライステートモードになるが、仕様内の周波数を保持することができる時間の長さ:500ミリ秒。
【0046】
多種多様な他の実施形態も実現可能であることに留意されたい。そのような実施形態ではそれぞれ、PLLは或る周波数にロックし、その後、トライステートになり、開ループモード(fashion)において周波数信号を与え続ける。PLLがトライステート状態にあるとき、PLL内の構成要素のうちのいくつかの消費電力が低減され、それにより電力が節約される。
【0047】
図4は、トライステートエッジゲーティング回路39の細部を示す。すなわち、図4は、ライン71上でPLLトライステート信号を有効にする論理制御回路を示す。図4に示される回路は2つの入力、すなわちトライステートイネーブル信号及びREF信号を有する。REF信号は、図3に示されるANDゲート51に与えられるのと同じREF信号である。
【0048】
REF入力は第1のインバータ91に接続され、第1のインバータの出力は第1のANDゲート92の第1の入力に接続される。第1のANDゲート92の第2の入力はトライステートイネーブル信号である。ANDゲート92の出力は、フリップフロップ93のクロック入力である。
【0049】
フリップフロップ93では、常時「ハイ」である信号がデータ入力に接続されている。Q出力は、第2のANDゲート94の第1の入力を与える。ANDゲート94の第2の入力は、PLLトライステートイネーブル信号に接続され、且つインバータ96の入力に接続される。インバータ96の出力は、フリップフロップ93のセット/リセット入力に接続される。第2のANDゲート94の出力はインバータ95に進み、インバータ95はライン71上に出力信号を生成する。
【0050】
図4の回路では、PLLトライステートイネーブル信号がローであるとき、ライン93f上の信号は1であり、AND回路94の出力はローである。しかしながら、インバータ95の出力はハイである。PLLトライステートイネーブル信号がハイであるとき、クロック入力の立ち下がりエッジによって、ライン93f及びAND回路94の出力はハイに移行し、インバータ95の出力はローに移行する。トライステートイネーブル信号がハイである限り、インバータ95の出力はローのままである。トライステートイネーブルがローに移行すると、ライン93f上の信号がローにリセットされ、インバータ95の出力がハイに移行する。
【0051】
PLL内の信号に対して既知の関係を有するクロックを用いることによって、使用者は、パワーダウンシーケンスが行われても、PLLが不安定にならないようにすることができる。たとえば、或る実施形態では、PLLが、基準クロックの立ち上がりエッジを用いて、内部タスクを実行することがある。基準クロックの立ち下がりエッジを用いて、パワーダウンシーケンスにクロックを供給することによって、本発明者は、内部PLL機能が影響を及ぼされないことを保証する。
【0052】
本発明が、その好ましい実施形態に関して図示及び説明されてきたが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、多種多様な他の実施形態が実現可能であることは理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】第1の実施形態のシステムの全体図である。
【図1B】無線部のオン−オフ周期を示す時系列図である。
【図1C】PLLの動作における種々の段階を示す図である。
【図2A】図1に示されるPLLをさらに詳細に示す図である。
【図2B】図2Aに示される回路に関連付けられる時系列図である。
【図3】一実施形態の回路図である。
【図4】図3に示されるトライステート制御部の回路図である。
【符号の説明】
【0054】
10:周辺デバイス(コンピュータマウス)、11:ワークステーション、14、16: 無線部、21A:周波数分周器、21C:チャージポンプ、21D:フィルタ、23:電源、24:制御ユニット、25、26A、26B:ゲート、34:チャージポンプ、35:フィルタ、36:電圧制御発振器(VCO)、37:分周器、39:トライステートエッジゲーティング、70:電力状態信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線部の周波数を制御する位相同期ループ(PLL)を含むシステムを動作させる方法であって、前記無線部は短時間だけ動作し、該方法は、
前記無線部の特定の動作周期の開始時に、該PLLの周波数を安定させるために閉ループモードにおいて前記PLLを動作させること、
前記PLLの動作が安定した後に、前記PLLによって消費される電力を低減させるために前記PLLをトライステートにすること、及び
前記特定の動作周期の残りの部分の間、前記無線部に基準周波数を与えるために前記トライステートにされたPLLを動作させ続けること、
を含む方法。
【請求項2】
前記PLLは、該PLLの出力周波数を制御するコンデンサを備え、前記PLLがトライステートになるときに、前記コンデンサに対して電荷が追加も除去もされない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PLLは、チャージポンプに信号を与える位相周波数検出器(PFD)を備え、前記PLLは、該PFDからの信号が前記チャージポンプに達するのを妨げることによってトライステートになる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PLLは位相周波数検出器(PFD)を備え、前記方法は、前記PLLがトライステートになるときに、前記PFDへの電力を低減することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PLLは、フォワードループ内に接続される、位相周波数検出器(PFD)、チャージポンプ、フィルタ、及び電圧制御発振器(VCO)を備え、前記PLLは、前記PFDと前記チャージポンプとの間の接続を開放することによってトライステートになる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記PLLは、フォワードループ内に接続される、位相周波数検出器(PFD)、チャージポンプ、フィルタ及び電圧制御発振器と、前記VCOと前記PFDとの間のフィードバックループ内に接続される周波数分周器とを備え、前記方法は、
