説明

電力デバイス及び電力デバイスの制御方法

コンパクトなインピーダンス変換回路を備えたトランジスタを有するRF電力デバイスであって、インピーダンス変換回路が、集中素子CLCアナログ伝送線路及び高方向性をもって直接電力の検出と反射電力の検出を別個独立に可能にするよう伝送線路に誘導結合された関連の埋め込み型で方向性のある双方向RF電力センサを有する、RF電力デバイス。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、電力デバイス及び電力デバイスの監視方法に関する。
【0002】
増幅器内のRF電力デバイスは、入力信号を受け取り、典型的には入力信号について振幅の大きなバージョンである出力信号を出す。
【0003】
しかしながら、電力デバイスのうちの多くの形態では、電力デバイスの特性、例えば電力デバイスの効率又は線形特性を維持し又は改善する或る形態の電力制御が必要である。特に、大抵の線形化システムでは、RF電力デバイスは、典型的には、増幅した出力信号中の入力信号の変調成分が許容可能なほど線形であるようにするために或る形態の出力電力監視及び制御を必要とする。
【0004】
RF電力デバイスにおける電力監視を行なう1つの周知の技術は、RF電力結合器を用いることであり、かかるRF電力結合器は又、種々の用途に利用できるRF電力デバイス、例えばRF電力制御システムの偏倚及び制御、RF電力監視、RF増幅器の線形化、例えば包絡線の消去及び復元、及びフィードフォワード増幅器の線形化を可能にするよう電力分割又は分布を立体回路中にもたらすために使用できる。
【0005】
さらに、RF電力結合器は又、出力不整合が出力負荷から反射された電力の監視により確認された場合、出力不整合中、RF電力デバイスを故障から保護するのにも使用できる。
【0006】
典型的には、RF電力結合器は、分散型伝送線路及び集中素子LCネットワークの使用により提供される。しかしながら、大抵のRF電力結合器は、比誘電率が制限された基板の表面上に形成される四分の一波長伝送線路の特性を利用しているので、この結果として、伝送線路は、例えば2GHzの動作周波数では比較的長い場合があり、たとえ相対誘電率が高く、例えばErが10に等しい基板上に形成された四分の一波長伝送線路でも、20mmのオーダーのものになる。
【0007】
したがって、分布型結合器を用いるには、プリント回路板上に相当なスペースが必要であり、その結果、電力制御及び線形化に用いられた場合、出力信号の減算済みレプリカについて別途の時間遅延が生じる場合がある。
【0008】
この状況を改善することが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、コンパクトな設計で且つ高い方向性(又は指向性)をもって電力デバイスの直接電力及び反射電力を監視する電力センサを提供することにある。
【0010】
本発明の特徴によれば、添付の特許請求の範囲に記載された電力デバイス及び電力デバイスの監視方法が提供される。
【0011】
これにより、負荷に送られる電力及び負荷から反射された電力の独立制御を正方向電力センサポートと反射電力センサポートとの間の高い方向性又は高いアイソレーション度で可能にするという利点が得られる。
【0012】
加うるに、これにより、双方向電力センサ回路をコンパクトなデザインの状態に包装されたRF電力モジュール中の個別デバイス内に組み込むことができるという利点が得られる。特に、伝送線路の接地平面をパッケージの一部として、個別(ディスクリート)デバイスが組み付けられたヒートシンクの一部として設けることができ、或いは、当然のことながら別個に設けることができる。この場合、誘導結合をボンディングワイヤで実現できる。
【0013】
さらに、このように電力センサをディスクリート電力トランジスタのパッケージ内に具体化することにより、良好な結合挙動が示されることが判明した。電力デバイスと関連した直接電力と反射電力の両方を広範なアイソレーション度で求めることができ、それにより、電力デバイスに対する良好且つ一層正確な制御が可能になる。
【0014】
電力センサにより検出される信号は、バイアス制御回路の入力に適切に印加される。これにより、増幅器の最大レベルを設定することができる。
【0015】
