説明

電力ケーブル用接続部

【課題】ケーブル接続部の作製作業時間を短縮化し、施工コストの低廉化を図ることができるとともに、所望の地絡電流性能を得ることができる電力ケーブル用接続部を提供する。
【解決手段】第1遮蔽層7は、2つのプラスチック絶縁電力ケーブル2,3のケーブル遮蔽層2D,3Dを折り返して形成した第1空間20に配設されているケーブル導体側ロールスプリング9Aにより、第2遮蔽層8は、該第2遮蔽層8のケーブルシース2E,3E側端末を折り返して形成した第2空間21と外側面22に配設されているケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cにより、それぞれケーブル遮蔽層2D,3Dを介してケーブル外部半導電層2C,3C上に圧接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル用接続部に関し、特に、地中送電用のケーブル同士を接続する場合に好適に使用できる電力ケーブル用接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、架橋ポリエチレン絶縁体を用いたプラスチック絶縁電力ケーブルは、絶縁性に優れていること及び取り扱い性が簡単であることから、急速に普及してきている。これに伴い、斯かるケーブル同士を接続するケーブル接続作業の総数が増加し、これら接続作業の簡素化及び施工時間の短縮化に対する要求が大きくなっている。
【0003】
このような電力ケーブル用接続部としては、内部半導電層、絶縁層、及び外部半導電層で形成されたゴム絶縁筒(ゴムブロック絶縁体)を用いた電力ケーブル用接続部が実用化されている。
【0004】
この種の電力ケーブル用接続部には、例えば、図5に示すように、防水混和物Pを金属ケース52内に設けた電力ケーブル用接続部51が提案されており、金属ケース52内で2つのプラスチック絶縁電力ケーブル53,54の端末をそれぞれ段剥ぎして露出されたケーブル導体53A,54A、ケーブル絶縁体53B,54B、ケーブル外部半導電層53C,54C及びケーブル遮蔽層53D,54Dのうちケーブル導体53A,54A同士を接続する導体接続管55と、この導体接続管55の周囲に位置するゴムブロック絶縁体56と、このゴムブロック絶縁体56等を覆う編組テープ57と、編組テープ57で覆われたゴムブロック絶縁体56と金属ケース52との間に形成された空隙に充填してなる防水混和物Pと、この編組テープ57に2つのプラスチック絶縁電力ケーブル53,54のケーブル遮蔽層53D,54Dを介して接続する平編組線58とを備えている。切り込みを入れて折り返されたケーブルシース53E,54Eの内面には、金属テープの金属遮水層が貼り付けられている。
【0005】
なお、符号59は半導電性テープ、60は金属遮水層用接地線、61は錫めっき軟銅線、62は圧縮スリーブ、63は接地線引き出し口、64は防水テープである。
【0006】
このような、金属ケースとゴムブロック絶縁体の隙間に防水混和物を使用した構造の接続部としては、例えば、特許文献1の図3に従来技術として記載されているプラスチック絶縁電力ケーブル用接続部がある。
【0007】
そして、上述した電力ケーブル用接続部51を作製するには、ゴムブロック絶縁体56をプラスチック絶縁電力ケーブル54端末のケーブル接続部分に装着して絶縁処理を行った後に、編組テープ57、半導電性テープ59及びケーブル外部半導電層53C,54C、ケーブル遮蔽層53D,54D、金属遮水層用接地線60、錫めっき軟銅線61などによる遮蔽処理、接地処理等を実施した後に、更に金属ケース52内に防水混和物Pを充填する封入作業やそのケース52を水から保護するための防食処理等の後工程を行わなければならず、その接続部を作製するのに多数の工程が必要となり、多大の時間を費やして施工コストが嵩むという不都合があった。
【0008】
そこで、上述した不都合の中、防水混和物の封入作業を省略した電力ケーブル用接続部として、例えば、特許文献1の図1に記載のプラスチック絶縁電力ケーブル用接続部や、各ケーブル遮蔽層に遮蔽層を被せてロールスプリングによって圧接するものが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−236378号公報
