説明

電力変換装置

【課題】DC/DCコンバータの高圧側負荷として3相インバータを接続した場合、DC/DCコンバータから平滑コンデンサに流れる電流と、平滑コンデンサから3相インバータへ流れる電流が影響し合って、平滑コンデンサに流れる電流値が増大し、平滑コンデンサが大型化する問題があった。
【解決手段】インバータ20の直流側入力電流Ipがゼロとなる期間に、平滑コンデンサCs1〜Cs3に充電された電荷を放電する期間を設け、平滑コンデンサに流れるリップル電流を最小にし、平滑コンデンサ小型化して電力変換装置の小型化を実現するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電圧を昇圧あるいは降圧した直流電圧に変換するDC/DCコンバータと、このDC/DCコンバータからの直流電圧を交流電圧に変換するインバータとで構成された電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流電圧を異なる直流電圧に変換するDC/DCコンバータは広く普及しており、多数の回路方式が提案・実用化されている。DC/DCコンバータの一方式として、トランスやチョークコイル等の磁気部品を使用せず、コンデンサの充放電電荷を利用した方式が提案されている。
【0003】
例えば、正の電位に接続する半導体スイッチと負の電位に接続する半導体スイッチとを備えた少なくとも2個以上の半導体スイッチを具備するインバータ回路と、直列に接続される複数の整流器と直列に接続される複数のコンデンサとを備えた多倍圧整流回路とで構成したDC/DCコンバータが提案されている。このような構成にすることで、高耐圧部品でなく中耐圧部品の組み合わせで高圧直流電圧を供給できるとともに、トランスやチョークコイルなどの巻線部品等の大型部品がないため、DC/DCコンバータの小型薄型軽量化が可能となる。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平9−191638号公報(第5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のDC/DCコンバータは、基本機能である直流電圧変換機能に関する内容であった。DC/DCコンバータの高圧側負荷として三相インバータを接続した場合、DC/DCコンバータから平滑コンデンサに流れる電流と、平滑コンデンサから三相インバータへ供給する電流が影響し合って、平滑コンデンサに流れる電流値が増大することになる。平滑コンデンサの寿命を確保するため、1個当たりのコンデンサに流れるリップル電流を許容値以下にするように構成すると、平滑コンデンサが大型化し、装置全体が大型化するという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、DC/DCコンバータと三相インバータが一体化された電力変換装置において、平滑コンデンサに流れるリップル電流を最小にし、電力変換装置の小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換装置は、制御電極によりオンオフ動作が制御される複数の半導体スイッチング素子と平滑コンデンサとから成る回路を、それぞれコンデンサおよびインダクタの直列体を配して複数個接続し、上記コンデンサの充放電により直流/直流電力変換を行うDC/DCコンバータと、このDC/DCコンバータからの直流電圧を複数の半導体スイッチング素子のオンオフ制御により交流電圧に変換するインバータとを備えた電力変換装置において、上記DC/DCコンバータは、上記インバータへの入力電流がゼロとなる期間に、上記平滑コンデンサに充電された電荷を放電する期間を設けたものである。
【0007】
また、この発明に係る電力変換装置は、制御電極によりオンオフ動作が制御される複数の半導体スイッチング素子と平滑コンデンサとから成る回路を、それぞれコンデンサおよびインダクタの直列体を配して複数個接続し、上記コンデンサの充放電により直流/直流電力変換を行うDC/DCコンバータと、このDC/DCコンバータからの直流電圧を複数の半導体スイッチング素子のオンオフ制御により交流電圧に変換するインバータとを備えた電力変換装置において、上記DC/DCコンバータの出力電流と、上記インバータへの入力電流のタイミングを一致させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、DC/DCコンバータとインバータ間に設けられた直流電圧平滑用の平滑コンデンサに流れる電流を低減できるので、平滑コンデンサの小型化が可能であり、電力変換装置の小型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による半導体電力変換装置の構成図である。図1に示すように、半導体電力変換装置は、DC/DCコンバータ10と三相インバータ20により構成される。DC/DCコンバータ10は、電圧端子VL−Vcom間に入力された直流電圧V1を、約3倍に昇圧された直流電圧V2にして電圧端子VH−Vcom間に出力する機能を有する。三相インバータ20は、VH−Vcom間に入力された直流電圧V2を、U端子、V端子、W端子にそれぞれ独立した交流電圧を出力する機能を有する。