トランジスタ用の出力インピーダンス整合回路を形成するよう構成された伝送線路は、具体的には、特定の特性インピーダンスZの四分の一波長伝送線路の集中素子アナログである。これにより、分布型伝送線路の設計と比較してよりコンパクトな設計が可能になるという利点が得られる。最も適切には、インピーダンス変換CLC回路の誘導性素子は、複数本の並列ボンディングワイヤであるように構成される。これにより、電力デバイスの出力のところに高品質であって融通性のあるほぼ理想的な誘導性素子が提供されるという利点が得られる。並列ボンディングワイヤを容量性コンポーネントと一緒に用いることにより、変換回路について広範な特性インピーダンスが得られる。加うるに、この変換回路は、一体形双方向電力センサ回路の設計に用いるのに適している。
【0016】
好ましくは、「低域」フィルタ回路は、RF電力デバイス、即ちトランジスタの入力として用いられる。かかる低域フィルタの助けによる予備整合が、トランジスタのインピーダンスをその前の増幅器段又は実際にはトランシーバICに整合させる上で望ましい。適当な予備整合回路は、L−C−Lトポロジを含み、この場合、キャパシタは、入力信号と大地(アース)との間に接続される。インダクタンスは、複数本のボンディングワイヤとして適切に埋め込まれる。これらの長さ及びこれらの本数は、所望のインピーダンス及びフィルタ特性を最適化するよう選択される。
【0017】
数個のトランジスタを互いに並列配置する一方で、電力トランジスタをこれらのうちの1つにのみ結合することが適切である。電力増幅器用途では、電力センサは、出力レベルのそれ以上の調整を可能にする上で望ましい。電力設定値を完全に修正する必要はない。その結果、損失を最小限に抑えるため、電力デバイスは、数個の並列トランジスタに適切に細分され、これらトランジスタのうちの1つのみが、それ以上の調整を可能にする電力センサを備える。
【0018】
また、電力センサはそれ自体、保護信号出力に結合されることが適切である。これは、適切には、反射電力レベルをもたらす隔離されたポートである。これは、例えば、適切に選択された抵抗越しに大地に結合される。
【0019】
別の実施形態では、電力トランジスタの入力を別の電力トランジスタの出力に接続するのがよい。これにより、2段増幅器が得られる。結合は、この場合、例えば、主電力トランジスタの電力レベルを調整することができるだけでなく、大規模な修正が必要な場合、第1段の電力レベルを調整できるように拡張可能である。その第1の具体例として、結合のフィードバックが或る特定のしきい電圧を超えた場合にのみ、電力制御信号ポートが信号を第1段にもたらすようにするのがよい。その第2の具体化例として、別個の電力センサを第1段の出力及びかくして第2段の入力(例えば、主トランジスタ)に結合する。
【0020】
本発明のこれら特徴及び他の特徴は、以下に説明する実施形態から明らかであり、かかる特徴をかかる実施形態を参照して説明する。
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を例示として説明する。
【0022】
図1は、個別パッケージを形成するよう基板101上に形成された等価電力デバイス100、例えば、RF信号を増幅するのに適した電力デバイスを示している。
【0023】
電力デバイス100は、RF電力トランジスタダイ102、例えばMOSFET、LDMOST、BJT又はHBTデバイスを有し、かかるRF電力トランジスタダイは、当業者には周知のように信号源のインピーダンスへのRF電力トランジスタ102のインピーダンス整合を可能にするよう予備整合回路104を介して電力デバイス入力コネクタ/リード線に結合されている。
【0024】
トランジスタダイ102の出力は、出力インピーダンス整合回路106を介して電力デバイス出力コネクタ105に結合され、この出力インピーダンス整合回路は、当業者には周知のように負荷の必要とするインピーダンスへのトランジスタ102の出力インピーダンスのインピーダンス変換を可能にするよう構成されている。
【0025】
出力インピーダンス整合回路106は、以下に説明するように集中素子キャパシタンス及び誘導性素子としてのボンディングワイヤを用いることにより四分の一波長伝送線路の等価手段を形成するよう構成されている。
【0026】
双方向電力監視回路107(即ち、電力を2つの方向で監視し、即ち、直接電力及び反射電力を監視するよう構成された電力監視回路)が、出力インピーダンス整合回路106に誘導結合されている。双方向電力監視回路107は、第1のポート109及び第2のポート110を有するよう構成されている。双方向電力監視回路107は、第1のポート106のところで出力インピーダンス整合回路106を通る正方向出力電力の一部をもたらすと共に第2のポート110のところで負荷(図示せず)から反射した電力の一部をもたらす。
【0027】
