説明

電力変換回路

【課題】本発明の目的は、DC部の過電圧を抑制し、制御回路のための電源を生成できる電力変換回路を提供することにある。
【解決手段】電力変換回路10は、電源側から、リレーS、ダイオード群16、DC部18、インバータ20が設けられる。DC部18の過電圧対策として、DC部18には、エネルギー吸収回路28が備えられる。エネルギー吸収回路28は、第1電源線22側から、ダイオードDs、抵抗Rs、電解コンデンサCsの順で直列接続される。リレーSよりも交流電源側に整流回路30を接続し、整流回路30を介して電解コンデンサCsに電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源と負荷との間に設けられる電力変換回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流電源と負荷との間に設けられ、所定の交流電流を負荷に供給する電力変換回路が種々開発されている。その中で、インバータの小型化やコストダウンを目的としたコンデンサレスインバータが提案されている(非特許文献1)。図6に示すように、コンデンサレスインバータ40は、ダイオード群16、DC部18、およびインバータ20が備えられる。また、インバータ20の停止時にDC部18への電気エネルギーの流入を防ぐために、電源遮断用のリレーSが電源12とダイオード群16の間に設けられる。
【0003】
ダイオード群16は4つのダイオードからなるダイオードブリッジである。ダイオード群16は、交流電源12の出力を全波整流し、上側アームの電源線22と下側アームの電源線24に出力する。DC部18は、電源線22,24に挿入されたリアクトルLinと電源線22,24の間の平滑コンデンサCdcからなる。DC部18に大容量の電解コンデンサを備えない。DC部18の平滑コンデンサCdcの容量は例えば約20μFであり、電解コンデンサの約0.01〜0.02倍である。インバータ20は、スイッチング用パワー素子(トランジスタ)と還流ダイオードを備え、負荷14に対して交流電力を出力する。
【0004】
DC部18の平滑コンデンサCdcが小容量であるため、DC部18への流入エネルギーが小さくとも直流電圧が大きく変動する。また、直流電圧が上昇しやすい状況としては、電源投入/電源歪みによるリアクトルLinと平滑コンデンサCdcのLC共振発生時、インバータ停止時の負荷14のインダクタンスエネルギー還流時が挙げられる。
【0005】
上記の過電圧を防止するための対策として、図7に示すように、DC部18にエネルギー吸収回路28を設けたコンデンサレスインバータ40bが提案されている(特許文献1)。エネルギー吸収回路28は、電源線22,24の間にダイオードDs、抵抗Rs、電解コンデンサCsが直列接続されている。平滑コンデンサCdc以外に電解コンデンサCsにも充電がおこなわれるため、平滑コンデンサCdcの見かけ上の容量が増大する。また、抵抗Rsは電解コンデンサCsへの充電電流を抑える。したがって、平滑コンデンサCdcの両端の電位差Vdcの変動が小さくなり、過電圧を防止できる。
【0006】
電解コンデンサCsの充電電圧は、ほぼ一定に平滑される。電解コンデンサCsは、一定電圧で駆動する回路の電源として使用できる。また、コンデンサレスインバータ40bには、スイッチング用パワー素子やリレーSをコントロールする制御回路26が設けられる。そこで、制御回路26の電源として電解コンデンサCsを使用することが特許文献1に提案されている。
【0007】
しかし、リレーSがオフであれば、DC部18に設けたエネルギー吸収回路28には電圧は印加されない。制御回路26の電源となる電解コンデンサCsは充電されず、制御回路28が駆動しない。したがって、リレーSをオンにすることができず、回路40bは停止したままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−20836号公報
【非特許文献1】高橋勲「高入力力率のダイオード整流回路を持つPMモータのインバータ制御法」、平成12年電気学会全国大会4−149(平成12年3月)、第1591頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、DC部の過電圧を抑制し、制御回路のための電源を生成できる電力変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電力変換回路は、交流電源の出力電圧を整流する複数のダイオードを含んだダイオード群と、前記ダイオード群よりも交流電源側に設けられたリレーと、前記ダイオード群の出力電圧を受けるDC部と、前記DC部の電圧を受け、三相交流電流を三相負荷に出力するインバータとを備える。前記DC部の脈動電圧の最大値はその最小値の2倍以上である。前記DC部は、電解コンデンサを含んだエネルギー吸収回路を備え、前記リレーよりも交流電源側から整流回路を介して交流電源の出力電圧を電解コンデンサに印加する経路を備える。
【0011】
電力変換回路は、通常、ダイオードブリッジで整流し、その後段にある電解コンデンサに充電をおこなう。ダイオードブリッジの前段にあるリレーがオフの場合、そのリレーよりも電源側から整流回路を介して電解コンデンサに充電をおこなう。
【0012】
前記電解コンデンサの充電電圧を電源とし、前記インバータを制御する制御回路を備える。制御回路は、電解コンデンサの充電電圧を電源として動作する。
【0013】
前記電解コンデンサの充電電圧を電源としてリレーのオン・オフをおこなう制御回路を備える。リレーがオフであっても電解コンデンサが充電されるため、電解コンデンサは、常時、制御回路の電源となる。