【0010】
まず、DC/DCコンバータ10の主回路構成について説明する。
DC/DCコンバータ10の主回路部は、電圧端子VL−Vcom間に入力される入力電圧V1および電圧端子VH−Vcom間に出力する出力電圧V2を平滑するための平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3と、複数の半導体スイッチング素子としてのMOS電界効果トランジスタ(以下、MOSFETと称す)とを備え、MOSFETは低圧側スイッチ、高圧側スイッチとしての2つのMOSFET(Mos1L、Mos1H)(Mos2L、Mos2H)(Mos3L、Mos3H)を直列接続して各平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3の両端子間に接続した回路A1、A2、A3を直列接続して構成される。そして、各回路A1、A2、A3内の2つのMOSFETの接続点を中間端子として、隣接する該各回路A1、A2、A3の中間端子間に、コンデンサCr12とインダクタLr12およびコンデンサCr23とインダクタLr23の直列体で構成され、エネルギー移行素子として機能するLC直列回路を接続する。
【0011】
なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETで、ゲート(制御電極)に信号が印加されることによりオンオフ動作が制御されるスイッチング素子である。また、平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3の容量値は、LC直列回路のコンデンサCr12、Cr23の容量値と比較して十分大きな値に設定される。またMOSFET(Mos1L、Mos1H)のゲートに印加されるゲート信号G1L、G1Hは、後述するように、MOSFET(Mos1L、Mos1H)のスイッチング周波数を決めるためのキャリア信号と指令値を比較演算することで生成されるようになっている。
【0012】
次に、DC/DCコンバータ10の動作について説明する。動作条件として、電圧端子VL−Vcomから供給された電力を、インバータ20が定電力負荷(インバータへの入力電流Ip=一定値)として消費しているものとする。
図2に、Mos1LとMos1Hを駆動するためのゲート信号G1L、G1Hと、各MOSFET(Mos1L〜Mos3L、Mos1H〜Mos3H)を流れる電流、平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3を流れる電流Ics1〜Ics3を示す。ここで、各MOSFETはゲート信号G1L、G1HがHighの時にONするものとし、また、電流の極性は、MOSFETはドレインからソースに流れる方向を正、平滑コンデンサCs1〜Cs3は電荷が充電される方向(平滑コンデンサに電荷が充電されエネルギー移行される方向)を正とした。
【0013】
ゲート信号G1H、G1Lは、コンデンサCrとインダクタLrによるLC直列回路にて定まる共振周期よりもやや大きな周期Tでデューティー約50%のオンオフ信号であり、MOSFETはゲート信号がHighの時にオンとなる。
【0014】
まず、ゲート信号G1LがHighとなってMos1Lがオン状態となると、平滑コンデンサCs1に蓄えられた一部のエネルギーが、以下に示す経路でコンデンサCr12に移行する。
Cs1⇒Mos2L⇒Lr12⇒Cr12⇒Mos1L
次に、ゲート信号G1HがHighとなってMos1Hがオン状態となり、ゲート信号G1LがLowとなってMos1Lがオフ状態となると、コンデンサCr12に充電されたエネルギーが、以下に示す経路で平滑コンデンサCs2に移行する。
Cr12⇒Lr12⇒Mos2H⇒Cs2⇒Mos1H⇒Cr12
同時に平滑コンデンサCs1にも電圧端子VL−Vcomから供給される直流電圧によりエネルギーが蓄えられる。
【0015】
次に再び、ゲート信号G1LがHighとなってMos1Lがオン状態となると、平滑コンデンサCs1に蓄えられた一部のエネルギーが、上記と同様な経路でコンデンサCr12に移行すると共に、平滑コンデンサCs2に蓄えられた一部のエネルギーが、以下に示す経路でコンデンサCr23に移行する。
Cs2⇒Mos3L⇒Lr23⇒Cr23⇒Lr12⇒Cr12⇒Mos1L⇒Cs1
次いで再び、ゲート信号G1HがHighとなってMos1Hがオン状態となると、コンデンサCr12に充電されたエネルギーの一部が、上記と同様な経路で平滑コンデンサCs2に移行すると共に、コンデンサCr23に充電されたエネルギーが、以下に示す経路で平滑コンデンサCs3に移行する。