第1のポート109は、第1の検出回路111の入力に結合され、この第1の検出回路は、電力デバイス100の制御/線形化又は電力監視を可能にする包絡線フィードバック信号を生じさせる。第1の検出回路111からの信号を、出力リード線112を介して内部制御回路(図示せず)又は外部制御システム(図示せず)により使用できる。第2のポート110は、第2の検出回路113に結合され、この第2の検出回路は、負荷から反射された電力の部分を処理して電力デバイス102の入力としてバイアスを制御する信号を生じさせる。したがって、第2の検出回路113は、トランジスタ102の出力のところでの過負荷条件を阻止するために用いられる。
【0028】
図2(この図では、図1に示す均等な要素について同一の参照符号が用いられている)に示すように、予備整合回路104は、トランジスタダイ102の各入力ポートと電力デバイス入力コネクタ103との間に形成されている複数の接続部を含む。各接続部は、容量性素子203により互いに結合された2つの誘導性素子201,202、例えばボンディングワイヤを含む。各接続部について2つの誘導性素子201,202及び容量性素子203の値は、当業者には周知のように、適当な入力インピーダンス整合を可能にするよう選択されている。
【0029】
単一の接続部をトランジスタダイ102の1つの入力ポートと電力デバイス入力コネクタ103との間で予備整合回路104に用いることができるが、予備整合回路の本実施形態は、入力信号電力により課される場合のある電力限度に打ち勝つよう複数のワイヤ又は接続部(即ち、9個の接続部)を含むが、予備整合回路104は、電力デバイス100の電力要件に応じて電力デバイス入力コネクタ103とトランジスタダイ102の入力ポートとの間に任意の数のワイヤ/接続部を有してよい。
【0030】
また、図2に示すように、出力整合回路106は、トランジスタダイ102のそれぞれの出力ポートとキャパシタンス(本明細書においては、「キャパシタ」と区別なく用いられる場合がある)204との間に形成された複数個の接続部(即ち、9個の接続部)を有し、キャパシタンス204は、電力デバイス出力コネクタ105に結合されている。
【0031】
図3により明確に示されているように、出力整合回路106は、9本の並列ボンディングワイヤ301を有し、この場合、各ボンディングワイヤ301は、一端部が、電力トランジスタダイ102の出力金属バー302に結合され、この出力金属バーは、寄生キャパシタとして働き、それにより、大地に対して第1のキャパシタンス310が形成されている。上述したように、キャパシタ204は、電力デバイス出力コネクタ105に接続されている。
【0032】
トランジスタダイ102の寄生キャパシタンス310(この実施形態では、このキャパシタンスは、10pFである)は、四分の一波長伝送線路の集中素子アナログの第1のキャパシタンスとして働き、この場合、四分の一波長伝送線路の集中素子アナログは、出力インピーダンス整合回路106として働く。寄生キャパシタンス310の頂部は又、出力インピーダンス整合回路106の第1のポートとしての役目を果たす。
【0033】
加うるに、トランジスタダイ102と関連した取付け要素(図示せず)が、パッケージフランジ(図示せず)の頂部に設けられ、この場合、パッケージフランジの頂部層は、ボンディングワイヤ301の下に設けられていて、伝送線路のための接地平面として働き、出力信号の帰還経路となるが、任意適当な接地箇所を使用できる。
【0034】
第2のキャパシタンス311は、トランジスタダイ102の第1のキャパシタンス310(即ち、10pF)とほぼ同じ値のキャパシタンスを有するキャパシタを形成するよう構成され、この場合、第2のキャパシタンス311の金属バー309は、出力インピーダンス整合回路106のための第2のポートを形成する。
【0035】
したがって、出力インピーダンス整合回路106は、四分の一波長(即ち、90°)伝送線路の集中素子等価手段を形成するよう構成され、伝送線路は、この実施形態では、一例を挙げると、6オームの特性インピーダンスZを有する。本実施形態は、等価四分の一波長伝送線路を有するものとして出力インピーダンス整合回路106を示しているが、出力整合回路106は、90°に実質的に等しい又は90°の奇数倍である伝送線路を有するよう構成されてもよい。
【0036】
本実施形態に関し、出力インピーダンス整合回路106を形成する複数本のボンディングワイヤ301相互間の相互誘導結合は、0.3mmの間隔により得られるが、任意適当な間隔を使用できる。
【0037】