【特許文献2】特開平11−234885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前者(特許文献1(図1))にあっては、専用の圧着機を用い、ケーブル遮蔽層と遮蔽層、及びケーブル遮蔽ボンド線と接地処理線をそれぞれ圧着する構造であるため、これらの処理に多大の時間を費やし、施工コストの低廉化を図ることができないという問題があった。
【0010】
一方、後者(特許文献2)にあっては、ケーブル端部のケーブル遮蔽層と接続部遮蔽層の2つの遮蔽層を被せて積層させ、その外周から1個のロールスプリングによって圧接する構造であるため、1個のロールスプリングでは十分な把持力が得られないために接触圧力の低下を招き、結果として接触抵抗の増大に伴う異常発熱を発生させてしまい、所望の地絡電流(3000A、2.1秒)を流す性能を得ることができないという問題があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、ケーブル接続部の作製作業時間を短縮化して、施工コストの低廉化を図ることができるとともに、所望の地絡電流性能を得ることができる電力ケーブル用接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、段剥ぎによりケーブル導体、ケーブル絶縁体、ケーブル外部半導電層及びケーブル遮蔽層を露出させた電力ケーブル端末を接続する電力ケーブル用接続部であって、前記ケーブル絶縁体を接続するブロック絶縁体と、前記ブロック絶縁体と前記ケーブル外部半導電層とに跨って順次配設される第1遮蔽層及び第2遮蔽層と、前記2つの遮蔽層を前記ケーブル外部半導電層の一端の外周に圧接により固着する2つ以上のロールスプリングが並列に配置されていることを特徴とする電力ケーブル用接続部を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ケーブル接続部の作製作業時間を短縮化し、施工コストの低廉化を図ることができるとともに、所望の地絡電流性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部の全体を説明するために示す断面図である。図2は、図1の要部を拡大して示す断面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部のロールスプリングを示す斜視図である。
【0015】
〔電力ケーブル用接続部1の全体構成〕
図1において、符号1で示す電力ケーブル用接続部は、プラスチック絶縁電力ケーブル2,3の端末をそれぞれ段剥ぎして露出されたケーブル導体2A,3A、ケーブル絶縁体2B,3B、ケーブル外部半導電層2C,3C及びケーブル遮蔽層2D,3Dのうちケーブル導体同士を接続する導体接続管4と、ケーブル絶縁体2B,3Bを接続するブロック絶縁体5と、ブロック絶縁体5を介して対向する2つのスペーサ6と、ブロック絶縁体5とケーブル外部半導電層2C,3Cの外周に跨って配設され、これらと接続する第1遮蔽層7と、第1遮蔽層7とケーブル遮蔽層2D,3Dの外周に跨って配設され、これらと接続する第2遮蔽層8と、第1遮蔽層7・第2遮蔽層8をケーブル遮蔽層2D,3Dを介してケーブル外部半導電層2C,3Cの両端の外周に圧接により固着する並列に隣接配置した各2つのロールスプリング9(図2に示す)と、プラスチック絶縁電力ケーブル2,3等の接続部全体を覆う遮水層10とから大略構成されている。
【0016】
ケーブル遮蔽層2D,3Dには、ケーブルシース2E,3E側端末を折り返して、ケーブル導体側ロールスプリング9Aを配設するための第1空間20が形成されている。プラスチック絶縁電力ケーブル2のケーブル遮蔽層2Dには接地用スリーブ11によって接地線12が接続されている。ケーブルシース2E,3Eの内面には金属遮水層(図示せず)が貼付されており、この金属遮水層(図示せず)にはシースボンドクリップ13が取り付けられている。シースボンドクリップ13には、図2に示すように、ケーブル遮蔽層2D,3Dと第2遮蔽層8との間に介在するシースボンドクリップ接地線13Aが接続されている。
【0017】
(導体接続管4の構成)
