電力変換装置
【課題】生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供すること。
【解決手段】複数の半導体モジュール2と、複数の半導体モジュール2を冷却するための複数の冷却管3とを積層配置してなると共に、複数の半導体モジュール2を外部と電気的に接続するためのバスバー4を備えた電力変換装置1。半導体モジュール2は、積層方向に直交する方向に突出したパワー端子21を有する。パワー端子21は、バスバー4に対して少なくとも先端部211を接触させた状態で接合されている。バスバー端子部40は、積層方向に複数個、所定の間隔をもって形成されている。パワー端子21とバスバー端子部40との少なくとも一方は可撓性を有する。バスバー端子部40は、パワー端子21との対向面41が半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜している。
【解決手段】複数の半導体モジュール2と、複数の半導体モジュール2を冷却するための複数の冷却管3とを積層配置してなると共に、複数の半導体モジュール2を外部と電気的に接続するためのバスバー4を備えた電力変換装置1。半導体モジュール2は、積層方向に直交する方向に突出したパワー端子21を有する。パワー端子21は、バスバー4に対して少なくとも先端部211を接触させた状態で接合されている。バスバー端子部40は、積層方向に複数個、所定の間隔をもって形成されている。パワー端子21とバスバー端子部40との少なくとも一方は可撓性を有する。バスバー端子部40は、パワー端子21との対向面41が半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを冷却するための複数の冷却管とを積層配置してなると共に、上記複数の半導体モジュールを外部と電気的に接続するためのバスバーを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータ等の電力変換装置9として、図14に示すごとく、スイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュール92と、該複数の半導体モジュール92を冷却するための複数の冷却管93とを積層配置してなるものがある。そして、上記複数の半導体モジュール92は、回転電機(モータージェネレーター)や電源などと、バスバー94によって接続されている(特許文献1)。
【0003】
上記半導体モジュール92は、積層方向Xに直交する方向に突出したパワー端子921を有し、パワー端子921がバスバー94に接合されている。そして、バスバー94におけるパワー端子921が接続されるバスバー端子部940は、積層方向Xに複数個、所定の間隔をもって形成されている。
このバスバー端子部940の配設ピッチは、複数のパワー端子921の配置に合わせてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4052241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パワー端子921のピッチは、必ずしも設計通りにはならず、製造誤差が生じることがある。特に複数の半導体モジュール92と複数の冷却管93とを積層したときには、各半導体モジュール92及び各冷却管93の寸法誤差が累積して、設計通りの位置にパワー端子921を配置することができない場合もある。
【0006】
この場合、予め配設ピッチを固定したバスバー端子部940に、すべてのパワー端子921を接合する際、部分的に、図15に示すようにパワー端子921とバスバー端子部940との間が離れてしまったり、図16に示すごとく、逆に近づきすぎてしまってパワー端子921が湾曲し、その先端部922がバスバー端子部940から離れてしまったりすることがある。
【0007】
このような場合には、接合時において、パワー端子921を強制的に変形させてバスバー端子部940に接触させる必要が生じる。すなわち、例えば、半導体モジュール92と冷却管93とを積層した状態において、パワー端子921とバスバー端子部940とを溶接する際、パワー端子921とバスバー端子部940とを両側から治具によって挟み込んで、両者を密着させる必要がある。
そのため、組み立て時の作業効率において不利であり、上記電力変換装置9は、生産性に優れたものとは言い難い。
【0008】
また、上記のごとく、治具によってパワー端子921とバスバー端子部940とを挟み込んで溶接するため、溶接後の状態においては、パワー端子921とバスバー端子部940とが互いに離れる方向に付勢された状態となることもある。この場合、耐久後に、パワー端子921とバスバー端子部940との接合信頼性が低下するおそれもある。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを冷却するための複数の冷却管とを積層配置してなると共に、上記複数の半導体モジュールを外部と電気的に接続するためのバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールは、積層方向に直交する方向に突出したパワー端子を有し、
該パワー端子は、上記バスバーに対して少なくとも先端部を接触させた状態で接合されており、
上記バスバーにおける上記パワー端子が接続されるバスバー端子部は、積層方向に複数個、所定の間隔をもって形成されており、
上記パワー端子と上記バスバー端子部との少なくとも一方は可撓性を有し、
上記バスバー端子部は、上記パワー端子との対向面が上記半導体モジュールの本体部側へ傾斜していることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置において、上記バスバー端子部は、上記対向面が上記半導体モジュールの本体部側へ傾斜している。そのため、上記パワー端子の位置が設計通りの位置に対して積層方向に多少ずれていても、パワー端子とバスバー端子部とを互いに密着させやすくすることができる。
【0012】
すなわち、上記バスバー端子部の対向面が上記のように傾斜していることにより、パワー端子とバスバー端子部との少なくとも一方が弾性変形することで、パワー端子の位置ずれを吸収して両者を密着させることができる。例えば、パワー端子の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部から遠ざかる位置に配された場合には、パワー端子の先端部付近のみがバスバー端子部に密着する。一方、パワー端子の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部に近づく位置に配された場合には、パワー端子又はバスバー端子部が比較的大きく変形し、比較的広い範囲でパワー端子とバスバー端子部とが密着することとなる。
【0013】
これにより、半導体モジュールと冷却管とを積層した状態において、パワー端子とバスバー端子部とを接合する際、パワー端子とバスバー端子部とを両側から治具によって挟み込むなどの操作を行わなくても、両者を密着させることができる。そのため、組み立て時の作業効率を向上させ、上記電力変換装置の生産性を向上させることができる。