上述の実施形態は、9本の並列ボンディングワイヤ301の使用例を示しているが、単一のボンディングワイヤを用いることができ、しかしながら、単一のボンディングワイヤを用いると、最大伝送RF電力が制限される場合があり、例えば、電流は、単一の38μm直径の金製ボンディングワイヤに関し、0.6A未満の平均電流に制限される場合がある。したがって、任意適当な本数のボンディングワイヤを電力デバイス100についての電流要件に応じて使用するのがよい。
【0038】
出力インピーダンス整合回路106(即ち、出力変換回路)のボンディングワイヤ301に誘導結合されたボンディングワイヤ303が、以下に説明する4個の他のキャパシタンス304,305,306,307と一緒になって、双方向電力監視回路107(即ち、双方向の方向性結合器)を形成するよう配置されている。
【0039】
双方向電力監視回路107のボンディングワイヤ303と出力インピーダンス整合回路106のボンディングワイヤ301との間の磁界が、各ボンディングワイヤ301と各ボンディングワイヤ303との間の距離の2乗に反比例するので、双方向電力監視回路107のボンディングワイヤ303と出力インピーダンス整合回路106のボンディングワイヤとの間に生じる誘導結合は、主として、端に位置したボンディングワイヤ301,303相互間で生じる。
【0040】
双方向電力監視回路107は、誘導結合を可能にするようボンディングワイヤ303を集中素子伝送線路の一部であるボンディングワイヤ301と並列に配置することにより形成され、この場合、双方向電力監視回路のボンディングワイヤ303の一端部は、トランジスタダイ102の出力のところに形成された金属バー302に隣接して設けられた第1のボンディングパッド307に取り付けられる。ボンディングワイヤ303の他端部は、キャパシタンス204の金属バー309に隣接して設けられた第2のボンディングパッド308に取り付けられる。第2のボンディングパッド308は、一例として25オームの特性インピーダンスZを有する双方向電力監視回路107の第3のポートとして働き、第1のボンディングパッド312は、一例として25オームの特性インピーダンスZを有する双方向電力監視回路107の第4のポートとして働く。
【0041】
したがって、以下に説明するように、集中素子インピーダンス変換回路106を形成する複数本のボンディングワイヤ301と双方向電力監視回路107のボンディングワイヤ303との間の相互インダクタンス結合を関連のキャパシタンス304,305,306,307と組み合わせた結果として、反射電力センサポート(即ち、第3のポート)及び正方向電力センサポート(即ち、第4のポート)が形成されることになる。
【0042】
第1のボンディングパッド312をトランジスタダイ102の出力のところに形成された金属バー302に隣接して配置して用いた結果として、4つのキャパシタ304,305,306,307のうちの2つが形成され、第1のボンディングパッド307とトランジスタの出力金属バー302との間の1つのキャパシタ304は、一例として、0.98pFのキャパシタンスを有し、第1のボンディングパッド307とアース(即ち、基準電圧)との間の第2のキャパシタ305は、一例として2.15pFのキャパシタンスを有する。第2のボンディングパッド308をキャパシタンス204の金属バー309に隣接して配置して用いた結果として、4つのキャパシタ304,305,306,307のうちの2つ以上が形成され、1つのキャパシタ306が、第2のボンディングパッド308とキャパシタンス204の金属バー309との間に作られ、このキャパシタ306は、一例として、0.98pFのキャパシタンスを有し、別のキャパシタ307が、第2のボンディングパッド308とアースとの間に作られ、このキャパシタ307は、一例として2.15pFのキャパシタンスを有する。
【0043】
これにより、コンパクトな設計で且つ直接経路と反射経路との間で高い方向性をもって電力デバイス100からの供給電力と反射電力を監視する手段を提供できるという利点が得られる。
【0044】
出力整合回路106及び双方向電力監視回路107に関する等価回路が、図4に示されており、この回路は、1.6〜2.6GHzの周波数帯に関し、反射電力と直接電力との間のアイソレーション度を<22dBにするよう構成されている。
【0045】
単一の伝送線路ボンディングワイヤ当たりに伝送される電力P_bwを、電力デバイスの出力Poutをボンディングワイヤの本数で除算した値として算定でき、即ち、P_bw=Pout/nである。
【0046】
したがって、双方向電力監視回路107の出力ポート(即ち、ポート4)のところの電力Pcoupを次のように算定できる。
【0047】
〔数1〕
