説明

電力変換装置

【課題】低コスト,低損失で、双方向動作においてソフトスイッチングが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】第1のスイッチング素子15と並列にコンデンサ31と、ダイオード7,変圧器22の一次巻線および第3のスイッチング素子17からなる直列回路とを接続し、第2のスイッチング素子18と並列にコンデンサ71と第4のスイッチング素子20と変圧器22の一次巻線およびダイオード13からなる直列回路とを接続し、さらに直流出力端子間にダイオード10と前記変圧器22の二次巻線との直列回路を、前記変圧器一次巻線と並列に電圧クランプ手段30を接続し、双方向の電力変換を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング素子を用いて直流電源または交流電源から直流を作り出す電力変換装置、特に双方向の動作が可能な電力変換装置のソフトスイッチング機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回路として、特許文献1に開示の図3のような回路がある。
これは単相交流電源の例で、ダイオード2〜5からなるダイオードブリッジ回路、リアクトル21、ダイオード6およびスイッチング素子15からなるチョッパ回路で整流回路が構成されている。
ここで、スイッチング素子15をオンさせると、交流電源1はダイオードブリッジ回路とリアクトル21を介して短絡され、リアクトル21にはエネルギーが蓄えられるとともに交流入力電流は増加する。
【0003】
次に、スイッチング素子15をオフさせると、リアクトル21に蓄えられたエネルギーは、ダイオード6を通して直流出力となるコンデンサ33と負荷34に供給される。
このように、スイッチング素子15のオン・オフ制御によって、整流された交流電圧(直流電圧)を任意の直流電圧に変換する。また、コンデンサ31、ダイオード7,9,10、電圧クランプ素子30、変圧器22およびスイッチング素子17により、チョッパ回路のソフトスイッチング回路が形成されている。
【0004】
図3Aに図3の動作波形例を示す。
いま、スイッチング素子17をオンさせると、期間t1ではリアクトル21→ダイオード6→コンデンサ33→ダイオードブリッジ回路40→交流電源1→リアクトル21の経路で流れていた電流が、変圧器22の漏れインダクタンスの影響により、リアクトル21→ダイオード7→変圧器22の一次巻線22a→スイッチング素子17→ダイオードブリッジ回路40→交流電源1→リアクトル21の経路に徐々に転流する。このとき、スイッチング素子17に流れる電流は零から徐々に増加するので、スイッチング素子17のターンオン時のソフトスイッチングが行なわれる。
【0005】
次に、スイッチング素子17に流れる電流がリアクトル21に流れる電流値と等しくなると期間t2が始まり、ダイオード6がオフする。このとき、ダイオード6の電流は徐々に零となるので、逆回復時のサージ電圧や逆回復損失が低減される。同時に、コンデンサ31(スイッチング素子15の寄生容量でもよい)に蓄えられている電流が、コンデンサ31→ダイオード7→変圧器22の一次巻線22a→スイッチング素子17→コンデンサ31の経路で放電し、コンデンサ31に蓄えられていた電荷は、変圧器22の二次巻線22bとダイオード10を介して出力側へ回生される。
【0006】
さらに、期間t3において、スイッチング素子15の電圧が零になった後、スイッチング素子15をオンすると、スイッチング素子15には変圧器22の一次巻線22aに流れる電流と、リアクトル21に流れる電流との差分の電流が流れるので、スイッチング素子15に流れる電流は寄生ダイオード12が電流を流し、零以下の電流値から徐々に上昇する。従って、スイッチング素子15ではターンオン時のソフトスイッチングが実現する。
【0007】
その後、リアクトル21→ダイオード7→変圧器22の一次巻線22a→スイッチング素子17→ダイオードブリッジ回路40→交流電源1→リアクトル21の経路で流れていた電流は、リアクトル21→スイッチング素子15→→ダイオードブリッジ回路40→交流電源1→リアクトル21の経路に徐々に転流するとともに、変圧器22の漏れインダクタンスに蓄えられているエネルギーは、変圧器22の二次巻線22bとダイオード10を介して出力側に供給され、スイッチング素子17に流れる電流は徐々に低下して零になる。スイッチング素子17は電流が零になってからオフするので、ターンオフ時のソフトスイッチングが実現する。