【0014】
また、接合後の状態においても、パワー端子とバスバー端子部とが互いに押圧する力が働いた状態とすることができるため、パワー端子とバスバー端子部との優れた接合信頼性を確保することができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、電力変換装置の側面図。
【図2】実施例1における、バスバーを省略した電力変換装置の平面図。
【図3】実施例1における、バスバーと半導体モジュールとの平面図。
【図4】実施例1における、バスバーを接合した半導体モジュールの斜視図。
【図5】実施例1における、バスバーのアッセンブリと積層体とを接続する前の状態を示す側面図。
【図6】実施例1における、設計通りの位置に配されたパワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図7】実施例1における、設計通りの位置に対してバスバー端子部から遠ざかる位置に配されたパワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図8】実施例1における、設計通りの位置に対してバスバー端子部に近づく位置に配されたパワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図9】実施例1における、積層方向の両端の半導体モジュールの間の距離が設計値よりも大きい場合の電力変換装置の側面図。
【図10】実施例1における、積層方向の両端の半導体モジュールの間の距離が設計値よりも小さい場合の電力変換装置の側面図。
【図11】実施例2における、パワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図12】実施例2における、パワー端子とバスバー端子部とを接合する前の状態の説明図。
【図13】実施例3における、パワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図14】従来の電力変換装置の側面図。
【図15】パワー端子がバスバー端子部から離れた状態の側面図。
【図16】パワー端子がバスバー端子部に近づきすぎた状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、上記バスバーとしては、例えば、電力変換装置に被制御電力を供給する電源の正極又は負極に接続されるものや、電力変換装置の出力側に接続される回転電機等の負荷に接続されるものなどがある。
【0018】
また、上記バスバー端子部は、上記パワー端子よりも剛性が高いことが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記パワー端子が上記バスバー端子部の対向面に追従するように変形して、バスバー端子部に密着する。そのため、予め所定の間隔をもって形成されたバスバー端子部は動かない。それゆえ、パワー端子の先端部においてバスバー端子部と接合する際に、その作業効率を向上させることができる。すなわち、接合位置が変動しないため、例えば、溶接ロボット等によって溶接することが容易となる。
【0019】
また、上記パワー端子は、該パワー端子の先端部が上記バスバー端子部を押圧するように付勢されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、パワー端子がバスバー端子部を押圧した状態で接合されているため、パワー端子とバスバー端子部との一層優れた接合信頼性を確保することができる。
【0020】
また、上記パワー端子の突出方向から見たとき、上記複数の半導体モジュールにおける上記パワー端子の付根部は、その積層方向位置が、上記バスバー端子部の上記対向面の範囲内にあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記パワー端子の先端部を、より確実にバスバー端子部に接触させることができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図10を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1、図2に示すごとく、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュール2と、該複数の半導体モジュール2を冷却するための複数の冷却管3とを積層配置してなると共に、複数の半導体モジュール2を外部と電気的に接続するためのバスバー4を備えている。
【0022】
半導体モジュール2は、図1、図4に示すごとく、積層方向Xに直交する方向に突出したパワー端子21を有する。パワー端子21は、バスバー4に対して少なくとも先端部211を接触させた状態で接合されている。
図1〜図3に示すごとく、バスバー4におけるパワー端子21が接続されるバスバー端子部40は、積層方向Xに複数個、所定の間隔をもって形成されている。
パワー端子21は可撓性を有する。
バスバー端子部40は、図1、図4に示すごとく、パワー端子21との対向面41が半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜している。
【0023】
バスバー端子部40は、パワー端子21よりも剛性が高い。そして、図1、図4に示すごとく、パワー端子21が接触した状態においては、パワー端子21がバスバー端子部40の対向面41に追従するように変形し、バスバー端子部40は変形しない。
また、パワー端子21は、該パワー端子21の先端部211がバスバー端子部40を押圧するように付勢されている。すなわち、パワー端子21としては、例えば銅もしくは銅合金等からなる薄板状または板バネ状のものを採用することができる。
一方、バスバー4は、例えば銅もしくは銅合金等からなり、厚板状で充分な剛性を有する。
【0024】
また、パワー端子21の突出方向(図1の矢印Z)から見たとき、複数の半導体モジュール2におけるパワー端子21の付根部212は、その積層方向Xの位置が、バスバー端子部40の対向面41の範囲内にある。
【0025】
本例の電力変換装置1は、半導体モジュール2と冷却管3とを交互に積層してなり、半導体モジュール2の両主面に冷却管3が接触配置されている。各冷却管3は、内部に水などの冷却媒体を流通させる冷媒流路を設けてなる。また、図2に示すごとく、複数の冷却管3は、その長手方向の両端において、互いに連結管31によって連結されている。また、積層方向の一端に配された冷却管3には、冷却媒体を導入するための冷媒導入口321と、冷却媒体を排出するための冷媒排出口322とが設けてある。
【0026】
これにより、冷媒導入口321から導入された冷却媒体が、複数の冷却管3の冷媒流路を流れる。このとき、冷却媒体は半導体モジュール2との間で熱交換を行い、半導体モジュール2を冷却する。そして、熱交換を行った後の冷却媒体は、冷却管3の他端から連結管31を介して冷媒排出口322へ排出される。
【0027】