【0014】
前記エネルギー吸収回路は、ダイオードと電解コンデンサの直列回路である。または、前記エネルギー吸収回路は、ダイオードと抵抗と電解コンデンサの直列回路である。電解コンデンサによって、DC部の平滑コンデンサの見かけ上の容量が増大する。
【0015】
前記整流回路を介して交流電源の出力電圧を前記電解コンデンサに印加する経路に抵抗を備える。抵抗によって電流の減流をおこない、電解コンデンサに印加する電圧を調節する。
【0016】
前記整流回路は全波整流回路または半波整流回路である。電解コンデンサに電圧を印加するために、全波整流または半波整流をおこなう。
【0017】
前記電解コンデンサは、ダイオードブリッジの後段に設けられたエネルギー吸収回路の電解コンデンサである。エネルギー吸収回路の電解コンデンサの充電電圧はほぼ一定に平滑されており、一定電圧が必要な制御回路の電源となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、リレーよりも電源側から電解コンデンサに整流回路を介して電圧を印加することができる。そのため、リレーがオフであっても電解コンデンサに充電をおこなうことができる。電解コンデンサを電源とする制御回路は、リレーがオフであっても駆動され、リレーのオン・オフがおこなわれる。電解コンデンサを有するため、過電圧を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電力変換回路の回路図である。
【図2】図1の電力変換回路の抵抗を共用した回路図である。
【図3】図1の電力変換回路の抵抗の値を調節した回路図である。
【図4】全波整流回路を使用した本発明の電力変換回路の回路図である。
【図5】図4の電力変換回路の抵抗の値を調節した回路図である。
【図6】従来のコンデンサレスインバータの回路図である。
【図7】図6のコンデンサレスインバータにエネルギー吸収回路を設けた回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電力変換回路について図面を用いて説明する。以下に説明する電力変換回路は、コンデンサレスインバータである。
【0021】
図1に示すように、電力変換回路10は、電源12と負荷14との間に設けられ、負荷14に対して所定の交流電力を出力する。図1の電源12は単相電源である。負荷14は三相負荷であり、例えば三相モータが挙げられる。
【0022】
電力変換回路10は、電源側から、リレーS、ダイオード群16、DC部18、インバータ20が設けられる。ダイオード群16、DC部18、インバータ20は、上側アームの第1電源線22と下側アームの第2電源線24とで接続される。また、リレーSやインバータ20の駆動・制御のために制御回路26が設けられる。
【0023】
ダイオード群16は、4つのダイオードで構成されたダイオードブリッジである。ダイオード群16は、全波整流をおこない、第1電源線22と第2電源線24とに直流電圧を出力する。第1電源線22よりも第2電源線24が低電位である。
【0024】
ダイオード群16の後段においてその出力を受けるDC部18には、ダイオード群16から出力された直流電圧を平滑化するためのリアクトルLinと平滑コンデンサCdcが備えられる。リアクトルLinは第1電源線22に挿入され、平滑コンデンサCdcは電源線22と24の間に接続される。図1に示すように、リアクトルLinと平滑コンデンサCdcは、一般的な平滑回路の構成となっている。従来技術で説明したように、平滑コンデンサCdcは低容量である。
【0025】
DC部18の脈動電圧の最大値は最小値の2倍以上であり、その対策として、DC部18にはエネルギー吸収回路28が備えられる。エネルギー吸収回路28は、平滑コンデンサCdcと並列接続される。エネルギー吸収回路28は、第1電源線22側から、ダイオードDs、抵抗Rs、電解コンデンサCsの順で直列接続される。ダイオードDsはアノードが第1電源線22に接続される。平滑コンデンサCdcと電解コンデンサCsとが並列接続になり、平滑コンデンサCdcの見かけ上の容量が増大する。抵抗Rsは、急激な電圧の上昇を抑える働きがある。エネルギー吸収回路28によって、平滑コンデンサCdcの両端電圧Vdcの過電圧が抑えられる。また、電解コンデンサCsは一定電圧に平滑された電圧が充電される。
【0026】
なお、エネルギー吸収回路28は抵抗Rsが使用されているが、電解コンデンサCsへの急激な充電を抑える必要がなければ、抵抗Rsを省略してもよい。
【0027】
本発明は、リレーSよりも交流電源側に整流回路30を接続し、整流回路30を介して電解コンデンサCsに電圧が印加される。すなわち、リレーSがオフであっても電解コンデンサCsに電圧が印加できる構成である。整流回路30は1つのダイオードDssで構成された半波整流回路である。ダイオードDssのアノードが交流電源に接続される。半波整流によって直流電圧が生成され、電解コンデンサCsに直流電圧を印加することができる。
【0028】
制御回路26は、リレーSに対してオン信号を送信したり、インバータ20に対してスイッチング用パワー素子を駆動させる制御信号を送信する。制御回路26は、電解コンデンサCsの充電電圧を電源として駆動する。上記のように、リレーSがオフであっても電解コンデンサCsに充電がおこなわれるため、制御回路26の電源を確保することができる。制御回路26が常に駆動するため、リレーSにオン信号を送信し、リレーSをオンにすることができ、電力変換回路10を駆動させることができる。リレーSがオンになれば、ダイオードDs、抵抗Rsを介して電解コンデンサCsに充電がなされる。なお、必要に応じて、DC/DCコンバータ32によって制御回路26が駆動できる電圧に変換する。