【0008】
一方、スイッチング素子15がオフするときには、コンデンサ31に電流が流れることによって、スイッチング素子15の電圧が徐々に上昇するので、ターンオフ損失は低減される。このように、スイッチング素子15と17のソフトスイッチングが行なわれる。
さらに、期間t4では、変圧器22の一次巻線22aに、電圧クランプ素子30によってクランプされる電圧と等しいリセット電圧が発生し、変圧器22の二次巻線22bには一次巻線の巻数比倍の電圧が発生し、ダイオード10には直流出力電圧と変圧器22の二次巻線電圧との和が印加される。ここで、電圧クランプ素子30のクランプ電圧を低く設定することにより、ダイオード10に印加される電圧を低減できる。
【0009】
図4に、上記特許文献1に開示の別の従来例を示す。
図4ではリアクトル21、ダイオード2〜5およびスイッチング素子15,16により整流回路が構成されている。整流回路のダイオード3には並列にスイッチング素子15とコンデンサ31が、ダイオード5には並列にスイッチング素子16とコンデンサ32が、またダイオード2,3の直列接続点とダイオード4,5の直列接続点との間にはリアクトル21を介して交流電源1が、さらにダイオードブリッジ回路の直流端子間にはコンデンサ33と負荷34がそれぞれ接続されている。
【0010】
ここで、ダイオード3はスイッチング素子15の寄生ダイオードで、ダイオード5はスイッチング素子16の寄生ダイオードでそれぞれ代用することができる。また、ダイオード7〜10、スイッチング素子17、変圧器22、電圧クランプ素子30で整流回路のソフトスイッチング回路が構成されている。
【0011】
図4Aに、図4の動作波形例を示す。
交流電源電圧が正の場合、スイッチング素子15をオンすると、交流電源1→リアクトル21→スイッチング素子15→ダイオード5→交流電源1の経路で交流入力電流が増加し、リアクトル21にエネルギーが蓄えられる。次に、スイッチング素子15がオフすると、リアクトル21→ダイオード2→コンデンサ33→ダイオード5→交流電源1→リアクトル21の経路でリアクトル21のエネルギーが直流出力側に供給される。従って、交流電源電圧が正のときにはスイッチング素子15をオン・オフ制御することにより、交流電源電圧を任意の直流電圧に変換することができる。同様に、交流電源電圧が負のときにはスイッチング素子16をオン・オフさせることにより、交流電源電圧を任意の直流電圧に変換することができる。
【0012】
ここで、図4では図3におけるダイオード7の代わりにダイオード7と8が接続され、交流電源電圧が正の時にはダイオード8が、交流電源電圧が負の時にはダイオード7が図3のダイオード7の役割を果たしている。交流電源電圧が正の時にはスイッチング素子15がオン・オフするので、コンデンサ31に蓄えられる電荷が図3の場合と同様の動作で、直流出力側に回生される。ただし、交流電源電圧が正の時にはダイオード5には常に電流が流れているので、コンデンサ32には電荷は蓄えられない。
【0013】
一方、交流電源電圧が負の時には同様に、コンデンサ32に蓄えられる電荷が図3の場合と同様の動作で、負荷側に回生される。従って、図4に示す回路でも図3と同様の動作となり、スイッチング素子15,16,17およびダイオード2,4はソフトスイッチング動作を行なう。さらに、図3と同様にダイオード10には、直流出力電圧と変圧器22の二次巻線電圧との和の電圧が印加されるので、電圧クランプ素子30のクランプ電圧を低く設定することによって、ダイオード10に印加される電圧を低減することができる。
【0014】
ところで、双方向の電力変換を行なうには、例えば特許文献2のように降圧チョッパと昇圧チョッパを組み合わせる方法があり、その昇圧チョッパとして例えば特許文献3のような補助スイッチを備えた昇圧チョッパを用いることも考えられるが、このようにすると
回路構成素子数が増え、大型かつ高価になる。