隣り合う一対の冷却管3の間には、2個の半導体モジュール2が、冷却管3の長手方向に並んで配設されている。この2個の半導体モジュール2のうち、一方が電極の正極側に接続されるハイサイド側の半導体モジュール2であり、他方が電極の負極側に接続されるローサイド側の半導体モジュール2である。
図4に示すごとく、半導体モジュール2は、スイッチング素子を内蔵した本体部22の一方の端面から2本のパワー端子21を突出形成してなる。また、本体部22の他方の端面からは、制御回路基板に接続される複数の制御端子23が突出形成されている。
【0028】
ハイサイド側の半導体モジュール2においては、一方のパワー端子21が電極の正極側に接続される正極側のバスバー(図示略)に接続され、他方のパワー端子21が回転電機に接続される出力用のバスバー4に接続されている(図3)。
ローサイド側の半導体モジュール2においては、一方のパワー端子21が電極の負極側に接続される負極側のバスバー(図示略)に接続され、他方のパワー端子21が回転電機に接続される出力用のバスバー4に接続されている(図3)。
【0029】
半導体モジュール2の本体部22には、スイッチング素子の他に、該スイッチング素子と逆並列接続されたダイオードが内蔵されている。スイッチング素子としては、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いることができ、ダイオードとしては、例えばフライホイールダイオードを用いることができる。
【0030】
出力用のバスバー4としては、図3に示すごとく、独立した3本のバスバー(4u、4v、4w)があり、それぞれ三相交流の回転電機のU相、V相、W相の各電極に接続される。3本のバスバー4u、4v、4wは、部分的にモールド樹脂120内にモールドされて、一体化されている。
各バスバー4は、ハイサイド側の半導体モジュール2における一方のパワー端子21とローサイド側の半導体モジュール2における一方のパワー端子21とに、直列的に接続されている。また、各バスバー4は、ハイサイド側の3つの半導体モジュール2を互いに並列接続すると共に、ローサイド側の3つの半導体モジュール2を互いに並列接続している。
このようにして、3つのバスバー4は、パワー端子21と接続される複数のバスバー端子部40を有し、これらすべてのバスバー端子部40の位置関係は、互いに固定されている。
【0031】
本例の電力変換装置1を組み立てる際、上記のごとく一体化された3本の出力用のバスバー4のサブアッセンブリ12を作製する。このとき、複数のバスバー端子部40を所定の相対位置となるようにする。
一方、バスバー4のアッセンブリ12とは別に、図3、図5に示すごとく、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを積層するとともにとともに、この積層体11を積層方向Xに圧縮して、冷却管3と半導体モジュール2とを密着させる。
【0032】
具体的には、まず、上述のごとく複数の冷却管3をそれぞれの長手方向の両端において連結管31にて連結すると共に、冷媒導入口321及び冷媒排出口322を設けた冷却器を作製しておく。そして、該冷却器における隣り合う冷却管3の間のスペースのそれぞれに、半導体モジュール2を2個ずつ挿入配置する。連結管31は、隣り合う冷却管3の間のスペースが縮むことができるよう変形可能に構成してある。そして、この状態から、冷却器を積層方向Xから加圧して、半導体モジュール2と冷却管3とを密着させる。
【0033】
このように組み立てた複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3との積層体11と、上記バスバー4のアッセンブリ12とを、図5、図1に示すように接合する。すなわち、バスバー4のアッセンブリ12を、積層体11における一方の面から突出した半導体モジュール2のパワー端子21側に配置し(図5)、各バスバー端子部40の対向面41を、各パワー端子21に接触させる(図1)。そして、バスバー端子部40における半導体モジュール2の本体部22から遠い側の端部42と、パワー端子21の先端部211とを揃える。
【0034】
このとき、バスバー端子部40とパワー端子21との位置関係によっては、図4、図6、図8に示すごとく、パワー端子21が弾性変形して、バスバー端子部40の対向面41に追従する。
次いで、バスバー端子部42の端部42とパワー端子21の先端部211とを溶接する。図1等における符号13の部分が溶接部である。溶接は、例えばアーク溶接によって行うことができる。
【0035】
なお、上述した正極側のバスバー及び負極側のバスバーも、図示は省略するが、それぞれ所定のパワー端子21に接合する。ここで、これらのバスバーについても、出力用のバスバー4と同様に、対向面を半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜させた構成とすることもできる。
以上により、電力変換装置1を得ることができる。
【0036】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1において、バスバー端子部40は、対向面41が半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜している。そのため、パワー端子21の位置が設計通りの位置に対して積層方向に多少ずれていても、パワー端子21とバスバー端子部40とを互いに密着させやすくすることができる。
【0037】
すなわち、バスバー端子部40の対向面41が上記のように傾斜していることにより、図4、図6、図8に示すごとく、パワー端子21が弾性変形することで、パワー端子21の位置ずれを吸収して両者を密着させることができる。
【0038】
例えば、パワー端子21の位置が設計通りの位置に配されたときに、図6に示すごとく、バスバー端子部40の約半分の領域にパワー端子21が密着する状態となるようにしたとする。この場合、パワー端子21の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部40から遠ざかる位置に配された場合には、図7に示すごとく、両者の密着面積は小さくなり、場合によってはパワー端子21がほとんど変形せずに、パワー端子21の先端部211付近のみがバスバー端子部40に密着する。
【0039】
一方、パワー端子21の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部40に近づく位置に配された場合には、図8に示すごとく、パワー端子21が比較的大きく変形し、比較的広い範囲でパワー端子21とバスバー端子部40とが密着することとなり、場合によってはバスバー端子部40の対向面41の略全体にパワー端子21が密着する。
【0040】
これにより、半導体モジュール2と冷却管3とを積層した状態において、パワー端子21とバスバー端子部40とを接合する際、パワー端子21とバスバー端子部40とを両側から治具によって挟み込むなどの操作を行わなくても、両者を密着させることができる。そのため、組み立て時の作業効率を向上させ、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。