Cr23⇒Lr23⇒Mos3H⇒Cs3⇒Cs2⇒Mos1H⇒Cr12⇒Lr12
【0016】
このように、コンデンサCr12、Cr23の充放電により、平滑コンデンサCs1から平滑コンデンサCs2へ、更に平滑コンデンサCs2から平滑コンデンサCs3へ順次エネルギーを移行する。そして、電圧端子VLとVcom間に入力された電圧V1を、約3倍に昇圧された電圧V2にして電圧端子VHとVcom間に出力する。また、各コンデンサCr12、Cr23には、インダクタLr12、Lr23が直列に接続されてLC直列回路を構成するため、上記エネルギーの移行は共振現象を利用したものとなり、大きなエネルギー量を効率よく移行できる。
【0017】
図2に示したように、各平滑コンデンサCs1〜Cs3に流れる電流波形Ics1〜Ics3は異なるが、各電流Ics1〜Ics3の周期はゲート信号G1L、G1Hの周期に一致し、ゲート信号G1HがLowの時に電荷を放電し、ゲート信号G1HがHighの時に電荷を充電する方向に電流が流れる。このように、各平滑コンデンサCs1〜Cs3を流れる電流Ics1〜Ics3は異なるものの、電流Ics1〜Ics3とゲート信号G1L、G1Hの基本周波数、及び電流Ics1〜Ics3とゲート信号G1L、G1Hの基本周波数の位相は同じとなることがわかる。
【0018】
なお、各MOSFETには寄生ダイオードが形成されているため、Mos2L、Mos2H、Mos3L、Mos3Hのゲート制御信号入力は、原則不要である。MOSFETの同期整流作用を利用し、寄生ダイオード導通時に各MOSFETをオンさせるようなゲート制御信号を入力すれば、MOSFETのオン電圧が低下するため、MOSFETの損失低減が可能となる。
【0019】
次に、三相インバータ20の構成について説明する。
三相インバータ20の主回路部は図1に示すように、DC/DCコンバータ10の出力端子である電圧端子VH−Vcom間に2つの半導体スイッチング素子(SuL、SuH)(SvL、SvH)(SwL、SwH)を直列接続して構成され、その2つの半導体スイッチング素子の接続点からそれぞれU相、V相、W相の交流電力を出力するようにされている。また各半導体スイッチング素子のゲート端子には、後述するようにキャリア信号とU相・V相・W相の基本波信号の比較演算に基づいて生成されるゲート信号GuH、GVH、GwH、GuL、GVL、GwLが印加される。
【0020】
次に、三相インバータ20の動作について説明する。
図3は、インバータ20の動作を説明するための図である。図3には、インバータのキャリア信号波形、U相、V相、W相それぞれの基本波信号波形(電圧指示値)、キャリア信号と基本波信号の比較演算に基づいて生成されるゲート信号GuH、GvH、GwH、U相、V相、W相のモータ相電流、およびインバータ20への入力電流Ipが示されている。
ゲート信号GuH、GvH、GwH、GuL、GvL、GwLが、それぞれ半導体スイッチング素子SuH、SvH、SwH、SuL、SvL、SwLのゲート端子に入力されることにより、U相、V相、W相の基本波信号と同様な振幅の、インバータ20の入力電圧(VH−Vcom端子間電圧)に依存した交流電圧が各相の端子に発生する。
【0021】
各相の基本波信号の振幅を変化させることにより、各相の端子に発生する電圧の振幅を変化させることができる。また、各相電流と基本波信号の位相を変化させることにより、各相の端子電圧と各相電流の位相を変化させることができる。
なお、インバータ2のキャリア信号のゼロ−ピーク値と各相基本波信号の振幅値の比(基本波振幅値/インバータキャリアゼロ−ピーク値)を変調率と呼ぶ。また、相電流と基本波信号の位相をφとした場合のcosφを力率と呼ぶ。
【0022】
次に、この発明の実施の形態1による、平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3に流れるリップル電流の抑制動作(最小化動作)について説明する。
平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3に流れる電流Ics1、Ics2、Ics3は、インバータ20が動作することによるインバータ20への入力電流Ipと、DC/DCコンバータ10が動作することにより流れるDC/DCコンバータ10の出力電流Io1、Io2、Io3の差分であり、式(1)で表すことができる。
Ics1=Io1−Ip
Ics2=Io2−Ip (1)
Ics3=Io3−Ip
なおここで、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1、Io2、Io3は、図1において、次の式(2)で表されるものとする。
Io1=Ih1+Ih2+Ih3
Io2=Ih2+Ih3 (2)
Io3=Ih3
但し Ih1、Ih2、Ih3はMosxHから平滑コンデンサCsx側に流れる電流
【0023】