そこで、図3や図4の従来回路で双方向の電力変換を実現することが考えられるが、図3ではダイオード6、図4ではダイオード2,4をスイッチング素子に置き換える必要があり、置き換えられた素子のソフトスイッチング動作ができないという問題が生じる。
【0015】
【特許文献1】特開2004−147475号公報
【特許文献2】特開昭64−064557号公報
【特許文献3】特開平05−328714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、この発明の課題は、双方向の電力変換回路においても、低コスト,低損失でソフトスイッチング動作を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、直流入力端子間にリアクトルと第1のスイッチング素子との直列回路を、この第1のスイッチング素子と並列に第2のスイッチング素子と両端が直流出力となる出力コンデンサとの直列回路を、この出力コンデンサと並列に負荷を、それぞれ接続した電力変換装置において、
前記第1のスイッチング素子と並列にコンデンサと、ダイオード,変圧器一次巻線および第3のスイッチング素子からなる直列回路とを接続し、前記第2のスイッチング素子と並列にコンデンサと、第4のスイッチング素子,前記変圧器一次巻線およびダイオードからなる直列回路とを接続し、さらに直流出力端子間にダイオードと前記変圧器二次巻線との直列回路を、前記変圧器一次巻線と並列に電圧クランプ手段を、それぞれ接続したことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2の発明では、2つのスイッチング素子の直列接続回路をN(2以上の自然数)個並列接続し、第1の直列接続回路の2つのスイッチング素子の内部接続点とN相の交流電源との間にリアクトルを、前記N個の直列接続回路の並列接続点間に両端が直流出力となる出力コンデンサを、この出力コンデンサと並列に負荷を、それぞれ接続した電力変換装置において、
コンデンサが並列接続された2つのスイッチング素子からなる直列接続回路の内部接続点の各々にダイオードのアノード端子を、これら各ダイオードのカソード端子を一括して接続し、これらダイオードのカソード端子と直流出力端子の一方との間に、変圧器の一次巻線とスイッチング素子との直列回路を、コンデンサが並列接続された2つのスイッチング素子からなる直列接続回路の内部接続点の各々にダイオードのカソード端子を、これら各ダイオードのアノード端子を一括して接続し、これらダイオードのアノード端子と直流出力端子の他方との間に、変圧器の一次巻線とスイッチング素子との直列回路を、直流出力端子間にダイオードと前記変圧器二次巻線との直列回路を、前記変圧器一次巻線と並列に電圧クランプ手段を、それぞれ接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、双方向の電力変換回路においても、最小限の回路を付加するだけで、ソフトスイッチング動作が可能となり、損失を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はこの発明の実施の形態を示す回路構成図である。
図1のように、この例は交流電源1や整流回路40の代わりに直流電源51を用いた点が特徴である。また、ダイオード6と並列にスイッチング素子18を接続し、直流電源51、リアクトル21、ダイオード6,12およびスイッチング素子15,18でチョッパ回路を構成している。
【0021】
上記チョッパ回路のスイッチング素子15をオン・オフすることで、直流電源側から負荷側へ電力を供給し、スイッチング素子18をオン・オフすることで負荷側から直流電源側へ電力を回生することができる。またダイオード7,9,10,41,42、スイッチング素子17,20、変圧器22、電圧クランプ素子30により、ソフトスイッチング回路が構成されている。ここで、直流電源側から負荷側へ電力を供給する場合は、図3の従来例と同様に、スイッチング素子15,17およびダイオード6をソフトスイッチング動作させる。従来例と異なるのは、負荷側から直流電源側へ電力を回生する場合でも、わずかな部品点数を追加するだけでソフトスイッチング動作を可能にした点であり、以下にその動作を詳細に説明する。
【0022】