【0029】
整流回路30と電解コンデンサCsの間に抵抗Rssを備える。この抵抗Rssは、電流を減流する。なお、エネルギー吸収回路28の抵抗Rsを大きくしすぎると、エネルギーを吸収する、すなわち抵抗Rsに電流が流れる際に抵抗Rsでの電圧降下が大きくなり、電圧Vdcを上昇させてしまう。そのため、抵抗Rsよりも抵抗Rssの方を大きくする場合が多い。なお、電源12と電解コンデンサCsの経路中であれば、整流回路30よりも電源12側に抵抗Rssを設けても良い。
【0030】
なお、抵抗Rssと抵抗Rsの値が同じであれば、図2の電力変換回路10bのように、整流回路30の出力が、エネルギー吸収回路28のダイオードDsと抵抗Rsの間に接続されるようにしてもよい。また、図3の電力変換回路10cのように、抵抗Rssを有したまま、整流回路30の出力が、エネルギー吸収回路28のダイオードDsと抵抗Rsの間に接続されるようにしてもよい。抵抗Rssと抵抗Rsの直列接続となり、2つの抵抗Rss,Rsで電流の減流をおこなう。以上のように、抵抗Rssの値は適宜設計する。
【0031】
整流回路30は半波整流回路に限定されることはない。図4の電力変換回路10dのようにリレーSよりも交流電源側に4つのダイオードDBssで構成された全波整流回路を接続する。全波整流回路の出力が、電解コンデンサCsに印加される。半波整流回路よりも電源電圧の利用効率が上がる。また、図5の電力変換回路10eのように、エネルギー吸収回路28のダイオードDsと抵抗Rsの間に接続されるようにしてもよい。図5において、図2のように抵抗Rssが設けられない場合もある。抵抗Rssは適宜設計される。
【0032】
その他、インバータ20は、2つのスイッチング用パワー素子(トランジスタ)が直列接続され、その接続部と負荷14の端子が接続される。直列接続されたスイッチング用パワー素子は、第1電源線22と第2電源線24に接続される。負荷14が三相負荷であるので、スイッチング用パワー素子は合計6個となる。各スイッチング用パワー素子と並列に還流ダイオードが接続される。制御回路26がスイッチング用パワー素子のオン・オフのタイミングを調節することにより、所望の三相電流を負荷14に出力する。
【0033】
以上のように、本発明はリレーSよりも前段から、ダイオード群16の後段にあるDC部18の電解コンデンサCsに電圧が印加できるように構成している。リレーSがオフであっても、電解コンデンサCsを電源とした制御回路26が駆動できる。従来のようにリレーSがオフになったままになることはない。また、エネルギー吸収回路28の電解コンデンサCsによって従来と同じように過電圧を防止できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。例えば、図1などは単相のコンデンサレスインバータであったが、三相のコンデンサレスインバータにも適用できる。
【0035】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0036】
10,10b,10c,10d,10e:電力変換回路
12:交流電源
14:負荷
16:ダイオード群
18:DC部
20:インバータ
22:上側アームの電源線
24:下側アームの電源線
26:制御回路
28:エネルギー吸収回路
30:整流回路
32:DC/DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の出力電圧を整流する複数のダイオードを含んだダイオード群と、
前記ダイオード群よりも交流電源側に設けられたリレーと、
前記ダイオード群の出力電圧を受けるDC部と、
前記DC部の電圧を受け、三相交流電流を三相負荷に出力するインバータと、
を備え、
前記DC部の脈動電圧の最大値はその最小値の2倍以上である電力変換回路において、
前記DC部は、電解コンデンサを含んだエネルギー吸収回路を備え、前記リレーよりも交流電源側から整流回路を介して交流電源の出力電圧を電解コンデンサに印加する経路を備えた電力変換回路。
【請求項2】
前記電解コンデンサの充電電圧を電源とし、前記インバータを制御する制御回路を備えた請求項1の電力変換回路。
【請求項3】
前記電解コンデンサの充電電圧を電源とし、前記リレーのオン・オフをおこなう制御回路を備えた請求項1または2の電力変換回路。
【請求項4】
前記エネルギー吸収回路は、ダイオードと電解コンデンサの直列回路である請求項1から3のいずれかの電力変換回路。
【請求項5】
前記エネルギー吸収回路は、ダイオードと抵抗と電解コンデンサの直列回路である請求項1から3のいずれかの電力変換回路。
【請求項6】
前記整流回路を介して交流電源の出力電圧を前記電解コンデンサに印加する経路に抵抗を備えた請求項1から5のいずれかの電力変換回路。
【請求項7】
前記整流回路が全波整流回路または半波整流回路である請求項1から6のいずれかの電力変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−24321(P2011−24321A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166378(P2009−166378)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】