【0041】
上記のようなパワー端子21の積層方向Xの位置の設計通りの位置からのずれは、半導体モジュール2と冷却管3とを積層してなる電力変換装置1においては防ぎ難い。すなわち、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを積層した積層体11を積層方向Xに加圧した状態で最終的な各半導体モジュール2の位置、すなわちパワー端子21の位置が決まるが、このとき、半導体モジュール2や冷却管3の厚み(積層方向寸法)にばらつきがあると、積層方向Xの両端に配される半導体モジュール2のパワー端子21の間の距離が、設計値からずれることが考えられる。
すなわち、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを積層したとき、半導体モジュール2や冷却管3の厚みの公差が累積して、積層方向Xの両端の半導体モジュール2のパワー端子21の間の距離のずれが大きくなることが考えられる。
【0042】
そして、図1、図9、図10に示すごとく、積層体11とバスバー4のアッセンブリ12とを組み立てる際、例えば、積層方向Xの一端(図では左端)に配置される半導体モジュール2のパワー端子21を基準にして、このパワー端子21の付根部212にバスバー端子部40の対向面41の中心が位置するように、バスバー4を配置する。
【0043】
このとき、積層方向の両端の半導体モジュール2の間の距離が設計値よりも大きくなることもあるが、本発明によれば、図9に示すごとく、他端(図では右端)の半導体モジュール2のパワー端子21が大きく変形しながらバスバー端子部40の対向面41に密着する。一方、積層方向Xの両端の半導体モジュール2の間の距離が設計値よりも小さくなることもあるが、本発明によれば、図10に示すごとく、他端(図では右端)の半導体モジュール2のパワー端子21の変形量が小さくなりながら、その先端部211付近においてバスバー端子部40の対向面41に密着する。
このようにして、積層方向に半導体モジュール2の位置がずれることがあっても、すべての半導体モジュール2のパワー端子21を少なくともその先端部211においてバスバー端子部40に密着させることができ、その状態で接合することができる。
【0044】
また、接合後の状態においても、パワー端子21とバスバー端子部40とが互いに押圧する力が働いた状態とすることができるため、パワー端子21とバスバー端子部40との優れた接合信頼性を確保することができる。
【0045】
また、バスバー端子部40は、パワー端子21よりも剛性が高いため、パワー端子21がバスバー端子部40の対向面41に追従するように変形して、バスバー端子部40に密着する。そのため、予め所定の間隔をもって形成されたバスバー端子部40は動かない。それゆえ、パワー端子21の先端部211においてバスバー端子部40と接合する際に、その作業効率を向上させることができる。すなわち、接合位置が変動しないため、例えば、溶接ロボット等によって溶接することが容易となる。
【0046】
また、パワー端子21は、該パワー端子21の先端部211がバスバー端子部40を押圧するように付勢されている。それゆえ、パワー端子21がバスバー端子部40を押圧した状態で接合されているため、パワー端子21とバスバー端子部40との一層優れた接合信頼性を確保することができる。
【0047】
また、パワー端子21の突出方向Zから見たとき、複数の半導体モジュール2におけるパワー端子21の付根部212は、その積層方向Xの位置が、バスバー端子部40の対向面41の範囲内にある。そのため、パワー端子21の先端部211を、より確実にバスバー端子部40に接触させることができる。
【0048】
以上のごとく、本例によれば、生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【0049】
(実施例2)
本例は、図11、図12に示すごとく、バスバー端子部40の剛性を、パワー端子21よりも低くし、バスバー端子部40を変形させてパワー端子21に追従させて、パワー端子21とバスバー端子部40とを接合した電力変換装置1の例である。
すなわち、例えば、バスバー端子部40を薄板状または板バネ状のものによって構成し、パワー端子21を剛性の高い金属板によって構成する。
【0050】
本例の電力変換装置1を組み立てる際には、図12に示すごとく、バスバー端子部40の対向面41を半導体モジュール2の本体部22側に傾斜させておき、バスバー端子部40の対向面41をパワー端子21に接触させると共にバスバー端子部40を、図11に示すごとく変形させる。
なお、バスバー4のうち、バスバー端子部40の部分のみについて剛性を低くしてもよい。
その他は、実施例1と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0051】
(実施例3)
本例は、図13に示すごとく、パワー端子21とバスバー端子部40との双方を変形させて接触させた電力変換装置1の例である。
例えば、パワー端子21とバスバー端子部40との剛性を略同等としておくと共に、両者に可撓性を持たせておく。これにより、パワー端子21とバスバー端子部40との双方が弾性変形しながら部分的に密着する。
その他は、実施例1と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0052】
上記実施例においては、出力用のバスバー4とパワー端子21との接合部において本発明を適用する例を示したが、電源の正極又は負極に接続される正極側又は負極側のバスバーとパワー端子21との接合部においても、本発明を適用することは可能である。
また、パワー端子21とバスバー4との接合は、溶接の他、例えば、はんだ付けなどを用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
21 パワー端子
211 先端部
22 本体部
3 冷却管
4 バスバー
40 バスバー端子部
41 対向面
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを冷却するための複数の冷却管とを積層配置してなると共に、上記複数の半導体モジュールを外部と電気的に接続するためのバスバーを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータ等の電力変換装置9として、図14に示すごとく、スイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュール92と、該複数の半導体モジュール92を冷却するための複数の冷却管93とを積層配置してなるものがある。そして、上記複数の半導体モジュール92は、回転電機(モータージェネレーター)や電源などと、バスバー94によって接続されている(特許文献1)。
【0003】