平滑コンデンサCs1〜Cs3を流れる電流実効値を低減するには、インバータ20への入力電流IpとDC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3のタイミングを一致させればよい。インバータ20への入力電流IpとDC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3のタイミングを一致させるには、入力電流Ipと出力電流Io1〜Io3の基本周波数を一致させることと、入力電流Ipと出力電流Io1〜Io3の基本周波数の位相を一致させる必要がある。
【0024】
まず、入力電流Ipと出力電流Io1〜Io3の基本周波数を一致させる方法について説明する。インバータ20への入力電流Ipはパルス状の電流波形であり、このパルス電流波形は力率や変調率などのインバータ20の駆動条件によって変化する。しかし、図3に示すように、パルス状の入力電流Ipの基本周波数はインバータ20の駆動条件に係わらず、インバータ20のキャリア信号周波数の2倍になる。一方、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3の基本周波数は、DC/DCコンバータ10のゲート信号G1Hの周波数と同じとなる。
以上のことから、インバータ20への入力電流IpとDC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3の基本周波数を一致させるためには、DC/DCコンバータ10のゲート信号周波数、即ちスイッチング素子G1L、G1Hのスイッチング周波数をインバータ20のキャリア信号周波数の2倍に設定すればよい。
【0025】
次に、入力電流Ipと出力電流Io1〜Io3の位相を一致させる方法について説明する。インバータ20への入力電流Ipがゼロになる(以下、電圧ゼロベクトル状態と記す。)のは、図3に示すようにU相、V相、W相のHighアーム側スイッチング素子SuH、SVH、SwHが全てオンになる期間と、U相、V相、W相のLowアーム側スイッチング素子SuL、SVL、SwLが全てオンになる期間である。インバータ20が電圧ゼロベクトル状態となる時間は、力率や変調率などのインバータの駆動条件によって変化するが、図3に示すように、インバータ20のキャリア信号が山または谷となる時は、インバータ20は必ず電圧ゼロベクトル状態になり、インバータ20の入力電流Ipはゼロとなる。
モータ電流が1サイクルする区間で平均化すると、入力電流Ipの基本周波数成分は、インバータ20のキャリア信号が山または谷の時に振幅が最小となり、インバータ20のキャリア信号がゼロとなる時に振幅が最大となる。
【0026】
一方、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3は、ゲート信号G1HがHighの時(平滑コンデンサに電荷が充電され、LC直列回路からエネルギー移行される期間)に出力され、ゲート信号G1LがHighの時(平滑コンデンサの電荷が放電され、LC直列回路にエネルギー移行される期間)は出力されない。ゲート信号G1Hはデューティー約50%の固定信号であるから、いかなる動作条件においても、ゲート信号位相と出力電流Io1〜Io3との位相関係は一定となる。
【0027】
以上のことから、インバータ20の入力電流Ipの基本周波数成分の振幅が最大になるタイミングと、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3の基本周波数成分の振幅が最大になるタイミングを一致させれば、インバータ20への入力電流IpとDC/DCコンバータの出力電流Io1〜Io3の位相を一致させることができる。すなわち、インバータ20のキャリア信号がゼロとなるタイミングと、DC/DCコンバータ10のゲート信号G1HがHighとなる期間(平滑コンデンサに電荷が充電され、LC直列回路からエネルギー移行される期間)の中心点が一致するように、各々の位相を設定すればよい。
【0028】
或いは、インバータ20の入力電流Ipの基本周波数成分の振幅が最小(ゼロ)になるタイミングと、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3の基本周波数成分の振幅が最小(ゼロ以下)になるタイミングを一致させることでも、インバータ20への入力電流IpとDC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3の位相を一致させることができる。すなわち、インバータ20のキャリア信号が山または谷となるタイミングと、DC/DCコンバータ10のゲート信号G1LがHighとなる期間(平滑コンデンサの電荷が放電され、LC直列回路にエネルギー移行される期間)の中心点が一致するように、各々の位相を設定すればよい。
【0029】