導体接続管4は、ケーブル側に開口する2つの凹孔4A,4Bを有する筒体によって形成されている。そして、両凹孔4A,4B内にそれぞれケーブル導体2A,3Aを導入して接続管両側端部の圧縮によって接続するように構成されている。導体接続管4の外周面には、ケーブル導体2A,3Aを覆い、かつケーブル絶縁体2B,3Bの外径と同じ寸法となるように半導電性テープ14が巻回され、ブロック内部半導電層5Aと接続している。
【0018】
(ブロック絶縁体5の構成)
ブロック絶縁体5は、内外部2つのブロック半導電層5A,5B及びこれら両ブロック半導電層5A,5B間に介在するゴム製のブロック絶縁層5Cからなり、導体接続管4の軸線上に配置され、かつ半導電性テープ14及びケーブル絶縁体2B,3B並びにケーブル外部半導電層2C,3Cの端部の周囲に形成されている。そして、ブロック外部半導電層5Bがケーブル外部半導電層2C,3Cに接続するように構成されている。
【0019】
(スペーサ6の構成)
スペーサ6は、ケーブル外部半導電層2C,3Cの周囲に配設され、かつブロック絶縁体5を構成するブロック外部半導電層5Bの両端面に取り付けられ、2つのエレメント6A,6Bからなる半割りの環状体によって形成されている。スペーサ6には、ケーブル外部半導電層2C,3Cを接続する半導電性テープ15がブロック外部半導電層5Bの両端部に跨って巻回されている。
【0020】
(第1遮蔽層7の構成)
第1遮蔽層7は、ブロック絶縁体5とケーブル外部半導電層2C,3Cの外周に跨って配設されて巻回されると共に、そのケーブル外部半導電層2C,3C上の半導電性テープ15とスペーサ6をも巻回し、全体が編組テープによって形成されている。そして、ケーブル外部半導電層2C,3C及びケーブル遮蔽層2D,3Dの間に配設されて、これらと接続するように構成されている。
【0021】
(第2遮蔽層8の構成)
第2遮蔽層8は、第1遮蔽層7とケーブル遮蔽層2D,3Dの外周に跨って配設されて、これらと接続され、全体が平編組線によって形成されている。更に、図2に示すように、そのケーブルシース2E,3E側端末を折り返して第2空間21と外側面22が形成され、内側接触部8Aと外側接触部8Bが設けられている。
【0022】
(ロールスプリング9の構成)
ロールスプリング9は、第1遮蔽層7をケーブル遮蔽層2D,3Dに形成された第1空間20に配設されケーブル外部半導電層2C,3Cの両端の外周に押し付けて圧接により固着する1対のケーブル導体側ロールスプリング9Aと、第2遮蔽層8をケーブル遮蔽層2D,3Dと共にケーブル外部半導電層2C,3Cの両端の外周に押し付けて圧接により固着する該第2遮蔽層8のケーブルシース2E,3E側端末を折り返して形成された第2空間21と外側面22に配設される1対のケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cとからなり、これらは並列に隣接して配置されている。ケーブル導体側ロールスプリング9A及びケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cは、図3(a),(b)に示すように、りん青銅等の金属片1個をコイル状に巻回して形成されている。ケーブルシース側ロールスプリング9Bは、第2遮蔽層8の内側接触部8Aをケーブル遮蔽層2D,3Dを介してケーブル外部半導電層2C,3C側に、また、ケーブルシース側ロールスプリング9Cは、第2遮蔽層8の内側接触部8A,外側接触部8Bをケーブル遮蔽層2D,3Dを介してケーブル外部半導電層2C,3C側に、ケーブルシース側ロールスプリング9Bと共にそれぞれ押し付けて圧接により固着するように構成されている。
【0023】
(遮水層10の構成)
遮水層10は、第2遮蔽層8とケーブルシース2E,3Eの外周に跨り配設され、その両側にケーブルシース2E,3Eの外面に接触するシース接触部10A,10Bを有する金属遮水層付き熱収縮チューブからなる。遮水層10のシース接触部10A,10Bは、ケーブル外部半導電層2C,3C側のケーブルシース2E,3E端部からケーブル長手方向に対して界面寸法L(界面長さ)を、L≧50mmに設定されている。また、シース接触部10A,10Bの端部には、その端部の一部とケーブルシース2E,3Eに跨ってブチルゴム系のパテテープ16が巻回され、さらにこのパテテープ16を覆うように防水テープ17が巻回されている。
【0024】
次に、第1の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部の作製方法について説明する。