上記半導体モジュール92は、積層方向Xに直交する方向に突出したパワー端子921を有し、パワー端子921がバスバー94に接合されている。そして、バスバー94におけるパワー端子921が接続されるバスバー端子部940は、積層方向Xに複数個、所定の間隔をもって形成されている。
このバスバー端子部940の配設ピッチは、複数のパワー端子921の配置に合わせてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4052241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パワー端子921のピッチは、必ずしも設計通りにはならず、製造誤差が生じることがある。特に複数の半導体モジュール92と複数の冷却管93とを積層したときには、各半導体モジュール92及び各冷却管93の寸法誤差が累積して、設計通りの位置にパワー端子921を配置することができない場合もある。
【0006】
この場合、予め配設ピッチを固定したバスバー端子部940に、すべてのパワー端子921を接合する際、部分的に、図15に示すようにパワー端子921とバスバー端子部940との間が離れてしまったり、図16に示すごとく、逆に近づきすぎてしまってパワー端子921が湾曲し、その先端部922がバスバー端子部940から離れてしまったりすることがある。
【0007】
このような場合には、接合時において、パワー端子921を強制的に変形させてバスバー端子部940に接触させる必要が生じる。すなわち、例えば、半導体モジュール92と冷却管93とを積層した状態において、パワー端子921とバスバー端子部940とを溶接する際、パワー端子921とバスバー端子部940とを両側から治具によって挟み込んで、両者を密着させる必要がある。
そのため、組み立て時の作業効率において不利であり、上記電力変換装置9は、生産性に優れたものとは言い難い。
【0008】
また、上記のごとく、治具によってパワー端子921とバスバー端子部940とを挟み込んで溶接するため、溶接後の状態においては、パワー端子921とバスバー端子部940とが互いに離れる方向に付勢された状態となることもある。この場合、耐久後に、パワー端子921とバスバー端子部940との接合信頼性が低下するおそれもある。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを冷却するための複数の冷却管とを積層配置してなると共に、上記複数の半導体モジュールを外部と電気的に接続するためのバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールは、積層方向に直交する方向に突出したパワー端子を有し、
該パワー端子は、上記バスバーに対して少なくとも先端部を接触させた状態で接合されており、
上記バスバーにおける上記パワー端子が接続されるバスバー端子部は、積層方向に複数個、所定の間隔をもって形成されており、
上記パワー端子と上記バスバー端子部との少なくとも一方は可撓性を有し、
上記バスバー端子部は、上記パワー端子との対向面が上記半導体モジュールの本体部側へ傾斜していることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置において、上記バスバー端子部は、上記対向面が上記半導体モジュールの本体部側へ傾斜している。そのため、上記パワー端子の位置が設計通りの位置に対して積層方向に多少ずれていても、パワー端子とバスバー端子部とを互いに密着させやすくすることができる。
【0012】
すなわち、上記バスバー端子部の対向面が上記のように傾斜していることにより、パワー端子とバスバー端子部との少なくとも一方が弾性変形することで、パワー端子の位置ずれを吸収して両者を密着させることができる。例えば、パワー端子の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部から遠ざかる位置に配された場合には、パワー端子の先端部付近のみがバスバー端子部に密着する。一方、パワー端子の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部に近づく位置に配された場合には、パワー端子又はバスバー端子部が比較的大きく変形し、比較的広い範囲でパワー端子とバスバー端子部とが密着することとなる。
【0013】
これにより、半導体モジュールと冷却管とを積層した状態において、パワー端子とバスバー端子部とを接合する際、パワー端子とバスバー端子部とを両側から治具によって挟み込むなどの操作を行わなくても、両者を密着させることができる。そのため、組み立て時の作業効率を向上させ、上記電力変換装置の生産性を向上させることができる。
【0014】
また、接合後の状態においても、パワー端子とバスバー端子部とが互いに押圧する力が働いた状態とすることができるため、パワー端子とバスバー端子部との優れた接合信頼性を確保することができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、電力変換装置の側面図。
【図2】実施例1における、バスバーを省略した電力変換装置の平面図。
【図3】実施例1における、バスバーと半導体モジュールとの平面図。
【図4】実施例1における、バスバーを接合した半導体モジュールの斜視図。
【図5】実施例1における、バスバーのアッセンブリと積層体とを接続する前の状態を示す側面図。
【図6】実施例1における、設計通りの位置に配されたパワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図7】実施例1における、設計通りの位置に対してバスバー端子部から遠ざかる位置に配されたパワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図8】実施例1における、設計通りの位置に対してバスバー端子部に近づく位置に配されたパワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図9】実施例1における、積層方向の両端の半導体モジュールの間の距離が設計値よりも大きい場合の電力変換装置の側面図。
【図10】実施例1における、積層方向の両端の半導体モジュールの間の距離が設計値よりも小さい場合の電力変換装置の側面図。
【図11】実施例2における、パワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図12】実施例2における、パワー端子とバスバー端子部とを接合する前の状態の説明図。
【図13】実施例3における、パワー端子とバスバー端子部との接合部の説明図。
【図14】従来の電力変換装置の側面図。
【図15】パワー端子がバスバー端子部から離れた状態の側面図。
【図16】パワー端子がバスバー端子部に近づきすぎた状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、上記バスバーとしては、例えば、電力変換装置に被制御電力を供給する電源の正極又は負極に接続されるものや、電力変換装置の出力側に接続される回転電機等の負荷に接続されるものなどがある。
【0018】