図1において、スイッチング素子18をオンさせると、コンデンサ33の蓄積エネルギーは、コンデンサ33→スイッチング素子18→リアクトル21→直流電源51の経路でリアクトル21に移るとともに、直流電源51に回生される。次に、スイッチング素子18をオフすると、リアクトル21に移ったエネルギーは、リアクトル21→直流電源51→ダイオード12の経路で直流電源51に回生される。このように、スイッチング素子18のオン・オフ制御によって、負荷側のコンデンサ蓄積エネルギーが直流電源側へ回生される。
【0023】
また、コンデンサ71、ダイオード9,10,41,42、電圧クランプ素子30、変圧器22およびスイッチング素子20により、負荷側から直流電源側へ電力を回生する動作モードのソフトスイッチング回路を構成している。この場合、図3と同様にダイオード9,10、電圧クランプ素子30および変圧器22は、直流電源側から負荷側へ電力を供給するモードのソフトスイッチング回路としても兼用される。
【0024】
図1Aは、図1の動作説明図である。
いま、スイッチング素子20をオンさせると、期間t1でコンデンサ71(スイッチング素子18の寄生容量でも良い)に蓄えられていた電荷が、コンデンサ71→スイッチング素子20→変圧器22の一次巻線→ダイオード42の経路で放電し、コンデンサ71に蓄えられていた電荷は変圧器22の二次巻線とダイオード10を介して出力側へ回生される。このとき、スイッチング素子20に流れる電流は、変圧器22の漏れインダクタンスにより零から徐々に増加するので、スイッチング素子20のターンオフ時のソフトスイッチングが行なわれる。
【0025】
次に、スイッチング素子20に流れる電流がリアクトル21に流れる電流値に等しくなると期間t2が始まり、ダイオード12がオフする。このとき、ダイオード12の電流は徐々に零となるので、逆回復時のサージ電圧や逆回復損失が低減される。さらに、期間t3においてスイッチング素子18の電圧が零になった後にスイッチング素子18をオンすると、スイッチング素子18には変圧器22の一次巻線に流れる電流とリアクトル21に流れる電流との差分の電流が流れるので、スイッチング素子18に流れる電流はダイオード6が電流を流し、零以下の電流値から徐々に上昇する。従って、スイッチング素子18のターンオフ時のソフトスイッチングが実現する。
【0026】
一方、スイッチング素子15がオフするときには、コンデンサ31に電流が流れることによって、徐々にスイッチング素子15の電圧が上昇するので、ターンオフ損失は低減される。このように、スイッチング素子15と18のターンオフ時のソフトスイッチングが行なわれる。さらに、期間t4では、変圧器22の一次巻線に、電圧クランプ素子30によってクランプされる電圧と等しいリセット電圧が発生し、変圧器22の二次巻線には一次巻線の巻線比倍の電圧が発生し、ダイオード10には直流出力電圧と変圧器22の二次巻線電圧との和の電圧が印加される。ここで、電圧クランプ素子30のクランプ電圧を低く設定することで、ダイオード10に印加される電圧を低減できる。
【0027】
図2はこの発明の別の実施の形態を示す回路図である。
図示のように、図2ではリアクトル21、ダイオード2〜5、スイッチング素子15,16,18,19で整流回路が構成される。ダイオード2〜5で構成されたダイオードブリッジ整流回路のダイオード2には、並列にスイッチング素子18とコンデンサ71が、ダイオード3には並列にスイッチング素子15とコンデンサ31が、ダイオード4には並列にスイッチング素子19とコンデンサ72が、ダイオード5には並列にスイッチング素子16とコンデンサ32が、ダイオード2と3との直列接続点とダイオード4と5との直列接続点との間にはリアクトル21を介して交流電源1が、それぞれ接続される。ここで、ダイオード2〜5はスイッチング素子15,16,18,19の各寄生ダイオードで代用することができる。
【0028】