図4は、上述の方法を適用し、インバータ20のキャリア信号とDC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号G1Hの周波数と位相を最適化した時の動作波形を示す図である。図5は、インバータ20のキャリア信号とDC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号の位相が最悪となった時の動作波形を示す図である。
図4および図5では、インバータ20のキャリア信号波形とDC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号波形G1H、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3、インバータ20の入力電流Ip、平滑コンデンサCs1〜Cs3に流れる電流Ics1〜Ics3を示している。
【0030】
図4の最適位相条件では、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3とインバータ20の入力電流Ipのタイミングが一致しているため、即ち、インバータ20の入力電流Ipがゼロとなる期間は、DC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号G1HはLowとなり、平滑コンデンサCs1〜Cs3に充電された電荷を放電する期間となるため、平滑コンデンサCs1〜Cs3に流れる電流Ics1〜Ics3が低減可能となる。一方、図5の最悪位相条件では、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3とインバータ20の入力電流Ipのタイミングが一致していないため、平滑コンデンサに流れる電流Ics1〜Ics3が増加する。
【0031】
図6に、最適位相からのずれ量(degree)と、平滑コンデンサCs1〜Cs3に流れる電流Ics1〜Ics3のリップル電流実効値との関係を示す。動作条件としては、変調率0.6、力率0.6とした。このように、インバータ20のキャリア信号とDC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号の周波数と位相を最適化することで、即ち、最適位相からのずれ量を−90(degree)〜90(degree)にすることで(この期間が平滑コンデンサCs1〜Cs3に充電された電荷を放電する期間に相当する。)、平滑コンデンサCs1〜Cs3に流れる電流Ics1〜Ics3の実効値を低減することが可能となる。
【0032】
このことは、インバータ20の入力電流IpとDC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3のタイミングを必ずしも厳密に一致させる必要はなく、インバータ20への入力電流Ipがゼロとなる期間内に、平滑コンデンサCs1〜Cs3の電荷が放電されLC直列回路にエネルギー移行され、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3がゼロとなる期間を設けることで、平滑コンデンサCs1〜Cs3に流れるリップル電流実効値を低減できることを意味している。
【0033】
次に、インバータ20のキャリア信号とDC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号の周波数と位相を最適化するための信号生成回路および信号生成手法について説明する。
図7にDC/DCコンバータ10のMOSFETのゲート信号およびインバータ20のスイッチング素子のゲート信号の信号生成回路の構成図を、図8に信号生成回路の動作説明図を示し、この実施の形態1では、三角波比較方式のPWM(パルス幅変調)制御による信号生成手段を示している。
【0034】
図7の信号生成回路において、インバータ20のスイッチング素子のゲート信号は、U相、V相、W相の各基本波とキャリア信号1を演算器21、22、23で比較演算し、その出力をスイッチング素子SuH、SvH、SwHのゲート信号GuH、GVH、GwHとし、更に演算器21〜23の出力を反転器31、32、33で反転することでスイッチング素子SuL、SvL、SwLのゲート信号GuL、GvL、GwLとして生成する。
【0035】
またDC/DCコンバータ10のMOSFET(スイッチング素子)のゲート信号は、インバータ20のキャリア信号1とは別のキャリア信号2と、指令値を演算器24で比較演算することにより、MOSFET(Mos1H)のゲート信号G1Hとし、更に演算器24の出力を反転器34で反転することでMOSFET(Mos1L)のゲート信号G1Lとして生成する。
なおこの実施の形態1では、図8に示すように、DC/DCコンバータ10のHigh側ゲート信号G1Hの比較演算器24として、指令値がキャリア信号2よりも大きいときはHigh、小さいときはLowとしている。Low側ゲート信号GxLは、GxHの反転信号となる。また図3に示すように、インバータ20のHigh側ゲート信号GuH〜GwHの比較演算器31〜33として、各基本波がキャリア信号1よりも大きいときはHigh、小さいときはLowとしている。