また、上記バスバー端子部は、上記パワー端子よりも剛性が高いことが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記パワー端子が上記バスバー端子部の対向面に追従するように変形して、バスバー端子部に密着する。そのため、予め所定の間隔をもって形成されたバスバー端子部は動かない。それゆえ、パワー端子の先端部においてバスバー端子部と接合する際に、その作業効率を向上させることができる。すなわち、接合位置が変動しないため、例えば、溶接ロボット等によって溶接することが容易となる。
【0019】
また、上記パワー端子は、該パワー端子の先端部が上記バスバー端子部を押圧するように付勢されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、パワー端子がバスバー端子部を押圧した状態で接合されているため、パワー端子とバスバー端子部との一層優れた接合信頼性を確保することができる。
【0020】
また、上記パワー端子の突出方向から見たとき、上記複数の半導体モジュールにおける上記パワー端子の付根部は、その積層方向位置が、上記バスバー端子部の上記対向面の範囲内にあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記パワー端子の先端部を、より確実にバスバー端子部に接触させることができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図10を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1、図2に示すごとく、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュール2と、該複数の半導体モジュール2を冷却するための複数の冷却管3とを積層配置してなると共に、複数の半導体モジュール2を外部と電気的に接続するためのバスバー4を備えている。
【0022】
半導体モジュール2は、図1、図4に示すごとく、積層方向Xに直交する方向に突出したパワー端子21を有する。パワー端子21は、バスバー4に対して少なくとも先端部211を接触させた状態で接合されている。
図1〜図3に示すごとく、バスバー4におけるパワー端子21が接続されるバスバー端子部40は、積層方向Xに複数個、所定の間隔をもって形成されている。
パワー端子21は可撓性を有する。
バスバー端子部40は、図1、図4に示すごとく、パワー端子21との対向面41が半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜している。
【0023】
バスバー端子部40は、パワー端子21よりも剛性が高い。そして、図1、図4に示すごとく、パワー端子21が接触した状態においては、パワー端子21がバスバー端子部40の対向面41に追従するように変形し、バスバー端子部40は変形しない。
また、パワー端子21は、該パワー端子21の先端部211がバスバー端子部40を押圧するように付勢されている。すなわち、パワー端子21としては、例えば銅もしくは銅合金等からなる薄板状または板バネ状のものを採用することができる。
一方、バスバー4は、例えば銅もしくは銅合金等からなり、厚板状で充分な剛性を有する。
【0024】
また、パワー端子21の突出方向(図1の矢印Z)から見たとき、複数の半導体モジュール2におけるパワー端子21の付根部212は、その積層方向Xの位置が、バスバー端子部40の対向面41の範囲内にある。
【0025】
本例の電力変換装置1は、半導体モジュール2と冷却管3とを交互に積層してなり、半導体モジュール2の両主面に冷却管3が接触配置されている。各冷却管3は、内部に水などの冷却媒体を流通させる冷媒流路を設けてなる。また、図2に示すごとく、複数の冷却管3は、その長手方向の両端において、互いに連結管31によって連結されている。また、積層方向の一端に配された冷却管3には、冷却媒体を導入するための冷媒導入口321と、冷却媒体を排出するための冷媒排出口322とが設けてある。
【0026】
これにより、冷媒導入口321から導入された冷却媒体が、複数の冷却管3の冷媒流路を流れる。このとき、冷却媒体は半導体モジュール2との間で熱交換を行い、半導体モジュール2を冷却する。そして、熱交換を行った後の冷却媒体は、冷却管3の他端から連結管31を介して冷媒排出口322へ排出される。
【0027】
隣り合う一対の冷却管3の間には、2個の半導体モジュール2が、冷却管3の長手方向に並んで配設されている。この2個の半導体モジュール2のうち、一方が電極の正極側に接続されるハイサイド側の半導体モジュール2であり、他方が電極の負極側に接続されるローサイド側の半導体モジュール2である。
図4に示すごとく、半導体モジュール2は、スイッチング素子を内蔵した本体部22の一方の端面から2本のパワー端子21を突出形成してなる。また、本体部22の他方の端面からは、制御回路基板に接続される複数の制御端子23が突出形成されている。
【0028】
ハイサイド側の半導体モジュール2においては、一方のパワー端子21が電極の正極側に接続される正極側のバスバー(図示略)に接続され、他方のパワー端子21が回転電機に接続される出力用のバスバー4に接続されている(図3)。
ローサイド側の半導体モジュール2においては、一方のパワー端子21が電極の負極側に接続される負極側のバスバー(図示略)に接続され、他方のパワー端子21が回転電機に接続される出力用のバスバー4に接続されている(図3)。
【0029】
半導体モジュール2の本体部22には、スイッチング素子の他に、該スイッチング素子と逆並列接続されたダイオードが内蔵されている。スイッチング素子としては、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いることができ、ダイオードとしては、例えばフライホイールダイオードを用いることができる。
【0030】
出力用のバスバー4としては、図3に示すごとく、独立した3本のバスバー(4u、4v、4w)があり、それぞれ三相交流の回転電機のU相、V相、W相の各電極に接続される。3本のバスバー4u、4v、4wは、部分的にモールド樹脂120内にモールドされて、一体化されている。
各バスバー4は、ハイサイド側の半導体モジュール2における一方のパワー端子21とローサイド側の半導体モジュール2における一方のパワー端子21とに、直列的に接続されている。また、各バスバー4は、ハイサイド側の3つの半導体モジュール2を互いに並列接続すると共に、ローサイド側の3つの半導体モジュール2を互いに並列接続している。
このようにして、3つのバスバー4は、パワー端子21と接続される複数のバスバー端子部40を有し、これらすべてのバスバー端子部40の位置関係は、互いに固定されている。
【0031】
本例の電力変換装置1を組み立てる際、上記のごとく一体化された3本の出力用のバスバー4のサブアッセンブリ12を作製する。このとき、複数のバスバー端子部40を所定の相対位置となるようにする。