【0025】
本実施の形態に示す電力ケーブル用接続部の作製方法は、「電力ケーブルの接続」・「ブロック絶縁体の形成」・「第1遮蔽層の形成」・「第2遮蔽層の形成」・「遮水層の形成」の各工程が順次実施されるため、これら各工程を順次説明する。なお、プラスチック絶縁電力ケーブル2,3は、予めその端末を段剥ぎしてケーブル導体2A,3A、ケーブル絶縁体2B,3B、ケーブル外部半導電層2C,3C及びケーブル遮蔽層2D,3Dが露出されているものとする。
【0026】
「電力ケーブルの接続」
先ず、ケーブル導体2A,3Aを導体接続管4の凹孔4A,4B内に挿入し、この状態で導体接続管4の両端部を圧縮する。この場合、導体接続管4の両端部が圧縮されると、ケーブル導体2A,3Aが導体接続管4を介して互いに接続される。次に、導体接続管4の外周面に半導電性テープ14をケーブル絶縁体2B,3B間を埋めるように巻回する。この巻回される半導電性テープ14の寸法は、ケーブル絶縁体2B,3Bの外径寸法と同じにする。
【0027】
「ブロック絶縁体の形成」
ブロック絶縁体5をその中心軸線が導体接続管4の中心軸線に合致するようにケーブル絶縁体2B,3Bとそのケーブル絶縁体2B,3B側のケーブル外部半導電層2C,3C端部上に装着する。
【0028】
「第1遮蔽層の形成」
初めに、ブロック絶縁体5を構成するブロック外部半導電層5Bの両端面に位置するケーブル外部半導電層2C,3Cの両端部に半導電性テープ15が巻回され、その上にそれぞれスペーサ6を取り付ける。次に、スペーサ6とブロック絶縁体5及び半導電性テープ15の外方にあるケーブル外部半導電層2C,3C上に、編組テープの第1遮蔽層7を巻回する。このケーブル外部半導電層2C,3C上に巻回する第1遮蔽層7の幅は、ケーブル導体側ロールスプリング9Aの幅と同じ寸法とする。そして、この巻回により、第1遮蔽層7がケーブル外部半導電層2C,3Cと半導電性テープ15に接続される。
【0029】
更に、ケーブル外部半導電層2C,3C上の第1遮蔽層7を、ケーブル遮蔽層2D,3Dを折り返して形成した第1空間20に配設されているケーブル導体側ロールスプリング9Aによって圧着する。この圧着により、第1遮蔽層7がケーブル遮蔽層2D,3Dとケーブル導体側ロールスプリング9Aに接続される。
【0030】
「第2遮蔽層の形成」
先ず、ケーブルシース2E,3Eに切り込みを入れて折り返すことにより露出する金属遮水層(図示せず)にシースボンドクリップ13を取り付ける。次に、シースボンドクリップ接地線13Aをケーブル遮蔽層2D,3Dに沿わせる。
【0031】
次に、ブロック絶縁体5、半導電性テープ15、ケーブル外部半導電層2C,3C及びケーブル遮蔽層2D,3D上に形成された第1遮蔽層7の外周に、平編組線の第2遮蔽層8を巻回する。この第2遮蔽層8のケーブルシース2E,3E側端末を、ケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cの幅と同じくなるように折り返して第2空間21と外側面22を形成しておき、内側接触部8Aと外側接触部8Bを作成する。
【0032】
そして、第2遮蔽層8の内側接触部8Aを、この第2遮蔽層8を折り返して形成した第2空間21に配設されているケーブルシース側ロールスプリング9Bによって圧着する。更に、第2遮蔽層8の外側接触部8Bを、この第2遮蔽層8を折り返して形成した外側面22に配設されているケーブルシース側ロールスプリング9Cによって圧着する。これらの圧着により、第2遮蔽層8が、ケーブル遮蔽層2D,3D及びケーブル外部半導電層2C,3Cと接続されると共に、シースボンドクリップ接地線13Aとも強固に接続される。このケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cは、ケーブル導体側ロールスプリング9Aに並列に隣接して配置される。
【0033】
その後、ケーブル遮蔽層2Dに接地用スリーブ11によって接地線12を接続する。
【0034】
「遮水層の形成」
先ず、金属遮水層付き熱収縮チューブからなる遮水層10を第2遮蔽層8とケーブルシース2E,3E上のシース接触部10A,10Bに跨って形成するとともに、チューブ全体を加熱収縮させる。このとき、ケーブル外部半導電層2C,3C側のケーブルシース2E,3E端部からケーブル長手方向に対する界面寸法L(界面長さ)としてシース接触部を、L≧50mmの長さにする。