【0036】
インバータ20のキャリア信号1とDC/DCコンバータ10のキャリア信号2は図8に示すように、共に三角波形であり、DC/DCコンバータ10のキャリア信号周波数は、インバータのキャリア信号周波数の2倍に設定されている。また、インバータ20のキャリア信号1が山および谷となるときに、DC/DCコンバータ10のキャリア信号2が山となるように設定されている。
また、インバータ20のキャリア信号1が山および谷となるときに、DC/DCコンバータ10のキャリア信号2が谷となるように設定してもよい。この場合は指令値がキャリア信号よりも大きいときはLow、小さいときはHighとする必要がある。
【0037】
このように構成にすることで、インバータ20のキャリア信号がゼロとなるタイミングで、DC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号G1HがHigh状態の中心点とすることができる。その結果、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3と、インバータ20の入力電流Ipのタイミングを一致させることが可能となり、即ち、インバータ20の直流側入力電流Ipがゼロとなる期間に、DC/DCコンバータ10の平滑コンデンサCs1〜Cs3に充電された電荷を放電する期間を設けたことにより、平滑コンデンサCs1〜Cs3を流れるリップル電流を低減することが可能となる。
【0038】
実施の形態2.
次に、インバータ20のキャリア信号とDC/DCコンバータ10のスイッチング素子のゲート信号の周波数と位相を最適化するための他の実施形態の信号生成回路および生成手法について説明する。
図9に実施の形態2におけるDC/DCコンバータ10のMOSFETのゲート信号およびインバータ20のスイッチング素子のゲート信号の信号生成回路の構成図を、図10に信号生成回路の動作説明図を示し、この実施の形態2でも、三角波比較方式のPWM(パルス幅変調)制御による信号生成手段を示している。
【0039】
図9の信号生成回路においては、インバータ10とDC/DCコンバータ20のゲート信号は、共通のキャリア信号を元に生成される。インバータ20のスイッチング素子のゲート信号は、U相、V相、W相の各基本波とキャリア信号を演算器21、22、23で比較演算し、その出力をスイッチング素子SuH、SvH、SwHのゲート信号GuH、GVH、GwHとし、更に演算器21〜23の出力を反転器31、32、33で反転することでスイッチング素子SuL、SvL、SwLのゲート信号GuL、GvL、GwLとして生成する。
【0040】
またDC/DCコンバータ10のMOSFET(スイッチング素子)のゲート信号は、キャリア信号と指令値1を演算器25で比較演算して信号Aとし、またキャリア信号と指令値2を演算器26で比較演算し、その出力信号を反転器35で反転して信号Bとし、信号A及び信号BをAND回路41に入力して、その出力をMOSFET(Mos1H)のゲート信号G1Hとする。更にAND回路41の出力を反転器36で反転することでMOSFET(Mos1L)のゲート信号G1Lとして生成する。
【0041】
なおこの実施の形態2でも、図10に示すように、DC/DCコンバータ10のHigh側ゲート信号G1Hの比較演算器25、26として、それぞれ指令値1、2がキャリア信号よりも大きいときはHigh、小さいときはLowとしている。またインバータ20のHigh側ゲート信号GuH〜GwHの比較演算器31〜33は、実施の形態1と同様に、各基本波がキャリア信号1よりも大きいときはHigh、小さいときはLowとしている。
ここで、キャリア信号の最大値が1、最小値が−1とすると、指令値1を0.5、指令値2を−0.5とすることで、デューティー50%のゲート信号G1Hを生成することが可能となる。
【0042】
このような構成にすることで、インバータ20のスイッチング素子のキャリア信号がゼロとなるタイミングで、DC/DCコンバータ10のゲート信号G1HがHigh状態の中心点とすることができ、その結果、DC/DCコンバータ10の出力電流Io1〜Io3と、インバータ20の入力電流Ipのタイミングを一致させることが可能となる。即ち、インバータ20の直流側入力電流Ipがゼロとなる期間に、DC/DCコンバータ10の平滑コンデンサCs1〜Cs3に充電された電荷を放電する期間を設けたことになり、平滑コンデンサCs1〜Cs3を流れるリップル電流を低減することが可能となる。