一方、バスバー4のアッセンブリ12とは別に、図3、図5に示すごとく、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを積層するとともにとともに、この積層体11を積層方向Xに圧縮して、冷却管3と半導体モジュール2とを密着させる。
【0032】
具体的には、まず、上述のごとく複数の冷却管3をそれぞれの長手方向の両端において連結管31にて連結すると共に、冷媒導入口321及び冷媒排出口322を設けた冷却器を作製しておく。そして、該冷却器における隣り合う冷却管3の間のスペースのそれぞれに、半導体モジュール2を2個ずつ挿入配置する。連結管31は、隣り合う冷却管3の間のスペースが縮むことができるよう変形可能に構成してある。そして、この状態から、冷却器を積層方向Xから加圧して、半導体モジュール2と冷却管3とを密着させる。
【0033】
このように組み立てた複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3との積層体11と、上記バスバー4のアッセンブリ12とを、図5、図1に示すように接合する。すなわち、バスバー4のアッセンブリ12を、積層体11における一方の面から突出した半導体モジュール2のパワー端子21側に配置し(図5)、各バスバー端子部40の対向面41を、各パワー端子21に接触させる(図1)。そして、バスバー端子部40における半導体モジュール2の本体部22から遠い側の端部42と、パワー端子21の先端部211とを揃える。
【0034】
このとき、バスバー端子部40とパワー端子21との位置関係によっては、図4、図6、図8に示すごとく、パワー端子21が弾性変形して、バスバー端子部40の対向面41に追従する。
次いで、バスバー端子部42の端部42とパワー端子21の先端部211とを溶接する。図1等における符号13の部分が溶接部である。溶接は、例えばアーク溶接によって行うことができる。
【0035】
なお、上述した正極側のバスバー及び負極側のバスバーも、図示は省略するが、それぞれ所定のパワー端子21に接合する。ここで、これらのバスバーについても、出力用のバスバー4と同様に、対向面を半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜させた構成とすることもできる。
以上により、電力変換装置1を得ることができる。
【0036】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1において、バスバー端子部40は、対向面41が半導体モジュール2の本体部22側へ傾斜している。そのため、パワー端子21の位置が設計通りの位置に対して積層方向に多少ずれていても、パワー端子21とバスバー端子部40とを互いに密着させやすくすることができる。
【0037】
すなわち、バスバー端子部40の対向面41が上記のように傾斜していることにより、図4、図6、図8に示すごとく、パワー端子21が弾性変形することで、パワー端子21の位置ずれを吸収して両者を密着させることができる。
【0038】
例えば、パワー端子21の位置が設計通りの位置に配されたときに、図6に示すごとく、バスバー端子部40の約半分の領域にパワー端子21が密着する状態となるようにしたとする。この場合、パワー端子21の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部40から遠ざかる位置に配された場合には、図7に示すごとく、両者の密着面積は小さくなり、場合によってはパワー端子21がほとんど変形せずに、パワー端子21の先端部211付近のみがバスバー端子部40に密着する。
【0039】
一方、パワー端子21の位置が設計通りの位置に対してバスバー端子部40に近づく位置に配された場合には、図8に示すごとく、パワー端子21が比較的大きく変形し、比較的広い範囲でパワー端子21とバスバー端子部40とが密着することとなり、場合によってはバスバー端子部40の対向面41の略全体にパワー端子21が密着する。
【0040】
これにより、半導体モジュール2と冷却管3とを積層した状態において、パワー端子21とバスバー端子部40とを接合する際、パワー端子21とバスバー端子部40とを両側から治具によって挟み込むなどの操作を行わなくても、両者を密着させることができる。そのため、組み立て時の作業効率を向上させ、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。
【0041】
上記のようなパワー端子21の積層方向Xの位置の設計通りの位置からのずれは、半導体モジュール2と冷却管3とを積層してなる電力変換装置1においては防ぎ難い。すなわち、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを積層した積層体11を積層方向Xに加圧した状態で最終的な各半導体モジュール2の位置、すなわちパワー端子21の位置が決まるが、このとき、半導体モジュール2や冷却管3の厚み(積層方向寸法)にばらつきがあると、積層方向Xの両端に配される半導体モジュール2のパワー端子21の間の距離が、設計値からずれることが考えられる。
すなわち、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを積層したとき、半導体モジュール2や冷却管3の厚みの公差が累積して、積層方向Xの両端の半導体モジュール2のパワー端子21の間の距離のずれが大きくなることが考えられる。
【0042】
そして、図1、図9、図10に示すごとく、積層体11とバスバー4のアッセンブリ12とを組み立てる際、例えば、積層方向Xの一端(図では左端)に配置される半導体モジュール2のパワー端子21を基準にして、このパワー端子21の付根部212にバスバー端子部40の対向面41の中心が位置するように、バスバー4を配置する。
【0043】
このとき、積層方向の両端の半導体モジュール2の間の距離が設計値よりも大きくなることもあるが、本発明によれば、図9に示すごとく、他端(図では右端)の半導体モジュール2のパワー端子21が大きく変形しながらバスバー端子部40の対向面41に密着する。一方、積層方向Xの両端の半導体モジュール2の間の距離が設計値よりも小さくなることもあるが、本発明によれば、図10に示すごとく、他端(図では右端)の半導体モジュール2のパワー端子21の変形量が小さくなりながら、その先端部211付近においてバスバー端子部40の対向面41に密着する。
このようにして、積層方向に半導体モジュール2の位置がずれることがあっても、すべての半導体モジュール2のパワー端子21を少なくともその先端部211においてバスバー端子部40に密着させることができ、その状態で接合することができる。
【0044】
また、接合後の状態においても、パワー端子21とバスバー端子部40とが互いに押圧する力が働いた状態とすることができるため、パワー端子21とバスバー端子部40との優れた接合信頼性を確保することができる。
【0045】