前記PFDと前記チャージポンプとの間の接続を開放することによって前記PLLをトライステートにすること、及び
前記周波数分周器と前記PFDとの間の接続を開放することによって、前記PLLをトライステートにした後に、前記PLLによって消費される電力を低減すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記PLLは、それぞれが1つの立ち上がりエッジ及び1つの立ち下がりエッジを有する複数のパルスを有する基準入力信号を有し、前記方法は、前記基準入力上のパルスの立ち下がりエッジの時刻において前記PLLをトライステートにすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コンデンサを備える位相同期ループ(PLL)を動作させる方法であって、前記コンデンサ上の電荷が、前記PLLによって与えられる出力信号の周波数を決定し、前記PLLは位相周波数検出器(PFD)を備え、該方法は、
最初に、前記PLLが特定の周波数において安定できるようにすると共に前記コンデンサ上の前記電荷が特定の値において安定できるようにするステップと、
前記コンデンサ上の前記電荷が安定した後に、前記コンデンサに対して、それ以上電荷が追加も除去されないように前記コンデンサをトライステートにするステップと、
前記コンデンサがトライステートになるときに、前記PFDによって使用される電力を低減するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記PLLはチャージポンプを備え、前記方法は、前記コンデンサがトライステートになった後に、前記チャージポンプへの電力を低減することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記コンデンサをトライステートにするために前記コンデンサに対して電荷の追加又は除去を行うパスを開放することを含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記PLLは、チャージポンプに信号を与え、前記PLLは、前記PFDからの信号が前記チャージポンプに達するのを妨げることによってトライステートになる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記PLLは、それぞれが1つの立ち上がりエッジ及び1つの立ち下がりエッジを有する複数のパルスを有する基準入力信号を有し、前記方法は、前記基準入力上のパルスの立ち下がりエッジの時刻において前記PLLをトライステートにすることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
短時間だけ、間欠的に動作することができる無線部と、
前記無線部の周波数を制御しかつフォワードパス及びフィードバックパスを有するループ内に接続される複数のユニットを有する位相同期ループ(PLL)と、
コンデンサ上の電荷が前記PLLの周波数を制御するコンデンサと、
前記コンデンサが安定した後に、前記コンデンサをトライステートにしかつそれにより前記コンデンサに対して電荷が追加も除去もされ得なくなる、ゲートと、
前記コンデンサがトライステートになった後に、前記PLL内の前記複数のユニットによって消費される電力を低減するゲートと
を備える、システム。
【請求項14】
前記PLL内の前記複数のユニットによって消費される電力を低減するゲートは、前記フィードバックパスを開放し、それにより前記ループが開回路になり、前記PLLによって消費される電力が低減される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記PLLは、フォワードループ内に接続される位相周波数検出器(PFD)、チャージポンプ、フィルタ及び電圧制御発振器(VCO)を備え、前記コンデンサは前記フィルタの一部である、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記PLLは、前記フィードバックパス内に周波数分周器を備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記コンデンサをトライステートにするゲートは、前記PFDと前記チャージポンプとの間の接続を開放する、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、前記コンデンサがトライステートになった後に前記PFD及び前記チャージポンプによって消費される電力を低減するために前記コンデンサがトライステートになった後に前記PFDへの入力を開放するゲーティング回路を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
コンピュータ周辺デバイスを備え、該周辺デバイスからのデータが前記無線部によって送信される、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記フォワードパスは電圧制御発振器を含み、該電圧制御発振器からの出力周波数が前記コンデンサによって制御される、請求項13に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−510834(P2009−510834A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532283(P2008−532283)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035778
【国際公開番号】WO2007/037991
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(301020237)サイプレス セミコンダクター コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】