また、ダイオード7〜10,13,41〜43、スイッチング素子17,20、変圧器22および電圧クランプ素子30により、ソフトスイッチング回路が構成されている。具体的には、ダイオード8のアノードをダイオード2と3との直列接続点に、ダイオード7のアノードをダイオード4と5との直列接続点に、ダイオード42のカソードをダイオード2と3との直列接続点に、ダイオード43のカソードをダイオード4と5との直列接続点に、ダイオード7と8のカソードとダイオード41を並列接続したスイッチング素子20のソース端子とを変圧器22の一次巻線の一方の端子に、ダイオード42と43のアノードとダイオード13を並列接続したスイッチング素子17のドレイン端子とを変圧器22の一次巻線の他方の端子に、スイッチング素子20のドレイン端子を直流出力の正極端子に、スイッチング素子17のソース端子を直流出力の負極端子に、ダイオード9と電圧クランプ素子30の直列回路を変圧器22の一次巻線と並列に、ダイオード10と変圧器22の二次巻線との直列回路を直流出力であるコンデンサ33と並列に、それぞれ接続して構成される。ダイオード13,41はスイッチング素子17,20の各寄生ダイオードで代用することができる。
【0029】
図2で交流電源側から負荷側へ電力供給する場合、第2の従来例図4と同様に、スイッチング素子15,16,17およびダイオード2,4でソフトスイッチングが行なわれる。従来例との相違点は、負荷側から交流電源側へ電力を回生する場合でも、僅かな部品点数の追加でソフトスイッチングを行なうことができ、以下にその動作について説明する。
【0030】
図2の構成で交流電源電圧が正の場合、スイッチング素子16,18をオンすると、コンデンサ33の蓄積エネルギーは、コンデンサ33→スイッチング素子18→リアクトル21→交流電源1→スイッチング素子16の経路でリアクトル21に移るとともに、交流電源1に回生される。次に、スイッチング素子18をオフにすると、リアクトル21に移ったエネルギーは、リアクトル21→交流電源1→スイッチング素子16→ダイオード3の経路で交流電源1に回生される。
【0031】
また、交流電源電圧が負の場合、スイッチング素子19,15をオンすると、コンデンサ33の蓄積エネルギーは、コンデンサ33→スイッチング素子19→交流電源1→リアクトル21→スイッチング素子15の経路でリアクトル21に移るとともに、交流電源1に回生される。次に、スイッチング素子19をオフにすると、リアクトル21に移ったエネルギーは、リアクトル21→交流電源1→スイッチング素子15→ダイオード5の経路で交流電源1に回生される。このように、スイッチング素子18または19のオン・オフ制御により、負荷側の蓄積エネルギーが交流電源側に回生される。
【0032】
また、コンデンサ71,72、ダイオード9,10,41,42,43、電圧クランプ素子30、変圧器22およびスイッチング素子20は、負荷側から交流電源側へ電力を回生する動作モードのソフトスイッチング回路を形成している。ここで、図4について説明したように、ダイオード9,10、電圧クランプ素子30および変圧器22は、交流電源側から負荷側へ電力を供給するモードのソフトスイッチング回路としても兼用される。
【0033】
図2Aは、図2の動作説明図である。
いま、交流電源電圧が正の場合は、スイッチング素子20をオンすることにより、期間t1でコンデンサ71(スイッチング素子18の寄生容量でも良い)に蓄えられた電荷が、コンデンサ71→スイッチング素子20→変圧器22の一次巻線→ダイオード42の経路で放電し、コンデンサ71に蓄えられた電荷は変圧器22の二次巻線とダイオード10を介して出力側へ回生される。このとき、スイッチング素子20に流れる電流は、変圧器22の漏れインダクタンスにより零から徐々に増加するので、スイッチング素子20ではターンオン時のソフトスイッチングが行なわれる。
【0034】
次に、スイッチング素子20に流れる電流がリアクトル21に流れる電流と等しくなると期間t2が始まり、ダイオード3がオフする。このとき、ダイオード3の電流は徐々に零となるので、逆回復時のサージ電圧や逆回復損失が低減される。さらに、期間t3において、スイッチング素子18の電圧が零になった後にスイッチング素子18がオンすると、スイッチング素子18には変圧器22の一次巻線に流れる電流と、リアクトル21に流れる電流との差分の電流が流れるので、スイッチング素子18に流れる電流はダイオード2が電流を流し、零以下の電流値から徐々に上昇する。従って、スイッチング素子18ではターンオン時のソフトスイッチングが行なわれる。
【0035】