Pcoup=Pout/n/0.5C
上式において、Cは、第2のポートと第4のポートとの間の電力分割比を示す係数である。
【0048】
アイソレーションポートとも呼ばれている双方向電力監視回路107の第3のポートは、電力デバイス出力に取り付けられている負荷から反射された電力の部分を表わしている。
【0049】
上述したように、第3のポートは、直接電力と反射電力との間の不整合の測度を求めることができ、それによりトランジスタのバイアスを調節して不整合の度合いが大きすぎるようになった場合、トランジスタダイ102への損傷を回避するよう図1に示すように出力不整合検出及び保護回路113に結合されている。これは、電力不整合を迅速に突き止めることができると共に損傷を回避するために予防措置をとることができ、例えば、トランジスタバイアスの調整又は出力インピーダンス整合回路106の修正を可能にしてインピーダンス整合条件を改善することができるという利点を有する。
【0050】
第4のポートは、第4のポートにより提供される情報に応じて電力監視又は例えば電力デバイス100の線形化を可能にし、それにより、例えば電力要件に基づいてトランジスタ102についての最適電力出力を設定できるよう図1に示すように包絡線検出及びフィードバック信号回路111に結合されている。例えば、無線電話(図示せず)に用いられる場合、電力デバイスは、信号に関する必要性、例えば、基地局(図示せず)からの距離に応じて送信中のRF信号を制御し、それにより、無線電話に関する電力要件の最適化を可能にするよう使用できる。均等例として、電力デバイス100は、他のRF送信システム、例えば基地局(図示せず)に使用できる。
【0051】
一例を挙げると、指定された値のキャパシタンス及びインダクタンスを有する上述の電力デバイス100に関し、図5、図6、図7及び図8は、双方向電力監視回路107の代表的な周波数応答を示している。
【0052】
図5は、周波数範囲に対するポート3及びポート4のところの代表的な挿入反射減衰量(IRL,S11)を示している。反射減衰量に注目すると、ほぼ所望の周波数結合が、ボンディングワイヤ106(第1のポートから出る信号)とボンディングワイヤ107(第3のポートから第4のポートへの電力監視信号)との間で生じていることが示されている。
【0053】
図6は、ポート1からの電力方向性、ポート2及びポート4への電力トランジスタ出力を示している。理解できるように、S14は、−13dBよりも高い。これは、ポート1からポート2への信号の約5%分に相当すると共に第2のポートのところの0.25dBの電力損失に相当し、この電力損失は、ポート1のところの電力の約6%である。かかる電力損失は、申し分なく許容限度内に収まっており、結合器に関する通常の尺度は、0.50dB未満の損失を有することが望ましい。この図は、更に、負荷に送られる電力及び負荷から反射される電力の独立制御を正方向電力センサポートと反射電力センサポートとの間の高い方向性又は高いアイソレーション度をもって可能にするという利点を示している。これは、当然のことながら、増幅された信号で動作している間における重要な判断基準である。この場合における別の要点として、S14グラフは非常に広く、このことは、S14グラフを広い周波数範囲に及びかくしてブロードバンド用途向けに使用できるということを意味している。しかしながら、一般的に言って、結合器の帯域幅は、増幅器の帯域幅よりも大きい。
【0054】
図7は、ポート3とポート4との間の代表的なアイソレーション度(S34)を示している。ここには、幾分かの周波数依存性があるが、これは、線形であり、非常に強いものではない(−28dB〜−22dB)。その結果、帰還信号をノイズから識別することができる。
【0055】
図8は、ポートの特性インピーダンスと周波数との関係を示している。図5、図6、図7及び図8は、x軸上に周波数をGHz単位で示すと共にy軸上にdBを示している。
【0056】
当業者には理解されるように、上述のインダクタ及びキャパシタの値は、例示であり、従って、任意の適当な値を用いることができ、それにより、必要に応じて種々のRF特性をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態としての電力デバイスを示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態としての電力デバイスを示す図である。
【図3】本発明の実施形態としての双方向電力センサ回路を備えたインピーダンス変換/整合回路を示す図である。
【図4】本発明の実施形態としてのインピーダンス整合回路の等価略図である。