また、バスバー端子部40は、パワー端子21よりも剛性が高いため、パワー端子21がバスバー端子部40の対向面41に追従するように変形して、バスバー端子部40に密着する。そのため、予め所定の間隔をもって形成されたバスバー端子部40は動かない。それゆえ、パワー端子21の先端部211においてバスバー端子部40と接合する際に、その作業効率を向上させることができる。すなわち、接合位置が変動しないため、例えば、溶接ロボット等によって溶接することが容易となる。
【0046】
また、パワー端子21は、該パワー端子21の先端部211がバスバー端子部40を押圧するように付勢されている。それゆえ、パワー端子21がバスバー端子部40を押圧した状態で接合されているため、パワー端子21とバスバー端子部40との一層優れた接合信頼性を確保することができる。
【0047】
また、パワー端子21の突出方向Zから見たとき、複数の半導体モジュール2におけるパワー端子21の付根部212は、その積層方向Xの位置が、バスバー端子部40の対向面41の範囲内にある。そのため、パワー端子21の先端部211を、より確実にバスバー端子部40に接触させることができる。
【0048】
以上のごとく、本例によれば、生産性に優れるとともに、パワー端子とバスバー端子部との接合信頼性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【0049】
(実施例2)
本例は、図11、図12に示すごとく、バスバー端子部40の剛性を、パワー端子21よりも低くし、バスバー端子部40を変形させてパワー端子21に追従させて、パワー端子21とバスバー端子部40とを接合した電力変換装置1の例である。
すなわち、例えば、バスバー端子部40を薄板状または板バネ状のものによって構成し、パワー端子21を剛性の高い金属板によって構成する。
【0050】
本例の電力変換装置1を組み立てる際には、図12に示すごとく、バスバー端子部40の対向面41を半導体モジュール2の本体部22側に傾斜させておき、バスバー端子部40の対向面41をパワー端子21に接触させると共にバスバー端子部40を、図11に示すごとく変形させる。
なお、バスバー4のうち、バスバー端子部40の部分のみについて剛性を低くしてもよい。
その他は、実施例1と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0051】
(実施例3)
本例は、図13に示すごとく、パワー端子21とバスバー端子部40との双方を変形させて接触させた電力変換装置1の例である。
例えば、パワー端子21とバスバー端子部40との剛性を略同等としておくと共に、両者に可撓性を持たせておく。これにより、パワー端子21とバスバー端子部40との双方が弾性変形しながら部分的に密着する。
その他は、実施例1と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0052】
上記実施例においては、出力用のバスバー4とパワー端子21との接合部において本発明を適用する例を示したが、電源の正極又は負極に接続される正極側又は負極側のバスバーとパワー端子21との接合部においても、本発明を適用することは可能である。
また、パワー端子21とバスバー4との接合は、溶接の他、例えば、はんだ付けなどを用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
21 パワー端子
211 先端部
22 本体部
3 冷却管
4 バスバー
40 バスバー端子部
41 対向面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを冷却するための複数の冷却管とを積層配置してなると共に、上記複数の半導体モジュールを外部と電気的に接続するためのバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールは、積層方向に直交する方向に突出したパワー端子を有し、
該パワー端子は、上記バスバーに対して少なくとも先端部を接触させた状態で接合されており、
上記バスバーにおける上記パワー端子が接続されるバスバー端子部は、積層方向に複数個、所定の間隔をもって形成されており、
上記パワー端子と上記バスバー端子部との少なくとも一方は可撓性を有し、
上記バスバー端子部は、上記パワー端子との対向面が上記半導体モジュールの本体部側へ傾斜していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記バスバー端子部は、上記パワー端子よりも剛性が高いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、上記パワー端子は、該パワー端子の先端部が上記バスバー端子部を押圧するように付勢されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記パワー端子の突出方向から見たとき、上記複数の半導体モジュールにおける上記パワー端子の付根部は、その積層方向位置が、上記バスバー端子部の上記対向面の範囲内にあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを冷却するための複数の冷却管とを積層配置してなると共に、上記複数の半導体モジュールを外部と電気的に接続するためのバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールは、積層方向に直交する方向に突出したパワー端子を有し、
該パワー端子は、上記バスバーに対して少なくとも先端部を接触させた状態で接合されており、
上記バスバーにおける上記パワー端子が接続されるバスバー端子部は、積層方向に複数個、所定の間隔をもって形成されており、
上記パワー端子と上記バスバー端子部との少なくとも一方は可撓性を有し、
上記バスバー端子部は、上記パワー端子との対向面が上記半導体モジュールの本体部側へ傾斜していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記バスバー端子部は、上記パワー端子よりも剛性が高いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、上記パワー端子は、該パワー端子の先端部が上記バスバー端子部を押圧するように付勢されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記パワー端子の突出方向から見たとき、上記複数の半導体モジュールにおける上記パワー端子の付根部は、その積層方向位置が、上記バスバー端子部の上記対向面の範囲内にあることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−24355(P2011−24355A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168116(P2009−168116)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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