一方、スイッチング素子18がオフするときには、コンデンサ71に電流が流れることによって、徐々にスイッチング素子18の電圧が上昇するので、ターンオフ損失は低減される。このように、スイッチング素子18と20のソフトスイッチングが行なわれる。
さらに、期間t4では、変圧器22の一次巻線に、電圧クランプ素子30によってクランプされる電圧と等しいリセット電圧が発生し、変圧器22の二次巻線には一次巻線の巻数比倍の電圧が発生し、ダイオード10には直流出力電圧と変圧器22の二次巻線電圧との和が印加される。ここで、電圧クランプ素子30のクランプ電圧を低く設定することにより、ダイオード10に印加される電圧を低減することができる。
【0036】
交流電源電圧が負のときには、上記と同様にコンデンサ72に蓄えられている電荷が負荷側に回生される。従って、図2の整流回路も図1と同様に動作し、スイッチング素子15,16,17,18,19,20およびダイオード2,3,4,5ではソフトスイッチング動作が行なわれることになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路図
【図1A】図1の動作説明図
【図2】この発明の他の実施の形態を示す回路図
【図2A】図2の動作説明図
【図3】第1の従来例を示す回路図
【図3A】図3の動作説明図
【図4】第2の従来例を示す回路図
【図4A】図4の動作説明図
【符号の説明】
【0038】
1…交流電源、2〜10,12,13,41〜43…ダイオード、15〜20…スイッチング素子、21…リアクトル、22a…変圧器一次巻線、22b…変圧器二次巻線、30…電圧クランプ素子、31,32,71,72…コンデンサまたは寄生容量、33…コンデンサ、34…負荷、40…ダイオードブリッジ回路、51…直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力端子間にリアクトルと第1のスイッチング素子との直列回路を、この第1のスイッチング素子と並列に第2のスイッチング素子と両端が直流出力となる出力コンデンサとの直列回路を、この出力コンデンサと並列に負荷を、それぞれ接続した電力変換装置において、
前記第1のスイッチング素子と並列にコンデンサと、ダイオード,変圧器一次巻線および第3のスイッチング素子からなる直列回路とを接続し、前記第2のスイッチング素子と並列にコンデンサと、第4のスイッチング素子,前記変圧器一次巻線およびダイオードからなる直列回路とを接続し、さらに直流出力端子間にダイオードと前記変圧器二次巻線との直列回路を、前記変圧器一次巻線と並列に電圧クランプ手段を、それぞれ接続したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
2つのスイッチング素子の直列接続回路をN(2以上の自然数)個並列接続し、第1の直列接続回路の2つのスイッチング素子の内部接続点とN相の交流電源との間にリアクトルを、前記N個の直列接続回路の並列接続点間に両端が直流出力となる出力コンデンサを、この出力コンデンサと並列に負荷を、それぞれ接続した電力変換装置において、
コンデンサが並列接続された2つのスイッチング素子からなる直列接続回路の内部接続点の各々にダイオードのアノード端子を、これら各ダイオードのカソード端子を一括して接続し、これらダイオードのカソード端子と直流出力端子の一方との間に、変圧器の一次巻線とスイッチング素子との直列回路を、コンデンサが並列接続された2つのスイッチング素子からなる直列接続回路の内部接続点の各々にダイオードのカソード端子を、これら各ダイオードのアノード端子を一括して接続し、これらダイオードのアノード端子と直流出力端子の他方との間に、変圧器の一次巻線とスイッチング素子との直列回路を、直流出力端子間にダイオードと前記変圧器二次巻線との直列回路を、前記変圧器一次巻線と並列に電圧クランプ手段を、それぞれ接続したことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【公開番号】特開2009−207292(P2009−207292A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47706(P2008−47706)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】