【図5】本発明の実施形態としての双方向電力センサ回路の一性能特性を示す図である。
【図6】本発明の実施形態としての双方向電力センサ回路の別の性能特性を示す図である。
【図7】本発明の実施形態としての双方向電力センサ回路の別の性能特性を示す図である。
【図8】本発明の実施形態としての双方向電力センサ回路の別の性能特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力デバイスであって、
− トランジスタと、
− 前記トランジスタ用の出力整合回路を形成するよう構成された伝送線路と、
− 前記トランジスタ用の電力センサを形成するよう前記伝送線路に誘導結合された方向性結合器とを有する、電力デバイス。
【請求項2】
前記電力センサは、方向性のある双方向RF電力センサである、請求項1に記載の電力デバイス。
【請求項3】
前記方向性結合器は、集中素子インダクタンス・キャパシタンス型結合器である、請求項1に記載の電力デバイス。
【請求項4】
前記伝送線路は、四分の一波長伝送線路の集中素子キャパシタンス・インダクタンス・キャパシタンス型アナログである、請求項1に記載の電力デバイス。
【請求項5】
前記伝送線路の誘導性素子は、第1のポート側の第1のキャパシタに結合されると共に第2のポート側の第2のキャパシタに結合されたボンディングワイヤである、請求項4に記載の電力デバイス。
【請求項6】
前記伝送線路の前記誘導性素子は、複数本のボンディングワイヤである、請求項5に記載の電力デバイス。
【請求項7】
前記方向性結合器の誘導性素子は、第3のポート側の第3のキャパシタ及び第4のキャパシタに結合されると共に第4のポート側の第5のキャパシタ及び第6のキャパシタに結合されたボンディングワイヤである、請求項3に記載の電力デバイス。
【請求項8】
前記方向性結合器の前記第3のポートは、前記伝送線路経由で負荷に送られる電力の指標をもたらすよう配置されている、請求項7に記載の電力デバイス。
【請求項9】
前記方向性結合器の前記第4のポートは、前記伝送線路に結合された負荷から反射された電力の指標をもたらすよう配置されている、請求項7に記載の電力デバイス。
【請求項10】
前記第4のポートは、前記トランジスタのバイアスを制御するバイアス制御回路への入力をもたらすよう配置されている、請求項7に記載の電力デバイス。
【請求項11】
前記第1のキャパシタは、前記トランジスタの寄生出力キャパシタンスである、請求項5に記載の電力デバイス。
【請求項12】
前記伝送線路は、90°に実質的に等しく又は90°の奇数倍の動作周波数で信号の位相ずれを生じさせるよう構成されている、請求項1に記載の電力デバイス。
【請求項13】
トランジスタを有する電力デバイス用回路であって、
前記トランジスタ用の出力整合回路を形成するよう構成された伝送線路と、
前記トランジスタ用の電力センサを形成するよう前記伝送線路に誘導結合された方向性結合器とを有する、回路。
【請求項14】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の電力デバイスを有するRF送信装置。
【請求項15】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の電力デバイスを有する無線電話。
【請求項16】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の電力デバイスを有する基地局。
【請求項17】
電力デバイスを監視する方法であって、前記電力デバイスは、トランジスタと、前記トランジスタ用の出力整合回路を形成するよう構成された伝送線路と、前記電力デバイスに結合されている負荷から反射された電力の指標をもたらすよう前記伝送線路に誘導結合された方向性結合器とを有し、前記方法は、
− 前記負荷から反射された電力の前記指標をバイアス制御回路に提供して前記トランジスタのバイアスの監視を可能にするステップを有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−524951(P2008−524951A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547738(P2007−547738)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054271
【国際公開番号】WO2006/067705
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】