【0035】
次に、シース接触部10A,10Bの端部とケーブルシース2E,3Eの外周面に跨ってブチルゴム系のパテテープ16を巻回した後、さらにパテテープ16を覆うように防水テープ17を巻回する。
【0036】
このようにして、電力ケーブル用接続部1を作製することができる。
【0037】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0038】
(1)ケーブル導体側ロールスプリング9Aによって第1遮蔽層7とケーブル遮蔽層2D,3Dとが、またケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cによって第2遮蔽層8とケーブル遮蔽層2D,3Dとが、それぞれ圧接による強固な固着状態を簡単に作製できる構造であるため、遮蔽処理(第1遮蔽層7及び第2遮蔽層8の形成)及び接地処理(シースボンドクリップ接地線13Aのケーブル遮蔽層2D,3Dへの接続)を一挙に行うことができる。これにより、電力ケーブル用接続部1の作製作業時間を短縮することができ、施工(作製)コストの低廉化を図ることができる。この場合、所定の地絡電流(3000A,2.1秒)を流しても各構成要素に損傷が発生しないことが確認されている。
【0039】
(2)ケーブル導体側ロールスプリング9Aによって第1遮蔽層7とケーブル遮蔽層2D,3Dとが、またケーブルシース側ロールスプリング9B,9Cによって第2遮蔽層8とケーブル遮蔽層2D,3Dとが、隣接して並列に配置され、かつ、それぞれ圧接による強固な固着状態で接続する構造であるため、これらロールスプリング9A〜9Cによって十分な接触圧を確保することができるため、接触抵抗を低減することができる。これにより、異常な発熱を防止することができ、所望の地絡電流性能を得ることができる。
【0040】
(3)遮水層10のシース接触部が、ケーブル外部半導電層2C,3C側のケーブルシース2E,3E端部からケーブル長手方向に対する界面寸法L(界面長さ)としてL≧50mmに設定したことから、従来の金属ケースで覆う構造のものと比較した場合に、同等の透湿度(1×10−7g・cm/(cm2・day・mmHg))性能を得ることができる。
【0041】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部の全体を説明するために示す図である。図4(a)は正面図を、図4(b)は側面図をそれぞれ示す。図4において、図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0042】
図4(a)及び(b)に示すように、第2の実施の形態に示す電力ケーブル用接続部41は、最外側カバーとして防火板付きの保護カバー42を備えた点に特徴がある。電力ケーブル用接続部41のそのほかの構成は、電力ケーブル用接続部1の構成と同一の構成であるため、その構成の説明は省略する。
【0043】
保護カバー42は、ケーブル長手方向に開口するアルミニウムやアルミニウム合金等の金属筒によって形成されている。また、保護カバー42は、3つの電力ケーブル用接続部41を載置し保持するジョイント固定架台43にボルト44によって取り付けられている。保護カバー42には、3つの電力ケーブル用接続部41を収容可能な内部空間42Aが形成されている。保護カバー42の両開口端部には、カバー開口面の一部を覆う防火板45がそれぞれ配設されている。
【0044】
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(3)に加え、次に示す効果が得られる。
【0045】
(1)単一の保護カバー42によって3つの電力ケーブル用接続部41を物品の落下等による外力から保護することができる。
【0046】