また、インバータ20とDC/DCコンバータ10のゲート信号生成手段として、共通のキャリア信号を使用しているため、インバータ20とDC/DCコンバータ10のゲート信号の同期を容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるDC/DCコンバータの動作説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるインバータの動作説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による最適動作時の動作説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1を使用しない場合の最悪動作時の動作説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1による平滑コンデンサのリップル電流低減効果を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1による信号生成回路の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1による信号生成回路の動作説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2による信号生成回路の構成図である。
【図10】この発明の実施の形態2による信号生成回路の動作説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10:DC/DCコンバータ 20:インバータ
Mos1L〜Mos3L、Mos1H〜Mos3H:MOSFET
SuH、SVH、SwH、SuL、SVL、SwL:半導体スイッチング素子
Cs1、Cs2、Cs3:平滑コンデンサ
Cr12、Cr23:コンデンサ Lr12、Lr23:インダクタ
21〜26:演算器 31〜36:反転器
41:AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電極によりオンオフ動作が制御される複数の半導体スイッチング素子と平滑コンデンサとから成る回路を、それぞれコンデンサおよびインダクタの直列体を配して複数個接続し、上記コンデンサの充放電により直流/直流電力変換を行うDC/DCコンバータと、このDC/DCコンバータからの直流電圧を複数の半導体スイッチング素子のオンオフ制御により交流電圧に変換するインバータとを備えた電力変換装置において、上記DC/DCコンバータは、上記インバータへの入力電流がゼロとなる期間に、上記平滑コンデンサに充電された電荷を放電し、上記コンデンサと上記インダクタの直列体にエネルギー移行を行う期間を設けたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
制御電極によりオンオフ動作が制御される複数の半導体スイッチング素子と平滑コンデンサとから成る回路を、それぞれコンデンサおよびインダクタの直列体を配して複数個接続し、上記コンデンサの充放電により直流/直流電力変換を行うDC/DCコンバータと、このDC/DCコンバータからの直流電圧を複数の半導体スイッチング素子のオンオフ制御により交流電圧に変換するインバータとを備えた電力変換装置において、上記DC/DCコンバータの出力電流と、上記インバータへの入力電流のタイミングを一致させるようにしたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
DC/DCコンバータの半導体スイッチング素子のスイッチング周波数と、インバータのキャリア周波数を同期させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
DC/DCコンバータの半導体スイッチング素子のスイッチング周波数は、インバータのキャリア周波数の2倍であることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
インバータとDC/DCコンバータの半導体スイッチング素子のオンオフ制御は、三角波比較方式のPWM制御によるものであり、上記インバータのキャリア信号の山および谷のタイミングと、上記DC/DCコンバータのキャリア信号の山或いは谷のタイミングを一致させたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項6】
インバータとDC/DCコンバータの半導体スイッチング素子のオンオフ制御は、同一のキャリア信号を元に比較演算を行う三角波比較方式のPWM制御によるものであり、上記DC/DCコンバータの半導体スイッチング素子の制御信号は、少なくとも2つ以上の指令値を元に比較演算を行うことで生成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−86157(P2008−86157A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264950(P2006−264950)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】