(2)防火板45によって保護カバー42内の空気の流通性が悪くなり、酸素濃度が低下するため、保護カバー42内での火災発生を抑制することができるとともに、保護カバー42内で仮に火災が発生しても、保護カバー42外への延焼を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部の全体を説明するために示す断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部のロールスプリングを示す斜視図であり、(a)はケーブル導体側ロールスプリング、(b)はケーブルシース側ロールスプリングを示す。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る電力ケーブル用接続部を説明するために示す正面図と側面図である。
【図5】従来の電力ケーブル用接続部の全体を説明するために示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,41…電力ケーブル用接続部
2,3…プラスチック絶縁電力ケーブル
2A,3A…ケーブル導体
2B,3B…ケーブル絶縁体
2C,3C…ケーブル外部半導電層
2D,3D…ケーブル遮蔽層
2E,3E…ケーブルシース
4…導体接続管
4A,4B…凹孔
5…ブロック絶縁体
5A…ブロック内部半導電層
5B…ブロック外部半導電層
5C…ブロック絶縁層
6…スペーサ
6A,6B…エレメント
7…第1遮蔽層
8…第2遮蔽層
8A…内側接触部
8B…外側接触部
9…ロールスプリング
9A…ケーブル導体側ロールスプリング
9B,9C…ケーブルシース側ロールスプリング
10…遮水層
10A,10B…シース接触部
11…接地用スリーブ
12…接地線
13…シースボンドクリップ
13A…シースボンドクリップ接地線
14…半導電性テープ
15…半導電性テープ
16…パテテープ
17…防水テープ
20…第1空間
21…第2空間
22…外側面
42…保護カバー
42A…内部空間
43…ジョイント固定架台
44…ボルト
45…防火板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段剥ぎによりケーブル導体、ケーブル絶縁体、ケーブル外部半導電層及びケーブル遮蔽層を露出させた電力ケーブル端末を接続する電力ケーブル用接続部であって、
前記ケーブル絶縁体を接続するブロック絶縁体と、前記ブロック絶縁体と前記ケーブル外部半導電層とに跨って順次配設される第1遮蔽層及び第2遮蔽層と、前記2つの遮蔽層を前記ケーブル外部半導電層の一端の外周に圧接により固着する2つ以上のロールスプリングが並列に配置されていることを特徴とする電力ケーブル用接続部。
【請求項2】
前記第1遮蔽層及び前記第2遮蔽層は、前記ケーブル遮蔽層を介して前記2つ以上のロールスプリングで圧接により固着されていることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項3】
前記第1遮蔽層は、前記ケーブル遮蔽層を折り返して形成した第1空間に配設されて前記2つ以上のロールスプリングのうちケーブル導体側のロールスプリングで圧接により固着され、前記第2遮蔽層は、該ケーブルシース側端末を折り返して形成した第2空間と外側面に配設されて前記2つ以上のロールスプリングのうちケーブルシース側のロールスプリングで圧接により固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項4】
前記第2遮蔽層と前記ケーブルシースの外周に跨り、該ケーブルシース外面に接触するシース接触部を両側に有する遮水層をさらに備え、
前記遮水層のシース接触部は、前記ケーブル外部半導電層側の前記ケーブルシース端部からケーブル長手方向に対して界面寸法L(界面長さ)を、L≧50mmに設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力ケーブル用接続部。
【請求項5】
前記電力ケーブル用接続部を収容できると共に、ケーブル長手方向に開口する筒状の保護カバーを最外側にさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力ケーブル用接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−110831(P2007−110831A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298915(P2005−298915)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】